• 検索結果がありません。

死刑の確定裁判を受けた者が刑法第11条第2項に基づき拘置されている場合における死刑の時効の進行の有無--「帝銀事件」人身保護請求事件(最決昭和60.7.19) 利用統計を見る

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "死刑の確定裁判を受けた者が刑法第11条第2項に基づき拘置されている場合における死刑の時効の進行の有無--「帝銀事件」人身保護請求事件(最決昭和60.7.19) 利用統計を見る"

Copied!
9
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

死刑の確定裁判を受けた者が刑法第11条第2項に基

づき拘置されている場合における死刑の時効の進行

の有無--「帝銀事件」人身保護請求事件(最決昭和

60.7.19)

著者

今上 益雄

雑誌名

東洋法学

29

1

ページ

97-104

発行年

1986-03

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00003591/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

(2)

判 例 研 究

 死刑の確定裁判を受けた者が刑法第二条第二項に基づき拘置されている場合における死刑の時効の進行の有無ー 1﹁帝銀事件﹂人身保護請求事件ー

      ︵搬蕪磯藤蘇霧鞭誤∞○翌藷師瘤騨貿糊㌫縫雛鎧議皓蟹パ編︶

 ︹事 実︺  本件は、いわゆる帝銀事件につぎ、平澤貞通に対し強盗殺人のほか同未遂、強盗予備・殺人予備事件で、昭和三〇年五月 七日に死刑判決が確定したのであるが、その確定の日以降昭和三七年二月二四βまで東京拘置所に、同五一年五月九日ま では宮城刑務所︵拘置所︶に拘置され、同月一〇日、同拘置所が仙台拘置所となったのに伴い、同支所に拘置され、昭和六 〇年四月二九日から八王子医療刑務所に拘置され、死刑の執行がされないまま現在に至っている。  その間、一七回にわたる再審請求及び五回にわたる恩赦の出願が繰り返され、右手続の行われている期間を除く死刑判決 確定後の期間は、八二日間にすぎない。  以上のような事実関係の下で、平澤死刑囚及びその訴訟代理人でもある弁護士が、死刑判決確定の日から死刑の執行を受 けないまま監獄に拘置されて三〇年間が経過した場合には、死刑の時効期間である三〇年間が経過し死刑囚に対する時効が 東 洋 法 学 九七

(3)

    判例研究      九八

完成すると主張そ、法務大願検事総長及び八王子医療刑務所長鋳し︵蘇購鴇練羅薮鴇繍燐脹甑響鴫湛噺

脈縛議告︶人身保護法二条、三条に萎教平澤死刑囚の釈婆請求したものである.  原審は、請求者等の請求のうち、拘束者法務大臣及び同検事総長に対する各講求を却下し、その余を棄却したが、その時 効の進行に関する理由は、次のとおりであった︵劉罐蜘奏鷺︶. e刑法三二条の﹁其執行﹂については、刑を言い渡した確定裁判の執行と解するのが、後記の刑の時効制度の趣旨等に鑑み 相当である。 口刑法二条二項の拘置は、死刑の執行行為︵首︶に必然的に付随する前置手続として刑罰の内容を定める刑法自体によっ て定められた一種独特の拘禁であって、死刑を言い渡した確定裁判の執行として行われるものである。 ◎死刑の確定裁判を受けた者が死刑の執行に至るまで継続して拘置されている場合には、死刑の執行を受けるべき者として 扱われていて、一般的生活を送ってきた者と質的に差異があり、刑の時効を進行させる基礎となる事実関係は存在しないか ら、かかる者について死刑の時効の進行、成立を認めることは、刑の時効の趣旨にも合致しない。 四死刑の執行命令の発令及びその時期の決定は、その執行が現状回復の不可能な結果を生ずること等に鑑み、再審請求、恩 赦の出願の状況その他あらゆる事情を総合して慎重に行うべきものであるから、その結果、執行命令を発するのが相当でな いとの判断の下に三〇年を超える期間身柄を拘束したからといって、それだけで死刑の時効の完成を認めなけれぽ憲法三六 条所定の残虐刑の禁止に触れるということにはならず、また、裁判で言い渡した刑以外の刑を執行したことになるものでも ない。  これに対し、請求者等は次のような抗告理由を掲げて特別抗告をした。 O刑法三二条所定の死刑の時効については、時効が所定の期間に﹁死刑の執行を受けないことにより﹂完成するものと解す べきであるのに、憲法三一条に基づく罪刑法定主義に反して、時効が所定の期間内に﹁死刑を言い渡した確定裁判の執行を

(4)

受けないことにより﹂完成するものと解した上、三〇年を超えて死刑の執行を受けなかった平澤死刑囚について刑の時効の 完成を認めず、右期間を超えて平澤死刑囚の拘置を継続することを是認する原決定は、法律の定める手続によらない自由の 侵奪の是認として憲法三一条に反するとともに、正当な理由がない拘禁の是認として憲法三四条に反する。 ◎仮に、被拘束者平澤死刑囚につぎ死刑の時効が完成しないものと解するとすれば、同人を死の恐怖の下に三〇年以上にわ たりその間死刑の執行停止もすることなく拘置し続けた上で死刑の執行をすることとなる点で憲法三六条の禁止する残虐な 刑罰に当るとともに、判決の命じた刑以上の刑を科することとなる点で、憲法三一条に違反し許されないのに、これを容認 した原審の判断は、憲法三一条及び三六条に反する。 日死刑判決の確定した死刑囚のうち、拘置されている者と逃亡した者とは、死刑の執行を受けていない点では同じ地位にあ るのに、後者には時効を認めながら、前者にはこれを否定する原審の判断は、憲法一四条に違反する。  ︹決定要旨︺  最高裁第一小法廷は、裁判官全員一致の意見で、次のような理由に基づき、請求者等の所論を排斥して、拘束者八王子医 療刑務所長に対する特別抗告を棄却し、その余の拘束者に対する特別抗告を却下した。 一 抗告理由第一点及び第二点のうち憲法一三条違反をいう部分について ﹁死刑の確定裁判を受けた者が刑法二条二項に基づき監獄に拘置されている場合には死刑の時効は進行しないとした原審 の判断は、正当として是認することができ、右判断に法令の解釈適用の誤りがあることを前提とする所論の主張は、前提を 欠く。論旨は採用することができない。﹂ 二 同二点のうち憲法三六条違反をいう部分について ﹁刑法一一条二項所定の拘置は、死刑の執行行為に必然的に付随する前置手続であって、死刑の執行に至るまで継続すべき 東 洋 法 学 九九

(5)

   判 例研究      一〇〇

ものとして法定されている。したがって、所論のような拘置ののちに死刑の執行をすることは、当裁判所大法廷の判例

︵璽磐贋ぺ翫樺嘆一山斧塾︶の趣旨巌すれぽ、憲婆六条蘇義虐蒲罰に当たらないこと誘らかであるとい

うべきである。所論の点に関する原審の判断は相当であり、論旨は採用することができない︵以下省略︶。  ︹研究︺  本件決定は、手続の面で、人身保護法に基づき死刑囚の釈放を求めたという点で、いわば、その着想の特異さと、 実体の面で、死刑の確定裁判を受けた者が刑法一一条二項に基づき拘置されている場合には、死刑の時効は進行する か、という点で、平澤死刑囚の時効問題が提起されるまでは、学界で殆ど論議されることのなかったテーマについて 最高裁として、法令の解釈につき初めて判示し、また長期間の拘置の後にされる死刑の執行が憲法三六条にいう﹁残 虐な刑罰﹂に当らないことを明らかにしたものであり、注目に値する。  したがって、本件決定は、法務大臣等が人身保護法及び人身保護規則に定める﹁拘束者﹂に該当するか否か、憲法 三六条違反の有無等、いくつかの主要な論点を含むものではあるが、紙幅も限られているので、本件決定の最大の争 点である死刑の時効に関する法令の解釈をめぐる問題に限定して、コメントを加えることとしたい。  憲法三一条・三四条違反に関する前記抗告理由は、右の点を前提にしており、本決定においても、憲法判断をする 上での前提として判示されているからである。  一 本決定の結論には賛成し難い。

(6)

 二 すでに触れたように、拘置中の死刑囚の時効問題については、戦前のもの︵翻謹畷髄蝦輔飢脈跳駒魁訊叙轄禰蜘翻酷齪 那聞細賑ガ綱畑一蜘獅︶を除けぽ、実務のみならず、学界でも殆ど検討されることはなかった︵畷齢鉱欄鰍輔噸鯨灘囎蔽肌質蜘脳 捌初塒働紛欄噸は︶。僅かに故藤木教授が﹁刑法三四条では、時効は刑の執行につき犯人を逮捕したるによりこれを中断 すると定められているので、当然、死刑の執行にいたるまで刑法二条二項により監獄に拘置されている状態の続く 間は、時効は進行しないと解すべきであろう。﹂と述べて、消極説を採ることを明らかにしていた︵懸琳﹃御滋購蟻予︶ 位である。しかし、平澤死刑囚の時効問題が提起されるに及んで、消極説︵吠酪脇椛割駒崎糊喋駒蜘民幣騨輸徽所彩飾晦瞳鵬か 講働臆静燈嫁艶鍾遭無俘酢.齢も一一海に窮窺㌍物罫鄭靹葺︶と積極説︵髄藤臨聯碓騰舷嗜酔嗣︵翼辺喉灘戦松け到旺証埜罰r産顛鵬爪 配栃酒粥吐臨頒翻汗ゲ鞭灘號一φ輔轡態薇選五監璽シ訊馨、︶との間で論争が展開されるに至っている。その間、法務省 の寛刑事局長は国会で、平澤死刑囚のケ;スは死刑判決執行として拘置が行われている以上、刑が執行されている場 合と同視すべき状態にあるのであって、時効の問題は生じない旨の見解を表明している︵擁謂蒲獺媚晦轍勘伍い猷吠諮藁騰 下︶.  三 先ず刑法三二条の文理解釈についてである。本件決定が是認した原審の判断︵以下﹁原決定﹂と引用する。︶e 及び⇔に関する。第一に三工条にいう﹁其執行﹂が﹁刑の執行﹂でなく、﹁刑を言い渡した確定裁判の執行であり﹂、 しかもそれは﹁刑の執行﹂とは内容的には別物だとする解釈は成り立ち難い。刑法において﹁執行﹂とは、﹁刑﹂に ついて語られるのであって﹁裁判﹂についてではない。  それにも拘らず、三二条の場合にだけ﹁裁判の執行﹂と解するのは不合理である︵躰辮儲球猪磁藤α肺鳩理軸膳礫に謙細醐

     東洋法学       

一〇一

(7)

    判例研究       一〇二

瀟棚郁畷礪︶。三二条は、﹁刑ノ時効及ヒ刑ノ消滅﹂に関する第六章の中の条文であり、刑の時効は刑の執行を受けな いことにより完成すると解するのが自然の関連である。第二に、三七条の解釈において、その﹁執行﹂の概念には ﹁拘置﹂を含むとは考えられない。懲役刑の執行は刑務所への拘禁であり、罰金刑の執行は金銭の収納であるから、 これらと同様に解すれば、死刑の執行は絞首のみである︵講﹂晶媚詑虻﹂語襲謙貌袖呂吻緬端陣僻駈臨酔職諏脚醗購著絹聡ピ 購難鰍犠雄銚が︶.  拘置は、原決定のように﹁死刑を言い渡した確定裁判の執行しではなしに、一一条二項によって特別に認められた 一種独特の拘禁である。それは刑訴法四八四条による﹁死刑の言渡を受けた者﹂に対する﹁執行のための呼出し﹂ま たは﹁収監状しの発布が﹁死刑を言い渡した確定裁判の執行﹂ではなしに、刑訴法四八四条によって特に認められた 手続であるのと同様である︵麟認ル揃鵡理︶。拘置と刑の執行は性質を異にするものであり、三二条にいう刑の時効との 関係では、﹁刑の不執行﹂、つまり、当該死刑囚が絞首されなかったことのみを時効の条件とすべきであり、それが、 三二条の合理的かつ唯一の解釈というべきであろう︵晒謝恥踊醐︶。  第三に、それでは、平澤死刑囚の﹁拘置﹂は、三四条の﹁逮捕﹂に含まれるか。通説によれば、本条の﹁逮捕﹂と は、刑訴法上の逮捕とは異なり、刑を執行するために犯人の身柄を拘束すること、すなわち収監状︵細断酷晒旭紅︶の執 行によって身柄を拘束すること及び呼出しに応じて任意に出頭した者を検察官の執行指揮によって収監することであ る︵献晦阻堪鍬齢雛細紅晒誌纈獄激抽鑑鰻纏認漣藪駅編弱︶。しかし、平澤死刑囚の拘置は右のいずれにも該当しないこ とは明らかである︵遍軸﹃賄掲︶。

(8)

 四 次は、刑の時効制度の趣旨との関係である。原決定㊧に関する。刑の時効の根拠については諸説があるが、規 範感情緩和説が通説である。それは、刑の執行がないまま長期間経過すれば、応報感情を含む社会の規範的感情が和 らぎ、刑を執行すべき要求がなくなり、犯人においても、通常一般人と同様の社会生活関係が生ずるので、その秩序 を尊重することにあると解するのである︵鰍嘱四揃醜︶。この前提では、消極説でも積極説でも差異はない︵嫡鱒灘メ粒勘

函碩融新畿剃鑛鮨殉碩︶。しかしながら、平澤死刑囚については、消極説は、刑法一一条二項に

基づく拘置は、死刑の確定判決に基づいて具体化した刑罰権の行使として行われるものであって、その執行がされ死 刑の執行を受けるべき者として扱われている以上は、当該死刑囚の犯行が社会から忘却され、一般の人と同様の社会 生活関係が形成されるということは考えられず、いつ死刑が執行されたところで、不測の事態が起こったと思う者は 誰もおらず、社会が混乱するわけでもないという︵欲略一繭購厩欄吻崩踊帯ゆ恥︶。  これに対して、積極説は、歴代法務大臣が執行を命令でぎず、実際に執行できないで三〇年を経過したという事実 関係によって、被害感情、社会の処罰を求める感情が和らぎ、かつ執行されずに釈放することが国民一般の声ではな いか、と反論する︵腱聯麟蝿㌔酬勘嶋調㏄恥駈租頁︶。  原決定の採る時効制度における事実上の秩序の尊重に照らせば、被拘置者は、当為の秩序において﹁死刑の執行を 受けるべき者﹂として扱われながら、事実として三〇年間死刑を受けることがなかったという事実状態が続いていた のであるから、その規範的秩序を消滅させるのが妥当というべきであろう︵罐齢叙蜘龍附駒唖洲姻燃鍔謎准競明姻疑撰拡励願激

鯖鵬蕊昆勝敦融酬程鯉燗鰐執︶.

    東洋法学       一〇三

(9)

    判 例 研 究      一〇四  また、規範感情の緩和という点でも、脱獄者に対してよりも、いつ死刑の執行がされるかという死の恐怖に直面し ながら三〇年間も拘置を続けられてきた者に対して側隠の情も、より強く生ずるものではあるまいか。社会一般にと って重要な意味をもつのは、死刑の宣告を受けながら死刑の執行を受けることなく三〇年間を経過したという事実の 重みであり、死刑の執行を受けることがなかったという社会関係である。  右のように死刑の根拠が消滅するに伴って、拘置の根拠もまた消滅し、釈放はそれに必然的に付随する効果であり、 ﹁被拘置死刑囚を釈放すれば、⋮⋮時効制度の趣旨を明らかに超えるものであるしとの論理も、事実上の秩序と規範 的秩序との恣意的混同であり︵蛇欝痛謁磁醸躰碑︶、拘置されている死刑囚について、時効制度を理由に時効の進行を 否定する原決定の論理は維持しえない。積極説が妥当というべきである。  なお、抗告理由日憲法一四条違反の主張に対し、遺憾ながら本件決定は何ら答えていない。  しかし、在監死刑囚と逃亡死刑囚ともに、刑法的な時間の経過の持つ意味は同一であって、三〇年にわたって死刑 の執行がされないときは、等しく時効が完成すると解するのが、むしろ当然ではないかと思われる︵馳鄭匙喘磁紘骸ガ 執行は、懲役飛、禁鋤刑等の虜由刑が現に執行されている場合と選ぶところがない﹂と嘗うが、自由刑の執行により拘禁されている場合は、まさに ﹁刑の執行﹂そのものであるから、時効が進行するはずもなく、混同がある。また﹁死刑の執行促進のおそれ﹂という原決定の指摘は曲解であって、時 繭欄鯛輔唖齢尺淑勧轍創綱初噺桁囎蜷鯖釧継虻硯捌姻め逮︶

参照

関連したドキュメント

NPO 法人の理事は、法律上は、それぞれ単独で法人を代表する権限を有することが原則とされていますの で、法人が定款において代表権を制限していない場合には、理事全員が組合等登記令第

肝細胞癌は我が国における癌死亡のうち,男 性の第 3 位,女性の第 5 位を占め,2008 年の国 民衛生の動向によれば年に 33,662 名が死亡して

期に治療されたものである.これらの場合には

(2)特定死因を除去した場合の平均余命の延び

12―1 法第 12 条において準用する定率法第 20 条の 3 及び令第 37 条において 準用する定率法施行令第 61 条の 2 の規定の適用については、定率法基本通達 20 の 3―1、20 の 3―2

五二五袴田事件──死刑判決(有罪認定)は今や維持し難い!(斎藤)

を受けている保税蔵置場の名称及び所在地を、同法第 61 条の5第1項の承

領海に PSSA を設定する場合︑このニ︱条一項が︑ PSSA