• 検索結果がありません。

冊 10 12,000,000 13/10/12 13:41 和洋古書善本目録_第25号秋.indd 3 奈 3 良絵本 うつほ物語 元禄頃写 黒漆桐函入 新拵帙付 縦 24.5 糎 横 17.5 糎 半 紙 本 列 帖 装 表 紙 は紺紙に金の切箔砂子を天地中央に雲霞様に散ら し その間に金泥で川

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "冊 10 12,000,000 13/10/12 13:41 和洋古書善本目録_第25号秋.indd 3 奈 3 良絵本 うつほ物語 元禄頃写 黒漆桐函入 新拵帙付 縦 24.5 糎 横 17.5 糎 半 紙 本 列 帖 装 表 紙 は紺紙に金の切箔砂子を天地中央に雲霞様に散ら し その間に金泥で川"

Copied!
42
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)
(2)

3

3

奈良絵本

うつほ物語

 

元禄頃写

黒漆桐函入(新拵帙付) 10 冊   12,000,000 円 縦 24.5 糎、 横 17.5 糎︒ 半 紙 本、 列 帖 装︒ 表 紙 は 紺 紙 に 金 の 切 箔 砂 子 を 天 地 中 央 に 雲 霞 様 に 散 ら し、 その間に金泥で川舟・葦・蓮葉 (第一冊) 、 欅・ 下草、 松、 撫子・芝垣、 干網、 柳、 網代、 真菰等々 が 描 か れ て い る︒ 金 箔 散 ら し 金 泥 下 絵 の あ る 青 磁 色の題簽を付し、 本文と同筆で 「うつほ物語 一(~ 十) 」と墨書する︒見返しは各冊梅の折枝の空捺し のある布目金箔︒装丁はすべて原装︒ 丁 数 は 全 十 冊 で 138 丁、 絵 は 合 計 四 十 八 図、 本 文 料 紙 は 上 質 の 鳥 の 子 紙︒ 一 面 十 行 書 き、 和 歌 は 本 文 よ り 二 字 下 げ て 上 下 句 別 行 に 書 く︒ 全 冊 一 筆 の 能 筆︒ 絵 は や や 簡 略 な が ら 金 銀 泥 を 用 い た 極 彩 色 の 大 和 絵 で、 画 面 の 上 下 に 金 切 箔 砂 子 の 雲 を 描 く︒ 見 る か ら に 華 麗 な 嫁 入 本 仕 立 で、 製 作 は 元 禄 頃と推定される︒ 第一冊表紙に僅か墨汚レ有、個人蔵印 惜 し む ら く は、 本 書 の 第 一 冊 の 前 半 に 二 丁 分、 ま た 巻 尾 に 続 い て 第 二 冊 の 始 め ま で の 二 丁 半 ほ ど が 欠 落 し て い る︒ 恐 ら く 綴 葉 の 内 側 の 一 紙 が 失 わ れ た の で あ ろ う ︒ ま た 第 一 冊 の 挿 画 三 図 も、 他 の 巻 と 同 様 に、 元 は 五 図 存 在 し て い た も の と 思 わ れ る︒ し た が っ て 本 書 は、 元 は 各 冊 五 図 ず つ の 計 五 十 図 を 含 む「 俊 蔭 」 の 巻 の 奈 良 絵 本 で あ っ た と い う こ と に な る︒ こ の 挿 画 の 数 は、 現 存 の「 俊 蔭 」 和洋古書善本目録_第25号秋.indd 3 13/10/12 13:41

(3)

の 巻 の 絵 巻・ 奈 良 絵 本・ 絵 入 版 本 の ど れ よ り も は る か に 多 い も の で あ り、 本 書 は そ の 点 で 極 め て 注 目すべき資料ということができる︒ 現 存 の『 う つ ほ 物 語 』 の 絵 巻・ 奈 良 絵 本 は、 す べ て「 俊 蔭 」 の 巻 の み で あ る が、 そ の 数 は 決 し て 多くはない︒奈良絵本としては、 京大図書館蔵 (五 冊 )、 天 理 図 書 館 蔵 チ ェ ン バ レ ン 旧 蔵( 五 冊 )、 早 大 図 書 館 蔵( 三 冊 )、 絵 巻 と し て は 九 大 図 書 館 蔵、 天 理 図 書 館 蔵、 そ の 他 個 人 蔵 本 や 本 書 を 加 え て も、 せ い ぜ い 十 指 を 数 え る に 過 ぎ な い︒ い ず れ に せ よ 『住吉物語』 『伊勢物語』などの他の古 典 作 品 の 奈 良 絵 本 に 比 べ る と、 格 段 に 少 な い と 言 い 得 る で あ ろ う し、 ま た 現 存『 う つ ほ 物 語 』 の 本 文 中 に「 絵 詞 」 あ る い は「 絵 解 」 と 呼 ば れ る 特 殊 な 詞 章 が 含 ま れ て い る こ と も、 他 の 平 安 朝 の 物 語 には例を見ないものと聞く︒ そ し て 更 に、 本 書 の ご と き 十 冊 仕 立 の、 し か も 四 十 八 図( 元 は 五 十 図 ) と い う 多 量 の 挿 画 を 含 む 奈 良 絵 本 は 極 め て 珍 し く、 ま さ に 稀 覯 の 名 に 値 す る ものであろう︒保存も極良好︒ 本 書 の 本 文 は 大 略 古 活 字 本 系 の 第 二 種 の 本 文 に 近いが、なお若干の独自の異文も散見する︒

(4)

5

4

奈良絵本

うつほ物語

 

万治、 寛文頃写 横本

 

一帙五冊   6,000,000 円 縦 16.2 糎、 横 22.5 糎、 横 本、 袋 綴 装︒ 丁 数 は 全 五 冊 で 計 120 丁︒ 表 紙 は 紺 地 に 金 切 箔 砂 子 を 散 ら し、 金 泥 で 霞・ 小 松 を 描 く︒ 題 簽 は 五 冊 と も 失 わ れ て い る が、 中 央 に 短 冊 型 の 貼 痕 が あ る︒ 見 返 し は 菱 万 字 の 銀 箔︒ 本 文 料 紙 は 雲 母 引 きの間似合紙︒書体は軽やかな能筆で全冊一筆︒ 挿 絵 は 合 計 十 五 図︒ 極 彩 色 で、 天 地 に 金 砂 子 を 散 ら し た 浅 葱 色 の 雲 を 引 き、 お 伽 草 子 風 の 古 雅 素 朴 な 図 柄 で、 万 治 版・ 延 宝 版 等 の 版 本 や 他 の 奈 良 絵 本 の 挿 絵 に 比 し て 独 特 の 珍 し い 構 図 が 多 い︒ 製 作 は お よ そ 江 戸 初 期、 万 治・ 寛 文 頃 と 推定される︒ 絵図に極一部朱筆落書有、個人蔵印 な お 現 在 知 ら れ て い る『 う つ ほ 物 語 』 の 奈 良 絵 本 の 中 で、 横 本 形 態 の も の は 本 書 の み で あ り、 一顧に価する伝本と言える︒ 和洋古書善本目録_第25号秋.indd 5 13/10/12 13:42

(5)

5

奈良絵本

さごろも中将

寛文頃写 一帙二冊   3,400,000 円 縦 18.0 糎、 横 25.0 糎、 横 本、 袋 綴 装︒ 丁 数 は 上 下 巻 二 冊 で 計 53 丁︒ 表 紙 は 香 色 雲 母 引 き 鳥 の 子 紙︒ 見 返 し は 本 文 料 紙 と 共 の 鳥 の 子 紙︒ 題 簽 は 短 冊 型 の 貼 痕 が あ る の み だ が、 内 容 か ら お 伽 草 子 の「 狭 衣 の 中 将 」 で あ る こ と が 知 ら れ る︒ 奈 良 絵 本 に し て は い さ さ か 質 素 な 装 丁 だ が、 改 装 し た も の と 思 わ れ る︒ 本 文 料 紙 は 鳥 の 子 紙︒ 一 面 十 三 行 書 き︒ 和 歌 は 六 種 あ る︒ 表 紙 手 擦 レ、 本 文薄汚レ、シミ跡有、個人蔵印二種 挿絵は上巻七図(うち見開き一図) 、下巻七図 の 計 十 四 図︒ 絵 は 天 地 に 空 色 で 雲 を 引 き、 お 伽 草 子 風 の 素 朴 な 構 図 で は あ る が、 極 彩 色 で 人 物 の 衣 装 な ど 丁 寧 に 描 い て お り、 と か く 稚 拙 簡 略 な 図 柄 の 多 い こ の 種 の お 伽 草 子 絵 と し て は、 豪 華な部類に属するものといえる︒ 書 写 年 代 は 江 戸 初 期、 ほ ぼ 寛 文 頃 と 見 ら れ る︒ 各 巻 巻 頭 右 上 に「 春 城 堂 蔵 」 の 大 き い 朱 長 方 印 が あ り、 国 文 学 者 今 小 路 覚 瑞 氏 の 旧 蔵 本 と 知 ら れる︒ 平 安 朝 の『 狭 衣 物 語 』 の 中 の 狭 衣 の 中 将 と 飛 鳥 井 の 姫 君 と の 恋 愛 物 語 を 中 心 に 改 作 し た 作 品 で あ る が 、 伝 本 は き わ め て 多 く、 ま た 本 文・ 内 容 と も に か な り 違 い の あ る 異 本 も 少 な く な い と 言 わ れ て い る︒ こ れ ら の 諸 本 の 本 文 系 統 の 詳 細 に つ い て は 横 山 重 氏 が 冒 頭 の 形 式 を 目 安 と し て 一 応 の 分 類 を 試 み ら れ て い る︒ そ れ に よ れ ば、 本 書 の 冒 頭 は「 む か し く は ん む 天 王 の 御 と き 」 と あ る の で、 第 二 類 の 形 式 を 持 っ て い る と い う ことになる︒

(6)

8

7

奈良絵本

すみよし物語

 

江戸初期写 桐函入   三冊   3,000,000 円 縦 15.8 糎、 横 23.3 糎︒ 横 本 袋 綴 装︒ 上 中 下 三 冊 の 奈 良 絵 本︒ 表 紙 は 紺 紙 に 金 泥 で 雲 霞 を 天 に 散 ら し、 中 央 に 川 波 と 菖 蒲、 蓮 が 描 か れ、 見 返 し は 銀 箔 の 上 仕立︒題簽は小短冊型模様入朱色に 「すみよし物語」 と 墨 書 さ れ て い る︒ 袋 綴 の 糸 を 除 い て は 原 装 で あ る が、 表 紙 は 丁 寧 に 補 修 さ れ た 保 存 良 好 の も の︒ 料 紙 は 間 似 合 紙、 一 面 十 二 行 書 き︒ 挿 絵 は 全 十 四 図、 う ち 下 巻 に は 見 開 図 が 一 紙 あ る︒ い ず れ も 濃 彩 で、 人 物 は 素 朴 で 表 情 も 愛 ら し く、 お 伽 草 子 特 有 の 親 し み を感じさせる︒保存良好︒ 表紙部分補修済。各巻頭に個人蔵印 本 文 は 上 巻「 む か し 中 納 言 に て 左 衛 門 督 か け た る 人侍りけり」から下巻末尾、 「~かまひて人よかりぬ べきなりとそ」 で終わっている︒ 知られているとおり、 住吉物語は伝本も異本も極めて多く、 略本系、 広本系、 流 布 本 系 な ど と 大 別 さ れ て い る が、 本 書 の 形 態 は ご く 普 通 に 見 ら れ る も の で、 い わ ゆ る 流 布 本 系 で あ ろ う︒ 和洋古書善本目録_第25号秋.indd 8 13/10/12 13:42

(7)

9

奈良絵本

一本きく

 

延宝頃写 一帙三冊   3,500,000 円 縦 16.9 糎、 横 24.8 糎︒ 横本袋綴装、 上中下の三冊︒ 表 紙 は 紺 紙 に 金 泥 で 雲 霞 秋 草 を 描 く︒ 見 返 し は 金 切 箔 散 ら し︒ 中 央 に 金 泥 下 絵 の あ る 短 冊 型 の 朱 題 簽 を 付し、 本文と同筆で 「一本きく 上 (中・下) 」 とある︒ 横 本 紺 表 紙 朱 題 簽 の い わ ゆ る お 伽 草 子 本 仕 立 で、 綴 糸 を 除 い て は 原 装 で あ る︒ 本 文 料 紙 は 間 似 合 紙︒ 丁 数 は 上 中 下 全 三 冊 で 計 68 丁︒ 上 巻 の 奥 に「 第 五 巳 子 丑 亥 」 と 読 め る 後 人 の 書 き こ み が あ る︒ 和 歌 は 十 六 首 あ り、 四、 五 行 の 分 か ち 書 き に な っ て い る︒ 挿 絵 は 上・ 中・ 下 巻 各 五 図 の 計 十 五 図︒ 絵 は 天 地 に 水 色 の 雲 を 引 い て 墨 で 強 く 縁 取 り、 そ の 間 に 素 朴 で 簡 略 な お 伽 草 子 特 有 の 彩 色 図 柄 を 描 く︒ 筆 跡 は 早 書 き で、 書 写 年 代 は 江 戸 初 期、 ほ ぼ 延 宝 頃 と 思 わ れ る︒ 上 巻 第 二 丁 の 絵 図 に 少 し ヤ ブ レ 有、 下 巻 墨 落 書 ア リ、   本 文 や や 湿 気 跡 筋 目、 手 擦 レアリ。   各巻巻頭に個人蔵印 本 書 の 冒 頭 一 丁 分 を 万 治 三 年 版 の 本 文 と 比 較 し て み る と、 か な り の 異 同 が 見 ら れ る よ う で、 両 者 を 同 系 統 の 本 文 と 見 な す こ と は 難 し い︒ 概 し て 本 書 の 方 が 版 本 の 本 文 よ り も 詳 し い が 、 和 歌 の 数 は 版 本 の 方 が 二 十 六 首 と は る か に 多 い︒ 本 書 の 本 文 系 統 の 判 別 に は、 多 く の 諸 本 と の 比 較 が 必 要 で あ る が、 版 本 系 統にも属さないと言える︒

(8)

12

12

奈良絵本

武家はん昌

 

貞享、 元禄頃写 古桐函入   二冊   2,000,000 円 縦 24.0 糎、 横 17.9 糎︒ 半 紙 本、 列 帖 装︒ 上 下 二 冊︒ 表 紙 は 浅 縹 色 牡 丹 唐 草 模 様 の 綾 織、 見 返 し は 銀 切 箔 散 ら し︒ 表 紙 中 央 に 短 冊 型 金 紙 の 題 簽 を 付 し、 本 文 と 異 な る 筆 で「 武 家 は ん 昌 」、 その下隅に小さく「上」 「下」とある︒これらの 装丁は後補のもの︒ 各巻頭に個人蔵印一種 本 文 料 紙 は 鳥 の 子 紙︒ 上 下 巻 二 冊 で 38 丁︒ 一 面 十 行 書 き、 和 歌 は 含 ま れ て い な い︒ 挿 絵 は 上 巻 五 図、 下 巻 四 図 の 計 九 図︒ う ち 下 巻 二 ウ -三 オ は 連 続 の 見 開 図︒ 絵 は 極 彩 色 の 大 和 絵 で あ る が 図 柄 は や や 簡 略 で、 お 伽 草 子 絵 風 の 素 朴 稚 拙 な 趣 き が あ る︒ 本 文 の 筆 跡 は や や 小 さ め の 細 手 の 麗 筆 で、 書 写 年 代 は ほ ぼ 貞 享・ 元 禄 頃 と 見 ら れ る︒ 蓋 上 中 央 に「 武 家 は ん 昌 」 と 墨 書 の あ る 古い桐函入︒ 本 書 の 上 巻 に は 錯 簡 が あ る︒ 上 巻 の 第 二 丁 は 白 紙 で あ る が、 こ れ は 実 は 巻 頭 に あ る べ き 遊 紙 で、 こ れ と 一 続 き の 第 十 一 丁 も、 次 の 第 十 二 丁 の あ と に 入 る べ き も の で あ る︒ つ ま り、 遊 紙 を 含 む 一 紙 分 が 一 枚 内 側 に 綴 じ こ ま れ た 結 果 の 錯 簡 で あ っ て 、 正 し い 順 序 は、 二 オ -二 ウ・ 一 オ -一ウ・三オ -三ウ︙︙十オ -十ウ・十二オ (挿 絵) -十二ウ・十一オ -十一ウ・十三オ -十三ウ と な り、 こ の 順 序 で 文 章 も と ど こ お り な く 連 続 す る︒ ま た 本 文 上 は ほ と ん ど と り 立 て て 例 示 す るほどの異文は持たない︒ 和洋古書善本目録_第25号秋.indd 12 13/10/12 13:42

(9)

13

奈良絵本

よろいがへ

 

寛文、 延宝頃写 新誂桐函入   三冊   18,000,000 円 縦 28.2 糎、 横 22.4 糎︒ 大 型 袋 綴 装︒ 上 中 下 の 三 冊︒ 表紙は紺紙に金泥で雲霞に杉 (上) ・棕櫚 (中) ・柳 (下) を 描 く︒ 見 返 し は 向 か い 鶴、 竜 の 丸、 鳳 凰 を 配 し た 唐 花 七 宝 の 金 箔︒ 表 紙 中 央 に 金 泥 で 霞 を 引 い た 大 ぶ り の 朱 題 簽 を 付 し、 本 文 と 同 筆 と 思 わ れ る 手 で「 よ ろ い か へ 上 (中・下) 」 とある︒装丁は綴糸を除いて原装︒本 文料紙は鳥の子紙で、 下絵に金泥で撫子・萩・薄に蝶・ 水 に 浮 草 な ど を 描 く︒ 丁 数 は、 上 巻 23 丁、 中 巻 18 丁、 下 巻 21 丁︒ 一 面 11 行 書 き︒ 和 歌 は わ ず か 五 首 の み︒ 挿 絵 は、 上 巻 七 図、 中 巻 六 図、 下 巻 七 図 の 計 二 十 図︒ う ち 五 図 は 連 続 の 見 開 図︒ 絵 は 天 地 の 薄 藍 色 の 雲 霞 に 金 切 箔 を 散 ら し、 金 銀 を 用 い た 極 彩 色 の 大 和 絵 で、 大 型 画 面 だ け に 人 物 も や や 大 き く、 迫 力 が あ る︒ 本 文 の 筆 跡は能筆で、 書写年代はほぼ江戸初期の寛文頃であろう︒ 新 し い 桐 函 入 で、 中 央 に 短 冊 型 和 紙 を 貼 り、 「 奈 良 絵 本   よ ろ い か へ 参 」 と あ る ︒ 表 紙・ 本 文 共 僅 カ 擦 レ、 下 巻 表 紙 少 傷 ミ、 本文の一部に僅カ墨汚レ、全体に折レ、 筋目アリ。   各巻巻頭に個人旧蔵印。 『 鎧 が へ 』 の 伝 本 に つ い て は、 『 国 書 総 目 録 』 に 万 治 三年刊の版本が掲載されている東大霞亭文庫のみで、 こ の万治版本は 『古浄瑠璃正本集』 第三に翻刻されている︒ そ れ に よ る と こ れ は 六 段 か ら 成 る 古 浄 瑠 璃 の 一 冊 本 で、 挿 絵 も 六 図 あ る が、 本 書 と は 形 態 も 文 章 も 異 な る 作 品 の よ う で、 本 書、 あ る い は『 鎧 が へ 』 の 奈 良 絵 本 と し ては、 現在知りうる唯一の伝本と言いうるかも知れない︒ 『 鎧 が へ 』 の 内 容 に つ い て は あ ま り 知 ら れ て い な い が、 その粗筋は、 高価な 「鎧」 と亡き主人 (周防の判官盛俊) の 北 の 方 が、 謀 叛 を 企 て た 家 来( 原 武 者 兵 衛 尉 兼 村 ) に よ っ て 取 り か え ら れ、 の ち 北 の 方 は 観 音 の 霊 験 で 蘇 生 し た 姫 に 越 後 の 国 で 再 会 し、 姫 は 八 幡 太 郎 義 家 の 妻 と な っ て 四 人 の 子 を 設 け、 そ の 四 男 六 条 判 官 為 義 が 後 を 継 い で 源 氏 一 族 が ま す ま す 繁 栄 し た、 と い う 物 語 と な っ て い る︒ 題 名 の 由 来 は、 兼 村 が 鎧 の 代 金 の 代 り に 主 人 の 北 の 方 を さ し 出 す と こ ろ か ら 来 て い る ︒ た だ 古 浄 瑠 璃 本 と 比 べ、 こ の 奈 良 絵 本 で は 一 面、 教 訓 的 な 言 辞もうかがえる︒

(10)

14

(11)

14

奈良絵本

本朝孝子伝

 

元禄頃写 桐函入   五冊   12,000,000 円 縦 24.5 糎、 横 17.8 糎、 半 紙 本、 列 帖 装︒ 丁 数 は 全 五 冊 で 計 217 丁︒ 表 紙 は 青 磁 色 雲 文 地 に 竜 丸 飛 文 の 金 襴、 見 返 し は 布 目 の 金 箔、 表 紙 中 央 に 金 泥 の 雲 霞 下 絵 の 短 冊 型 題 簽 を 付 し、 本 文 と 同 筆 で「 本 朝 孝 子 伝 一( 二 ~ 五 )」 と 墨 書 す る︒ 原 装︒ 本 文 料 紙 は 鳥 の 子 紙︒ 一 面 十 行 書 き、 一 行 17 ~ 20 字前後︒保存は極良好︒ 各巻巻頭に個人蔵印 本 文 は 天 子・ 公 卿・ 士 庶・ 婦 女・ 近 世 の 五 つ に 分 け、 計 七 十 四 人 の 孝 行 談 を 収 載 し て い る︒ そ の 内 訳 は、 第 一 冊 十 七 話・ 第 二 冊 十 六 話・ 第 三 冊 十 三 話・ 第 四 冊 十 四 話・ 第 五 冊十四話となっている︒ 挿 絵 は 全 五 冊 で 計 三 十 五 図︒ 絵 は 天 地 の 雲 霞 に 金 切 箔 を 用 い、 画 中 に も 金 銀 を 多 用 し た 華 麗 な 極 彩 色 の 大 和 絵 で、 人 物 の 姿 態 や 表 情 は 巧 み で あ る︒ 筆 跡 は 濃 淡 の 少 な い 麗 筆 で、 書 写 年 代 は 江 戸 前 期、 ほ ぼ 元 禄 頃 と 思 わ れ る︒ 函 は 桐 の 茶 漆 塗 り で 蓋 上 中 央 に「 奈 良 絵 本 / 本 朝 孝 子 伝   五 冊 / 江戸時代初期」と三行に記した貼 紙があり、 「 鳥」の篆書陰 刻朱印が押してある︒ 『 本 朝 孝 子 伝 』 は、 江 戸 前 期 の 儒 学 者 藤 井 懶 ら ん 斎 さ い ( 1618 ~ 1709 )の著で、三巻から成り、古今の孝子談七十一話をあつ め た も の︒ 成 立 は 寛 文( 1661 )以 後、 天 和 四 年( 1784 )を 遡 る 近い時期と考えられる︒ 伝 本 に は 天 和 四 年 版 と、 同 版 の 貞 享 二 年 版・ 同 四 年 版 な ど が あ る が、 こ れ ら は す べ て 漢 文 体 で 記 さ れ た 絵 入 本 で、 挿 絵 は 各 話 に 一 つ ず つ 七 十 一 図 を 含 ん で い る︒ 一 方、 仮 名 書きの版本は、 『仮名本朝孝子伝』として、貞享四年版・宝 永 五 年 版・ 明 和 七 年 版 等 が あ る が、 内 容 は 漢 文 体 の も の と 同じく七十一話を収載しており、 挿絵も同じである︒ 本書は、 こ の『 仮 名 本 朝 孝 子 伝 』 と 同 類 の も の で あ る が、 奈 良 絵 本 仕 立 て の「 本 朝 孝 子 伝 」 は 極 め て 珍 し く、 他 に 所 伝 を 聞 か ない孤本と思われる︒ 本 書 に 収 載 の 孝 子 談 は、 前 述 の よ う に す べ て で 七 十 四 話 で、 こ の 点 版 本 の 孝 子 伝 よ り も 三 話 多 い︒ 挿 絵 三 十 五 図 は、 版 本 の 七 十 一 図 か ら 選 ん で そ れ を 基 に 描 い た も の ら し く 、 構 図 上 の 類 似 が 見 ら れ る が、 版 本 の 挿 絵 が い か に も 簡 略 で あ る の に 比 し て、 本 書 の 挿 絵 は 省 略 す る こ と な く、 か つ 細 密である︒ ま た、 本 書 の 本 文 は、 仮 名 の 版 本 と 文 字 遣 い の 面 で 本 書 の 方 が や や 仮 名 書 き が 多 い の み で、 ほ と ん ど 一 致 し て い る こ と か ら、 こ の 仮 名 版 本 と 密 接 な 関 係 を 有 す る も の と 考 え られる︒

(12)

16

(13)

15

奈良絵本

釈迦一代記

 

寛永、 正保頃 古桐函入   五冊   20,000,000 円 縦 30.1 糎、 横 22.2 糎︒ 袋 綴 装、 大 型 本︒ 表 紙 は 鳥 の 子 紙 に 唐草文様︒ 少傷擦レアリ、題簽ナシ、本文料紙一部手擦レによる薄汚レ、少虫損。 本書は『釈迦の本地』として知られる釈迦の一生を描いた物語 の 絵 入 本︒ 『 釈 迦 の 本 地 』 は 中 世 か ら 近 世 に か け て さ ま ざ ま な か たちで流布したが、なかには美麗な絵巻や絵入本に仕立てられた ものも少なくない︒本書もまた、金泥の下絵が施された本文料紙 に、金切箔や金彩をふんだんに用いた極彩色の挿絵が添えられた、 きわめて豪華な本である︒ 『 釈 迦 の 本 地 』 の 本 文 は、 刊 本 系 と そ れ 以 外 に 大 別 で き る が、 本書は刊本系のなかでもとくに古活字本の本文に近い︒本書と同 様に古活字本に近い本文をもつ絵入本としては、大英博物館所蔵 の 絵 入 本 が あ る︒ 大 英 博 本 も 本 書 と お な じ く 五 帖 仕 立 て で あ り、 巻分けや挿絵の位置などが一致するところも多いが、挿絵の構図 には共通点はほとんどみられず、それぞれが独自の画面を構成し ている︒ 挿 絵 は 巻 一 に 六 図( う ち 見 開 一 図 )、 巻 二 に 六 図 ( う ち 見 開 一 図 )、 巻 三 に 六 図( う ち 見 開 一 図 )、 巻 四 に 六 図( う ち 見 開 一 図 )、 巻五に五図(うち見開一図)の計二十九図︒太子の誕生、弓競べ、 踰城出家、目連の外道降伏、涅槃の場面が躍動感あふれる筆致で 描かれており圧巻である︒

(14)

18

(15)

19

奈良絵本

はちかつき

 

寛文頃写 桐函入   三冊   2,800,000 円 縦 15.7 糎、 横 23.0 糎︒ 横 本 袋 綴 装、 上 中 下 三 冊︒ 表紙は天地に金切箔を散らした紺紙に金泥で霞を引き、 竹(上) 、蝶と桔梗(中) 、帆舟と葦(下)を描く︒見 返しは布目の銀箔︒表紙中央に金泥下絵のある短冊型 の朱題簽を付し、 本文と同筆で 「はちかつき 上 (中・ 下 )」 と あ る︒ 表 紙 に 剥 落 が 見 ら れ る が、 横 本 紺 表 紙 朱題簽の典型的なお伽草子本仕立で、綴糸を除いては 原 装 で あ る︒ 本 文 料 紙 は 間 似 合 紙︒ 丁 数 は 三 巻 で 計 46 丁、 一 面 十 三 行 書 き、 和 歌 は 十 六 首 あ る︒ 挿 絵 は、 上・中・下巻各五図の計十五図︒絵は天地に水色の雲 を引いて黒で縁取り、構図も単純化されていて簡略素 朴でお伽草子特有の庶民的な親しみを感じさせる︒書 写年代は江戸初期、ほぼ寛文頃と思われる︒新しい桐 函入︒ 表紙破レ補修済、朱長方個人蔵印 「 鉢 か づ き 」 は、 お 伽 草 子 の 中 で も 著 名 な 作 品 で あ る だ け に、 伝 本 の 数 も 極 め て 多 い︒ 『 室 町 時 代 物 語 類 現存本簡明目録』には、写本二十 七部、版本十七種も あ げており、写本の中では奈良絵本形態のものは十六 部を数えることが出来る︒また刊本は、寛永頃の古活 字版以下、江戸初期から中期にかけて度々刊行されて いることからも、この作品が広く流布し、多くの人々 に受容されていたことが知られる︒ 「 鉢 か づ き 」 の 諸 本 の 大 部 分 は 版 本 系 統 に 属 す る が、 本書もまた寛永版や万治版とほぼ同じ本文をもってい る︒挿絵の数は十五図でどの版本よりも多い︒

(16)

23

20

奈良絵本

ふんしやう

 

寛文、 延宝頃写 茶漆函入   三冊   9,000,000 円 縦 30.0 糎、 横 22.5 糎︒大型袋綴装、 上中下の三冊︒ 表 紙 は 薄 縹 色 四 君 子 模 様 の 緞 子、 見 返 し は 布 目 金 箔︒ 表紙左上に金泥砂子で雲霞を引いた短冊型題簽を付し、 本文と同筆で「ふんしやう 上(中・下) 」とある︒綴 糸 を 除 き 原 装 ( 僅 カ 擦 レ ア リ ) ︒ 本 文 料 紙 は 上 質 の 鳥 の 子 紙 で、所々に薄・蔦・帆舟・松・沢瀉・紅葉・萩などの 金 泥 下 絵 が あ る︒ 丁 数 は 三 冊 で 計 82 丁、 一 面 十 行、 和歌は十二首︒挿絵は計十九図︒うち上巻下巻各一図 連続の見開きがある︒絵は金銀を豊富に用いた極彩色 の華麗な大和絵で、専門絵師の手になるもの︒書写年 代 は ほ ぼ 江 戸 初 期 で あ ろ う︒ 茶 漆 の 桐 函 入︒ 虫 損 補 修 済、 各 巻 巻 頭 に 個 人 蔵 印   な お、 本 書 の 中 巻 七 丁 目 は、 の ど と 小 口 が 誤 っ て 逆 に 綴 じ 込 ま れ て お り 、 袋 綴 に な っ て い な い ︒ 『 文 正 草 子 』 は お 伽 草 子 の 中 で 最 も 伝 本 の 多 い 作 品 で あ る︒ 『 室 町 時 代 物 語 類 現 存 本 簡 明 目 録 』 に は、 写 本六十六部、版本は寛永刊絵入大本以下、十五種もの 版を掲出して いる︒写本の中ではとりわけ奈良絵本・ 絵 巻が多く、奈良絵本三十八部、絵巻八部を数えるこ とが出来る︒このほかにも十数部の存在が知られるの で、恐らく現存する『文正草子』の奈良絵本・絵巻は 優に百部を超えるであろうと思われる︒これは、この 『 文 正 草 子 』 の 内 容 が、 賤 し い 下 男 が 製 塩 で 成 功 し て 長者になるという、極めてめでたい庶民の立身出世の 夢を語っている所から、 「祝の草紙」 とか 「めでた物語」 などと呼ばれ、祝儀物として早くから広く庶民層にま で読まれたことによるものと考えられる︒ このように『文正草子』は伝本の数が多く、しかも そ れ ぞ れ が 多 か れ 少 な か れ 異 文 を 持 っ て い る よ う で、 現存諸本の過半は版本系統に属するという︒その点本 書の本文も、大まかには版本系統のいわゆる流布本系 と認められるが、とりわけ寛永頃版丹緑本の本文に最 も近いようである︒この寛永版系の特質の一つは、 「十 二 首 の 歌 が 存 在 す る こ と で あ る 」、 と 言 わ れ て い る が 本 書にも存在し、その歌句も多少の入れかわりがある が ほぼ同じである︒以上のほかにも、寛永版本と本書 との間には小異が散見されるし、仮名漢字の区別や仮 名遣いの相違なども同じではない︒挿絵の数も寛永版 本は十二図であるが本書は十九図であり、当然のこと ながら絵柄も相違するところが多い︒これらを勘案す るに、寛永版と本書は、本文の上で同系統の極めて近 い関係にあるものの、直接的な書写関係はないと思わ れる︒ 和洋古書善本目録_第25号秋.indd 23 13/10/12 13:44

(17)

21

奈良絵本

ふんしやう

  寛文頃写 桐函入   三冊   3,800,000 円 縦 24.6 糎、 横 18.2 糎︒ 袋 綴 装、 上 中 下 三 冊︒ 表 紙 は 紺 紙 に 金 砂 子 の 雲霞を引き、その間に金泥で、萩・桔梗・蝶などを描く︒見返しは金切箔︒ 題簽は中央に、上下巻は紅葉模様の緑色の短冊、中巻は唐草模様の薄紅の 短冊を貼り、それぞれ「ふんしやう 上(中・下) 」とある︒原装︒本文料 紙 は 鳥 の 子 紙︒ 丁 数 は、 全 三 冊 で 計 76 丁︒ 一 面 十 行 書 き、 和 歌 は 十 二 首︒ 挿絵は、上巻九図、中巻七図、下巻十図の計二十六図︒絵は極彩色の細密 な大和絵だが金銀は少なく、天地の雲霞も浅葱色である︒筆跡は細く小さ 目で女手と思われ、書写年代はおよそ江戸初期の寛文頃︒新しい白木の桐 函入︒ 表紙少手擦レ・湿気跡シミアリ、僅少虫損、各巻巻頭に個人蔵印 本 書 も 前 掲 書 と 同 様 に、 十 二 首 の 歌 を 含 み、 寛 永 版 系 と 認 め ら れ る が、 歌句には若干の相違が見られ、版本系ではあるが寛永版と直接関係のない ことがわかる︒本書の大きな特色は、挿絵が二十六図も含まれていること で、現在知られる諸本の中 では、京大図書館本に次いで挿絵を多く持って い るということになる︒

22

奈良絵本

文正草子

 

元禄頃写 一帙三冊   2,000,000 円 縦 15.9 糎、 横 13.4 糎︒ 横 本、 袋 綴 装︒ 元 表 紙、 題 簽 付 ( 下 巻 少 破 レ ) ︒ シミ湿気跡、個人蔵印 『 文 正 草 子 』 は め で た ず く め の 作 品 で あ り、 江 戸 時 代 に は 御 伽 文 庫 の 巻 頭 に 据 え ら れ、 正 月 の 読 み 初 め に も 用 い ら れ た︒ 絵 巻、 奈 良 絵本、絵入版本など、伝本の種類、数の多いことで知られる︒ 本 書 も 前 者 と 同 様、 本 文 は 寛 永 頃 刊 本 と 概 ね 一 致 す る︒ 挿 絵 の 位 置 も、 寛 永 頃 刊 本 と 一 致 す る も の が 過 半 数 を 占 め る︒ た だ し 結 末 部 分 に 特 色 が あ り、 「 祝 い 事 に も 祝 言 に も 先 こ の 草 子 を 読 み 侍 り 給 ふ べき也」とあるように、祝儀物の性格が強調されている︒ 元 禄 頃 写 か と 推 測 さ れ る 横 型 奈 良 絵 本 で あ り、 挿 絵 は 稚 拙 な が ら も味わいのある筆致である︒

(18)

31

31

長谷雄卿草子絵巻

 

江戸初期写 古木函入   一巻一軸   紙 高 3 8 .5 糎 、 長 サ 1 1 米 5 0 . 0 糎 ︒ 表 紙 は 緑 色 金 箔 柄 入 絹 表 紙 ︒ 見 返 し は 金 箔︒ 料 紙 は 鳥 の 子 紙︒ 極 彩 色︒ 表 紙 擦 レ、 傷 ミ・ 料 紙 に 折 レ 筋 目アリ。詞書部分に擦レ、薄汚レ。個人旧蔵印 本 書 は 鎌 倉 末 期、 十 三 世 紀 末 か ら 十 四 世 紀 前 半 に 製 作 さ れ た と い わ れ る 永 青 文 庫 蔵 の「 長 谷 雄 草 子 」 を 底 本 と し た 模 本 で あ る︒ 第 二 段 の 絵 と 詞 書 に 一 部 錯 簡 が 見 ら れ、 ま た 第 一 段 詞 書 の 末 尾 が 一 行 分 欠 け て い る が、 仕 立 て 直 す 際 に 錯 簡、 欠 失 が 生 じ た も の と 思われる︒ 物 語 は 平 安 時 代 に 文 才 を も っ て 聞 こ え た 紀 長 谷 雄 中 納 言( 845 ~ 912 )に ま つ わ る 伝 説︒ 長 谷 雄 が 朱 雀 門 の 鬼 と の 賭 け に 勝 ち、 絶 世 の 美 女 を 貰 い 受 け る が、 鬼 と の 約 束 を 違 え た た め 美 女 は 水 と な っ て 溶 け て し ま い、 こ の 違 約 が 鬼 の 怒 り に 触 れ た が、 北 野 天 神 を 念 じたところ助かったというエピソードによって構成されている︒

32

長谷雄卿草子絵巻

 

江戸初期写 布函入   一巻一軸   750,000 円 紙 高 33.0 糎、 長 サ 9 米 2.0 糎︒ 布 表 紙、 見 返 し 楮 紙︒ 台 紙 貼 込︒ 料紙は鳥の子紙︒ 挿絵一部に虫穴、薄汚レ。個人旧蔵印 前 掲 と 同 じ く、 永 青 文 庫 蔵「 長 谷 雄 草 子 」 の 模 本 ︒ 冒 頭 第 一 段 の 詞 書 お よ び 第 五 段 の 詞 書 末 尾 一 文 と、 挿 絵( 長 谷 雄 が 路 上 で 鬼 と出会い、鬼が逃げていくまでの図)が欠落している︒ 和洋古書善本目録_第25号秋.indd 31 13/10/12 13:45

(19)

34

ほうらい

─蓬萊物語絵巻─

 

寛文頃写 黒漆桐函入   二巻二軸   11,000,000 円 紙 高 各 3 1 . 7 糎 、 長 サ ( 上 巻 )8 米 4 5 . 8 糎 、( 下 巻 )9 米 5 0 . 5 糎︒ 本 文 料 紙 上 巻 十 七 紙 継 ぎ、 下 巻 二 十 紙 継 ぎ︒ 大 型 巻 子 装、 上下二巻の絵巻︒表紙は鉄色地に菊唐草の金襴︒題簽は金泥下 絵 の あ る 短 冊 型 鳥 の 子 紙 に 本 文 と 同 筆 で「 ほ う ら い 上 」・ 「 蓬 萊 下 」 と あ る︒ 見 返 し は 布 目 の 金 箔︒ 軸 頭 は 直 径 二・ 五 糎 の 象牙︒これらの装丁はすべて原装である︒本文料紙は金泥下絵 のある上質の鳥の子紙︒ 紙背は金切箔を散らした雲母引き紙 (部 分 汚 レ ア リ ) ︒ 一 行 の 字 詰 は 約 十 六 ~ 十 八 字 前 後︒ 筆 跡 は 伸 び の あ る流麗、漢字まじりの仮名書き︒所々読みにくい漢字には振仮 名をつけている︒挿絵は、上巻五図(巻末は余白がほとんどな く、 断 ち 切 り さ れ て い る )、 下 巻 七 図 の 計 十 二 図︒ う ち 上・ 下 巻 と も 90 糎 以 上 の 長 大 図 が 各 二 図 あ る︒ 絵 は 天 地 の 雲 に 金 切 箔砂子を散らし、金彩を多用した極彩色の大和絵で、絢爛目を 奪うものがある︒豪華な装丁や料 紙とともに、この種の絵巻の 中 では最上の部類に属するものであろう︒製作年代は江戸初期、 ほ ぼ 寛 文 頃 と 推 定 さ れ る︒ 各 巻 折 レ・ シ ワ な ど 補 修 済、 少 筋 目 ア リ、   表 裏 両 面薄汚レアリ。各巻巻頭に二種の蔵印有 内容は不老不死の薬があるという蓬萊山(常世国)と、これ らにまつわる唐尭、田道間守、始皇帝・徐福、漢武帝・西王母、 玄宗・楊貴妃の伝説を挙げ、最後に浦島説話に近い安曇安彦の 異郷訪問譚で幕を閉じる︒ (渡辺匡一氏「お伽草子事典」 ) 「蓬萊物語」は「蓬萊山」 「蓬萊山由来」などの名称で伝来し ている諸本もあるが、現在知られる伝本の数はさして多い方で はない︒奈良絵本としては、京大美学研究室蔵本、実践女子大 蔵横本二冊、スペンサー・コレクション大型本二冊など、絵巻 としては、元赤木文庫蔵二巻を始め、西ドイツ国立図書館蔵二 巻などの四部、このほか、旧ハイド・コレクションの中にも寛 文頃の見事な絵巻二巻が見られ、二、三の重複はあるとしても、 この作品の伝本は更に数部を加えることができる︒これらの諸 本の本文は、寛文四年版本が形態・本文とも に若干異なってい る ほかはほとんど同一で、挿絵の数も九から十一図となってい る︒ こ の 点 本 書 は 挿 絵 が 十 二 図 あ っ て、 他 本 よ り も 一 図 多 い︒ 京大美学美術研究室本と本書の本文との比較をすると、初段の 四十一行中わずかに十三個所の異同を見るのみ、それもほとん ど異文というほどのものではない︒ただ本書の方が漢字を多く 用いているが、振仮名を付しているものも多いので、より理解 しやすくなっていると言える︒

(20)

34

(21)

35

きようしゆん

 

寛文、 延宝頃写 黒漆桐函入   二巻二軸   18,000,000 円 紙 高 上 下 と も 31.3 糎、 長 サ( 上 巻) 12 米 86.0 糎、 ( 下 巻) 16 米 53.0 糎、 本 文 料 紙 三 十 二 紙 継 ぎ の 長 巻 絵 巻、 大 型 の 巻 子 本︒ 表紙は香色地に緑と金の葉付菊花紋の緞子装︒金泥下絵のある短 冊型朱題簽に「きようしゆん 上(下) 」と墨書する︒見返しは布 目金箔︒軸は直径 2.2 糎の象牙︒これらの装丁は原装と思われる︒ 本 文 料 紙 は 厚 手 の 鳥 の 子 紙 で、 下 絵 に 金 泥 で 雲 霞・ 遠 山・ 帆 舟・菖蒲・蓬・萩・桜・竹等を描く︒詞書は上下各七段ずつ︒筆 跡 は 肉 太 の 伸 び の あ る 能 筆 で、 ほ と ん ど が 仮 名 書 き で あ る︒ 極 少 虫入、部分文字詞書擦レ、各巻頭に個人蔵印 挿 絵 は 上 下 二 巻 で 計 十 二 図︒ ま た 上 下 巻 に そ れ ぞ れ 三 図 ず つ、 95 糎 に も お よ ぶ 長 大 図 が あ る︒ 絵 は 上 下 の 雲 に 金 切 箔 を 散 ら し、 絵中にも金彩を多用した極彩色の大和絵で、その濃彩な画面は絢 爛目を奪うものがある︒製作時期は江戸初期、ほぼ寛文、延宝頃 と見られる︒ 内容は、中国古代の聖帝と称えられた堯帝・舜帝に ついての十 四 段からなる物語で、お伽草子の「二十四孝」などにも伝えられ ているが、中には耳新しい説話もあって興味深い︒堯・舜につい ての事蹟や説話を、本書のような形にまとめたものは他に所伝を 聞 か ず、 「 室 町 時 代 物 語 類 現 存 本 簡 明 目 録 」 や『 国 書 総 目 録 』 に も「堯舜」と題する奈良絵本や絵巻は見いだせない︒ただし『弘 文 荘 待 賈 古 書 目 』 第 二 十 六 号 と 三 十 号 に、 「 堯 舜 物 語 絵 巻   寛 文 元禄頃写   奈良絵本」とあるが、これはその寸法や装丁から見て、 本書そのものと思われる︒したがって本書は、現在知りうる範囲 においては、他に伝存を見ない孤本ということであろうか︒

(22)

36

(23)

37

御曹子島渡り

(下巻)

 

天正・文禄頃写 茶漆桐函入   一巻一軸   5,500,000 円 紙 高 30.9 糎、 長 サ 11 米 42.0 糎 の 大 型 巻 子 装 一 巻 の 絵 巻 (下巻残欠) ︒ 表紙は枯茶色の地に牡丹唐草の金襴︒ 題簽はな く、 見 返 し は 金 銀 の 切 箔 散 ら し︒ 軸 頭 は 直 径 1.8 糎 の 象 牙︒ 裏 打 紙 は 銀 砂 子 を 一 面 に 散 ら し た 鳥 の 子 紙︒ 丁 寧 な 装 丁 は、 江 戸 中 期 頃 の 補 装 と 思 わ れ る︒ 本 文 料 紙 は 上 質 の 鳥 の 子 紙 で、 長 短 二 十 八 紙 継 ぎ︒ 金 銀 泥 で 蝶・ と ん ぼ・ 朝 顔・ 蔦・ 葡 萄 な ど の 下 絵 を 大 柄 に 描 く︒ 冒 頭 も「 御 さ う し お ほ し け る は ~ 」 と 中 途 で 始 ま っ て い る が、 内 容 か ら 見 て お 伽 草 子 の「 御 曹 子 島 渡 り 」 の 後 半 部 で あ る こ と が わ か る︒ 詞 書 は 一 応 九 段 に 分 か れ て い る が、 筆 跡 は 大 ぶ り の 堂 々 た る 能 筆 で、 所 々 の 漢 字 に は 別 筆 で 細 字 の ふ り が な が 付 け ら れ て い る︒ 挿 絵 は 八 図 あ る が、 第 五・ 六・ 七 図 は 構 図 が 連 続 し て い て も と は 一 連 の 長 大 図 で あ っ た ら し く、 原 形 は 六 図 と 見 るべきか︒ 挿 絵 は 天 地 の 雲 霞 に 金 切 箔 砂 子 を 散 ら し、 金 彩 を 多 用 し た 極 彩 色 の 大 和 絵 で あ る が 、 古 雅 な 趣 き が 感 じ ら れ る︒ 製 作 時 期 は か な り 遡 っ て 室 町 末 期、 天 正・ 文 禄 頃 と 認 め て よ い か と 思 わ れ る︒ 茶 色 漆 塗 り の 新 し い 桐 函 入︒ 料 紙 擦 レ、 折 レ 筋目アリ、本文ややツカレ、個人蔵印 本 書 に は 貼 り 違 い に よ る 錯 簡 が あ る︒ そ の 錯 簡 は 本 書 全 体 に 及 び、 上 巻 の 数 行 の 文 章 が 欠 落 し て い る こ と が 分 か る が、 後 半 で 補 填 さ れ て い る よ う に も 見 ら れ る︒ こ れ ら 錯 簡 を 整 理 し て み る と、 本 書 は 詞 書 六 段、 絵 六 図 と い う こ と に なる (錯簡の詳細についてはご照会下さい) ︒ 「 御 曹 子 島 渡 り 」 の 伝 本 は あ ま り 多 く は な い︒ 「 室 町 時 代 物 語 類 現 存 本 簡 明 目 録 」 に よ れ ば、 絵 巻 は、 大 東 急 文 庫 蔵 絵 巻 二 巻、 赤 木 文 庫 旧 蔵 絵 巻 二 巻、 山 田 平 十 郎 氏 旧 蔵 奈 良 絵 本 三 冊 な ど で、 こ の ほ か『 弘 文 荘 待 賈 古 書 目 』 第 二 十 一 号 に「 し ま 渡 り 」 と 題 す る 奈 良 絵 本 三 冊 が 見 え る が、 い ず れ も 江 戸 時 代 の 伝 本 で あ る︒ そ の 点 本 書 は 室 町 期 ま で 遡 る こ と が 出 来 る と 思 わ れ る の で、 下 巻 の み の 残 欠 本 な が ら、 現 在 知 り う る こ の 物 語 の 伝 本 の 中 で は、 も っ と も 古 い と 考 え ら れ る︒ こ の 物 語 の 本 文 は、 諸 本 に よ っ て か な り の 相 違 が あ る よ う で 、 こ の う ち 本 書 は 大 東 急 文 庫 本 に ほ と ん ど 合 致するが、なお小異が散見される︒

(24)

39

38

前九年合戦絵巻

 

江戸後期写 桐函入   一巻一軸   950,000 円 紙 高 36.2 糎、 長 サ 11 米 80.0 糎︒ 緑 色 花 菱 模 様 絹 表 紙︒見返しは金切箔散らし︒料紙は鳥の子薄葉紙︒絵図 貼 込 総 裏 打 ち︒ 全 五 図 ( 内 二 紙 分 余 欠。 錯 簡 ア リ ) 、 極 彩 色︒ 詞 書ナシ︒ 本紙僅カ破レ薄汚レ、折レ筋目アリ、個人旧蔵印二種 本書は、国立歴史民俗博物館蔵「前九年合戦絵詞」を 底本とした模本と思われる︒原本の成立は鎌倉時代、十 三世紀末期頃といわれている︒ 絵の第一図と第二図が入れ替わる錯簡があり、また第 二図目の絵の冒頭の一部(頼義が陸奥に出向、到着する 場面)が欠けている︒更に第五図末尾の一部(宗任の退 却の場面)が二紙分ほど欠けている︒歴博本は過去に何 度か解体修理を経ており、そのため欠失、錯簡があるが、 その影響であろうと思われる︒ また底本と異なり詞書がないが、主な武将は人物の横 に名前が書き込まれている︒ 本物語は、永承六 ( 1051 )年に始まった、陸奥守源頼義 と 安 倍 氏 の 戦 い「 前 九 年 の 役 」 の 様 子 を、 「 陸 奥 話 記 」 の筋に依りながら描かれた、代表的な合戦絵 巻である︒ 和洋古書善本目録_第25号秋.indd 39 13/10/12 13:46

(25)
(26)

41

40

平治物語絵巻

(伏見常盤巻)

江戸中期写 桐函入   一巻一軸   1,900,000 円 紙 高 36.0 糎、 長 サ 9 米 40.0 糎、 表 紙 は 緑 枯 茶 色 扇 面 模 様 の 緞 子 装︒ 見 返 し は 総 金 箔、 軸 は 直 径 2 糎 の 象 牙 で 緒 は 緑 色 平 緒 の 極 上 装、 題 簽 は 上 質 の 和 紙 貼 付︒ 料 紙 は 厚 手 鳥 の 子 紙 に 紙 背 も 同 紙 に よ る 総 裏 打︒ 個 人 蔵印 本書はおよそ前半が「平治物語」巻下の「常盤落ち らるる事」 、「常盤六波羅に参る事」で、絵、詞書とも これを主としたお伽草子風とみられるが、後半はいわ ゆる「三条殿焼討の巻」を中心に絵詞されている︒ 特に絵柄は武士や群衆の描写が繊細を極め、色彩も 美しく、洗練された絵巻物といえる︒なお巻末奥書に は「 こ の 一 ま き は 仁 和 寺 お む ろ 法 守 親 王 の お 手 な る、 絵は土佐派なり云々」寛永九年八月十五日と墨書され、 尾に嶋田蔵(京都嶋田家カ)とある︒

41

後三年合戦絵巻

 

江戸後期写 三巻三軸   1,500,000 円 紙 高 4 2 .5 糎 、 長 サ ( 上 巻 )1 4 米 6 8 糎 、( 中 巻 )1 3 米 73 糎、 ( 下 巻) 12 米 39 糎 の 長 巻︒ 絹 表 紙︒ 見 返 し は 金 切 箔 散 ら し ︒ 本 文 料 紙 は 鳥 の 子 紙︒ 軸 頭 は 直 径 1.9 糎の紫檀︒挿絵は上巻五図、中巻五図、下巻四図の全 十四図︒極彩色︒ 折レ、筋目アリ、個人蔵印 後 掲( 42 )と 同 じ く、 東 京 国 立 博 物 館 蔵「 後 三 年 合 戦絵詞」を底本とした模本であると思われる︒ 序文が欠、また下巻の第一段の挿絵、詞書および第 二段の詞書、 奥書が欠けている︒また中巻の奥書 (「詞   左 少 将 保 脩 」) が、 底 本 で は 巻 末 に 入 る が、 本 書 で は 第五段の詞書の直後に書かれている︒ こ の よ う に、 序 文 や 本 文 の 詞 書 の 部 分 の 欠 落 な ど、 一、二の移動があるが、後掲より絵柄は大きく、彩色 は鮮やかである︒ 40)平治物語絵巻 (伏見常盤巻) 41)後三年合戦絵巻 和洋古書善本目録_第25号秋.indd 41 13/10/12 13:46

(27)

42

後三年合戦絵巻

 

江戸後期写 桐函入   三巻三軸   1,600,000 円 紙高各巻 49.5 糎、 長サ(仁巻) 18 米 83.8 糎、 (智巻) 15 米 76.4 糎、 ( 勇 巻) 18 米 0 糎︒ 濃 紺 花 柄 絹 装 表 紙 ( 擦 レ、 傷 ア リ ) ︒ 料 紙 は 鳥 の 子 紙︒ 軸 頭 は 直 径 2.0 糎 の 紫 檀︒ 挿 絵全十四図(仁:四図、智:五図、勇:五図)長短アリ︒ 極彩色︒ 少虫入、裏打ち剥レ、個人旧蔵印 東京国立博物館蔵「後三年合戦絵詞」を底本とした模 本である︒原本の成立は貞和三 ( 1347 )年で、制作当初は 序文一巻を伴う六巻本の絵巻として調進されたとされる︒ 本書は「仁巻」序文と「智巻」第一段の詞書および絵 の 一 部 が 入 れ 替 わ っ て い る の に 加 え、 「 仁 巻 」 第 二 段 の 挿絵と第一段も入れ替わり、更に「仁巻」第四段の詞書 と挿絵の順序が入れ替わる錯簡がそれぞれある︒各巻末 の 奥 書 の う ち、 「 仁 巻 」 は、 底 本 で は「 詞   仲 直 朝 臣 」 であるところ、本書は「詞   文殿寄人仲直」となってい る︒ 奥 書 に 関 し て、 「 智 巻 」、 「 勇 巻 」 に 底 本 に は な い 序 文、 奥 書 が 見 ら れ、 模 写 の 経 緯 が 詳 し く 書 か れ て い る ︒「 智 巻」序文には「右以大乗院宮尊圓法親王之真蹟青木永教 模写之寛政六年歳在甲寅脱春借覧之臨書蔵」とある︒そ し て「 勇 巻 」 末 尾 の 奥 書 で は「 板 谷 本 ニ 比 印 之 写 ア リ 」 と 書 か れ、 二 種 の 蔵 印 が 模 写 さ れ て い る ほ か、 「 右 後 三 年軍記書画三巻者播磨宰相輝政卿北方(源普宇子東照神 君之御女嬬良正院)之所持而彼家□世之珍蔵也~」に始 ま り「 寛 政 十 二 年 三 月   松 岡 平 次 郎 辰 方( 花 押) / 右 三 巻 以   赤 穂 侯 御 本 校 合 事 / 同 年 八 月 廿 一 日 / 丹 治 辰 方 」 で終わる二一行の奥書によって、その来歴を伝えている︒

(28)

45

45

武家はんしやう

 

寛文・延宝頃写 桐函入   二巻二軸   11,000,000 円 紙 高 各 3 2 .5 糎 、 長 サ ( 上 巻 )1 2 米 2 3 .0 糎 、( 下 巻 )1 1 米 6 7 .0 糎 の 大 型 巻 子 装 ︒ 上 下 巻 は そ れ ぞ れ 本 文 料 紙 二 十 七 紙 ・ 二 十 六 紙 継 ぎ ︒ 表 紙 は 萌 黄 色 の 地 に 雲 文 の 金 襴 ︒ 題 簽 は 金 銀 の 霞 を 引 い た 短 冊 型 鳥 の 子 紙に 、 本 文 と同 筆 で 「 武 家 は ん し や う 上 ( 下 )」 と あ る ︒ 見 返 し は 布 目 の 金 箔 ︒ 軸 頭 は 直 径 2 .8 糎 の 象 牙 ︒ 原 装 ︒ 本 文 料 紙 は 一 面 に 金 の 切 箔 砂 子 を 撒 い た 上 質 な 鳥 の 子 紙 、 紙 背 も 一 面 に 雲 母 を 引 き 金 切 箔 を 散 ら し て い る ︒ 筆 跡 は 濃 淡 の 少 な い 手 慣 れ た 筆 ︒ 挿 絵 は 上 下 巻 各 五 図 ず つ 、 合 計 で 十 図 で あ る が 、 こ の う ち 二 紙 に わ た る 長 大 の 挿 絵 が 、 上 巻 に 二 図 、 下 巻 に 一 図 あ る ︒ 絵 は 天 地 の 雲 に 金 切 箔 砂 子 を 散 ら し 、 画 中 に も 金 を 多 用 し た 極 彩 色 の 大 和 絵 で 、 物 語 の 内 容 上 、 動 き の あ る 勇 壮 な 戦 乱 の 場 面 が 多 い ︒ 装 丁 ・ 料 紙 ・ 筆 跡 ・ 挿 絵 と も に 、 こ の 種 の 絵 巻 と し て は 最 上 の 部 類 に 入 る も の と 思 わ れ る ︒ 製 作 年 代 は お よ そ 江 戸 初 期 、 寛 文 ・ 延 宝 頃 と 推 定 さ れ る ︒ 部 分 墨 汚 レ 、 少 擦 レ 、 折 ア リ 、 個 人 蔵 印 『武家繁昌』は、中国や日本の武門に関わる歴史 的 説 話 を 集 め た も の で、 伝 本 は 奈 良 絵 本 や 絵 巻 の 形でかなり多く見られる︒ 「室町時代物語類現存本 簡 明 目 録 」 に よ れ ば、 奈 良 絵 本 六 部、 絵 巻 七 部 の 存 在 が 知 ら れ る が、 そ の 他 の 一、 二 を 加 え れ ば、 少 な く と も 十 五 部 以 上 の 伝 存 が 確 認 で き る︒ こ れ ら の 諸 本 の 大 部 分 は 上 下 二 冊 本、 あ る い は 二 巻 本 で、 挿 絵 や 本 文 も 大 き な 差 異 は な い よ う で あ る が、 そ の 中 に あ っ て、 本 書 は や や 独 自 の 本 文 を 有 し て いると思われる︒ 和洋古書善本目録_第25号秋.indd 45 13/10/12 13:46

(29)
(30)

49

52

大江山絵巻

 

万治、 寛文頃写 二重函入   三巻三軸   12,000,000 円 紙 高 各 34.6 糎、 長 サ 計 41 米 56.0 糎 の 長 巻、 大 型 巻 子 装 三 巻︒ 表 紙 は 金 茶 色 地 に 麒 麟 模 様 の 金 襴︒ 題 簽 は 金 砂 子 散 ら し の 短 冊 型 鳥 の 子 紙 に 本 文 と は 別 筆 で「 巻 一 」 と あ る︒ 見 返 し は 金 箔︒ 八 双 は 鉄︒ 軸 頭 は 直 径 二・ 一 糎 の 紫 檀︒ こ れ ら は 江 戸 末 期 頃 の 補 装 と 思 わ れ る︒ 本 文 料 紙 は 金 切 箔 や 金 砂 子 を 雲 霞 の よ う に 散 ら し た 上 質 の 鳥 の 子 紙 で、 裏 打 紙 も 金 箔 を 散 ら し た 雲 母 引 き の 鳥 の 子 紙︒ 詞 書 は 巻 一 が 八 段、 巻 二 が 七 段、 巻 三 が 七 段 の 計 二 十 二 段︒ 筆 跡 は や や 細 め の 能 筆 で、 「 山 ぶ し ど も 」「 し ゆ て ん ど う じ 」 な ど の如く濁点をつけている︒ 虫入補修跡、 各巻折レ、 筋目彩色一部擦レ、 剥脱アリ。 各巻巻頭に個人 蔵印 挿 絵 は、 巻 一 が 七 図、 巻 二 が 七 図、 巻 三 が 九 図 の 計 二 十 三 図 で あ る が、 そ の す べ て が 長 サ 95 糎 前 後 の 長 大 図 と い う 豪 華 さ で、 と り わ け 巻 三 第 七 図 は そ の ま た 二 倍 の 190 糎 以 上 に も 及 ぶ 超 長 大 図 で、 絵 巻 な ら で は の 迫 力 を 感 じ さ せ る︒ 絵 は 天 地 の 雲 に 金 切 箔 砂 子 を 散 ら し た 極 彩 色 の 大 和 絵 で、 人 物 の 動 作 や 鬼 ど も の 表 情 、 草 木 の 描 写 等 々、 す み ず み ま で 入 念 に 描 か れ て お り、 名 あ る 絵 師 の 大 作 の 一 つ に 数 え 得 る 作 品 と 思 わ れ る︒ 惜 し む ら く は 保 存 が あ ま り 良 好 で な く、 緑 青 の 部 分 の 処 々 に 剥 落 が 見 ら れ る︒ 制 作 時 期 は 江 戸 初 期、 ほ ぼ 万 治・ 寛 文 頃 と 推 定 さ れ る︒ 巻 子 は 二 重 の 桐 函 に 納 め ら れているが、 外函・内函ともに新しい︒ 外函の蓋に、 墨で 「大江山絵巻三巻」 と 記 さ れ て い る︒ た だ 本 書 の 巻 三 に は、 貼 り 違 い に よ る 錯 簡 が あ る︒ 現 行 の 第 三・ 四 図 が 第 六 図 の 後 の 詞 書 の 継 目 の 部 分 に 入 る の が 正 し い 位 置 と な る︒ 「大江山絵巻」は、 「酒顚童子」 「大江山絵詞」などとも称され、伝本は多 い︒ 別 に 酒 顚 童 子 の 棲 処 を 伊 吹 山 と す る 作 品 も あ り、 こ の 系 統 の 伝 本 も 少 な く な い︒ 大 江 山 系 の「 酒 顚 童 子 」 の 伝 本 と し て は、 逸 翁 美 術 館 蔵 の 南 北 朝 頃 の 絵 巻 が 有 名 で あ る が、 こ の 絵 巻 に は 大 き な 欠 落 が あ っ て 完 全 で は な い︒ 他 に 大 江 山 系 の 絵 巻 と し て、 東 洋 大 学、 大 東 急 文 庫、 慶 応 大 学、 サ ン ト リ ー 美 術 館 蔵 の 他 、 ス ペ ン サ ー・ コ レ ク シ ョ ン、 チ ェ ス タ ー ビ ー テ ィ・ コ レ ク シ ョ ン の 各 三 巻 な ど の 存 在 が 知 ら れ る︒ こ れ ら の 諸 本 の 中 に は、 同 じ 大 江 山 系 で は あ る が、 本 文 は も と よ り 物 語 の 展 開 も 違 う も の が あ り、 ど の 本 文 が 原 態 に 近 い か は に わ か に 判 断 で き な い と 言 わ れ て い る︒ 本 書 の 本 文 は、 若 干 の 相 違 は あ る が、 ほ ぼ お 伽 草 子 の 本 文 と 同 じ で、 挿 絵 も、 お 伽 草子本は十図と少ないが、いずれも本書の絵柄と重なる︒ 和洋古書善本目録_第25号秋.indd 49 13/10/12 13:47

(31)
(32)

51

53

 

元禄頃写 桐函入   三巻三軸   11,000,000 円 紙 高 各 巻 31.0 糎、 長 サ( 上 巻) 16 米 43.0 糎、 ( 中 巻) 17 米 24.0 糎、 ( 下 巻) 16 米 54.0 糎 の 長 巻 で 大 型 巻 子 装 絵 巻︒ 表 紙 は 緑 黄 色 の 地 に 灰 緑 色 の 蜀 江 の 浮 織 物 で、 題 簽 は な い︒ 見 返 し は 大 小 の 金 切 箔 散 ら し︒ 軸 頭 は 直 径 1.8 糎 の 黒 檀︒ こ れ ら は 江 戸 末 期 頃 の 補 装 と 見 ら れ る︒ 本 文 料 紙( 全 八 二 紙 継 ぎ )、 裏 打 紙 も 共 に 楮 紙 で、 詞 書 は 上 巻 九 段、 中 巻 十 段、 下 巻 八 段 の 計 二 十 七 段︒ 和 歌 は 十 七 首︒ 筆 跡 は や や 小 さ め の 癖 の あ る 書 体 で、 運 筆 は 速 い︒ 挿 絵 は 三 巻 で 計 二 十 七 図︒ う ち 上 巻 第 四 図、 中 巻 第 四 図、 下 巻 四・ 五・ 七・ 八 図 は 1 メ ー ト ル 以 上 に も 及 ぶ 長 大 図 で あ る︒ 絵 は 天 地 に 水 色 の 雲 を 引 い た 極 彩 色 の 大 和 絵 で、 絵 柄 は 細 密 で 金 銀 も 多 用、 華 麗 な 出 来 栄 え を 示 し て い る︒ 製 作 時 期 は 江 戸 初 中 期、 ほ ぼ 元 禄 頃 と 思 わ れ る︒ 個 人 蔵 印。 各 巻 一 部 に シ ミ、 剥レ、汚レが僅かずつ見られるが保存は極めて良好。 前 出( 8 ) の『 奈 良 絵 本 』 の 解 題 の よ う に、 『 一 本 菊 』 は 一 名「 白 菊 草 子 」 と も 呼 ば れ、 継 子 い じ め を 主 題 と す る 王 朝 風 の 物 語 で あ る が 、 風 葉 和 歌 集所収の散佚物語 「あだ波」 の改作と言われている︒ 『一本菊』の伝本としては、現在知られる奈良絵 本・ 絵 巻 仕 立 の も の で は、 数 部 を 数 え る に 過 ぎ な い︒ 一 九 八 八 年 十 月 の ハ イ ド・ コ レ ク シ ョ ン の 売 立 目 録 に は 慶 長 頃 の 三 巻 の 絵 巻 が 見 え る が、 こ れ は 極 彩 色 の 絵 二 十 図 を 含 ん で お り、 珍 重 に 値 す る︒ 本 書 も こ の 作 品 の 数 少 な い 絵 巻 の 一 つ で、 挿 絵 二 十 七 図 は、 中 島 仁 之 助 氏 蔵 の 大 型 奈 良 絵 本 の 三 十 六図に次いで多いもの︒ 本書の冒頭は、 「むかしいつれの御時にやありけ ん」とあって、 流布の版本系統が「昔天暦の御時」 と 書 き 出 さ れ る の と は 大 き く 異 な っ て い る︒ こ の 冒 頭 は 京 大 図 書 館 蔵 の「 白 ぎ く さ う し 」 と 題 す る 写本 〔京都大学蔵 「むろまちものがたり」 第四巻所収 (臨 川 書 店 刊 )〕 と 同 様 で、 和 歌 も 十 七 首 と 同 じ で あ り、 本 文 も 同 系 統 と 思 わ れ る が、 所 々 に 異 な っ た 独 自 の本文も見受けられる︒ 和洋古書善本目録_第25号秋.indd 51 13/10/12 13:47

(33)
(34)

55

57

鶴の草子絵巻

 

万治、 寛文頃写 黒漆桐函入   二巻二軸   9,500,000 円 紙 高 各 3 1 .2 糎 、 長 サ ( 上 巻 )9 米 4 5 .0 糎 、( 下 巻 )9 米 9 9 .0 糎︒ 表紙は紺綾地に蔦唐草の金襴︒題簽は細目の短冊型金紙に「鶴 の草子 巻上(下) 」と墨書する︒見返しは金紙、巻末にも金紙 が あ る︒ 軸 は 直 径 2 糎 の 象 牙︒ こ れ ら は 江 戸 末 期 頃 の 補 装 と 思 われる︒本文料紙は一面に金切箔を散らした鳥の子紙、裏打紙 も金銀切箔散らし雲母引きの斐紙で、華麗を極める︒詞書は挿 絵 の 中 に ま で 書 き こ ん で い る 形 が 多 く、 筆 跡 は 小 字 の 能 筆 で、 和歌は連歌一首を含んで八首ある︒料紙には折レ、筋目が少し ずつ見られるが、補修がされている︒ 各巻に個人蔵印 挿絵は上巻十五図、下巻十図の計二十五図︒びっしり書き込 まれている場面が多いが、下巻の第三・四・五図は一紙分に絵 だ け を 描 い て い る︒ 絵 の 大 き さ は 長 短 さ ま ざ ま で、 60 糎 以 上 にもわたる長大図もある︒絵は写実性のある極彩色の大和絵で、 調度や衣装に金銀を用いた丁寧な描き方は、いず れ名のある絵 師 の筆になるものであろう︒製作時期は江戸初期、ほぼ万治・ 寛文頃と推定される︒ 「鶴の草子」の伝本は、版本・奈良絵本など少なくない︒ 『室 町時代物語類現存本簡明目録』には、奈良絵本として天理図書 館蔵本以下十一部、他に写本二部、絵巻一部を挙げている︒こ の他大谷女子大学図書館蔵奈良絵本三冊、大阪青山女子短大蔵 絵 巻 三 巻 な ど の 存 在 も 知 ら れ て い る が、 ほ と ん ど が 冊 子 本 で、 絵巻形態のものは、フリア美術館蔵の小絵巻一巻ほか一点と意 外に少ない︒ 本書は数少ない絵巻の伝本の中にあって、他とは異なる二巻 仕立であり、詞書が画面の中にまで書き込まれている点、形態 的にも古体で特異な伝本ということがいえる︒しかし本文は大 部分の奈良絵本と同じく版本系統で、二十五図の挿絵も、寛文 二年版の二十六図とほぼ同場面と認められるので、本書と寛文 版本とはかなり近い関係にあることは否定できない︒ (挿絵次頁に続く) 和洋古書善本目録_第25号秋.indd 55 13/10/12 13:48

(35)

61

福富草子絵巻

一巻本系

 

江戸後期写 函入   一巻一軸   800,000 円 紙 高 40.0 糎、 長 サ 10 米 38.0 糎 の 大 型 巻 子 装 一 巻 の 絵 巻︒ 表 紙 は 紺 地 に 大 型 の 菊 唐 草 の 金 襴︒ 絹 織 地 に 擦 れ ・ 傷み汚レ、アリ   題簽は無地の短冊型鳥の子紙を貼って あるが書名は記されていない︒見返しは金切箔散らし︒ 長サ約 104 糎の平緒︒八双は竹、軸頭は直径 2.3 糎の 紫檀︒原装︒ 本 文 料 紙 は 鳥 の 子 紙 で あ る が、 周 囲 に 首 尾 各 11 糎、 天 地 1.5 糎 幅 の 銀 紙 に よ る 額 縁 補 装 が 施 さ れ て お り、 正味の紙高は 35 糎となっている︒ 挿絵は物語の展開にしたがって十五場面ほどが連続 して描かれ、画中に詞書が書き込まれている︒内題は ないが奥に「福富草子   画鳥羽僧正覚猷 又云     光信 」とあり、続いて 「 維 G 保 三 壬     辰 歳 春 二 月   文 雅 堂 其 栄 写 之 」 と あ る が、 文 雅 堂 其 栄 に つ い て は『 古 画 備 考 』『 大 日 本 書 画 名 家 大鑑』等にも所見がない︒ 「福富草子」の伝本は多く、 『室町時代物語類現存本 簡明目録』には二十数本が挙げられているが、ほとん どが絵巻形態であることは、この作品 が当初から絵巻 と して制作されたことを物語るものであろう︒ 「 福 富 草 子 」 の 絵 巻 と し て は、 国 宝 の 春 浦 院 蔵 の 二 巻本が有名であるが、本書はこれらとは異なるもので、 春浦院本の下巻に当たる部分の絵をそのまま用いてお 伽草子風に改作したものと思われる︒したがって本書 は一巻で完結した作品であって、この類の諸本もまた 多く伝存する︒この二巻本系統と一巻本系統の違いは、 放屁の芸で長者になる老人の名が異なることや、形態 的には絵巻中に書き込まれている二巻本の詞書がほと んどすべて会話文であるのに対して、一巻本系絵巻の 詞書は地の文が多く物語となっていることなどと言わ れている︒また挿絵についても、一巻本系絵巻のみに ある構図で、二巻本には見えないものものある︒本文 は一巻本系絵巻の諸本とほぼ同様であるが、若干の異 同がある︒

62

福富草子絵巻

 

江戸後期写 函入   二巻二軸   1,200,000 円 紙 高 各 巻 3 7 . 2 糎 、 長 サ ( 上 巻 )8 5 4 . 3 糎 、( 下 巻 )8 8 2 . 0 糎︒ 表 紙は 楮紙をよく鞣した古色ある紙装︒料紙は厚手の鳥の子紙︒ 継 目 に 折 レ、 シ ミ ア リ、 個 人 蔵 印   題 簽 は 墨 書 で「 福 富 ~」 と 薄 く 跡 が 残 って見える︒ 下 巻 の 奥 書 に よ れ ば 伊 川 院 法 印 蔵 本 を 以 て 校 合、 模 写 を し た が、 鎖簡及び誤写が見られるため、栗本瑞見 (丹洲/江戸後期の儒医) 蔵 本 と 校 合、 異 同 を 朱 筆 を 以 て 書 入 れ た、 と 詳 記 さ れ て い る( 文 化 十 四 年 十 一 月 )︒ さ ら に 藤 貞 幹 の 補 筆 奥 書 に よ れ ば、 原 本 妙 心 寺 海 福 院秘蔵本からの伝写本類は詞書等「疑シキノ侭アリ   他日原本ニ就 テ校正スヘシ   己丑 (明和六年カ) 」との転写添書がある︒ 絵はほぼ原本を忠実に模写され、詞書は画中詞で朱筆による補注 がされている︒ 上・下巻の構成は秀武と福富両老人のお伽草子的な物語として広 く知られているが、人物の相貌、姿態など実感のこもった写実的な 描き方はユーモラスに見受けられる︒

(36)

63

67

 

江戸初期頃写 桐函入   一巻一軸   1,600,000 円 紙 高 1 6 .1 糎 、 長 サ 1 2 米 1 4 .8 糎 の 長 巻 ︒ 表 紙 、 見 返 し 共 楮 紙 銀 箔 散 ら し 、 料 紙 鳥 の 子 紙 薄 茶 染 地 、 挿 絵 二 十 八 紙 貼 込︒ 紙 本︒ 題 字「 華 厳 経 」︒ 挿絵一部欠けアリ、個人旧蔵印 「 絵 因 果 経 」 は 釈 迦 の 伝 を 描 い た 経 典 で あ る 『 過 去 現 在 因 果 経 』( 求 那 跋 陀 羅 訳 ) の 経 文 に、 対応する絵を付したものである︒四巻の経典を それぞれ上下二巻に分けて八巻仕立てとし、料 紙の下段に経文を、上段にそれに対応する絵を 配するというかたちをとる︒ 天 平 勝 宝 五 年( 753 )の 正 倉 院 文 書 の 記 録 を 初 見として、京都上品蓮台寺本、醍醐寺報恩院本、 旧 益 田 家 本、 東 京 芸 術 大 学 本 な ど、 「 古 絵 因 果 経 」 と 称 さ れ る 奈 良 時 代 の 遺 品 も 伝 存 す る が、 本絵巻はそのうちの東京芸術大学本の絵のみを、 彩色を含め忠実に模写したものである︒東芸大 本は『過去現在因果経』巻四の後半部分に相当 し、三迦葉、頻毘娑羅王、舎利弗、目揵羅夜那 ( 目 連 ) ら の 帰 依 に つ づ い て、 経 典 冒 頭 で 過 去 世のこと として語られた善慧仙人の話が釈迦の 本 生譚であったことが明かされる経典の末尾ま でが描かれている︒東芸大本には一部欠落があ り、本絵巻はそれを継承するので、東芸大本が 現在のかたちになった後の模写と考えられる︒ 模 写 の 時 期 は 不 明 な が ら、 「 古 絵 因 果 経 」 独 特の素朴な筆致をよく伝えるもので、おそらく 江戸初期頃の写しと思われる︒ 和洋古書善本目録_第25号秋.indd 63 13/10/12 13:49

(37)

68

清水寺縁起絵巻

 

江戸後期写 桐函入   三巻三軸   5,500,000 円 紙 高 35.8 糎、 長 サ( 上 巻) 22 米 21.3 糎、 (中巻) 18 米 97.7 糎、 (下巻) 21 米 21.1 糎の 長巻︒表紙藍鉄色輪違い模様入緞子装、題簽 付︒ 見 返 し 銀 箔 波 型 模 様 入︒ 少 虫 入( 一 部 補 修 )、 中 巻第七図少薄汚レ、個人蔵印二種 清水寺創建と本尊の千手観音にまつわる縁 起を説いた三巻本の模写︒原本 (重文) は東京 国 立 博 物 館 に 所 蔵 さ れ、 『 実 隆 公 記 』 等 に よ り永正十七 ( 1520 )に完成したとされる︒詞書 は 三 条 実 香( 1469 ~ 1559 )、 甘 露 寺 元 長( 1457 ~ 1527 ) ほ か の 手 に な り、 絵 は 土 佐 光 信 ( 1434 ? ~ 1525 )が 手 掛 け て い る︒ 上 巻 で 僧 賢心の発心、坂上田村麻呂の清水寺創建と蝦 夷討伐が描かれ、この戦いに対する清水観音 の加護が描かれる︒中巻では蝦夷との戦いに 勝利をおさめた田村麻呂が凱旋し、清水寺を 再建する様子が描かれ、今日でも有名な清水 の舞台も登場し、最後は田村麻呂の葬儀が描 かれる︒ 下巻には本尊千手観音によるその他の奇瑞 が描 かれる︒霊験譚は観音三十三応化身にち な んで三巻三十三段にまとめられ、物々しい 合戦の場面など劇的に展開する︒摸本は、彩 色や建物の細部などを簡略化するものの、流 麗な詞書とともに、壮大な原本の図様をあま すところなくとらえている︒ 函に 「文晁自写」 と あ る が、 奥 書 等 は な く、 谷 文 晁( 1763 ~ 1840 )に拠るものかは不明︒

(38)
(39)
(40)
(41)

91

 

江戸中期写 桐函入   一巻一軸   6,500,000 円 紙高 35.8 糎、長サ 16 米 70.0 糎の長巻︒ 表 紙 菱 型 模 様 に 獅 子 頭 入 緞 子 織 極 上 装︒ 見 返 し 総 金 切 箔︒ 料 紙 総 裏 打、 金 箔 散 ら し ( 少 擦 レ ア リ ) ︒ 挿 絵 十 七 紙 貼 込、 詞 書 な し︒ 桐 函 部 分 傷 み、 個人蔵印 振 鉾 か ら 羅 陵 王・ 納 蘇 利 ま で の 五 十 曲 を 図 譜 的 に 極 彩 色 で 描 く︒ 舞 楽 の 絵 画 化 は 平 安 時 代の景物画や絵巻にさかのぼり、 『年中行事絵 巻 』『 聖 徳 太 子 伝 障 子 絵 』『 一 遍 聖 絵 』 と い っ た 作 品 の 一 点 景 と し て 描 か れ る な ど 枚 挙 に い と ま が な い が、 独 立 主 題 と し て 知 ら れ る 最 古 の も の は 十 三 世 紀 半 ば に 成 立 し た と 考 え ら れ る 北 野 天 満 宮 所 蔵『 延 年 舞 図』 ( 建 武 四 年 ( 1337 )の修理銘) である︒本作は絵巻の体裁を と る が、 冒 頭 と 巻 末 に 幔 幕 を 引 き 上 げ た 管 方 の 幄 舎 を 置 き、 狩 衣 姿 の 楽 人 が 太 鼓、 鉦、 笛 を 奏 で て い る 様 子 を 描 く こ と か ら 実 際 の 上 演 風景を彷彿とさせ、 『延年舞図』を祖とする一 連 の 舞 楽 図 屏 風 と の 親 近 性 を 感 じ さ せ る︒ 俵 屋宗達筆『舞楽図屏風』 (醍醐寺)を筆頭に数 多 く の 舞 楽 図 巻 ・ 舞 楽 図 屏 風 が 現 存 す る が、 図 様 の 点 で 本 作 に 近 似 す る の は 東 京 国 立 博 物 館 に 所 蔵 さ れ る 桃 翁 筆『 舞 楽 図 屏 風』 ( 一 七 世 紀) である︒例えば採桑老は両者とも左方向を 向 き、 翻 る 白 い 直 衣 の 裾 の 細 部 ま で 一 致 す る︒ ま た 還 城 楽 で は、 蛇 を 模 し た 木 製 の 輪 を 前 に 腰 を 折 り 喜 ぶ 様 を 描 く 点 で 一 致 す る︒ 描 写・ 彩 色 と も に 緻 密 で 手 堅 く、 十 七 世 紀 半 ば 以 降 の 幕 府・ 朝 廷 両 者 の 舞 楽 復 興 の 風 潮 の 中 で 盛 んに制作された舞楽図の一つと考えられる︒

(42)

80

94

祇園社

方広寺大仏殿参詣、

遊楽図屏風

 

金地彩色   十九世紀初頭 六曲一隻   2,400,000 円 高さ縦 157.0 糎、横巾 360.0 糎︒ 人 物 の 背 羽 織 に 筆 写 年 代、 「 宝 永 七 年 五 月 」 と 記 さ れ た 珍 し い 屏 風 図︒ 右 よ り 第 一、 二 扇 は 主 と し て 方 広 寺 大 仏 殿 と 参 詣 者︒ 第 二、 三 扇 に は 駕 を 待 た せ、 大 き な 重 箱 を 広 げ て 酒 宴 に 入 ろ う と す る 人 々︒ そ れ に つ づ い て、 第 三、 四 扇 に は 祇 園 社 南 楼 門 か ら 入 る 祇 園 社 の 境 内 と 舞 殿、 そ の 左 第 五 扇 に は 本 殿 に 膝 を つ い て 参 詣 す る 若 い 女 人 た ち︒ 第 六 扇 下 部 に は 西 楼 門 ら し い 建 物 が 二 棟 並 ぶ︒ ま た 屏 風 中 央 下 部 に は 町 屋が並び遊山の武士や貴婦人の姿も見られる︒ 桜 花 爛 漫 の 季 節 の 遊 楽 図 で あ る が、 金 地 に 松 の 緑 も 極 め て 鮮 や か で、 人 物 の 構 図 も 適 宜 に 配 さ れ、 神 殿 に は 公 卿 な ど の 顔 も み え、 こ れ ら に 描 か れ て い る 80 名 か ら な る 老 若 男 女 の 優 美 な 元 禄 風 の 衣 装 は、 当 時 の 風 俗 に も 主 眼 が 置 か れ て 描 か れ た も の で は な い か と 思 わ れ る︒ 濃 彩 か つ 緻 密 な 本 屏 風 図 は 風 俗 史 料 としても一級品 といえる︒ *極少水シミ跡、経年によって部分的に色褪せと金箔の剥落があるが、全体的に保存は極上品。裏面少傷みアリ。 (部分) 和洋古書善本目録_第25号秋.indd 80 13/10/12 13:51

参照

関連したドキュメント

③ 新産業ビジョン岸和田本編の 24 ページ、25 ページについて、説明文の最終段落に経営 者の年齢別に分析した説明があり、本件が今回の新ビジョンの中で謳うデジタル化の

―自まつげが伸びたかのようにまつげ 1 本 1 本をグンと伸ばし、上向きカ ールが 1 日中続く ※3. ※3

輸入貨物の包装(当該貨物に含まれるものとされる包装材料(例えばダンボール紙、緩衝

それから 3

注1) 本は再版にあたって新たに写本を参照してはいないが、

4/6~12 4/13~19 4/20~26 4/27~5/3 5/4~10 5/11~17 5/18~24 5/25~31 平日 昼 平日 夜. 土日 昼

10.業務経歴を記載した書類

本部事業として第 6 回「市民健康のつどい」を平成 26 年 12 月 13