一 概説
株式会社には、一人又は二人以上の取締役を置かなければなら ない(会 326 Ⅰ)。
そして、公開会社、監査役会設置会社、委員会設置会社には、
取締役会を置かなければならない(会 327 Ⅰ)。つまり、公開会 社等には複数(2 人以上)の取締役を置かなければならないと言
うことである。
しかも、委員会設置会社以外の公開会社と監査役会設置会社は、
取締役会設置会社となり、監査役を置かなければならない。
取締役は、定款に別段の定めがある場合を除き、取締役会設置 会社以外の会社の業務を執行する(会 348 Ⅰ)。また、職務の執 行をする(会 348 Ⅳ)。その執行上の決定は、取締役が複数いる 場合にはその過半数をもって決定する(会 348 Ⅱ)。
しかも、取締役が二人以上いる場合には、支配人の選任と解任、
支店の設置・移転・廃止、会社法 298 条 1 項に規定する事項(総 会招集事項)を各取締役に委任できない(会 348 Ⅲ)。
取締役会設置会社では、三人以上の取締役で業務執行に関する 意思決定を行い(会 362 Ⅱ①)、その執行者を代表取締役又は業 務担当取締役等にしなければならない(会 349 Ⅳ・363 Ⅰ②)。
二 委員会設置会社の取締役等
1 委員会設置会社とは、株主総会に提出する取締役(会計参 与設置会社では取締役及び会計参与)の選任及び解任に関する議 案の内容を決定する指名委員会、執行役・取締役・会計参与等の 職務執行の監査及び監査報告書の作成をする監査委員会、執行 役・取締役・会計参与等の個人別の報酬等の内容を決定する報酬 委員会の3委員会を設置する会社である。
委員会設置会社には、取締役を置くだけでなく、取締役会を置 かなければならない(会 327 Ⅰ③)。従って、委員会設置会社は 取締役会設置会社になるが、監査役を置かなくても良い。これ は監査委員会を設置するからである。しかも、委員会設置会社は、
監査役を置いてはならず、会計監査人を置かなければならない(会 327 ⅣⅤ)。
さらに、非公開会社の委員会設置会社で会計参与を置く会社も 監査役を置かなくて良い。これは会計参与が監査役の機能を代替 できるからである(会 327 Ⅱ)。
監査委員会は、執行役又は取締役が不正行為をし、若しくはそ の虞がある時、又は法令若しくは定款に違反する事実若しくは著 しく不当な事実がある時遅滞なく、その旨を取締役会に報告しな ければならない(会 406)。また、監査委員は、執行役又は取締 役が委員会設置会社の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定 款に違反する行為をし、又はその虞がある時は、これにより当該 委員会設置会社に著しい損害を生じる虞がある時は当該執行役又 は取締役に対して当該行為の中止を請求できる(会 407 Ⅰ)。
2 委員会設置会社の取締役等の権限等、
委員会設置会社の取締役は、会社法又はこの法律に基づく命令 に別段の定めがある場合を除き、委員会設置会社の業務を執行す ることができない(会 415)。
そして、委員会設置会社の取締役会は、会社法 362 条(取締役 会の専決事項等)の規定に拘わらず、次に掲げる職務を行う(会 416)。
(1) 委員会設置会社の業務執行の決定 ①経営の基本方針
②監査委員会の職務執行 ③執行役の職務分掌と指揮 命令の等の関係 ④取締役会の招集担当取締役の決定
⑤執行役の職務執行体制及び業務の適正確保の整備等
(2) 執行役の職務執行監督
(3) 委員会設置会社の取締役会は、その決議により、委員会 設置会社の業務執行の決定を執行役に委任することが できる(会 416 Ⅳ)。ただし、譲渡制限株式所有株主か らの「他人へ譲渡する取得承認」請求(会 136)、譲渡 制限株式取得者から当該会社へ「取得の承認決定」の請 求(会 137 Ⅰ)、譲渡制限株式の取得の承認決定を否定 した場合の会社側からの指定買取人の指定(会 140 Ⅳ)、
その他会社法 416 条 4 項に規定する事項は執行役に委任 できない。
(4) 委員会設置会社では、取締役会の招集権者の規定があっ ても、委員会が選定する者は取締役会の招集ができる(会 417 Ⅰ)。基本的には、執行役は取締役会の招集権限を 有する取締役に取締役会の招集を請求することができ る(会 417 Ⅱ)。 執行役は三ヶ月に1回以上職務執行 状況を取締役会に報告しなければならない(会 417 Ⅳ)。
執行役の報告は他の執行役を代理人にして行うことがで きる。
三 取締役の資格と選任及び解任 1 取締役の資格等
(1) 資格制限 取締役は、その個人に経営能力が要求され る者であるから、以下の者はなれない。
①法人(会 331 Ⅰ①)、
②成年被後見人や被保佐人等(会 331 Ⅰ②)、及び外国の 法令上同等の扱いを受ける者、
③会社法、一般社団法人・財団法人法、金融商品取引法(197 等以下の罰則適用)、民事再生法(255 等 以下の罰則 適用)、会社更生法(266 等以下の罰則適用)、破産法(265 等以下の罰則適用)等の法律により、刑に処せられ、そ の執行を終わり、又はその執行を受けることが無くなっ た日から 2 年を経過しない者(会 331 Ⅰ③)。したがって、
これらの諸法律に違反し、現在執行猶予中の者も取締役 になれない。
④会社法 331 条 1 項 3 号(前記③)以外の法令に違反し、
禁固以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はそ の執行を受けることが無くなるまでの者。しかし、この 場合、執行猶予中の者は取締役になれる。
(2) 公開会社の株主と取締役の分離
公開会社の場合、「取締役が株主でなければならない」
旨を定款に規定できない(会 331 Ⅱ)。
反対に、非公開会社の場合には、「株主でなければ取 締役になれない」旨を定款に規定できる。
(3) 委員会設置会社の取締役は、当該会社の支配人その他の 使用人を兼務できない(会 331 Ⅲ)
(4) 取締役会設置会社は、3 人以上の取締役を置かなければ ならない(会 331 Ⅳ)。
他方、取締役会以外の会社では、1 人又は 2 人以上の 取締役を置かなければならない(会 326 Ⅰ)。
(5) 取締役の任期(会 332)
①選任後 2 年以内に終了する事業年度の最終のものに関す る定時株主総会の終結の時までである。ただし、定款又 は株主総会の決議により、任期を短縮することができる
(会 332 Ⅰ)。
②非公開会社(除 . 委員会設置会社)は、定款により、選 任後 10 年以内に終了する事業年度の最終のものに関す る定時株主総会の終結の時まで任期を伸長できる(会 332 Ⅱ)。
③委員会設置会社の取締役の任期は、1 年である(会 332 Ⅲ)。
④委員会設置会社を置く(又は廃止する)為の定款変更と 株式全部の譲渡制限を廃止する為の定款変更をした場合、
取締役の任期は、定款変更の効力を生じた時に満了する
(会 332 Ⅳ)。
質問 12 取締役の資格を①年齢、住所、男女、国籍等によって 制限できるか。②公共団体の首長を排除できるか。③弁護士・公 認会計士・税理士を排除できるか。
(ヒント)
*会社の経営に取り、合理的な制限か否かを考える。
*取締役の被選任権は株主の固有権ではないので、国籍による制
限を認めた判例がある。名古屋地判昭和 46 年 4 月 30 日下民集 22 巻 3・4 号 549 頁。これは取締役の住所とも絡み、活動制限の 有無で判断すべきである。
2 役員の選任 ・ 解任
(1) 選任
①発起設立時取締役の場合、出資履行完了後、議決権の過 半数で決定する(会 40)。
②創立総会選出の場合、設立時株主の議決権の過半数で あって、出席した設立時株主の議決権の3分の2以上で 選出する(会 73 Ⅰ)。
③会社成立後、取締役、会計参与及び監査役等の役員は、
株主総会の普通決議によって選任 ・ 解任する(会 329
Ⅰ)。つまり、議決権を行使することができる株主の議 決権の過半数を有する株主が出席し、その過半数の決議 で決定する。定足数の下限は3分の1以上である(309
Ⅰ ・341)。
定款で、種類株主総会による取締役の選任を規定して いる時は、その規定による(会 347 Ⅰ)。
(2) 取締役の欠員等
予め役員選任時に、補欠候補者を選任することが出来 る(会 329 Ⅱ)。この決議事項の内容は法務省令による(会 施行規 96)。 補欠役員の選任決議の効力は、定款に別 段の規定がない限り、当該決議後最初に開催する定時株 主総会の開始の時までである。
役員の任期については、選任時を起算点とする(会 332 Ⅰ・334 Ⅰ・336 Ⅰ)。補欠役員の選任決議は条件付 き選任決議となり、選任決議であることに変わりはなく、
補欠役員が正規の役員になつた場合にも適用される。つ まり、補欠選任取締役が正規の取締役になった場合、任
期は、補欠役員としての選任時となる。
(3) 解任
取締役は、何時でも株主総会又は種類株主総会で解任で きる(会 339 Ⅰ・同 341・同 347 Ⅰ)。なお、解任につ き正当な理由がない場合には、会社に対して損害賠償を 請求できる(会 339 Ⅱ)。
ただし、累積投票によって選任した取締役や監査役を 解任する場合には、株主総会の特別決議(議決権を行使 することができる株主の議決権の過半数を有する株主が 出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の議決)によ らなければならない(会 339・309 Ⅱ⑦)。
3 累積投票制度による取締役の選任(会 342)
2人以上の取締役を、一括(一回の投票)で選任する場合に利 用される。これは、会社にとり投票手続きの煩雑さを回避する(会 社法施行規則 66 Ⅰ①イにより、取締役1候補者の選任が1議案 である)長所があり、少数株主にとっては単純投票よりも少数の 所有株式により自己の主張効果を上げることができる。敵対的買 収を図る際は、少数の資本で取締役を確保できることになり有利 である。役員等の選任に関する議案に関して、複数の選任におい ては各候補者の選任ごとに賛否を記載する欄が必要である(会施 行規則 66 Ⅰ①)。
つまり、累積投票による場合には、定款に排除規定がない限り、
株主総会の5日前までに、株式会社に対して「累積投票による取 締役の選任」を請求しなければならない(会 342 Ⅰ)。
累積投票による選任をする場合、議決権を行使することができ る株主は、その有する株式 1 株(単元株制度採用会社は 1 単元)
につき、選任する取締役の数と同数の議決権を有する。投票は1 回なので、株主は、各候補者に対して、集中して投票しても分散 投票しても良い(会 342 Ⅲ)。投票の結果、取締役の改選数まで、