政策書にみるウィルフレッド・ブラウンの組織概念
著者
幸田 浩文
著者別名
Kohda Hirofumi
雑誌名
経営論集
巻
40
ページ
65-89
発行年
1994-03-30
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00005693/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja(英国)グ1イー シ ヤー金属株式会社 の経営 政 策 書
にみ るウィルフ レ ッド・ブ ラウンの組織 概 念
幸
田
浩
文
目 次 はじめにL ブ ラウンの組織概念 とグレーシャーの経営政策の関連II. グレーシャーの執行制度III. 執行制度にみる専門職仕事IV. グレーシャーの代議員制度V. グレーシャーの立法制度VI. グ,レーシャーの上訴制度 犬 おわりに はじめに ウィル フレ ッド ・ブ ラウン(Brown,Wilfred )は,組織 を定義 す る場合 に 次 のような4 つの視点 があ る とい う1)。た とえば,組織 には,組織 図 のよ うに 公式 に記述あ るい は例示 さ,れた組織 もあ れば, 組織図 に一致 し てい るかどう か にかか わらず,組織 関係 者 に その存在 が認識さ れて い る組織 もあ る。また, 調査 や分析 によっ て明 らかにさ れた組織 もあ れば,現在 す る組織 が その環境 特性 に適応 した場 合 に想定で きる理 念的 な組織 もあ る。 す な わち, われ・われ は, この4 つ のいず れかの視点で 組織 を とらえてお り,個 々人 が頭 に描 く組 織 概念が同一 であ る場合 は まずあ り えない とい うのであ る。 したがっ て,ブ ラウン は, 動機づ け,人 間関係, 集団力 学,組 織文化 とい っ た心理学的 要因 がほ とん ど配慮 さ れてい ない との, 自身 の組織 概念 に対 す る他の研究 者か らの批判 も甘 ん じて受 け入 れ る2)。その うえで, 彼 は組織 を直 接 規定す る要 因 として, 役割 (roles)') 役割 の関係 (role-relationship),役割 制度(rolesystems )を挙げ, その重 要性 を 強調 す る。 実際 に,ブ ラウ ン は自 らが経営 する英国 のグレ ーシャー金属 株式会 社 にお いて, 役割の諸関 係 に対 す る実態調査 ならびに分析 を行 い, それを公式化 し,従業 員 に認知 さ せ, 理 想的 な組織 制度を構 築 しよう とし た。 こうし た目的 を もっ て企て られ た現行組織 に対 する一連の調査・分析の過程 こ そがグレー シャー計画(GlacierProject)' )であ り,当然 のこ ととしてブ ラウン の組織概 念 が同 社の経営政 策 書(companyormanagerialpolicydocuments)^ )に も色濃 く反映 してい ると考 え られる。 そこで 本稿 で は,同社 の経営政 策書 の分析 を通 じ て, すで に先行研究で明 らかにした彼 の組織概念6)がどの ように政 策書 に反映 されてい るかを確認す る こ とにす る。 〔 注 〕1 )Brown,W.,Organization,HeinemannEducationalBooksLtd.,1971,pp.25-26. ブ ラ ウ ン は , 同 書 の 第3 章 「 概 念 形 成 」(ConceptFormation) に お い て , 組
織 概 念 と し て, ①manifestorganization, ②assumedorganization, ③extantorganization, ④requisiteorganization の4 つ を 挙 げ て い る 。2 )Ibid.,preface,p.vi. ブ ラ ウ ン に よ れ ば , 彼 が1971 年 に 出 版 し た 『 経 営 の 探 索 』 (ExplorationinManagement,HeinemannEducationalBooksLtd.,1971.) に 対 し て は , ① 同 書 が 組 織 の 規 定 要 因 と し て 一 般 的 に 認 知 さ れ て い る 心 理 学 的 要 因 に ほ と ん ど 言 及 し て い な い, ② 同 書 に は 参 考 文 献 や 注 が 記 載 さ れ て い な い とい っ た 批 判 が あ る と い う 。3 ) こ こ で ぃ う 役 割 と は , 組 織 内 の 諸 制 度 に お い て 職 位 を 与 え ら れ て い る従 業 員 が 担 う特 定 の 責 任 事 項 と権 限 の こ とで あ る。Brown,W.,andJaques,E ・,GlacierProjectPapers,HeinemannEducationalBooksLtd.,1971,p.146. 『 グ レ ー シ ャ ー 計 画 』 ( 北 野 利 信 訳 ) 評 論 社 ,206 頁 。4 ) グ レ ー シ ャ ー 計 画 と は,1948 年 か ら1964 年 に か け て 英 国 の グ レ ー シ ャ ー 金 属 仝 社 が タ ヴ ィ ス ト ッ ク 人 間 関 係 研 究 所(TavistockInstituteofHumanRelations) と共 同 で 実 施 し て き た ,業 務 組 織 と そ の 合 理 化 計 画 に つ い て の 一 連 の 共 同 研 究 の こ とで あ る 。賃 金 交 渉 過 程 で み ら れ る 労 使 紛 争 の 解 決 策 を 模 索 す る と い う 目 的 を もっ て 開 始 さ れ た 同 研 究 は ,I く に 西 ロ ン ド ン 郊 外 の ア ル パ ー ト ン (Alperton ) に あ る ロ ン ド ン 工 場 を 中 心 に ,同 社 の 社 長 兼 会 長 の ブ ラ ウ ン と調 査 団 の リ ー ダ ー で あ るエ リ オ ッ ト ・ ジ ャ ッ ク ス (Jaques,Elliott ) に よ り推 進 さ れ た 。5 ) 本 稿 で ぱ1956 年3 月 に 作 成 さ れ た 経 営 政 策 書(CompanyPolicyDocumentof
(英国)グレ ーシャー金属 株式会 社の経営政策 書 にみ るウィ ルフレ ッド・ブ ラウンの組織概 念67theGlacierMetalCompanyCo.,Ltd.drawnupMarch1956. )を 参 考 な ら び に 引 用 す る 。な お 注 記 の 際 は ,た と え ばCompanyPolicyDocument,A H. − ○O. と略 し , 頁 数 で は な く 条 項 数 を 記 す こ と に す る 。 な お , 著 者 は , 同 上 の 経 営 政 策 書 の 全 文 を 次 の 通 り 資 料 と し て 訳 出 し た 。 拙 稿 「(英 国 ) グ レ ー シ ャ ー 金 属 株 式 会 社 の 経 営 政 策 書 (1956 年3 月 )」『 経 営 研 究 所 論 集 』 第17 号 , 東 洋 大 学 経 営 研 究 所,1994 年3 月 刊 行 予 定 。6 ) ブ ラ ウ ン の 組 織 概 念 に 対 す る 評 価 は , 以 下 の 文 献 を 参 照 の こ と 。 拙 稿 「 グ レ ー ジ ャ ー 計 画 の 特 質 と そ の 経 営 組 織 論 史 上 の 意 義 一 ウ ィ ノレ フ レ ッ ド ・ ブ ラ ウ ン の 所 論 を 中 心 と し て ー 」『 経 営 論 集 』 第27 号 , 東 洋 大 学 経 営 学 部,1986 年,33-66 頁 。 I 。ブラウ ンの組織概念と グレー シャー の経 営政 策の 関連1. 政策 制定機 関 としての工場 協議会 グレ ーシャー金属株式会社 の工場 協議会(WorksCouncil) は,1941 年,当 時 の産業 民主化 の影響を受 け,良好 な人 間関係 に基づ く収益性 と生産性 を達 成 するこ とを目的 として設 けられたI)。 若干 の修正 が加 えられた後,1950 年, 労使双方の代表 者 による全会 一致(unanimousagreement) を原則 とす る政 策制定機 関 となっ た2)。すな わち,同 社で は,この工 場 協議 会で の取 り決 めを 成文化 した経営政策 書にしたがっ て会社 を運 営す るこ とにした。 この政策 書 は,工場 協議 会 の議事録であ り, 同社 の ゛憲法 ″ とで も呼ぶ べき もの として 位 置づ け られた。 協議会で は,政 策 の立 案過程 におい て労使 双方の同意が得 ら れない場合 には, 現行の政策 を継続 す るか, あ るい は政策 を変更す るかの 判 断を最 も権 限 を もつ機関 に付託し なけ れば な らない。 なお現 行の政 策が変 更 されるの は,(1) 現行の政 策で は解決で きない,(2 現 行 の政策 が間違っ てい る, そして(3)新 しい政策 の方が会社 の利 益 にな る と考 えられる場合であ る3)。 しかし, 労働 者自身は, この協議機 関 その ものの機 能 を理解 していた とは い え,経 営側 の提 案が, た とえ労 働者側 の同 意 が な くて も, 会社 の利益 を優 先 す るとい う理由で最 終的 に採 択 さ れてし まう現 実 に直面 し, その運用 につ いて強い不 信感 を抱 くよ うになる。 やが てこ れが原因で1957 年 と1962年 に大 きな労働争議 が勃 発す る4)。 2 。政 策文 書に み るグレ ーシャーの企業 目的 グレ ー シャーは, 戦時中 に行っ た大 幅な昇 進 ・昇格 人事 による従業員 の身
分の不均衡 と不 公正 な賃金格差 を是正 す るた めに,従業 員 の仕 事 に対 して最 大限の報酬 を支 払 うこ とを重 要課題 とした≒ 具体的 には,すべ ての従業 員 に 自分の能力水準 に一 致 し た仕事 を割 り当 て, それにふさ わしい 賃金 を支払 う とい う一文を政 策 書 に盛 り込 むこ とであっ た6)。 こ れを達成 するた めにグ レ ーシャー は, 次頁 第1 図 に示 した執 行・代議 員 ・立法・上 訴 といっ た4 つ の制度 の相互作 用 によっ て組織 を円滑 に運営 しよ う とした。 そうするこ とで, 次 のよ うな成果 が期待で きた7)。(1) 執 行制度 により,従業 員 各人 の職務遂 行上 の責任 と権 限 が明確 になり, 自分 の判断で 行動で きるよ うにな る。(2) 代 議員制度 によ り, 従業 員 が政 策立案過程 に参加で き, 労使 双 方の意志 の疎 通 が円滑 になる。(3) 立 法制度 によ り, 政 策立案 に際し て全会一致 に達 す る まで 慎 重 かつ継 続 的 に討議 す るこ とがで きる ○(4) 上 訴制度 によしり,政 策 の解釈 について上 司や従業員 の間で 意見 の相違 が あっ た場合 に, しか るべ き調停機 関 に判断 を付託 するこ とがで き る。 要 するに, 本来,執 行 制度 とは, 組織 目的 か ら合理的 に割 り出 し た役割 を もとに設計 し た課業 から なる組織 のこ とであ る。 し かし, 組織 内の個 人 や集団 は企業 の事業 目的 とは違っ た目的, た とえば意見 や感情 を もっ てお り, その ま まで は執行 制度 に それらが表出 す る恐 れがあ る。 そうした場 合 に制度ぱ混 乱 を きた し機 能障害 を引 き起 こすか もし れな い。 また従業員 の 不平 や不満 を抑 制す れば個 人的 あ るいは集団的 な スト レ スが発生 す る可能 性 があ る。 そこで, 執行 制度 のほ かに, 代議 員制 度,立 法 制度,上 訴 制度 を設 ければ, 本来 の役割 シ ステ ムを合理的 に機 能さ せ るこ とがで きる とい うのであ る。 3. ブ ラウン の組織概 念 ブ ラウンの組織再 編成 (グレ ー シャー計 画) の目的 は, 日常あ るい は本来 業 務 を支障 な く遂 行す るた めに, 従業 員個 々人 の役 割を単位 とした仕事 の網 状組織 (執行 制度) を確立 し, それ とその他3 つ (代議 員・立 法 ・上 訴) の 制度 とが互 いに効率的 に機 能 す る運営組織 をつ く るこ とにあっ た。従業 員1 人ひ とりが占 める職 位(position) には,同社 の政策制定機 関であ る工場協議会 で決 定し た基本政策 を達成 す るた めに, 特定の責任事項 な らび に権 限が割 り
(英 国) グレ ー シャ ー金属株式会 社の経営政策書 にみ るウ ィル フレ ッド・ブ ラウンの 組織 概念69 当 て ら れ て い る 。 こ れ が 役 割 で あ り ,1 つ あ る い は2 つ 以 上 の 課 業(task) で 構 成 さ れ て い る 。 従 業 員 各 人 は , 上 司 が 指 定 し た 役 割 内 容 の 限 界 内 で , 与 え ら れ た 経 営 資 源 を 用 い て , 事 業 目 的 を 達 成 し な け れ ば な ら な い 。 換 言 す れ ば, 超 え て は な ら な い 役 割 の 限 界 を 上 司 か ら 指 定 さ れ る が, そ の 範 囲 内 で あ り さ え す れ ば 自 ら の 裁 量 を 行 使 し て 行 動 す る 自 由 が 従 業 員 に は 与 え ら れ て い る 。 こ の よ う に ブ ラ ウ ン は 役 割 を 指 定 要 素 と 裁 量 要 素 に 二 分 し √ 執 行 組 織 全 体 の 仕 事 範 囲 を 明 確 化 し , 従 業 員 各 人 の 上 司 に よ り 指 定 限 界 内 で の 裁 量 行 使 の 自 由 を 保 証 し た の で あ る 。さ ら に 彼 は, 組 織 再 編 計 画 の 過 程 で ジ ャ ッ ク ス(Jaques ,E. ト が 案 出 し た 裁 量 の 時 間 幅(time-spandiscretion) な る 概 念 を 適 用 し て , 執 行 制 度 を い く つ か の 等 級 を も つ 役 割 の 階 層 と し て 整 備 し た 。 ち な み に グ レ ー シ ャ ー で は 執 行 組 織 を5 つ の 役 割 階 層 に 区 分 し て い る8)。こ こ で と く に 注 目 す べ き は , 執 行 制 度 の 階 層 間 の 等 級 の 違 い を , 役 割 担 当 者 が 裁 量 を 行 使 す る 際 の 負 担 感 の 程 度( 責 任 の 水 準) や , 役 割 担 当 者 が 一 定 の 時 間 幅 を も つ 課 業 を 遂 行 す る 能 力( 時 間 幅 能 力) の 違 い に お き, さ ら に こ の 能 力 の 違 い を 仕 事 や 賃 金 と 連 動 さ せ て い る 点 に あ る9)。 第1 図 グレーシャー金属株式会社の運営組織にみる4 つの制度 職 制 全 般 経 営 者(generalmanager) 上 司 の 決 定 に 不 服 の 場 合 は よ り 上 位 に 異 議 を 申 立 て る 工 場 長(unitmanager) 部 門 作 業 場 長(sectionmanagei ・) 監 督 者(supeivisor) 現 場 労 働 者(shopworker! 仕 事 水 準 経 営 幹 部 → 匹 代表者1名 代 表 者2 名 代 表 者3 名 工 場 委 員 会 議 長 工 場 協 議 会(WorksCouncil) (14 名) 職 場 委員7 名
〔 注 〕1 ) 工 場 協 議 会 は , 工 場 委 員 会 か ら 組 合 の 代 表 と し て7 名 ( 議 長 , 副 議 長 , 書 記 , 工 場 委 員 会 委 員4 名 ),各 階 層 別 の 職 場 委 員 会 か ら6 名(1 等 職 員 委 員 会1 名,2 等2 名,3 等3 名 ), そ し て 経 営 側 か ら1 名 ( 経 営 幹 部 ) の 計14 名 に よ っ て 運 営 さ れ る。Jaques,E.,MeasurementofResponsibility,TavistockPublicationsLtd.,1962,pp.17-18.r 責 任 の 測 定 』( 北 野 利 信 訳 ) ダ イ ヤ モ ン ド 社 ,1970 年,45-47 頁 。 ち な み に 当 時(1952 年 )取 締 役 会 は ,常 勤 取 締 役 と し て 社 長(managingdirector ) を は じ め と し て,営 業 部 長(commercialdirector), 秘 書(companysecretary ), 人 事 部 長(personneldirector )の5 名 , そ し て 非 常 勤 取 締 役 の2 名 の 合 計7 名 で 構 成 さ れ て い た 。2 )CompanyPolicyDocument,A.3.3 )Brown,Organization,pp ユ96-197.4 ) 全 会 一 致 の 原 則 に し た が っ た に も か か わ ら ず , そ の 決 定 を 不 満 と し て 起 こ っ た ス ト ラ イ キ に は パ こと え ば ,1957 年 の ( 人 員 整 理 に 端 を 発 し た ) ス ト ラ イ キ が あ る。1957 年2 月4 日, 工 場 協 議 会 は, 経 営 側 か ら 提 案 の あ っ た 不 況 を 理 由 と す る200 人 の 人 員 整 理 を 受 け 入 れ た ,こ れ に 対 七 て 異 議 を 唱 え る 労 働 者 側 は ス ト ラ イ キ に突 入 しすこ。こ れにつ い て の 詳細 は以 下 の 文献 を 参照 の こ と。Jaques,E.,TheChangingCultureofaFactory,TavistockPublicationsLtd.,1951. 拙 稿「 グ レ ー シ ャ ー 計 画 と ウ ィ ル フ レ ッ ド ・ ブ ラ ウ ン の 経 営 政 策 と 実 践 」『 経 営 論 集J, 第37 号,1991 年 ,79-109 頁 。5 )CompanyPolicy ノ1])ocument,C.I.6 )Ibid.,C.1.3-1.4.7)Ibid.,D.l.8 ) こ の 裁 量 の 時 間 幅 と は, 役 割 担 当 者 が 指 定 限 界 内 で 裁 量 を 行 使 し た 後 , 直 属 の 上 司 か ら 仕 事 の 成 果 に つ い て 検 閲 (review) を 受 け ず に 過 ご せ る あ る い は 許 さ れ る 最 大 の 時 間 経 過 の こ とで あ る 。Brownetal.,GlacierProjectPapers,p.330.9 ) こ れ に つ い て の 詳 細 は 次 の 文 献 を 参 照 の こ と。拙 稿 「 エ リ オ ッ ト ・ ジ ャ ッ ク ス の 時 間 幅 概 念 に み る仕 事 の 精 神 的 過 程 」『 経 営 論 集 』 第38 号 , 東 洋 大 学 経 営 学 部 ,1992 年,85-123 頁 。「 エ リ オ ッ ト ・ ジ ャ ッ ク ス の 仕 事 ・ 給 料 ・ 能 力 均 衡 理 論 の 現 代 的 意 義 」『 経 営 研 究 所 論 集 』 第15 号 , 東 洋 大 学 経 営 研 究 所 ,1992 年,17-47 頁 。 H 。 グレー シャーの執行 制度1. 定義 と内容 ト , 執 行制度(executivesystem) あ るい は執 行組織1)は,組織 図 などに記載さ れる職 階層 のこ とで ,企業 の事業 目的 を達成 す るた めの役 割 のシ ステ ム,あ
(英 国) グレー シャー金属株式会社 の経営政策 書 にみ るウ ィルフレ ッド・ブ ラウンの組織概 念71 る い は 仕 事 に 結 び つ い た 地 位 の ネ ッ ト ワ ー ク の こ と で あ る 。 こ れ は , 生 産 や 販 売 な ど の 直 接 部 門 ( い わ ゆ る1 次 的 職 能 ) と 人 事 や 財 務 や 会 計 な ど の 間 接 部 門 (2 次 的 職 能 ) と に そ の 活 動 別 に 分 け ら れ る の が 一 般 的 で あ る ≒ こ れ に 対 し て ブ ラ ウ ン は , 企 業 活 動 の 中 か ら 執 行 機 能 を 制 度 と し て 独 立 さ せ , そ れ を 製 品 や サ ー ビ ス の 開 発 (D ) ・ 製 造 (M ) ・ マ ー ケ テ ィ ン グ (Mk )( あ る い は 販 売 (S )) と い っ た3 つ の 業 務 仕 事 と 人 事 (P ) ・ 技 術 情 報 (T ) ・ プ ロ グ ラ ミ ン グ (Pr ) と い っ た3 つ の 専 門 職 仕 事 と を 組 み 合 わ せ た9 つ の 仕 事 と , こ れ に 会 計 仕 事 を 加 え た 合 計10 の 仕 事 に 類 型 化 七 だ3 )。 そ し て 執 行 組 織 は , 第2 図 に 示 し た よ う に 経 営 幹 部(1 )・ 職 員(3 )・ 現 場 労 働 者(1 )の5 つ の 階 層4) に 分 け ら れ る た め , 組 織 全 体 で45 (5 つ の 階 層 ×9 つ の 仕 事 ) の 仕 事 に 分 割 で き る ≒ 第2 図 執行制度にみる業 務仕 事, ニ専門 職仕 事, 会 計仕事の関係
[ 亘Ξ]
資 料出所:Brownetal. ,GlacierProjectPapers,p.171. 前掲書,240 頁。<ブ ラウンに よる仕 事の10類 型〉 巾 製 品・サ ービ スの開 発(D ) ① 開発 に関 す る技術 と情報D /T ② 開発 のた めの組織化 と人員配 置D/P ③ 開発 に関 す るプ ログ ラミングD/Pr (2) 製 品・サ ービ スの製 造(M ) ① 製造 に関 す る技術 と情報M /T ② 製造 のた めの組織化 と人員配 置M/P ③ 製造 に関 す るプ ログ ラミングM/Pr (3) 製 品・サ ービ スのマ ーケティング (Mk ) ① マー ケ ティング に関 する技術 と情報Mk/T ② マー ケテ ィングの ための組織化 と人員配 置Mk/P ③ マー ケ ティング に関 するプ ログ ラミングMk/Pr(4 ) 会計A/c (上 のす べ てに適 用さ れる) 資料出所:Brown,GlacierProjectPapers,p.173. 前掲 書,241-242 頁. 2.3 つ の業 務 仕 事 と3 つ の専 門 職 仕 事 業 務 仕 事(operationalwork )とは,執 行 組 織 の そ れ ぞ れ の 階 層 に お い て, 各 従業 員 が 担 当 す る開 発 , 製 造 , マ ー ケ ティ ング に関 す る役 割 を い う。 た と えば, 社 長 の業 務 仕 事 とは, 市 場 の情 勢 に応 じ て, 執 行 組 織 さ ら に は 運営 組 織 全 体 を変 革 す る こ とで あ り, あ る 製 品 やサ ービ ス を開 発, 生 産 , 販売 す る た め に, 直 属 の 部 下 を通 じ て 全従 業 員 に仕 事 を配 分 す る こ と に ほ か な らな い。 (D )一開 発 (Development ) とは,現 在 の あ るい は潜 在 的 な 市 場 の 需 要 を満 た す た め の, 新 し い製 品 や サ ービ スの創 造 に関 連 す る機 能 で あ る。 (M )一製 造 (Manufacturing ) とは,製 品だ けで な くサ ー ビ ス の生 産 に関 す る原 材 料 の 調 達 ・ 購 入 ・ 貯 蔵 か ら製 品 へ の加 工 , 市 場 へ の 発 送 に至 る す べ ての 過 程 に関 連 す る機 能 で あ る。 (Mk )− マ ー ケ テ ィ ン グ (Marketing ) あ るい は 販売 (Sales ) は, 販売 店 や 顧 客 との接 触,市 場 調 査 に よ る需 要 の判 定, 広 告 や 営業 な ど の業 務 を 通 じ て の市 場 へ の 働 きか け に関 連 す る機 能で あ る。 さ ら に,製 品 あ る い は サ ー ビ ス の開 発,製 造 ,マ ー ケ テ ィ ング といっ た業 務 仕 事 に は 次 の よ う な3 つ の 次元 が あ る。
(英 国) グレ ー シャ ー金属株式会社 の経営政 策書にみるウク レフレ ッド・ブ ラウ ンの組織概 念73(P) 一 組 織 開 発 や 人 事(personnel) に 関 す る 仕 事(T) 一 生 産 に 用 い ら れ る 技 術(techniques) ・ 情 報 に 関 す る 仕 事(Pr) 一 業 務 の 時 機, 計 量 化, 均 衡 化 と い っ た プ ロ グ ラ ミ ン グ(programming) に 関 す る 仕 事 こ れ は , 業 務 仕 事 を 支 援 す る 活 動 一 人 事 部 門 , 生 産 技 術 部 門 , 生 産 管 理 部 門 な ど に 該 当 す る も の ー で , 専 門 職 仕 事(specialwork) と 呼 ば れ る も の で あ る6)。 3 。執行組織 にみ る業 務仕 事 と専門職仕事 の関係 上述 したよ うに, グレ ー シャーで は執行組織 を3 つ の業 務仕 事 (開発・ 製 造・マー ケティング ) と3 つ の専門職仕事 (人事 ・技 術 情報 ・プ ログ ラミン グ)に区分 し,こ れを組合 わせた9 つの仕事 を5 つの 階層 に割 り当 ててい る。 そこには, 当然 ,業 務仕事 と専門職仕事 において,職 制上 上司 (経営 ・管理 ・監督 者) と部下 の関係 がみ られる。 第3 図 は業 務仕 事 と専門 職仕事 の関係 を職制 (指揮 ・命令系 統)面で 描 い た もので あ る.A ,B,C は製品 やサ ービ スの開発,製造 ,マ ーケ ティング(あ るいは販売)に関する活動の全体あるいは一部を担当する業務管理者(operationalmanager ),い わゆ るライン管理者であ り,AS,BS,CS は それぞ れの業 務管 理者 に特 定 の専 門的 知識 に基 づ いて助 言・支援 す る専 門 職(specialist)であ る。B はA の直属 の部下 (immediatesubordinate )で あ り,c 以下 の職 制上
の従業員 をA の直接 の配下(immediatecommand )とい う。またA を上 司 と
す る職制 とは 異な る職 制 を含 めて全体 の配下(extendedcommand) とい う。 専門職AS は管 理者A と同意 した政策を実行 している限 り,Bに対 してスタ ッ フ として指示 を与 えな ければな らない。専門職AS は管 理者B の専門職で あ るBS を専門面 か ら教育 す る責 任があ る。こ うした関係 か ら,AS はBS に対 して, またB はBS に対 して一 部管 理者 としての役割 を果 たす こ とに な る。 こ うした 関係においてAS をBS の専門上 の共同管理者(specialistco-manager ).またB をBS の業務 上 の共同 管理 者(operationalCO-manager )とい う。したがっ て,AS はB と協議 し てBS をB の専 門職 として任命 した り,BS の仕 事 を評価 し なければ な らない。BS は専 門職 レしてB に助 言を与 えた り,c がB の政策 を確 実 に遂行で きるよ う支援 しなけ れば ならない≒
第3 図 グレーシャーの執行組織にみる管理者と専門職の関係 ヤ  ̄ ̄ ̄ ̄"  ̄゛' ̄ ̄指 定 限 界__ … 。。… … … 仁 郷 叫 号 | 裁 量 の 行 使I (board )r -゛― 指 定 二JI!C す 几 ユ 裁 量の行使(managingdirector)r リ 二 二 … よ う | 裁量の行使 業 務 部 門 (generalmanager) r  ̄ ゜‘ 部 門 管 理 者(departmentalmanager) 開 発(D) ・製 造(M) ・ マー ケ ティン グ(Mk) あるいは販 売(S) 職 制( ラ イ ン) 管 理 職 −−− 「 | −−− 11 −I1 − ︲I 専 門 職 部 門 専門 職 管 理 者(specialistmanager) 人 事(P) ・技 術 情 報(T) ・ プ ログ ラミング(Pr) (operationalmanager) | 助言・ト ビス・支援の提供 専 門 職(specialistmanager) .__..--..---, 一一一一-一一一一-→ 業 務 上 の 共 同 管 理 者 / ←8 5 11 −111 −11 ︲111 ︲11 ← -_.____.__-..._._._._...-.--- → | イ 皿 宋ff ” ノI コ 専門上の 共闘 理者 専門上の 共敗 理者 管 理 者 の 要 望 に よ る 専 門 職 部 門 か ら の 配 属 ・ 一 時 的 転 属 -・ 1 ︲ ︱ ︲ −1 − ︱ ︱ ︲11111 1 ︲4 − −1
(英 国) グレ ーシャ ー金属株式会 社の経営政策書にみ るウィルフレ ッド・ブ ラ ウンの組織概 念75 〔 注 〕1) ブ ラ ウ ン は, 執 行 制 度(executivesystem) と 執 行 組 織(executiveorganization) を 同 義 と し て 用 い て い る 。Brown,ExplorationinManagement,p.289.2) た と え ば , フ ァ ヨ ー ル(Fayol,H.) は , 企 業 活 動 を 技 術 ・ 商 業 ・ 財 務 ・ 保 全 ・ 会 計 ・ 管 理 と い っ た6 つ の 機 能 に 分 け , 管 理 的 機 能 を 中 心 に 据 え そ の 他 の 機 能 を 並 列 的 な 関 係 に 位 置 づ け た 。 こ の 企 業 活 動 は 事 業 内 容 の 複 雑 性 や 規 模 の 大 き さ に 関 係 な く , ど の よ う な 企 業 に お い て も 遂 行 し な け れ ば な ら な い 本 質 的 な 機 能 で あ る 。Fayol,H.,Administration/ndustrielleetGenerale,Dunod,1981,pp.2,10-11. 一 方 , ブ ラ ウ ン も 軍 隊 で の 専 門 職 を 例 に 挙 げ , 民 間 企 業 と 公 的 企 業 の 比 較 に お い て , 人 事 , 技 術 情 報 , プ ロ グ ラ ミ ン グ と い っ た3 つ 専 門 職 仕 事 の 普 遍 性 に つ い て の 説 明 を 試 み て い る が , そ の 妥 当 性 に つ い て は は な は だ 疑 問 で あ る 。 彼 に よ
れ ば , 軍 隊 に は ①Administration( 行 政) ,②Quartermaster( 補 給) ,③General( 参 謀) と 呼 ば れ る3 つ の 専 門 職 仕 事 が あ る と い う 。 ま ず ① は , 募 集 , 訓 練 , 配 置 ,給 与 , 行 政 , そ し て 組 織 な ど に つ い て の 特 別 な 知 識 を 必 要 と す る 仕 事 で あ り , 民 間 企 業 の 人 事 ・ 総 務 部 門 や 政 府 関 係 機 関 の 事 業 所(establishment) 部 門 に 相 当 す る 。 次 の ② は , 宿 舎 の 割 当 て , 糧 食 , 被 服 , 燃 料 , 運 輸 な ど に か か わ る 仕 事 で , 民 間 企 業 に お け る 仕 事 の プ ロ グ ラ ム の 進 行 と 時 機 に か か わ る 仕 事 に 相 当 す る 。 最 後 の ③ は 用 語 と し て は か な り 曖 昧 で は あ る が , 戦 闘 方 法 , 戦 術 ・ 戦 略 , 武 器 の 使 用 方 法 な ど に か か わ る 仕 事 で あ り , 民 間 企 業 の 技 術 ・ 情 報 に か か わ る 仕 事 や 公 務 員 の 組 織 ・ 作 業(Organization&Methods) 部 門 の 仕 事 の 一 部 に 相 当 す る と い う 。Brown,Organization,pp.109-110 。 〈 各 種 組 織 に み る3 つ の 業 務 仕 事 の 次 元 〉 軍 隊 民 間 企 業 公 的 企 業 A 行 政Q 補 給G 参 謀 P 人 事Pr プ ログ ラ ミ ン グT 技 術 E 事 業 所 ?O 組 織 ・ 作 業 3) ブ ラウンは,会計仕事を業務仕事や専門職仕事のいずれにも含 まない理由 とし て,会計機能が会社業務 と関連 して専門職業的役割を果 たしていることを挙げて いる。すなわち,会計仕事に従事する者は,直属の上司だけで なく,取締役会さ らには公的行政機関にまで その報告義務を負うといった責任関係がその他の業務 仕事や専門職仕事 とは異な るため,あ えて業務あるいは専門職の仕事 に含めなか
つ た とい う ので あ る。Brown,Organization,p.l32.Brownetai.,op.ci た,pp.17(ト172. 前 提 書,239-240 頁 。 +4 ) 執 行 組 織 は , ジ ャ ッ ク ス の 裁 量 の 時 間 幅 概 念 を 適 用 し5 つ の 仕 事 水 準 に 区 分 さ れ た 。5 )Brownetal.,op.cit,pp.164-167. 前 掲 書,231-234 頁 。こ れ に つ い て の 記 述 は , 「 経 営 者 教 育 」(ManagementTeaching )と い う小 論 の 中 に み ら れ る。そ の 目的 は , 仕 事 を10 の 範 躊 に 分 類 す る こ と に よ っ て , た と え ば ビ ジ ネ ス ス ク ー ル な どで 経 営 者 教 育 ・ 管 理 者 訓 練 に 役 立 つ よ う に ,仕 事 の 機 能 ・ 次 元 に 細 分 化 す る こ とで あ っ た 。 な お, マ ー ケ テ ィ ン グ 機 能 (Mk ) とい う 名 称 は ,ブ ラ ウ ン の そ の 後 の 著 作 の 中 で 使 わ れ た も の で , 同 上 書 で は 販 売 機 能 (S ) と な っ て い る。6 )Brown,Organization ,pp.60-65.7 )Ibid.,p.125. Ⅲ 。 執 行 制 度 に み る 専 門 職 仕 事 し1. 専 門 職 の 役 割 内 容 ブ ラ ウ ン の役 割 概 念 ぱ, グ レ ー シャ ー の 執 行 組 織 にお い て具 体化 さ れた が, と く に業 務 仕 事 を 人 事 (P )。 技 術 情 報 (T ),プ ログ ラ ミ ン グ (Pr ) といっ た3 つ の 次 元 (側 面 ) とで 組 合 せ た とこ ろ に その 特 徴 が あ る。 製 品 や サ ービ ス の 開 発 (D ), 製 造 (M ), マ ー ケ テ ィ ン グ (Mk )業 務 を 担 当 す る管 理 者 や従 業 員 が,P ,T,Pr の い ず れか の 次元 で 助 言 や 支 援 を 必 要 とす る場 合 に専 門 職 役 割 が 導 入 さ れ る。専 門 職 は, その 役 割 を集 合 的 に配 置 し た専 門 職 部 門 か ら, 配属 あ る い は一 時 的 な 転 属 といっ た 手 続 きを 経 て, 業 務 上 の共 同 管 理 者 の 下 に任 命 さ れ る。 専 門 職 の役 割 は, 自 ら の専 門 知 識 を 必 要 とす る管 理 者 を支 援 す る こ とだ が , 具 体 的 に は(1)助 言 ・ サ ービ ス提 供 責 任, (2 )スタ ッ フ 責 任 , そし て(3)専 門調 整 責 任 の3 つ の 責 任 を管 理 者 に対 し て負 っ て い る1)。 (1) 助 言 な らび にサ ービ ス提 供 責 任 こ れ は 自 分 の上 司 で あ る管 理 者 (あ るい は業 務 上 の 共 同 管 理 者 ) に対 し て 専 門 的 な 助 言 ・ サ ー ビ ス ・支 援 を与 え る責 任 で あ る。 管 理 者 が専 門 的 な助 言 ・サ ー ビ ス・ 支 援 を受 け 入 れ た場 合 に は, そ の 実 施 な らび に 結果 は 当 該 管理 者 の責 任 とな る。(2 ) スタ ッ フ 責イ壬 こ れ は 管 理 者 に代 わっ て権 利 を行 使 し, 指 示 を 出 す こ とで , 特 定 分 野 に お
(英国) グレーシャー金属株式会社の経営政策書にみるウィノレフレッド・ブ ラウンの組織概念77 け る 当 該 管 理 者 の 直 属 の 部 下 の 仕 事 を 調 整 し, 管 理 者 を 支 援 す る 責 任 で あ る 。 ス タ ッ フ 責 任 を も つ 専 門 職 は , 自 ら の 専 門 分 野 お よ び 管 理 者 が 設 定 し た 委 任 事 項 の 範 囲 内 で , 自 分 の 管 理 者 の 直 属 の 部 下 に 対 し て , 当 該 管 理 者 に 代 わ っ て 判 断 を 下 し , 指 示 を 出 す た め の 権 限 を も つ 。 一 方 , 専 門 分 野 に 関 す る 指 示 を 必 要 と す る 者 は , ス タ ッ フ 責 任 を 負 っ て い る 専 門 職 に 相 談 す る 。 た だ し , 自 分 が 受 け 入 れ ら れ な い と 判 断 す る 指 示 を 受 け た 場 合 に は , 当 事 者 同 士 で 協 議 す る が , 直 接 管 理 者 に 問 題 を も ち 込 む こ と もで き る 。(3) 専 門 調 整 責 任 こ れ は 異 な る 階 層 で の 専 門 職 の 仕 事 を 調 整 す る た め に 以 下 に 示 す 機 能 を 実 行 す る 責 任 で あ る 。 ① 専 門 的 指 針 : 専 門 職 が 他 の 特 定 の 従 業 員 に 助 言 と 指 針 を 与 え る 義 務 を 負 っ て い る 場 合 。 ② 検 査 : 従 業 員 が 自 分 の 専 門 職 の 分 野 で あ る が , 直 接 職 制 上 の 統 制 下 に な い 仕 事 の 効 串 性 に 関 し て , 再 検 討 し , 評 価 し , 報 告 す る よ う 指 示 さ れ る 場 合 。 ③ 配 属 あ る い は 一 時 的 転 属 : 配 属 と は , 専 門 職 を 専 門 職 部 門 か ら 管 理 職 の 下 の し か る べ き 地 位 に 配 置 転 換 す る 過 程 で あ る 。い ま だ 一 時 的 転 属 と は , 管 理 者 の 下 の 地 位 へ の 専 門 職 の 臨 時 的 な 配 置 転 換 で あ る 。 2. 専門 職管 理者の責任事項 人 事・技術 情報・プ ログ ラミン グ に関す る専門知識 ・技術 を用 いて, 製品 あ るいはサ ービ スの開発・ 製造・ マー ケテ ィング といっ た会 社の業 務仕事 に 対 して助言, サービ ス, 支援 す る役 割 を担っ てい るの が専門 職( ならび に専 門 職部門)であ る。 ここで は,3 つ の専門職 分 野の役割担 当者の責任内容 に つ いてみて みよう2)。 (1) 人事 部門 (P )の役割 担 当者 の責任 内容 人 事部門で は, 執行制度 の組織化 , 役割担 当者の採用, 配 置転換,教 育訓 練, 労働条件 (賃金や労働時 間) な ど, い わゆ る組織開 発や人事管理全般 に か かわる仕事 に対 して責任 を負っ てい る。 現行 の執 行制 度や人員配置が会 社 目的 の達 成 に役立っ てい るか, 現行 の執行 制度 が会社 を取 り巻 く環境 にう ま く適応 してい るか, 執 行制度 が将 来 のニ ーズを考慮 した役割 シ ステ ムになっ て いるか といっ た こ とを継 続的 に検 討 す る必要があ る。 具体的 には次 のよ う
な役割 を果 たさ な ければな らない。 ① 役割 の仕 事 内容 の分析 と,役割 に含 まれる仕事 水準 の測定 。 ② 役割 に含 まれ る仕事 水準 と,伸 長す る個 人の 能力 を考慮 し た体系 的な賃 金支払 い方法 の開発。 \ ③ 仕事水準 と個 人能力 を均 衡 (い わゆる適正配 置) さ せ るこ とを目的 とし た募集・ 選抜・ 訓練・昇進 の方法 につ い ての継続的 な検 討。 ④ 役割担 当者 に対 する継続的 な評価 と, 新 しい人 材の 発掘 と将来 の人事計 画。 ⑤ 現行 の組織, 役 割間 の仕事 の配分, 役割担当者 の業 績 につ い ての継続的 な情報 の収集。 ⑥ 仕 事 に関 す るプ ログ ラ ムの変更,生 産技術, 法的 な要求 な どの変更 に伴 う人事政 策 の変更。 ⑦ 会 社の基 本政 策 や労使 間協定 の変更 に伴 う労働条 件 の変 更。 ⑧ 人 事専門職 の配属, 各専門職 の責任 の遂行の促進化 と明確化 の維持。 (2) プ ログ ラミング 部門(Pr )の役割担 当者の責任 内容 プ ログ ラミング 部 門で は, 製品あ るいはサ ービ スの開 発・製 造・マー ケテ ィング 活動 の時機, 計 量化,均 衡化 を図 り√ その情報 を管 理者 に提供 するこ とを目的 としてい る。具体的 には次 の ような役割 を果 たさ なけ ればな らない。 ① 製 造活 動 につ い ての(会 社 ならびに部門) 目標 の設定。 ② 販売 につ いての 目標 の設定。 ③ 経営資 源の有 効活 用・適正配分 につ いての目標 の設 定。 十 ④ 現行組織 の継 続性 の確 保 と将来の活動計 画の立案。 ⑤ 各業 務 活動の最 適 な均衡 水準 と,仕事 の最 適 な組合 わせを達成 す る技法 の開発。 ⑥ 業 務全体 活動 の均 衡 を管 理す るの に役立つ技 法 の開 発。 (3) 技術部門 (T ) の役 割担 当者 の責任内容y 技術 部門で は, 製 造技法 を開発, 修正,利 用す るた めの政策 を遂行 し, そ の情報 を管理 者 に提供 す るこ とを目的 としてい る。 具体 的 には次 の ような役 割を果 たさ なけ れば ならない。 ① 一 定の品質 水準で, 生産 高を最 適化 し, 費用を最小 化す る新 しい生産技 術 や方式の 開発。 ② 一 定の品質 水準で, 生産 高を最 適化 し, 費用を最小 化す るの に適した材
(英 国) グレ ーシャー金属株式会社 の経営政策書 にみるウィ ルフレ ッド・ブ ラ ウンの組織概 念79 料 の 明 細 書 の 作 成 。 \ ③ 限 ら れ た 経 営 資 源 の 範 囲 内 で 生 産 技 法 を 最 適 化 す る 方 法 の 開 発 。 ④ 最 小 費 用 で 最 適 な 生 産 物 を 作 り 出 す こ と が で き る よ う な 人 材 教 育 訓 練 方 法 の 開 発 。 ⑤ 限 ら れ た 経 営 資 源 の 範 囲 内 で の 品 質 , 精 度 , 製 品 な ど の 最 適 な 基 準 の 設 定 。 ⑥ 限 ら れ た 経 営 資 源 の 範 囲 内 で 生 産 で き る 製 品 の 範 囲 の 設 定 と , 新 製 品 を 生 産 す る た め に 必 要 な 技 術 や 設 備 の 開 発 。 ⑦ 会 社 の 技 術 的 能 力 の 維 持 と 確 保 。 〔注〕1) グレ ーシャ ーの「組織 の概念の実施 を統制 す る管理政 策」(ManagerialPolicyGoverningImplementationofOrganizationalConcepts )に関 す る文書の「AA . 定義」で は,専 門職 の役割 は(a )助 言,(b) サービ ス,(c )スタ ッフ,(d )専門 調整の4 つ に分 類 さ れてい るが,内容的 に(a )と(b )は同一 に括 れるため,本文で は3 つ に区分 した。2 )Brown,Organization,pp.119-123. IV. グレー シャ ーの代議員制 度1. 定義 と内容 代議員制度(representativessystem) は,簡 単 に言 えば組 合活動 システ ム のこ とで あ る。 従業員 は,上 述 した純粋 に業 務の 遂行 や事業 目的 の達成 を目 的 とした執 行制 度だ けで なく, 当該階層 か ら職員委 員 や職場 委員 を選出 し, 個 人あ るい は集 団 としての意見や不平 を自分 の代 表 者 を通じ て, 企業 の一 般 政 策に反映 させ るこ とを目的 とした代 議員制度 の2 つ に所属 してい る1)。この 代議員制度 には,執 行制度で は個 人的 に企業 や上 司 とのコ ミュニ ケーション が取 れない場合 の一 種の安全弁あ るいは討議 の場 を 要求 す る とい う機 能があ る2)。 2. 代議 員 の選出 過程 代議員制度は,従業員,代議員, そして代議委員会(representativecommittee) か らなる。 それは 第1 図で示 した ように,(1) 社長 を頂 点 とす る経営幹部か ら
な る全般経 営者,(2) 事業 部長,工 場長, 部門管 理者, その 他上 級職 員 か らな る1 等職員,(3) 部門作業 場 長,上 級書 記職 員, その他上 級技術 ・事務職員 か ら なる2 等職員,(4) 事務 ・書記職 員 とその監督 者,工場 内 の監督 者, 技術 者 か らなる3 等職 員, そして(5)機械 作業 員・人夫 ・職 人 から なる現場労 働者(時 間給作業 員) の5 つの階層で 構成 さ れてい る。 また1 ∼3 等 まで の職員層 は それぞれの代 議員 組織 として職員委 員会 を, 現場労働者層 は職場委 員 からな る工場 委員会(workscommittee) を もう てい る3)。代 議 員 は,ふ つ う各工場 内 にあ るいくつ かの選挙 単位(electoralunit) または選挙区(constituency) から選出さ れ る。代議員 とな るた めには, 当該選挙 単位 にお いて有 効投票数 の3 分2 以上 の賛成 が必要で あ る。 選挙 単位 は, 運営上 の都合 によ りい くつ かの選 挙区 に区分 され る。 もし当該 選挙区 が広範 囲の場合 にはさ らに小選挙 区(sub-constituency) へ と分 割 す るこ ともで きる。1 つの工場 の選挙 単位 の範囲 は当該工 場の工場 協議会 が決定, 承認 す る。 また全 選挙区の範 囲 は当 該 選挙区 に置か れてい る代 議 委員 会 が決定 す る4)。 十 各 選挙 単位 に設置 された代 議 委員会 は, 有権 者で あ る従業 員の最大利益 を 目的 とし,従業 員や管理 者 か ら事件処 理の要 請があっ た場合 には, で きる限 り迅速 に委員会 を開催 しな け れば な らない。 また委員会 は, 経営者 の政策 の 遂 行や解釈 につ いて疑 問 や見解 の相 違 が生じ た場合 には, 従業 員の最大 限の 利益 を配慮 した結論を下 さ なけ れば な らない。 3. 工 場委員会 の管理規 定 = 時 間給作業 員 か ら選出 さ れた職 場委員 は工 場委員会 を構 成 す る。 この委員 会 ぱ, ①職場委員会 と工 場 協議会 との円滑 なコミュニ ケー ションを図 る, ② 従業 員 と経営者側 とのコ ミュニ ケー ション を図 る, ③従業 員 と会社 にかか わ る事業 につい ての協議機 関 とな る, そして④能串 の向上 と従業員 の安心 を確 保す るため に建設的, 協同的 な手段 を提供 す る, といっ た機 能を もち, 委員 会 の幹 部であ る議長, 副議 長, そして書記は,運営委員会(steeringcommittee) を通じ て,工 場委員会 や各種 小委員会 の仕 事 を調整 す る機 能 を果 たす こ とが 期待 さ れてい る5)。工 場委員会 の全構成員 ぱ,議長 と書記 を除 いて任期 は1 年 間で あ る。 また止当 な理 由 な くして欠席 したメンバ ーは, 辞任 した とみなさ れ る。 議長 は毎 年8 月31 日以 降 に開催 され る最初の会議 におい て,工 場委員 会 の構 成員力べ 選出さ れ, 毎年1 月1 日か ら\tヵ月 間 その職 に就 き再 選 は可
(英 国) グレ ーシャー 金属 株式仝社 の経営政策書に みるウィ ルフレ ッド・ブ ラウンの 組織 概念81 能 で あ る 。 副 議 長 は2 月 の 最 初 の 会 議 に お い て , 委 員 会 の 構 成 員 の 互 選 で 決 め , 任 期 は1 年 間 で あ る 。 そ し て 書 記 は 工 場 の 組 合 員 の す べ て に 被 選 挙 権 が あ り , 任 期 は2 年 間 で あ るQ 〔注〕1 )Brown,etal. ,op.cit,p.197.前 掲書,274-275 頁。 ご2 )Brown √ExplorationinManagement,p.2O7.3 )Jaques,MeasurementofResponsibility,pp.17-18. 前 掲書,45-47 頁。4 )CompanyPolicyDocument,F.I.1.-1.4.5 )Brown,Organization,p.176. V 。 グレーシャー の立 法制度1. 定義 と内容 立法制度(legislativesystem )は,業務執行 者,代議 員, 株主 ,顧客 とい っ た関係集団間 の意見 や感情 の調整 を図 るこ とを目的 とした もので あ る。 次 頁 第4 図で示 した よ うに,従業 員 は 自分の利益 を守 るた めに代議 員 を選出 し, その組合活動 を通 じ て, また株主 は自分 の代 表者を取 締役会 に送 り込 むこ と で, そして顧客 は不特 定多 数で はあ るが販売 組織を通 じて,業 務 執行者 に圧 力をかけ るこ とがで きる。 こ れら3 つ のシ ステ ムは√互 いに働 きかけ るこ と によって, 会社 の業 務 を最 適 な効率で 遂行で きるような法 律や政 策を作 り出 す。また,株主,取 締役会,顧客,工 場協議会,代議員 といっ た権 力集団 は, 執 行制度 に働 きかけ るこ とで, 従業員 が担当すべ き業 務仕事 や 課業 の内容 を 規 制す る立法的 な枠 組 みを制 定す る1)。具体的 にはグレ ー シャーで は,工場 協 議会の議 事録であ る経営政 策 書が これ にあ た る。 こ れは「株主 と従業 員 が, 個人的 またぱ集団的 に,会 社 と従業員 が望 む最大利益 とな るよ うな政策 を立 案 するこ と」2)を究極 の目 的 とす る もので, 従業 員や会社 に関 す るあ らゆ る事 項 を取上 げ, なお その決議 は原則 として全会一致 の決定 によ らな ければ な ら ない。そこ には「協議 会 が全会一 致 に達 す るまで 慎重 な る討議 を継承」3)して まで も労使 双方 に最 大 の利益 を もた らせよ うとす る意図 が含 まれてい る。 こ の ように,政 策 は全会 一致 の原則 にしたがっ て決定さ れ, もし不一 致の場合 には決定は保留 さ れ る。 2 。政策 の立 案過程 グレ ーシャーで ぃ う ところ の政 策(policy)とは,協議会 が採 択 した か管理
者が制定 し た文 書であ り, 特定 の立 場 にあ る従業 員 に対 して求 められる行為 を定 めた慣 行 もし くぱ慣 習であ る4)。換 言す れば, 運営組 織全体 を統 制す る経 営政 策 は, 社 長 と工場協議会 の代議員 だち との協議 によっ て決定 す るか, こ れ まで の慣例 や慣習 や先例 にしたが うこ とに な る。 また部門別 の政 策は当該 部署 の最 高責 任者 と代議員 が協議 して決定 す る5)。すべて の従業 員 は, 執 行制 度 や代議 員 制度のいず れかを通じ て,現 行政策 の修 正案 を提出 す るこ とがで き る6)。政 策立案 に際してぱ部門協議会 で予 備的 な討議 を経 た後, 拡 大協議会 で これを決定 す るこ とがで きるが7) 合意 に至 らない場合 で も協議会 の委員に はよ り上 級 の協議会 に その審理 を付 託す る権利 があ る8)。しかし,主 要な基 本 政 策 につい て最上 級の協議会で も合意 に達 す るこ とがで きなかっ た場合には, 社長 と全工 場 協議会の代 表 者 とで 構成 さ れる合 同会議 に 審理が付託さ れる9)。 協議会 は労 使の欲求 を最大 限に満足 す るよ うな政 策を 全会一致で 選択 す る よう努 め なけ れば ならない。だ が,現 行の政策で は審理 中の事項 を処理で き ない,あ るいは緊急の措 置を講じ なけ れば な らない場合 には, 全会一致 の決 定 を留保 して, 新 しい解決 案や妥協 案, さ ら にはいず れ か一方の決 定を受 け 入 れるこ ともあ る10)。 第4 図 政策立案にか かわる権 力集 団の 役割 AABB ≒BBAAAA; あ ら ゆ る 形 で 雇 用 階 層 に 影 響 を 及 ぼ す 現 行 の 法 律BB ; 雇 用 階 層 と 権 力 集 団 と の 相 互 作 用 に よ っ て 作 り 出 さ れ る 政 策 の 範 囲 資 料 出 所 :Brown,Organization,p.159.
(英国)グレ ー シャ ー金属株式 会社の経営政策書 にみるウィル フレ ッド・ブ ラウンの 組織概 念83 〔 注 〕1 ) ブ ラ ウ ン は , 当 初 ゛立 法" (legislatiou ) と い う 用 語 を , す べ て の 従 業 員 と 管 理 者 に 適 用 さ れ る 企 業 内 部 で の ゛法 律 ″ を 工 場 協 議 会 で つ く る と い う 意 味 合 い で 用 い て い た が ,「( 立 法 と い う 言 葉 の ) 用 語 法 を 私 は 間 違 っ て 使 っ て い た ら し い 」 の で , か わ り に ゛政 策 制 定 ″(policy-making ) と い う 言 葉 を 使 う こ と に し た と 述 べ て い る 。Brown,Organization,p.196,fn.2.2)CompanyPolicyDocument,A.3. ・ ・3)Ibid.,A.4. ニ4 )CompanyI ニ砿 ○Document,B.5)Ibid.,G.1.2-1.3.6 )Ibid.,G.1.3.7 )Ibid.,G.1.4 レ8 )Ibid.,G.2.7.9 )Ibid.,G.2.13.10 )Ibid.,G.2.2-2.3. Ⅵ。グレーシャ ーの上 訴制度1. 定義 と内容 上訴制度(appealssystem )は,工場協議会 とともに第2 次 大戦中 に設置 さ れた もので, 第5 図で示 したよ うに上 司の決定 に異議 のあ る部下が, よ り 高位の権威者 に訴 えるこ とがで きる制度の こ とであ る。 つ まり,従業 員 が, 上司が下 した賃金,昇 進, あ るいは雇用 に関す る重要 な決定 に不服 があ ると か,経営者に よっ てなさ れた決定 が会社 の政策 に反 す る と思 われる場合 に は, 順次よ り高位 の権威 (機 関・管 理者) に再 審査を請求で き る正 式 な訴訟手続 きのこ とであ る。 こ れは国 の法 律 と同様 に,会 社組織 にお いて も,事業 目的 遂行のための執 行制 度 とは別 に,不 公平 な取 り扱い に対 す る訴訟 手続 き とし ての上訴制度 が必要で あ る とい うこ とを意 味してい る。1961 年 には,個 人 と集 団 との上 訴の手続 き方法 や上 訴 に関連 す る各 階層 の 執 行者の役割の違 いが明確 化 さ れ, 翌62年 には, 裁定 者 も従来 の外部者 から 内部者へ と変更 さ れてい る1)。このよ うに,ロンド ン工 場の すべ ての従業 員 は, 管 理者の間違っ た指 示 や不公平 な評価 など, すな わち管理 者 の①政策書 の解 釈, ②当該事項 に関 す る解釈 と評価, そして③不公平 ,不 公正 な行動 に対 し て異議 があ る場合 には上 訴す る権利 を有 してい る。 とはい え,上 訴す る に先
立って,当該上司や管理者とその事項 について十分 に討議する必要がある。 上 訴中に同意をみた場合には管理者は上訴を打 ち切 るが,解決がつかない 場合には別の管理者によって上訴の内容 と目的についての事情聴取 が行われ る。上 訴人 と管理者の両者は,事情聴取を七 だ管理者の決 定に対して, さら により高位の管理者( 社長を含む) に訴える権利 も有している。 そして最終 的には,証人による証拠・証言の提出, その調査の後両当事者の出席のもと に上訴の決定が下されることになる。 その他,社長による決定に不満があ る 場合 にも代議委員会の運営委員会に諮問することがで きる2)。 2. 上 訴の段 階 とその過程 すべ ての従業 員 は,上司 の業 務上 の決定 や行動 が不公平 あ るい は不公正 一 た とえば協 定や政策 の条項 や精 神 に反 す る とか企業 の利益 に反 す るなどー と 考 える場合 には,しかるべ き機 関 に上 訴(appeal) す るこ とがで きる≒ また 代 議員 も自分 の有権者 に影響 を及ぼす と考 え るあ るゆ る問題 について同じ く 上 訴 す る権利 を もっ てい る几 上訴 を希望 す る者 は, まず最初 に,異議 を申 し 立 て,管 理・監督 者本人の直属 の上司 に訴 え出 る5)。 これを受 けた管理者 は, 現 行の政 策や規 定 に基づ い てで きる限 りすみや か に判断 を下 さなけ ればな ら ないが,それに先立 ち上 訴人に対 し て聴取 を 行 う6)。この聴取仝 には, 上訴人, もし必要 な らば助 言者, そして訴 えられてい る本 人 も出席 す るこ とが許 され てい る7)。上 訴 の判 決 は当事者双 方の面前で 下 さ れるが,いず れか一方 が判決 に不服 の場合 にはよ り上 級の管理者 に上 訴 す るこ とがで きる8)。最高管 理責任 者であ る社長 に よ る判決 が当事者双方 に受 け入 れ られない場合 には, 会社の 上訴裁判 所(companyappealtribunal) に審理 を付 託す るこ とがで きる9)。 いず れの場合 も,上 訴人 は判決 が下 さ れた当 日か ら3 日後 の労 働日が始 まる まで に上 訴の届 けを出さ なければな らない10)。 とくに政 策の解 釈 に関す る上 訴に対 して下さ れ た判 決は, 異議 が なければ, 運営組 織 全体 を統 制す る基 本的 な政策 とな る11)。ただ し当事者 の一 方が, その 判決で は政 策の解釈 が不十分 であ る と考 える場合 には, 当事者 は自分 の上司 か自分 を代 表 す る団体 のいず れかに√ し か るべ き協 議会 に対 し修 正案 を提出 す るよ う請願す る必 要があ る呪
(英 国 ) グ レ ー シ ャ ー 金 属 株 式 会 社 の 経 営 政 策 書 に み るウ ィ)V フレ ッド・ブ ラ ウ ン の 組 織 概 念85 第5 図 グ レ ー シ ャ ー に み る 上 訴 過 程 ●管 理 者の現 行政 策 の 誤った解 釈 ●管 理 者の政 策・協 定 に違 反 する指 示・命令 ●管 理 者 の不 公 平・不 正 な行 動 ●管 理 者 の不 公 正・不 正 な処 遇 上 司( 管 理・監 督 者) 聴 取 上 司 の 決 定 に 不 服 の 場 合 は よ り 上 位 に 異 議 を 申 し 立 て る
匹
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従 業 員(上 訴人) ① ③ ② 異議申立 て 判 決 ③ いず れか一 方 が 拒 否 上 訴 不 適 用 付 託 最終的な判決 要 請[亘 司
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聴 取 異 議 申 立 て を さ れ た 管 理・監 督 者 の 直 属 の 上 司 全国 仲 裁 裁 判 所 の 手 続 き 助 言[ ぶ]
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第6 図 上訴事項に対 する社長 の審 理結 果 1953年1月∼1954 年12月 1955 年 1956 年 1957 年 1958 年 上 訴人 個 人 16 9 7 8 7 集 団 合 計 4 - 1 5 1 20 9 8 13 8 上 訴人 の等級 時 間給作業 員 15 6 6 11 5 1 ∼3 等職員 合 計 5 3 2 2 3 20 9 8 13 8 審理結果 却 下 15 5 5 11 7 承 認 4 1 3 1 1 妥協案 1 3 - 1 -上 訴事項 解 雇 5 2 - 2 1 病気 欠勤中 の賃金 2 1 1 1 2 賃金の支払 い、費用等 11 2 2 6 1 代議員業務に費やした時間 1 - - - -女 子従業 員でも就くことが できる仕事の等級 - - - 1 -残業 の減少 - - - 1 -任命(専門職員の仕事を含む) 1 - 4 1 -選択休 日 - 1 - - -昇 格 - 1 1 - 1 貸付金 - 1 - - -降 格 - 1 - - -仕事 への不満 - - - 1 -退 職 - - - - 3 賃金水準 - - - - 1 資料出所:Brown,Organization,p.228.
(英 国 ) グ レ ー シ ャ ー 金属 株式 会 社 の 経 営 政 策 書 に み る ウ ィ ル フレ ッド・ブ ラ ウ ン の 組 織 概 念87 〔注〕1 )Brown,GlacierPeojectPapers,p.38. 前掲書,63 頁。2 )Brown,Organization,pp.221-226.3 )CompanyPolicyDocument,H.I.4 )Ibid.,H.L1. ニ5 )Ibid.,H.3.6 )Ibid.,H.2.3.7 )Ibid.,H.4.2.8 )Ibid.,H.3.1.9 )Ibid.,H.3.2.10 )Ibid.,H.3.5.11)lbid. ,B.5.l.12 )lbid.,B.5A. おわりに ブ ラウン が経営者 としで グレ ー シャー計 画″ とい う名の もとに, 自社 組 織 の再 編成 に取 組んだのは1948 年 のこ とで あっ た。 その背景 には,戦時中, 人手不足 対策 の結果 発生 した役職 と処遇 の乱 れの回復 とともに,適正 な能力 評価 に基づ く人員 配置 と公正 な賃 金支払 い制 度の確立 が, 戦後英国 の競争的 な市場環境 にあっ たグレ ーシャ ー にお いて, 強 く求 め られた からにほかな ら ない。 ブ ラウン は, 当時 (1950 年頃)英 国 の経営管 理思 想の支配的 テーマであっ たメイヨ ーイズ ム(Mayoism ),つ まり人 間関係 論 にその解決 の糸 口を求 めた。 その1 つ の方法 が労 使協調を目的 とす る工 場 協議 会 に よる経営参 加制度の導 入であっ た。 しかし, それによっ て労働 者 の不満 を解 消す るこ とはで きなか っ た。 それはグレ ーシャーが 当時 自動車 部品 とい うたぶん に競争的 な製品 を 取 り扱っ て いたこ とに起因す る。 市場 の需給 関係 によ り作業 量 がかなり変動 す るため, 繁忙期 には身体的疲労 が増 加 し, 閑散 期 に は雇用調整 の対象 とな る危機 が訪 れ るので は ない か とい う雇用 と身分 の保障 に対す る不安感をグレ ー シャーの現場労働 者は抱い ていた。 した がっ て彼 ら は労使協議 に対 して無 関心であ り, 職場 の雰囲気は次 第 に悪化 していっ た。 やがてブ ラウン は, 当時の英国 にお け る産業 民主化 の流 れには反対 しなか っ たが, 人間関係論的思 考 に批判 的 な態 度 を取 るよう にな る。 組織 にお いて
人間的側面 より もまず最初 に仕事的側面 の整備 が必要であ る とい う。 本来, 組織 の目的 とい う もの が「仕事 その ものが人 び との創造的 努力 の対 象 とな る よう,ものご とを整 え るこ と」1)にあった はず なのに,組織 と個 人の 目的 が一 致 しないか ら といっ て, 組 織の問題 に積極的 に取組 まず, 人 間の問題 にの み 目を向 け るのは,消極的 かつ短 絡的態度で は ない か とい うので あ る。さら に, 彼 は公式組織 の再 構築あ るいは制度化 なくしては組織 問題 は解決で きない と 考 えるようにな る。 公式 組織 の制度化 には, 従業 員 に明確 な準拠 枠 を堤供 す る とい う利点 があ る。 この た めには課業 の範 囲 とぞの限界 内で の自由裁量権 を明確 にしなけ れば な らない。 そこでブ ラウン は↓ 組織 目的 か ら合 理的七 割 り出七 だ役割 を管理 の基 本的 要素 として位置づ ける。 こ うした考 え方 は, 管 理を要素 に還元 して分析 しよ うとす るファヨール(Fayol,H. )の それ とは異 なっ てい る。 フ ァヨール は周知 の とお り管理 を ゛計画化, 組織 化, 命令, 調 整,統 制″ といっ た要素 に分析 す るこ とによって その質 を向上 さ せ よう とす るが,ブ ラウン ぱ管 理者 が働 く社会体あ るいは一組 の社会 シス テム その もの を整 備す るこ とによっ て管 理の質 を向上 させよ う とす る2)。 ブ ラウンの祖 織 に対す る関心 はすで に述 べたよ うに人 間関係 論 か ら課業 論 (taskapproach )へ, つ まり役割を担 当す る人間の問題 か ら役割 その ものあ るい は役割 関係 の問題 へ と移っ ていっ た。 とはい う もの の人 間の問題 を抜 き にして組織問題 を解決 す るこ とはで きない。 この仕事 と人 間の 問題 を同時 に 解決す るために,ブ ラウン は, 組織目的を達成 す る純粋 な役割 組織 を構築 す る一 方で,業 務執 行上 発生 す るいろいろ な個人的 ・集団 的 ストレ スを 防止, 軽減,解 消す る機 関 ・制度 を整 備し なければ ならなかっ た。 す な わち,業務 組織であ る執 行制度 の ほか に,代議員 制度, 立法制度,上 訴 制度 を設 けるこ とによっ て, 本来 の役割 シ ステ ムを合 理的 に機 能 させ よ う とし たのであ る。 とくにブ ラウン は, 能力, 満足感あ るいは公正感 といっ た個 人 の特 性 に適 した役割 を創 造 しよ う とした。 こうした役 割概念 に ゛裁 量 の時 間幅″ なる概 念によっ て理論 的根 拠 を与 えたのがジャック スで あ る。 ブ ラウン はこの概念 を適用 し, 個人 が担 当す る役 割 に必要 な能力 を測定し, 役 割 と能力 の不一 致 を是正 しよう とす る。彼 は,役割 を。た んに義 務(obligation)や責務 (duty ) とみるのてTはな く, そこに個 人の能力の成長 可能性 を みいだ す。 この個 人の 能力の有 効活用 こ そがブ ラウンの組織概念の根 底にあ る もので あ る。彼 は, 人間の能力の浪 費 こ そ最 も避 け なければ ならない と考 え る。その た めには「明
(英国) グレ ーシャー 金属株式 会社の 経営政 策書 にみるウィルフレ ッド・ブ ラウンの 組織 概念89 確 な 思 考 と 一 連 の 明 確 な 計 画 お よ び 政 策 が 必 要 で あ る と , 知 る べ き で あ る 。 非 公 式 組 織 の 理 論 は 無 為 無 策 の い い わ け に す ぎ な い 」3) と , 当 時 の 人 間 関 係 論 へ の 安 易 で, 無 批 判 な 傾 倒 の 風 潮 を 消 極 的 な 態 度 , 言 い 逃 れ と 喝 破 し て い る 。 〔 注 〕1 )Brownetal.,GlacierProjectPa )ers,p.145. 前 掲 書,205 頁 。2 ) 拙 稿 , 前 掲 書,1986 年,49 頁 。3 )Brownetal.,GlacierProjectPapers,p.162. 前 掲 書,228 頁 。