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『るるぶ』から見る観光地としての奈良県の移り変わり

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『るるぶ』から見る観光地としての奈良県の移り変わり

出口 栄美

1.研究の背景と目的

「るるぶ」は JTB パブリッシングの発行する地域別観光ガイドブックであり、1984 年に若 い女性向けに創刊した女性雑誌「月刊るるぶ」からその出版が始まっている。JTB が発行し ている旅行雑誌ということから、当時の旅行会社がどのような場所に注目していたのか、奈 良はどのようなイメージがある場所なのかを読み取ることができるのではないかと考えこの テーマを選んだ。本研究では「るるぶ」奈良版のバックナンバーに掲載されている情報を基 に、どのような場所が観光地と見なされているのか、旅行者にはどのようなニーズがあるの か、またどのようなスタイルの旅行が流行っているのかについて明らかにし、その移り変わ りを分析することを目的とする。

2.研究方法

「るるぶ」のバックナンバーを集め、「どのような特集が組まれているのか」「どの寺院に 注目が集まるのか」「どのような地域が紹介されるのか」等の点に注目し、年ごとの違いを まとめるという方法で分析する。入手が難しい号もあったため、本論文では 1995 年から 2015 年までの「るるぶ」を利用した。以下に本論文で利用した資料を挙げる。

『るるぶ奈良 95 ~ 96,96 ~ 97,98,99』

『るるぶ奈良を歩こう 01,02,03,04』

『るるぶ奈良大和路 05,06,07,08 ~ 09,10 ~ 11,11 ~ 12』

『るるぶ奈良 12 ~ 13,14 ~ 15』

『るるぶ奈良を歩こう 00』は入手が難しかったため、本論文では『るるぶ奈良を歩こう 00』のデータをとばして分析を進めることにした。

「るるぶ」では、奈良県を「奈良公園周辺」「西ノ京・斑鳩」「山の辺の道」「飛鳥・吉野」

の 4 エリアに分けて紹介している。年によってはエリアの区切り方が若干異なることもある が、本論文でも奈良県をこの 4 つのエリアにわけて分析を進める。

3.奈良公園周辺エリア

東大寺周辺・興福寺周辺・春日大社周辺・奈良町・奈良タウン・佐保・佐紀路・当尾・柳 生・新薬師寺がこの「奈良公園周辺エリア」に含まれる。この地域は奈良の観光地の中心地で、

4 エリアの中でも一番初めに情報が掲載される地域である。

① 奈良公園周辺の寺社

この地域で毎回必ず紹介される寺社は東大寺、興福寺および春日大社である。新薬師寺は

『奈良を歩こう 04』の「誌上拝観」という特集で取り扱われて以来 2004 年以降注目されるよ うになっていった。掲載スペースとしては見開き半ページのさらに 2 分の 1 ほどであるが、

2004 年版以前では新薬師寺は高畑の周辺寺院として小さく扱われる程度だったので、2004 年以降新薬師寺への関心が高くなったことがわかった。

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図 1 は 1995 年~ 2015 年の間まで東大寺・興福寺・春日大社・新薬師寺を紹介するために

「るるぶ」が何ページ使ったかを年ごとに比較したグラフである。1 ページを 4 等分して 4 分 の 1 ページを 1 単位とし、見開き 1 ページを 8 単位とみなしてグラフを作成した。東大寺や 興福寺、春日大社などの寺社自体に「るるぶ」がどれほど関心を示しているかを把握するた め、周辺にあるカフェや他の観光地について紹介しているページはこのグラフにカウントし なかった。

図 1 東大寺・興福寺・春日大社・新薬師寺に関する情報の掲載ページ数の変化

図 1 より、春日大社は東大寺や興福寺よりも掲載ページがやや少ない年が多く、東大寺・

興福寺と比べると「るるぶ」での扱いがやや小さい年が多かったことがわかった。『るるぶ 奈良大和路 08 ~ 09』で春日大社に関するページが大きく増えたのは「誌上拝観」で春日大 社の特集が組まれたためである。東大寺・興福寺は 2007 年から、春日大社は 2008 年以降か ら掲載ページ数が大きく増えるようになった。

ページ数が増えただけでなく、この年を境にこれらの寺社の紹介のされ方も大きく変わっ ていることもわかった。図 2 は 2007 年の東大寺のページ、図 3 は 2006 年の東大寺のページ である。図 2 では大仏の写真が大きく掲載されているだけでなく、大仏殿とその周辺の南大 門や戒壇堂の位置関係を示したイラストを掲載している。そのため、一目見ただけで東大寺 がどのような寺院なのかという特徴が理解しやすい。一方、図 3 の方は掲載されている写真 が小さい。写真を見ても他の寺社と大差がないように見えるので、東大寺がどのような寺で あるのかをイメージしにくい。さらに年を遡って 1999 年版のるるぶ(図 4)を見ると、2007 年以降の東大寺との扱いの差がよりはっきりと見てとれる。これらの図から、2007 年以前も 東大寺・興福寺・春日大社は奈良の観光地として重要な場所とみなされていたが、「るるぶ」

側にはそれほどそれぞれの建築物や文化財の特徴や個性を強調して紹介しようという意識が なかったことがわかる。1999 年頃の「るるぶ」に至っては白黒印刷で、春日大社が朱色の建 物であることすらわからない。2007 年以前はただ観光地の情報を書き並べて紹介すればよい というスタンスだったことがわかる。

2

に「るるぶ」が何ページ使ったかを年ごとに比較したグラフである。

1

ページを

4

等分し て

4

分の

1

ページを

1

単位とし、見開き

1

ページを

8

単位とみなしてグラフを作成した。

東大寺や興福寺、春日大社などの寺社自体に「るるぶ」がどれほど関心を示しているかを 把握するため、周辺にあるカフェや他の観光地について紹介しているページはこのグラフ にカウントしなかった。

図 1 東大寺・興福寺・春日大社・新薬師寺に関する情報の掲載ページ数の変化

1

より、春日大社は東大寺や興福寺よりも掲載ページがやや少ない年が多く、東大寺・

興福寺と比べると「るるぶ」での扱いがやや小さい年が多かったことがわかった。『るるぶ 奈良大和路

08

09

』で春日大社に関するページが大きく増えたのは「誌上拝観」で春日大 社の特集が組まれたためである。東大寺・興福寺は

2007

年から、春日大社は

2008

年以降 から掲載ページ数が大きく増えるようになった。

ページ数が増えただけでなく、この年を境にこれらの寺社の紹介のされ方も大きく変わ っていることもわかった。図

2

2007

年の東大寺のページ、図

3

2006

年の東大寺の ページである。図

2

では大仏の写真が大きく掲載されているだけでなく、大仏殿とその周 辺の南大門や戒壇堂の位置関係を示したイラストを掲載している。そのため、一目見ただ けで東大寺がどのような寺院なのかという特徴が理解しやすい。一方、図

3

の方は掲載さ れている写真が小さい。写真を見ても他の寺社と大差がないように見えるので、東大寺が どのような寺であるのかをイメージしにくい。さらに年を遡って

1999

年版のるるぶ

(

4)

を見ると、

2007

年以降の東大寺との扱いの差がよりはっきりと見てとれる。これらの図か ら、

2007

年以前も東大寺・興福寺・春日大社は奈良の観光地として重要な場所とみなされ ていたが、「るるぶ」側にはそれほどそれぞれの建築物や文化財の特徴や個性を強調して紹 介しようという意識がなかったことがわかる。

1999

年頃の「るるぶ」に至っては白黒印刷 で、春日大社が朱色の建物であることすらわからない。

2007

年以前はただ観光地の情報を 書き並べて紹介すればよいというスタンスだったことがわかる。

0 10 20 30 40 50 60

東大寺 興福寺 春日大社 新薬師寺

東大寺・興福寺・春日大社・新薬師寺

95~96 96~97 98 99 1 2

3 4 5 6 7 8~9

9~10 10~11 11~12 12~13 14~15

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      図 2 2007 年の東大寺 図3 2008 年の東大寺 図 4 1999 年の東大寺

② 奈良県のイベント「平城遷都 1300 年祭」

2010 年には第一次大極殿の復興が完了した。「平城遷都 1300 年祭」が開催され、「第一次 大極殿完成記念式典」、「平城遷都 1300 年記念祝典」、古代行事の復興などをはじめとする、

数多くのイベントが 4 月から 11 月の間に行われた。これらのイベントと同時に、秘法・秘 仏の特別公開も数多く行われ、奈良県が平城遷都 1300 年祭に多くの力を注いでいることが 見てとれた。この年以前からも修二会や若草山焼きなどのような個々の伝統行事は行われて いたが、奈良県を挙げて開催するイベントは見られなかった。観光客を呼び込む方法として、

県ぐるみでイベントを行うようになったのは比較的新しい傾向であるといえる。

③ 奈良町

奈良町はカフェや買い物ができる場所が多くあり、しかも昔ながらの街並みの残る場所の 一つとして 1995 年から奈良公園周辺エリアの中心地として紹介されていた。もともと「る るぶ」は女性向けに作られた観光雑誌であるため、カフェの多い奈良町は「奈良公園周辺エ リア」のなかでお店やカフェのある場所として詳しく紹介されていたが、近年ではただ奈良 町のおいしい店を紹介するだけでなくまち歩きページがよく組まれるようになった。食べる ことと見ることがセットで紹介されるように奈良町は変わってきている。

4.西ノ京・斑鳩エリア

「るるぶ」では、法隆寺・薬師寺・唐招提寺・大和郡山・信貴・生駒・斑鳩などがこのエ リアに分類されている。その中でも特に大和郡山、法隆寺、薬師寺、唐招提寺がこの地域の 観光の中心地である。

① 大和郡山

大和郡山は江戸時代の城下町としての町並みが残り、全国有数の金魚の養殖産地として、

毎回紹介される場所である。「るるぶ」では、しばしば大和郡山でのまち歩きのページが設 けられるが、大和郡山とまち歩きが結びつけられるようになるのは『るるぶ 奈良を歩こう 04』以降である。それ以前の「るるぶ」でも、大和郡山の見どころなどは紹介されているが、

それぞれの結びつきはやや緩く、他の地域よりも大和郡山を特別に扱うことはなかった。ま ち歩きのページが設けられるようになってからは、大和郡山の町並み体を見てもらおうとい う意識がいっそう強くなった。

② 法隆寺・薬師寺・唐招提寺

法隆寺・薬師寺・唐招提寺といえば世界遺産に登録される西ノ京・斑鳩の一大観光スポッ

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トで、「るるぶ」でも大きく取り扱われる観光地である。しかし、この3か所ははじめから

「るるぶ」で大きく取り上げられていた場所というわけではない。図5が 1995 年からの法隆 寺・薬師寺・唐招提寺の情報が扱われたページ数の量を表すグラフである。グラフは東大寺・

興福寺・春日大社周辺の時と同じ方法で作成した。グラフをみてもわかるようにこの3か所 に関する情報は 1990 年代においてそれほど掲載されていなかった。特に、薬師寺、唐招提 寺の情報は 2003 年頃まであまり無く、他の観光地と同じ扱いを受けている。この3か所は、

はじめから「西ノ京・斑鳩エリア」の中心地というイメージではなかったことがわかる。

図 5 法隆寺・薬師寺・唐招提寺に関する情報の掲載ページ数の変化

5.山の辺の道エリア

「るるぶ」では山の辺の道、桜井・初瀬、室生、などがこの「山の辺の道エリア」に分類 されている。特に、近年注目される傾向にあるのは大神神社、長谷寺、室生寺、談山神社、

大宇陀である。大宇陀は『るるぶ奈良を歩こう 04』頃から昔ながらの町並を楽しめるまち歩 きの場として定着するようになった。また、長谷寺・室生寺・談山神社はそれぞれボタン、シャ クナゲ、紅葉の名所でもあるという共通点がある。「西ノ京・斑鳩エリア」にある矢田寺と いう寺もアジサイの名所だが、2000 年代後半にかけて他の観光地よりも少し大きく掲載され ることが多くなった。そのことからも、花の名所である場所は他の観光地と比べ観光客を呼 び込みやすいということがわかる。

山の辺の道は大和の古代道路の一つでその歴史は古い。この山の辺の道の観光スポットの 中心として近年注目を集めているのが大神神社である。大神神社は日本最古の神社のひとつ で「るるぶ」でも 1995 年から掲載されているが、大神神社に対する関心は徐々に高まって きており、2011 年頃からは「パワースポット」として定着するようになった。

6.飛鳥吉野エリア

飛鳥・吉野・橿原・當麻・今井町などがこのエリアにあたる。このエリアの中で今井町は まち歩き、飛鳥は古墳や石、サイクリングで有名な場所として紹介される。今井町がまち歩 きの場として紹介されるようになったのは『るるぶ奈良を歩こう 04』以降である。吉野山は 桜の名所として有名であるが『るるぶ奈良を歩こう 04』までは吉野の神社は紹介されても山

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ットで、「るるぶ」でも大きく取り扱われる観光地である。しかし、この3か所ははじめか ら「るるぶ」で大きく取り上げられていた場所というわけではない。図5が

1995

年から の法隆寺・薬師寺・唐招提寺の情報が扱われたページ数の量を表すグラフである。グラフ は東大寺・興福寺・春日大社周辺の時と同じ方法で作成した。グラフをみてもわかるよう にこの3か所に関する情報は

1990

年代においてそれほど掲載されていなかった。特に、

薬師寺、唐招提寺の情報は

2003

年頃まであまり無く、他の観光地と同じ扱いを受けてい る。この3か所は、はじめから「西ノ京・斑鳩エリア」の中心地というイメージではなか ったことがわかる。

図 5 法隆寺・薬師寺・唐招提寺に関する情報の掲載ページ数の変化

5.山の辺の道エリア

「るるぶ」では山の辺の道、桜井・初瀬、室生、などがこの「山の辺の道エリア」に分 類されている。特に、近年注目される傾向にあるのは大神神社、長谷寺、室生寺、談山神 社、大宇陀である。大宇陀は『るるぶ奈良を歩こう04』頃から昔ながらの町並を楽しめ るまち歩きの場として定着するようになった。また、長谷寺・室生寺・談山神社はそれぞ れボタン、シャクナゲ、紅葉の名所でもあるという共通点がある。「西ノ京・斑鳩エリア」

にある矢田寺という寺もアジサイの名所だが、

2000

年代後半にかけて他の観光地よりも少 し大きく掲載されることが多くなった。そのことからも、花の名所である場所は他の観光 地と比べ観光客を呼び込みやすいということがわかる。

山の辺の道は大和の古代道路の一つでその歴史は古い。この山の辺の道の観光スポット の中心として近年注目を集めているのが大神神社である。大神神社は日本最古の神社のひ とつで「るるぶ」でも

1995

年から掲載されているが、大神神社に対する関心は徐々に高 まってきており、

2011

年頃からは「パワースポット」として定着するようになった。

6.飛鳥吉野エリア

飛鳥・吉野・橿原・當麻・今井町などがこのエリアにあたる。このエリアの中で今井町 はまち歩き、飛鳥は古墳や石、サイクリングで有名な場所として紹介される。今井町がま

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法隆寺 薬師寺 唐招提寺

法隆寺・薬師寺・唐招提寺

95~96 96~97 98 99

1

2 3 4

5

6

7 8

9 9

10 11

12 12

13 14

15

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自体にはあまりスポットはあてられていなかった。『るるぶ奈良を歩こう 04』以降から桜に 関する情報が多く紹介され、桜関連のお土産や食べ物も注目されるようになった。また、『る るぶ奈良大和路 11 ~ 12』から「飛鳥でごはん」というフレーズと共に飛鳥の食事場所にも 注目が集まるようになった。『るるぶ奈良大和路 11 ~ 12』以降このエリアは「山の辺の道エ リア」よりも前のページに掲載されるようにもなり、観光地としての知名度が徐々に上がり つつあることが見てとれる。

7.その他に「るるぶ」でどのようなページが設けられていたのかから分かること

下の表1は 1995 年から 2015 年の間に上述した 4 エリア以外にどのような場所やイベント 等を紹介するためにページが組まれていたかをまとめたものである。この表によって、毎年 奈良の何に焦点があてられていたかを比較することができる。

この表から奈良県にある美術館・博物館の情報をまとめたページが 2003 年以降からなく なっているということがわかる。また、十津川や吉野の温泉などの温泉の情報をまとめたペー ジも 2004 年からなくなった。古い号ではそれほど知名度の高くない美術館や博物館、温泉、

遊園地などの情報も数多く紹介されていたが、新しい号になるにしたがってそのような情報 は掲載されないようになっていった。そのかわりに掲載されるページ数が増えたのは、東大 寺・興福寺、薬師寺などの世界遺産に登録されるような観光地の情報である。2001 年に「誌 上拝観」という特集で室生寺が挙げられて以来、「るるぶ」の始めの方のページで有名な寺 院に関する詳しい情報が掲載されることが多くなった。それ以前の「るるぶ」では一か所の 観光地を紹介するために何ページも使うようなことはなく、観光資源が多い地域も観光資源 の少ない地域も地域ごとに平等に紹介していたので知名度がそれほど高くない場所の情報も 載せることができたが、そのために煩雑な印象を受ける地域が多かった。有名な観光地に焦 点を当てるようになってからは、その観光地の写真を大きく掲載したり、建物の内部を撮っ た写真も多く掲載したりするようになったので、その地域が持つ観光地の個性がはっきりわ かるようになった。新しい号が発売されるにつれて、学園前都市や十津川、新大宮などの地 名が「るるぶ」から消えていったが、その代わりに、例えば「奈良公園周辺といえばお寺や お店が多い地域、西ノ京には法隆寺や薬師寺があり、山の辺の道には大神神社がある。飛鳥 には石舞台古墳があって吉野は桜が有名」といった「地域」ごとの個性というものがはっき り読み取れるようになっていった。

さらに、このような流れの中で有名な観光地と観光地を結びつけるようなページも多く設 けられるようになっていった。例えば、2006 年の「古都奈良の文化財めぐり」がその例とし て挙げられる。世界遺産や文化財がある観光地をそれぞれバラバラに紹介するのではなく、

一つのコースにしてどの順番で回っていくのがいいのかを紹介するような特集が、2006 年以 降多くみられるようになった。一か所だけを見て満足してもらうのではなく、次々と観光地 を移動するように誘導するように観光地の紹介の仕方が変わってきていることがわかる。こ うした変化のなかで「奈良世界遺産フリーきっぷ」が発売されるようになり、まち歩きのペー ジも多く設けられるようになった。

他にも、紹介される機会が多くなったものの例としては仏像があげられる。仏像に関する 情報は、「誌上拝観」で寺院の内部にどのような文化財があるのかを詳しく紹介する傾向が 出てきてから増えるようになった。そして、2008 年以降、「一度は会いたい仏さま」や「南

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都七大寺の仏さま」のように仏像にと焦点を当てた特集が組まれるようになり、「奈良とい えば仏像」というとうキャッチフレーズもしばしば登場するようになった。さらに、それら の特集の中で「癒し系」や「かっこいい系」の仏のように、それぞれの仏像の特徴を強調す るようなかたちで仏像を分類するようになる傾向もみられるようになっていった。これらの ことから、2001 年頃から徐々に世界遺産に登録されるような寺院の情報が詳しく紹介される ようになり、その流れの中で、寺院の中にある仏像にも関心移っていくようになったことが わかる。

また、お土産や食に関する情報にも変化がみられた。奈良のユニークなお土産といえば、

1990 年代や 2000 年はじめの頃は奈良の特産品、伝統工芸品や骨董品、奈良県で有名な和菓 子などを指していることが多かったが、2010 年以降は鹿をモチーフにした雑貨やアクセサ リー、仏像のイラストが描かれた手ぬぐいなど、「鹿」や「仏」などをモチーフとした商品 が奈良らしい雑貨として紹介されることが多くなっていった。さらに、有名な観光地以外に もカフェに関する情報が重要になりつつあるということもわかった。『るるぶ奈良 14 ~ 15』

では「個性派カフェ」という言葉が登場し、ご飯を食べるだけでなく、本も読める店や変わっ たインテリアの店、地元の食材を使っている店などを紹介するページの数がいっきに増え た。それまで、お洒落なカフェを紹介する場所といえば奈良町で、それ以外の場所でカフェ を中心に紹介するためのページが設けられることはあまりなかったが、2014 年頃には「飛鳥 でランチ」や「生駒でごはん」などのページが登場した。それに伴い寺院や周辺の観光資源 も紹介されるようになり、存在感が薄くなってしまっていた生駒の遊園地や宝山寺などの情 報も大きく取り扱われるようになった。このように、観光地としてそれほど目立っているわ けでもない地域でも、お洒落なカフェで女性の観光客を呼び込めることがわかった。 

8.まとめ

本研究では 1995 年から 2015 年の間に出版された「るるぶ」を用い、奈良の観光地の紹介 のされ方の移り変わりについて調査した。その結果、「奈良公園周辺エリア」「西ノ京・斑鳩 エリア」「山の辺の道エリア」「吉野・飛鳥エリア」の全エリアで東大寺や興福寺、法隆寺な どの世界遺産に登録されるような寺社の情報が詳しく掲載されるようになってきていること が明らかになった。その代りにあまり観光資源の多くない地域は紹介されなくなったが、お かげで4エリアにある有名な観光地は何かということがわかりやすく、地域別の個性という ものがはっきりと表れるようになった。また、「誌上拝観」という特集の中でいくつかの寺 が取り扱われ、仏像に対する関心が高まり、仏像を中心にした特集が多く組まれるようになっ てきたことも明らかになった。また、休憩場所としても利用できるカフェやランチの情報も 重要となり、飛鳥・生駒などでは食事場所の情報が注目されるようになってきていることも わかった。その他に、注目を集めやすい場所は花の名所であることや、鹿や仏をモチーフに した商品がお土産として注目されるようになってきていることも本研究で明らかになった。

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表1 1995年から2015年の間の「るるぶ」で組まれた特集の一覧表 表1 1995年から2015年の間の「るるぶ」で組まれた特集の一覧表 95~9696~97989912345678~99~1010~1111~1212~1314~15 奈良の 見どころ古都奈良の 表情万葉の故地 を歩くあのポス ターの舞台みどころ早わ かり奈良観光 ニュース奈良観光の 基礎知識 万葉の里を歩 くまほろばの 仏石国めぐ り レンタサイク ルで西ノ京~ 斑鳩を走り回 る 町屋クルーズin 奈良町奈良公園周辺 &奈良町を歩け るガイド 奈良公園周辺& 奈良町を歩けるガ イド 奈良の世界 遺産を巡る奈良の世界 遺産&国宝 ツアー 奈良町探索古都奈良の 文化財めぐりこれが王道のモ デルコース奈良公園とその 周辺徹底コース ガイド

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四季の行事 &花暦 平城京98行事・花歳時 記行事・祭り歳 時記行事歳時記 カレンダー花紀行イベント&特別 拝観・秘仏開帳花の名所ベストス ポット花の盛りに 大和花暦季節限定の 楽しみ方 光・輝きをもとめ て(ライトアップ)平城遷都1300年 祭って何ですか秘宝・秘仏 特別開帳 古都の骨董 品ほしいもの いっぱい骨董 雑貨

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町歩き ~めぐり 食 花 春夏秋冬 行事 土産 特産品 その他

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参考資料

『95 ~ 96 るるぶ奈良』 JTB 日本交通公社出版事務局

『96 ~ 97 るるぶ奈良』 JTB 日本交通公社出版事務局

『98 るるぶ奈良』 JTB

『99 るるぶ奈良』 JTB

『るるぶ奈良を歩こう 01』 JTB

『るるぶ奈良を歩こう 02』 JTB

『るるぶ奈良を歩こう 03』 JTB

『るるぶ奈良を歩こう 04』 JTB

『るるぶ奈良大和路 05』 JTB パブリッシング

『るるぶ奈良大和路 06』 JTB パブリッシング

『るるぶ奈良大和路 07』 JTB パブリッシング

『るるぶ奈良大和路 08 ~ 09』 JTB パブリッシング

『るるぶ奈良大和路 09 から 10』 JTB パブリッシング

『るるぶ奈良大和路 11 ~ 12』 JTB パブリッシング

『るるぶ奈良 12 ~ 13』 JTB パブリッシング

『るるぶ奈良 14 ~ 15』 JTB パブリッシング

図 1 は 1995 年~ 2015 年の間まで東大寺・興福寺・春日大社・新薬師寺を紹介するために 「るるぶ」が何ページ使ったかを年ごとに比較したグラフである。1 ページを 4 等分して 4 分 の 1 ページを 1 単位とし、見開き 1 ページを 8 単位とみなしてグラフを作成した。東大寺や 興福寺、春日大社などの寺社自体に「るるぶ」がどれほど関心を示しているかを把握するた め、周辺にあるカフェや他の観光地について紹介しているページはこのグラフにカウントし なかった。 図 1 東大寺・興福寺・春日大社・新

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