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β_1選択性β遮断剤治療中に心停止を起こした自律神経障害を有する糖尿病患者の1例

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臨床報告

〔書蹟蔑72第繭62鰭骨〕

昼選択性β遮断剤治療中に心停止を起こした

自律神経障害を有する糖尿病患者の1例

カワゴェ

川越

東京女子医科大学 糖尿病センター ミチ ァズマ ケイ コ コモり トモノリ ヒラタ ユキマサ

倫・東

桂子・古守知典・平田幸正

(受付 昭和62年2月9日) はじめに 近年,高血圧の治療としてβ一遮断剤の有用性が 述べられ,なかでも呼吸器系および耐過能に比較 的影響を及ぼさないμ選択性β遮断剤は高血圧 合併の糖尿病患者においても有用であるという報 告があるD∼3).しかし,徐脈,心不全などの循環器 系の副作用も報告されていることから4),特に自 律神経障害を生じやすい糖尿病患老に対する使用 に当たっては注意すべきである.今回私達は,β1一 選択性β遮断剤である酒石酸メトプロロール使 用中に突然心不全より心停止をきたし,回復の経 過中に著明な左胸水を認めた,自律神経障害を有 する糖尿病患者の1症例を経験した.自律神経障 害を有する糖尿病患者の高血圧治療に対して,同 様の薬剤を投与する場合,このようなことが起こ りうる可能性を警告するものと考え報告する. 症 例 患者:S.N.58歳,女性. 主訴:呼吸困難,微熱. 家族歴:父に心臓弁膜症,母に肝疾患,姉妹に 肝疾患,高血圧および糖尿病を認める. 既往歴:特記すべきことなし. 現病歴:生来健康.昭和57年人間ドックで糖尿 病を指摘され,某病院を受診し入院となった,こ の頃体重は68kg(肥満度37%).入院後,食事療法 と経口血糖降下剤の投与を開始され,3週間で血 糖のコントロールは良好となり退院.以後外来通 院を続けていたが,昭和60年春より自己中断した. 昭和61年1月,両下肢浮腫が出現したため,30 日当科初診.初診時体重59.4kg,空腹時血糖値200 mg/d1, HbA、c 11.8%,1,360kcalの食事療法が 開始された.また,この時初めて高血圧を指摘さ れ(220/110mmHg),食塩7g制限の食事を指導さ れた.2,月10βよりグリクラジド(⑧グリミクロ ン)40mg/日の投与が開始されたが改善ないため, 2月17日第1回入院となる. 入院時,両下肢に軽度浮腫を認めた.また,す でに下肢の腱反射の消失,末梢の痛覚低下,およ び神経伝導速度の低下と著明な神経障害が認めら れたが,起立性低血圧はみられなかった.さらに, 進展した非増殖型糖尿病性網膜症(Scott IIIa)と, .ネフローゼ型糖尿病性腎症を有し,血清総蛋白4.7 g/dl,アルブミン2.5g/dl,クレアチニン1.2mg/ dl,尿素窒素15.1mg/dl,尿蛋白排泄量は5,8∼1.4 g/日,クレアチニン・クリアランスは50ml/minで あった.また正球性正色素性貧血を認めた(赤血 球数352万/mm3,血色素9.5g/dl,ヘマトクリット 29.3%). 糖尿病は1,600kcal(蛋白50g)の食事療法とグ リクラジド120mg/日(3分服,食後)投与で空腹 時血糖値は129コ口/dlより91mg/dlと低下した. 高血圧に対しては,2月24日からβ選択性β遮断 Michi KAWAGOE, Keiko AZUMA, Tomonori K:OMORI, Yukimasa HIRATA〔Diabetes Center,

Tokyo Women’s Medical College〕:Acase of cardiac arrest in diabetics with autoneuropathy during

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剤である酒石酸メトプロロール80mg/日(2分服, 朝・夕食後)の投与が開始され,血圧166∼180/

90∼100mmHgより1週間後には138∼160/

68∼90mmHgと改善した.また心拍数は73/分よ り65/分とやや徐脈傾向となった.この際胸部レン トゲン写真上CTR 56%と軽度心肥大を認めた が,心電図上異常所見は認められなかった. 昭和61年3月10日退院後,東北地方を旅行する など日常生活には支障なく,3月25日には大雪の ため雪かきを行なっていた. 26日午後11時30分頃,急に前胸部下方全体に重 苦しい痛みが出現し,救急車にて転送中意識消失, 呼吸・心停止状態となった.直ちに救急隊員によ り心肺蘇生が開始されたが,某病院到着時はすで に散瞳状態であった.さらに1時間の蘇生後自発 呼吸出現,4時間後には意識状態も回復した.そ の後,胸部レントゲン写真上肺浮腫を伴う心不全 の所見を得たが(Fig.1−1)),心電図⊥は虚血性変 化等の異常は認められなかった(Fig.2).心窩部 痛および前胸部痛の訴えがあったが,心不全の回 復とともに徐々に改善した. しかし,4月上旬より微熱および左胸水が出現‘ し,精査のため4月24日当センターに転院,第2 回入院となった. 当科入院時制症:意識状態は清明.脈拍数は 96∼108/分,整.呼吸数は20/分,整.血圧は164/ 78mmHg,左右差なし.貧血,黄疸なし.またリ ンパ節腫大も認められなかった. 胸部にて心尖部に最強点を有するLevine III 度の収縮期雑音を聴取.左下肺野では呼吸音なく, 右下肺野では湿性ラ音が聴取された.腹部では 肝・脾臓は触知されず,腹水は認められない.皮 膚は乾燥傾向あり,四肢の筋萎縮がみられた. 神経学的所見としては,脳神経,運動器系に異 常なく,感覚器系では下肢振動覚の低下が認めら れた.自律神経系では,起立性低血圧は認められ ないものの,臥位よりの体位変換による脈拍数の 増加がみられなかった. 当科入院時検査成績:尿検査では蛋白排泄量は 3.Og/日前後であり,沈渣でネフローゼ円柱を認 めた.血算では赤血球数356万/mm3,血色素9.9g/ dl,ヘマトクリット30.5%と正色素性血球性貧」血 を認め,白血球数は8,800/mm3だが好中球が80% と増加.血清生化学検査では総蛋白6.5g/dl,アル ブミン2.9g/dl,尿素窒素29.7mg/dl,クレアチニ ン1.8mg/dl,尿酸7.6mg/dlと腎機能障害の進行 を認めた.その他心胆道系酵素の軽度上昇を認め た. 血沈は1時間値141mm, CRPは48。4と炎症反 応は強陽性であった.胸部レントゲン写真上著明 な左胸水を認めた(Fig.1−2)).動脈血ガス分析は 室内下でPo255.9mmHg, Pco232.3mmHgと低 酸素血症であった. 糖尿病に関しては,HbAlc 7.0%とコントロー ル良好であった. 入院後経過 1.胸水に関する事項 入院時胸部レントゲン写真で著明な左胸水およ び低酸素血症が認められたため,31/分の酸素投与 を開始し,また細菌感染も疑い抗生物質の静脈内 投与を開始した. 入院3日月に胸水穿刺施行.その性状は血性か つ軽度混濁であった.リバルタ反応は疑陽性,比 重は1。021,.蛋白は4。5g/dlであり滲出性と判断し た.胸水中アミラーゼ,LDH等の増加は認められ なかった.ウイルス抗体価,一般細菌および結核 菌培養は陰性であった.細胞診はクラスIIであり, 赤血球,好中球,リンパ球が多数認められた. なおツベルクリン反応(一般診断用)は強陽性 であった.CEA等の各種腫瘍マーカーは血清フェ リチンが高値を示した以外は異常所見を認めな かった.免疫学的検索でも有意な所見は認められ なかった. 67Ga−citrateを使用した腫瘍シンチでは剣状突 起付近,肋骨前面に異常集積像が認められ,骨シ ンチを施行したところ,滋藤2,3,4,5,6肋骨 前面,左向5肋骨前面および胸骨下部に異常集積 像を認め,悪性疾患の多発性骨転移像あるいは多 発性骨折を疑わせる所見であった. 胸部CT検査および腹部超音波検査では左胸水 を認めた以外,特に異常所見を認めなかった. 心臓超音波断層撮影では左室肥大および機能低

(3)

■園購輪垂嚢

騒醸脚継携

聾 嚢

灘1鞭攣同誌1。、

欝態ざ

奪兇欝転陥、 fig l−1) S 61.3,27 蓼

fig l−2) S61.4.24 fig 1−3) S 61.5.12 Fig.1 胸部レントゲン写真 下,壁運動の低下が認められた.その他多量の胸 水が認められた. 入院9日目頃より胸水の著明な改善が認めら れ,19日目にはほぼ消失した(Fig.1−3)).同時に CRPも入院時48.4より5日目9.3となり,以後 徐々に改善した.酸素投与も胸水の改善とともに 中止し,微熱も徐々に消失してきたため,入院21 日目には抗生剤を中止した. 本症例は微熱以外に特に自覚症状は認められ ず,各種検査の結果,胸水の原因として,感染症, 膠原病,肺梗塞は否定された.骨シンチにて悪性 疾患の骨転移か多発性骨折が疑われる所見を得た が,胸水の速やかな改善より,悪性疾患の存在も 否定的となった.この骨シンチの成績は,心停止 時の心マッサージに際して生じた骨折と診断され た.さらに胸水の原因として,多発性骨折による 外傷性胸膜炎によるものと考えた. 2.糖尿病のコントロールに関する事項 当科転科時より,コントロールは良好であった が,血清生化学検査上腎症の進行を認めたため,

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V4

V5 V6 一円一?=c=}=7:」.三’’” コ「 . 、一』 』’ 1「 噂 τ圃一 一 . 1 一 一一 @ r o一二 一 − 一 ゚._一__ @ 一 冒 一 丁 一 f一. @ i @ 一一[ 1 @ 1 _1 @ 一 一 「 一 } 一 一一一’@−.. 7’一’ 一國 @ 一 `一__r 一 ? } − 一.. 」一一 ’ } 「一 − , ・ 幽 一 } 一 鼈鼈黶o … @ L ・ 一 . ■ 「 「 @ 一 @ .層 一 −一 」 」 一 , @ 1 k ._−r 一一一 7, 一.一一一一 ,.一一一 C 」 r [ L T 一. 「 − 「 一 一. 一 一 一 一 @ 山’n「’[}.’1』『 冒 @ 一 ?」 F − 一 τ1 ホ r〕一」 r『1.一一P一 @ .ユ.二=. D1i[・,…一一一 嚠黹Rー 一1一凶 ・』1ヨポ 冒 、圃1 ` ’・一「ヨヨ7.ぞ 表1 >尿:比重1.016,pH 6,蛋白(禰,糖(一〉,潜血反応(升), 沈渣:赤血球多数,白血球1/3・2,移行上皮2・4,硝子円柱1/5−i, 穎粒円柱1/5・i,ろう様円柱3/A,ネフローゼ円柱3/A レ血算:白血球8800/mm3(分葉球80,単球4,5,リンパ球15,5%), 赤血球356万/mm3,血色素9,9g/d丑,ヘマトクリット30,5%, 血小板31万/mm3,網状赤血球7脇 レ血清生化学:総蛋白6,5g/d朕Alb43,4,α1・G6.2,α2・Gi6.5, β・G】2.8,γ・G2Li%),BUN29.7mg/d2,Creat 1.8mg/d忍, UA 7.6m呂/d且,Na 141 mEq/2,K3.9mEq/2, C日04 mEq/忍, Ca 8,5mg/d£,P3.5mg/d坦,T℃hol 128mg/d2,TG 117mg/d£, T・bil O,4m巳/dゑ,GOT 17KU,GPT 17KU、 LDH 265 mU/m2, AIP 30.4KAU, LAP 331 GU,ChE O.45JPH, r・GTP

70mU/m2

レ心電図(4/24):洞性調律,心拍数110/分,軸0。,LVH㊦, 平紐T波㊦(II,[H,aVR, aVL, aVF, VI、 V4.6)

〉胸部レン・ゲ・写真(・/・4)・CTR不明,左胸水著明(一締1、,%) >HbAI,HbAlc(4/25):9.4。7.0% レ食事負荷試験: (5/21) 検査所見〔1〕 前 30分 60分 】20分 血糖(・巳/紛 A糖 bPR(n菖/・の 119 i一) Q.6 17ア 211 i一) S.6 187 i一) T.4 レ神経学的検査: 神経伝導速度(5/27): MCV ulnar 53,1 peroneal 4 L 6 SCV ulnar 43,6 sural 36.2(m/sec) 自律神経機能検査(5/2ア): ①体位変換(臥位→立位)による心拍数および 血圧の変動 前 15拍め 30拍め 1分 2分 心拍数σ分) 114 117 118 121 12ア 血圧(mmHg) 1!6/58 92/56 96/52 104〆56 ②深呼吸による心拍数の変動 心拍数(/分) 最大114 最小107

>眼底(4/25):Scott IHa ScheieHI∼IISII レ腎機能: 24時間クレアチニン・クリアランス(4/28):2i7m2/mm 尿蛋白排泄量 L43∼3.61g/日 β2MIG(4/30):血中6,35mg〃 尿中63μg/2 1,800kcal,蛋白60gの高カロリー蛋白制限,食塩 5∼7g食とした.さらにインスリン療法に変更し, モノタード・ヒューマン8単位朝1回法より開始 し,最終的にモノタード・ヒューマン8単位とア クトラピッド・ヒューマン4単位の混々朝1回法 とした.その結果,食前血糖が129∼!82mg/dl,食 後血糖が175∼205mg/dlとコントロール良好と なった. 3.糖尿病性合併症に関する事項 網膜症はScott IIIaと前回入院時と著変なかっ たが,腎症は食事療法の変更およびインスリン療 法の開始にもかかわらず,血清尿素窒素42.1mg/

(5)

表2

レ且勾水(4/26) :

(一 般)淡赤色,混濁,凝固(十),pH 7,2,比重1.021,

リバルタ(±),細胞数1000個/mm3

(生化学)総蛋白4.58/d君,LDH l96 mU/m2,アミラーゼ79 U/2, Na l41 mEq/2,K4.O mEq/2,Cl博4 mEq/2,T・chol 92mg/d£,

糖242而g/鵡(血糖333mg/dの (培 養)一般細菌:陰性,結核菌:陰性

(免 疫)β2MIG 6.85m巳/2,AFP On9/㎡, CEAしOn菖/㎡, CA I9−926 U/m2, TPA 320 U/2

(細胞診)cbss II〔赤血球(帯),好中球(十),リンパ球(十), 組織球(十),中皮細胞(十)〕

レ動脈血ガス分析(室内下X4/24):酬7.483, Pc。232,3mmHg,

Po255,9mmHg, HCO324,2mm/2, SBE O.9mm/2,

レウイルス抗体価(4/26):インフルエンザA,B,ムンプス、アデノ, コクサッキー,RS,エコー:陰性 レツ反(5/2):硬結 15×15mm 発赤 30×33mm 検査所見〔II〕 レ結核菌培養(5ハ5) :胃液,尿,便:陰性 レ一般細菌養(4/25):咽頭,中間尿:陰性 レ免疫学的検査(4/26):TPHA 80> RA(一) DNAテスト40> 抗核抗体(一) CH5067,9U/mゼ C3c 130,0mg/d丑 C499,0m巳/d忍 サイロイド・テスHOO>,マイクロゾーム・テスト100> レ腫瘍マーカー(4/26):CEA〔.。ng/畝CA 19・925 U婦, PSTI 29,4n9/m2,フェリチン478 ng/m2 レ腹部超音波検査(5/2):肝腫大,左胸水 〉胸部CT(5/12):左胸水,心嚢液(軽度) レ61Ga・citrate scan(5/2∼5/6): sternum xlphoid proses5付近, rib前面に

abnormal deposit5㊥ レBone scan(39mTo・MDP20使用)(5/13): 右第2,3,4,5,6肋骨前面,左第5肋骨前面, および胸骨下部にabnormal deposit㊥ dl,クレアチニン2.1rng/dl,尿酸9.Qmg/d1と進行 を認めた.24時間クレアチニン・クリアランスは 21.7m1/minであった. 神経障害に関しては,下肢末梢神経伝導速度の 低下を認め,R−R間隔による自律神経機能検査で も深呼吸負荷時の心拍数が,最大吸気時114/分, 最大呼気時107/分と変動が少ないことより,自律 神経障害の存在が確認された. 4.血圧のコントロールに関する事項 入院時より,塩酸ジルチアゼム180mg/日,塩酸 プラゾシン3mg/日,カプトリル75mg/日,フロセ ミド80mg/日,およびスピロノラクトン50mg/B が投与されており,血圧は122∼170/80∼100 mmHgとコントロール良好であった, 考 察 一般に高血圧の治療薬として最も広く使われて いるのは,サイアザイド系利尿剤とβ遮断剤であ る. 糖尿病に合併する高血圧の治療薬として,サイ アザイド系利尿剤の場合は低カリウム血症による インスリン分泌の低下やグリコーゲン代謝の異常 のために耐糖能の悪化を招くことがある5).また, β遮断剤は低血糖による自律神経反応を押さえ, 回復を遷延させる働きがあり,特に血糖コント ロールの不安定な患者でより顕著に現われる傾向 がある6). また,一般にβ遮断剤はβ1受容体を介する副作 用として,徐脈,心不全などをきたすことがあり, これらの作用は特に心臓の機能に関して感受性の 強い患者に多く認められる.例えば,境界域の心 不全患者に明らかな心不全を起こしやすい.本望 ら4>は,昭和57年10月から昭和59年10までの2年 間で,152施設において1,293症例にメトプロロー ルを使用したが,徐脈,不整脈等の循環器系の副 作用は,1,293野中42例(3.2%)で,特に心不全 を認めたものは2名(0.2%)であった.擁受容体 を介する副作用としては気管支痙攣,耐糖能の低 下,ブドウ糖動員能力の低下7)がある.カテコラミ ンであるアドレナリンは,インスリン分泌を明ら かに抑制する.ただし,一般にβ受容体刺激は分 泌を増大させる.したがって,β1受容体に選択的な 遮断剤が,糖尿病患者には降圧剤として望ましい とされており,また野津3)も,糖尿病合併本態性高 血圧患者のメトプロロールの有用性を報告してい る. 一方,Ew量ngら8)は,インポテンツ,起立性低血 圧,間歓性下痢,あるいは発汗異常等の訴えがあ り,自律神経障害の疑われた73例の5年間の経過 を報告している.彼らはValsalva試験による心 拍数の変動,Handgrip負荷試験による血圧変動, および体位変換時の血圧変動によって,自律神経 機能の評価をしている.73例中5年の観察期間中

(6)

に死亡したのは26例(36%)であった.経過観察 開始時,自律神経機能が正常と評価されたものは 33例で,うち観察期間中に5例(15%)死亡,ま た,開始時より実際自律神経障害が異常と評価さ れたものは40例で,うち観察期間中21例(53%) が死亡しており,5例は突然死であった. 開始時の自律神経機能検査として彼らが行なっ たValsalva試験では,施行した72例中正常27例, 境界11例,異常34例であり,死亡は各々4例,4 例,11例であった.またHandgrip負荷試験では, 施行72例中正常40例,境界7例,異常52例であり, 死亡は各々9例,3例,14例であった.さらに起 立性低血圧が認められなかったのは,施行66例中 20例,境界としたのは16例,認められたのは30例 であり,死亡は各々4例,4例,14例であった. このように自律神経障害を有するものの死亡が多 いことを報告している. また,5年生存率でも,性および年齢を一致さ せた一般人口では95%以上,自律神経障害の認め られない糖尿病患者群(n=33)では80%強に比 し,自律神経障害の認められる群(n=40)では 50%以下と著明に低下していた.彼らは,突然の 予期せぬ死亡の原因として,自律神経障害の関与 を示唆している. Kageyamaら9)によっても,心・呼吸停止をくり 返す著明な糖尿病性自律神経障害の1例が報告さ れており,また,Pageらlo)によっても,糖尿病患 者における突然死例で,自律神経障害に基づく心 血管系および呼吸器系の障害が注目されている. 本症例が突然の心不全より心停止を起こした原 因としては,種々の糖尿病性合併症の進行が認め られており,深呼吸時のR−R間隔の変動が少ない ことよりも,自律神経障害の関与が考えられる. さらに腎機能低下が認められ,細小血管障害のひ とつとして糖尿病性心筋障害の存在する可能性も 十分に考えられ,高血圧性心疾患によると思われ る心肥大が存在していたことより,心不全を起こ しやすい状態であったと考えられる.加えて昼遮 断剤の投与によりさらに残り少ない代償機能を損. い,長時間寒気中で労働するなどの外因性ストレ スが加わり,心機能の増悪が起こったと考えた. ま とめ 糖尿病患者の高血圧に対して,β1遮断剤は血糖 に影響なく比較的有用な降圧剤といわれている が,糖尿病性自律神経障害の著明な例,心機能低 下が予想される症例に対する投与には,慎重を要 すると考えられる1症例を報告した. 文 献

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2)正ager I, Blohme G, Slnith U:Effect of car・

dioselective and non・selectiveβ・blockade on the hypoglycemic response ln insulin・dependent diabetes, Lancet 3:458−462,1979 3)野津和己・馬木逸美・佐藤利昭ほか:本態性高血 圧症を合併した糖尿病例におけるメトプロP一ル (セロケン⑧)の使用経験.新薬と臨床 32:1595 −!600,1984 4)本望篤男・前田秀人・木津宗三:セロケソ市敗後 の臨床成績一臨床調査票の集計・解析.診療と新 薬 22:1637−1662,1985

5)Bengtsson C:Impairment of glucose

metabolism during treatment with antihyper−

tensive drugs. Acta Med Scand(Suppl)628:63

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delayed glucose recovery after insulin−induced hypoglycemia in normal and diabetic subjects, Diabetes Care 7:155−162,1984

7)Garber AJ, Cryer PE, Santiago JV et aL

The role of adrenergic mechanisms in the sub− starate and hormonal response to insulin−in− duced hypoglycemia in man. J Clin Invest 58:7

−15,1976

8)Ewing DJ, Campbell IW, Clarke BF:The

natural history of diabetic autonomic neur− opathy. Q J Med 193:95−108,1980

9)Kageyama S, Sasoh F, Homma I et a1: Cardiorespiratory arrest in a patient with

advanced diabetic autonomic neuropathy. Diabetes Res Clin Pract 1:243−246,1985 10)Page MM, Watkins PJ:Cardiorespiratory

arrest and diabetic autonomic neuropathy. Lancet 1:14,1978

参照

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