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多糖類の構造と代謝について

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(東京女医大洋第27巻第3号頁113−121昭和32年3月)

多糖類の構造ご代謝について

東京女子医科大学生化学教室(主任 松村義寛教授)

助教授 細

ホソ 谷 や 憲 ノリ

マサ

(受付昭和32年2月21日)

ここで多糖類と申しましてもデン粉とグリコー ゲンについてです。また多糖類の代謝と申し上げ ましたが,これは高等植物ならびに高等動物体内 にみられる,単糖類であるグルコースから多糖類 への合成過程,ならびに多糖類から単糖類あるい はその誘導体への分解過程についてです。わたく したちがこれらのことについて研究を行ったのは 1940年以後,デン粉化学が新しく書き改められた からです(戦争のため日本人がこのことを知った のは終戦後の1947∼1948年頃です)。このためデ ン粉分解酵素の概念も変りました。児玉桂三教授 (現徳島大学学長)は栄養学的見地と酵素化学的見 地からデン粉分解酵素の単離,精製,結晶化を故 中原光子1)と始めました。またデン粉分解酵素の 作用旧作については田中正三2,緒方規短雄5)が 電位滴定を用いて研究しました。ところが,これ らの酵素はα一1.4グルコシド結合は分解するが, デン粉や,グリコーゲンのなかに多くあるα一1.6 グルコシド結合は分解しません。そこで消化の面 からもα一1.6グルコシド結含は一体どのように分 解されるのだろうか,またその酵素はどのような ものであるかということが問題になってきまし た。そこでこの結合の分解については清寺僧4)が 研究しました。著者5)はこの結合が生物体でどの ように出来てくるのか,グリコーゲンの合成過程 を老慮しながら,デン粉合成過程を研究しまし た。これらの仕事を中心に本題のもとにお話しま すが,その前にデン粉,グリコーゲンの構造につ いてみてみます。

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CH20H 暫 ら へむ 影!直 豊 4C Cl H6N∼H

脇H

gr−92

ヨ げ th_D_窪lucese <1.5> 或f貞 cr−D−glucopyranose もな

第1図

琶_。 Σ騨。

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lil fi 早一〒 fl Ol−I pyrane P−D−glucosg 〈1.:〉 1.k(t 餅D一簿監uc・pyranose D−glucoseの六角環状式 デン粉,グリコーゲンはともにグルコースの重 合したものです。グルコースは(第1図)のような α一D−glucopyranoseの型のものです(β一D−glu− copyranoseがβ一1.4結合したものは。−211ulose です)。グルコースがpyraneのような6角環状構 造式をとるということはHaworth6)が1932年に提 唱,証明したことで,彼はこれでノーベル賞をもら っております。グルコースは/C\,/0\が夫々 109。,105。各核間距離C−C,C−0が夫々1.54A, 1.49Aであり,またIactol環形成のときの歪に より第2図に示すような型をとります(第2図)。 i’

椅子形 ・ 寝豪形

第2図pyranose i環の構造 デン粉,グリコーゲンを構成しているグルコー

Norimasa HOSOYA (Department of Biochemistry, Tokyo Wom・svn’s Medical College): Structure and metabolism of Polysaccharides.一一A review

(2)

スは椅子型です。

CH,OH

l一一..,..r.o q/[fi

HOX

eH H/ xo/ N oH・

i一一一一一一一一一一11 ’1一一・・一一一l

H O}一1 II OH

maltose 4一(a−D一窯1uご。pyr鋤・syl)一P−91uc・Se

第3図maltoseの構造式

\戸

/Xxo/X

C蘇Pほ

13i!if一’OX..t{.oH

gv

2コのα一Dグルコースが炭素1と炭素4とで

脱水して結合すると,この揚合の結合をα一1.4 グルコシド結合と申しますが,maltoseになりま す(第3等星。これは1819年De Saussureによっ てデン粉の加水分解産物中に見出され,1847年 A.P. Dubrunfautによってデン粉に麦芽(malt) を作用させると大:量得られることからmaltoseと 名付けられたものです。また2コのα一Dグルコー スが炭素1と炭素6とが結合すると,この結合を α一1.6グルコシド結合と申しますが出来るものは isomaltoseです(第4図)。

臨燃悩〉繭

H CH,OH 1−1 OH

6一((tr−D−glucopyranos.v:〉一一D−glucose 第4図isomaltoseの構造 そこでデン粉,グリコーーゲンについてみます と,デン粉,グリコーゲ:ンが(C6HioO.r)nの一般

式を有することからC6HIDO5基1個について遊

離のOH基が3コつつ存在することは解ります。 Haworthら(1929)6)はmethylationの結果デン 粉はD−91ucose分子がmaltose型(α一1.4グ ルコシド結合)をして長く一列に連らなったもの と考えました。そしてデン粉の一般式は(C6Hlo Or,)n・H,Oで表わすべきだと提唱しました。また

有名なHaworthの末端基定量法による結果D一

グルコースが24∼30個位がα一1.4結合で一直線に 連らなったものと考えましたが,Staudingerら (1937)7,は広範な物理化学的研究の結果,いわゆ るStaudingerの粘度法則と滲透圧法により,デ ン粉は極めて大きな:重合度を示す高分子化合物で あり,デン粉は直鎖分子だけではなく,複雑に枝 分れし.た巨大分子であるというStaudingerの構 造式を提出しました。 一方デン粉を水に対する溶解性とその水溶液の 粘度から二つの成分に分けようという企が行われ

ていましナこ(A・Meyer 1895)。 Maquenne&R o−

ux(1905)8)は天然デン粉を,温水に溶けやすく粘 度を殆ど示さないデン粉の内容物と考えた部分を amylose(amylumはラテン語でデン粉という意) と,温水に溶けにくいが糊をよく形成するデン粉 粒の外被と考えた部分をamylopection(pectos ギリシャ語で粘るという意)の2成分に分けまし たが,どうゆうものか,よく分りませんでした。 ところがK.H. Meyer9)が1940年に極めて慎重 な操作によリデン粉を永に易溶性のものと難溶性 のものの2成分に分離しました。そして末端基定 量法,滲透圧法,粘度法により,化学構造上明確 な差のあることを明らかにしました。そして,改 らためてD一グルコースのα一1.4結合のみからなる

CH,OH . qH.,Ol! 9H.OH

兆硲轡繍ゼ

還嚇…

O;,T H OII H 第5図 澱粉の構造式(amyloseの式) 2:3・4・5テトフメチル クルコース●生成

・鱒鴛

2・3・βトリ凶子ルターl一ズ生成 n、。Hノ’ Qtt cn:oH 2・3沃メチルグルコ.ズ生成 琶。,。f{ g}TiOl{ 1:〉イ !g’c}i:o lto 包、、。。 2・3・4−6,トラメチル グ几コーズ塗成 第6図 H.Staudingerの澱粉模型 直鎖構造をとっているもの,すなわち温水にとけ 易いがその後沈澱しやすいものを・amylose.と名 付け,枝分れした構造をもつもの,温水に溶けが たいが,溶けた上は丁々沈澱しないものをamy一 一1!4 一

(3)

1opectinと呼ぶことを提唱しました。この仕事 により,今迄のデン粉化学は全く新しく書き換え られたような次第です。また言葉の定義も変って しまいました。 ではアミロースは一体どんなものでしょうか, α一Dグルコースがα一ユ.4結合して直鎖状に300∼ 1200個重合したものです。これは平均したもの で,勿論種によって重合度は異ります。重合度の 数十から数千に達する同族体の集合であることで す。そしてグルコース6個が一環をなすようなコ イル型構造をしております。 アミロペクチンはアミロースよりも:更に巨大な 分子のもので,アミロ・一スの二合と同じように多 くのα一1.4グルコシド結合の外に,α一1.6結合 またはCt−1. 3結合などをもった分枝した樹枝状 構造をしているものです。重合度は5000∼30000 です。 グリコーゲンも同じようなものです。しかしこ れらの構造が酵素作用による研究で更に解明され ましたのでまつ酵素作用についてみてみます。こ の揚合一応,植物でデン粉がどのように出来てく るか,そして人闇がそれをとり入れた縞合にどの ようにして消化されグリコーゲンが出来て行くか ということを頭に入れてその順に酵素をとり上げ てみます。 一般に植物は空気中の炭酸ガスと,地中から吸 上げる水とから,葉緑素の助けにより太陽エネル ギーを吸収して光合成を行います。光合成のこと は略して頂き,糖から多糖類の合成についてみて みます。この多糖類の合成過程を最初に発見した のはCori夫妻(1937)10・である。 Cori夫妻はア ルゼンチン人で,夫婦とも医者です。インシュリ ンの作用を研究しようと米国に来ましたから薬理 学の研究室を訪れました。その頃は,肝アミラー ゼが存在するといわれていた時代です。まず動物 の肝グリコーゲンの分解をみると,燐酸イオンが ないと分解がおこらず,また肝グリコーゲンが分 解しても還元糖の出現をみないことを発見しまし た。グリコーゲンは三燐酸分解phosphorolysis され,生ずる反応生成物はグルコースの炭素1の 位置に燐酸のついたものα一D−9!ucopyranose−1 phc・sphate(G−1−P)であることを確認し,この 反応を触媒する酵素をpbosphorylaseと名付け ました。またこの反応は可逆的であり,G−1−1か らphosphorylaseの作用により,多糖類の合成 が行われることも証明しました(第7図)。

高1撫織嘱

ホ.. 第7図Glycogen十Phosphate=Glucosephosphate. この研究はW6hlerが無機物から尿素なる有機 物の合成を行ったかつ期的な実験と共に,簡単な 有機物から高分子化合物を酵素学的に合成した意 味で,歴史的に意味のある研究でした。この仕事 に対し,Cori夫妻はノーベル賞を貰っています。 植物では馬鈴薯について1{anes(1940)11が,こ のphosphorylatiGnの機構を同様に証明しており ます。しかしphosphorylaseによって出来る多 糖類は沃度反応は青色ですが,グルコースの重合 度が80∼100位のものです。 ここで脇道にそれますが沃度反応の機構につい てみましよう。アミローースは沃度とComplexを 作りアミロペクチンは沃度をただ吸着するだけで あるとRundleら12)や緒方5)が電圧滴定から 証明しております。またK:atz(1928)によって 始められたX線廻折による研究から,Rundleら (1944)!5)はアミロース(またはV図型を示すデン 粉)が沃度で呈色するのは螺旋配置をとった分子 構造の中に沃度分子が入るからであるというFr・ eudenberg(1939), Hanes(1937)の仮設を証明 しました。すなわちグルコース基6コが螺旋1巻 きを形成し,水酸基を螺旋の外側に向け,内部は 第8図 ヨードの入った螺旋状澱粉鎖の模型 非極性の炭化水素が配列していて,その螺旋の内 蔀に沃度分子が長軸を螺旋軸に一致して溶解し, 固溶体を形成する。そしてグルコース基6個当 り,すなわち螺旋1巻きについて1分子の沃度が 入ります(第1表)。一方Swanson28)はphosph− orylaseによってG−1−Pから出来る多糖類(直鎖 型の)について,グルコース基の重合度と沃度反 一 IJ5 一.

(4)

二三色度との関係を検べてみましたが,第9図の ようになります。 第1表合成dextrinの重合度とヨeド呈色との関係

作騰鴫離1平民鍍1一哩色i吸収廊

1分 5 9 13. 5 18 25. 5 32 60 135 360 090( 2. 1 5.3 8.4 9. 5 14. 7 17. 9 30. 0 54. 2’ 82. 6 3.8 7. 4 12. 9 18. 3 20. 2 29. 3 34. 7 55. 6 97. 4 146. 5 な 薄 赤 し 赤 ラベン’ダー 青 紫 青 t/ rl tl 紫 5000A 5200 540Q 5600 5800 5800 6000 tl tl 第1表から分ることは,沃度反応の呈色度はグ ルコース基の直鎖の長さによって規まってくると いうことです。グリコーゲンやアミロペクチンが 赤色,または紫色を呈するのは決して分子が小さ いからではなく,むしろ分子の枝分れが多く, α一1.4結合で真直ぐにフルコース基が連らなって いる部分(結局α一1.6結合,枝分れから外側への 直鎖部分)が平均して8∼12,または20∼24であ るからです。 phosphorylaseによって出来る多糖類はα一1.4 グルコシド結合にグルコース基が80∼100位しか 重合したものでないとすると,天然にあるグリコ ーゲンや,アミロペクチンはどうして出来るので しょうか,馬鈴薯についてみても,アミロペクチ ンとアミロースとの比は80:20の割合いです。 Cori夫妻14ノはphosphorylaseと共に働いて枝分 れ(cr−1.・6グルコシド結合)を作ってグリコーゲ ン合成を行う酵素を動物の肝,心臓中に見出し, Branching fa.ctorと名付けました。

植物についてはHaworth門下のPeatら15)

が馬鈴薯中にphosphorylaseと共同してG−1−P からアミロペクチンを作り,またアミn一スに単 独に働いてアミロペクチンを生成する酵素のある ことを見出し,phosphorylase(P一酵素)に対し てQ一酵素と名付けた。この酵素作用について著 者5)も研究を行った。この酵素は,燐酸の助けを 必要とせず,また還元糖の生成もなく,アミn一 スに働いてアミPペクチンを生成する。まずアミ ロ・・一ス分子に働き重合度20∼22位の破片に切り, これを直ちにアミロペクチンの中心となるような 他のアミロース分子にα一1.6結合をもつて結び つけ,1分子のアミローースを完全に分解し終って から他のアミロース分子に働いて行く,始のうち はアミロペクチン分子の中核を作り,段々と外側 を作って行く。こうして天然の樹脂状構造をもつ たアミロペクチン分子を作って行く。故にこの酵 素は一種:のTransglucosidaseであることを証明 しました。.こうして馬鈴薯についてはアミロペク チン,アミロースが80:20の比に出来てきてデ ン粉を生成しますがこのことについては種により この割合の異なってくる点などについては未だよ く分りません。.. アミロペクチンの構造についてはStaudinger の構造式,Haworthの構造式, Meyerの構造式 などありますが現、在では一般にMeyerの構造式 がみとめられています(第9図)。 了嚇㌔Tレ

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>S.h一“ 〉 S/i Jt一く一一Y N REDUCING GROVP 第 9 図 →:glucose基を示す,矢印の頭はC1の位置を示す 1 maltose ll isornaltose M amylose IV amylopectin Standingerの構造式 V 〃 Haworthの構造式 VI 〃 Meyerの構造式 グリコーゲンもMeyerのアミロペクチンと似 た構造のものでもっと枝分れの多いものです。そ して実際には栗のいが,うにの刺のように放射状 に枝がのびたものです。 そして,このようにして出来た天然のデン粉は 非常に分子量の大きな高分子化合物です。アミロ ペクチンの枝は隣接していますし,これにアミロ 一刀6一

(5)

一スなどが接近してミセル(Micell)を形成して います。ミセルとはKarl Wilhelm von Nageli

(ユ862)が生活原形質の膨潤異方性を説明するた めに考えたことで,デン粉のような高分子化合物 は多数集ったミセルと称する分子群を作り,更に これが規則的に配列するとしたのです。これは分 子相互の構造の似た部分がvan der Waals力, hydrogen bond(水素橋)などで規則的により集 って多数の一定の繰り返しを持つた部分を形成し ている訳です。 今デン粉粒は冷水には殆ど不溶ですが大量の水 と共に熱して行くと,粒の内に水分が入り,粒は 次第に膨脹し,ミセルが解けてきて,デン粉の種 類によって差がありますが,大体700C位になる と水を吸った海綿のように数十倍に膨潤した状態 になります。Meyerら16)はこの様相を第10図の ように表現しました。更に温度を上げると80。C 位.になるとミセルが全部とけて,アミロースも, アミロペクチンも,すべて単分子となって水分に とりまかれたいわゆる溶液の状態,全体が半透明 のほぼ一ような膠質,所謂糊を作ります。この場

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.(e) J ’cb)

生澱粉粒の一庵のミセ,tr構造(Meyer} 澱粉粒が膨溝こた婚合(Meyer)

第10図細い線はグルコース鎖の本を表わす,太 い線はミセルを表わす 合低分子化合物のような完全な溶液ではなく,長 い糸状分子および巨大な分枝分子の一部,直接あ るいは水分子を媒介として数個所で結合していま すから,一つの分子を動かせば他の分子もこれに 引ずられて動き,強い粘性を示す糊の状態である のです。Katz17)はこのように糊化された状態の デン粉をα一デン粉と呼び,生デン粉のように分 子が高度の規則的配列を持っている状態をβザ ン粉と名づけました。米粒の場合では完全なα一 化には時間を要し98。Cで20分間を要します。そ してα一デン粉は酵素の作用を受けて分解し易い のですが.β一デン粉は殆ど酵素の作用を受けて分 解されません。ですから温い飯を食べれば消化が よいのです。 またデン粉糊を室温に放置しておきますと外観 は変りませんが,次第にミセル化が起り,β一が 多くなって悩ます。現象としては糊は次第に白濁 し,き裂を生じ,水が分離して来ます。この現象 をretrogradation(老化)と呼びます(第11図)。

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完全糊化 一部老化 −h澱粉分子ac 同附着黙≡≡ ミセ,・ 第11図 澱粉分子の糊化と老化の模型図(=二図) 老化は水分が30∼60%,0。Cのときにもっとも起 り易いのです。冬は餅や飯の老化が著しい訳で す。また冷蔵庫にご飯を保存した場合もβ一化し てしまっていると考えるべきです。ですから冷い 飯は老化してβ一デン粉になっていますから,食 べても消化が悪いから,温めて食べるべきです。 餅を焼いて食べるのも同じ訳です。 こうして植物界で出来たデン粉を動物が食べま すと,消化管でグルコースまで分解きれます。こ の反応を触媒する酵素はamylaseと呼ばれてい ます。amylaseは植物にもあります。これらの 酵素は酵素の発見以来,消化という問題が取り上 げられたとき(1811)から研究されているので, 歴史的なことを述べていますと面白いのですが, 大変なので省略します。現在確認されている点に ついてのみみてみます。 amylasei8)は加水分解酵素です。そして現在で も命名には混乱している点もありますが,一応 Kuhnの定義を若干変更し,次のようにみた方が よいと思います。デン粉を加水分解してα一CO㎡i− gurationの分解生成物を生成する酵素をα一amy− lase,β一configurationの分解生成物を生成す る酵素をβ一amylaseと呼びます。α一amylaseに は動物性amylase(膵臓,唾液などのamylase) 細eS amylase,糸状菌amylaseなどがあり,β一 amylaseは大豆,甘藷などに極めて多量含まれて おります。麦芽amylaseはα一一amylaseとβ一

amylaseとの混合物です。現在amylaseは結晶

の状態にとり出されています。 β一amylaseは Balls ら(1948)19)によりr甘藷力〉ら,α一amylase はMeyerら(1947)20)により豚の膵臓から結晶

一m一

(6)

の形でとり出されております。. まず植物中に多いβ一amylaseについてみてみ ます。β一amylaseはα一一1.4グルコシド鎖の非還元 性末端からグルコース基2コ,マルトースを切り 離して行きます。この時切ると同時にWalden転 移が起ってβ一maltoseが生ずるものと考えられ ます(第12図)。それ故にこの酵素を糖化酵素とも 呼んでいます。アミロースに働いた場合は100% , 1 に ほ !7」一騨一一一一一一へ.. ノ ノ も

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J t 、 、 , 一一旧___+r__」 、一・一Σ一「一一一一一__・一! ■ 聖 1 駈 , } 1 第12図 α及びβ一anlylase作用の想像図(Hanes) 分解し得ます。また非還元性末端から一様に順次 にマルトースを切り離して行くのですから,沃度 呈色度もアミロTスの吸収極大650mμが加水分 解の進むにつれて下降して行く訳です(第13図)6 しかしアミロペクチンに働いた揚合には完全にマ この限界デキストリンはβ一amylaseにのみよ ..TSN tlt ノ ’

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第14圏 K.H. Meyer等のアミロペクチン模型 1・2ザ 室・・

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波良 第13図Amy工oseのβ一amylaseによる加水分解 時に於けるヨード呈色の吸収スペクトルの変化、最 低の曲線は加水分解のものである ルドースに分解してしまうことが出来ず,50%前 後までしか分解することが出来ません。α一1.6結 合のところまで分解してくると分解することが出 来ません。こうして出来たデキストリンを限界デ キストリンGrenzdextrinと呼び,この春愁は β一amylaseで出来たの.でβ一limit dextrinとも 呼んでいます。(第14図) つてできるものではなくphosphorylaseによっ てもできるのです。phoεphorylase.もやはり非 還元性末端から加燐酸分解して来ますが,α一1。6 グルコシド結合のところまでくると作用が止って しまい限界デキストリン(phosphorylase Iimit dextrin)を残します。 α一amylaseもやはり,α一1.4グルコシド結合し か切りません。しかしα一amylaseは切り方が異 なり,まず3∼4コイルの部分に大きく切って行 き,さらにこれを小さく切って行きます。ですか ら,α一amylaseが働いた場合にはまず,還元糖 の生成よりも,粘度率の低下,液化がみられます ので,液化酵素と呼ばれた訳です。アミロースに 働いた揚合は電圧滴定で3段階に働いて行くのが みられます5)。またこの揚合沃度呈色度の変化は 以上のような切り方をしますから沃度呈色度の極 大は紫,赤と変化して行きますことがみられます (第15図)。 α一amylaseがアミロペクチンに働いた揚合に はα一1.6グル.コ.シド結合を飛び越えて,まず,大 きく.切.り,・順次小さく切って行きますが,最後迄 α一1.6グルコシド結合を切ることが出来ませんか ら,イソマルトースが残ります。大低の揚合α一 limit.dextrinが残ります。また面白.いことに動 物のα一amylaεeは種特異性のあることです。異 種動物の対応する臓器の酵素の性質には共通性が ないが,.同一動物の異種臓器の酵素の性質には共

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第15図

α一a卑ylaseによ. 驍≠高凾撃盾唐?フ加水分解時に於ける ヨ・一一ド呈色の吸収スペクトルの変化。最低の曲線が 30%加水分解のものである。(Swanson)28) 通性のあることです20)。ですから人間であれば唾

液amylaseと膵臓のamylaεeとは共通性のあ

ることです。 動物は食物として,デン粉,グリコーゲンをと りますが,消化管でグルコースまで加水分解しま す。しかし,唾液にはマルトースをグルコース2 分子に分解するmaltaseも含まれていますが, 膵,.唾液ともα一amylaseを分泌するのでα一1.6 グルコシド結合を切る酵素が見当りません。これ らの酵素だけではイソマルトース,α一リミットデ キストリンが残ってしまいます。そこで宝寺4)は 消化管中にグルコースまで分解する酵素が存在す るのは,腸の部位ではないかと研究を進め,牛の 腸液,腸粘膜中にα一リミットデキストリンを分 解してグルコースに分解する酵素のあることを見 出しました。そして一応α一1imit dextrinaseと 名付けたのですが,その後Larnerら21)は豚の小 腸粘膜から,これと全く同一の酵素を取り出し, Oligo−1.6−glucosidaseと名付けました。これら の酵素によって食物として沖つたデン粉,アミロ ース,アミロペクチン及びグリコーゲン類は完全 にグルコース迄分解されて腸粘膜で,ATPの存在 のもとにhexokinaseの働きでphosphorylation されて燐酸の化合物として腸粘膜を通り,通、り終 るとphosphataseの作用で燐酸を切り.離して, グルコースとして血液中に入り,血糖となって肝 臓,或いは体の各組織に送られて行くのです。 動物体中におけるグリコーゲン合成過程に入る 前に,α一1.6グルコシド結合を切る他の酵素につ いて簡単に上げてみます22)。Meyeri6)らは酵母の 素劃分にはα一1. 6グルコシド結合を加水分解す るamylo91ucosidaseと加燐酸分解を行う酵素が .あると報告し,後者のものはα一1.6グルコシド. 結合の合成も行うものとしてiso一一phosphorylase と名付けましたが否定されました5)。しかし,.こ のα一glucosidaseは小林,丸尾の云うiso−amYlase ではないかと考え. 轤黷ワす。小林ら22)のいうiSO− amylaseは酵母中に存在する酵素で,アミロペ クチン型の分枝多糖類の分枝点を加水分解してア ミロース型の直鎖多糖類を生ずるものです。頂度 Q一酵素の逆の作用を持つたものです。このことに ついては英国でもPeat25)らが馬鈴薯,そら豆中 に同じような作用のある酵素を見出して,R一酵素 と名付けていますが,同じもののように思われま す。一方動物では筋肉の抽出液でグリコーゲンを 分解しますと完全に分解しますが,phosphoryla、 seの作用では40%前後しか分解しません。そこで 筋肉中にもα一1.6グルコシド結含を切る酵素が予 想きれ,Cori門下24∫が家兎筋肉からamylo−1.6− glucosidaseを見出しました。また, Petrova25) に見出されたamylose isomerase{’LPにdextran− aseなどありますが省略します。 今α一1.6グルコシド結合分解酵素を挙げました のが,これを利用すれば,グリコーゲン,アミロ ペクチンの内部構造を研究するのに都合がよい訳 です。ですからここで再び分枝多糖類の構造につ いてみてみます。 限界デキストリンはα一1.4グルコシド結合でで きた鎖にα一1.6グルコシド結合によって結合した グルコース残基が残っていて,丁度木の枝を切り 取ったあとに枝のつけ根だけが残っているような 形です(第14図)。ですからこの1.6結合に付着し ているグルコース残基をamylo−1.6−glucosidase で遊離のグルコースとして分離してしまえば,外 側の分枝点がなくなるのですからphosphorylase またはβ一amylaseで内側のα一1.4結合のグルコ ース鎖は再び分解されます。この過程を数回繰り 返されるとグリコーゲン(アミロペクチンは回数 がグリコーゲンよりも少くてすむ)は完全に分解 することが出来ますが,それと同時に構造も分っ て来ます。

Coriら26・27)は phosphorylase と amylG−1.6−

91ucosidaseとの組合せで,グリコーゲン,アミ

(8)

ロペクチンの枝分れの様子(枝分れの数,分枝一 つ当りの平均鎖長,.分枝閥の鎖長など)を研究し ました。これによるとmethylationやperchloric acid oxidaticn法よりも詳細に様相が分りまし た。アミロペクチンでは外側の分枝はグルコース

.選7

m3 Units

A

第16図

6一一7 Units

Structure of glycogen.’A, aldehydic end O, glucose units.

基が平均20∼24,分枝聞隔は4∼6ですが,グリ コーゲンは外側の分杖一っについては12∼16,分 枝間は2∼3個でした(第14図,第16図)。故1こグ リコーゲンの方がアミロペクチンよりも巨大な分 子量ですから,分枝も多い,緻密な複雑な化合物 であります。 さて,ここで再び動物にもどります。腸管から 吸収された糖は門脈を通って肝脚こ行き肝グリコ ーゲンとして一一YB合成され残りは血中に入って一血 糖値を嵩め,各組織に供給されて組織グリコーゲ ∫P−e・・る taniylo’1.6−glueob・idase ンを合成します。肝臓におけるグルコースからグ リコーゲンへの合成過程をglycogenesisと申し

ます。グルコースはhexokinaseの作用でATP

の存在のもとにα一D−glucose−6−phosphate(G−

6−P)になり,phosphoglucomutaseの作用で

G−1−Pになり,さらにphosphorylaseの作用で α一1.4グルコシド鎖を作って行きます。動物の phosphorylaseの働く場合には核を必要としま す。α一1.6グルコシド結合はBranching factorに よって出来ます。こうして肝グリコーゲンが出来 てきます。 空腹時になりますと,各組織における需要のた め肝グリコーゲンは動員されます。肝臓における グリコーゲンからグルコーースへの分解過程を91y−

cogenolysisと申します。まずphosphorylase

の作用でα一1.4結合を切ってG−1−Pを生じ, amylo−1.6−glucosidaseの作用でα一1.6結合を 切って,グルコースを切り離し,この過程をくり 返えして,グリコーーゲンを完全に分解してG−1−P 及びグルコースにします。G−1−Pからはphosph− ataseの作用で糖を遊離し,血中に入りth糖とな って各組織に供給されます。組織でエネルギー源 を必要とするときには,いきなり糖を燐酸化して そのまま分解してエネルギーを得るのではなく て,一旦グリコーゲンに合成されてから利用きれ て行くようです。各組織におけるグリコーゲンの 一一一一?G一 1一・ P C a−D−stlucopyranose’1−phospliute)

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第17図 糖類代謝図

一 120 一 “sxN G−6−P(a−J)一gtucop)’rariese−6− phosphete) ttt tlt ll ノ x 解糖過程

(9)

合成される揚合も肝臓のglycogenesisの場合と 全く同じ過程で行われます。しかし分解してエネ ルギー源となる揚合.にはglycolysis解糖.きれ, 酸素が充分存在すれば炭酸ガスと水にまで完全に 分解され,酸素供給不充分な場合には乳酸.を生じ てくるのです。以上これらの関係を分り易く図示 すると第17図のようになります。 これらに関する研究は現徳島大学学長児玉桂三先生 が東京大学医学部生化学教室に在職していたときに行 われたものです。右先生の御指導を深謝するととも に、これらの研究に与った諸氏の御協力を深謝しま す。 献 1)申原光子:綜合医学,12,1085(1955) 2)田中正三:生化学,22,152(1950) 3)緒方規矩雄:酵素化学シンポジウム,4,44 (1950). J. Biochem. 39, 137 (1952) 4)清寺町:」.Biochem.40,509,515,519 (1953) 5)細谷憲政:生化学,25,193(1953)

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参照

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