英米文学教室
<は
じめに
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「眠 り」 のテーマはエ リザベ ス朝 文学で は頻繁 に使 われている。Lisle C.Johnに
よれ ば'眠
れ tといとしいLauraの
姿が夢 に現われるとPetrarchは
表現 し,イ タリアやフランス?の多 くの彼 の後 継者 は,詩
人の不眠のテーマを使 ってしとる。続 けて「イギ リスで も「眠 り」のテーマはい くらかの最 も秀 れたエ リザベス朝詩歌 を生み出 してい るdと
述べてぃる。3 このテーマはソネ ッ ト,そ
れ以外の詩 および戯曲 に用い られているが,こ
こで はエ リザベス朝 ソ ネ ッ トを中心 に考察 したい。更 にエ リザベス朝 およびジェムズ朝演劇 において,「
眠 り」 がいかに 使 われ,ま
た変遷 していったか,ま
たその連関性 につ いて考察 を進めたい。そ うす ることによって エ リザベス朝 ソネ ッ トにおける「眠 り」 を浮彫 にしたいと考 えている。 「眠 り」 のテーマを湖 ると,そ
のアーキ・ タイプ とで もい うべ きものは,ギ
リシャ,ロ
ーマ文学 に見 られ ると思 うが,ま
ずそれを辿 ってい きたい。 「 眠 り」 の ア ー キ ・ タ イ プHomerは
"Ja」 4の 中で次 の よ うに「 眠 り」 を記述 して い る。And then unto Apollo spake Zcus, the cloud‐ gatherer:
``Up now, dear Phoebus, go cleanse from Sarpedon the dark blood, when thou
hast taken hin forth frOm out the range of darts,and thereafter bear thou him far away, and bathe him in the streams of the river, and anoint hina with
ambrosia, and clothe him about with inlmortal rainent, and give hin to swift
conveyeres to bear with the■1, cven to the twin bretheren, SIcep and Death,
who shall set hi■ l speedily in the rich land of wide Lycia. There shall his brethren and his kinsfolk give him burial with mound and pillari fOr this is
the duc of the dead." (Tん 9'Jαあ
XVI.673)
別 な個 所 で彼 は「 眠 り」 と死 の関係 につ いて述 べ て い る。 明 俊 キ J 装 T 岡
194 岡村俊明 :「眠 り」のテーマとエ リザベス朝 ソネット
and spakc and addressed him; “SIcep, 10rd of all gods and Of all men, if ever
thou didst hearken tO wOrd Of mine,中 ●Lull me to sleep the bright eyes of
Zeus.….″ (
V233-)
ここでは りLも
「 眠 り」も抽象的 なものでな く 「眠 り」 の属 性 はエ リザベス朝 ソネ ッ トばか り なる。 しか し人格 をもった神 から,抽
象性へ と 古代ギ リシャの詩人HesiOdは
勁9ο gο留 あると述べてぃる。6,具
体的神の名で ある。イ眠 り」 と死 の関係 および で な く,劇
および詩 において も往 々見 られることに 変遷 をとげてい く。 において「夜」 の属 性 として死 とともに「眠 り」 がAnd Night bare hateful Doonaand black Fate and Death, and she bare Sleep and the tribe of Dreams.(Tん 9οgοtt1/212)7
更 に詳述 して
and the onc holds all‐ sceing light
arms Sleep the brOther Of Death, And there the children of dark
awful gods.(Tん9οgο″ダ 755)
for them on earth, but the other holds in her even evil Night, 、vrapped in a vaporous cloud.
Night have their dwellings, Sleep and Death,
“Sleep the brother Of Death" と書 いて い る亀 「 眠 りは死 の兄弟 (また は双 子)」 とい う表
現 は この頃使 われて いた ことが 了解 され ると思 う。9
次 にロー マの哲 学者で あ り劇作 家の
Senecaは
「 眠 り」 に深 い関心 を示 した。And do thOu, O Sleep, vanquisher Of wOes, rest of the sOul, the better part of
human life, thOu winged son of thy mother Astraea, sluggish brOther of cruel Death, thOu 、vhO dOst ningle false with true, sure yet gloOmy guide to what shall be;()thou, whO art peace after wanderings, haven of life, day's respite and night's cOmradc, whO cOmest alike to king and slave, whO dost cOmpel the human race, trembling at death, tO prepare for unending night― sweetly and
gently soothe his weary spiritihold him fast bOund in heavy stuporilet slumber chain his untamed limbs, and leave not his savage breast until his former mind
regain its course。
(汀
9Tc2′9d FvT92s 1065-)10こ こで は「 眠 り」 は明細 に述 べ られ て い る。 「眠 り」 を悲 歎 を克服 す るもの
,魂
の休 息所 と呼 び か け,死
の兄弟 とい う属 性 も使 って い る。 この よ うに「 眠 り」 を畳 み か け るよ うに呼 び か け る仕 方 はSenecaの
特色 で あ るが,こ
れはエ リザ ベ ス朝 文 学 に も見 られ る。Senecaは
抽 象 的「 眠 り」 で は な く,具
体 的「 眠 りの榊」 に対 す る呼 び か けで あ る。以 上 二 人 に比 して
,比
較 に な らな い ほ ど「 眠 り」 の テ ー マ に強 い影 響 を与 えた作 家 は Odで
ある。彼は ″
9ια
ttο TρんOdCSを 書き
,それが Goldingに より英語に翻訳された
(1567年ちGolding訳
を材料 として
,エ
リザベス朝作家 は自分達 の作品 に精力的 に盛 りこんだ ことは学界の定説になって いる。勿論 ここでい う材料 とは「眠 り」 に限定 したものではなく一般的素材のことで ある。そして この 脆 ιαηοT"οdθSには多彩 な「眠 り」 が見 られる。次 に例示 しよ う。」
unoは
嫉妬深 い女性で あった。自分の夫JoveをArgusに
監視 させ,夫
の浮気を妨 ご うとした。Argusは
百 の目をもち, 2, 3の
日は眠 ることがあつて も,他
は常 に開 きよく監視 することがで きた(Cf.I.770→。浮気の虫のため,監
視 に耐 えられな くなったJoveは
,Maiaと
の間に生 まれた彼の息子
Hermesを
して,Argusを
眠 らせ よ うとす る。He made no 10ng abod,
But tyde his feathers to his feete, and tooke his charmed rod,
(With which he bringeth things a sleepe, and fetcheth soules from Hell) And put his Hat upon his head: and when that all was well
He leaped from his fathers towres, and downe to carth he flue And there bOth Hat and winges alsO he lightly from him thrue,
Retayning nothing but his staffe, the which he closely helde
Betweenc his elbowe and his sidc, and through the conlmon fielde. (I.833_)11
妙 なる調べ を聞 き
,ま
どろみかけたArgusも
なんとか持堪 える。その目をHcrmesは
魔法の杖(“
charmed rod")で
なで,熟 睡 させて しまう。次の通 りで ある。But as Cyllenius would have tolde this tale, he cast his sight On Argus, and beholdc his eyes had bid him all good night.
There was not one that One that did not sleepe:and fast he gan to nodde. Imrnediately he ceast his talke, and with his charmed rodde
So stroked all his heavie eyes that earnestly they slept.
Then 、vith his wOodknife by and by he lightly to him stept.
And lent him such a perlous blowe, where as the shoulders grue Unto the necke, that straight his hcade quite from the boodie flue Then tombling downe thc headlong hill his bloudic coarsc he sent, That all the way by which he rolde was stayned besprent,
There liste thou Argus under foote, with all thy hundreth lights, And all the light iき cleane cxtinct that was within those sights,
One endelesse night thy hundred eyes hath nowe bereft fOr ayc.
(I.888_)
Argusに
とって「 眠 り」 は死 につ な が って い る。 同 じよ うな例 は次 に も見 られ る。JasOnは
金 の羊 毛 を探 して い る。 そ れ は 目 を閉 じた こ と も ない不 眠 のDragonが
守 っ て い る。その竜 の 目 にLcthe
河 岸 辺 には えて い る薬 草 を搾 り,そ
の汁 を 目 に た らせ て 眠 らせ,無
事 金 の羊 毛 を取 る こ とがで きた。岡オ↓俊明 :「 眠り」のテーマとエリザベス朝ソネット
引用 す れ ば
When
」ason had besprentHim with the iuice Of Certaine wOrdes which are of fOrce to cast So sOund a sleepe on things that even as dead a time they last, Which make the raging surges calme, and f10wing Rivers stay:
The dreadful Dragon by and by(whosc eyes befOre that day
Wist never erst what sleeping ment)did fall sO fast a sleepe
That 」ason safely tOOke the fleece of golde that he did keepe.
Of which his bOOtie being proud, he led with him away The Author of his gOod successc, another fairer pay.
(VH. 203_)
不 眠 の竜 は「 眠 り」 に よ り取返 しの つ か ない大失 策 を し
,死
の よ うに眠 り続 け る。次 に「 眠 り」 と愛 の結 びつ きを見 よ う。
Minos王
はNisus王
が 支配 して い る Alcathoeの町 を 攻 略 しよ うと思 うが仲 々 果 せ ない。Minos工
の頭 髪 は灰 色 で あ るが、 それ にま ざって一 本 の真 紅 の 髪 が あ る。 そ の た め に王 は強 力 に な り王 国 を不 動 の姿 勢 で 守 護 して い る。Nisusの
娘 は自分 の町 を 攻 め きた るMinOs王
に恋 を し,あ
る夜 ひ そ か に父 か ら「 生 死 と王 国 が依 存 して い る」 運 命 の髪 をと る。 次 の通 りで あ る。
Night(chiefest Nurce of thoughts tO such as are with care opprest,) ApprOached while she spake these wOrds, and darknesse did encrease Hir bOldnesse. At such time as fOlke are wont to finde release Of cares that all the day before were working in their heds,
By sleepe which falleth first Of all upon them in their beds,
Hir fathers chamber secredy she entered:where(alasse
That ever Maiden should sO farre the bOunds of nature passe) She robdc hir Father of the haire upon the which the fate
Depended both of life and death and of his royall state。
(VHI. 101-)
父 を殺 しそ れ を持 ち
M inOs工
に献 上 す るが,王
は にべ も な く拒絶 し次 の よ う な呪 を与 え る。O thOu siaunder Of our age the Gods expell Thec out of this world of theirs and let thee no where dwell.
Lct rest on neither Sea nor Land be graunted unto thec.(vHI.126-)
最大 の 呪 い に価 す る もの は不 眠 で あ る。 同 じ く恋 に次 の例 が あ る。
Cinyosは
自分 の 娘Myrrha
に恋 を した (第10巻)。 彼 女 も恋 の 炎 に身 を焼 か れ,喜
悦 を おぼ え る と同 時 に恥辱 の た め うち しおHygh mydnight came, and sleepe bOthe care and carkesses Opprest, But Myrrha lying brode awake cOuld neyther sieepe nor rest. Shee fryes in Cupids flames, and woorkes continewally uppon Her furiOus IOve, One while shee sinkes in deepe despayreo Anon Shee fully myndes tO give attempt, but shame doth hold her in. Shee wisshes and shee wotes nOt what tOO dOo, nor how toO gin.
(X。
414_)
そしてついに自殺 をくわだてる。
NO measure of her 10ve was fOund, nO rest, nor yit releace, Save onely dcath. Death likes her best, shee ryscth, full in mynd
To hang herself. About a pOst her girdle she dOth bynd。
(X.425_)
ここで は恋 は不眠 および その結果 の死 と結 びつ いて いる。眠 り (また は不 眠
)と
愛 はエ リザベ ス朝 ソネ ッ トに,眠
(また は不眠)と
死 はエ リザベ ス朝 演劇 に移植 され ることにな る。「 眠 り」 の属 性 を畳 み かけるよ うに呼 びかけ るの は次 の例 に見 られ る通 りで あ る。
The GOd Of sleepe scarce able fOr tOO raysc his heavy eyen, A three Or fOwre tymes at the least did fall ageine too rest, And with his nOdding head did knOcke his chinne ageinst his breast At length he shaking Of himselfe, uppon his elbOwe leande.
And thOugh he knew fOr what shee came:he askt her what shee meand.
O sleepe(quoth shee,)the rest Of things, O gentlest Of the Goddes, Sweete sleepe, the peace Of mynd, with whOm crookt care is ayc at oddes: Which cherrishest mennes weery limbes appalld with tOylint sOre,
And maest them as fresh tOO wOOrk and lustye as beefore,
Conlmaund a dreame that in theyr kyndes can every thing expresse。 (XI.723_デ2 ここで も
Senecaと
同 じく,「
眠 り」 への呼 びかけは抽象的 なものではな く,「眠 り」 の神への呼 びかけで ある。 眠 りの神 と してMOrpheusを
Odが
塁示 している。 まどろみ(Shmber)の
神 を父 として生 まれ,MOrphま
たはMorpheと
呼 ばれた彼 は,夢
を見ている人 にあらゆる種類の人間の顔 を して 現 われるとい う。AInOng a thOusand sOnnes and mO that father sIOmber had,
Hc calld up MOrph the feyer Of mannes shape, a craftye lad. None other cOuld sO cOnningly expresse mans verrye face, ′
岡村俊明 :「 眠 り」のテーマ とエ リザベス朝 ソネッ ト
His gesture and his sound of voyce, and manner of his pace, TOOgither with his woonted weede, and woonted phratte of talk. But this same Morphye onely in the shape of man dOoth walk. There is anOther who the shapes of beast or bird dooth take, Or else appeereth untoo men in likenessc of a snake。 (XI.735_)
この神 はエ リザベ ス朝 で有名 にな り
,ソ
ネ ッ ト作 家 や劇作 家 の常用 す るところ となった。Homerか
らOdに
至 るまで「 眠 り」 に関 して略述 した が,要 約 す れば次の如 きもの にな るだろ う。 「 眠 り」 は往 々 に して「 不的 につ らな るこ と。Araα ηοT"。d9dで
直接 に現 われた「 不 聘 は 勿 論で あ るが,Senecaが
「 眠 り」 に呼 び かける場 合 も,そ
の背景 に「 不胸 が考 え られ る。 「 眠 り」 をその属 性 で呼 び かける こと。 「眠 りは死の兄弟」―一 眠 りの属性の一つで あるが一―特 にこれはよく使 われて いる。比喩 的使 い方とい うより,具
体的人格 をもった神で ある。Homer,Hesiod,Senecaは
これを, O
dは
単 なるその表現 をの りこえて,眠
りと死の密 接 な関係 につ いて生々 と詳述 している。Morpheus(眠
りの榊)へ
の言及 愛一一 〇dの
二つの物語からわかるよ うに,愛
に結 びつ いた「眠 り」 は不眠 につ らなる。近親 相姦 の愛 もある。 その結果死 に至 る場合 もある。 以上要約 したわけだが,
これ らがすべてが直 接 にエ リザベス朝 文学 に影響 を与 えたかとい うと, 事情はそ う単純で はないかもしれない。Odの
場合 はGoldingに
翻訳 され,出
版 されたのが15 67年で あるか ら,影
響 が強 いとは断言で きても, Homerや
Hesiodの
場 合 は その見分 けは困 難 といわざるを得 ない。 また影響 といって も,直
接 にエ リザベ ス朝 イングラン ドに伝 えられ る場合 も フランスやイタリアを経 由す る場合又は中世 イ ング ラン ドを経由す る場合 も,ま
た一つ の ものが多 くの経路 を通 る場合 もさまざまで ある。 そうい う意味で直線的で はないかもしれないが,い
わば 「眠 り」 のテーマの アーキ・ タイプとして,ギ
リシャ・ ローマ時代 に確 立 して いた ものが,エ
リザ ベス朝 ソネ ッ トにも見 られる。ここではその実態 を考察 したい。勿論ソネッ トばか りで なく劇 にも 使 われているが,そ
れとの関連 を,ま
たこのアーキ・ タイプともい うべ きものに何 が加 わ り,何
が 消滅 してぃるか,ま
たソネ ッ トにおける主題 は「眠 り」 のテーマ といかほど連合 し,そ
の ことの意 味 はどん なものか,そ
うい うものを全般的 に考察 してみたい と考 えている。 ソ ネ ッ トー ー 愛 の 系 譜 ソネッ トはその起源 をイタリアに発 し,元
来 は大抵18行か らな り,楽
器の伴奏 につ れて歌 う恋歌 で あった。Wyattお
よびSurreyが
それをイギ リスに輸入 し,1580年
頃 か ら大 いに普 及す るこ とになった。イギ リスでは14行詩となった。 最初 にソネッ ト作家Richard Lincheに
ついて考察 したい。 彼 はわが国で は紹介 されていない 詩人 かと思 われる。項 目数 の多い斎藤勇編『英米文学辞典』等 にも記載 されていない。1596年 ソネ ト連章Dテぞ′αが出版 され,作
者 はR.L.,Gentlemanと
なっているが,こ
れをRichard Linche
とす るのが定説で ある。つ 'cι
JοηαTダ οF Nα
"ο
idleness'と 紹介 されて い るが
,生
誕,死
亡年 月 日および経歴 につ いて は書 かれてい ない。minorpOCtsの
一 人 で あ る が, Sidney Lceは Lincheの
詩 句 を “servile in their repetition of well‐worn phrases and imagery."13と 裁 断 して い る。彼 は ソネ ッ ト作 家 と して独倉J性 に乏 しい ことは
否定で きないで あろ う。 当時 の ソネ ッ トの影響 をもろに受 け
,変
容 せず に,倉 J作 して い るこ とが多 い。 そ して「 眠 り」 のテ ーマ は多用 して い る。 独創 性 に欠 け,「
眠 り」 の テーマ を多用 して い る詩 人,
こ うい う条件 は当時 の趨 勢 を知 る上 には何 か と便利で,わ
れ われが最初 に取上 げ るべ き資格 の 詩 人だ と思 われ る。彼 の ソネ ッ ト集 Dテ冽
aは
Sir Philip Sidneyの ソネ ッ ト集D"Jaの
語 句 の綴秩Иの稲 果 出来 た もので あ り,こ
の 点 において も,直
接 的 な模 倣 で あ る。 この連章 は38の ソネ ッ トか ら成立 して い る。 出版者 はHenry Oheyで ,彼
は“To the most wordlily honoured and virtuosly beautifiedLady, the Lady ANNE GLEMHAM, wife to the most noble, magnanimous,and worhy
knight, Sir Henry Glenham."即
ち既 結婦人 に献 呈 して い る。恋 慕 う女性 の特徴 とい えば
,雪
の よ うに白い肌,美
しい髪,澄
み切 った泉 の よ うな目,象
牙 の よ うな額,熟
したサ ク ラ ンボの よ うな頬,雪
花石 膏 の よ うな首 を して い る (Ⅲ兆 また息 吹 きは,甘
美 で芳 しく(XXXII),こ
うい う貴 い存在 には大地 は`base'で
あ る(V),榊々 しく汚 れを知 らぬ清純 な 女性 で ある (XXVII)。 詩 人 は彼 女 を愛 しているが,彼
女 は無視 す る。 彼 女 の 心 は巌 の よ うに硬 く(XXVIII),虎
の よ うに残酷 な心 を もっている(XVI)女
性 で あ る。 詩 人 が愛 さな くな る とい え ば 「広 い川 が源へ と逆流 し,飢
えた狼 が羊 に貧 り食 われ,海
に住 むい るかが,雪
を かぶ った山で た わ む れ遊 び,醜
い熊 が海 に住 む よ うにな る時」 で あ るが,勿
論 そん な時 は あ りえない。永遠 に彼女 を 愛 す るの だ (XIV)。 以上 がソネ ッ ト集 の大要 で あるが,か
な り因襲 的で あ るこ とがわかると思 う。 因襲 的表現 につ いて更 に具体 的 に例 証 しよ う。心 が五感│こ攻 撃 を う│する とい うI・Lttは
Barnabe Barnesの
PαTケん920"J′ αtt Pα Tれ92ο"9
(III),Michael Drayton(XXⅨ
)に
もその例 が あるが, Lincheも
使 っ て い るよ4 With that, they fired my hearti and thence 'gan flyITheir names, Sweet Smiles, Fair Face,and Piercing Eye。
(VH)
また恋 の神
Cupid
の逃 亡 は,当
時 の 多 くの ソネ ッ トに扱 わ れ る一種 のconventionで
あった。 15 彼 も第18番 のソ ネ ッ トで その表現 を使 ってい る。 また恋 に悩 む男 性 は,民
にか か った鳥 の状況 に比 すべ き表現 は当時 の ソ ネ ッ ト作 家 の 常用す る ところ となっ たが '6彼 もまた第26番 でLook, as a bird sore bruised with a b10w
(lately diViding notes most swcetly singing),
Tc hear her ffellows, how in tunes they flow,
doth drOOp and Pine, as though her knell were ringing.
と書 いて い る。 この よ うに伝 統 的 な手法
,因
習 を踏 ま えた 表現等 を使 っ たLincheは
当時 の影響 の 波 を もろ にかぶ り,そ
れ に新 しい工夫 を加 えた跡 は あま り見 られ ない凡庸 の詩 人で ある。岡村俊 明 :「眠 り」のテーマとエ リザベス朝 ソネ ッ ト
When leaden‐hearted sleep had shut mine eyes, and closc o'erdrawn their windowlets of light;
WVhose wateriness the rire of grief so dries,
that weep they could no longer, sleep they might! Methought, I sank down to a pool of grief,
and then, methought, such sinking much did please me: But when I, down was plunged past all relief;
with f10od‐filled mOuth, I called that some would ease mel
Whereat, methought, I saw my dearest Love,
fearing my drowning, reach her hand to mine, WVho pulled sc hard to get me up above,
that with the pull, sleep did forsake mine eyen.
But when awaked, I saw 'twas but a dream;
I wished to have slept,and perished in that stream。
(XXIV)
大 意 は か な わ ぬ恋 の た め悲 歎 に くれ
,知
らぬ ま に ま ど ろん で い た,す
る とい と しい恋 人 が手 を差 し のべ て,悲
しみ の池 に湯 れ か か っ た私 を救 お うと して くれ る。 その とた ん 眠 りか ら覚 め た。 そ れ は 夢 だ っ た の だ,私
は鴻 死 して い た ほ うが よ か っ たの だ。 第 19番 も ほ ぼ同 じよ うで あ るが,数
行 引用 す る とFor when, in bed, I think t'embrace my LOve
(enchanted by thy magic so to think),
Vain are my thoughtsI 'tis empty air, I prove!
で あ る。二つ の ソネ ッ トは「 眠 り」 と愛 が結 びつ き
,恋
の苦悩 の ため ま どろみ,夢
を見 て,願
って い た状況 が現 出 された とたん,そ
れ は虚偽 で,も
との辛 苦 の現実へ と醒 め る。同 じ状況 の ソネ ッ ト とよSir Philip Sidney, 4sと Tορん9′ αttJ Sι9′′α(XXXVHI), Thomas Lodge, Pん
"力
s(XVH)
に も見 られ る。Lincheの
もう一つのソネッ トを引用 しよう。Thinking to close my over‐ watched eyes,
and stop the sluice of their uncessant flowingi
l laid me down; when each One 'gan to rise:
new risen Sol his flame‐ like countenance shewing.
But Grief, though drowsy ever, yet never sleepsi
but still admits fresh intercoursc of thought:
Duly the passage of each hour he keeps,
nor would he suffer me with sleep be caught。
(who greatly pitied my want of rest) Whereat my heart, a thousand thanks him sent:
and vowed, to serve him he was ready prest.
Let restless nights, days, hours do their spite;
I'll love her stin!and Love for me shan fight!(xXXHI)
大意 は
,詩
人 は眠 ろ うと して 目を閉 じ,横
に なった。 しか し悲 しみが次 々 に押 しよせて きて眠 るこ とは出来 ない。 そんな不眠 の夜 はいつ も彼女 の こ とを想 って いよ う。 か なわぬ恋 を切 々 と述 べてい るが,そ
れ は眠 りの かわ りに不眠 がで て きてい る。 しか し眠 りに しろ,不
眠 に しろ,そ
れ が か なわ ぬ恋 の苦悩 を述 べ て い る点 にはかわ りない。 これに似 たソネ ッ トはBarnes LXXXIII,William
Smith Cん′οTJs(XVI)に
も見 られ る。 このLincheの
ソネ ッ トで はOdに
で て きたMorpheusが
提 示 されて い る。切 裂 れ た とはい え, まどろみ を与 えて くれ るのはMorpheusだ
とい う。 「眠 り」 ―― 夢,「
不碗 一―歎 きの二つ のパ ター ンが見 られ るが, その折 衷 的 なもの として は,Smith XXXIVで
ある。詩 人は眠 り,夜
中 に目 を覚 す。 そ して不実 の変 を想 って泣 きあかす。Lin_cheの
「眠 り」 の ソネ ッ トにつ いて略述 したが,彼
は独 倉J的 な詩 人で ないだ けに,か
えつて これが,エ リザベ ス朝 の ソネ ッ トの趨 勢 と考 えて よい。 この ことは他 のソネ ッ ト作 家 を票上 げ
,敷
衡 したい と思 う。湖 るが
Sir Phlip Sidneyに
移 ろ う。彼 の ソネ ッ ト集 A sι Tορ脆 ′ α2,Sι9′′α は1591年 に出版された。本格 的 ソネ ッ ト集 の魁で あ る。 Astrophel(the 10ver Of the star)は
Sidneyの
ことでStella(star)と は
Pene10pe Deverenx(結
婚 してLady Rich)で
ある。彼 はPenelope Devereux
と親 しく交際 して いたが,愛
とか結婚 とかは感 じなかった。 その彼女 がLord Richと
結 婚 した と き,彼
女 を愛 して い るこ とが今 に して わか り,遅
きに失 したが Stellaの ため にソネ ッ トを作 るよ7 既 婚婦人 に捧 げ るソネ ッ トは先 の L incheと同 じで あ る。彼 の第32番の ソネ ッ トを引用 す る。Morphcusl the lively son of deadly SLEEP,
Witness of life to then that living die. A prophet oft, and oft an histOry,
A poet eke, as hunOurs fly and creep:
Since thOu in me sO sure a power dost keep, That never l with c10sc up sense do lie,
But by thy work, my STELLA I descry;
Teaching blind eyes both how tO smile and weep.
Vouchsafe of all acquaintance this tO tell!
Whencc hast thou ivOry, rubies, pearl and gold, To show her skin, lips, teeth and head so lvell?
``F001!" answers he, “nO Indes such treasures hold;
But from thy heart, while my sire charmeth thec,
202 岡村俊明 :「眠 り」 のテーマ とエ リザベス朝ソネッ ト これが眠 りの神
Morpheusに
対 す る呼 びか けの ソネ ッ トで あ る。 ここで はMOrpheusと
名 ざ しで 呼 び か け,そ
の後 に眠 りの属 性 を次 々 に述 べ て いる。他 の ソネ ッ トで はMorpheusが
言 及 さ れ ず 眠 りをその 多 くの属 性で呼 び かける場合 があ るが,暗
黙 にMorpheusが
考 え られて い る時 もあ る。 第2行
日「 生 きなが ら死 ぬ者 の生 の 目撃者」 と眠 りを定義 して い るわ けだ が,こ れは眠 りを“sleep, brother Of death"と した ものの変奏 で あ ると思 う。彼女 の美 を讃 えるの に象牙,ル
ビー,真
珠 な どの月並 な比 喩 を持 ち出 して い るが,最
後 には美 しい Stellaの 姿 は 彼 女 の心 か ら私 の心 に浮 ん で くる と結 ぶ 。表面 に流 れて終 ることはない,落
着 いた詩 にな って い る。Stellaを
思 い出 す の は 私 が眠 って い る間だ と して,報
われ ない恋心 を抱 いた詩 人 と,清
浄 な愛 と「 眠 り」 が結 び あわ され゛ て い る。 これは
Lincheの
ソネ ッ トの特徴 になったが,Sidneyの
特質 で も あ った。第38番も同 じ 趣 旨の ソネ ッ トで ある。詩人 はいつ か眠 って しまった。 す ると眩 しいほ どのS tella
が み える。 彼 女 は うた も歌 って い る。詩 人 は驚 き,耳
をそばたて る。 しか し,日
を開 ける と,そ
の姿 は 忽然 と 消 える。Lcaving me nought but wailing e10quence.
I, seeing better sights in sight's decay;
Called it anew, and wooed sleep again:
But him her host, that unkind guest had slain,(XXXVHI)
再 び眠 ろ うとす るが, もはや彼女 の姿 は見 えない。
COme Sleep! O Sleepl the certain knot of peace! The baiting place Of wit! the balm of woc! The pOOr man's wealth! the prisOner's release!
Th'indifferent iudge between the high and lowI
With shield Of proOf, shield me from out the press Of thOse fierce darts, Despair at me doth throw! O make in me those civil wars tO cease!
I will good tribute pay if thou dO sO.
Take thou Of me, smooth pil10ws, sweetest bed, A chamber deaf to nOise and bhnd to light,
A rosy garland, and a weary head:
And if thesc things as being thine by right,
Move nOt thy hcavy Grace; thou shalt in me
Liveher than elsewhere, STELLA's image sec.
次 は第39番の ソ ネ ッ トに移 ろ う。
Come SIcep1 0 Sleepl the certain knot of peace! The baiting place of witi the balm of woe!
The poor man's wcalthl the prisoner's release!
With shield of proof, shield me from out the press Of those fierce darts, Despair at me doth throw! O make in me those civil wars to ceasel
l will good tribute pay if thou do so.
Take thou of me, smooth pillows, sweetest bed, A chamber dcaf to noisc and blind to light, A rosy garland, and a weary head:
And if these things as being thine by right,
Move not thy heavy Gracei thou shalt in me
Livelier than elsewhere, STELLA's image see.
「 眠 り」 に対す る呼 び かけを して い る。 そ して「 眠 り」 の属 性 を畳 み かけるよ うに提示 してい る。 「 眠 り」 の神 を明示 してはい ないが
,彼
の第32番 のソネ ッ トと同 じく,具
体 的,人
格 化 された神 に 対 す る呼 びかけがその底流 となって い ると思 う。 これはSenecaや
Odに
見 られ る通 りで あ る。Sidneyは
このパ ター ンに則 りなが らも,新
しい属 性 を も案 出 して い る。Senecaは
「 眠 り」は「 等 し く工 にも奴隷 にも訪 れ るもの」 と してお り, Sidneyは
これ に似 せて,「
眠 り」 を「貧 者 の富, 捕 わ れ人の釈放,高
貴,卑
賊 の公平 な裁判 官」 と考 えて い る。身分 に関係 な く,「
眠 り」 は共 有 さ れ るとい う対応 は ある。 その多 くの属 性 とともに「 眠 り」 に対 す る呼び かけは,エ
リザベ ス朝 で は 一つ の流 行 とな り, Shkespeareも
Arαcう?ιん で は その影響 を受 けて い るよ 8 次 にSamuel Danielの
ソ ネ ッ トD』Jα (1592年)に
移 りた い。Carc‐charmer SleepI Son of the sable Night!
Brother tO Death! In silent darkness, born! Relieve my anguish, and restore the light!
With dark forgetting of my cares, return!
And let the day be time enough tO mOurn
The shipwreck Of my ill adventred youth! Let waking eyes suffice tO wail their scorn,
Without the torment of the night's untruth!
Cease, Dreamsl th'imag'ry of our day desires, To mOdel forth the passions Of the morrow! Never let rising sun approve you liarsI TO add mOre grief to aggravate my sorrow,
Still let me sleep! embracing cIOuds in vain;
And never wake to feel the day's disdain.
深 刻 な内容 で あ る。 こ こで も「 眠 り」 は“
brother to death"と
定 義 され て い る。BarthO10mew
Griffin, Fガ,9sa(XV)も
“brOther Of quiet death"を使っている!9このソネットの``care‐charmer
岡村俊 明 :「眠 り」 のテーマ とエ リザベス朝 ソネッ ト
SOin"を
直訳 式 に翻訳 した もので,こ
の ため イギ リスで もよ く使 われ るよ うになった。 確 か に,Griffin(“
care_charmer sleep"XV)ゃ
劇 作 家 」ohn Fletcher(“Care_charming Sleep, 7α ′‐9ηιJη ,α2)と 多少 の違 いは あ るが
,使
って い る。Lce自
身 はロー マ 。ギ リシ ャにその範 が あった かも しれない と して い るが
,明
確 に して い ない。 この始源 を辿 ればOdに
帰 るの で は ない か と私 は 思 う。具体 的 に例 証 してみたい。O
dの
魔法の杖 (“charmed rod")イこつ いて は略述 したが,再び取上 げてみたい。charmed rod
は百眼の巨人
(Angus)を
も眠 らせ る ものだが,そ
れ と「眠 り」 が直接 に 結 び つ いて い るのは次の 個 所tooke his charmed rod,
(With which he bringeth things a sleepe, and fetcheth soules from HeH)(I.834-)
with his charmed rodde
So stroked all his hea e eyes that earnestly they slept。 (1.891-)
で あ る。 第 二巻 に も
He takes in hand his charmed rOd that bringeth things asleepe,(II。 916)
が ある。 この よ うに容 易 に眠 らぬ もの (百眼 の工
)を
charm(ed rOd)で
slecpさす こ とでcharm
とsleepは再 三結 びつ いて い る とい える。 これ を比喩的 に用 いて
, care(心
配)と
い う魔 物 をなだ めす かせて眠 らせ る意味で,care‐
charmerま
た はcare・charming sleepと して使 わ れ る こと は十分 に考 えられ る。 また比喩 的で な く,直
接 に“care"が
出 て きて い る個 所 もある。 次 の通 りで あ る。Yet altQRether Out of feare and carelesse was she not.
This Argus had an hundreth eyes:of which by turne did sleepe。 (I.772-)
Continuall Carke and cancred care did keepe hir waking stiH.(II.970-'1
の よ うに
, careと sleepが
結 びつ いて い る。charmと
sleepと, careと slcepが
結 びつ いて い れば,charmed rodの
本 質 を表 わす care‐charmer sleepへ
の転 移 は容 易で あると思 う。O
d の原 文 をも と に して, O
dの
この個 所 か らフ ラ ンスの詩 人 が模 倣 した もの か, Daniel以
外 の詩人の よ うに
,Golding訳
Odの
影響 を受 けて この表現 を使 った もので あ ろ う。 いず れ に しろ始源 はOdに
辿 れ る もの と思 われる。 そ してエ リザベ ス朝 ソネ ッ トで は “care‐charmer slcep"が
一 つ の流 行 となった。更 に この証 明 を補足 す るものは
, Drummond of Ha
horndenの
ソネ ッ トで ある。これは“care‐
charmer sleep"で
な く,魔
法 の杖(charming‐ rod)のた め,万
物 が眠 って い る とい うOdの
表 現 が 殆 ん ど その ま ゝ使 われて い る。Sleep, silence' child, sweet father of soft rest,
Prince, whose approach peace to all shepherds brings,
Indifferent host to mortals and to kings,
Sole comforter Of minds with grief oppressed
Lo, by thy charming‐ rod all breathing things
Lie slumbering with forgetfulness possessed (Pο 9ηd L ix)
O
dが
エ リザ ベ ス朝 作家 に強 い影響 を与 えて い るこ とがわか るで あろ う。次 に「眠 り」 の ないソネ ッ ト作 家
Edmund Spenserに
移 りた い。Spenserは
ソネ ッ ト連 章 Attc‐ T9ιιJを
1595年 に出版 した。 これ に「 眠 り」 のテーマが見 あた らない。この理 由 につ いて考察 したい。
この ス例οTttι
,は
88首 のソネ ッ トか らなる。の ちに彼の妻 になったElizabth Boyleへ の愛を吐露 したもので ある。彼女は実在す る女性 とい うよ り至聖の神 に近 い存在で あつた。 The sovereign beauty whch l do admire,
Witness the world how worthy to be praised! The light whereof hath kindled heavenly fire ln my frail spirit, by her frOm baseness raised; That, being now with her huge brightness dazed, Base thing l can no more cndure to view:
But, 10oking still on her, I stand amazed
At wOndrous sight of so celestial huc.(III)22
そ うい う彼 女 も態 度 を軟 化 させ
,詩
人 の求 愛 に応 じ始 め た。 その喜 び は一 入 で あ る。So do l hope her stubborn hcart to bend, And that it then more steadfast will endure:
Only my pains will be the more to get her; But, having her, my ioy will be the greater. (LI)
岡村俊明 :「 眠 り」のテーマとエ リザベス朝 ソネッ ト る敬虔 と情欲が不思議 に交 りあったソネ ッ トも書 いている (LXIV)。 大要 はこういうソネ ッ ト集 で あり
,「
眠 り」 のテーマは見出せ ない。既述 した詩人 との比較 を通 じて考察 を試みたい。 他の詩人たちか ら言 えることは,「
眠 り」 (不眠 を合 めて)と
愛 が結 びつ く時,愛
の相 を限定す ることになると思 う。真実の恋 人が相手の女性 を慕 うが,彼
女は輝 くほ ど美 しく,冷
酷で,貞
節で 詩人に一 瞥 も与 えない。詩人はつれない恋人を想い,い
つ まで も眠 らないでいる。 あるいは,詩
人 が恋人 を抱 き愛 が成就 したかに見 えるとき,そ
れは「眠 り」 で あ り「夢」 で あるとい うのが特徴で ある。「眠 り」 のテーマは必 らず失恋――清浄無垢 な恋―― と結びついてぃる。確 かにSidneyな
などは,彼
のソネ ッ ト集で性的愛 につ いてヴィヴィ ドに描 いている。Leverは
No Other sOnnent sequencc in English sO vividly prOjects the ardous and
frustrations of sexual love in its impacts on a brilhant,many‐ sided young man子3
と述 べ て ぃ る。 また
Lincheに
も時 にはanti‐petrarch的
要 素 があ る。 しか しそ うい う欲望 に燃えるとき「 眠 り」 のテーマ は必 らず消 える。欲望 と「 眠 り」 はソネ ッ トで は同居 しない。竹 タリアの 詩 人
Danteや Petrarchが Beatriceや Lauraを
清純 な女性 と崇 めて いたよ うに,イ ギ リス の詩 人 た ち も,
ともす れば顕 在化す る欲望 や恋 の成就 を努 めて消 し,「
眠 り」 のテーマ をかなわぬ恋, 清浄 な愛 と結 びつ け,眠
られ ぬ夜 を申展転 反側 して いた。従 って無垢 な愛へ の強 い関心 は,「
眠 り」 へ の強 い関心 となって きた。 この よ うにエ リザベス朝 ソネ ッ ト作家 が「 眠 り」 の虜 となったので あ る。 これ に比 して,Spenserの
求愛 は婚 約 と結婚 に結 びつ く。 成就 へ の道 を辿 るので ある。その意味 で従来の ソネ ッ トとは違 い独倉↓的で あるが, また「 眠 り」 を必要 しな くなって ゆ く必 然の道 を歩 む の だ。 次 にWilliam Shakespeareの
Tん¢Sοη29歩sに
移 ろ う。 これは1609年Thomas Thorpeに
よ り出版 された。美 貌 の独 身貴公子の母親 に依頼 されて,彼
の結 婚 を勧 め るソ ネ ッ トを作 りは じめ る。貴公子 の表面的 な称 讃 が,次
第 に強 い愛 へ と移 行す る。貴 公 子 は彼 の愛 人 を奪 った り,他
の詩人 に関心 を移 し始 め る。 これが前半で後 半 は黒 婦人(Dark Lady) と詩人 との愛 や,彼
女 が貴 公子 と他 の男性 に愛情 を移 す ソネ ッ トか ら成 り立 ってい る。 この内容 は 従 来の ソネ ッ トとは全然異 に して い る。男性同志 の愛 とい う異 常性,そ
れ に互 いの男性 が肉体 関係 を もつ黒 婦 人 が登 場 し,三
角 関係へ と錯 雑 した事態へ と進展 して い る。想像 で きないほ ど異 常 な緊 張 関係 を もって い るが,詩
人の 中 に醜 悪 な現実 を白 日に さら し,そ
の辛酸 を害 め なが らも,詩
人 は 普通 的 な愛 を求 め る真摯 な態度 を失 なわ ない。 その極限状況 か ら,真
に光 輝 に満 ちた詩 が睦 続 と生 誕 す るこ とになったので ある。 これが真情 の吐露 か あ るいは虚 構 かは問題 の わかれ るところだが,A.C.Bradley%の
よ うにShakespeare真
心 の作 と考 えるほ うが正 鵠 を得 てい ると思 う。 これは題材,姿
勢 とも斬 新で あるとい える。conventionalと
は一線 を画す ものの一例 と して第 130番 をあげ よ う。My mistress' eyes are nothing like the sun, COFal is far mOre red, than her lips red, If snOw be white, why then her breasts are dun:
If hairs be wires, black wires grow on her head: I have scen roses damasked, red and white, But nO such rOses see l in her checks, And in some perfumes is there more delight, Than in the breath that frOm my mistress reeks. I love to hear her speak, yet well l knOw, That music hath a far more pleasing sound: I grant l never saw a gOddess go,
My mistress when she walks treads on the grOund. And yet by heaven l think my love as rare,
As any she behed with false cOmpare. (CXXX)
L incheとは全然異 なることが わかる。愛 す る女性の 目 は少 しも太陽 に似 ず
,唇
の赤 さもサ ンゴに 及 ばず,彼
女 の乎[房は うす黒 く,影
は黒 い針 金の よ うで,頬
にはバ ラ色 も見 えず,吐
く息 は臭 い等 で あ る。普 通 ペ トラル カ的 とい われ る,美
貌 の女 性 を嘆 き慕 うテーマ とはほ ど遠 い。 この ソネ ッ ト 集 に「H民り」 のテ ーマ があるの はXXVH,XXVHI,XLHI,XLVH,LXI,LXXXHI,LXXXVH,
CLIVで
ある。 第83番の ソ ネ ッ トは,「
眠 り」 (また は不眠)が
愛 の相 と結 びつ いてい る従来の ソネ ッ トとは異 な り “
And therefore have l slept in your report."(だ
か ら私 は君 を讃妄 す る ことには怠惰で あつた)と
怠惰の意味 を もつ もの になって い る。 また “sleep"が使 われず に,他
の ソネ ッ ト作家 が描 いた一つ の共通 のテーマ ーー 日を閉 じる とあなたの こ とを想 い出す ―― を写 し て い るソネ ッ トもある (``my thoughts intend a zea10us pilgrimage to thecP XxvⅡ )。 第47i静 で は,日
と心 とが貴公子へ思慕 を捧 げている。conventionalな テーマで あるが,lcaguc(法
律 用 語)や
famished(食
事のイメイジ),Iove's picture,painted banquct(絵
画のイメイジ)と
題 材 は豊富で,わ
れわれを楽 しませて くれる。一見陳腐 で,ま
た因襲 を踏 まえながらも,そ
の底 に真 情 が輝 いている。微笑 と苦悩 が交錯 しているなかで,詩
人が言いたいことは言っている従来の「眠り」 のソネッ トにない斬新 さがある。 では第43番を51用 しよ う
When most l wink then do mine eyes best sce,
For all the day they view things unrespected, But when l sleep, in dreams they look on thee,
And darkly bright, are bright in dark directed.
Then thou whose shadow shadows doth make bright, How would thy shadow's fOrm, form happy show,
TO the clcar day 、vith thy much clearer light,
When to unsecing eyes thy shade shines so!
How would(I say)minc eyes be blessed made,
By 10oking on thee in the living day,
岡村俊明 :「眠 り」 テーマ とエ リザベス朝 ソネッ ト
ThrOugh heavy sicep on sightiess eyes doth stay!
All days are nights tO sce till l see thec,
And nights bright days when dreams dO show thee me.
貴 公子へ の想 い
,眠
って い る時 は「夢 の なかで 私の眼 は君 を見つ め る」 などは従来 の もの とそ う変 らない。次 か らは言葉 の繰返 し,対
照,破
格構 文 を交 えなが ら,迅
速 感 と同時 に立体感 を与 える。 また繰返 しは流 れ るよ うに軽 いが,か
とい って浮薄 とはい えず,い
つ の まにか貴 公子 の姿 が鮮 明 に 描 かれて い るの に驚 きをもって気づ く。詩 人 は従来のテーマ を踏 ま えなが らも,他
の 多 くの要素 と 交錯 させ,た
め に詩 人の苦悩 を余裕 をもって浮彫 に して いる とい えないだ ろ うか。 しかも想 う愛 人 は異性 で な く男性で あ る。反社会 的,反
自然 的で は あ るが,従
来 の清浄 の イ メ イジの延 長線上 にあ る と思 う。「荒 れ狂 う嵐 の なか に立つ確 固不動 の灯 台,た
だ よ う小舟 をみ ちび く北 極島(CXVI)
ともい える愛 を模 索 してい るか らで ある。「 世界最高の愛 の詩 集」とい われ る所以で ある。しか し「眠 り」 の ソネ ッ トに とっては,実
に危険 な試行 あ るいは到達点 といえないだ ろ うか。 次 に第 154番 を取上 げたい と思 うが,そ
の前 に この こ とに留 意 して お きた い。「 眠 り」 の ソネ ッ トは9つあ るが,第
154番以 外 はす べて貴 公子 をめ ぐる,い
わば 『 ソネ ッ ト集』 の 前半 に属 す るも ので ある。黒婦 人 にかんする「眠 り」のソネ ッ トは1つのみで ある。しか も第 154番は第 153番 と と もにShakespeareの
手 にな るか否 か議論 の分 れ るところで ある♂ 新解釈 を断 定 的 に提示 す ることを 好 む 」.D.Wilsonも,ここには首 をか し,沫
切 らないξ化か し贋作 を肯定する客観 的根 拠 は ないよ うで あ る。Shakeskeareの 作 で あ る とす れば,こ
の ソネ ッ トはエ リザベ ス朝 ソネ ッ ト「眠 り」 のテーマの 歴史 で,新
しい意 味づ けが され ると思 う。2行
引用 す る とAnd sO the genera1 0t hOt desire,
Was sleeping by a virgin hand disarmed。 (CLIV)
情 炎 と眠 りが結 びつ け られて い る。 これは否定 された形 で あ るが
,如
何 な る形 で あれ,エ
リザベ ス 朝 ソネ ッ トで「 眠 り」 と情欲 は結 ばれて い なかった。清浄 をその土壊 と して ぃたの であ る。 次 に演劇 における「 眠 り」 を略述 し,そ
れ によってソネ ッ トの「 眠 り」 を一層浮上 させて見 たい。エ リザベス朝
,ジ
エ ムズ朝演劇―― 死 と歪曲の系譜
ソネッ トの「眠 り」 につ いては略述 したが,そ
れは終始愛 と結びつ き, しかも愛 の相 をも限定 し た。いわば「愛の系譜」 とで もい えた。で はエ リザベス朝演劇 で は「眠 り」 は如何 に扱 われている のか。それを考察 したい。 エ リザベス朝劇,特
に悲劇 は憑 かれたよ うに「眠 り」 と りLに
関心 を示 した。 ソネ ッ トにおけ るような限定 された愛で はない。 これはいはば「死の系譜」 とで もい うべ きで あろ うか。Shakespeareは
詩や喜劇 で も,「眠 り」 と死 に関心 を示 したが,悲
劇 で はこの傾 向は更 に強 い。 Macb9J/3を 見 るとそこではDuncanが
眠っている うちに殺害 された。 それをMacduffは
And look on death itself!― ―up, and see
The great doom's image!(II. i.76_)
とsleepを death's counterfeitと言 い放 つ。
'α
″′9と で は先王 は
Claudiusに
よって,睡
眠 中 に生命 を奪 われた(I.v.74‐)。眠 りは愛 の問題
,あ
るいは愛 の相 を決定 す る とい うの で もな く,そ
れ とは無 関係 に死 に結 びつ いてい るので あ る。次 に
Hamlet次
の有 名 な独 自を写1用 しよ う。To be, or not to be:that is the questiOn:
Whether 'tis nobler in the mind to suffer The slings and arrows of outrageous fOrtune, Or to take arms against a sea of trOubles, And by opposing end them? To dic,to sleep;
TO sleep: perchance to dreami ay, there's the rub;
For in that sleep of dcath what dreams may come
When we have shuffled off this mortal coil,
Must g e us pause.(IH.i.56-) 「 眠 り」 と死 はイー コルの関係で 結 ばれて い る。生死 の問題 は緊要で あったが
,同
時 に「 眠 り」 の 問題 も同 じ次元で重 要で あつた とい える。Hamletに
とって死 の不安 は「 眠 り」 へ の不安で あつた。 「 眠 り」に言及す るこ とは単 なるポー ズで は ない。「眠 り」 と死 が密 接 不可分 の関係 、即 ちHamlet
の精神 を媒介 と して両者 は一体 化 し、Hamletの
基 調 とも有機 的 に結 び あわ されて い る。 エ リザベ ス朝悲劇 で は,何
故 それ ほ ど強 く「 眠 り」 (または不眠)に
関 心 が もたれ たのだろ うか。 それは倫 理感 が その背景 になって いた か らだ と思 われ る。 汀伽Ty〃
で は工 は常時 不 眠 に悩 ま され た。彼 は正 当 な王Richard
Ⅱ を刺 客 の手 に よ り殺 害 し,
自 ら王座 を強奪 した。 それ が返 り血 とな って いつ か彼 自身 に復 讐 され る恐 れ に苛 なま されて いた。 そのた め不 眠 に悩 ま され た。 不眠 は一度 奪 つた王座 を失 な う悲 しみ と不安 で あ り,ま た戦慄 とい う形 の倫 理感 で あ る。Macbethの
場 合 はDuncanを
殺 す が,そ
の時Duncan
の息子 は夢 を見 て,祈
りを唱 えて いた。 それ を聞 きMacbeth
は次の よ うに言 う。
I had most need of blessing, and `´ unen"
Stuck in my throat,(H.五 。
31_)
Macbethは
神 の祝 福 が最 も必要 だ と認識 したが,そ
れ を受 けなか った。 その次 に彼 はMcthought, I heard a voice cry, “SleCp nO more! Macbeth does murther Sleep,"(II. .34-)
とい う。神の祝福 を受 けるときは
,罪
を自白 し,悔
改めることであるが,そ
れが出来 ないMacbeth
岡村俊明:「眠 り」のテーマー とエ リザベス朝 ソネ ッ ト る。その背後 に強い倫理は があるか らである。既 に見て きたよ うに
,「
眠 り」 と死一一 その背景 の 倫理感 はギ リシャ・ ローマの古典にはなかった もので ある。Hesiodは
言 っている「最初 の人 間た ちの世代は黄金 の時代 とよばれ,ク
ロノスの時代に栄えた とい う。かれらは榊々のよ うに,煩
わ し さを知 らず,労
苦 もツい身の痛みも知 らず,あ
われ な老 いの悲 しみにさいなまされることもなかつた。 生は喜 びに満 ち,死
も眠 りと変わるところがな く,災
禍 の外 にあった。」(『仕事』109-)。 28牧 歌 的 な眠 りで あ り死 で ある。勿論倫 理感 はありえない。エ リザベス朝で倫理感 のための不眠 が現 われて きたのだ。 これは きわめてシェクスピア的またエ リザベス朝 的解釈 といえる。 またこの倫理感 はェ リザベス朝 ソネ ッ トにも「眠 り」のテーマ に関 しては見 られないものである。 歴史的について,ェ
リザベス朝のあとはジエムズ朝 が くるが,こ
の時代の「眠 り」 につ いて考察 したい。 この時代は頼廃色力場とくなってゆ く。時代思潮 は暗 く憂愁 なものとなった。そ して暗洛 た る悲劇 が生み出 されて くる。 ここではかってのThomas Kydの
悲劇 のよ うに純 朴でない。 またShakespeareの
ように,魂
の死 の悲劇,
強 い倫 理性 といった もの も見 られ ない。罪の結果の肉体 の死,歪
曲 された「眠 り」 が見 られる。いわば「歪 曲の系譜」 とで もいえようか。 この期はJohn
Webster,」 Ohn Fordな
どが輩出 した。 まずWebsterの
Tん97崩
ι9D9υJ′ (1612年 出版)を取 上げてみよ う。
Brachiano公
爵 は人妻 VittOria(「白い悪魔」)を
愛 し,そ
のため彼女の夫 と自分の妻│を毒殺す る。陰滲な悲劇で あるが,
自分 も毒殺 される。死 に臨んでO thOu sOft natural death, that art ,Oint_twin
To sweetest slumber.(V. i。
30-)
と呼 びか け る。 これは疑 人法で死や眠 りを表わ したので は な く勿論比喩的に使 っている。 ここで は 死 の方 に重 点 を移 し
,安
楽 な死 を望 んで いる彼 の心境 を表 わ して い る。作者 は死 をもてあそんで い るかの よ うで ある。 全身 に毒 が まわ りなが らも,念
入 りに彼 は絞 殺 され る。罪 の報 い とは い え,残
酷 で悲惨 な結 末だ。 最後 に淫 婦Vittoriaも
,欲
情 の 手助 を した兄のFlamineOも
殺 され る。 またVittOriaを殺 したLodO
co伯
もイギ リス大 使 の銃 弾 に当 り傷 つ く。 その時大 使 ととも に登 場 した
BrachianOの
息 子GiOvanniは , LOdOvicO伯
を投獄 して拷 間にかけ,正
義 を味 わせ てや る と い う。 す る と彼 はI do glory yet
That l can call this act mine own, FOr my part, The rack, the gallows, and the the torturing wheel,
shan be but sound sleeps to me:here's my rest。 (V,vi。
295_)
と答 える。 どん な残 虐 な行 為 も自らの行為で あれば喜 しく
,彼
に とって拷 問も絞 首台 も車刑 も深 い 眠 りで ある。拷 問や 車刑 は人 間の肉体 と同時 に精 神 を歪 曲 す るが,歪
曲 された名誉感 と歪 曲 された 眠 りが見 られ るこの劇 はWebsterの
特色で あると思 う。牧 歌 的 ともい えた「眠 り」 は ここで はい か に歪 め られた で あろ うか。では
Websterの
TL9 D2oん9,s
οF Mα
′FJ(1623年
出版)に
移 ってみよ う。ここで も殺害の応 酬,ま
た淫欲 うず まく陰惨 執 拗な悲劇である。次の言葉 に見 られるようにHe speaks with others' tongues, and hears men's suits With others' cars, will seem to sleep o'th'bench Only to entrap offenders in their answersi Dooms men to death by information;
Rewards by hearsay.(Io i.192-)
「眠 り」は
Ferdinandに
とって犯人を民 にかける道具 にす ぎない。 狡猾 な人間が,「
眠 り」 という武器を使って
,狡
猾 にも人を陥れるのだ。Ferdinandは
妹や彼女の情人に異常なまでの性的関心を示 し,
In,in; I'1l go sleep. Till l know who leaps my sister, I'1l not stir:
That known, I'll find scorpions to string my whips, And fix her in a general exhpse.(II.v.76-)
とい う。彼 はねよ うと思 うが
,妹
の性行為を見つ けるまでは動かないとい う。 この作 品で も「眠 り」 の歪曲ははなはだ しい といえよ う。 次にFordの
悲劇 'T's Pttg Sん9'sα VんοT9(1633年
出版)に
移 ろう。ここでの退廃 は極 限に 近づ く, Giovanniは
妹Amabellaに
恋 を し,破
倫行為 におよぶ。秘密が発覚 した後,妹
を殺 し, その心臓 を剣 先につ けて人々の前 に登場す る,戦
慄 すべ き悲劇で ある。「眠 り」の属性で ある夢 は, 純 潔の恋 人 と会す る場 で もなく,ま
た恋人 との愛欲 とその後 の眠 りで もなく,近
親 相姦 の寝床で見 る夢 である。エ リザベス朝 ソネ ッ トとの距離 はいかに大 きいかは驚 くべ きことで あろ う。最後 に死 を予期 したAnnabellaは
I trod the path to death, and showed me how. But they who sleep in lethargies of lust
Hug their cOnfusion, making Hё aven unjust;
And sO did I。
(Voi.27-)
とい う。欲情の眠 りは
,天
とは相いれなく,破
滅 (多くの人 々の死)と
結びつ くもので ある。 近親相姦 と眠 りの結びつ きはOdに
も見 られたゴ9しか し中世のキ リス ト教倫理,ま
たエ リザベ ス朝 シエイクス ピアの厳然たる倫理感 を通過 して, O
dに
帰 ったのであるか ら,似
たよ うな状況212 岡村俊 明:「限 り」のテーマ とエ リザベ ス朝 ソネ ッ ト
<お
わりに
>
「眠り」のテーマに関して
,ギ
リシャ・ローマ文学にそのアーキ。タイプともいうべきものを辿
り,エ
リザベス朝 の ソネ ッ トを中心に考察 して きた。 「眠 り」 はギ リシャ・ ローマにその源 を発するが,そ
の変奏 曲 とともに新 しい要素 も加わって きた ことも述べ た。1590年代初頭に流行 したソネ ッ トは愛の ソネ ッ トとい うべ きものであった。 そこで は因襲 的な要素が多いとはいえ,愛
にも諸相が見 られた。 しか し「眠 り」 と結びつ いた愛 は更 に狭 く清純 無垢 を特質 と した。詩人は無垢な恋 を表わすた めに「眠 り」のソネ ッ トを熱心に創作 した。 そのソネ ッ トの流行 も1590年代後半には衰 えて きた。 その愛 の姿勢は嘲笑の対象にもなって きたF
1590年代後 半か ら1600年代初頭 にかけて,人
々は悲劇 に関心 をもちは じめ,憑
かれたよ うに死 を描 いた。 ここにも「眠 り」 は登場 し,死
と「眠 り」 は密接 に結合 していった。1610年以降ジエムズ朝 になると人々の関心はよ り陰滲な悲劇へ 向い「眠 り」 は歪曲 されて くる。 以上 が概観で あったが,そ
うすると「眠 り」 は文学思漕Hと ともに変遷 していったことに気づ く。 エ リザベス朝 のソネ ッ トには多 くのポーズがあった。「眠 り」 もその一つであったかもしれない。 しか しポーズまたは因襲 的 とはいえ,
しかもその範 囲内で誠 実で衷 心を表わす ものは「眠 り」 (ま たは不眠)で
あ り,そ
の結果生まれた無垢な愛で あった。無 垢 な愛 に関心をもてば,それだけ「眠 り」 に関心が強 まった。 コンベ ンシ ョンだけで「眠 り」 を歌 ったのではない。 そこに流 れる鮮血 も あった。す るとエ リザベス朝 のソネ ッ トも悲劇 も誠実に生 き,汚
濁 を拒否 し,誠
心で愛 し,死
(ま たは生)を
慮 る。 そ して愛一―眠 リーー 無垢,死
一― 眠 リーー 倫理へ とつ ながる作 品を作 った。後 者 は遥 かに有機 的なつ なが りをもって きた。 その張 りつ めた神経 もぷつ りと切れ,「
眠 り」 はその 本来の意味 を失ない墜落の道 を歩んでいったのが,歪
曲 した ジエムズ朝 で あったとい うべ きで あろう。シェイクスピアのいくつかのソネットはその倉
J作時期において
,彼
の悲劇期と重なっているが沖
情欲の前芽 ともいうべきソネットは
,独
創的であることは勿論だが
,同
時に時代が要求 していたと
い えるか も知れ ない。 注引用 したソネッ トのテキス トは
Sidney Lce,E"zα
b9チんαη Sο,″ιd 2 vols,(New York,1964)である。
Shakespeareの
ソネットはJ.D.W ilsOnに d,),T鹿 能ψSんαん“,9αT9;Tん9 Sο2,?お (Cambridge,1966), Mαcb9ιんは Kenneth M uir(ed.), ″αCう9,ん (The Arden Shakespeare,
LOndon,1955), 'α η′9サ は Tんθ 〃 ο″んs οF V√どんαη Sん αた9dρ 9α″9(The G10ve Edition,London,
1961),Websterの
作 品 は G.B.Wheeler(ed.), S'π P′αyS bg Cοη′θηροTαTi9S οF S力αtts,9α T9(he World's Classics,LOndOn,1962),FOrdの
作 品 は A.K.Mcllwraith(ed。),局
υθ&"αTテ TTα=θ
J,9s(翫 e world's Classics,bndon,1969)で
あ る 。〕Lisle C∝ 』
hh,T脆
〕 滋あ 肋 ″S効
濾Sη
兜 賀 斜 仰ew Yば
塩 ω ⑭ ,μV・``Sleep was, indeed, one of the mOst constant themes of Frensh poetry of the epoch." と
Sidney]heは
↓旨摘 している(E"を'b研んα,So229ι s:New YOrk,1964;p.hx)。
4sidney Lec(ο
p.cテと,,p.lix)1よ “Homer and Hesiod both caned sleep`brother of dcath'."
と述 べ て い る。 しか しそ れ 以上 の 出 典 は 明示 して い な い。 5テ
キ ス トは
A.T,M urray(trans.), Tん
9rんα',xvi.673(The Loeb Classical Library:
Cam bridge,Mass.,1967)。 6cf.Lce,p.lix.
7テキ ス トはH.G.Evelyn Whte(tr ans.),Frc s,ο
,(The LOeb Classical Library:Cam‐
bridge, Mass.,1954)。
8Hesiodに
つ い て は本稿p18も参照 。
9Kenneth Muirは
ναcb¢J/3(L.
.34-)で senecaは
″ αCbaん に影響 を与 えて い る と して,次
の よ うに述 べ て い る。 “It seems prObable that`balm of hurt minds' was suggested by the situation in fr9Tc切 ′9d FLT92s, where the ChOrus invOkes Sleep to cure the madness
of the herO." p.56.
10テ
キ ス トは
Frank」
ustus M iller(trans。 ),S929Cα 7rrr TTα=9,9s(The LOeb Classical
library:Cambridge, Mass.,1968).
11テキ ス トは 」
.M.Cohen,Tん
9ν
9ιαηο″ρんοs9s(LOndOni Cる ntaur Press,1961). 12Kenneth Muir(0155)は,こ
の個 所 は Shakespeare(arαcb9ιん,H..34-)お
ょ び Sir PhlipSidney(4 sιTο,ん9′ αηJ Sチ冽 ′α
,XXXI勁
に影響 を与 えた と述 べ て い る。 13Lce,p.c . 14 John,p.63. 15 1bid.ipp.69ff. 16ェ bid.,pp.114ff. 17」.w.Lever, SOη
29ιs οF
どん9 Eηgんsん ■9η,,ssαηcθ (LOndOn,生974),p.8. 18Muir,p.55.19 Cf.“
the map of death"(L2oT9cc,402),
“death‐counterfeiting sleep"(4/Vrど ,s2η η9T /Vをんとも DT9αη,HI. 。364),c tc,
20 1bid., pI,v i
.
21 Frank Justus M iller(trans.)(The LOeb
α
assical Library:Cambridge,Mass.,1966)の
ヨRを引用す る と, “She never smiles,save at the sight Of anOther's troublesiShe never dJ99郎,disturbed with wakeful cα
T9s,"(ィ
タ リックス は筆 者)22ソ
ネ ッ ト第
8番
も参 照 。More than mOst fair, full of the living fire,
Kindled above unto the Maker near;
No eyes but,oyS, in which all powers conspire, Through your bright beams dOth not the blind guest
ShOOt Out his darts tO base affectiOns wound.
23
Lever,οク.c√ι,,p.11.
24
岡イ子俊崩 :「限 り」 テーマとエリすベス朝ソネット
With,antOn‐ PaFiS Sleepsl and that's the quarrel.(TTり
'胸 ″
,tra,CT9,s,力
,Pr01.9-)
こうい う使 われ方はソネ ブ トにはない。 25A.CJ Bradley,10.″ FOT'五ぞc'αT9,ο ″Pθθ〕″ヶ (bndOn,1963),pp.313ff・26HydeF rrlWard Rclns(ld)│よ
A NCt7 7,す ブ0すtt“ E'テオどうηοr Sん,た9.2θtrT9:Tれひ S9■η9チs で.こ
のソネ ッ トをShakeepeareの
作 に賛成 および反対の学者の意見を紹介 している (pp.391-392)力 比 真向から対立 している。 27」.a Wilson“ d.),Tr39丙修″sん嚇セs,¢″9:τち
,So珈
9,s(CanbFidge,19661,,.266.23久 保正彰『ギ リシア思想の素地』 (―岩波 新書