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会社法の検証 (2)

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会社法の検証(2)

土 井 勝 久

札幌法学第 23 巻第 2 号で、(資料)会社法の検証 (1)を掲載し たので、その続きを本号に掲載する。 日本の会社組織に関する法律について、明治 23 年に旧商法が初 めて創設され(明治 23 年 4 月 26 日法律 32 号第一編第六章公布、 商事会社等会社編については明治 26 年から大正 12 年まで施行)、 その後、明治 32 年に新商法が施行された(明治 32 年 3 月 9 日法律 48 号による公布、明治 32 年 6 月 16 日勅令 133 号による施行)。そ して、会社法が 2006(平成 18)年 5 月 1 日に施行されるまでの約 107 年間、度重なる商法改正と言う形で、会社組織に関する規定・ 法律が、適用・運用されてきた。 会社法の創設により、従来の会社編に規定する諸規定に比較して、 総ての規定が相当複雑となった。その為、教師側からは総ての規定 を網羅的に講義したいし、学生側からは興味の沸き且つ理解しやす い規定を中心に学習したいし、実務者側からは実務上のトラブルが 多く発生する清算・破産の組織再編等に力を入れて学習して欲しい 等の思惑があることに対して、教育という観点から、どの程度の内 容と構成の講義本が必要か、悩むところである。 このような中、法制審議会は、社外取締役や組織再編等に関する 会社法の 60 項目以上の大幅な追加改正を提案し、現在弁護士会等 に対しパブリックコメントを求めている。 そこで、改正事項も考慮しつつ、どのような講義本を作成するの が良いのか、会社法の内容と各規定を検証する。

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会社法概論 目次 第一編 会社法総論 第一章 会社の存在目的 第二章 会社の概念 第三章 会社の能力 第二編 株式会社法 第一章 株式会社の特徴 第二章 株式会社の設立 第三章 株式と株主権 第四章 株式の分割 第五章 株式の併合 第六章 株式の消却 第七章 株式譲渡 第八章 株式譲渡制限 第九章 新株予約権 第十章 株主平等の原則 第十一章 株券 第十二章 株主名簿 以上前号 以下本号 第十三章 会社の機関 第一節 総論 第二節 株主総会(決議の種類・総会招集・総会検査役) 第三節 株主提案権 第四節 議決権 第五節 株主総会の議事 第六節 決議反対株主の株式買取請求権 第七節 総会決議の瑕疵 第十四章 取締役 第一節 総論  

第一節 総論

一 概説 法人の意思決定や具体的な行動をする組織を機関という。 会社法が規定する必要機関(必ずしも常置・常設ではない)は、 (1) 会社の意思決定機関として株主総会(会 295)と取締役(会 326 Ⅰ)及び取締役会(会 327・362)等がある。 (2) 業務執行機関として取締役会設置会社以外の会社の取締役 (会 348 Ⅰ)及び、取締役会設置会社の代表取締役と業務 執行取締役がある(会 363 Ⅰ)。  その他、業務執行はしないが株式会社の業務執行をする 取締役と共同して計算書類等を作成する会計参与(会 374 Ⅰ)がいる。さらに、 (3) 会社を代表する代表取締役(会 349 Ⅳ)等がある。他方、 (4) 業務及び会計監査機関として監査役又は監査役会(会

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336・390)がある。その他、 (5) 臨時の機関として総会検査役(会 306、6 月前より議決権 制限のない総株主の議決権の 100 分の 1 を有する株主が裁 判所に請求する)と、会社の業務及び財産状況の調査の為 の検査役(会 358 Ⅰ、6 月前より議決権制限のない総株主 の議決権の 100 分の 3 を有する株主が裁判所に選任請求を する)がある。最後に、 (6) 創立総会における設立時調査役(会 94)と株主総会にお ける資料調査役(会 316 Ⅰ)等がある。 二 特別取締役による重要な財産等の処分について(会 373) 取締役会の決議(会 369 Ⅰ)に拘わらず、取締役会設置会社(除 . 委 員会設置会社)が、次の両方の要件(①取締役が 6 人以上いるこ と、②取締役の内 1 人以上が社外取締役であること)を具備した場 合、取締役会の形骸化を招かないようにする為に、取締役会の決議 により、会社法 362 条 4 項 1 号(重要なる財産の処分及び譲受)お よび同 2 号(多額の借財)について、予め選任した 3 人以上の取締 役(特別取締役)の過半数以上が出席する特別取締役会の過半数以 上の決議により、決定することが出来る(会 373 Ⅰ・Ⅱ)。 質問 1 取締役会の権限により、取締役会の決議事項を、株主総会 の決議事項に移行できるものがあるか。または、定款に規定するこ とにより株主総会の決議事項を取締役会の決議事項にできるか。 (ヒント) *取締役会非設置会社の株主総会では、決議事項に関し制限はない (会 295 Ⅰ)。したがって、取締役会非設置会社では、定款の規定 とは関係なく、取締役会で決定できる事項は株主総会でも決定でき る。 *取締役会設置会社では、株主総会の決議事項は会社法又は定款に 規定されたことに限定される(会 295 Ⅱ)。しかし、定款の内容に

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ついての制限又は条件はないので、取締役会が株主総会の決議内容 をその権限にしてもよいことになる。例えば、業務執行決定や株式 引受人の募集等である。 *他方、株主総会の専決事項(例えば、会 140 Ⅱの譲渡制限株式の 買い取り決定決議、会 297 Ⅰの少数株主による総会の招集、その他 会 309 参照)は、取締役、執行役、取締役会その他株主総会以外の 機関で決定する旨の定款の規定は無効となる(会 295 Ⅲ)。

第二節 株主総会(決議の種類・総会招集・総会検査役)

一 概説 会社法に規定する事項及び株式会社に関する一切の事項について 決議をすることができる(会 295 Ⅰ・309)。しかし、取締役会設置 会社においては、会社法に規定する事項及び定款に規定した事項だ けを決議するようにできる(会 295 Ⅱ)。議決権のある全株主が出 席するという意味で、株式会社の最高の機関であるが、万能の機関 ではない。 さらに、数種の株式を発行している場合、その種類株主総会は、 会社法が規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をするこ とができる(会 321)。 二 決議の種類 前記したごとく、会社法及び定款に規定するあらゆる事項を決議 できるが、具体的には、一般的な事項以外に、以下の事項等がある。 (1) 普通決議(会 309 Ⅰ)……議決権を行使することができる 株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当 該株主の議決権の過半数により決議する。  例、会計監査人選任・解任・不再任(会 329・339・338 Ⅱ)、役員の報酬決定(会 361・379・387)、剰余金の配当(会 454)、自己株式取得(会 156)、競業取引等の承認(会 356

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Ⅰ)等。 (2) 特別普通決議(会 341)……議決権を行使することができ る株主の議決権の過半数(3 分の 1 以上の割合を定款で定 めた場合にはその割合以上)を有する株主が出席し、出席 株主の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合その 割合以上)により決議する。  例、役員の選任・解任等の株主総会決議。 (3) 特別決議(会 309 Ⅱ)……議決権を行使することができる 株主の議決権の過半数(3 分の 1 以上の割合を定款で規定 した場合その割合以上)を有する株主が出席し、出席株主 の 3 分の 2(これを上回る割合を定款で規定した場合には その割合)以上により決議する。  例、譲渡制限株式の買取り承認決議(会 140 Ⅱ)、指定 買取人の指定(会 140 Ⅴ、定款で決議不要にすること可能)、 特定株主からの合意による自己株式取得(会 156 Ⅰ ・160 Ⅰ)、全部取得条項付き種類株式の取得(会 171 Ⅰ)、会社 が譲渡制限株式を相続人等に対し売渡し請求する場合(会 175)、株式併合(会 180 Ⅱ)、株式募集の募集事項の決定(199 Ⅱ)、募集事項の決定を取締役会に委任(会 200 Ⅰ)、譲渡 制限株式の割当(会 204 Ⅱ)、募集新株予約権の募集事項 の決定(会 238 Ⅱ)、取締役・監査役の解任(会 309 Ⅱ⑦)、 役員等の損害賠償責任の一部免除(会 425 Ⅰ)、資本の減 少(会 447 Ⅰ但し欠損額を超えないものを除く)、その他。 (4) 特殊決議(会 309 Ⅲ)……種類株式発行会社以外の株主総 会で、当該株主総会で議決権を行使することができる株主 の半数以上(定款でこれを上回る割合を規定した場合それ 以上)で、議決権の 3 分の 2 以上(定款でこれを上回る割 合を規定した場合それ以上)の多数で決議できる。   ①全株式の譲渡制限を新たに設ける為に定款変更をする場合   ②合併の消滅会社又は株式交換をする会社(公開会社)の対

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価が譲渡制限株式である場合における当該会社の吸収合併 契約又は株式交換契約を承認する場合(会 783 Ⅰ)   ③合併の消滅会社又は株式交換をする会社(公開会社)の対 価が譲渡制限株式である場合における当該会社の新設合併 又は株式移転を承認する場合(会 804 Ⅰ) (5) 特別特殊決議(会 309 Ⅳ)・・・・・・ 譲渡制限株式会社にお いて、株主ごとに異なる取り扱いをする為の定款変更(会 109 Ⅱ)。但し、当該規定の廃止の場合は除く。  この場合、総株主の半数以上(これを上回る割合を定款 で規定した場合それ以上)で、総株主の議決権の 4 分の 3 (これを上回る割合を定款で規定した場合それ以上)の多 数で決議する。 (6) 株主全員の同意を必要とするもの。   ①発起人、役員等、業務執行者等の責任免除(会 55・120 Ⅴ ・424・462 Ⅲ但・464・465 Ⅱ)   ②種類株式発行会社以外の会社が、一定の事由が生じたこと を条件として、全株式を取得する為の定款規定の新設又は 変更(会 107 Ⅰ③ ・110)   ③株式発行後、当該株式取得について、定款変更により特定 株主から取得する場合に、他の株主が特定株主に自己を加 えたものを株主総会の議案にする請求の規定(会 160 Ⅱ Ⅲ)を適用しない為の定款規定の新設又は変更(会 164 Ⅱ)   ④株主総会の招集手続(会 300 Ⅰ)、決議(会 319 Ⅰ)、株主 総会への報告(会 320 Ⅰ)等の省略   ⑤組織変更(会 776 Ⅰ)   ⑥種類株式を発行していない会社の合併、株式交換の対価の 全部又は一部が持分である場合(会 783 Ⅱ・804 Ⅱ)  以上の決議事項は、利益処分や報酬に関する決定以外、 殆ど株主総会の専決事項である(会 309)から、取締役会 等の他の機関に決議を委ねられない。もちろん、定款に「株

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主総会の決議事項」と規定した事項についても同様に他の 機関に決議を委ねられない。 *通常は取締役会の決議事項である会社の業務執行に関する事項を 株主総会の決議事項に出来るかについては、通説は、株式会社の本 質と法の趣旨に反しない限り、取締役会の権限を株主総会に委ねる ことは出来ると解する。 三 株主総会の招集 1 概説 招集権者は、会社法に別段の規定がある場合(会 297 Ⅳ裁判所の 許可を得ての招集)を除き、取締役である(会 296 Ⅲ)。 取締役会設置会社では取締役会が開催決定をし、それ以外の会社 では取締役の過半数で開催決定をする(会 298 Ⅰ・325・348 Ⅱ)。特に、 (指名委員会、報酬委員会、監査委員会等の)委員会設置会社であっ ても執行役に株主総会の開催決定権を代替させられない(会 416 Ⅳ 但④)。 株主総会の開催は、取締役会で招集決定をし、代表取締役が招集 手続きを取る。この手続きについては、委員会設置会社の場合代表 執行役に執行権を委任できる(会 298 Ⅳ・325・420)。 別段の規定とは、少数株主による招集の場合、つまり総株主の議 決権の 100 分 3(予めこれを下回る議決をすること可能)以上の議 決権を引き続き 6 ヶ月以上有する株主は、取締役に対して、総会の 開催目的と理由を付して、招集の請求ができる場合である(会 297 Ⅰ)。さらに、裁判所命令による招集、つまり少数株主による開催 請求が遅滞している場合(会 297 Ⅳ)もある。 2 招集時期・場所 会社は定款に規定する毎年・事業年度ごとの一定の時期に総会を 招集する。これを定時株主総会という(会 296 Ⅰ)。1年以内なら

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事業年度ごとに数回開催できる。ここでは、営業方針と報告、前営 業年度の決算、利益処分等の決議が最重要事項であり、その他、役 員改選等を決議する(会 438・439・454・329・339)。従って、こ の通常総会を決算総会とも言う。 その為、定時総会の招集通知には計算書類の添付(会 438)及び 監査報告書の謄本の添付が義務づけられている(会 437)。さらに、 電磁的招集による場合には電磁的方法による参考書類の提供もしな ければならない(会 435 Ⅲ)。 さらに、会社は定時総会以外に、何時でも株主総会を開催できる。 これを臨時総会という。この臨時株主総会では、旧商法と異なり、 計算書類等の決議ができることになった(会 441)。 また、総会の開催場所は、旧商法下では「会社の本店所在地、其 の隣接地、又は定款でその他の場所を開催地とすることができる」 旨規定されていた(旧商 233)が、会社法はこの趣旨の規定を削除し、 開催地については規定していないので、株主総会をどこで開催して もよいことになった(会 298 Ⅰ①)。 質問 2 株主総会の目的を記載しない招集ができるか。また、開催 地を本店所在地から離れた場所に出来るか。 (ヒント)取締役会設置会社と取締役会非設置会社の違いを条文か ら読み取ること。 会社法 298 条 1 項は、株主総会を招集する場合、取締役は株主総会 の日時や場所等を定めなければならないとする。そして、4 項では、 取締役会設置会社の場合に、これらを決定するのは取締役会である とする。しかし、同項は決定内容に具体的な規定はしていない。 3 招集通知  招集通知は、 (1) 公開会社の場合、株主総会・種類株主総会共に、書面(又 は株主の承諾を得て電磁的方法によって)で、会議の目的

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等を記載(又は記録)し、会日の 2 週間前に、議決権のあ る総ての株主に発送しなければならない(会 299 Ⅰ・325)。 (2) 非公開会社の場合、1 週間前まで、招集日を短縮できるが、 さらに非公開会社で取締役会設置会社でない場合には、定 款によりこれをさらに短縮できる(会 299 Ⅰ)。  株主総会は、会社法に別段の定めがある場合を除き、取 締役が以下の事項を決定し、代表取締役がそれを執行する (会 298)。この場合、①株主総会の日時と場所 ②株主 総会の目的(無ければ記載不要) ③出席しない株主の書 面決議を認める時はその旨 ④電磁的議決を認める時はそ の旨 ⑤法務省令で定める事項があればその事項 等であ る(会 298)。 質問 3 総会の招集に何故 2 週間の期間が必要か。この場合の 2 週 間の意味は何を意味するのか。  (ヒント)会社法 299 Ⅰ 質問 4 招集通知に記載されてないことを議題に出来るか。 (ヒント)会社法 298 Ⅰ ・299 ⅡⅢ ・300・303 Ⅰ(非取締役会設置 会社の場合株主に議題提案権は認められている。309 Ⅴの制約はな く、議題の追加は可能。315 議長権限参照) 質問 5 瑕疵ある招集手続きによる総会の決議の効力はどうか。 (ヒント)会社法 295 Ⅲ(株主総会以外の機関に決定させると、総 会専決事項の決定権譲渡の効力を否定するだけである。)・831 Ⅰ 質問 6 通知された「総会日時と場所」の変更ができるか。 (ヒント) 会社法 298 Ⅰ ・ Ⅳ、公開会社と非公開会社、及び利害関 係者との関係が考慮されなければならない。

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4 総会の延会と継続会 株主総会においては、招集通知をすることなく、延期又は続行の 決議をすることが出来る(会 317)。延期とは、総会が有効に開催 された後、議事に入ることなく総会を中断し、後日に総会を開催す ることである。また、続行とは、議事に入った後、審議中断後、後 日総会を再開することを言う。この場合には、招集手続きは省略さ れる。 5 全員出席総会 公開会社は、議決権を行使することが出来ない株主以外の株主に 対して、総会日より、2 週間前までに、通知書面を発しなければな らない。さらに、非公開会社においては定款により 1 週間又はさら に短く短縮できる(会 299)。 しかし、この手続きを欠く場合には、総会決議は取消しの対象に なる(会 831 Ⅰ①)か、又は不存在あるいは無効確認の対象となる(会 830)。但し、議決権を行使することの出来る株主全員が同意して総 会に出席した時は、当該総会における招集手続きを省略できる(会 300・325)。つまり、全員出席総会には、出席権のある株主の「総 会出席権」は招集手続きが無くても実現されたので、前記した事務 的な招集手続きを不要とし、招集手続きの簡素化を図ったのである。 しかし、書面決議又は電磁的方法による議決権行使を認めている 場合には招集手続の省略は原則としてできない(会 300 但)と規定 するものの、他方、取締役又は株主が株主総会の目的について提案 した場合、この提案に議決権のある株主全員が書面又は電磁的記録 により同意の意思表示をした時は株主総会の決議があったものとみ なされ、全員出席総会は有効に成立する(会 319 Ⅰ)。 全員出席総会において、取締役等の会社の意思決定者ないし業務 執行者が不在の場合(参考会 331 Ⅱ)、その総会は通常総会と同じ 形態を採るべきであり執行機関の排除は認められないと解されるの で、当該総会は(報告役員への通知欠如等を理由に)決議取消しの

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対象となるべきである(会 831 Ⅰ①)。代理人を含む全員出席総会 の場合、代理人はその株主総会での総てのことを代理しているので あるから、究極的な全員代理人による総会の場合でも、有効な株主 総会と解すべきである。 これに対して、かつては招集手続の無い株主の同意による全員出 席総会は単なる株主の会合であって、有効な株主総会ではないとし た解釈があったが、もはやこの解釈は採られていない。これは、一 人会社における有効な株主総会の成立から敷衍されたものである。 四 総会検査役(会 306) 株式会社又は総株主(株主総会で決議事項の全部に議決権を行使 できない株主を除く)の議決権の 100 分の 1(定款でこれを下回る 割合を規定した場合その数)以上の議決権を有する株主は、招集の 手続き又は決議方法を調査させる為に、総会に先立ち、裁判所に検 査役の選任申立をすることができる。 公開会社又は非公開会社共に、取締役会設置会社の場合、総会の 決議事項とは「株主総会の目的事項」を意味する。さらに、公開会 社で取締役会設置会社の場合の「議決権を有する」とは「6 月(定 款でこれを下回る期間を規定できる)前より引続き総株主の議決権 の 100 分 1 以上を有する」と言う意味である(会 306 Ⅱで会 298 Ⅰ②)。 検査役は、必要な調査を行い、その調査の結果を記載又は記録し た書面又は電磁的記録により、裁判所に報告しなければならない(同 Ⅴ)。 裁判所は、調査報告を聞き、必要がある時には、取締役に対して 株主総会の招集及び株主に調査結果を通知することを命じなければ ならない(会 307 Ⅰ)。この場合、取締役はその調査報告の内容を 株主総会で開示しなければならない(会 307 Ⅱ)。そして、取締役 及び監査役は総会検査役の調査報告の内容を調査し、その結果を裁 判所の開催命令による株主総会に報告しなければならない(会 307 Ⅲ)。

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第三節 株主提案権

一 概説 株主は、一定の事項を株主総会の会議の目的とすべきことを請求 することができる(会 303 Ⅰ)。しかし、取締役会設置会社におい ては、多数の株主が予定される為、少数株主に議題又は議案の提案 権(議題提案権と追加提案権)を付与することにした(会 303 Ⅱ)。 この確認の為に、、株主又は少数株主は、取締役に対して、総会日 の8週間前(定款でこれを下回る期間にすることも可能)までに、 総会の目的である事項について、当該株主が提出しようとしている 議案の要領を株主に通知することを請求することができる。つまり 招集通知等に記載されているか否かの確認をする為である(会 305 Ⅰ)。 会社が株主総会の開催者であることから議題は会社側が準備する ことに対して、株主権保護のための例外である。 公開会社で取締役会設置会社の場合、6 月(定款でこれを下回る 期間にすることも可能)前より引き続き(会日から 6 月遡るのか、 提案権の行使つまり提案書面提出の日から 6 月遡るのかに付いて議 論がある。「提案内容の招集通知への記載の可能性の為の期限と考 えられる」ので後者が妥当であると解する。判例、東京地判昭 60 年 10 月 29 日金判 734 号 263 頁)、総株主の議決権の 100 分の 1 又 は 300 個(定款でこれを下回る割合又は個数にすることができる) 以上の議決権を有する株主は、取締役に対して、総会日より 8 週間 (定款でこれを下回る期間を規定できる)前に、書面をもって、こ の権利を行使することが認められる(会 303 Ⅱ)。規定上は書面と いう字句はない。したがって、口頭でも良いが、爾後の事実関係の 証明のためには文書に依るのが一般的である。 非公開会社で取締役会設置会社の場合、「6 月(定款でこれを下 回る期間を規定できる)前より引き続き有する」とあるのは、「有 する」だけで良いことになった。つまり、非公開会社の場合には持

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ち株の継続性は厳密に問われていない(会 303 Ⅲ)。 二 持ち株要件 持ち株要件については、総会の審議終了までとする見解(元木)、 基準日までとする見解(稲葉)、基準日を原則とし取締役会が招集 通知を発送し終わるまでとの見解(河本)、株主総会招集の時点ま でとの見解(森本)等がある。しかし、当該要件不備の場合には、 一度提案され議決された議案が決議後その効力を失うこともあり得 る。このことを考慮すると、その持ち株要件を審議終了までと厳格 にする必要性はないと解する。 質問 7 株主提案権の行使は口頭によることができるか。 (ヒント)株主提案権の行使について、「株主は、取締役に対し、 一定の事項を株主総会の目的とすることを請求することができる (会 303 ⅠⅡ)」と規定するだけで、権利行使の手段を書面、電磁 的方法又は口頭等と具体的に指定していないので、定款の任意的記 載事項(会 29)に規定し制限していない限り、総ての手段が有効 となる。

第四節 議決権 

一 1株1議決権 各株主は、原則として、1 株につき 1 議決権を有する(会 308 Ⅰ)。 但し、1 単元の株式を定めた場合においては、1 単元の株式につき、 1 個の議決権となる(会 188 Ⅰ)。 しかし、会社は自己の株式については議決権を有しない(会 308 Ⅱ)。また、総株主の議決権の 4 分の 1 以上を有し経営を実質的に 支配することが可能な関係にあるものとして法務省令で定める株主 の議決権はない(会 308 Ⅰ本文括弧書き)。

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質問 8 議決権制限株式を説明しなさい。 (ヒント)株主総会で議決権行使に関し制限を付された株式である (会 115)。 種類株式発行会社が公開会社である場合、株主総会で議決権を行 使する事ができる事項について、制限のある種類の株式を意味する。 発行数は発行済み株式の総数の2分の1を超えてはならない。 二 議決権制限株式(無議決権株式) 1 議決権制限株式 会社は定款を以て議決権制限株式を発行できる(会 108 Ⅰ③)。 この場合、議決権行使条項(条件)付き株式(会 108 Ⅰ③)が総て 議決権制限株式となるのではなく、議決権行使の条件を満たさな かった時、議決権制限株式になる。つまり、「一定数以上の株式を 所有した場合には当該株式に議決権がないという」議決権行使条項 付き株式は、その条件を充足した(議決権行使条件を欠いた)時点 から議決権制限株式となるのである。議決権行使条項(条件)を充 足した場合、当該条項を充足した株式所有者の当該種類株式だけで なく、当該条項付き株式の全部が議決権制限株式となる。 従来優先株式についてだけ認めていた無議決権株式を、会社法に 於いては、種類株式として単独で「無議決権株式」を認めた。つま り、総ての株式について無義決権化を含め議決権を制限出来るよう にした。さらに、決議事項の一部について無議決権株式にすること もできる。 具体的には、これまでのように利益配当優先株式だけでなく、普 通株式も無議決権株式に出来るようになった。その効果は、普通株 式を無議決権株式にすれば、会社経営への参加がないぶん株式の発 行価額が相対的に低くなり、投資家にとっては株式を買いやすくな る。また、会社の基本的に重要な組織上の(特定の決議事項)等に だけ議決権を認めることもできる。さらに、会社執行部の意思決定

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に反対する少数株主権の排除や簡易な手続きを排除する為に無議決 権株式を発行し、会社の意思決定の迅速化を図ることが出来る。 なお、公開会社において、議決権制限株式が発行済株式の二分の 一を超過した場合、会社法 115 条は「直ちに、議決権制限株式の数 を発行済株式の総数の二分の一以下にするための必要な措置を取ら なければならない」と規定し、業務執行者に回復措置義務を課して いるだけで、株式発行を無効にしていない。これは、回復措置によ る議決権行使の方が、株式発行を無効にするより、会社運営に効果 的だからである。 質問 9 完全無議決権株式や残余財産分配無しの株式の発行は認め られるか。 (ヒント) 会社法 105 条 2 項。ここでは、剰余金の配当と残余財 産の分配を受ける権利の全部を与えない事はできないと規定してい る。したがって、完全無議決権株式の発行はできる。さらに、剰余 金の配当と残余財産の分配の双方を与えない株式の発行を禁止する 趣旨から、残余財産の分配を否定する株式の発行もできる。 2 公開会社の場合、議決権制限株式の総数は発行済株式総数の 2 分 1 を超えてはならない(会 115)。しかし、非公開会社にはこの 制限はない。 3 自己株式 会社は、その有する自己の株式については議決権を有しない。同 様に、自己株式には剰余金の配当は行わない(会 308 Ⅱ・会 453)。 4 相互保有株式(会 308 Ⅰ) 会社 A が、(あるいはその親会社 C とその子会社 D、又は D 子 会社だけで、)他の株式会社 B の総株主の議決権の 4 分の 1 を超ゆ る議決権を有する場合においては、B 会社は、A 社又は親会社 C

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及び D 社の株式については、議決権を有しない。 つまり、甲社が乙社の総株主の議決権の 4 分の 1 を超えて議決権 を有すれば、乙社が有する甲社株式への議決権はないと言うことで ある。これは、会社支配による不公正な議決権行使を防止するため の規制である。換言すれば、議決権総数の 4 分の 1 以上を支配され ている会社は、その会社が保有する支配会社の株式の議決権を行使 できないのである。 従って、議決権行使に関する限り、他の会社の議決権総数の 4 分 の 1 まで保有できる。 三 議決権の行使形態 1 議決権の不統一行使(会 313) 株主は、2 個以上の議決権を有する時、統一せずに議決権を行使 できる。取締役会設置会社の場合、会日より 3 日前に、会社に書面で、 その旨と理由を通知しなければならない(同Ⅱ)。なお、この通知は、 総会ごとにする必要はなく、包括的にすることが出来る。また、株 主からの通知がなくても、会社が議決権の不統一行使を認めれば有 効である。 他方、会社は株主が信託の引受又は他人の為の株式を有すること を理由としない時は、不統一行使を拒否できる(同Ⅲ)。 この制度は、株式の共有(会 106)、名義書換未済株式の譲渡、名 義貸し、株式信託(投信 22)、及び ADR( American Depositary Receipts ア メ リ カ 預 託 証 券 ) や EDR( European Depositary Receipts ヨーロッパ預託証券 )等が発行されている場合、受託者 (他人の為に株式を占有している者)が株式を保持し運用している ので、株式の実質の権利者と名義人とを分離し、実質の権利者が株 主総会で意思表示をできるようにしたからである。 2 議決権の代理行使(会 310) 株主は常に総会に出席できるとは限らないので、代理人によって

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議決権を行使できることにしている。この場合、代理権を証明する 書面を、総会ごとに、会社に提出しなければならない(会 310 Ⅰ ・ Ⅱ)。書面の提出に代えて、政令で定めるところにより、株式会社 の承諾を得て、電磁的方法によりこれを行うことができる(会 310 Ⅲ)。但し、会社は、代理人の数を制限できる(会 310 Ⅴ)。つまり、 2 人以上の代理人を同一総会に出席させることを拒否できる。 株式会社は、株主総会の日から、3 ヶ月間、代理権を証明する書 面(委任状)及び電磁的方法が採られる場合には電磁的記録を、本 店に備置しなければならない(会 310 Ⅵ)。 質問 10 定款による代理人資格の制限(代理人は当社の株主に限 る)は、有効か無効か。 この点に関して、多数説・従来の判例は、議決権自体の制限では なく、代理行使の全面的な制限でもなく、会社自治の範囲内の事で あるので、総会荒しを予防し、総会の秩序維持にとり有益なことで あるから、これは合理的な資格制限で有効であるとする。 但し、最近の判例・直江津海陸運送事件(最判昭 51.12.24 民集 30 巻 11 号 1076 頁)は、定款による資格制限を一般的には有効と するものの、株主でない者を代理人にするだけの合理性がある場合 には、定款の資格制限の有効性を制限する判決がでている。 特に、地方公共団体が株主である場合にその職員が議決権を行使 する場合、法人が株主である場合にその職員や社員が議決権を行使 する場合、「特段の事情のない限り、株主総会が攪乱され、会社の 利益が害される恐れはなく、かえって、右のような職員又は従業員 による議決権の代理行使を認めないとすれば、株主としての意見を 株主総会の決議の上に十分に反映することが出来ず、事実上議決権 行使の機会を奪うに等しく不当な結果をもたらす」として、非株主 による議決権の行使を認めている。 最近の学説・下級審判例においても、「代理人は株主に限る」と する定款の資格制限規定を「総会攪乱等の恐れがない場合」には、

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無効とする見解が多くなりつつある。 3 書面投票制度(会 311) (1) 沿革  株主数が多く全国に分散すると株主総会に出席で きず議決権の行使が出来なくなる。しかも、代理出席では 株主の意思が十分反映できるとは限らない。これまで、委 任状勧誘による議決権の代理行使の制度による株主の意思 の実現を図るようにしていたが、昭和 56 年に監査特例法 (会社法制定により廃止された)上、株主の意思の直接的 な総会への反映のために書面投票制度が認められ、さらに、 平成 13 年(法律 128 号)商法上、書面投票制度とその電 磁的方法による制度が認められた。  株主数が 1,000 人以上の監査特例法上の大会社(資本の 額が 5 億円以上又は最終の貸借対照表の負債の部が 200 億 円以上の株式会社)では、株主は書面による議決権行使が 出来る。つまり、大会社の場合には株主の意思だけで常に 書面投票制度が認められる。この大会社は、株主総会の招 集通知に際し、株主に対して議決権行使の為の書面(投票 用紙)を交付しなければならない。株主は、書面(必要事 項を記載するよう指示された投票用紙)に必要事項を記載 して、株主総会日の前日までに、それを当該大会社に送付 し、議決権の行使をする。この書面による株主権の行使は、 議決権の数に算入される。  大会社以外の会社の場合(監査特例 21 ノ 4 Ⅰ〈現在は 廃止されている〉)、取締役会の決議を以て、総会に出席し ない株主の為に書面による議決権の行使を決定できる。こ の場合、招集通知にその旨を記載又は記録しなければなら ない。当該会社は法務省令で定める参考書類を株主に送付 しなければならない。また、当該会社は、電磁的通知の承 諾をした株主に対し、招集通知と共に参考書類を、電磁的 方法により提供できる。但し、株主の請求があれば、書類

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の交付をもしなければならない。その他、議決権の為の書 面の交付、書面の会社への提出、出席議決権の数への算入 等は大会社の場合と同じである。  殆どの書面は、葉書形式で、議題に対して「諾」・「否」 の欄を設け、〇印を付ける、簡単な形式を取っている。 (2) 現行の制度  現行会社法における書面による議決権の行 使は、書面に必要事項を記載し、法務省令で定める時まで に当該記載をした議決権行使書面を株式会社に提出して 行う(会 311 Ⅰ)。書面によって行使された議決権の数は、 出席した株主の議決権の数に算入する(会 311 Ⅱ)。  株式会社は、株主総会の日から3ヶ月間提出された議決 権行使書面をその本店に備え置かなければならない(会 311 Ⅲ)。そして、会社の営業時間内は何時でも、提出さ れた議決権行使書面の閲覧又は謄写の請求をすることがで きる(会 311 Ⅳ)。 4 電磁的方法による議決権の行使・投票について(会 312) 現行会社法における電磁的方法による議決権の行使は、株式会社 の承諾を得て、法務省令で定める時までに議決権行使書面に記載す べき事項を、電磁的方法により、当該株式会社に提供して行う(会 312 Ⅰ)。 株主総会の招集通知を電磁的方法で行うとして株主に認められた 会社は、正当な理由がなければ、株主の電磁的方法による議決権の 行使を拒否できない(会 312 Ⅱ)。 電磁的方法により行使された議決権の数は、出席した株主の議決 権の数に算入する(会 312 Ⅲ)。 株式会社は、株主総会の日から3ヶ月間第 1 項の規定により提出 された電磁的記録をその本店に備え置かなければならない(会 311 Ⅳ)。そして、会社の営業時間内は何時でも、提出された議決権行 使書面の閲覧又は謄写の請求をすることができる(会 311 Ⅴ)。

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これは、総会場でではなく、在宅したまま、インターネット・パ ソコン等を通じて、議決権を行使する方法である。また、総会場で 電子投票をするのでもない。この制度は書面投票制度とは分離して 考えられており、別々に実施しても良いし、一体で実施してもよい。 質問 11 書面投票制度を採用している会社で、書面投票をした株 主が株主総会で議決権を行使できるか。 (ヒント) 株主総会で議決権を行使したら、事前に行われた書面 投票制度による投票が無効になるだけである。つまり、株主総会は 出席した株主の意思を前提にした総会であるから、会議に出席して 株主である本人が意思表示をした場合にはそれが本人の意思として 総てに優先するのである。その他の方法は、出席できない株主への 配慮であるから、その他の場合の優先順位を決めておく方が賢明で ある。 会社は、事前に、株主の意思決定の優先順位を規定できる。この 場合、本人の意思行使、代理人の意思行使、書面又は電磁的方法に よる意思行使、議決権の不統一行使の書面提出期限等に関して、規 定すること。特に、総会直近日の株主の意思が優先されることも確 認しておくべきである。 四 利益供与の禁止(会 120) 利益供与を禁止するこの規定は、株主権の行使に関し贈収賄を要 求したり、総会荒し等を目的にする特殊株主を排除し、健全な株主 総会の運営ができるようにする為に、昭和 56 年の商法改正により 新設された。かつて、同様な趣旨では、昭和 13 年の商法改正にお いて、会社荒し等への対策として、会社財産の不法な社外流出は株 主に対する背任的行為であることから、会社荒し等に関する贈収賄 罪(旧商 494・ 会 968)を規定した。しかし、この贈収賄罪の規定は「不 正の請託を受ける」ことが適用の要件である為に、「不正の請託」

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に関する解釈が厳格に解されることから、会社荒し等の防止に効果 を上げることが少なかった。 利益供与の禁止罪は、会社が何人に対しても株主権の行使に関連 して財産上の利益の供与を禁止するものである。つまり、会社が、 特定の株主に対して無償で、自己又は子会社の計算により、財産上 の利益を供与した時は、株主の権利行使に関してこれを供与したも のと推定する。また、有償であっても、自己又はその子会社の受け た利益が、供与した利益に比べて著しく少ない時も同様である。こ の推定規定は、利益供与が株主権の行使の為か否かの立証が必ずし も容易でないことから認められたものである。従って、利益供与が 株主権の行使の為ではないと証明できる場合には、この規定の適用 はない。例えば、社会的義務行為としての公益の為の寄付等が考え られる。 この規定に違反した場合、行為者である取締役(委員会設置会社 にあっては執行役)又は監査役の責任問題となる(会 120 Ⅰ④)。 そして、利益供与を受けた者はその利益を会社又は子会社に返還 しなければならないし、会社が何かの反対又は交換給付を受けてい ればその返還を受ける事ができる(会 120 Ⅲ)。さらに、株式会社 が利益供与をした場合、当該利益供与に関与した取締役(執行役を 含む)は、自己の注意義務を果たした証明が出来ない限り、会社に 対して、連帯して、供与した利益に相当する額を支払う義務を負う (同Ⅳ)。この注意義務は総株主の同意がない限り免除されない(同 Ⅴ)。 利益供与の返還が実現しない場合、株主の「取締役責任追及の訴」 によることができる(会 847 Ⅰ)。 さらに、本条に違反した者(取締役・会計参与・監査役・執行役・ 民事保全時の職務代行者等・支配人等〔会 960 Ⅰ③~⑥〕)は、3 年以下の懲役又は 300 万円以下の罰金が課される。また、事情を知っ て利益供与を受けた者又は第三者に利益供与をさせた者も同様であ る(会 970 Ⅰ・Ⅱ)。利益供与を要求した者も同様である(会 970 Ⅲ)。

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しかも、利益供与の実行につき、威迫(脅迫とは異なり不安や困 惑程度の心理状態を言う)の行為があった時は、その行為者は 5 年 以下の懲役又は 500 万円以下の罰金に処される(会 970 Ⅳ)。なお、 利益供与罪、利益供与要求罪、威迫を伴う利益供与罪等には罰金と 懲役の併科ができることになっている(会 970 Ⅴ)。 利益供与禁止に関する規定は行為者と被行為者の両方の責任を追 及できる両罰規定である。

第五節 株主総会の議事

株主総会は、厳格な法的手続きによってその開催が保証されてい る(会 298 乃至 306 等)。これは、株主総会が株式会社の機関とし ての基本的な意思決定をする場所であり、利害関係者総ての者に公 正性を要求されるからである。 一 総会の議長 総会の議長は、定款に定めていないときには、総会において選任 することになるが、会社法では旧商法のようにその選任方法を規 定していない。ただ、議長の権限を規定しているだけである(会 315)。一般的には、株主総会をスムーズに開催する為と会社の業務 執行者である代表者が総会を運営する方が効率的なことから、会社 設立時の定款に「代表取締役社長が議長になること」及び「取締役 社長に事故がある時は、取締役会の議により予め定めた順序に従い、 他の取締役が議長になる」旨規定している。 他方、定款に代表取締役社長が議長になる旨の規定がある場合で あっても、社長が議長として不適格の理由がある場合には、他の者 を議長に選任できる。例えば、少数株主の招集による株主総会の開 催の場合等がこれに当たる。また、総会決議に特別な利害関係を有 する代表取締役が議長になれるかについて、特にそれを禁止する規

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定はないが、特別な利害関係を有することが、議長不信任動議になっ たり、不公正な決議をもたらしたとして代表取締役社長の解任決議 (会 339 Ⅰ)に発展する恐れがある場合には、予め議長を交替して おくべきである。 議長は、総会の秩序を維持し、議事を整理する(会 315)。さらに、 議長の指示に服従しない者や総会の秩序を乱す者等に対しては、退 場を命ずることが出来る(会 315 Ⅱ)。この議長の権限は総会運営 の当然の権利であって、確認の意味で注意的に規定したと解されて いる。 二 総会議事 1 報告事項 一般的には、会議は報告事項と審議・決議事項に分けられる。特 に、監査役設置会社・会計監査人設置会社・取締役会設置会社・そ の他の株式会社に分けて、それぞれの会社の取締役は、前記各機関 の監査や承認を受けた計算書類と事業報告の内容を総会に提出又は 提供しなければならない(会 438 Ⅰ)。さらに、提出又は提供され た計算書類は、報告だけでなく総会の承認を必要とする(会 438 Ⅱ)。 他方、会計監査人設置会社の場合で、取締役会設置会社の計算書 類と事業報告並びに附属明細書等に関して取締役会の承認を受けて いれば(会 436 Ⅲ)、法令定款に違反せず正しく表示され、法務使 用例の用件に該当している場合、定時総会の承認は不要である(会 439)。 2 説明義務(会 314) この規定は、昭和 56 の商法改正で、従来規定されていなかった が当然に認められるべき株主の質問する権利が、その保証ないし明 確化の為に、具体化されたものである。しかし、「株主の質問権」 と表記すれば、特殊株主である総会屋の武器になるとの不安から、 「会社の説明義務」とされたものである。従って、株主の質問権を

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規定上具体的に明記した反射効として、会社側に説明拒否権を認め たことに意義がある。 取締役、会計参与、監査役及び執行役は、総会において、株主の 求めた事項につき、説明をしなければならない。但し、株主の求め た事項が、①会議の目的に関連しないとき ②説明することが株主 共同の利益を著しく害するとき(営業上の秘密に関する事項) ③ その他正当の理由があると法務省令で定めた場合等は説明をしなく てもよい(会 314 但書)。 なお、会計監査人設置会社(会 2 ⑪)の会計監査人は、定時株主 総会(計算書類の承認等に関する臨時総会を含む 441 Ⅳ)で会計監 査人の出席を求める決議があった時は、その総会に出席して、求め られた質問に意見を延べなければならない(会 398 Ⅱ)。 3 総会議事録(会 318) 株主総会の議事については、議事録を作成しなければならない。 議事録には、議事の経過の要領、及びその結果を記載又は記録しな ければならない。議事録が書面で作成された時は、議長及び出席し た取締役はこれに署名しなければならない。議事録が電磁的方法に より記録された時は、法務省令に則り作成し、作成者は署名に代わ る措置をこれに採らなければならない(会 318 Ⅰ)。法務省令(会 社法施行規則 72)に基づいて議事録を作成することになる。 議事録は 10 年間本店に備置しなければならないし、電磁的作成 による場合を含んで、その謄本を支店に 5 年間備置しなければなら ない。そして、株主及び債権者は、株式会社の営業時間内はいつで も、議事録書面の閲覧又は謄写の請求、電磁的記録による議事録の 場合には法務省令の定める方法による閲覧又は謄写の請求をするこ とができる(会 318 Ⅳ①②)。つまり、株主及び会社の債権者は営 業時間内なら何時でも議事録の閲覧謄写ができる。但し、親会社の 株主が子会社の議事録に対して閲覧謄写の請求をする場合には、裁 判所の許可が必要である(会 318 Ⅴ)。

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第六節 決議反対株主の株式買取請求権

一 総説 株主総会は多数決原理により物事を決定するようになっている。 多数決原理による決定の結果、その決定に反対の株主の権利を如何 に保証するかは、固有権である株主権にとり大変重要なことである。 その為に、法律が規定する一定の事項については、株式の買取請求 権というう形で、株主権を保証し、株式会社からの脱退を認めてい る。これは、次に述べる一定の事項に際してだけ買取請求が認めら れる点で、いかなる場合に於いても出資の払戻しが認められる合名 会社や合資会社の場合とは異なる。 この株式買取請求権は少数株主を保護する為に認められたもので ある。少数株主保護の理念の根底には株主平等の原則があり、さら に少数株主保護の為の同様な制度として、累積投票制度(会 342)、 取締役・監査役等の解任請求制度(会 339・854)等がある。 二 株式買取請求権の行使手続とそれが認められる場合 1 株式買取請求権の行使手続 買取請求権を行使するには、株主総会に先立ち、書面を以て、そ の議案に反対の意思を、会社に対して通知しなければならない。そ して、決議の日から 20 日以内に株式の種類・数等の法定事項を記 載した書面を会社に提出しなければならない(会 469・116・785・ 806・785 Ⅱ)。 買取請求権の行使により、株主は自己の株式を、総会決議がな かった場合の公正な価格で会社に買い取らせることができる(会 469 Ⅰ)。買取価格の協議が調った場合には、会社は決議の日から 60 日以内に代金の支払いをしなければならない(会 470 Ⅲ)。反対に、 決議の日から 30 日以内に買取価格の協議が調わない場合には、そ の期間満了後 30 日以内に、裁判所に対して価格の決定を請求する ことができる(会 470 Ⅱ)。

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なお、株式買取請求をした株主は、事業譲渡等をする株式会社の 承諾を得た場合に限りその株式買取請求権を撤回することができる (会 469 Ⅵ)。さらに、事業譲渡等を中止した時は、株式買取請求 は失効する(会 469 Ⅶ)。 2 株式買取請求権が認められる「反対株主」とは、 株式の買取請求ができる株主は、(1)事業譲渡等をするために株 主総会の決議を要する場合における①当該株主総会に先立って当該 事業譲渡等に反対する旨を当該株式会社に通知し、かつ、当該株主 総会において当該事業譲渡等に反対した株主(議決権行使をするこ とのできる者) ②当該株主総会において議決権を行使することが できない株主 (2)前号に規定する場合以外の場合における総ての 株主 等である。 ただし、前記(1)①の決議において、同時に解散決議をした場 合には、株式の買取請求権を行使できない(会 469 Ⅰ但書)。

第七節 総会決議の瑕疵

一 概説 株主総会の決議が常に法令を遵守して行われるとは限らない。も し、法令に違反して決議がなされれば、それは一般原則からすれば、 総て法的効果のない決議となる。しかし、会社法は、決議に多数の 利害関係者がいることを考慮して取引の安全と債権者保護の観点か ら一般原則によらず、決議瑕疵の程度により、「決議無効確認の訴」、 「決議不存在確認の訴」及び「決議取消の訴」の制度を設け、瑕疵 の程度と決議の結果を比較考量して、問題の解決ができるようにし た(会 830・831 Ⅰ)。

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二 決議取消の訴(会 831 Ⅰ) 決議の瑕疵が比較的軽微な場合には、決議を有効と解しつつ、そ の決議の取消判決が確定した時にのみ、その決議の結果を最初から 無効なものとして扱うものである。 1 取消原因 (1) 招集手続又は決議方法が、法令・定款に違反し又は著しく 不公正な時(会 831 Ⅰ①) 例えば、   ①一部の株主に対する総会の招集通知漏れがある(最判昭 42 年 9 月 28 日民集 21 巻 7 号 1970 頁)。   ②取締役会の決議を経ないで代表取締役が総会を招集した場 合も取消原因になる(最判昭 46 年 3 月 18 日民集 25 巻 2 号 183 頁、最判昭 41 年 8 月 26 日民集 20 巻 6 号 1299 頁)。   ③法令・定款違反としては、株主又はその代理人でない者が、 決議に参加した場合がある(最判昭 30 年 10 月 20 日民集 9 巻 11 号 1657 頁)。   ④招集・通知期間の不足も取消原因である(商 232 Ⅰ)。   ⑤取締役・監査役の説明義務違反も取消原因である(商 237 ノ 3、商 430 Ⅱ、有 41)。その他、多数考えられる。  次に、具体的な法令や定款の規定に違反した場合だけで なく、招集手続や決議方法が著しく不公正な時として、   ⑥株主の出席できない時間や場所を殊更指定した招集の場合、   ⑦緊急動議を全く無視した場合、暴行脅迫等による株主の発 言・議決権行使妨害の場合、   ⑧株主総会が喧騒混乱状態のまま 4 分間で終了し、株主の動 議提出が無視された場合がある(最判昭 58 年 6 月 7 日民 集 37 巻 5 号 517 頁)。このような場合には、取消原因になる。 (2) 決議の内容が定款に違反する時(会 831 Ⅰ②)  昭和 56 年の商法改正以前には、この決議内容が定款違

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反の場合は、無効理由とされていた。しかし、これは会 社内部のことであり、定款という会社の自治規範への違 反であるから、その瑕疵の主張方法を限定(会 831)して、 決議取消理由にした。つまり違反した決議内容について 検討すれば、時代に合った必要な決議が定款に違反する ことも考えられ、その場合には予め定款を変更しておけ ば、問題にならなかった筈であるから、手続上の瑕疵と して、取消理由に変更したのである。さらに、会社内部 の者がその効力を争う意思のない時にまで無効にする必 要がないからである。従って、定款の内容に違反する決 議は総てこの対象になる。  具体的には、取締役や監査役の員数を規定しているに もかかわらず、それを超過して選任する場合がある。 (3) 特別利害関係を有する株主が議決権を行使した事により 著しく不当な決議をした時(会 831 Ⅰ③)  昭和 56 年の商法改正以前には、決議について特別の 利害関係を有する株主は議決権を行使できなかった(旧 商 239 Ⅴ)。理由は、特別利害関係株主に公正な議決権 の行使を期待できないとするものであった。反対に、決 議が著しく不当であって、もし特別利害関係株主が議決 権を行使していたなら、その不当決議は回避されたと思 われる場合には、不当決議変更又は決議取消の訴を提起 できることにしていた(旧商 253)。  しかし、昭和 56 年商法改正において、議決権行使に 関する「特別利害関係」の定義が曖昧であること、およ び議決権は株主の固有権であることから容易に奪うべき ではなく、ましてや特別利害関係があるからといって議 決権行使の機会は奪われるべきではないとされた。そし て、議題についての特別利害関係株主は総会で議決権を 行使できることになった。

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 ただ、議題についての特別利害関係株主が総会で議決 権を行使したことにより、著しく不当な決議がなされた 場合には、決議取消事由になる。従って、議題について の「特別利害関係株主」と「著しく不当な決議」の双方 から、決議取消事由の判断をすることになる。  具体的には、特別利害関係株主が議決権を行使したこ とにより、他の株主に著しく不当に不利益な決議又は不 公正な決議となっている場合である。資本多数決原理に おける権利濫用の場合であるとも言える。 2 訴の手続 (1) 提訴権者  決議取消の訴は、株主等(設立時株主、設立時取締役 又は設立時監査役)、取締役、監査役又は清算人が、提 訴できる(会 831 Ⅰ)。 (2) 提訴時期  決議取消の訴は、決議の日から 3 月内にしなければな らない(会 831 Ⅰ本文)。この提訴期間を徒過した場合 には、提訴事由があっても提訴できないと解される。 (3) 口頭弁論開始場所と時期  この訴は、会社の本店所在地の地方裁判所の専属管轄 である(会 835 Ⅰ)。但し、2つ以上の地方裁判所が管 轄権を有する場合には先に訴えの提起を受けた地裁が管 轄する。著しい損害又は遅滞を避ける為必要がある時は 申立又は職権により他に移送できる(会 835 Ⅱ・Ⅲ)か つて、口頭弁論は提訴期間経過後でないと開始できない ことになっていた(旧商 248 Ⅱ)が、会社法では当該規 定は削除された。さらに、同一の請求を目的とする会社 組織に関する訴えに係る訴訟が数個同時に係属(数個の 訴がある)場合には、その口頭弁論と裁判は併合されな

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ければならない(会 837)。 3 提訴権者の担保提供義務 裁判所は、会社組織に関する訴えで株主又は設立時株主が提訴 できるものについて、会社荒らし等からの濫訴を防止する意味で、 提訴に対しては被告人である会社の請求により、担保の提出を提 訴権者に命じることができる。但し、提訴権者たる株主が、取締 役、監査役、執行役若しくは清算人であるときは、又は当該設立 時株主が設立時取締役若しくは設立時監査役である時は、担保提 供命令を出すことはできない(会 836 Ⅰ)。会社が担保提供命令 を裁判所に申請する場合には、株主の提訴が会社に対して不当(悪 意)であることを疎明しなければならない(会 386 Ⅲ)。 4 裁量棄却(会 831 Ⅱ) 招集手続又は決議方法が法令や定款に違反する決議取消の訴で あっても、その違反事実が重大でなく、かつ決議の結果に影響が ないと思量される場合には、裁判所はその決議取消請求を棄却で きる(会 831 Ⅱ)。 この裁量棄却は、昭和 13 年の商法改正で新設されたが、広範 に利用されすぎたので、昭和 25 年の商法改正で削除された。し かし、合理的な判断による裁判所の裁量棄却は必要であるとの理 由から、再度昭和 56 年改正で復活した。 裁量棄却が認められるには、招集手続き又は決議方法が法令若 しくは定款に違反するだけでなく、株主の利益が侵害されている が違反の事実が軽微であり、しかしその違反があっても決議の 結果に影響を及ぼさない場合だけである。従って、裁量棄却に は、違反が軽微であることと、その違反が決議の結果に影響しな いという2つの要件が満たされていなければならない。このこと は、現実では裁量棄却は余程の場合でないと認められないことを 意味している。ただ、決議取消の訴の濫訴の防止の効果はある。

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5 判決の効力 会社の組織に関する訴えの請求認容判決(無効又は決議取消判 決)が確定した場合には、当事者だけでなく、第三者に対しても その効果は及ぶ(会 838)。これを対世的効力という。請求認容 判決が確定した時、判決には遡及効は認められず、当該判決によ り無効とされ又は取り消された行為は将来に向かってその効力を 失う(会 839)。例えば、合併の場合、合併を無効とする判決が 確定しても、それ以前の合併後判決確定までの合併後存続する会 社又は合併によって設立した会社、その社員及び第三者の間に生 じた権利義務は有効となる(会 839)。合併や分轄の行為の効力 が生じた日以後会社が取得した財産は会社の共有となる(会 843 Ⅱ)。そして、合併無効判決確定以後、その権利義務は清算され、 解散することになる(会 843・833)。 決議事項が登記された後、取消判決が確定した場合には、本店 及び支店の所在地においてその決議の取消登記をしなければなら ない(会 937)。他方、原告敗訴の場合にはその効力は当事者以 外には及ばない。しかし、提訴期間との関係で、他の者が改めて 提訴することは現実には出来ない。さらに、原告に悪意又は重大 な過失がある時は、その者は被告の会社に対して連帯して損害賠 償の責めに任じなければならない(会 846)。 三 決議不存在確認の訴 (会 830 Ⅰ) 決議自体が存在しないのに総会招集通知や議事録等が捏造され る場合がある。このような場合には、決議不存在確認の訴の対象 になる。さらに、総会がごく一部の株主だけで開催され、殆どの 株主が関与していない場合、議決権のない株主だけが決議に加 わっていた場合等のように、手続き上の瑕疵が著しい場合等も決 議不存在確認の訴の対象になる。 決議不存在確認の訴は、第三者に与える影響が多いことから、 無効確認の訴と同様に対世効がある(会 838)。

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四 決議無効確認の訴(会 830 Ⅱ) 決議の内容が法令に違反する場合には、その決議は無効である (会 830 Ⅱ)。 具体的には、株主平等(会 109)違反(不平等な株式消却〔会 178・違反は 100 万円以下の過料〕)、授権株式を超えた株式発行(会 966・5 年以下の懲役又は 500 万円以下の罰金)、取締役の責任追 及に関する決議(会 120 Ⅳ・会 970 利益供与禁止で 3 年以下の懲 役又は 300 万円以下の罰金)、違法配当決議(会 454・461・462)、 法令に違反する定款変更決議(会 309)その他多数ある。 さらに、決議の内容が法令に違反するということは、具体的な 規定に違反する場合だけでなく、その内容が公序良俗や株式会社 法の本質に反するような場合にもそれに該当する。つまり、多数 決原理の不正と濫用があり著しく不当な決議がなされた場合に、 それは取消原因になるだけでなく、公序良俗違反により、決議無 効確認の訴の対象になる。 無効行為に関する主張は、本来何時でも誰でもできるのが原則 でなければならない。従って、決議無効確認の訴には提訴権者の 指定や提訴期間等の制限はない。但し、法的安定性との関係で、 無効判決の第三者に対する効力(対世効)はある(会 838)。

第十四章 取締役

第一節 総論

一 概説 株式会社には、一人又は二人以上の取締役を置かなければなら ない(会 326 Ⅰ)。 そして、公開会社、監査役会設置会社、委員会設置会社には、 取締役会を置かなければならない(会 327 Ⅰ)。つまり、公開会 社等には複数(2 人以上)の取締役を置かなければならないと言

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うことである。 しかも、委員会設置会社以外の公開会社と監査役会設置会社は、 取締役会設置会社となり、監査役を置かなければならない。 取締役は、定款に別段の定めがある場合を除き、取締役会設置 会社以外の会社の業務を執行する(会 348 Ⅰ)。また、職務の執 行をする(会 348 Ⅳ)。その執行上の決定は、取締役が複数いる 場合にはその過半数をもって決定する(会 348 Ⅱ)。 しかも、取締役が二人以上いる場合には、支配人の選任と解任、 支店の設置・移転・廃止、会社法 298 条 1 項に規定する事項(総 会招集事項)を各取締役に委任できない(会 348 Ⅲ)。 取締役会設置会社では、三人以上の取締役で業務執行に関する 意思決定を行い(会 362 Ⅱ①)、その執行者を代表取締役又は業 務担当取締役等にしなければならない(会 349 Ⅳ・363 Ⅰ②)。 二 委員会設置会社の取締役等 1 委員会設置会社とは、株主総会に提出する取締役(会計参 与設置会社では取締役及び会計参与)の選任及び解任に関する議 案の内容を決定する指名委員会、執行役・取締役・会計参与等の 職務執行の監査及び監査報告書の作成をする監査委員会、執行 役・取締役・会計参与等の個人別の報酬等の内容を決定する報酬 委員会の3委員会を設置する会社である。 委員会設置会社には、取締役を置くだけでなく、取締役会を置 かなければならない(会 327 Ⅰ③)。従って、委員会設置会社は 取締役会設置会社になるが、監査役を置かなくても良い。これ は監査委員会を設置するからである。しかも、委員会設置会社は、 監査役を置いてはならず、会計監査人を置かなければならない(会 327 ⅣⅤ)。 さらに、非公開会社の委員会設置会社で会計参与を置く会社も 監査役を置かなくて良い。これは会計参与が監査役の機能を代替 できるからである(会 327 Ⅱ)。

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監査委員会は、執行役又は取締役が不正行為をし、若しくはそ の虞がある時、又は法令若しくは定款に違反する事実若しくは著 しく不当な事実がある時遅滞なく、その旨を取締役会に報告しな ければならない(会 406)。また、監査委員は、執行役又は取締 役が委員会設置会社の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定 款に違反する行為をし、又はその虞がある時は、これにより当該 委員会設置会社に著しい損害を生じる虞がある時は当該執行役又 は取締役に対して当該行為の中止を請求できる(会 407 Ⅰ)。 2 委員会設置会社の取締役等の権限等、 委員会設置会社の取締役は、会社法又はこの法律に基づく命令 に別段の定めがある場合を除き、委員会設置会社の業務を執行す ることができない(会 415)。 そして、委員会設置会社の取締役会は、会社法 362 条(取締役 会の専決事項等)の規定に拘わらず、次に掲げる職務を行う(会 416)。 (1) 委員会設置会社の業務執行の決定 ①経営の基本方針  ②監査委員会の職務執行 ③執行役の職務分掌と指揮 命令の等の関係 ④取締役会の招集担当取締役の決定  ⑤執行役の職務執行体制及び業務の適正確保の整備等 (2) 執行役の職務執行監督 (3) 委員会設置会社の取締役会は、その決議により、委員会 設置会社の業務執行の決定を執行役に委任することが できる(会 416 Ⅳ)。ただし、譲渡制限株式所有株主か らの「他人へ譲渡する取得承認」請求(会 136)、譲渡 制限株式取得者から当該会社へ「取得の承認決定」の請 求(会 137 Ⅰ)、譲渡制限株式の取得の承認決定を否定 した場合の会社側からの指定買取人の指定(会 140 Ⅳ)、 その他会社法 416 条 4 項に規定する事項は執行役に委任 できない。

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(4) 委員会設置会社では、取締役会の招集権者の規定があっ ても、委員会が選定する者は取締役会の招集ができる(会 417 Ⅰ)。基本的には、執行役は取締役会の招集権限を 有する取締役に取締役会の招集を請求することができ る(会 417 Ⅱ)。 執行役は三ヶ月に1回以上職務執行 状況を取締役会に報告しなければならない(会 417 Ⅳ)。 執行役の報告は他の執行役を代理人にして行うことがで きる。 三 取締役の資格と選任及び解任 1 取締役の資格等 (1) 資格制限  取締役は、その個人に経営能力が要求され る者であるから、以下の者はなれない。   ①法人(会 331 Ⅰ①)、   ②成年被後見人や被保佐人等(会 331 Ⅰ②)、及び外国の 法令上同等の扱いを受ける者、   ③会社法、一般社団法人・財団法人法、金融商品取引法(197 等以下の罰則適用)、民事再生法(255 等 以下の罰則 適用)、会社更生法(266 等以下の罰則適用)、破産法(265 等以下の罰則適用)等の法律により、刑に処せられ、そ の執行を終わり、又はその執行を受けることが無くなっ た日から 2 年を経過しない者(会 331 Ⅰ③)。したがって、 これらの諸法律に違反し、現在執行猶予中の者も取締役 になれない。   ④会社法 331 条 1 項 3 号(前記③)以外の法令に違反し、 禁固以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はそ の執行を受けることが無くなるまでの者。しかし、この 場合、執行猶予中の者は取締役になれる。 (2) 公開会社の株主と取締役の分離  公開会社の場合、「取締役が株主でなければならない」

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