香川大学農学部学術報告 第34巻 第1号 47∼54,1982
温州ミカンの果皮の発育に及ぼす摘果と
果実肥大最盛期の窒素施用の影響
井 上
宏,日 清 政 兼
EFFECTS OF FRU工T THINNING AND NITROGEN APPLICAT工ON
ATTHERAPIDFRUITGROWTHSTAGEONTHEPEELDEVELOPMENT
OF SATSUMA MANDARINS
HiroshiINOUE and Masakane HIURA
EightRyear−01d potted trees were fruiトthinned to theleayfruit ratiooflO,20,30,40,Or501eaves perfruitinAugust.Increaslngtheratioresultedin1argerfruitwiththickerpeelatharvestinDecember. Thiseffectappearedmoreclearlyon fruitwitha fewornoleaveson thebearing shoot。
Sixteenqyear−01d field−grOWn treeSWere fruit−thinned toleaf/fruit ratioof200r40inAugust,and O, 1000r300g ammonium sulfatepertreewere top−dressedinearlySeptember.Thehigherleaf/fruit ratio
resultedinlarger fruits with thicker peellNitrogen applicationat the rapid fruit growth stagealso
causedla‡ger f.ruit with thicker peellThis topqdressing effect pronouncedmore when theleaf/fruit
ratiowasincreased.Nitrogen absorptionbypeelwasincreaSedbyincreasing theleaUfruit ratioand
thenitrogen fertilizerlevel.
温州ミカンの果実肥大,とくに果皮の発育に及ぼす摘果と果実肥大最盛期の窒素施肥の影響を知るために,香川大 学農学部構内のコンクリ一トポット植えの幼木および露地植えの成木を用いて本実験を行った. 1.ポット植えの8年生樹の某果比を8月1日に10,20,30,40またほ50に摘果調整して,12月に各供試樹の果実 の形質を調査したところ,葉菜比が大きくなるほど果実肥大はよく,果皮の厚さは大となった.果皮歩合は菓果比40 ■までは増大したが,それ以上では低下した.果皮の厚さのこの傾向は,結果枝上に基数が少ない果実ほど著しかっ た. 2.露地植えの16年生樹の某果比を8月1日に20および40に摘果調整し,それらに果実肥大最盛期の9月上旬に1 樹あたり硫安100gおよび300gの追肥を行い,窒素無施肥区とともに果実肥大の状態を調査した.英果比が大きい 区で果実は大きく,果皮は厚くなった.追肥の窒素儲:の多いほど果皮の厚い大束を生産する傾向が,某果比40区で認 められ,それらでは果実中の窒素吸収昂も多く,果皮の窒素吸収割合も高くなった. 緒 温州ミカンの果実の発育に伴う果皮の厚さの変化をみると(3),開花期から次第に厚さを増して7月上旬に最高値に 達するが,以後漸減し,10月上旬どろより成熟期に向って再び厚くなる.筆者ら(1,2)は,果皮の外層の細胞は,9月 中旬まで分裂と肥大をくり返し,その後は主として肥大を行うこと.また大果では一般に果皮歩合が高く,果皮の厚 さも犀小ことを報告した.鳥潟ら(5)は,夏肥を窒素質肥料で8月から9月にかけて多邑に施用したところ,窒素施用 昆が増すほど果皮の発育を助長し,果皮蚕品,果皮容私 果皮歩合や果皮の厚さを大とすることを認めた.いっぼ う,西田(4)は,窒素施用認試験を継続実施している供試樹について観察し,葉栗比が大きいぼど果実肥大は良好であ ったが,窒素施用藍はさほど果実肥大に影響を与えなかったとしている. 本実験は,摘果と果寒肥大最盛期の窒素施用が果実の肥大,とくに果皮の発育に及ぼす影響を明らかにしようとし て実施したものである.香川大学農学部学術報告 欝34巻 欝1号(1982) 48 材料お串び方法 (実験1)摘果が果皮の発育に及ぼす影響 香川大学農学部構内の研究は場の大型コンクリ・−トポット(内径66cm,探さ55cm)植えのカラタチ‥合杉山系温州 ミカン8年生樹を,1978年8月1日樗,薬果比10,20,30,40あるいは50となるよう摘果し,1区につきそれぞれ2 樹,合計10樹を供試した.肥料は春肥と夏肥に1樹あたり硫安100g,過りん酸石灰100g,硫酸カリ40gおよび乾燥 けいふん500gを施用した.栽増管理は当研究ほ場の慣行にしたがい,病害虫は発生の都度薬剤散布して防除し,土 壌は乾燥しすぎないように適宜碓水した. 果径肥大調査は8月1日より12月1日まで,毎月1,16日の2回,葉,果皮および果肉の無機成分含有率はN・P ・K・Ca・Mgの5要素について,12月1日に試料を採取して測定した.また,12月1日に収穫した全果実について, 果径,果実蚤,果皮墓および果皮の厚さ(赤道部)を調査した.さらに,これらほ結果枝葉数別にも検討した・ (実験2)摘果と果実肥大最盛期の窒素施用が果皮の発育に及ぼす影響 香川大学農学部構内の研究ほ場に栽植したカラタチ台大岩5号系温州ミカン16年生樹を1区3樹,合計18樹を供試 した. 1978年8月1日に某果比を20と40に摘果調整した供試樹に,初秋に窒素追肥の施用畳を変えた3区,すなわちON
区(無施用),1N区(1樹あたり硫安100g)および3N区(同硫安300g)を組み合わせ,6処理区を設定した・
窒素以外の施肥盈は,過リン酸石灰70g,硫酸カリ85gを硫安と同時に9月1日に施用した.ただし,3N区の硫安
300gのうちの200gは,9月7日に施用し,肥料焼け防止に留意した.一般の栽培管理ほ実験1と同様に実施した・
果径肥大調査は各樹20果ずつ,8月1日より12月1日まで毎月1,16日に行い,毎月1日に各樹より果径肥大調査
用果実の果径に近い果実を5果ずつ採取して,果鼠果実乱果皮蚕および果皮の厚さ(赤道部)を調査した・12月
井上 宏,日浦政兼:温州ミカンの果皮の発育に及ぼす摘果と窒素施肥の影響 49 上旬に一せいに収穫し,仝果実について果径,果実蚕を測定して,それぞれの樹別の平均値を静出し,それらの平均 値に近く,結果妓英数が3∼4枚の果実を各樹より20果ずつ選んで,果皮の厚さと果皮歩合を求めた.これらの果皮 と果肉について,また12月1日に採某した無着果枝の春菜について前記5要素の分析を行った. 以上の両実験を通じ,各肥料要素の分析方法は下記の通りである. N:セミ・ミクロケ・−ルダ・−ル法 P:リン・モリブデン再試薬を用いる分光光度計法(塩酸系) K:炎光光度計法 Ca,Mg:原子吸光分光分析法 結 果 (実験1) 摘果が果皮の発育に及ぼす影響 1‖ 果実の肥大 8月1日の果実の桟径および縦径のそれぞれを100とした指数による菓果比別果実肥大曲線は,第1図のとおりで ある.横径,縦径とも8月中旬より某果比の差による肥大の差がみられたが,10月上旬ごろまでは40区で最大であっ た.その後は莫果比の大きいほど肥大がまさり,50区で最大値を示した.10区では発育全期間を通じて常に最も劣っ た. 2.全収穫果についての調査 12月1日に収穫した全果実について調査した果実の大きさや果皮の発育状態は第1表のとおりである.8月1日の
第1表 実弟比別収穫果調査
果 径 一1果平均妥 果皮の厚さ 果皮歩合 某果比 果実数 果実収量 横 径 縦 径 % g m C6 8 2 6 6 3 4 0 9 0 6 6 7 6 7 m C6 0 6 5 7 0 2 4 5 7 5 5 5 5 5 3 3 3 3 3 m2831555460 m 110.0 115.7 137.6 134.6 14ケ.2 5 0 6 1▲ 7 7 3 8 1⊥ 3 8 3 0 7 6 6 8 7 4 4 0 3 0 1 4 4 4 6 6 4 2 2 2 2 2 5 0 5 0 5 2 2 1 5 1 6 7 5 3 3 0 0 0 0 0 1 2 3 4 5 2樹の平均値. 摘果時の葉果比は5∼10であり,着果数は100前後であった.個体差の関係もあって収穫時の果実数は10区が20区よ り少なかった.従って,果実収患は20区で最大となったが,それより葉果比が大となるほど,着果数は少なくなり, 収監は劣った.来往は横径,縦径とも50区で最大で,葉果比が小さくなるはど小となった.横径は莫果比30以上でほ あまり変らなかったが,縦径の肥大が葉果比の大きい区で優れたので,50区で最も腰高果となった.果実重ほ果径の 傾向と−・致し,葉果比が大となるほど,大果となり,果皮も厚二くなった.ただし,果皮の重患割合でみた果皮歩合は 40区が最大であった.10区は果実が小さく,果皮が薄く,果皮歩合も最低であった. 全収穫果の果実蚤,果皮の厚さおよび果皮歩合を結果枝葉数別の藩花果,1∼2枚有菓果,3∼4枚有責果および 5∼6枚有葉果についてみると第2図のとおりである.結果枝上の英数が多くなるほど大果となるが,前述の菓果比 が大となるほど大果となる傾向は直花果で最も著しい.果皮の厚さでも同じ傾向が認められたが,結果枝葉数が多く なるほど,菓果比の増大による果皮の厚さの増加の程度は少なくなった.5∼6枚有菓果では葉果比が20以上になっ ても果皮の厚さはばとんど変らなかった.いっぽう,果皮歩合をみると,全果実の平均も,2枚以下の有葉果でも40 区が最大となったが,3枚以上の有葉果では30区で最大となった. 3,葉および果皮の無機成分含有率 果実収穫時の12月1日に採集した春某(無着果枝)と果皮のN,P,K,Ca,Mg の含有率は第2表のとおりであ る.案内N含有率は30区が最高で,集束比が増減するほど減少する傾向にあった。K含有率も同様であった.逆に, P,Ca,Mg含有率は30区で最低で,菓果比が増減するほど増加した.果皮でもまったく同じ傾向であった.香川大学農学部学術報告 第34巻 罪1号(1982) 50 1呆平均蓮 一〆・‘ 一一一一
/・・一
/一一■ニ ー_ 10 20 30 40 50 葉 果 比 ・−5,6枚有葉果平均 ・㌦ 全米寛平均 ■−−=…−一 階花果′′ 第2図 葉果比別,結果枝英数別果実の果皮の肥大(収穫果) 筋2未 来果比と春葉および果皮の額機成分含有率 Ca Mg 部位 美果比 N P K 3.57 0.152 3.13 0.099 2い83 0.091 3.09 0.141 3.12 0.173 0‖193 0.98 0り191 1.06 0。161 1.37 0.164 1.29 0.204 1.29 10 2.89 20 3〃10 30 3.21 40 2.89 50 2′71 英 0.72 0.085 0い75 0.091 0.52 0.070 0、66 0..078 0..72 0..086 0 4 4 7 9 7 7 8 7 7 0 0 0 0 0 2 2 5 8 7 1 1 2 ﹁1 0 ﹁⊥ l l rl l 0 0 0 0 0 1 2 3 4 5 果 皮 12月1日採取,対乾物%.井上 宏,円浦政兼:温州ミカンの果皮の発育に及ぼす摘果と窒素施肥の影響 51 4果皮と果肉の窒素の吸収 12月1日に採取した果実を果皮と果肉に分けて化学分析して,1果実内に吸収された窒素の吸収盈をみた(第3 表).果皮,果肉とも菓果比が大となるほど乾物遥は大となったが,窒素の吸収鼠では果皮が30,40区,果肉では30 区,合計では30区で壊高値を示した.1果実の窒素吸収良に占める果皮の吸収藍の割合は40区で47‖8%と最も高く, 10,20区で39%と低かった. 欝3表 薬果比と果実の窒素吸収鼠 乾物歪(g) 窒 素 吸 収 鼠(mg) 果 皮 果 肉 果 皮 果 肉 計 10 7.03 10..03 78.7(39”5) 120.4 199¶1 20 7.38 10.51 827(39.4) 127.2 209.9 30 9“19 12..22 114.9(41.8) 160“1 275.0 40 9,.74 11小94 114.9(47.8) 125u4 240.3 50 10.13 13…36 108.4(44.8) 133.6 242“0 ()内は果実全体に占める果皮の窒素吸収鼠の%. 肥 大 指 数 150 100 8 8 9
9 10 10 11111月
1 16 1 16 116 1 16 1日
欝3因 業果比,窒素施用塩別果実肥大曲線香川大学農学部学術報告 第34巻 第1号(1982) 52 (実験2)摘果と果実肥大最盛期の査索施用が果皮の発育に及ぼす影響 1“果実の肥大 8月1日の果実の桟従および縦径のそれぞれを100とした指数による集束比と窒素施用虚別果実肥大曲線は第3図 m m 4 4 4 果 皮 2 0 8 4 4 3 の 呼 さ 12 月 1 日 第4図 美果比,窒素施用鼻別果実の果皮の肥大 第4表 其果比,窒素施用遠別収機具調査 果 径 美果比 窒素処理 果実数 果実収塩 横 径 縦 径 1東平均重 果皮の厚さ 果皮歩合 kg 188.0 23.989 222.7 27.704 191.7 24.365 117.3 16.833 109.7 16.532 100.0 16.190 m C8 0 5 7 5 9 4 4 3 7 8 9 5 5 5 5 5 5 m C1 9 9 5 0 7 9 6 00 0 1 1 6 6 6 7 7 7 g mm 127.6 3.84 25.3 124.4 3.89 26.1 127.1 3.97 25.7 143.5 4.30 28.3 150.7 4.51 29.4 161.9 4.72 31.0 N N N N N N O 1 3 0 1 3
i ′−−−1
3樹の平均値. のとおりである.桟径,縦径とも摘果0り5か月後の8月中旬より其果比の差による肥大の差がみられ,20区より40区 で呆径は大となった.この傾向は縦寝でより明らかであった.さらに.9月上旬の窒素施用による肥大への影響が10 月.上旬どろから認められ,窒素施用鼻が多いはど果実は大となった.12月1日の来往の比較では40区で窒素の影響が 大で,20区で/J\であった. 果実肥大に伴う果皮の厚さの変化をみると第4図のとおりである.果皮の厚さは9月1日に最低値を示し,以後ほ 次第に厚くなった.葉菜比の果皮の厚さへの影響は9月上旬から,窒素施肥の影響は10月上旬からあらわれ,菜果 比が高いはど,窒素施用鼠が多いはど果皮は厚くなった.窒素施肥の影響は40区で大きく,20区で小さかった. 2.仝収穫異についての調査 12月上旬に収穫した仝果実についての成絞を第4表にまとめた.着果数は菓果比20区で1樹平均200呆,40区で100 果であった.40区で20区より果実の肥大がよく,果皮の厚さ,果皮歩合とも大であった.20区では窒素施肥の影響は はとんどみられなかったが,40区においては施用忠が増すはど大束となり,果皮の厚さ,果皮歩合とも大であった. 3小 葉および果皮の鯉械成分含有率果実収穫時の12月上旬に採取した春某と果皮のN,P,K,CaおよびMgの含有率は第5表のとおりである.其内
N含有率は菓果比の低い20区で40区よりも高く,両者とも窒素施用監が大となるはど高くなった.果皮では20区で窒 素施用盈の増加にかかわらずN含有率はほとんど変らなかったが,40区では窒素の施用盈が多いほど高くなった.井上 宏,日浦政兼:温州ミカンの果皮の発育に及ばす摘果と窒素施肥の影響 欝5真 美呆比,窒素施用盈と春菜および果皮の無楓成分含有率 53 部位 葉果比 窒素処理 N P K Ca Mg O 1 5 5 0 7 1 9 5 1 5 2 一4一〇 7 8 8 7 7 6 6 7 6 6
3 3 2、2 2 2 0 0 0 0 0 0
0.151 0.156 0.157 0.154 0.173 0.160 0.055 0.057 0.058 0.057 0.059 0.063 2 0 9 8 0 2 3 9 3 0 9 9 1 1 9 2 2 1⊥ 6 5 5 6 5 5 1⊥ 1 0 1 1 1 0 0 0 0 0 0 4 4 0 1 7 00 6 5 6 2 4 6 9 0 1 8 9 0 9 9 9 9 9 9 2 3 3 2 2 3 0 0 0 0 0 0 N N N N N N N N N N N N O 1 3 0 1 3 0 1 3 0 1 3 /i 其 果 皮 12月1日採取,対乾物%. 第6表 美果比,窒素施用鼻と果実の窒素吸収鼻 乾物望(g) 窒素吸収盈(mg) 集束比 窒素処ヨ盟 果 皮 果 肉 果 皮 果 肉 計 8.89 11.24 85.3(40.4) 8.56 11.41 81.3(40.9) 8.55 11.35 82.1(41.3) 11.10 12.03 102.1(45.9) 12.28 13.45 115.4(48.8) 13.60 13.33 130.9(51.0) 125.9 211.2 117.5 198.8 116.9 199.0 120.3 222.4 121.1 236.5 125.3 255.9 N N N N N N O r1 3 0 1 3/i /i
()内は果実全体に占める果皮の窒素吸収監の%. 同じ施用鼠では40区より20区で高かった.莫内P,Mg含有率はNと同様窒素施用意が増加するほど高くなり,40 区で20区より高かったい果皮のP,Mg含有率は其のそれとはぼ同じ傾向を示した・其内K,Ca含有率は窒素施用 最が増すはど低下したが,集束比の関係ではKは40区で高く,Caは20区で高かった.果皮のK,Ca含有率もはぼ 同傾向であった. 4‖ 果皮と果肉の窒素の吸収 果実収穫時の12月上旬に採取した果実の果皮,果肉別の窒素吸収鼠は第6表のとおりである・果皮および果肉の乾 物垂は集果比の大である40区で20区より大であったが,窒素処理による乾物藍増加が40区で認められたのに対し, 20区ではほとんど認められなかった.窒素の吸収鼠でも20区では窒素施用の影響は認められなかったいいっぽう,40 区では窒素施用患が増すほど果皮,果肉とも吸収品が増加した.1果実の窒菜吸収盈に占める果皮の吸収藍の割合は 20区,40区とも窒素施用鼠が増すはど大となったが,とくに40区で著しかった.集束比別にみると,果実が小さい20 区で窒素吸収扱が少なかった. 考 察 1果皮の発育と英数 生理的落果の終了時を仕上げ時期として実施される温州ミカンの摘果作業は着果数を制限して隔年結果を防止し・ 連年高品質果の多収を・目的としている.摘果の基準として1枚の菓が約4gの果実を生産することになる菓果比20∼ 25を適当としている.事実,これより菓果比が少なければ結果過多となって果実は小さく,多ければ結果過少となっ て大果とはなるが品質は悪くなる.西田(4)は9年生杉山系温州ミカンを供試し,葉果比10,20,30,40,50および60香川大学塵学部学術報告 第34巻 第1号(1982) 54 の樹について果実肥大を比較したところ,莫果比が大となるはど大果となり,果皮歩合は高くなったが,菓果比20以 上で果皮歩合の高くなる程度は少なかった.本実験でも莫呆比が10から50へ・と大となると大果となり,果皮は厚くな ったが,果皮歩合は菜果比50ではむしろ30,40区より小となった.果実が大きくなって果皮の厚さが大となっても, その厚さの程度によっては必ずしも果皮歩合まで大となるとは限らない.このように果皮歩合が増大しないのは果後 に対する果皮の厚さの割合の関係もあるが,果皮にくらべて比重の大きい果肉の肥大の程度が大となったことを示し ている.本実験では適正葉栗比を超えた40枚までの範囲では某が多くなるほど果皮が発達して大果となり,果皮歩合 も増大した. 結果枝の着菓数と果皮の発育の関係についてほ筆者ら(3)がすでに報会しているとおり,若葉数が多いほど大乗とな り,果皮も厚くなる.本実験で英米比の大小による果実肥大調査の収穫呆について結果枝着基数別にも分類して菓果 比と果皮の発育の関係をさらに追究したところ,直花束や結果枝に実の少ない果実は葉菜比が大となるほど大異にな り,果皮が厚くなる傾向が著しかった.しかし,結果枝葉数が3枚以上になると英米比が大となるほど大束となった が,果皮の厚くなる程度は少なくなった.いっぼう,果皮歩合でほ3∼6枚有集束が某果比30で最も高く,0∼2枚 有業果では某果比40で最高となった.これらのことからみて,樹全体としての着葉数を考え.る集束比が大きくなると 果皮,果肉の両者の肥大を促進して大束となるが,果実に近い結果枝上の菓は果肉よりも果皮の肥大に強く影哲を与 えるようである.某果比が小さい場合には,結果枝上の葉数の多少による果皮の厚さの差が大となった. 2.果皮の発育と窒素施肥 鳥潟ら(5〉ほ晩夏に過鼠の窒素質を施肥すると,温州ミカンの果皮の発育を助長し,果皮歩合や果皮の厚さを増大し て浮皮果発生の原因となることを指摘した.本実験でも9月上旬の窒素施肥により果実肥大とくに果皮の肥大が促進 されることを示したが,葉菜比との組み合せで検討すると葉菜比20では施肥の影響が少なかったのに対し,菓果比40 では影響が強くあらわれた.この実験で,果実発育に伴う果皮の厚さの変化をみると摘果1か月後にはその効果があ らわれ,莫果比が多い区で成熟期に向って果皮は厚くなったが,9月上旬に窒素を施肥すると1か月後の10月上旬か ら果皮の厚さをさらに増大させ,窒素施用鼠の多いはど果皮は厚く,果皮歩合も高くなった. 前項でも述べたように,適正集束比とされている20枚区では窒素追肥の果皮発育に対する影響が弱く,やや其の多 い40枚区で影響が強く出たのは前者で果皮発育に光合成産物の余裕が少なく,後者で若干余裕があって窒素の供給に 対して果皮の肥大で反応したものではないかと考える.このことは,葉内N含有率が装束比40区で20区より若干低 かったことからもうかがえる.また,1果実内に吸収された窒素鼠の果皮と果肉の分配割合をみると,菓果比20区で は果皮の窒素吸収藍が果実全体の40∼41%と施肥による影響はほとんどみられなかったのに対し,集束比40区では施 肥盈が多いほど,絶対値の増加もさることながら,果皮への分配率も大となった. 文 献 (1)井上 宏,官本省ニ:園芸学会昭和45年皮秋季大 会研究発表要旨,78−79(1970). (2)井上 宏,杜和彦:園芸学会昭和46年皮秋季大会 研究発表要旨,66−67(1971) (3)井上 宏,中畑仁志:園芸学会昭和50年度秋季大 会研究発表要旨,485(1975) (4)西田和男:広島県果樹試験場研兇報告4,ト12 (1978). (5)鳥潟博高,増井iE夫,鈴木 登:園芸学研究集録, 7,42−48(1955) (1982年5月31日受理)