博 士 (理 学 ) デ シュム ケ、V . ギタン ジャリ ィ
学 位 論 文 題 名
LIFE CYCLE OF COILODESME JAPONICA
(DICTYOSIPHONALES, PHAEOPHYCEAE)
AND CONTROL OF MACROTHALLUS MORPHOGENESIS
[工ゾ ブク口 (ウイ キョウ モ目、 褐藻綱 )の生 活環と胞 子体の 形態形成制御]
学位論文内容の要旨
〈 緒言〉 褐藻エ ゾブケ 口(ウイキョウモ目)は、他の褐藻植物の真正着生藻として知 ら れてい るが、 その生 活環及び大型嚢状葉(胞子体)の形態形成要因は知られていない。
本 研究は このエ ゾブヶ 口につ いて、 1 )生態 的観察 、2 )培養による生活環の解明、(a ) 細 胞学的 実験、 (b) 生化 学的実 験、3 ) 大型嚢 状胞子体の形態形成の槻作について調べ、
新 し い タ イ プ の 生 活 環 の 発 見 と 胞 子 体 の 形 態 形 成 要 因 を 明 ら か に し た 。
〈 結 果 〉 1 ) 生 態的 観 察 ; 北海 道 室 蘭沿 岸の潮 聞帯域 におい て、2 年 間に渡っ て本種 の ホ ス ト 植 物へ の 着 生 条件 と 季 節 的変 動 を詳細 に調ぺ た。本種 の大型 嚢状胞 子体は 、褐 藻 ウガノ モケ( ウガノ モケ科)、フシスジモク(ホンダヮラ科)、そして稀にエゾヤハズ
( ア ミ ジ グサ 科 ) の 3 種 の 藻体 上 に のみ 生育す る着生 藻であ るが、小 嚢状葉 は2 月下 旬 か ら 3 月 下旬 に か け て出 現 し 、 4 ― 6 月 に 繁茂 し て 体 高20 ― 40cm に 達す る 。 成 熟葉 は 5 月 下 旬 か らみ ら れ 、 7 月 下 旬に は 完 全 に消 失 す る 。し か し ホ スト植 物に着 生する 胞子 体 の 総 個 体数 は 4 月 以 降 変 動が な く 、 ある 時 期 に 着生 し た ェ ゾブケ ロの生 殖細胞 のみ が大型嚢状の胞子体に発生できることが示唆された。
2 )培養に よる発 生・生 活環: 本種の 嚢状胞 子体( MT )の核相は複相で、成熟すると皮層 内 に 単 子 嚢が 発 達 す るが 、 滅 数 分裂 を 経て遊 走子を 形成し単 相の遊 走子を 放出す る。
遊 走 子 は 発芽 して 微小な 単列糸 状体( mt) に発生 する。 従来こ の糸状 体は複子 嚢を形 成
す る が 、 その 遊 走 細 胞は 発 生 し て微 小 世代を 繰り返 すだけで 、多列 形成的 な大型 胞子
体世代ヘf ま発達せず形態形成要因も不明であった。
で 従 来 通 り の 微 小 世 代 を 繰 り 返 す の み で あ っ た 。 し か し5℃ , 中 日 条 件(12h明 期 :12h暗 期 ) で 培 養 し 複 子 嚢 を 形 成 さ せ る と 、 あ る ケ ロ ー ン で 褐 藻 植 物 の 雌 性 配 偶 子 特 有 の 性 フ ウ ロ モ ン 臭 が 確 認 さ れ た 。 性 フ ウ ロ モ ン の 放 出 株 と 非 放 出 株 と の 比 は1:1で あ っ た 。 こ れ ら の ケ ロ ー ン は い か な る 組 合 せ で 接 合 を 試 み て も 有 性 生 殖 は み ら れ な か っ た が 、 極 め て 限 ら れ た 条 件 下 で の み 性 的 分 化 が 誘 導 さ れ る こ と が 初 め て 明 ら か に さ れ た 。 こ の 制 限 条 件 下 で 微 小 世 代 を 培 養 し 、 複 子 嚢 を 誘 導 し た 後 に 他 の 条 件 、 例 え ば10一14℃ の 長 目 条 件 に 移 植 す る と 、 性 フ ウ ロ モ ン 放 出 の 有 無 に か か わ ら ず に 遊 走 細 胞 の あ る も の は 微 小 世 代 に 戻 る こ と な く 、 多 列 形 成 的 な 嚢 状 体 (MT) を 形 成 す る 。 こ の 発 生 は ま ず 遊 走 細 胞 は 細 胞 質 の 大 部 分 を 液 胞 が 占 め る 球 状 細 胞 、 或 い は 長 い 発 芽 管 を 伴 っ た 液 胞 化 細 胞 に 分 化 す る 。 こ れ ら 液 胞 化 細 胞 は そ の 表 面 に 皮 層 細 胞 が 発 達 し 、 そ れ ぞ れ 単 子 嚢 を 形 成 す る が 、 特 に 後 者 に お い て 正 常 な 嚢 状 胞 子 体 に 発 達 す る こ と を 確 認 し 、 初 め て 本 種 の 一 生 活 環 を 完 結 し た 。
2亠a)細 胞学 的 実験 :フ イ ール ド及 び 培養 の胞 子 体(MT) は 共に 染色 体 数は24―26であ り、
微 小 糸 状 体 世 代 〔mt) の 染 色 体 数 は12―13で あ る 。 培 養 実 験 で は 全く 有性 生 殖が 確認 さ れ な い こ と か ら 複 子 嚢 由 来 の 遊 走 細 胞 のMTに 発 生 す る 過 程 で 体 細 胞 の 複 相 化 が 起 っ て い る こ と が 示 唆 さ れ 、 そ れ を 確 認 す る た め に 遊 走 細 胞 の 発 生 を 経 時 的 に 螢 光 色 素DAPI で 染 色 し 、 顕 微 定 量 測 光 装 置 を 用 い て 核 内DNA量 の 変 動 を 追 跡 し た 。 そ の 結 果 、 遊 走 細 胞 か ら 再 び 微 小 世 代 に 発 生 す る 時 は 、DNA合 成 後 に 直 ち に 細 胞 分 裂 が 起 る の に 対 し て 、MTに 発 生 す る 場 合 に はDNA台 成 が2回 連 続 し て 起 り 、4倍 量 のDNA合 成 の 後 に 細 胞 分 裂 す る た め に 細 胞 核 の 複 相 化 が 起 る 。 っ ま り 体 細 胞 複 相 化 は 液 胞 化 細 胞 の 発 芽 時 に 進 行 す る こ と を 初 め て 明 ら か に し た 。
2―b) 生 化 学 的 実 験 :5℃ , 中 日 条 件 で の み 性 的 分 化 が 誘 導 さ れ る こ と か ら 、放 出さ れ 奄 性 フ ウ ロ モ ン に つ い て 閉 鎖 ル ー プ シ ス テ ム で 、 フ ェ ロ モ ン 放 出 株 を 大 量 培 養 し 、 揮 発 成 分 を 活 性 炭 吸 着 し た 後 、 ジ ク ロ ロ メ タ ン に 溶 出 し 、 高 速 液 体 ク ロ マ ト グ ラ フ イ ー を 用 い て 分 離 同 定 を 試 み た 。 そ の 結 果 、 主 な 化 合 物 は ェ ゾ プ ク ロ と 近 縁 種 の ウ イ キ ョ ウ
モの 性 フ ウロ モ ン と して 知 ら れる フ イ ナパ レ ン であるこ とを明 らかにし た。
3) 嚢状胞子体( MT )の形態形成の制御:本種の培養による生活環及びそのMT の形態形成 は温度と日長条件によって完全に制御できた。遊走子由来の微小糸状世代(mt )は、5
℃ ,12h明 期 :12h暗 期 の 中 日 条 件 で 約2週 間 培 養 す る こ と で 性 フ ウ ロ モ ン 放 出 株 と 非 放
出株の性的分化が最も誘導される。これに近い日長条件のllh 明期:13h 暗期または13h 明期: llh 暗期でも僅かに誘導される。性的分化が誘導された遊走細胞は有性生殖が行 われないし、またこれらの誘導条件下では MT の形態形成は進行しない。っまり性的誘 導に引き続いて、5 ℃より高い10 ―14 ℃の温度条件に移行させて初めて液胞化細胞の発 生と体細胞の複相化が起り、それらの発芽体.は複相の嚢状胞子体(MT )に発生すること を明らかにした。
〈考察〉フイールドでの観察結果と合せて、褐藻エゾブヶロの生活環及び形態形成を 次の様に考察した。
エゾブクロの大型嚢状体(MT )は明らかに複相の胞子体であり、5 一7 月にかけて成 熟し単子嚢を形成する。減数分裂を経て遊走子を放出し、遊走子は単相の単列糸状体 に発生する。夏季から秋季の高温期間は複子嚢形成の微小世代を繰り返し、冬期低温 短目下でもこの微小世代は継続されるが、 2 月下旬から 3 月下旬にかけて低温( 5 ℃)
中日条件の限られた短期間のみ、性的分化が誘導される。ただしこれらの遊走細胞間 では有性生殖は行われない。その代り液胞化した発芽体において体細胞の複相化が起 り嚢状体を形成する。春季長日条件に移行すると共に、嚢状体は急速に生長して大型 胞子体に発達する。以上のことから胞子体の単子嚢において減数分裂が起る生活環の 核相交代も矛盾無く説明できる結果を得た。
〈結諭〉本実験において従来不明であった褐藻エゾブケロ属植物の生活環と胞子体の 形態形成要因を明らかにした。1 )エゾブケロでは極めて限られた温度、日長条件で性 フウロモンを放出する性的分化が起ること、 2) 性的分化がみられても有性生殖は行わ れない。しかしこの不完全な性的分化によって次世代の胞子体世代に移行する引きが ねになること、3 )胞子体に発生する際に体細胞の複相化が起ること、更に4 )微小単列 糸状体から生じる性フウロモン放出・非放出のクローンが1:1 の割合で生じることは、
褐藻植物、特に有性生殖が報告されていない種の生活史の再検討の必要性を提起する
ものであり、更に進化の過程において有性生殖を失っていくーつのモデルとして重要
であることを明らかにした。
学位 主査 副査 副査 副査
論 文 審 査 の 要 旨 教 授 舘 脇 正 和 教 授 吉 田 忠 生 教 授 石 川 鑛 助教授 増田道夫
学 位 論 文 題 名
LIFE CYCLE OF COILODE$ME JAPONICA (DICTYOSIPHONALES, PHAEOPHYCEAE)
[ 工 ゾ ブ ク ロ ( ウ イ キ ョ ウ モ 目 、 褐 藻 綱 ) の 生 活 環 と 胞 子 体 の 形 態 形 成 制 御 ]
褐 藻 エ ゾ ブ ク ロ 属 植 物 は 世 界 で10種 類 記 載 さ れ 、 主 に 他 の 大 型 褐 藻 植 物 の 着 生 藻 と し て 知 ら れ て い る 。 こ の 屈 は 有 性 生 殖 が み ら れ な い こ と と 、 培 養 で は 複 相 多 列 形 成 の 胞 子 体 か ら の 遊 走 子 は 単 相 単 列 形 成 糸 状 の 微 小 世 代 ば か り を 繰 り 返 し て 、 一 生 活 環 が 完 結 で き な い 種 類 が 多 い 。 特 に 日 本 産 工 ゾ ブ ク ロ (CoilodeSme jaをQnlca) は そ の 生 活 環 及 び 体 高40cm以 上 に 生 長 す る 嚢 状 胞 子 体 の 形 態 形 成 要 因 が 全 く 知 ら れ て い な い 不 可