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淡水産二枚貝の生理学的研究 : 第一報 琵琶湖産二枚貝組織より見出されたチトクロームについて

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Academic year: 2021

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淡水産二枚貝の生理学的研究

第一報 琵琶湖産二枚貝組織より見出されアこ

チトクロームについて

東 怜 Physiological Study on the Fresh Water Lamellibranch. 1. On the Cytochorne Found in the Several Tissue of Fresh Water Lamel− libranch in Lake Biwa. Satoru lligashi  Present theories of the mechanism of cell respiration have been developed primarily form investigations on only a few types of living material. The concepts derived from these studies may not be applicable to all animal tissue, and there are still many gaps in our knowledge of the distribution of this compound among the invertebrates. The present study was undertaken to obtain compartive cell respiration of fresh water Lamellibranch in lake Biwa.  In this paper, author reported the presence of very strong cytochrome bin Hyriopsis schlegelii and Corbicula sandai, the fresh water Lamellibranch in lake Biwa.  生物の細胞呼吸の機構について現在迄主とし て或る種々の生物例えばイーストとかウニの 卵,哺乳動物の組織等についての研究から得ら れたもので論ぜられて来た。しかし,これでは すべての動物組織に適用出来ないことは明らか   1) である。  貝類の組織にチトクローム(以下Cytと略

す)の存在していることはKeilinのCytの

 2)3) 再発見以来知られているが淡水産の二枚貝につ いては調べられたものは見られない。従って高 等動物にくらべ貝類のような下等動物の細胞呼 吸の機構については殆ど分っていない。最:近, 河合氏は海産の二枚貝のマガキ,アコヤガイの 鰐を用い,そのCyt系をしらべたものを報告し 4) た。  筆者は淡水産の二枚貝を用いCytの検出を行 った。イケチ・ウガイ及びセタシジミを用いた のは,この二枚貝が共に琵琶湖水系に特有のも のであり,淡水真珠の母貝や黄疸の薬として注 目されているにもかかわらず,年々その減少が 報ぜられているので,その対策の一助にと考え た。 実験材料及び方法  実験に用いたイケチョウガイは,滋賀県堅田 の琵琶湖真珠の近くの養殖場で飼育しているも のを用いた。セタシジミは瀬田の漁業組合より 入手した新鮮なものを用いた。  Cytの検出には新鮮な二枚貝の体より切り取 った組織に直ちに少量の石英砂を加え乳鉢中で すりつぶし,これにヒドロ亜硫酸ソーダNaL,S、, 04を添加して生細胞を還:元してからZeissの 顕微分光器を用いて,その吸収スペクトルを観 測した。吸収の強さの弱いものに対してはこれ を液体空気を用いて零下180℃に冷却して吸収 帯を観察した。この方法では低温条件のため各

(2)

38 滋 大 紀 要 第  7  号 1 9 5 7 吸収帯が5倍に強まり,尖鋭となるため隣接す       の る吸収帯の分離が容易となる。叉,同時に組織 のホモジエネートにヒドロ亜硫酸ソーダと共に 少量のピリジンを添加してピリジンヘモクロモ ーゲンを作り,吸収帯を強化する方法を併用し て正確を期した。 Table 2. Detection of cytochrome in the  several tissue of Corbicula sandi. 実験結果及び考察 Tissue  実験に用いた組織は精子,未成熟卵,鰐,外 套膜,閉殻筋である。その結果をTable 1,2に 示す。 Table 1. Detection of cytochrome in the  several tissue of Hyriopsis s¢hlegelU. Sperm Unmatu− red egg Gill Tissue Sperm Unmatu− red egg. Gill Cytocyrome

alDC

糞〃〃 C

abC

郵〃〃 C

a、bC

外〃〃 C

alDC

糞〃〃 C

alDC

翼〃〃 C

−1

Spectrum strength of absorpition band. …m・・m・擁。馨嵩trm“ Mantle

++十

Ll−1一 士十    

十十帯

Adductor muscle Cytochorme Mantle Adductor muscle

abC

鵬〃〃 C

alDC

舛〃〃 C

alDC

鉾〃〃 C

alDC

鉾〃〃 C

alDC

鉾〃〃 C

Spectrum strength of absorption band …m・・m・暫9。臨temp ++十 十 士十 十 日目

++十

一 十 層目  △ +十+ △ 士十 耕△ 一*, +闘士  △ ±十 * +帯 * very strong absorption band; A diffused strong absorption band. cyt. a absorb at 600.y605mpt, cyt. b at 560・一一t 564.5mpt, cyt. c at 550mst.  ここで注目されることは,イケチョウ貝及び セタシジミの何れを用いた場合も非常に強力な Cyt. bの吸収帯がみられることである。河合氏 は海産二枚貝のマガキ,アコヤガイでCyt. b を観察しているが,その吸収スペクトルの強さ は淡水産のものにくらべ,比較にならぬ程弱い ものである(私信)。  これを個々の組織についてみると,精子には 牛の心筋などに見られる典型的なCyt. a, b, c がみられる。しかし同じ生殖腺でも未成熟卵で はCyt. bは特に多量に見出されるがCyt. a, c は液体空気処理をしても観察出来ない。叉,鯉 ではCyt. a及びbは容易に検出出来るがCyt. cは常温では分らず,液体空気を用いてやっと 検出出来る程度である。外套膜ではCyt. aは 常温では分らず,液体空気処理によりその存在 が分る。何れの場合もCyt. bは564mμを中 心に広い幅に拡散した吸収帯を示す。閉殻筋で はCyt. aと非常に強い吸収帯を示すCyt. bが 見られる。  Cyt. cは精子に多量に見られる他は他の組織 では検出出来ない。しかしこれ丈の結果で,こ れらの組織にCyt. cが存在しないとは云えな い。それらの組織内での濃度が低いためである かもしれないからである。この点については現 在実験中である。(詳細は近く発表の予定)。  又,淡水二枚貝に見られる異常に多いCyt. b が体.内でどんな作用をしているかも重大な問題 である。筆者がこれ迄にしらべた所では,この Cyt. bは一般のものと異り,熱に対して安定で ある。即ち80℃に1時間放置してもその吸収 は変化しない。対照として用いたイースト細胞 では1時間後にはCyt. bは完全に消失する。 とにかくCyt. bを出来るだけ純粋な形でとり

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第一報 琵琶湖産二枚貝組織より見出されたチトクローームについて (東) 39 出してその性質を明にする必要がある。 結  論  1)淡水産二枚貝特に琵琶湖産のイケチョウ 貝及びセタシジミを用いてCytの検出を行っ た。その結果は次の通りである。  2) 淡水産二枚貝には非常に多量の Cyt. b が存在している。  3) このCyt. bは普通のものと異り,熱に 対して安定である。  〔附記〕 本研究を行うに当り御教示を賜った 滋賀大学教授林一正氏に感謝する。叉,顕微分 光器の使用を許して頂いた京都大学宮地伝三郎 教授,小野講師,河合清三氏,液体空気を分け て頂いた京都大学理学部物理学教室の:方々の御 厚意に感謝する。 丈 (1) Robbie, W. A:  (1946). (2) Keilin, D:  (1925). (3) 献 J. Gen. Physiol., 32, 655 Proc. Roy. Soc. B; 98, 312   Ball, F. G. and Meyerhof. B i’ J. BioL chem. 134, 483 (1940). (4) 河合清三:生化学,28,51(1956). (5) Keilin, D and Hartree E. F.: Nature 164  254. (1949); Nature 165 504 (1950). * KeilinはHelixカタツムリの肝腔ゾウから新し  いチトクロームhを分離精製した。還元型の吸収  極大は556,5265mμでチトクロームbに似てい  るが熱に対して安定であると云う。Bioch. J.,64,  663 (1956)

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