FOREX WEEKLY
市場営業統括部
チーフ・エコノミスト 山下えつ子
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【リスクオン or リスクオフ?】
10 月に入って相場の様相が変わり、債券利回りは上昇し、一方、為替相場はドル円は今週、101 円台前半から 104 円台まで大幅にドル高・円安に動いた。米国の経済指標が強めとなり、利上げ観測 が強まったことが背景にあるが、それだけが理由ではないだろう。過敏なグローバル債券市場
これまでも繰り返し取り上げてきたが、低成長の長期化に対して、金融政策のみでは対応できない として、先進諸国は財政政策と構造改革を促すスタンスに傾いている。この流れの中で、先般の日銀 の政策フレームワーク変更が国債購入の量から金利へとターゲットを移行するものだったため、日本 のみならず、グローバルに債券市場が過敏になっている。 国債の買取りが長期化すれば、物理的に量の限界に近づく。これを金利ターゲットという方法に変 更し、併せてフォワード・ガイダンスを強化することで緩和を強化する、というのが日銀の新フレー ムワークである。だが、買取り量が減少することを「テーパリング」だとして、債券市場は金利上昇 を目指している。「テーパー(剥がす)」という言葉は、米国が国債購入額を段階的に減額していっ た時に用いられた俗語である。国債購入額が減少する、という現象を捉えれば、日銀の買い入れ額が 減少すれば、テーパーだ(実質テーパーだ)と言われるのは間違いとは言えない。だが、米国が現在 の利上げ、つまり出口に向かう前段階としてまず量的緩和を縮小したこととは位置づけは全く異なる。 また、フレームワーク変更によって今後も緩和が強化される方向を辿る点でも、米国の方向性とは反 対である。このため、国債購入額の減少を捉えて「テーパーだ」と米国と同じ言葉で言われることに は日銀には抵抗があるだろう。黒田総裁は何度か「テーパーではない」と説明している。 しかし、今週は「ECB もテーパーに向かう」との観測が浮上して債券市場の材料となったように、 グローバルに債券市場は中銀による国債購入の減少を金利上昇イベントとして意識する(したい)時 間帯にあるようだ。6 日に公表された ECB 理事会の議事録(9 月 8 日理事会分)でも、金融緩和の継 続が議論されており、テーパリングや出口の議論は出てこない。だが、債券市場は今、過敏なのであ る。米国景気指標は良好
そこに加わったのが、米国の利上げ観測の高まりである(と筆者は位置づけている)。今週発表さ れた製造業 ISM と非製造業 ISM は、いずれも弱かった前月からリバウンドし、予想以上の改善だった。 前回は目立った理由がないのにデータが下振れ、今回も目立った理由はないがデータは上振れた。前 回分の落ち込みも今回分の上振れも、どちらも割り引いて見るべきだろう。 今回の ISM の数字は改善しているが、製造業でも非製造業でも大統領選や地政学リスクが懸念材料 となり、経済活動が抑制されている面もある。ただ、2 か月連続悪化が回避されたため、米国景気が 秋にかけて減速トレンドとなったわけではないことは確認できた。7-9 月の実質 GDP は 2.0%~2.5% と潜在成長率を幾分上回る水準となると予想されるが、10-12 月も同等の成長スピーを確保できそう だ。マーケットは経済指標の上振れを受けて、利上げ観測を高め、ドル高、また株安、債券安、の動き になっている。12 月の FOMC で利上げが実施されるとすると、まだ雇用統計だけでも 7 日発表分も含 めて 3 回も発表がある。ダンディールとするのは早い。しかし Fed からは年内利上げの可能性を示唆 されているため、利上げを織り込んでも誤りではないだろう。 また、雇用統計は非農業部門雇用者数で十数万人程度の増加があれば、失業率が上昇しない水準で あり、年内にあと 3 回も発表があるとは言え、利上げに対するハードルは低い。ただ、11 月の利上 げについては、日程が大統領選の直前であること、マーケットの大半も 12 月と予想していることか ら、攪乱となるような 11 月利上げ実施の可能性は低い、と考える。 7 日の雇用統計の後、9 日に第 2 回大統領候補討論会がある。これらを経て、来週のマーケットが 米国の経済と政治の不確実性が小さいと判断すれば、一段とドル高、債券安にバイアスがかかること になるだろう。その場合、ドル円は来週中に 105 円台まで乗せる可能性があると思われる。
米大統領選は討論会で盛り上がり
9 月 26 日の大統領候補のTV討論会に続き、10 月 4 日には副大統領候補のTV討論会も行われた。 民主党候補のケイン氏と共和党候補のペンス氏が経済や安全保障について討論したが、どちらも本人 の意見よりも大統領候補の代弁の役割を担った。ケイン氏は何度も相手の持ち時間中に割り込み、印 象を悪くしたが、ペンス氏は落ち着いて反論し、結果、討論会直後の CNN もよる世論調査では、ケイ ン氏が勝ったとの見方が 42%、ペンス氏が 48%だった。しかも世論調査の対象は民主党寄りだった ため、見た目以上にペンス氏が支持を集めたことになる。また、ペンス氏がトランプ氏の発言の真意 を代弁したことで、この副大統領討論会はトランプ氏にとっても有利となった。 副大統領候補の討論会はこの 1 回のみだが、大統領候補の討論会はこの後、9 日、19 日の 2 回残っ ている。1 回目はトランプ氏は大統領らしく振舞おうと暴言を慎んだが、逆にクリントン氏からトラ ンプ氏の過去の連邦税の不払いや女性蔑視発言などを攻撃され、クリントン氏が圧勝して終わった。 2 回目の 9 日の討論会ではトランプ氏がクリントン氏を個人攻撃することが予想される。これをクリ ントン氏がどのように防衛するか。またその 2 回目を経て 3 回目の討論会はどう収束するか。各人の 戦略と手腕が問われる。ただ、個人攻撃のネガティブ・キャンペーンが主流となると、ややレベルの 低いところでの戦いとなり、選挙結果にもどう反映されるのか読み難くなる。1 回目の討論会はクリ ントン氏の勝利だったが、その後の世論調査ではそれほどの差は付いていない。つまり、討論会の結 果がそのまま大統領選に向けての支持の変化に繋がるとは限らない。 米国の経済指標の上振れはリスクオンの相場を後押しするが、米国の政治は必ずしもリスクオンの 材料とは言い難い。依然として、不確実性として残っている。欧州にも不確実性が残る
一方、欧州では、ドイツの銀行セクターに対する特定の懸念は薄れたが(リスクオフは和らいだ)、 欧州の銀行セクター全体への不安心理は払拭されていない。併せて、ドイツではメルケル首相の支持率の悪化や地方選での与党敗退など、来年の総選挙を前にドイツの政治には不透明感が漂う。イタリ ア、スペインも然りである。 英国ではメイ首相が来年 3 月までに Brexit を始動するための Article50 を発動すると発表した。6 月の国民投票の後、この Article50 の発動、つまり EU 離脱を正式に申請する手続きを始めることは 困難だとの見方や、国民投票のやり直しといった後戻りの可能性への期待がマーケットにはあった。 しかし、今回の発表で来年 3 月までに Brexit を目指して EU との交渉が正式に始まることが明確にな った。ポンドは国民投票の直後に一旦大幅に下落した後、横ばいだったが、この発表を受けて再度下 落した。 1.1 1.15 1.2 1.25 1.3 1.35 1.4 1.45 1.5 1.55 1 /2 01 6 2 /2 01 6 3 /2 01 6 4 /2 01 6 5 /2 01 6 6 /2 01 6 7 /2 01 6 8 /2 01 6 9 /2 01 6 1 0/ 20 16 ポンド/ドル 1.02 1.04 1.06 1.08 1.1 1.12 1.14 1.16 1.18 1 /2 01 6 2 /2 01 6 3 /2 01 6 4 /2 01 6 5 /2 01 6 6 /2 01 6 7 /2 01 6 8 /2 01 6 9 /2 01 6 1 0/ 20 16 ユーロ/ドル 100 120 140 160 180 200 1 /2 01 6 2 /2 01 6 3 /2 01 6 4 /2 01 6 5 /2 01 6 6 /2 01 6 7 /2 01 6 8 /2 01 6 9 /2 01 6 1 0/ 20 16 ポンド/円 100 105 110 115 120 125 130 135 1 /2 01 6 2 /2 01 6 3 /2 01 6 4 /2 01 6 5 /2 01 6 6 /2 01 6 7 /2 01 6 8 /2 01 6 9 /2 01 6 1 0/ 20 16 ユーロ/円 リスクオンかリスクオフかを円相場から判断すれば、リスクオンのように見える。実際、米国の良 好な経済指標や OPEC 減産合意(9/30 号参照)などはリスクオン材料と言える。だが、前述のように、 債券市場の金利上昇の背景はリスクオン・オフとは別次元のものであり、また、欧米の政治には不確 実性が残り、リスクオフの素地は消滅していない。10 月に入って、マーケットではグローバルに新 たなポジションが構築されている。それは 10 月の相場を支配するだろう。だが、経済と政治の多岐 に渡る材料のリスクオン・オフの動きには別途、目配りをしておいた方が良さそうである。
ディーラーに聞きました(来週のドル円相場の方向性~ブルベア)
週 8 月 29 日~ 9 月 5 日~ 12 日~ 19 日~ 26 日~ 10 月 3 日~ 10 日~ 予想 +4 ±0 ±0 -6 -2 +2 -2 実績 ブル 中立 中立 中立 中立 ブル ≪見方≫ 当行の為替ディーラー(マーケット、カスタマー)8 名を対象に、来週の相場予想を聴取。ドルブル(終値から1円以 上のドル高)、中立(終値から上下1円内)、ドルベア(終値から1円のドル安)の三択で、結果を(ドルブル人数-ドルベア人数) で表記。+(プラス)は円安ドル高、-(マイナス)は円高ドル安を示す。主要 3 通貨の動き(2015 年 1 月~)
ドル/円 ユーロ/ドル ユーロ/円 95 100 105 110 115 120 125 130 1/ 1/ 2 01 5 3/ 1/ 2 01 5 5/ 1/ 2 01 5 7/ 1/ 2 01 5 9/ 1/ 2 01 5 11 /1 / 20 1 5 1/ 1/ 2 01 6 3/ 1/ 2 01 6 5/ 1/ 2 01 6 7/ 1/ 2 01 6 9/ 1/ 2 01 6 1.00 1.05 1.10 1.15 1.20 1.25 1.30 1/ 1/ 2 01 5 3/ 1/ 2 01 5 5/ 1/ 2 01 5 7/ 1/ 2 01 5 9/ 1/ 2 01 5 11 /1 / 20 1 5 1/ 1/ 2 01 6 3/ 1/ 2 01 6 5/ 1/ 2 01 6 7/ 1/ 2 01 6 9/ 1/ 2 01 6 105 110 115 120 125 130 135 140 145 150 1/ 1/ 2 01 5 3/ 1/ 2 01 5 5/ 1/ 2 01 5 7/ 1/ 2 01 5 9/ 1/ 2 01 5 11 /1 / 20 1 5 1/ 1/ 2 01 6 3/ 1/ 2 01 6 5/ 1/ 2 01 6 7/ 1/ 2 01 6 9/ 1/ 2 01 6 (データ出所:Bloomberg)その他通貨の中期的な動向(2011 年 1 月~)
ドル/人民元 英ポンド/ドル ドル/インドルピー 5.8 5.9 6.0 6.1 6.2 6.3 6.4 6.5 6.6 6.7 6.8 1/ 1/ 2 01 1 7/ 1/ 2 01 1 1/ 1/ 2 01 2 7/ 1/ 2 01 2 1/ 1/ 2 01 3 7/ 1/ 2 01 3 1/ 1/ 2 01 4 7/ 1/ 2 01 4 1/ 1/ 2 01 5 7/ 1/ 2 01 5 1/ 1/ 2 01 6 7/ 1/ 2 01 6 1.20 1.30 1.40 1.50 1.60 1.70 1.80 1/ 1/ 2 01 1 7/ 1/ 2 01 1 1/ 1/ 2 01 2 7/ 1/ 2 01 2 1/ 1/ 2 01 3 7/ 1/ 2 01 3 1/ 1/ 2 01 4 7/ 1/ 2 01 4 1/ 1/ 2 01 5 7/ 1/ 2 01 5 1/ 1/ 2 01 6 7/ 1/ 2 01 6 40 45 50 55 60 65 70 75 80 1/ 1/ 2 01 1 7/ 1/ 2 01 1 1/ 1/ 2 01 2 7/ 1/ 2 01 2 1/ 1/ 2 01 3 7/ 1/ 2 01 3 1/ 1/ 2 01 4 7/ 1/ 2 01 4 1/ 1/ 2 01 5 7/ 1/ 2 01 5 1/ 1/ 2 01 6 7/ 1/ 2 01 6 (データ出所:Bloomberg)通貨以外のマーケット動向(2015 年 1 月~)
債券(日本国債・10 年債利回り) 債券(米国債・10 年債利回り) -0.4 -0.2 0.0 0.2 0.4 0.6 2 01 5/ 1/ 1 2 01 5/ 4/ 1 2 01 5/ 7/ 1 2 01 5/ 10 /1 2 01 6/ 1/ 1 2 01 6/ 4/ 1 2 01 6/ 7/ 1 2 01 6/ 10 /1 % 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0 2.2 2.4 2.6 2 01 5/ 1/ 1 2 01 5/ 4/ 1 2 01 5/ 7/ 1 2 01 5/ 10 /1 2 01 6/ 1/ 1 2 01 6/ 4/ 1 2 01 6/ 7/ 1 2 01 6/ 10 /1 % 株(日経平均株価) 株(米ダウ) 14000 16000 18000 20000 22000 2 01 5/ 1/ 1 2 01 5/ 4/ 1 2 01 5/ 7/ 1 2 01 5/ 10 /1 2 01 6/ 1/ 1 2 01 6/ 4/ 1 2 01 6/ 7/ 1 2 01 6/ 10 /1 15000 16000 17000 18000 19000 20000 2 01 5/ 1/ 1 2 01 5/ 4/ 1 2 01 5/ 7/ 1 2 01 5/ 10 /1 2 01 6/ 1/ 1 2 01 6/ 4/ 1 2 01 6/ 7/ 1 2 01 6/ 10 /1 株(上海総合指数) 株(ドイツ DAX 指数) 1500 2500 3500 4500 5500 2 01 5/ 1/ 1 2 01 5/ 4/ 1 2 01 5/ 7/ 1 2 01 5/ 10 /1 2 01 6/ 1/ 1 2 01 6/ 4/ 1 2 01 6/ 7/ 1 2 01 6/ 10 /1 8000 9000 10000 11000 12000 13000 2 01 5/ 1/ 1 2 01 5/ 4/ 1 2 01 5/ 7/ 1 2 01 5/ 10 /1 2 01 6/ 1/ 1 2 01 6/ 4/ 1 2 01 6/ 7/ 1 2 01 6/ 10 /1 原油(WTI 先物(期近物):ドル/バレル) 金(NY 先物(期近物):ドル/トロイオンス) 20 30 40 50 60 70 2 01 5/ 1/ 1 2 01 5/ 4/ 1 2 01 5/ 7/ 1 2 01 5/ 10 /1 2 01 6/ 1/ 1 2 01 6/ 4/ 1 2 01 6/ 7/ 1 2 01 6/ 10 /1 900 1000 1100 1200 1300 1400 1500 2 01 5/ 1/ 1 2 01 5/ 4/ 1 2 01 5/ 7/ 1 2 01 5/ 10 /1 2 01 6/ 1/ 1 2 01 6/ 4/ 1 2 01 6/ 7/ 1 2 01 6/ 10 /1 (データ出所:Bloomberg)今週のプライスアクション(ドル円)
(出所:Reuters)①
②
③
① チャートポイントを抜けた こともあり、ドル円は上昇。 ② 強い非製造業 ISM を受けて ドル円は上昇。 ③ 米金利上昇によりドル円は 上昇。来週のチャ-ト分析
(出所:Reuters)Daily JPY=EBS 2016/08/01 - 2016/10/24 (TOK)
Price 0 100 101 102 103 104 105 01日 08日 15日 22日 29日 05日 12日 19日 26日 03日 10日 17日 24日 2016年 8月 2016年 9月 2016年 10月 <ドル円、日足、一目均衡表> ・ 現在雲の上を推移。 ・ 10/14 の雲上限は 103.52 円、下限は 102.35 円。
Daily EUR=EBS 2016/08/02 - 2016/10/24 (TOK)
Price .12 1.11 1.12 1.13 08日 15日 22日 29日 05日 12日 19日 26日 03日 10日 17日 24日 2016年 8月 2016年 9月 2016年 10月 <ユーロドル、日足、一目均衡表> ・ 現在雲の下を推移。 ・ 10/14 の雲上限は 1.1216 ドル、下限は 1.1159 ドル。