糖尿病患者さんは癌(がん)やアルツハイマー病に
なりやすいことをあなたは知っていますか?
2007年Asahi.comより
第63回日本癌学会(2004年福岡)において愛知県がんセンターよ り「糖尿病患者は、そうでない人に比べて癌になる危険性が1.4倍 高い」と発表されました。 名古屋市を中心とした中部地区における「がん」死亡率の疫学調査 (2003年)によると、糖尿病患者の4割近くが「がん」で亡くなり、日 本人一般の3割より高くなっています。
日本糖尿病学会誌で1991年から2000年の全国の糖尿病患 者18、385名の死亡原因が報告されています。これは中部労 災病院の堀田饒先生の研究で、全国調査結果です。 糖尿病患者の死亡原因疾患の 第1位は癌34.1% 第2位血管障害 (脳9.8%、心臓10.2%) その他感染症、腎障害となっています。 患者さんの1/3は癌で亡くなりますが、これは日本人一般の 死亡原因と同じです。ただ女性より男性の発癌頻度が高くな っています。
糖尿病になると癌になり易い
肺癌 肝臓癌 咽頭癌 食道癌 胃癌 大腸癌 すい臓癌 腎臓癌 子宮頸癌 男性 1.5倍 2.2倍 2.3倍 1.7倍 - 1.4倍 1.9倍 1.9倍 - 女性 1.6倍 1.9倍 - - 1.6倍 - - - 1.9倍 米国立がん研究雑誌2005年11月号に「糖尿病患者は大腸癌になる危険性 が、そうでない人より3割高い」という論文が発表されました。
糖尿病と『がん』の関係
糖尿病外来での頻度: 平成11から13年の間に私の糖尿病外来患者であった575名 中422名にヒトヘモグロビン法を2回連続で施行し、1回以上 陽性となった患者84名(19.9%)のうち了解の得られた者 (76名)に大腸内視鏡検査を実施した。大腸内視鏡検査を実 施した76名中、5mm以上のポリープ切除37名(48.7%)、大 腸癌8名(10.5%)、正常27名(35.5%)であった。ヒトヘモ提 出した糖尿病患者全体から見ると8.8%に大腸ポリープが 1.9%に大腸癌が発見されたことになる。
では、何故、糖尿病に癌が起こり易いのでしょうか?
残念ながら確定した研究報告は出ていません。推定されることは、 ①高インスリン血症に伴うインスリン抵抗性 ②IGF-1(インスリン様成長因子-1)の増大 ③肥満や運動不足 ④酸化ストレス などが考えられています。がんで死なないためには、検診を受けることが最も重要
糖尿病が進展すると合併症を起こし、糖尿病による動脈硬化病 変(心筋梗塞、脳梗塞など)によって死亡する人も少なくないので すが、2型糖尿病患者ではがんで死亡する人も多いとされていま す。血液,尿検査だけでは、がんを早期発見することはできませ ん。がんの早期発見のために年1回は胸部X線検査、上部消化 管検査、便潜血の有無、腹部超音波検査、乳がん、子宮癌検査 を受けられるといいでしょう。認知症老人数 (万人)
認知症老人数
0 1 2 3 1985年 1992年 1998年
有
病
率
(
%
)
脳血管性認知症 アルツハイマー型 認知症 レビー小体型 認知症認知症の病型別有病率の経年変化
久山町男女826名、65歳以上、性・年齢調整 清原裕, CODE AC, 2007 2.4 1.8 1.6 1.3 1.4 2.1 2.9 1.9 2.40 1 2 3 4 5 6 0 1 2 3 4 5 (+) (-) (+) (-) 脳血管性認知症 アルツハイマー型認知症 (+) (-) (+) (-) 相 対 危 険 度 相 対 危 険 度 耐糖能異常と高血圧の有無別に見た認知症発症の相対危険度 久山町男女826名、65歳以上1985-2000年、多変量調整 清原裕, CODE AC, 2007 4.2 5.6 4.1 1.0 4.6 2.3 0.9 1.0
1
2
3
耐 糖 能 異 常 (-) 脳血管性認知症 アルツハイマー型認知症 相 対 危 険 度 レビー小体型認知症 1.0 1.0 1.0 1.6 3.1 0.9 久山町男女826名、65歳以上1985-2000年、多変量調整 清原裕, CODE AC, 2007 (+) (-) (+) (-) (+) 耐糖能異常の有無別に見た認知症発症の相対危険度=加齢現象とは無関係に、1型、または、2 型糖尿病患者に発症する中枢神経合併症 症状: • 記憶障害 • 学習障害 • 認知障害 • 痴呆
糖尿病性認知症とは何か?
糖尿病性認知症
1. アルツハイマー型認知症
病因: • 脳内のインスリン不足 • 脳内のインスリン作用障害 • 高血糖による脳内の酸化ストレスの亢進 海馬領域の中枢神経細胞アポトーシスの亢進糖尿病性認知症
2. 脳血管性認知症
病因: • 脳虚血性疾患扁桃体 海馬 MRI image 糖尿病では、健常人に比べて、海馬や扁桃体の萎縮 や神経細胞死が亢進している
糖尿病患者では、海馬、扁桃体にApoptosisが起きる。
アルツハイマー病の原因物質である
βアミロイドは、
画像診断 (アミロイドPET)で診断できるようになってきた
インスリン
糖とりこみ
(肝臓, 脂肪, 骨格筋)
細胞死を防ぐ
(脳神経細胞, 網膜細胞, 血管内皮細胞)
インスリンには、細胞死を抑制する重要な働きがある
糖尿病性認知症には、インスリンが密接に関係する
視床 扁桃体 海馬 脳内のインスリン 受容体の局在
脳内のインスリンの重要性について
• 膵臓から分泌されたインスリンは、血液脳関門や、脳室周囲器官を 通って脳内に入る 脳内インスリンは、神経細胞アポトーシス亢進を抑制し、 認知・記憶障害の進展防止・改善に貢献している。Okouchi, Antioxid Redox Signal, 2007 IDE インスリン -アミロイド IRS↓ PI3K↓ Akt↓ -sAPP -アミロイド release IDEsynthesis↓ -アミロイド↑ GSK-3↑ GSK-3↑
-secretase↑ Tau phosphorylation↑
Apoptosis↑ Insulin receptor 糖尿病とアルツハイマー型認知症が関連するのは、脳内で、 インスリンと-アミロイドの作用が、密接に関係しているからである インスリン -アミロイド↑
糖 尿 病
発症機序
脳梗塞 潜在的脳虚血 AGEs 酸化ストレス アミロイド 代謝の破綻 (IDEの減少) 動脈硬化 微小血管病変 糖毒性 インスリン脳の病理学的変化
脳血管性病変 加齢による変化 アルツハイマー病様変化認知症
遺伝的素因糖尿病と認知症の関係
Biessels GJ, Lancet Neurol, 2006 他の生活習慣病
食後高血糖が、アルツハイマー型の
糖尿病認知症の発症に関連する
どちらが合併症を進行させやすいでしょう
?
Del Prato S:Int. J. Obesity,26(Suppl3),S9-S17,2002.
HbA
1Cが同じでも・・・・・
HbA1C:6.5% 200 100 血糖値 (mg/dl )食後高血糖の抑制が重要
食後2時間血糖値を140mg/dL以下に維持する (IDF(国際糖尿病連合)ガイドライン)食後高血糖 ⇒ 酸化ストレス亢進 ⇒ 糖尿病性合併症
•Glucose spike •Glucose fluctuation •細小血管合併症 •大血管合併症 •認知症 •膵癌 •α-GI •グリニド製剤 •Insulin 【特に超速攻型】 •GLP-1(Abbatecola AM, Neurology. 2006) (Paolisso G , Diabetes Metab. 2003 )
治療法
食後高血糖、肥満が、アルツハイマー型の糖尿病
性認知症を発症させやすくする
23 24 25 26 0 3 6 9 12 Glibenclamide
MMSE score
ヶ月 0.038 0.039 0.040 0.041 Repaglinide 0 3 6 9 12 ヶ月Cognition composite score
Repaglinide
Glibenclamide
グリニド製剤で、食後高血糖を改善することにより、
認知症の進行を遅らせることが出来る
アルツハイマー型認知症を含む合併症にならないために、
血糖コントロール (
HBA1c と共に 食後血糖
)を改善しましょう
220以上 180~220未満 140~180 未満 80~140 未満 食後2時間血糖値 (mg/dL) 160以上 130~160未満 110~130 未満 80~110 未満 空腹時血糖値 (mg/dL) 6.5~8.0未満 8.0以上 7.0~8.0 未満 6.5~7.0 未満 5.8~6.5 未満 5.8未満 HbA1c(%) 不良 不十分 不可 可 良 優 コントロールの評価とその範囲 指 標 (日本糖尿病学会編集:科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン,2004 ) ・血糖コントロールの指標と評価Behavioral analysis of working memory
Thirumangalakudi L, J Neurochem. 106:475-485, 2008
高脂肪食は、認知・学習障害を悪化させる
高脂肪食は、脳内に、アルツハイマー病の
原因物質である
-amyloidを蓄積させる
高脂肪食は、脳内の細胞死(アポトーシス)
シグナルを亢進させる
酸 化 コ レ ス テ ロ ール (7 -h y d roxyc h ol est er ol ) C on tr ol 500n M 1 μ M
Nelson TJ, Biol Chem. 2005
24h 96h
高脂血症と認知症の因果関係 1
酸化コレステロールは、脳神経細胞 (海馬神経細胞)の
アポトーシスを促進させる
高脂血症と認知症の因果関係 2
酸化コレステロールは、脳内のIGF, Insulinシグナルを障害する
酸化コレステロール (hydroxycholesterol ) IRS↓ PI3K↓ Akt↓ -sAPP -アミロイド release IDEsynthesis↓ -アミロイド↑ GSK-3↑ GSK-3↑
-secretase↑ Tau phosphorylation↑
Apoptosis↑
IR, IGR-R
酸化コレステロールは、脳内に容易に移行し、
IGF、インスリンの抗アポトーシスシグナルを障害する
インスリン, IGF
Sharma S, Neurobiol Dis. 32:426-32, 2008
糖尿病性認知症にならないために
A
HbA1cを6.5%以下にコントロール.
B
食後2時間血糖値
<
120mg/dl
D
LDL-C < 120mg/dl
アルツハイマー型認知症にならないため
にコントロールできる危険因子①
高血圧
アルツハイマー病:2.3倍(フィンランド/2001) 脳血管認知症(アメリカ/2000) 高脂血症
脳血管性認知症(アメリカ/2000) アルツハイマー病:2.1倍(フィンランド/2001)
糖尿病
アルツハイマー病:3.1倍(日本/2005) 脳血管性認知症(スウェーデン/2002)
肥満
アルツハイマー病・女性(スウェーデン/2003) メタボリック・シンドローム
(
内臓脂肪蓄積・高中性脂肪血症・高血圧・高血糖の2つがある)
認知機能の低下(アメリカ/2004) ホモシスティン
アルツハイマー病(アメリカ/2002)
タバコ
アルツハイマー病など認知症(オランダ/1998)アルツハイマー型認知症にならないため
にコントロールできる危険因子②