「行政学」から戦後日本外交を考える
— プラグマティズム・アブダクション・民主主義—
たけもと竹本 信介しんすけ
グローバル化を背景とした国際社会の変化を受けて、国民は、世論の重要性が増す現 代政治において、その動向を左右しかねない重要なアクターとして、目に見えない存在 感を増しつつあると筆者は捉えている。
あらためて、この国民の存在に注目して、戦後日本外交の先行研究状況を検討してい くと、主権者たる国民は、外交アクターとして、どのような存在として位置づけられて いるのか、この点が不明瞭となっている。加えて、同先行研究においては、主要な外交 アクターとして考察される対象は政治家であり、外務省(外務官僚)への考察は、その研 究実施数が少ない。
これら現象への認識を深めていくと、そこには、戦後日本外交をどのような研究視点 から捉えるのかという、研究方法の選択に関する問題に直面し、この問題とは、つまる ところ、戦後日本外交とその民主的統制をどのような視点から捉えるのか、という研究 主題となる。
本研究の内容は、現代民主制の構成原理である「二重の本人— 代理人論」の構図に準 拠することから、戦後の日本外務省を、代理人たる国の行政機関として、その存在を同 理論的構図の中で位置づけ、「行政学」の研究視点から、戦後日本外交の民主的統制に 関する考察を試みたものである。
本研究における最大の特徴は、本研究が準拠する分析方法にある。それは、C.S.パー スが提唱した、3 段階の推論形式を経る「科学的探求の論理」であり、同推論形式は、
プラグマティズムに基づき仮説を創設し、その仮説から得られる諸命題を経験的事実に よって検証し、知識の拡大を図る推論形式である。この分析方法は、今日の政治学にお いて主流をなす、仮説演繹法とは明確に異なる分析方法である。
本研究は仮説として、戦後日本外交の先行研究においては、「官房学」的価値観に基 づく、国民に対するパターナリズムが存在しており、それゆえに、戦後日本外交の「過 程に関する知識」が不足しているとの問い(仮説)を立て、それを確証するため、上記し た「科学的探求の論理」に基づき考察を行った。
結論として本研究は、外務省に対する 3 つの具体的研究主題の発見と、それらへの具 体的な研究を通じて、同仮説への一定の確証を得ると共に、本研究が準拠するパースの
「科学的探求の論理」は、日本社会において、民主主義を構想する論理ともなり、両論 理はともに、パースの「習慣」を中心概念とする宇宙論によって支えられていることを 確認する。(998 文字)