様式8の1の1 別紙1
論文の内容の要旨
専攻名 システム創成工学 氏 名 磯 光夫
(2,000字程度とし,1行43文字で記入)
中央自動車道上り線の笹子トンネルにおける天井板の落下 事故により 11名の死傷者 が出る大惨事や,浜松市の吊橋形式の第一弁天橋のケー ブル定着部が切れ通行人7人が 巻き込まれる事故などを契機として,老朽化した道路,トンネル,港湾,鉄道構造物 などの社会資本の維持管理がますます重要視されてきている.本格的なメンテナンス 時代を迎えようとしているわが国において,損傷が明らかとなった後に対応する事後 保全ではなく,顕著な損傷が明らかとなる前の予防保全の技術を用いて橋梁などの構 造物の長寿命化を図ることは,これからの社会資本整備において極めて重要なことで ある.しかし,橋梁の予防保全の重要性は認識されているものの,予防保全に関する 技術はまだ確立されていないのが現状である.
そこで本研究では,特に,打音法による非破壊検査技術と橋梁洗浄技術に着目して,
橋梁の長寿命化を図るための予防保全技術の開発を目指し,合成床版や鋼板接着補強 床版の実物大供試体,塗装鋼板やコンクリートの暴露供試体,および,実橋などを用 いて予防保全技術に関する種々の試験を行っている.そして,合成床版や鋼板接着補 強床版における鋼板上面の健全,剥離および滞水などの状態を把握できる非破壊検査 技術や,橋梁に付着した汚れや塩分を除去することができ長寿命化に効果がある洗浄 技術に関する有用な知見を見出している.
本論文は全8章から構成されており,その概要は以下のようである.
第1章では,本論文の研究背景,研究目的を述べるとともに,関連する既往の研究 をまとめている.
第 2 章では,わが国の鋼橋における維持管理の現状などを説明し,橋長 15m 以上の道路橋 の約 15 万橋に対する道路管理者,橋種別および構造別の割合や,橋梁点検結果における損 傷の状況,さらに予防保全の取り組みや長寿命化に関する課題などについて述べている.
第 3 章では,鋼橋の維持管理の基本である,損傷を「診る」ために開発した簡易点検装置 について説明している.わが国の道路橋の約 8 割が桁橋であることから,大規模な交通規制 をせずに,橋梁の路面上から視点方向を自由に変えられる CCD カメラなどを用いて,桁下空 間を容易に点検できる装置を開発し,この装置を用いることにより,橋梁点検車や足場を設 置しないで,橋梁部材やガス管などの添架物の損傷が発見できることを確認している.
第4章では,鋼板で覆われたコンクリート床版を対象とし,これらの床版の長寿命化を図
るために非破壊検査技術の打音法に着目して検討している.一般に鋼板で覆われたコンクリ ート床版では,鋼板上面の空隙や滞水などの状態を目視により確認できない.そこで,合成 床版の底鋼板とコンクリート間の滞水状態や鋼板接着補強床版における再劣化状態を把握す ることを目的に,実物大供試体を用いて試験を行っている.そして,剥離間隙と剥離断面 積の変化などによる打撃音の相違を分析して,鋼板で覆われた合成床版と鋼板接着補強床 版の打音法による非破壊検査の判定精度の向上を図り,実構造物に適用できる有用な知見 を得ている.
第5章では,鋼板とコンクリートからなる要素試験体の設置環境の差異,鋼板とコンクリ ートの接触面の付着の影響,設置環境の湿度などを変えた暴露試験を行い,鋼板とコンクリ ートの接触面における鋼材の腐食の発生,進展について有用な知見を示している.
第 6 章では,凍結防止剤散布などの多い積雪寒冷地の橋梁において,暴露供試体を用いた 汚れや塩分などの付着性状の調査と除去実験,長寿命効果確認試験,および,実橋における 洗浄試験を行い,日本での橋梁洗浄技術の実用化が十分可能であることを確認している.そ して,橋梁の長寿命化手法の一つとして有効な洗浄技術に関する有用な結果を示すとともに,
長寿命化効果を向上させるために洗浄作業と併行して行う点検と補修について提案している.
また,橋梁洗浄の際に近接目視により点検すべき個所や補修方法,さらに塗装の長寿命化の ために開発中の洗浄後に塗付するコーティング剤につて提案している.
第7章では,本論文を通して得られた鋼橋の長寿命化を図るための予防保全技術に関する 解明点と今後の課題について述べている.
最後に,第8章には,結論として,各章で得られた結果を総括している.