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明海大学歯学雑誌 44‐2☆/学術大会抄録(44‐2)26

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明海歯科医学会

第 26 回学術大会抄録

日時:2015 年 6 月 4 日(木)9 : 00∼ 会場:明海大学歯学部第 1・第 2 会議室

汎用デジタルカメラを用いた顔面形状計測

勅使河原 大輔

明海大学大学院歯学研究科歯学専攻 (理工系歯材応用研究群歯科補綴学Ⅱ) 【目的】顔面領域の補綴的再建では,審美的な形態が患 者の QOL に直結することから,顔面形状取得法に対し て高精度,高い細部再現性が求められている.これらの 要件を満たす方法として,いわゆる能動的測定法を原理 とした空間計測機器を応用した方法が多く提唱されてい る.しかし,これらの方法は,測定時に被写体へ能動的 に構造光(赤外線,レーザー光など)を照射するもの や,撮影時間が数秒から数十秒と長時間の姿勢維持を強 いられるものなど撮影条件や撮影環境に制約があり,患 者に対する制限も多い.近年,汎用デジタルカメラを用 いた空間計測システム(Fujifilm 3 次元計測システム,Fu-jifilm社製)が実用化され,主に工業界で遠隔対象物の 測量に利用されている.本システムは受動型ステレオ法 を原理としており,通常の写真と同様に撮影された画像 をもとに三次元データの構築を行うことができる.携帯 性や簡便性に優れていることに加え,顔面計測法として は,開眼状態や表情の変化を安全かつ容易に捉えること ができるため,様々な状況下での応用が期待できる.一 方で,空間計測能は被写体の色調および表面性状の影響 を受けやすく,構築した点群に測定ノイズが生じやすい ことから他の能動型測定原理を応用した測定機器に比較 し細部再現性が劣るとされている.そこで,本システム をデジタル顔面形状計測の一方法として応用するに当た り,構築した点群のノイズ除去に関する検討を行ったの で報告する. 【材料と方法】顔面石膏模型およびエピテーゼのワック スパターンを被写体(概寸法,13 W×7 D×10 H(cm)) とした.視野角,レンズ間距離などの幾何的位置関係が 既知の汎用デジタルカメラ(FinePix REAL 3D w3m,

Fuji-film社製)を用いて撮影した一対のステレオ画像をもと に,空間計測ソフトウェア(撮測 3D, Armonicos 社製) を用いて三次元点群データを構築した.構築した点群デ ータから,Epipolar 平面の軸に対して平行に配列した点 群列を抽出し,平面上に投影した奥行成分に対して,以 下に示す画素の RGB 値より算出した色データ用いてノ イズ補正(Correction using Color Information, CCI)を行 いその効果を検証した. ・明度:B=(RGBmax+RGBmin)/2 ・輝度:Y=0.299 R+0.587 G+0.114 B 【結果と考察】CCI を行った場合,通常のダウンサンプ リングによる平滑化に比べ,被写体の微細な凹凸部の節 点を選択的に保存した測定ノイズの除去が可能であっ た.構築した三次元データは座標値および RGB 値の色 データを有する節点からなる点群であるため,これらを stereo lithography,いわゆる STL 形式のポリゴンデータ

に変換する際に法線ベクトルの設定が必要である.Pois-son surface reconstructionに代表されるポリゴンデータへ

の変換法では,法線ベクトルの推定を対象節点および周 囲節点の座標値から算出するため,表面形状はサンプル とする点群の節点の影響を大きく受ける.点群の測定ノ イズをあらかじめ除去することによって,ポリゴンデー タにも微細な凹凸を反映することができると考えられ た.画像内の色調の明暗は視覚的認識だけではなく実際 の立体構造に影響し,本法を用いることにより,側例の 細部再現性を向上させることが示唆された.今回得られ た結果を基に,将来的に訪問診療が必要な顔面欠損患者 に対する臨床応用を実現したいと考える.

天然歯における色彩学的研究

−上顎左右切歯における厚径と色調の関連性−

河合 美貴子

明海大学大学院歯学研究科歯学専攻 (理工系歯材応用研究群歯科補綴学Ⅱ) 【目的】上顎前歯部に対して補綴装置による修復を行う 際,天然歯の色調を色彩学的に把握しておく必要があ る.上顎前歯部を対象に色彩学的分析に関する報告はな されているが,色調と形態の関連について明らかにした 報告は少ない.これまでの研究で 3 か所の測定部位と厚 径の相関について調べた.そこで本研究では色調構築に 必要なデータを増やして分析するために,対象となる部 位,歯種を拡大し,上顎中切歯,側切歯の色調分析と厚 径の関係を調べた. 【材料と方法】本研究の趣旨に同意の得られた 20 歳代の 健全天然歯を有する 57 名(男性 41 名女性 16 名;平均

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年齢 24.4±2.5 歳)の上顎左右中切歯ならびに側切歯を 研究対象とした.測色装置として歯科用分光光度計 Crystaleye SpectrophotometerⓇ(オリンパス)を用いた. 上顎左右中切歯,側切歯の歯表面の分光反射率を測定 し,色彩学的数値(CIELAB 表色系)を算出した.ま た,被検者の上顎前歯部を前歯部用トレーとシリコーン 印象材 genie レギュラーボディー(SultanHealthcare,米 国)を用いて精密印象を行い,その後超硬質石膏 elite stoneⓇ (Zhermach)を用いて測定用模型を製作し,模型 上で厚径測定を行った.厚径の測定部位は切縁部,中央 部,歯頸部のそれぞれ中央,近遠心合計 9 か所を測定し た.これらの計測部位は,分光反射率の測定部位に一致 させた.厚径測定にはデジタルノギス IP67 ABS キャリ パ(ミツトヨ)を用いた.各部位ごとに 3 回ずつ測定 し,平均値を算出し,色彩学的数値と厚径の相関分析を 行った.なお分析には統計処理ソフト SPSS Ver.20.0 (IBM,米国)を用いた.測色および測定部位として上 顎左右中切歯,側切歯における歯頸部,中央部,切縁部 のそれぞれ近心,中央,遠心の 9 か所とした.本研究は 明海大学歯学部倫理委員会の承認を得て行われた(承認 番号:A 1007). 【結果と考察】厚径の測定精度を検討するために 57 名の 上顎左右中切歯の切縁部,中央部,歯頸部,それぞれ 3 回ずつ厚径測定し,各部位の平均と SD を求め変異係数 (CV 値)を計算した.その結果,CV 値は 0.25 と安定 しており,厚径測定時のエラーは小さかったものと考え る.切縁部,中央部,歯頸部 9 か所全ての部位を合わせ た色彩学的数値と厚径の相関係数は L*で R=0.456, a* で R=0.639, b*で R=0.594, c*で R=0.606(いずれも p <0.01)であった.以上のことから,歯頸部から切縁部 に向かうにつれて,赤み(a*),黄み(b*)が弱くなる 傾向が認められ,加えて明るさは切縁部に向かうにつれ て明るくなる傾向が認められた.今回の結果から,厚さ と色調の関連性が認められ,修復に対する色調構築を考 える上で,厚さが厚い歯頸部では赤み,黄みを強くし, 薄い切縁部においては,赤み,黄みを弱くする配慮が修 復物の色調再現性に影響を及ぼすものと考えられる.

Magnolol

と honokiol による Porphyromonas

gingivalis

リポ多糖体刺激 TNF-

α

発現の

調節作用

川田 朗史

明海大学大学院歯学研究科歯学専攻 (機能系病態機能研究群口腔診断学) 【目的】Porphyromonas gingivalis は慢性歯周炎の主要な 病原細菌で菌体表面のリポ多糖(LPS)などの直接的な 刺激を介して宿主細胞からの炎症メディエーター産生に 寄与している.TNF-α は LPS などの刺激により誘導さ れる主要な炎症性サイトカインで,炎症反応や細胞増 殖,アポトーシスなどの生理現象に関与しており,その 発現は転写因子 nuclear factor kappa-B(NF-κB)の活性 化により調節されている.一方,植物性フェノール関連 化合物は優れた抗酸化作用を有し,食品添加物,化粧 品,医薬品として広く応用されている.Magnolol と honokiolは,eugenol 二量体関連物質で,モクレン科の 植物であるホオノキから採取され,その樹皮は厚朴とい う生薬として古来用いられ,抗がん性,向神経性作用が あるとされる.また,関連化合物の eugenol は消炎鎮痛 作用を有し歯科領域で今なお利用されている.Murakami らは以前 bis-eugenol(eugenol オルト二量体)が高濃度 で Escherichia coli LPS 誘導性炎症性サイトカイン発現 を抑制することを報告した.しかし magnolol や honokiol による P. gingivalis LPS 刺激炎症性サイトカイン発現調 節機構に関する報告は少ない.そこで今回,マウスマク ロファージ様 RAW264.7 細胞を使用し,P. gingivalis LPS 刺激 TNF-α 発現に及ぼす magnolol と honokiol の調節 作用について検討したので報告する.

【材料と方法】1.試薬:Magnolol, honokiol, eugenol を 使用した.bis-Eugenol は eugenol より酸化的二量化反 応で合成したものを使用した.2.細胞傷害性試験:マ ウスマクロファージ様細胞株 RAW264.7 細胞を使用し た.細胞障害性試験は培養細胞に各試薬を添加 24 時間 後に cell counting kit-8 を使用して測定した.3.細胞刺 激物:LPS は Porphyromonas gingivalis ATCC 33277 株 由来 LPS を購入し使用した.TNF-α は組み換えマウス

TNF-α を購入し使用した.4.TNF-α 発現:細胞の

mRNAレベルは TaqMan probe/primer mixture を使用し

た定量 PCR システム GeneAmp SDS 5700 にて測定し た.蛋白質レベルは培養上清を回収後,抗 TNF-α 抗体 を使用した ELISA kit を使用し検討した.5.COX-2 発 現:mRNA レベルを定量 PCR システムにて測定した.

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6.NF-κB 活性化:IκB-α のリン酸化とリン酸化依存性

蛋白分解は細胞を溶解後,抗 IκB-α 抗体ならびに抗リ

ン酸化 IκB-α 抗体を使用した Western blot 法で検討し

た.NF-κB の活性化は,NF-κB 結合配列オリゴヌクレ

オチドを用いた ELISA-based assay kit を使用し検討し た. 【結果】LPS は RAW264.7 細胞において顕著な TNF-α 蛋白質発現を処理後 3 時間で誘導した.本細胞において フェノール関連化合物は 100μM 以下の濃度では顕著な 細胞傷害性を示さなかった.次に LPS による TNF-α 発現がフェノール関連化合物で抑制されるか否か検討を 行った.その結果,magnolol, honokiol は 50μM の濃度 で RAW264.7 細胞の LPS 刺激 TNF-α 発現を抑制した が,eugenol, bis-eugenol は抑制を示さなかった.さらに

Magnololと honokiol は,TNF-α 誘導性 COX-2 遺伝子

発現も抑制した.一方,転写因子 NF-κB 活性化に関す る magnolol と honokiol の作用を検討したところ,これ らの化合物は,IκB-α のリン酸化と蛋白分解を顕著に 抑制した.また,NF-κB 複合体のうち p65, p50, p52の NF-κB コンセンサス配列への結合を顕著に抑制した. 【結論】Magnolol と honokiol は転写因子 NF-κB の活性 化の抑制を介し,TNF-α 産生に起因した慢性疾患に対 する有効な治療剤となり得る可能性を示唆した.

上顎正中部埋伏過剰歯が永久歯の萌出

に及ぼす影響について

佐野 哲文

明海大学大学院歯学研究科歯学専攻 (形態系病態形態研究群口腔外科学Ⅰ) 【緒言】上顎前歯部は埋伏過剰歯の好発部位でその発現 頻度は 0.5∼1% 程度とされる.治療法は抜歯が選択さ れるが,早期抜歯では永久歯胚の損傷が危惧され,また 晩期抜歯では永久歯の萌出に影響を与える可能性が生じ るとされ,抜歯時期については明確な見解は得られてい ない. 今回演者は,上顎前歯部埋伏過剰歯の適切な抜歯時期 の検討を目的として,上顎前歯部埋伏過剰歯の位置と上 顎 中 切 歯 と の 位 置 を 歯 科 用 コ ン ビ ー ム CT ( 以 下 CBCT)用いて計測し,これらのデータについて統計学 的検討を加えた結果,いくつかの知見を得たのでここに 報告する. 【方法】調査は富山市にある A 小児歯科医院で,上顎前 歯部埋伏過剰歯と診断され,精査のために撮影した小児 33名 33 歯の抜歯直前の CBCT データを対象として行 った.計測項目は,①佐野らによる CBCT 矢状面上で の深度分類(鼻腔底下縁より上顎歯槽骨頂部を 3 等分 し,鼻腔底下縁から Position 1∼3 とした),②過剰歯と 口蓋までの距離,③上顎前歯部埋伏過剰歯の位置と永久 中切歯の歯軸傾斜角度,④鼻腔底下縁と過剰歯が近接す る部位(以下患側),および⑤反対側(以下健側)上顎 中切歯の歯軸とがなす角度と⑥鼻腔底下縁と過剰歯の歯 軸とがなす角度とした.撮影には歯科用コンビーム CT (モリタ社製 Veraview epoces 3 Df)を用いた.被曝線量 の軽減を目的に FOV(field of view)の大きさは 40 mm ×40 mm で,撮影部位を上顎正中部に設定した.撮影 後のデータの解析にはモリタ社製 i-view を使用した. また,一方で CBCT における計測精度の確認を目的と して計測用ファントムを同条件にて撮影し,その計測精 度に関しても併せて検証を行った.得られた計測値につ いては Student’s t-test および一元配置分散分析を用い有 意差検定を行った.なお統計ソフトは SPSS を使用し た. 【結果および結論】以下の結果が得られた. 1.CBCT における位置精度の検討に関しては,条件を 変えた 6 方向での撮影すべてにおいて著しい誤差(n <0.1 mm)は認められなかった. 2.上顎前歯部埋伏過剰歯の垂直的位置と CBCT 撮影 時平均年齢は Position 1 が 7 歳 8 か月,Position 2 が 6 歳 1 か月,Position 3 が 5 歳 8 か月であった. 3.上顎前歯部埋伏過剰歯の位置と患側・健側永久中切 歯の歯軸傾斜角度との間には Position 1 と Position 2 では有意な相関関係(p<0.01)を認めたが,Position 3では有意な相関は認められなかった. 4.患側中切歯歯軸と鼻腔底下縁とのなす角度の平均は 97.0度で,健側中切歯歯軸と鼻腔底下縁とのなす角度 の平均は 106.9 度であり,患側と健側との間には有意 な差を認めた(P<0.01).また,過剰歯歯軸と鼻腔底 下縁とのなす角度の平均は 88.0 度で,過剰歯歯軸と 患側中切 歯 歯 軸 と の 間 に 相 関 関 係 を 認 め た ( P < 0.05). 5.上顎正中部埋伏過剰歯から固有口腔までの最短距離

について Position 1 と Position 2, Position 1 と Position

3との間ではそれぞれ有意差(p<0.05)を認めたが,

Position 2と Position 3 との間では有意な差は認められ

なかった.

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る方が永久中切歯に影響を与えにくいことと,固有口腔 までの最短距離も短いことが本研究で明らかとなった. これは,埋伏過剰歯が歯槽骨頂寄りに埋伏している時 期,すなわち 7 歳未満に抜歯をおこなった方が永久中切 歯の萌出障害を少なくすることができる,また同時に過 剰歯抜歯において手術時侵襲の軽減が図れるという結論 が得られた.

下顎遊離端欠損症例における部分床義歯の

設計の相違が咀嚼機能に及ぼす影響

−リンガルエプロンとリンガルバーとの比較−

松井 藍有美

明海大学大学院歯学研究科歯学専攻 (機能系正常機能研究群歯科補綴学Ⅰ) 【目的】部分床義歯の設計は,補綴歯科治療の成否を左 右する重要な臨床の 1 ステップであり,また的確な大連 結子の選択は義歯の安定性を確保するための重要な因子 の一つである.下顎遊離端欠損症例の大連結子には,下 顎前歯の基底結節を被覆するプレート状のリンガルエプ ロン,もしくはバー状のリンガルバーが主として用いら れる.しかし両者の設計による相違と咀嚼機能との関連 性については不明な点が残されている.本研究の目的は 下顎遊離端欠損症例に対して,リンガルエプロンを大連 結子に使用した部分床義歯(以下,A-PD),およびリン ガルバーを大連結子に使用した部分床義歯(以下,B-PD)の 2 種類を 1 名の被験者に対して作製し,大連結 子の相違が咀嚼機能に及ぼす影響について検討すること である. 【材料と方法】上顎天然歯列,下顎 KennedyⅠ級ないし Ⅱ級の欠損形態を有する患者 8 名(男性 3 名,女性 5 名,平均年齢 69.1±9.9 歳)を被験者とし,各被験者に A-PDおよび B-PD を 1 床ずつ作製した.咀嚼機能に関 しては主観的評価として咀嚼スコアを測定し,客観的評 価として最大咬合力および咀嚼値を測定した.咀嚼スコ アは平井らの方法に準じ摂取可能食品アンケートを用い て算出した.最大咬合力は歯科用咬合力計を義歯装着側 で咬合させ,3 回測定し平均値を算出した.咀嚼値は Okutsuらの方法に準じて測定した.試料にはピーナッ ツ(3.00±0.01 g)を選択し,3 回測定して平均値を算出 した.測定に際しては試料を 20 回咀嚼させた後,咀嚼, 粉砕された試料を 10 メッシュの篩にて篩い分けを行い, 当分野で開発した咀嚼機能評価システムを用いて,篩上 の試料を画像分析することにより咀嚼値を算出した.2 種類の義歯の装着順序はランダムとし,1 種類目を装着 して 1 か月後に,2 種類目の大連結子を有する義歯に交 換,装着した.測定時期は装着直後および装着 1 か月後 とした.統計解析には,対応のある t 検定を用い,いず れも有意水準は 5% とした. 【結果】 1.咀嚼スコアは A-PD が 63.1±9.9 点,B-PD が 63.3 ±7.1 点で,両者間に有意差は認められなかった. 2.装着直後の最大咬合力は A-PD が 129.6±77.9 N, B-PDが 117.8±56.3 N で,両者間に有意差は認められ なかった.装着 1 か月後の最大 咬 合 力 は A-PD が 110.9±34.8 N, B-PD が 126.5±39.6 N であったが,両 者間に有意差は認められなかった. 3.装着直後の咀嚼値は A-PD が 56.4±17.0%,B-PD が 54.2±17.4% で両者間に有意差は認められなかった が,装着 1 か月後の咀嚼値は A-PD が 65.6±15.5%, B-PDが 52.5±10.2% となり,A-PD が B-PD よりも 有意に高い値を示した. 【考察】A-PD は B-PD と比較して,残存歯舌側面を被 覆するとともに床面積が広いことから,支持能および把 持能においては,A-PD の方が B-PD よりも優れている と考えられる.すなわち咀嚼時の義歯の安定性という点 において,A-PD の方が B-PD よりも優れている可能性 が高く,このことが咀嚼値に対して有意な影響を及ぼし たと考えられる. 【結論】以上より,下顎遊離端欠損症例に対する部分床 義歯の大連結子には,リンガルバーよりもリンガルエプ ロンの方が咀嚼機能を改善する上では有効となる可能性 が示された.

CBCT

を用いた下顎切歯管の成長発育

における周囲組織の影響

鈴木 達也

明海大学大学院歯学研究科歯学専攻 (再生再建医療系歯科放射線学) 【目的】近年,インプラント埋入など下顎骨に対する侵 襲的な治療が数多く行われている.侵襲的治療による偶 発事故で後遺症が問題になることも少なくない.今回パ ノラマエックス撮影法や口内法撮影ではわからない顎骨 内部構造を歯科用コーンビーム CT(CBCT)用い三次 元測定を行って得られたデータを利用し,Hellman 各歯

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齢の画像評価を行った.下顎骨は内部に下顎管を有し, その中に下歯槽神経,下歯槽動静脈が走行している.下 顎管はオトガイ孔で骨外に開口しているが,オトガイ孔 よりも前歯部方向にも走行が継続していることが知られ ている.オトガイ孔以後は切歯管と呼ばれ,舌孔に達す るとされているが切歯管に関する報告は少ない.そこで 我々は切歯管の成長・発育に伴う面積と長さの変化につ いて Hellman 歯齢ⅠA∼ⅤA 期を対象とし画像解析を行 った. 【材料と方法】Hellman の歯齢各期のヒト乾燥下顎骨各 5個体.各個体を左右側計測し,計 100 個体について画 像解析を行った.顎骨撮影には CBCT 撮影装置ファイ ンキューブを使用し,撮影条件は管電圧 90 kV,管電流 4 mA,高精細モードで撮影時間は 33 秒とした.画像解 析には高速 3 次元画像解析装置 VPA PLUS(東京)を 使用し,得られた各前頭断像を基本データとして切歯管 の走行について解析・検討を行い,以下の結論を得た. 【結果】歯胚があると切歯管は縦長になっていた.観察 が困難になる様な圧迫像が誘導された.オトガイ孔から 前歯部方向につれて,縦横径ともに縮小傾向を示した. ⅠA からⅡA 期までは縦横比に大きな変化は認められ なかった.ⅢA 期以降では歯胚が存在しないと縦・横 の大きさがほとんど変化しなかった.オトガイ孔で分岐 した管と同じ径のまま走行していた.ⅡA 期まで縦横 比は 1 より大きいので細長い神経でありⅡC 期以降 1 に 近いところで推移していた.形態は円形になった.ⅠA からⅡA だと一旦神経が見えなくなると,計測は困難 ・不能であった.左右のオトガイ孔間を結ぶアーチの長 さを計測するとⅢB 期まではその長さを増加したがⅢC 期以後は長さに大きな変化を認めなかった. 【考察】CBCT を用いてのデータ解析は目的の項で述べ た通り,各歯齢によって骨そして埋伏歯を含めた歯牙の 状態が変化している.下顎骨の神経ならびアーチの長さ は歯胚の有無により大きく変化が出ることがわかった. 物理的原因で神経の大きさや形が変化することが考えら れる. 【今後の課題】乾燥骨のみだが今後は患者さんのデータ も応用していき比較を行っていきたい.また歯牙の種類 によっての神経の有無の確立も検討していきたい.

輝尽蛍光体を用いたパノラマ画像の画質と線量

芝 規良

明海大学大学院歯学研究科歯学専攻 (再生再建医療系歯科放射線学) 【目的】デジタルパノラマエックス線画像において,画 像診断時,撮影条件の最適化について研究を行った.デ ジタルパノラマエックス線撮影時の管電圧,管電流,照 射時間についてその撮影条件を変化させ,これらのパラ メータの画質評価に与える影響を調べた.この評価によ り,最小の線量で診断目的を達成できる撮影条件を決定 することを目的とした. 【方法】パノラマ撮影装置はモリタ製作所製の Veraview epocsを使用した.成人の頭蓋骨が軟組織等価なプラス ティック樹脂に埋入されたスリーエム社製頭部ファント ムを被写体として用い,管電圧 60, 70, 80 kV,管電流と 照射時間の積 8, 16, 32, 48, 64, 96, 160 mAs で,同一の 位置づけで Fujifilm 社製輝尽蛍光体(イメージング・プ レート ST-VI)にて撮影した.撮影時の線量は PTW 社 の面積線量計 Diamentor E2 で測定した.Fujifilm 社の Computed Radiography(CR)装置(FCR XL-1)を用い 既定の処理でデジタル画像を作成して,DICOM 規格の フ ォ ー マ ッ ト で PC に 保 存 し た . 読 影 の 評 価 対 象 (ROI)の 12 部位に対して,同じ観察条件下で 11 名の 歯科放射線科医により CR 画像を EIZO 社製液晶モニタ (FlexScan EV 2116 W)上で 5 段階(確実に見えない/ 多分見えない/どちらとも言えない/見える/明瞭に見 える)評価を行った.評価部位は,臼歯部においては髄 腔髄角,破折線,エナメル象牙境,歯根膜腔,下顎管部 においては,オトガイ孔,下顎管,骨梁,歯槽硬線,顎 関節部においては,下顎窩,下顎頭,上顎洞部において は,頬骨弓,上顎洞底線とした. 【結果と考察】管電圧 70 kV で得られた画像が,もっと も広い範囲の mAs 値の変化に対して,画素値の頻度分 布が変化しなかった.デジタル画像処理では,一定の管 電圧では mAs 値,すなわち線量を変化させても,画像 の諧調を一定にすることができる.そこで,一定の諧調 を有する管電圧 70 kV の画像を以下の研究では評価対 象とした.しかし,一定の諧調で,コントラストが変わ らない被写体部位の画像も,8 mAs から 160 mAs まで 面積線量の 20 倍変化に応じて,画像雑音は大きく変化 した.この変化によって特定の部位では画像診断が困難 となった.線量の低下によって最初に診断が困難になる と評価された部位は顎関節(下顎窩および下顎頭)であ

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った.比較的低線量でも診断可能と評価された部位は下 顎骨中のオトガイ孔や下顎管であった.パノラマ画像の 主たる診断対象である歯と周囲の顎骨や上顎洞の診断は 両者の中間線量の評価を得た.以上のことから,総合的 な評価としての臨床診断に必要な画質が維持される画像 は,70 kV では 70 mAs 以上,面積線量にして 4.8 cGycm2 以上必要であると結論した.この値は英国の成人パノラ マ撮影の診断参考レベルである 9.2 cGycm2 よりかなり 低いが,平均値の 6.8 cGycm2 に近いものであった.管 電圧の変化による面積線量の変化とその画質への影響は 今後の課題とした.

ラットの安静睡眠時における開口反射興奮性の

術後性変化

! 令奈

明海大学大学院歯学研究科歯学専攻 (機能発達医療系小児歯科学) 【背景】運動興奮性は,感覚や全身状態の変化(疼痛, 覚醒や睡眠)に影響される.例えば,顎感覚運動システ ムは,安静覚醒時と比較して安静睡眠時に抑制されるこ とがサルやラットで報告されている.近年,安静睡眠が 炎症・神経因性疼痛・術後性疼痛などによって障害され ることが報告されたことから,それらの感覚変調が睡眠 時の顎感覚運動システムの活性に影響を与える可能性が 示された.このことは,我々が睡眠覚醒サイクルにおけ る運動−感覚連携の変調を検討するために用いている筋 電図電極などを慢性的に埋入したモデル動物に術後性の 影響が存在していることを示唆している.そこで,本研 究では術後期間の違いが,安静覚醒時や安静睡眠時の開 口反射活性に与える影響を検討した. 【材料及び方法】Sprague-Dawley 雄性ラット(約 6 週 齢)に,イソフルレン全身麻酔下で,心電図(EKG), 筋電図(EMG)【顎二腹筋前腹(AD)と咬筋(MA)】, 脳波(Cz-P 3/P4 相当)【EEG】,眼電図(EOG)のワイ ヤーを埋入した.さらに,刺激用電極としてオトガイ舌 筋にワイヤーを埋入し,頭蓋骨上に歯科用レジンを用い て,各電極を接続したコネクタブロックを固定した. 術後に,モルヒネ(10 mg/kg)を腹腔内投与し,手術 から観察までに 1 週間以上の回復期間を設けた.ラット は回復までの間,12 時間明暗サイクル(8 : 00 点灯), 摂食ならびに摂水は非制限で飼育し,観察環境への馴化 を行った.その後,術後 7 日(D7),12 日(D12),16 日(D16)の各観察当日に観察用ケージに入れ,データ 計測用ケーブルをコネクタブロックに取り付け,観察・ 記 録 を 行 っ た . 睡 眠 に 関 わ る 生 理 学 的 反 応 ( EMG, EOG, EEG, EKG)を,4 秒 epochs で解析し,スコア化 した . 安 静 覚 醒 時 に オ ト ガ イ 舌 筋 に 電 気 刺 激 ( 200 μspulse, 0.2 Hz)を加え,5 回の刺激のうち 3 回以上顎 二腹筋活動を発現させる刺激強度を開口反射誘発閾値 (TH)とし,TH ならびに誘発された顎二腹筋活動の詳 細(latency, duration, AUC)を 5 分間隔で 3 回(QWB1-3)計測した.その後,ラットの自発睡眠下(安静睡眠 時:QS1-3)と,その後の覚醒時(QWA1-3)の TH を 同様に求めた.なお,QWB1 から QS1 までの間を睡眠 潜時とした.安静睡眠時には短期覚醒の発現回数の測定 も行った.また,各測定時には,刺激強度と開口反射応 答性の相関を検討するために,TH の 1.5−2 倍の刺激も 与えた. 【結果】D7 のラットで,安静覚醒時に比較して安静睡眠 時の TH が低下した(86.7±3.9%).D12 では覚醒時・ 睡眠時共に TH に変化は見られなかったが,D16 の安静 睡眠時(113.4±10.0%)では,安静覚醒時との比較で上 昇した.睡眠潜時に差は認められなかったが,短期覚醒 の発現回数は,回復に伴い上昇する傾向が認められた. EEG周波数の分布も術後期間により変化した.D7 の安 静覚醒時に,δ 波が全周波数の内(δ, θ, α, β)47.1± 4.7% を占めているのに対して,D16 ではδ 波は 42.3± 1.9% に減少している.さらに,D7 の安静睡眠時にδ 波が 75.9±2.1% を占めているのに 対 し , D16 で は , 65.0±7.9% まで減少している. 【考察】これらの結果は,一週間の回復期間を設けて本 実験で行う慢性処置はラットの全身状態に大きな負荷を かけており,睡眠の質と顎感覚機能興奮性を活性化する ことを明らかにした.加えて,回復期間を延長すること で睡眠の質の向上に伴い顎感覚運動機能の異常活性が正 常化することが示された.

口腔癌の増殖・進展における Mangostin の

影響について

福田 正勝

明海大学歯学部病態診断治療学講座口腔顎顔面外科学分野

Mangosteen, scientific name Garcinia mangostana, is a tree found in South East Asia, and pericarps of the fruit have been used in folk medicine for the treatment of many

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human illnesses such as skin and wound infections, and in-flammatory diseases. Xanthone extracts from G. mangostana have been reported with chemoprevention effects against the chemically induced colon cancer via the reduction of c-myc expression, suppression of tumor growth and metastasis in a mouse model of mammary cancer, and a recent report

showed the inhibition of prostate cancer growth by α

-mangostin, the main constituent of the G. mangostana xan-thones. However, it is unclear whetherα -mangostin induces cell death to oral cancer. Then, this study examined the

im-pact ofα -mangostin against human oral squamous cell

car-cinoma (HOSCC). At first, we analyzed the expression of c-myc in 5 HOSCC cells. The expression level of c-c-myc mRNA was maximum in SAS cells, whereas, it was mini-mum in HSC-4 cells. Hence, SAS cells were treated with α -mangostin. The α -mangostin slightly induced cell death to SAS cells, but not strongly. Synergistic effects by the

combined treatment of α -mangostin and anti-cancer drugs

were reported. Then, we attempted to evaluate the synergis-tic effect on cell growth when cytokine, TNF related

apopto-sis inducing Ligand (TRAIL), was used with α -mangostin.

It was demonstrated that the combined treatment of α

-mangostin and TRAIL in SAS cells led to apoptosis via the activation of caspases-9, -3 / 7. Furthermore, this apoptosis was induced by G1 cell cycle arrest in SAS cells. These data suggested that the combination therapy byα -mangostin and TRAIL might be a great useful with a tremendous amount of potential as an anti-oral cancer drug.

破骨細胞が産生する非液性タンパク質

keratoepithelin

の骨吸収・骨形成

カップリングファクターとしての機能解析

林田 千代美

明海大学歯学部形態機能成育学講座口腔解剖学分野 【目的】歯周病で骨破壊が進行する場合には,骨吸収の みの進行,あるいは,骨吸収量に対する骨形成量の不足 が考えられ,骨代謝における骨吸収と骨形成のカップリ ング機構が歯周組織局所で破綻している可能性があり, カップリング機構の制御が治療標的となり得る.ところ が,カップリング機構制御を説明する因子(カップリン グファクター)は,骨代謝研究が発展してきている現在 においても未解決である.既報の破骨細胞由来カップリ ングファクター候補分子全ては液性因子であるため,新 生骨の量や質を決定する重要なシグナル伝達を行うにあ たり,拡散による伝達の不確実性や不合理性が懸念され る.そこで本研究は,破骨細胞が骨吸収窩セメントライ ン中に産生する非液性タンパク質 keratoepithelin(kera) (RGD 配列含有分子でインテグリンと結合可)の骨吸収 ・骨形成カップリングファクターとしての機能解析を目 的とした. 【方法】マウス骨髄細胞由来破骨細胞前駆細胞(M-CSF 依存 monocyte/macrophage)からの破骨細胞形成実験を 行い,kera をコードする遺伝子 TGF-β1-inducible gene-h

3(BIGH3 )の mRNA 発現量が破骨細胞の活性化に伴

い変化するか否か等を,fluorescent differential display か ら探索した. 【結果・考察】 (1)破骨細胞前駆細胞において,RANKL 刺激から短時 間 で BIGH3 の 発 現 が 誘 導 さ れ た . こ の 発 現 誘 導 は TGF-β でもなされ,RANKL+TGF-β で相乗的に増幅 された. (2)BIGH3 発現は TRAP などの破骨細胞分化関連分子 が発現される前の分化前期に増加した. (3)BIGH3 発現は骨芽細胞では認められず破骨細胞に 特異的であった.一方,同じく RGD 配列を有するオス テオポンチンの発現は骨芽細胞同様,破骨細胞にも発現 するが RANKL 非依存的であった. (4)破骨細胞分化と連動して発現するインテグリンは α Vβ3 であり,抗 β3 抗体は破骨細胞形成を大きく抑制 した.本培養系には破骨細胞前駆細胞しか存在せず, RGD配列含有分子は破骨細胞前駆細胞由来であるため, keraの破骨細胞分化への役割が示唆された. 以上の結果から,破骨細胞が産生する RGD 配列含有 分子のなかで,kera をコードする遺伝子 BIGH3 mRNA 発現は,破骨細胞分化のトリガーとなる RANKL 刺激 で亢進するが,同じく RGD 配列を有するオステオポン チンの mRNA 発現は RANKL 非依存的であることが示 された.また,破骨細胞が分化に伴い発現するインテグ リンと kera が結合できない場合には破骨細胞形成が抑 制された. 【結論】本研究から,破骨細胞が骨吸収窩セメントライ ンに分泌する kera の産生量は破骨細胞形成に必須な RANKLにより制御され,kera が破骨細胞に自由に結合 可能な場合には破骨細胞形成が促進され,kera のセメ ントライン基質としての貯留状態により破骨細胞形成が 調節される可能性が示唆された.Kera がカップリング

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ファクターとして機能し得るかの結論を出すには,kera の骨芽細胞形成促進作用について今後解明する必要があ ると考える.

抗菌光線力学療法を用いたインプラント

体表面の機械的および化学的除染効果

に関する研究

谷田部 一大

明海大学歯学部口腔生物再生医工学講座歯周病学分野 【緒言】近年,インプラント周囲炎に対する安全性の高 い治療法として,抗菌光線力学療法(以下;a-PDT)が 応用されつつある.しかし a-PDT によるインプラント 周囲炎治療に関して,in vitro における研究はほとんど 行われていない.また,a-PDT によるインプラント体表 面の化学的除染後にインプラント体表面に再骨結合が生 じるかどうかについても明らかではない.本研究の目的 は,インプラント周囲炎に対する a-PDT を用いた治療 の有効性を in vitro において検討することである. 【材料と方法】 1.歯周病原細菌のインプラント体への付着処理:直径 3.7 mm,長さ 16 mm, SLA 表面を有するインプラント体 (TSVB16, Zimmer Dental, USA)に Aggregatibacter

actino-mycetemcomitans ATCC 43718株(以下;A. a. )を付着

させた.

2.インプラント体表面の処理法:

1)Control(処理なし),

2)メチレンブルー(以下;MB)塗布:0.01% メチレ

ンブルー溶液(Ondine Biopharma Corp, Canada)を 1 分 間塗布,

3)レーザー照射:波長 670 nm,出力 220 mW の低出

力赤色半導体レーザー(PeriowaveTM, Periowave Dental Technologies, Canada)を 1 分間照射, 4)a-PDT 処理:MB を 1 分間塗布後,レーザーを 1 分 間照射. 3.除染効果の評価:各処理後のインプラント体表面に 残存した A. a. を液体培地で 48 時間培養後,吸光度を 測定した. 4.除染処理後のインプラント体表面に対する骨芽細胞 の付着量の評価:各処理後のインプラント体表面に骨芽 細胞(MC3T3-E1)(RIKEN Cell Bank,日本)を付着さ せ,インプラント体表面に付着した骨芽細胞の量を CellTiter-Glo Luminescent Cell Viability Assay(Promega,

USA)を用いて測定した.5.骨芽細胞への各処理法の 為害性の検討:骨芽細胞に対して各処理(MB 塗布,レ ーザー照射,a-PDT 処理)を行い,骨芽細胞への影響を 顕微鏡で観察した.また骨芽細胞の増殖活性を測定し た. 【結果】 1.インプラント体表面の A. a .の化学的除染に関し て MB および a-PDT は,コントロールおよびレーザー と比較して,有意に効果が高かった. 2.各処理後のインプラント体表面の骨芽細胞の付着量 の比較では,MB および a-PDT は,コントロールおよ びレーザーと比較して,有意に付着量が多く,未使用の インプラント体表面と同程度であった. 3.骨芽細胞に対する各処理法による為害性はみられな かった. 【考察】MB および a-PDT ともにインプラント体表面の 除染法として効果が高く,骨芽細胞に対する為害性もみ られなかったため,生体に対して安全で効果的なインプ ラント体表面の化学的除染法となる可能性が示唆され た.さらに,MB および a-PDT による処理後のインプ ラント体表面に対する骨芽細胞の付着量が,未使用のイ ンプラント体と同程度であったことから,MB および a-PDTによるインプラント体表面の除染後に,インプラ ント体表面に再骨結合が生じる可能性が示唆された. MBと a-PDT において,各除染効果およびその後の骨 芽細胞の付着量との間に有意差はみられなかったが,a-PDTの方が MB よりも効果が高い傾向がみられた.

コンピュータカラーマッチングによる

エピテーゼの色調構築に関する色彩学的研究

遠藤 聡

明海大学歯学部機能保存回復学講座歯科補綴学分野 【緒言】エピテーゼの色調再現を目的とする着色方法と して内部着色と外部着色があげられる.内部着色は耐久 性が高い反面,色調再現が困難である.コンピュータカ ラーマッチングをエピテーゼ製作に使用するためには, まずはシリコーン樹脂自体の特徴を把握する必要がある と考える.これまでエピテーゼを製作する際に使用して きたシリコーン樹脂が現在国内では使用不可となってし まったため,現在開発が進められている試作エピテーゼ 用シリコーン材(KRS-10-2 ならびに KRS-10F-2,ジー シー社)に着色材試作品(CA-R, Y, B, P1, P2, B1, B2,

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ジーシー社)を添加した試料を製作し厚径を変化させた 際の色彩学的検討を行った. 【材料と方法】各シリコーン材をメーカー指示の比率で あるベース 40 g,キャタリスト 4 g で混合し,着色材 0.4 gを添加した.真空攪拌機(VM-113,モリタ社)を 用いて脱泡した後,厚径 0.5, 1, 2 cm の試料を製作した. 試料の製作に関しては,モールドに塡入した後,KRS-10-2を 100℃ で 45 分,KRS-10 F-2 を 100℃ で 30 分, 恒温乾燥器にて加熱重合を行った.製作した試料を標準 白色板(B 3030,日本色彩研究所製)上に置き,分光光 度計(CM-600 d, KONICA MINOLTA 社)にて測色を行 い,各試料に関する色彩学的パラメータを評価した. 【結果と考察】同色,同厚径の 10-2 ならびに KRS-10 F-2の試料を比較すると,色差が最大なもので CA-Y ・0.5 cm の 1.91,最小のもので CA-B1・1 cm の 0.26 と 材料の差はほぼ認められないものとであった. また,同材料間で厚径を変化させた際の色差は CA-R, Y, Bの単色系の着色材において色差が大きくなる傾向 が認められ,最大色差は CA-Y を用いた KRS-10-2・0.5 cmと 2 cm の試料間で 24.13 となった.これに対し,混 色系である CA-P1, P2, B1, B2 では最大でも CA-B1・0.5 cmと 1 cm との試料間で 1.61 であった. これらのことより,エピテーゼ製作に用いるシリコー ン樹脂である KRS-10-2 と KRS-10F-2 間には着色剤を添 加した際の発色に差異は無いことが認められた.また, 発色剤の色調に関して,単色系の CA-R, Y, B は透過性 が高く,厚径 0.5 cm では背景である標準白色板に影響 されたものと考えられ,1, 2 cm と色差が生じたものと 考えられる.これに対し,混色系の CA-P1, P2, B1, B2 では透過性が低く,背景の標準白色板の影響を受けにく いため厚径が変化しても色差が生じなかったものと考え る.

頭頸部扁平上皮癌のがん幹細胞を標的とした

新規治療法の開発

梅村 直己

明海大学歯学部病態診断治療学講座薬理学分野 【目的】2006 年のアメリカがん学会(American Association

for Cancer Research : AACR)にて,がん幹細胞は「腫

瘍内の存在し,自己複製能と腫瘍組織を構成するさまざ まな系統のがん細胞を生み出す能力を併せもつ細胞」と 定義された.さらに,がん幹細胞は放射線や抗がん剤に 対する治療抵抗性を保有することから,臨床的な腫瘍の 悪性度と関連し,腫瘍の再発や転移においては中心的な 役割があると考えられている.頭頸部扁平上皮癌におい て CSCs のマーカーとして CD44, Aldehyde dehydroge-nase(ALDH),ABCG2 などが報告され,これらの過剰 発現が薬剤抵抗性や自己複製能に関与する事が示唆され ている.一方,申請者は先行研究にて頭頸部扁平上皮癌 の再増殖と CD44 発現が関連していることが示唆され た.そこで,分子標的薬の頭頸部扁平上皮が幹細胞に対 する作用を検証した. 【方法】頭頸部扁平上皮癌細胞株 HSC-2, HSC-3 を用い て,がん細胞の上皮成長因子受容体(epidermal growth

factor receptor ; EGFR)を標的とするゲフィチニブ,ラ

パチニブ,エルロチニブ,セツキシマブの頭頸部扁平上 皮癌に対する細胞増殖抑制能を検証した.また,EGFR のシグナル伝達の変化をウエスタンブロッティング法に て検証した.さらに,がん幹細胞マーカである CD44 の 発現を検証した. 【結果】ゲフィチニブ,ラパチニブ,エルロチニブ,セ ツキシマブは明らかな頭頸部扁平上皮癌細胞に対して細 胞増殖抑制能を示さなかった.その一方,CD44 の発現 が抑制されていた. 【考察】ゲフィチニブ,ラパチニブ,エルロチニブ,セ ツキシマブの分子標的薬の中でセツキシマブはアービタ ックスとして 2013 年より頭頸部がんに対し臨床応用さ れている.EGFR 分子標的薬の作用機序は EGFR を阻 害することで癌細胞をアポトーシスや細胞増殖抑制へ誘 導すると考えられているが,今回の我々の結果より,細 胞増殖抑制ではなく,がん幹細胞への作用が重要なので はないかと思われた.今後は他のがん幹細胞マーカーの 検証とその作用機序を追求していく.

植物性抗酸化フェノール関連化合物の

歯周病原細菌菌体成分刺激による

転写因子活性化制御機構を探る

村上 幸生

明海大学歯学部病態診断治療学講座総合臨床歯科学分野 【目的】優れた抗酸化剤であり香料,食品,化粧品,医 薬品として広く応用されている天然の抗酸化性フェノー ル関連化合物は自動酸化し易く,アレルギーや炎症反応 などを引き起こす.自動酸化しにくい構造のフェノール 関連化合物は構造中のフェノール性 OH 基の引き抜き

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に関する抗炎症作用を有することから,その構造特異的 に酸化還元感受性の転写因子の活性化を negative に調 節できる可能性を示唆した.一方,Porphyromonas gin-givalis は慢性歯周炎の主要な病原性細菌として知られ ている.とりわけ内毒素(LPS)や線毛は転写因子の直 接的な活性化を介して炎症性サイトカインなどの産生に 携わっている.近年,慢性歯周炎に関連した生理活性物 質が 2 型糖尿病や動脈硬化症などに関与することが報告 されている.これらのことは,本菌による宿主の転写因 子活性化が顎口腔領域感染症だけでなく様々な全身疾患 の発症に影響を及ぼす可能性を示唆した.今回の研究で は植物性抗酸化フェノール関連化合物による本菌線毛や LPS誘導性の酸化還元感受性転写因子活性化といくつ かの炎症メディエーターの発現調節機構について検討し た. 【材料と方法】 1.試薬:Eugenol(東京化成),p-cresol, p-hydroxyanisole (pHA)(各和光純薬),magnolol, honokiol(各キシダ化 学),resveratrol(和光純薬),4-allylphenol(Parkway Scien-tific),orcinol(東京化成)を使用した.Eugenol 二量 体,p-cresol 二量体,pHA 二量体は酸化的二量化反応で 合成した. 2.細胞および刺激物:マウスマクロファージ様 RAW 264.7細胞を培養し試薬を添加後各実験に供した.刺激

物 は Porphyromonas gingivalis ATCC 33277 株 線 毛

(Yoshimura らの方法に準じて精製),LPS(和光純薬),

Escherichia coli O 111 B 4 LPS(LBL)を使用した.

3.遺伝子発現:Real-time PCR 法で検討した.タンパ

ク質発現:COX-2 は抗 COX-2 抗体を使用した Western

blot 法で検討した. TNF-α は ELISA kit(R&D

sys-tems)を使用して測定した.

4.NF-κB 活性化:ELISA 様転写因子活性化

kit(Active-motif)を使用した NF-κB サブユニットの κB 配列への 結合試験で検討した.IκB-α のリン酸化依存性タンパ ク質分解は抗 IκB-α 抗体,抗リン酸化 IκB-α 抗体(Ser 32)を用いた Western blot 法で検討した.

【結果と考察】p-Cresol 二量体と pHA 二量体は RAW 細 胞の E. coli LPS 誘導性 NF-κB の活性化と COX-2 発現 を抑制した.また,ortho-bisphenol 関連化合物で漢方薬 にも使用されている magnolol, honokiol も低濃度で P. g. LPS誘導性 NF-κB の活性化と COX-2 や TNF-α 発現を 抑制した.一方,polyphenol の一つである resveratrol は P. g.線毛誘導性 NF-κB の活性化と COX-2 発現を顕著 に抑制したが,部分構造体の 4-allylphenol, orcinol は抑 制できない事をつきとめた.今回の研究は抗酸化性フェ ノール関連化合物が酸化還元感受性転写因子活性化を調 節し,慢性歯周炎に起因する全身疾患に対する primary な予防剤として機能しうる可能性を示唆した.

口腔癌の発生・進展におけるケモカインの

機能的役割の検討

廣井 美紀

明海大学歯学部口腔生物再生医工学講座微生物学分野 インターフェロンの刺激により単球/マクロファージ 系細胞や上皮系細胞から産生される活性化 T 細胞に対 するケモカイン CXCL9, CXCL10, CXCL11 は血管内皮 細胞の増殖を抑制し,血管新生を抑制することから抗腫 瘍性ケモカインとして注目されている.しかし乳癌やメ ラノーマにおいては癌細胞自身がこれらのケモカインの 受容体である CXCR3 を発現し,オートクライン,パラ クライン経路を介して癌細胞の増殖,浸潤,転移に関与 していることも報告されており,癌細胞の種類や腫瘍局 所の微小環境の違いによりケモカインの癌の発生,進展 における役割は異なっていると考えられる.我々はこれ ま で に ヒ ト 前 癌 病 変 な ら び に 口 腔 扁 平 上 皮 癌 で は CXCR3陽性ヘルパー 1 型 T 細胞(Th1)の浸潤が認め られる知見を得てきている.しかしながら,これらの浸 潤 T 細胞が抗腫瘍的にあるいは腫瘍形成促進的に働い ているかについては明らかにはされていない. そこで,本研究課題では口腔前癌病変から早期浸潤癌 に至る過程においてケモカイン CXCL9, CXCL10, CXCL 11がどのような役割を演じているかその機能的役割に つ い て 検 討 す る た め に , マ ウ ス 扁 平 上 皮 癌 細 胞 株 SCCVIIを用い,上記ケモカインを過剰発現させた細胞 株を構築し同系マウスへ移植し,腫瘍形成に及ぼす影響 について検討することを目的とした. ま ず SCVII 細 胞 に ケ モ カ イ ン CXCL9, CXCL10, CXCL11を過剰発現する安定発現細胞株を構築するため に,レンチウィルス発現ベクターを作製した.この発現 ベクターを用いて SCCVII 細胞に上記ケモカイン遺伝子 導入し,blastcidin にて薬剤選択を行い,ケモカイン安 定発現細胞株を樹立した.これらの細胞がケモカインを 産生しているか否かを確認するために,安定発現細胞株 の培養上清を採取し,ELISA 法にて検討を行った.そ の結果,negative control ベクターを遺伝子導入した細胞 株ではこれらのケモカインは検出限界以下であったが,

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安定発現細胞株では CXCL9, CXCL10, CXCL11 の産生 が顕著に増加していた(CXCL9 387 pg/ml /105 cells, CXCL 10 165 pg/ml /105 cells, CXCL11 37 pg/ml /105 cells).また これらのケモカイン安定発現細胞株の in vitro 培養系に おける細胞増殖抑制作用は認められなかった.現在,こ れら細胞株を用いて,C 3 H/HeJ マウスに接種し,腫瘍 形成能に違いが認められるか検討中である.

口腔におけるテロメラーゼ活性化要因の同定

および発癌・癌進展への影響に関する研究

宮崎 裕司

明海大学歯学部病態診断治療学講座病理学分野 癌の発生において慢性炎症は背景要因の一つであると 認識されている.近年,この慢性炎症の一因としてテロ メラーゼの関与が報告され,テロメラーゼの活性化が慢 性炎症を誘発して発癌誘導することが示唆された.しか しながら,その起点と考えられるテロメラーゼの活性化 要因に関しては未知な点が多い.歯周病は歯周病原菌に より引き起こされる炎症性病変であり,また,喫煙や飲 酒とは独立した発癌要因・癌進展促進要因であることが これまでに示されている. 本研究は,炎症とテロメラーゼおよび癌進展との関連 性を探ることを目的として行った.上皮性異形成を伴う 口腔粘膜組織および口腔癌組織に対し,抗 hTERT(テ ロメラーゼ逆転写酵素)抗体を用いて免疫染色を行った ところ,高度の上皮性異形成ならびに口腔癌組織におい て陽性反応がみられた.次いで,正常ヒト歯肉上皮前駆 細胞(HGEP)と口腔癌細胞株(Ca9-22, HSC-2, HSC-3, HSC-4)のテロメラーゼ活性を測定したところ,HGEP に比べて口腔癌細胞株では有意にテロメラーゼ活性が高 かった.口腔癌由来細胞株を腫瘍壊死因子(TNF-α ), インターロイキン(IL-1β),インターフェロン(IFN-γ ) あ る い は 歯 周 病 原 菌 の 代 謝 産 物 の 一 つ で あ る 酪 酸 (NaB)存在下で培養してテロメラーゼ活性への各因子 の影響を調べた結果,Ca9-22 では炎症性サイトカイン により上昇するが,HSC-4 では逆に抑制傾向にあるこ と,また,HSC-3, HSC-4 では IL-1β , IFN-γ , NaB によ り細胞移動能が亢進し,かつ細胞移動に関連することの 報告されているインテグリンα 5 の発現量も上昇する傾 向にあることが示された. テロメラーゼ活性と細胞移動能との関連性を調べるた め siRNA による hTERT のノックダウンを行ったとこ ろ,HSC-3, HSC-4 において細胞移動能が亢進すること が認められた.加えて,Ca 9-22 ではサイトカインによ り間葉系分子の発現が亢進する傾向にあることが示唆さ れた.以上の結果より,口腔では,テロメラーゼは dysplasia-carcinoma sequenceにおいて高度上皮性異形成 を伴う組織で発現し始め,悪性形質獲得に関与するこ と,テロメラーゼ活性の抑制により細胞移動能が亢進, もしくは活性促進により上皮−間葉移行が亢進する口腔 癌細胞株が存在することが示唆された.

部分的咬合干渉が身体動揺に与える

影響について

−咬合不良と体の重心の安定性について−

宮澤 慶

明海大学歯学部社会健康科学講座口腔衛生学分野 【目的】日本の「体力・運動能力調査」において,昭和 60年の青年(大学生)の運動能力と比較し,現在の青 年のそれは,非常に低い水準であることが示されてい る.また,平成 23 年歯科疾患実態調査によって,成人 の歯の欠損と歯列の空隙の状況は,改善されていること が報告されている.しかし,不正咬合の指標としての叢 生については,12∼20 歳の者の約 40% 以上の者に, 『叢生』が認められることが報告されている.この叢生 を初めとする不正咬合は,咬合時の咬合干渉が認められ る症例が多く報告されている. そこで,成人における『歯』と『身体動揺(運動能 力)』に関する研究の一環として,『歯の咬合干渉』と 『身体動揺』との関連性を検討した. 【対象】被験者は明海大学歯学部より全身的に健康で口 腔内,顎関節および頭頸部の諸筋群などの周囲組織に自 覚的,他覚的に異常の認められない本調査に対して同意 を得られた男子学生 17 名)を対象とした. 【方法】上下顎印象採得後模型を作製し,咬合器上で切 端を 3 mm 拳上した状態になるようにトレーレジン(松 風)を使用し,上顎左側臼歯部(4−7),上顎前歯部(3 −3),上顎右側臼歯部(4−7)の 3 支持域のレジンプレ ートを作製した.開眼時と閉眼時においてそれぞれ,3 支持域すべてのプレートを装着した状態,右側臼歯部の みプレートを装着した状態,左側臼歯部のみプレートを 装着した状態,前歯部のみプレートを装着した状態,さ らにプレートを装着しない状態で身体動揺を計測した. なお,身体動揺の測定にはグラビコーダー GS−7(アニ

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マ社)を使用した. 【結果】総軌跡長は開眼時では 3 支持域装着時では 52.33 cm,右側臼歯部装着時では 55.51 cm,左側臼歯部装着 時では 54.24 cm,前歯部装着時では 56.84 cm となり前 歯部装着時は 3 支持域装着時より有意に大きくなった (P<0.05).閉眼時では 3 支持域装着時では 66.81 cm, 右側臼歯部装着時では 63.50 cm,左側臼歯部装着時では 70.66 cm,前歯部装着時では 71.57 cm となり前歯部装 着時は臼歯部装着時よ り 有 意 に 大 き く な っ た ( P < 0.05). 【結論】前歯部のみでの咬合干渉は身体動揺が大きくな った.このことから,前歯部のみで咬合する状態は身体 動揺を増加させ,転倒の危険性が増加すると考えられ, 臼歯部の咬合の回復が重要であると考えられた.

過剰な嘔吐反射を有する患者の

心身医学的療法の確立

奥津 史子

明海大学歯学部機能保存回復学講座歯科補綴学分野 【目的】嘔吐反射は口腔内後方または咽頭部への刺激に よって誘発される.これは咽頭・喉頭または気管への異 物侵入を妨げるための正常な働きである.しかし,歯科 診療の場において,過剰な嘔吐反射は治療の妨げとな り,体験する不快感のために患者が治療を回避する原因 となりうる.重篤なケースでは嘔吐反射が患者自身によ るブラッシングの障害となり,う蝕や歯周疾患を増悪さ せ,早期の歯牙喪失となるが,嘔吐反射のために義歯の 作製および装着が困難なため,患者の QOL 低下につな がる.しかしこれらの患者について口腔内状態や心理学 的特徴を分析した報告はほとんどみられない. 今回我々は,過剰な嘔吐反射を有する義歯患者の口腔 内状態および心理的特徴を明らかにし,補綴治療による 変化を主観的および客観的に評価することを試みたので 報告する. 【材料および方法】被験者は過剰な嘔吐反射を自覚し, 義歯作製を希望して明海大学病院補綴科を受診した患者 3名(以下,患者群:被験者 A・B・C),および過剰な 嘔吐反射の自覚のない個性正常咬合を有する者 3 名(以 下,正常群:被験者 D・E・F)とした.初診時に嘔吐 反射が誘発される部位の診査(Saita らの方法),STAI (Stait-Trait Anxiety Iventory)による不安度調査(特性不 安と状態不安),O-HIP14(Oral Health Impact Profile)

による口腔関連 QOL 測定,VAS 法を用いた口腔満足 度調査を行った.また咀嚼機能測定としてグミゼリー溶 出濃度の測定および食品摂取アンケートを行った.患者 群には義歯作製後,同様の調査を行った. 【結果】患者群のすべての被験者が,義歯作製前に上顎 臼歯部口蓋側・後口蓋後縁中央部・舌根部に激しい嘔吐 反射を認めたが,義歯装着後の嘔吐反射の出現範囲は大 幅に減少した.被験者 A・C の治療前後における STAI スコアと O-HIP14 は,ともに減少したが被験者 B では ほとんど変化が見られなかった. 患者群の初診時のグミゼリー溶出濃度スコアはすべて の被験者において 100 以下であったが治療後は 100 以上 の値を示し,食品アンケート調査でもスコアの上昇を示 した.VAS 法を用いた口腔満足度スコアは被験者 A・ Cで大幅な改善が見られた.被験者 B では審美性の項 目でスコアが上昇した. 【考察】嘔吐反射を有する被験者への補綴治療の前後で 主観的・客観的咀嚼機能,口腔内満足度,心理的変化が ともに改善した.患者群すべての被験者が印象採得時に 静脈鎮静法を併用する必要があった.被験者への義歯使 用の必要性,嘔吐反射出現の理由などを繰り返し説明 し,来院するたびに診療室の雰囲気に徐々に慣れていく など系統的脱感作を繰り返し,咬合床を用いた咬合採得 時には静脈鎮静法を併用せず行うことができた. 被験者が一番不安に感じている印象採得時に静脈鎮静 法を併用することで早期の段階で被験者の精神的苦痛を 軽減できたことが義歯装着に対するモチベーションの維 持につながったと考えられる.義歯装着後は嘔吐反射の 出現はなく,審美的・機能的回復を得られ,良好に使用 している. 主観的・客観的咀嚼機能,口腔内満足度,心理的変化 を評価し,補綴治療前後で比較することは被験者ならび に歯科医師にとって非常に有効であった.

硬組織創傷治癒に及ぼす Mineral Trioxide

Aggregate

の影響

−免疫組織学的検討−

中村 裕子

明海大学歯学部機能保存回復学講座保存治療学分野 【研究目的】現在,歯髄保護材料として MTA(Mineral Trioxide Aggregate)セメントが歯髄細胞の硬組織形成を 早期に亢進することが臨床報告され,注目を浴びてい

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る.また,MTA セメントは,根管穿孔部の閉鎖や根尖 部病変切断後の根尖部の閉鎖材料として用いることで, 良好な予後が得られたという報告が多数行われている. しかし,歯根の周囲組織や根尖孔外,さらに歯髄組織や 象牙芽細胞にどのような作用機序で働き,硬組織形成を 亢進しているかは,ほとんど明確にされていない. そこで,本研究では,ラットの露髄部に覆髄材として MTAセメントを用いることにより,歯髄再生と硬組織 形成に及ぼす作用を形態学的に観察することとした.ま た,周囲の骨組織内での MTA の作用を観察するため, ラットの脛骨内に MTA セメントを静置し,周囲骨の硬 組織形成に及ぼす作用を観察した.さらに DSPP, Wnt 抗体を用いた免疫染色を行うことで作用機序の一端を解 明することを試みた. 【材料及び方法】本動物実験は,明海大学動物倫理委員 会の承認を得てから行い,動物の取り扱いは倫理委員会 の指示に従って行った. 実験は 15 匹の 6 週齢の雌 SD 系ラットの上顎第一大 臼歯にデンタルバーにて露髄面を作成した.その後 MTAセメントを用いて覆髄し,グラスアイオノマーセ メントにて修復したものを実験群とした.対照群として 同様に露髄面を作成し,そのままグラスアイオノマーセ メントにて修復を行った.術後 7, 14, 21 日後のそれぞ れ 5 匹のラットから顎骨を摘出し,試料とした. 同様にラットの脛骨にラウンドバーを用いて穿孔し, MTAを塡入した.術後 7, 14, 28 日後に摘出した.各試 料は,中性ホルマリンにて固定し,EDTA にて脱灰後, 通法に従いパラフィン包埋し連続切片を作成した.各切 片を HE 染色ならびに DSPP, Wnt 抗体による免疫染色 で組織学的に検索した. 【結果および考察】MTA を覆髄材とした歯髄組織は, コントロールと比較して,早期に硬組織の形成が行われ ていることが観察された.この形成量は,14, 21 日では 有意な差を示した.また,免疫染色により,MTA 群で は,コントロールと比較して,Dentin bridge 下の象牙芽 細胞に Wnt シグナルの陽性反応が認められた.脛骨な の穿孔部に塡入した MTA の周囲では,MTA を取り囲 むように,緻密な骨組織の形成が観察された.しかし, 穿孔部の閉鎖は,コントロール群よりも遅延することが 観察された. 【結論】MTA は,歯髄再生能を促進し,早期に象牙芽 細胞の分化を促進すること認められた.また,その分化 には,Wnt シグナルが関与している可能性が示唆され た.脛骨内での MTA は,周囲骨と強固に接着し,周囲 に緻密な硬組織を形成することが観察された.

光誘導蛍光定量法(QLF 法)を用いた

亜鉛によるエナメル質再石灰化の評価

荻原 孝

明海大学歯学部形態機能成育学講座口腔小児科学分野 【緒言】エナメル質には数多くの微量元素が含まれてい る.エナメル質表層においてはフッ素,亜鉛,鉄,スズ などが多い.エナメル質再石灰化促進作用のあるフッ素 は現在市販されているほとんどの歯磨剤に配合されてい るが,亜鉛も抗菌作用,歯石予防作用,口臭予防作用を 目的に配合されている.フッ素によるエナメル質再石灰 化に関する研究は,今日まで大変多く行われている.一 方,亜鉛がエナメル質再石灰化に与える影響に関して は,未だ不明な点が多い.本研究は,フッ化物イオン存 在下における亜鉛濃度の違いが,エナメル質初期脱灰病 変の再石灰化に与える影響について明らかにすることを 目的とした. 【材料と方法】唇側エナメル質の表面に亀裂や形成不全 などの異常のないウシ下顎切歯 24 本を使用した.歯冠 部唇側面を注水下で研削後,各試料の脱灰予定部(1×1 mm)以外の部位をネイルバーニッシュで被覆し,脱灰 溶液(2.2 mM CaCl2, 2.2 mM NaH2PO4, 50 mM酢酸,pH 4.4)に 96 時間,37℃ のインキュベーター内で浸漬し, 人工的に初期脱灰試料を作製した. 浸漬後,試料を 4 群に分け,4 種類の異なる亜鉛濃度 (0, 50, 100, 200μM)になるように塩化亜鉛を配合した 再石灰化溶液(0.9 mM CaCl2・2 H2O, 3 mM KH2PO4, 130 mM KCl, 20 mM HEPES, 0.68 mMクエン酸ナトリウム, 10 ppmF, pH 7.1)に計 7 日間,37℃ のインキュベータ ー内で浸漬した. 再石灰化溶液浸漬前後の再石灰化程評価には,QLF (QLF-D BiluminatorTM

2, Inspektor Research Systems,オラ ンダ)を使用した.脱灰・再石灰化の評価指標として, 平均脱灰量を示すパラメータであるΔQ(%・Px)値を 用いた.各ΔQ 値を比較検討する際の統計学的分析は, Studentの t 検定を用いた.さらに,各試料における再 石灰化溶液浸漬後の回復率を求め,比較検討した. 【結果】亜鉛無添加再石灰化溶液および 50μM 亜鉛添加 再石灰化溶液に浸漬した群のΔQ 値は,各浸漬前との間 に統計学的有意差を認めなかった.一方,100μM およ び 200μM 亜鉛添加再石灰化溶液に浸漬した群の ΔQ 値

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は各浸漬前との間に有意差が認められた.また,各再石 灰化溶液浸漬による回復率を比較した結果,亜鉛濃度の 上昇とともに高い回復率を示した. 【考察】本研究結果から,フッ化物存在下における亜鉛 の存在がエナメル質の再石灰化に有益であることが示さ れた.またその際,亜鉛の濃度に依存してエナメル質再 石灰化がより効果的に働く可能性があることが示唆され た.

携帯型エックス線発生装置の被曝線量管理

大髙 祐聖

明海大学歯学部病態診断治療学講座歯科放射線学分野 【目的】現在市販されている口内法撮影用ポータブル (携行型)X 線装置はいくつかの特徴を有するものがあ る.大規模災害時の遺体の身元確認に利用される携行型 口内法 X 線撮影装置を想定し,それらの装置の特徴に ついて比較検討した. 【材料と方法】様々な特徴を有する各装置について,一 回の充電で撮影可能な枚数,画像取得と線量,遠隔照射 スイッチの利便性についてなど,使用経験から論じる. 【使用経験(結果と考察)】 1.電源が必要な機種とその他の機種の出力について どちらの機種もほぼ 1 分間隔では,連続使用が可能で あり,電源を備えた機種では,そのまま使い続けること が可能であったが,充電式でも 1 回の充電で通常の撮影 条件設定では 100 枚程度は撮影可能であり,実用上は電 池式でも問題なく身元確認の作業ができるものと思われ た.但し,照射時間を長く設定すると使用可能回数は減 少した.災害時の遺体の身元確認の現場では通常の電源 は確保されるであろうが,ケーブルレスの自由度があっ た方が望ましい. 2.画像 汎用的にどの受像器でも利用できるタイプと専用の CCDセンサーを備えたもの(ADX 4000)があり,汎用 的なものの方が,柔軟に利用できると考えられる反面, 身元確認と言う病気の診断とは異なる目的では,必ずし も汎用機が有利ではない側面がある.災害時の遺体の身 元確認の現場で現像機や IP リーダが備えられるか考慮 する必要がある.また汎用の CCD センサーを利用する には撮影装置とは別に PC などを用意する必要がある. この点からは,撮影装置自体で画像を表示,保存でき, 後でその画像データを PC などに移して管理できる機種 は,撮影ミスによる確認の失敗を防ぎ,機動性も優れて いると思われた.また,私たちの使用経験では,E/F 感 度を有する InSight フイルムを用いる場合の 1/3−1/4 以 下の線量でも充分満足な画質が得られた. 3.その他の考慮(公衆に対する放射線防護) 公衆は術者と異なり,身元確認の現場で撮影時にどの 場所にいるか特定することができず,また口内法撮影で は,主線の方向がいろいろな向きになり得るため,最悪 のケースを想定して防護策を講じるべきである.空間放 射線量が最大となる前方 0 度方向では,概ね距離の逆二 乗で減少していた. 私たちの試算によると,撮影の前方では,1 日に 100 枚以上撮影するときには被写体から 1 m 以内を管理区 域に設定する必要がある.また,公衆に対しては,年線 量限度の 1 mSv を確保するため管理区域の外側で,撮 影時に 2 m 以内の区域に立ち入らないような措置を講 じる必要があると考えられる.

参照

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