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的な体験を明らかにした調査は見当たらない. そこで本研究では, ベルケイド療法を受けている多発性骨髄腫患者を対象に, 主観的な体験を明らかにすることにより, 治療を受けている患者の看護について示唆を得ることを目的とした. Ⅱ. 研究方法 1. 研究デザイン質的記述的研究デザイン. 2. 用語の定義体

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Ⅰ.はじめに

 多発性骨髄腫(multiple myeloma;MM)は,骨髄中 の形質細胞が腫瘍化した疾患であり,60~70 歳代の男 性に多い.罹患率は人口 10 万人あたり 3~4 人程度と され,罹患率,死亡率ともに増加傾向である1).多発性 骨髄腫の治療は,初期治療,維持療法,再発・難治性と 病期によって異なり,従来の標準的治療だけでは完全寛 解には至らず,長期的には再発・再燃をきたすことも多 い.そのため,より安全で有効な新規治療薬の開発が行 われ,治療が推奨されている2)3)  多発性骨髄腫の新規治療薬として,2006 年 12 月にボ ルデゾミブ4)(販売名ベルケイド®:以下,ベルケイド) が日本国内で承認された.ベルケイドは世界で初めて臨 床応用されたプロテアソーム阻害薬であり,再発・難治 性多発性骨髄腫に対する高い治療効果が示された5)6).さ らに,未治療多発性骨髄腫に対する治療効果も示され7) 2011年 9 月からは,未治療多発性骨髄腫に対しても適 応が認められた.そのため,ベルケイドは幅広い多発性 骨髄腫患者の治療に貢献できる薬剤になっている.  ベルケイドの重大な有害事象として,骨髄抑制や肺障 害,腫瘍崩壊症候群などが挙げられる4).そのほか,臨 床上では末梢神経障害などの生活機能に影響を及ぼす有 害事象が多く観察され,治療効果が得られても治療前と 同様の生活を送ることが困難な者がいる.また,ベルケ イドは再発・難治性多発性骨髄腫に対する有効性が示さ れているが,完全に治癒するわけではないため,治療効 果に大きな期待を抱く一方で,不安が残るまま治療を続 けている者がいる.加えて,ベルケイド療法は初回治療 以降,外来に移行するため,退院後の患者の生活は見え にくくなり,医療者は有害事象の観察はできていても, 有害事象が日常生活に及ぼす影響や,治療への思いを理 解しにくい現状がある.このような背景から,患者と医 療者との認識には乖離が生じやすく,ベルケイド療法の 継続を支援する看護の検討には,患者の主観的な体験を 理解することが重要である.  造血器腫瘍患者の体験に関するわが国の看護研究は, おもに造血幹細胞移植を受けた造血器腫瘍患者の体験に 関する研究8)9)が行われている.そして,海外で行われて いる多発性骨髄腫患者の体験に関する研究10)~12)の多く は,病気のつらさに焦点が当てられている.しかし,再 発・難治性多発性骨髄腫にとって数少ない治療の選択肢 であり,有効とされるベルケイド療法に,有害事象がつ らくても延命に期待を抱いて治療を受ける,患者の主観 ■ 資 料

ベルケイド療法を受けている多発性骨髄腫患者の体験

成 澤   明

** 1)

,岡 本 隆 行

** 2)

,望 月 朋 美

** 3)

及 川 敦 子

** 3)

,神 田 有 香

** 3) ** 1)東京女子医科大学 ** 2)早稲田速記医療福祉専門学校 ** 3)国立開発研究法人国立国際医療研究センター (受付日:2014 年 1 月 22 日,受理日:2015 年 6 月 11 日) 連絡先 成澤 明/東京女子医科大学看護学部 〒162⊖8666 東京都新宿区河田町 8⊖1 Phone:03⊖3357⊖4804(内線 6263)/Fax:03⊖3357⊖4866/E-mail:[email protected] Key words: 多発性骨髄腫,ベルケイド療法,体験 (multiple myeloma, Velcade therapy, experience)

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状態や様子を鑑み,側面としてまとめた.  以上の分析過程において,複数の研究者が逐語録を読 み返し,分析を進めた.そして,がん看護の専門家およ び質的研究者のスーパーバイズを受け,真実性を高める よう検討を重ねながら分析を進めた. 7.倫理的配慮  本研究は,国立開発研究法人国立国際医療研究セン ター倫理委員会の承認を得て実施した.A 総合病院でベ ルケイド療法を受けている多発性骨髄腫患者のうち,主 治医の許可が得られた者を選出し,研究の趣旨,研究参 加の任意性と中断の自由,不利益の回避,匿名性の確 保,データの保管と破棄,結果の公表について口頭なら びに文書を用いて説明し,署名により同意を得た.説明 と同意の取得は,入院中または外来受診時に実施した. 参加者の心身に不要な負荷がかからないよう面接時間や 場所を考慮し,場合によっては中止できるなど,説明し ながらインタビューを実施した.

Ⅲ.結 果

1.研究参加者の概要  参加者は 6 名(男性 3 名・女性 3 名)であり,年齢 は 40~70 歳代であった.1 回の面接時間は 26~83 分で あり,平均面接時間は 47 分であった(表 1). 2.分析結果  分析の結果,121 のコード,36 のサブカテゴリー,8 のカテゴリーが抽出され,カテゴリーが示す内容から, 3の側面がみられた(表 2).以下,各側面の内容につい て説明する.なお,【 】はカテゴリー,《 》はサブカ テゴリーを示し,「明朝斜体文字」は実例,( )は語り の補足,文末の(番号)は参加者番号を示す. 1)ベルケイド療法がもたらした生活上の障壁  【ベルケイド療法による有害事象の身体的影響や治療 継続による負担の蓄積で苦悩する】:7 のサブカテゴ リーが含まれ,ベルケイド療法により,《末梢神経障害 による痺れ・疼痛が苦痛である》《排便コントロール不 良により苦痛である》《持続する倦怠感により活気がな くなる》《嘔気や口腔内異常により食事摂取が思うよう に進まない》《未経験の有害事象が出現したことに戸惑 う》ように有害事象による苦痛を認知し,《有害事象に よる身体的制限により治療前と同様の生活を送ることが できない》ように日常生活になんらかの影響を及ぼして いた.そして,《治療の継続で経済的負担や身体的疲労 が蓄積する》ように,治療継続による負担や疲労が蓄積 することで苦悩していた.「足なんか厚いあれ(靴下) 的な体験を明らかにした調査は見当たらない.そこで本 研究では,ベルケイド療法を受けている多発性骨髄腫患 者を対象に,主観的な体験を明らかにすることにより, 治療を受けている患者の看護について示唆を得ることを 目的とした.

Ⅱ.研究方法

1.研究デザイン  質的記述的研究デザイン. 2.用語の定義  体験:看護学研究論文における「体験」の概念分析を 行った研究13)を参考に,「多発性骨髄腫患者が,ベルケ イド療法を受ける過程において個人が主観的に感じ,考 え,行動したこと」と定義した. 3.研究参加者  研究参加者(以下,参加者)は,首都圏の A 総合病 院(病床数約 850 床)の多発性骨髄腫患者のうち,ベ ルケイド療法を 1 コース以上受け,研究参加に同意を得 た者とした. 4.研究期間  2009 年 7 月~2010 年 12 月. 5.データの収集方法  研究者が作成したインタビューガイドに基づき,1 人 につき 1 回の半構造化面接を実施した.インタビューガ イドは,「ベルケイド療法について医師から説明された 際,ベルケイド療法を受けることを決めるまで,ベルケ イド療法を受けている際,ベルケイド療法を受けた後ど のように感じ,考え,どのようなことを行いましたか」 というように,治療の経過に沿って作成した.  基本属性は,診察記録および看護記録から収集した. インタビューは 1 名の研究者が行い,インタビューが終 了するごとに研究者間で振り返った. 6.分析方法  半構造化面接法により得られたインタビュー内容か ら,逐語録を作成し,次の手順で分析した.  1)逐語録を文脈の意味ごとに区切り,参加者の体験 を示している要素を抽出し,抽出した内容の要素に含ま れる意味を解釈して要約した(コード化).  2)コードを意味内容の類似性と相違性に基づいて分 類し,抽象度についても検討を重ねながらサブカテゴ リーを抽出した(サブカテゴリー化).  3)サブカテゴリーの意味内容の類似性から抽象化 し,カテゴリーを抽出した(カテゴリー化).  4)カテゴリーを比較し,カテゴリーが示す内容から

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《効果があるといわれているものにはすがりたい》  【病状を自分自身で確認しながら病気や治療を理解し ようとする】:3 のサブカテゴリーが含まれ,治療前ま たは治療を受けながら,《自分ができる範囲で媒体や他 者から情報を得ることで病気と治療について理解する》 《同病他者と自身を比較し状態を把握する》《治療を受け ながら知識不足を補い病気や治療の理解をより深める》 ように,情報に頼りながら理解を深めていた.「ベルケ イドって名前を知ってたくらいで,パソコンでみたり, 図書館に行って一応は調べました.だから,治療に使 うってことには特に抵抗はなかったですね.(5)」《自分 ができる範囲で媒体や他者から情報を得ることで病気と 治療について理解する》  【医療者を信頼しながら治療を継続し予測できる有害 事象は可能な範囲で自己対処する】:5 のサブカテゴ リーが含まれ,ベルケイド療法がもたらした生活上の障 壁に対して,《有害事象はじきに落ち着くと体験から前 向きに捉える》《医療者の助言をもとに有害事象に対処 する》《医療者を信頼して治療を継続する》ように,有 害事象が出現するのは仕方がないと考え,治療に纏わる 医療者からの伝達事項を守ろうとする一方で,《有害事 象に対して自己対処の方法を考えて実践する》《好きな 履いてるみたいな感じだし,手は全然使えないから台所 の中もいじれないし….(1)」《有害事象による身体的制 限により治療前と同様の生活を送ることができない》 2)ベルケイド療法を継続しうる拠りどころ  【死を意識しながらも治療できていることを前向きに 捉える】:6 のサブカテゴリーが含まれ,《受けるべきも のとして治療を受ける決意を固める》ように,ベルケイ ド療法を受ける決意を固めたとしても,治療の選択肢が 少なく,《死を身近なものとして意識する》ように死を 意識していた.その一方で,《治療を受けられているこ とに喜びを感じる》ように,治療が受けられているだけ でも良いと感じていた.そして,《病気を受け入れて治 療に専念するしかない》《生きがいを持って前向きに治 療に臨む》《効果があるといわれているものにはすがり たい》ように,治療をするからには効果を期待しながら 前向きに臨んでいた.「私の親が小学校 6 年生のときに 死んだんですよ.(中略)それで,生きてるってことを 大事にしなきゃいけない気持ちが出るよね.(1)」《治療 を受けられていることに喜びを感じる》「(民間療法で) いいっていうものがあれば,(中略)何が変わっていく か,ちょっとやってみたかったのよ,自分が実験台で, (中略)もしもやってみていい血球ができれば….(2)」 表 1 研究参加者の基本属性

研究参加者 No.1 No.2 No.3 No.4 No.5 No.6

性別 男性 女性 男性 女性 男性 女性 年齢 60歳代 70歳代 50歳代 40歳代 70歳代 50歳代 面接時間 42分 83分 33分 38分 62分 26分 インタビュー時コース数 4 6 2 2 3 3 ステロイド内服 有 有 有 有 有 有 ベルケイド療法以前の治療 サリドマイドMP療法 MP療法 MD療法 VAD療法 MPB療法 VAD療法 デカドロンVAD療法 単独療法 MP療法 放射線治療 VAD療法 自家末梢血 幹細胞移植 ベルケイド療法の目的 移植前 難治性 難治性 移植前 維持 維持 キーパーソン(同居家族) 妻 夫・子ども 妻 夫 妻 子ども PS(Performance Status) 0 1 0 0 0 1 有害事象の有無 末梢神経障害 + + + + - + 好中球減少症 - - + - - - 貧血 - + + - - - 血小板減少症 - + + - - - 発熱 - + + - - - 便秘 + + - + - - 下痢 - - + - - - 悪心 - - - - - - 疲労感 + - - + - - 食欲不振 - - + - - - 有害事象に伴う薬剤量・ スケジュールの変更 有 有 有 有 無 有

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維持できるように工夫する】:2 のサブカテゴリーが含 まれ,ベルケイド療法開始後は,《無理せず健康な生活 を送るために自己管理する》ように,安定した生活が維 持できるように心がけ,《家族の協力を得ながらともに 生活を営む》ように,できない部分は家族に協力しても らいながら生活するよう工夫していた.「がんだってわ かってるから,前みたいに無理ができないと思うんです ね.だから,歩くコースも,(中略)万が一何かあった ときに,すぐ帰ってこれるコースを考えますね.(5)」 《無理せず健康な生活を送るために自己管理する》 ことで気分転換をはかる》ように,医療者からの助言に よる対処方法だけでなく自ら情報収集し,有害事象や苦 悩を和らげるために効果があるとされている対処方法を 実践していた.「(末梢神経障害が)ずっと続くのかなと 思うとすごい不安になっちゃってどうしようって思うけ ど,体験してみて,(末梢神経障害が)きても一時的な ものなんじゃないかっていうふうに思えるようになっ た.(4)」《有害事象はじきに落ち着くと体験から前向き に捉える》  【治療による有害事象とうまく付き合いながら生活が 表 2 ベルケイド療法を受けている多発性骨髄腫患者の体験 側面 カテゴリー サブカテゴリー ベルケイド療法がもたら した生活上の障壁 ベルケイド療法による有害事象の身体的 影響や治療継続による負担の蓄積で苦悩 する 末梢神経障害による痺れ・疼痛が苦痛である 排便コントロール不良により苦痛である 持続する倦怠感により活気がなくなる 嘔気や口腔内異常により食事摂取が思うように進まない 未経験の有害事象が出現したことに戸惑う 有害事象による身体的制限により治療前と同様の生活を送ることができない 治療の継続で経済的負担や身体的疲労が蓄積する ベルケイド療法を継続しうる拠りどころ 死を意識しながらも治療できていること を前向きに捉える 受けるべきものとして治療を受ける決意を固める 死を身近なものとして意識する 治療を受けられていることに喜びを感じる 病気を受け入れて治療に専念するしかない 生きがいを持って前向きに治療に臨む 効果があるといわれているものにはすがりたい 病状を自分自身で確認しながら病気や 治療を理解しようとする 自分ができる範囲で媒体や他者から情報を得ることで病気と治療について理解する 同病他者と自身を比較し状態を把握する 治療を受けながら知識不足を補い病気や治療の理解をより深める 医療者を信頼しながら治療を継続し予測 できる有害事象は可能な範囲で自己対処 する 有害事象はじきに落ち着くと体験から前向きに捉える 医療者の助言をもとに有害事象に対処する 医療者を信頼して治療を継続する 有害事象に対して自己対処の方法を考えて実践する 好きなことで気分転換をはかる 治療による有害事象とうまく付き合いな がら生活が維持できるように工夫する 無理せず健康な生活を送るために自己管理する 家族の協力を得ながらともに生活を営む ベルケイド療法への揺れる思い・行動 治療の受け入れを容易に決断できずに 葛藤する 治療が必要な状態であることを受け入れざるをえない 治療に専念しようにも仕事役割を他者に委譲しきれない 未知の治療に対して恐怖を抱き踏み切れない 治療の効果と限界を実感しながら今後の 治療に期待と不安を抱く 有害事象がなく症状や体調が改善されることで治療の効果を実感する 有害事象に対する自己対処の効果と限界を体感する 治療を予測していたものより安楽に感じる 今後もこのまま治療が継続できるか不安を抱く 最善の治療を受けながらも新たな治療に期待する 治療が支障なく継続できるよう医療者に 期待する 治療継続の決定は自身で行いたい 病気や治療法に対する今後の見通しを知りたい 自己対処するための正確な情報が欲しい 同病他者と交流する機会が欲しい 症状や思いを理解してほしい

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影響や治療継続による負担の蓄積で苦悩する】ように, ベルケイド療法による有害事象がもたらした日常生活へ の影響や負担の蓄積が,生活上の障壁となっていた.参 加者から語られた有害事象は,末梢神経障害や排便コン トロール不良によるものが多かった.ベルケイド療法で 高頻度に出現する有害事象は,血液毒性,消化器症状, 倦怠感および末梢神経障害が報告されている4)14).この ことから,末梢神経障害や排便コントロール不良は,有 害事象の中でも大きな苦痛を感じやすいと考える.末梢 神経障害は,ベルケイドに特徴的な有害事象であり,累 積投与量の増加とともに発現率が高くなる15).そのた め,看護師は有害事象の蓄積も含めた患者特有の体験を 捉え,支援を検討することが求められる.  末梢神経障害をはじめとする有害事象への対処と効果 は,参加者によって異なっていた.症状の体験は,患者 の解釈や認知によって異なるため,同じ症状に同じ対処 をしても,全く同じ効果が得られるとは限らない16).そ のため,看護師は,末梢神経障害をはじめとする有害事 象に対して,原因となる生理的・病態的・心理的な機 序,各種対症療法の作用に関する知識をもち,ひとつの 対処方法だけでなく,患者の症状に最も効果的と考えら れる対処方法を選択していく必要がある.そして,ベル ケイド療法が日常生活に及ぼす影響を理解し,生活上の 障壁について注視しながら支援する必要性が見出され た. 2.ベルケイド療法を継続しうる拠りどころ  参加者は,【死を意識しながらも治療できていること を前向きに捉える】ように,難治性であることを認識し ていながらも,治療ができていることを拠りどころとし て前向きに捉えていた.そして,【病状を自分自身で確 認しながら病気や治療を理解しようとする】ように,前 向きに治療に臨むためにベルケイド療法を受ける前,ま たは治療を受けながら,積極的に病気や治療について理 解しようとしていた.山口ら8)は,造血幹細胞移植を受 けた造血器腫瘍患者の病みの体験は,症状を軽くみる時 期,重大な病気を疑う時期,死ぬ病気にかかり衝撃・混 乱とともに死の不安が生じる時期を経て,生きられると いう希望が芽生え,闘病意欲が生じる時期に移行するこ とを明らかにしている.しかし,病気や治療の受け入れ について,症状を軽くみている,衝撃・混乱を生じてい るという内容の語りはみられなかった.これは,すでに 治療経験がある患者を対象としたため,治療を受容し, 有害事象がある程度予測できていたこと,ベルケイドの 投薬が数十秒程度で終了することにより,つらいという よりも案外楽に治療が受けられていると考えることか 3)ベルケイド療法への揺れる思い・行動  【治療の受け入れを容易に決断できずに葛藤する】:3 のサブカテゴリーが含まれ,《治療が必要な状態である ことを受け入れざるをえない》ように,病気の進行から ベルケイド療法の必要性を理解しながらも,ベルケイド 療法を受けるまでには,《治療に専念しようにも仕事役 割を他者に委譲しきれない》《未知の治療に対して恐怖 を抱き踏み切れない》ように葛藤していた.「治療だか らやってるわけで,(中略)あくまでも治療の一環だか ら.選択肢の中で俺が選べる選択肢がそんなにないか ら.(1)」《治療が必要な状態であることを受け入れざる をえない》  【治療の効果と限界を実感しながら今後の治療に期待 と不安を抱く】:5 のサブカテゴリーが含まれ,ベルケ イド療法と自己対処により,《有害事象がなく症状や体 調が改善されることで治療の効果を実感する》一方で, 《有害事象に対する自己対処の効果と限界を体感する》 ように患者によって対照的であった.そして,治療効果 を実感している人は,《治療を予測していたものより安 楽に感じる》ように安楽に感じていた.しかし,効果を 実感していても《今後もこのまま治療が継続できるか不 安を抱く》《最善の治療を受けながらも新たな治療に期 待する》ように不安や期待も混在していた.「今のとこ ろ効果が,ベルケイドになって出ましたので,すごく頼 りにしているというか,続けられて,ほんと幸せです. (6)」《有害事象がなく症状や体調が改善されることで治 療の効果を実感する》「(研究中っていうことが)ありま すよね.1 年でも 2 年でも長生きしてれば,長生きして る間に次の薬が見つかるかもしれないですよね.(2)」 《最善の治療を受けながらも新たな治療に期待する》  【治療が支障なく継続できるよう医療者に期待する】: 5のサブカテゴリーが含まれ,《治療継続の決定は自身 で行いたい》《病気や治療法に対する今後の見通しを知 りたい》《自己対処するための正確な情報が欲しい》《同 病他者と交流する機会が欲しい》《病状や思いを理解し てほしい》ように,ベルケイド療法を受けるすべての過 程で医療者に期待していた.「こういう治療始めますか らっていうのをさ,ゆっくりした時間をね,1 日でもつ く っ て く れ る と, み ん な ず い ぶ ん 違 う と 思 う.(2)」 《病気や治療法に対する今後の見通しを知りたい》

Ⅳ.考 察

1.ベルケイド療法がもたらした生活上の障壁  参加者は,【ベルケイド療法による有害事象の身体的

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では,医療者の情報提供や関わりの不足,医療者が患者 の思いを十分理解できていないことが示唆された.中で も,同病他者との交流機会への期待はすべての参加者か ら語れた.小坂ら17)は,がん患者は医療者や同病他者か ら情報を得ることで化学療法の有害事象による対処方法 に関する知識を広げていたことを明らかにしている.ま た,石田ら19)は,病気を乗りこえる際には,時間だけで なく,同病他者の協力が必要であることを明らかにして いる.しかし,参加者の語りからは期待する内容が満た されていない現状が示された.これは,ベルケイド療法 が初回治療以降は外来に移行するため,同病他者との交 流機会を持ちにくかったためと考える.患者の努力だけ では交流機会を設けるのは困難であるため,看護師は患 者会の情報提供や同病他者との交流機会を設けるなど, 患者同士がコミュニケーションを図れるよう,橋渡しを 担う役割意識を高める必要がある.

Ⅴ.研究の限界と今後の課題

 本研究の参加者は,1 病院で治療を受けている患者の みであり,医療機関の体制や地域性の影響を受けている と考える.また,参加者が 6 名であり,結果の一般化に は限界がある.今後は,地域性,医療機関の特徴などを 考慮して研究結果を比較する必要がある.また,未治療 の多発性骨髄腫に対してベルケイド療法を受けている患 者との比較,そして,影響や関係が示唆された体験の内 容を考慮し,実証的研究に発展させていくことが課題と して挙げられる.

Ⅵ.結 論

 ベルケイド療法を受けている多発性骨髄腫患者は,末 梢神経障害や排便コントロール不良に代表される有害事 象がもたらす日常生活への影響や負担の蓄積が,生活上 の障壁となっていた.一方で,死を意識しながらも再 発・難治性多発性骨髄腫に有効なベルケイド療法の効果 や苦痛が軽減されることを拠りどころとして治療を継続 していた.このようにベルケイド療法へ望みを託しつつ も,治療の限界を感じ,今後に不安を抱く,揺れる思 い・行動が浮き彫りとなった. 謝 辞  本研究にご協力いただきました皆様に心より深く感謝申し上げ ます.本稿は,第 27 回日本がん看護学会学術集会にて発表した内 容に加筆修正したものである. ら,治療の継続に手応えを得ていたと考える.今後,ベ ルケイド療法は未治療の多発性骨髄腫患者へ適用が増加 していくことを鑑み,看護師は症状を軽くみる時期や, 衝撃・混乱が生じることも念頭において関わり,患者が 治療を前向きに継続できるように支援していく必要があ る.  生活上の障壁に対しては,【医療者を信頼しながら治 療を継続し予測できる有害事象は可能な範囲で自己対処 する】ように,医療者からの助言や自ら情報収集するこ とで対処し,【治療による有害事象とうまく付き合いな がら生活が維持できるように工夫する】ように,おのお のが苦悩を抱えながらも日常生活が維持できるような工 夫を見出していた.化学療法による有害事象への対処方 法について調査した研究17)において,がん患者は状況理 解と対処の体験を重ね,状況に応じた対処方法を選択 し,医療者や同病他者から情報を得ることで対処に関す る知識を広げており,共通する部分があった.これらの ことから,看護師は治療に関する情報提供を行い,有害 事象への対処方法など,患者が必要とする情報を自ら収 集できる能力の向上につながる情報提供をしていく必要 がある. 3.ベルケイド療法への揺れる思い・行動  参加者は【治療の受け入れを容易に決断できずに葛藤 する】ように,仕事や未知の治療であることが影響し, 治療に踏み出せずにいた.そして,葛藤の末に治療を受 け入れていた.瀬山ら18)は,化学療法を受けながら転移 や増悪を体験したがん患者の治療継続過程における情緒 的反応の局面のひとつとして,期待やためらいの狭間で 化学療法を始める局面があることを明らかしており,共 通している部分があった.また,治療開始後も【治療の 効果と限界を実感しながら今後の治療に期待と不安を抱 く】ようにベルケイド療法の効果を実感し,希望や期待 を抱く一方で治療の限界を感じ,今後の治療に不安を抱 いていた.瀬山ら18)は,化学療法の治療継続過程のタイ プを各対象者の情緒的反応と療養行動を照らし合わせ, 希望や期待,あるいは自己の価値観との一貫性が示され たものを積極的反応,迷いやあきらめが示されていたも のを消極的反応の 2 つに分類しており,同様の結果で あった.これは,ベルケイド療法の適応範囲が広いた め,参加者のおかれている状態により反応が異なったた めと考える.看護師は治療過程と情緒的反応を把握しつ つ,患者の深層心理や背景,患者や家族が目指すものを 理解し,個々の状況に応じた関わりや支援を提供してい く必要がある.  【治療が支障なく継続できるよう医療者に期待する】

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10) Maher K, de Vries K. An exploration of the lived experiences of individuals with relapsed multiple myeloma. Eur J Cancer Care.

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Experiences of Multiple Myeloma Patients Receiving Velcade Therapy*

Akira Narusawa, Takayuki Okamoto, Tomomi Mochizuki, Atsuko Oikawa, Yuka Kanda Address reprint requests to :

Akira Narusawa. Tokyo Women s Medical University School of Nursing. 8 1 Kawada-cho, Shinjuku-ku, Tokyo 162-8666, JAPAN

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