情報リァフシーの育成と図書帽サービス
情報リテラシー科目の
eラーニング化に伴う学習支援体制
小松泰信
1.はじめに
大学における情報リテラシー教育は,大学教育 の基礎となる情報活用能力を獲得し,生涯にわた る自立的な情報活用能力の基礎を獲得するものと して位置づけることができ乱したがってそれは, 入学した全学生が学ぶ内容でなければならず,大 阪女学院では導入必修科目として開講してき㍍ カリキュラム全体がその学習内容を前提として進 められ,それに続く科目群と有機的連携が図られ ている。その教育内容を支えるためには,大学が 有するさまざまな資源を活用し,あらゆる学習支 援者が重層的に学習を支えることが求められた。 本稿では,情報リテラシー科目にeラーニング 手法を適用し各学習者の学習進捗情報の共有を図 ることで,司書や教務スタッフなどのさまざまな 学習支援者が,時と場を超えて学習者を支える支 援体制を示す。学生は教室から資料のある閲覧室 へと場を変えて学習を進めていく。授業は一担当 教員のみが教室で行うものではなく,さまざまな 支援者が必要なあらゆる場で連続的に学習を支え て成立するものである。eラーニングは,学習支 こまつ やすのぶ:大阪女学院大学 キーワード1図書館,司書,学習支援,学習者情報.学習管理 システム.eラーニング,情報一」テラシー教育, ティームティーチング 援を教室から解き放った。その過程で重要な場と して浮上した大学図書館と司書の役割について述 べる。2.eラーニングと教室外学習
eラーニングとは,広義には情報技術を使った すべての学習形態という見方もできれば,授業な どの特定の場における集合教育と対比して,非同 期・オンライン型のWBT(Web Based Training) を狭義には意味することもあるリ。ここでは,学 習管理システムを用いて集合教育と非同期・オン ライン型学習を連携・併用させた,ブレンディド・ラーニング(Blended Learning)の学習形態に
もとづいて述べる。
LMS(Learning Management System)あ
るいはCMS(Course Management System)
といわれる学習管理システム1は,個々の学習者 がネット上で認証を行い,必要な教材を配信・管 理し掲示板等のコミュニケーションツールに加え, テストや課題提出他をインタラクティブに行うこ とで各学習者の学習の進捗や成績管理を行うシス テムである。 日常的に教室において,紙へ一スで出席確認や 小テストなどを実施した場合も,その場で学習情 報が逐次発生する。しかし学習管理システムを通 して学習を実施すれば,その上で実施された学習 情報はシステム上にデジタル情報として即時的に
図1 学習進捗情報の共育 ㌧._一ノく .「、 }㌣ ・漂長真橋竃撃・撮出 ・質問。意見交換 ・テ幸亭承ト;キ育
LMS(学督管理システム)
蓄積され,コース全体の中でのトータルな学習情 報の進捗として鳥鰍することができる。ここでい う学習情報は,学習者と学習支援者相互のアセス メント情報と捉えることができる。各学習者の現 時点の到達点がどこであり,何に問題を抱えてい るかを共有することで,その解決に役立てること ができる。 学習者にとっては,教室内外を問わず学習管理 システムにアクセスすることができれば,図書館 閲覧室や自宅でもインタラクティブな学習が「い つでもどこでも」継続可能になる。また学習を支 援する立場からは,各々の学習者の進捗を個別に 把握し支援することができることから,教室を離 れた非同期の個別対応が可能になる。さらに一人 の教員のみではなく複数の学習支援者が学習情報 を共有することで,さまざまな立場からの支援を 一人の学習者に対して連続的に提供することがで きることになる。このように,eラーニングによって成立した
「いつでもどこでも」学習ができるという条件は, 教室という統制環境から,教室外の自由な時と場 所に学習の場を広げることになった。キャンパス 内はもちろんのこと自宅や通学経路にもインタラ クティブな継続的学習が可能な教材を用意するこ とができるようになった!。これは,必ずしも学 習に適した場ではないところにまで学習機会が提 供される可能性が広がったことを意味している。 教室外の学習が有効に行われるか否かを知る上 で,教室外の学習環境は,従来より重要な要素と して検討されなければならない。こうした観点か ら,教室外の日常空間の中で学習がどのように継 続されたかを知るために,学習実態調査を実施し た3。その調査結果の一つに,調査対象者の多く が自室と机を持っているにもかかわらず,そこが 学習の場とはなっていないことが示された≡〕・ このことから,eラーニングにおいて見落とされ てきた課題の一つは,教室外の具体的にどのよう な場が学習環境としてふさわしいのか,また教室 外学習を実質化するためにはなにが必要なのかで ある。 設置基準では,従来から学習に必要な時間を算 出し,標準45時間を1単位として認定を行っている。これは教室授業時間に教室外学習の時間を加 算して算出したものである。大学審答申等におい ても,教室外学習の実質化を図るためにそこでの 学習内容を指示するシラバスの充実や,学習の場 としての図書館等の学習環境整備が必要とされて きた。しかし,図書館サービスを実際に行う図書 館員についての言及は乏しいヨ〕といわれる。eラー ニング化によって教室外学習は,教室内と同等の 学習支援が行える環境となる。あるいは,資料を 身近に手にとって利用できる図書館は,学習内容 によっては教室より学習を進めるのにふさわしい 環境となりうる条件が整ったといえる。
3.学習情報の共有と
ティームティーチング
情報リテラシー教育の担い手として,教員に限 らず,大学内のどのような人的資源を活用すべき かを検討し,「具体的な記述を入れるべき」一〕との 指摘に対応する形で,「学術情報基盤の今後のあ り方について」ミ〕では,大学図書館の教育支援サー ビス機能の強化と情報リテラシー教育の推進を, 大学図書館のサービス機能強化の一つに挙げてい る。ここで述べられているのは,複数の学習支援 者によって支えられる情報リテラシー教育の姿で ある。 大学および短期大学への進学率が50%を超え る過程で,大学に入ってくる学生には,学力・学 習動機においても極度の多様性が生まれる可能性 があり一,導入教育においては顕著にその傾向が 現れる。また全学必修科目として情報リテラシー 科目を位置づけ,現在の授業形態で少人数教育を 実施しようとした場合,多くの教員を張り付ける 必要が生じる。教員間での学習内容およびその進 捗に関する連携をとるのは不可欠である。加えて 多様化する学生を受け入れる大学の教育が効果を あげるためには,授業担当教員一人の工夫と責任 に任せるのでなく,司書をも含めた人的支援スタッ フがチームとなり関わるシステム作りが欠かせな い。 このティームティーチングの基盤となる情報が 学習情報の共有である。eラーニング環境下では, 学習支援者がそれぞれの立場で接した学習者の概 括的問題を,現象的に持ち寄って調整するのでは ない。学習管理システム上に進捗する各学習プロ セスを共有し,その個別の事実情報を前提に対応 することになる。学生は日々の学習過程で,教室 で図書館であるいはそれ以外の場所で,PCを利 用したり,閲覧室で資料を手にしたりして多様な 時と場において学習を進めてい㍍ 学習者が問題に直面した場合,eラーニングに おいては,一般的にeメール等によるオンライン による問い合わせで課題解決を行うことが求めら れる。その選択肢は担保した上で,近くに支援者 がいて,直面する具体的かっ個別の課題を把握し て,必要な資料のある場所で支えてくれる。その ような学習支援者と資料がともに存在する場が図 書館である。教員・学習支援者間の学習進捗情報 の共有は,図書館をそのような学習空間に変貌さ せる。教室内外の場を越えて支援者が存在し継続 的な支援の可能な学習の場がそれである。 これを従来の図書館と教育の関わり方と対比す れば,図書館員が教室に出向いて授業の数コマを 担当し,履修者全員に対して情報検索や参考資料 の利用法などの概説的な図書館の使い方を伝える ものとは様相が異なる。顕在的には見ることのな いそれぞれの学生が進める論文作成過程に即して, 学生がぶつかっている個別の問題に対応した支援 を行うことにある。図書館では,他の学習空間に はない学習者の学習進捗状況とそこから発生する 個別の学習二一ズに応えるための資料が存在する。 その特異性に加えて学習者の学習二一ズを的確に 把握できる支援スタッフである司書もいることか ら,教室外学習における図書館がより重要な場所 となった。4.大阪女学院における導入必修科目
としての情報リテラシー
4−1 大阪女学院1こおける情報リテラシー教育 大阪女学院は,大学および短期大学の全学年を あわせて!,000人に満たない小規模校である。1 学年はそれぞれ,150人余りであり,各クラスは 20∼30人の少人数周密教育を実施している。一般的に大学で実施されている r情報リテラシー教育」の内 容3〕が情報通信技術(以下 ICTとする)寄りで必ずしも 図書館利用を意味しない場合 が少なくない状況の中で,全 学必修科目として図書館を活 用した科目を実施してきた。 大阪女学院における情報リ テラシー教育の歴史は,1980 年代にさかのぼることができ る。当初は選択科目として, より図書館利用教育に近い内 容として開講された。その後, 短期大学で導入必修科目とし 表1科目スケジュール 週 集合学習過程 小論文作成過程 第1週
謔Q∼3週
・論文作成への招待 E情報の扱い方 テーマ選択 ・参考資料を中心にした図書館演習 事前調査第4∼6週
・書誌・索引データベースについて 文献リスト シアウトライン第7∼8週
・インターネット情報の検索と流通 EWeblogの活用 ERSSメタデータ検索 引用情報の組織化 第9∼10週 ・批判的資料の読解E新聞書己事読解 ・論文読解 最終アウトライン 第11∼13週 ・英語情報の収集と言己録 E[1頭発表準備 序論作成 茁ェ発表 て「研究調査法」が始まったのは1998年度から であり,大学でも同様に,導入必修科目「情報の 理解と活用」が2004年度の開学時より始まって いる。並行して同科目のeラーニング化は,2001 年の短大でのパイロット授業に始まって,2004 年の大学開学を期に全学的な実施に至っている。 2007年度現在,図書館を活用する情報リテラシー科目は,ICTリテラシーを中心にした導入
必修科目「デジタルネットワーク基礎」とともに 導入科目群を形成している。「デジタルネットワー ク基礎」では,OAアプリケーションやネットワー クシステムの利用法に始まり,情報セキュリティ やWeblogによる情報発信等を学習内容としてい るτ〕。これら全学必修の導入科目群は,学習管理 システム上で運営されているため,学習内容は相 互に有機的な連携が図られている。 4−2 「情報の理解と活用」および 「研究調査法」の概要 学習方法は,上記少人数クラスによる週1回のPC教室での集合授業の形態をとっている。1年
次に開講され,大学での学習の基礎となる調査研 究能力と生涯にわたる自立的学習能力を身につけ ることをねらいとする科目である。 この科目の特徴は,コース全体の課題設定にあ る。13週のコース全体を通じて小論文を完成す ることを課題として設定し,その作成過程におい て,情報の取り扱い方を踏まえて図書館でのレファ レンス資料の使い方や書誌データベースの検索方 法を学び,インターネット上の情報源へのアクセ スや情報発信およびコミュニケーションの基本を 実習し,加えてそれら資料の批判的読解を身につ ける。情報要求の認識,選択,整理,統合,発信 といった情報活用の一連の流れを体験していく昌㌧ ここでは,図書館利用方法を列挙して教えるよう な手法はとらない。重要なのは,設定された課題 に対して図書館を具体的に使いこなさなければ結 果として前へ進めない,という設定である。した がって,学生にとっては,「今後たぶん役立つで あろう」といった一般的かっ抽象的な内容ではな く,科目の具体的な学習プロセスに関わる具体的 かっ切実なものとなる。 各週に実施されるコーススケジュールには,二 つの流れがある。コース全体を通じた小論文作成 の流れと,それに対応した情報活用のプロセスで ある。まず,小論文は,自由に設定した各自のテー マに沿って調査,アウトライン,文献リスト,引 用情報の組織化,最終アウトラインと序論作成, 口頭発表の順に進められる。 この集合学習において実施される学習プロセス と小論文作成の二つのプロセスは,相互に関連が ある内容である。小論文作成にっいてもそれぞれ の時期に集合学習で説明がなされ,課題提出期限 が設定されている。各週に実施される情報検索などの学習内容を踏まえて課題は提出される。しか し論文作成過程は,自由なテーマを追うことから, その内容および進捗過程が時間を経るに従って各々 に多様化していく。この多様化した学習過程にお いて,学習管理システムによる個別進捗に沿った 個人ごとの学習情報の把握が効果を上げる。 4−3 学習管理システム上の展開 学習管理システムでは,教材配信は一部サンプ ル教材を除いたすべての教材が電子化され,シス テム内にある。同時に毎週の授業では紙媒体でも 教材を配布する。このことで教材へのアクセスロ グは学生の閲覧活動全体を反映したものにはなら ないが,ネットアクセスのない場でも継続して学 習を進めることが可能になる。さらに何らかの事 由で授業に参加できなかった学生は,常時システ ム上から教材を入手することができる。学習管理 システム上にのみ集中実施されているのは,小テ ストや課題提出や掲示板などの双方向コミュニケー ションの部分である。この学習進捗情報の集積に よって,学習成果の蓄積が行われている。 従来型の集合学習において,提出課題を紙媒体 でやり取りする場合と比較すると,紙媒体は,添 削の過程で教員,学生いずれかの側に物理的に移 動する。学習の進捗過程で過去のテストや課題は, 手元に残らず評価点等の集計情報を別にすれば, テスト内容や添削課題の全体を鳥目散することはで きない。結果として学習者および学習支援者の双 方にとって,学習プロセスは一過性のものになり, 相互参照や遡及的に参照してプロセスを確認する ことは困難であった。 それに対して学習管理システム上の学習成果物 が蓄積されるとともに,常に学習過程の詳細を翻っ て参照できることから,学習情報の多様な活用が 可能となった。論文の作成過程は,さまざまな試 行が繰り返し続けられるが,そのプロセスを学習 者・学習支援者ともにふり返るためには,作成過 程のアーカイブが不可欠である。また,本科目で の小論文作成は,2年次以降の科目のレポート・ 小論文作成のための練習と位置づけられている。 そのため各論文のアイデアは秘匿せず,作成プロ セスそのものを学習者相互の教材として積極的に 活用している。全学生が有するWeb1ogシステム との連携を図ることで最新の作成状況のリアルタ イム共有も実現している。 テスト・アンケート内容の詳細は,期末テスト・ 日常の小テスト・セルフテスト・事前事後アンケー トの4種類の実施形態に分けることができる。学 習過程の前後に取るアンケートは,学習者の状況 を主観的な所見を含めて把握でき乱期末テスト
をWebべ一スで実施する意義は,一斉電子採点
によって標準偏差等の統計情報も瞬時に得られる ため情報処理上の省力化に有効であった。 しかし,本科目において学習管理システムが最 も効果を発揮するのは,日常の小テストおよびセ ルフテストであろう。従来型のテストによる評価 は,学習者の査定のために使われるケースが多かっ た。期末テストがそうであるように,学習者がテ スト結果に関する情報を入手しても学習そのもの を軌道修正することはできない。いわば「形成的」 ではない「手遅れの評価」である。学習管理シス テム上のテスト・アンケートは,解答後すぐに採 点結果を提示できるリアルタイム評価である。そ のため,小テストを各週の節目で実施することで 学習成果を確認する。この情報をもとに,学習者 と学習支援者が各学習者の学習プロセスを修正す ることができる。 さらにセルフテストは,学習者にのみ解答結果 を表示し学習支援者には結果を示さない。学習者 自身が自分の理解度を常時確認するために使われ る。 4−4 学習管理システムを支える運営体制 ネット上の学習管理システムを管理運営する上 で,教職員が個人的に取り組むのではなく全学共 通科目等で組織的に取り組む場合には,運営体制 の確立が必要になる。年度ごとのカリキュラム登 録,学期ごとの教務システムから学習管理システ ムヘの履修情報の移行,電子教材の作成支援,一 部購入教材の著作権処理,システム稼働上のメン テナンス等々である。 同科目の教材はほとんどがオリジナル教材であ り,教員スタッフに司書が参加して企画・製作を 行っており,」都マルチメディア教材のみ購入してい引こうした教材の電子化については,情報 処理スタッフが担当し,コース内に配置していく。 また科目・履修者情報登録は,教務スタッフと情 報処理スタッフの連携で教務システムからのデー タ移行が実施され,学期期間中のコース運営が可 能となる。 学習管理システム上の履修およびシステム情報 設定が終わり,学期が始まると,履修者はそれぞ れのクラスに割り振られ,担当教員がコースを運 営する。各クラスの課題提出や小テストの運用に ついては,それぞれのクラス担当教員がそれぞれ の進捗に合わせて調整していく。他方,教室外の
学習については,主にICT操作スキルに関連す
る部分を情報処理スタッフおよび学生サポーター が支援し,資料および情報検索については司書が 学習支援にあたる。教員との問では,常時電子メー ル・掲示板等によるオンラインによる問い合わせ ができる。また,これらの学習支援スタッフが, 相互に連携を図るための会議が実施されてい乱 4−5 カリキュラム全体との関連 今ひとつ特徴を挙げるとすれば,学習内容の科 目内での関連にとどまらない科目外のカリキュラ ムとの関係である。カリキュラムにおいてこの科 目が大学教育全体の基礎となる導入科目であると いう認識から,具体的学習内容が同科目修了以降 の科目内容と密接に関わることである。 例えば,同科目で教える論文フォーマットは,社会科学分野で標準的フォーマットであるAPA
Sty1eを全学統一で採用している。APA Sty1e
は,これ以降卒論までの英語・日本語レポートの すべてで求められる。幾度も科目を超えて繰り返 し求められる学習内容によって,この科目で学習 されたことは反復・強化されていく。また情報検 索対象となるDBの幾つかも,それ以降の教育内 容を意識したものとなっている。 一般的に,大学図書館を活用した情報リテラシー 教育の必要が認識されながらも,r教養教育及び 各専門分野における教育との連携が不十分」ヨ〕で あるとの問題点が指摘されるが,このようにリテ ラシー教育外で実施されるあらゆる教育内容を, 学習項目レベルで把握し,それを取り入れた学習 内容にすることで,科目問の関連と連携が実質化 している。 その結果として,図書館利用の継続化を一つの 数値的指標で示すとすれば,図書の貸出冊数を挙 げることができるだろう。図書館における学生の 図書貸出条件は,冊数無制限で設定されている。 2006年度の1人あたりの平均貸出冊数は,1回生で大学28冊,短大30冊であるが,2回生で大学
57冊,短大42冊となっていく。これは,大学に おける全国的平均貸出冊数と比較すれば特筆すべ き数値であることはいうまでもない。5.eラーニング化と
図書館の学習支援機能
5−1 大学図書館のeラー=シグ支援ACRLの「eラーニング支援ガイドライン」
は,大学図書館がeラーニング支援をどのように 行おうと考えているかを示すものとして捉えるこ とができる。ここでは,eラーニングコミュニティ の構成員を伝統的なキャンパス構成貝と対比し, 同等のサービスを提供するという視点が示されて いるmが,ブレンディド・ラーニング環境でのe ラーニング支援と伝統的サービスの統合的視点は 示されていない。 さらに,2007年!月に開かれたフォーラムに おいて「コース管理システムにおける司書」の殺 害1」を,学習管理システム環境下でのブレンディド・ ラーニングに今一歩踏み込んだ議論がなされてい るu〕。ここでは,本稿で述べたような利用者側の 研究や学習の流れに沿ったサービスの可能性を示 唆しながらも,具体的にはマクロ的なコース運営 全体について関連委員会メンバーや教員・関係ス タッフとの連携を図り,ミクロ的なアプローチで は各クラスに対して電子的資料や電子サービスの 提供に言及するにとどまり,かならずしも学習情 報そのものの活用についての具体的言及は見られ ない。 本稿で述べた支援アプローチは,各学習者の学 習過程への着目とその基礎情報となる学習情報基 盤の共有を踏まえたところにある。eラーニング 環境の構築には,教材作成やシステム設定の段階で多くのスタッフが協力して一つのコースが立ち あがる過程を示した。クラスが始まって以降も, さまざまな学習支援を行うことで強化された学習 成果が実現する。学習支援の具体的姿としては, 電子的なメンタリング,チュータリング,ヘルプ デスクなどさまざまな支援モデルが検討されてい るが,それらはオンラインによる支援モデルにと どまってきた。 キャンパスにおける具体的な学習空間とその実 現場での支援までを視野に入れるのが同科目のア プローチである。今後,教科内容と学習情報共有 の深度が深まるにつれて,図書館という場は,今 にもまして学習上重要な場になることが予想され る。 5−2 司書の学習支援1こついて 司書と教員の関わり方は,司書スタッフが一部 クラスを担当しているために,教室に出向いての 教育への参画も以前から実現してきたが,学習情 報の共有によって新たな支援モデルが出現した。 すなわち,従来の利用教育に見られる集合教育的 アプローチに加えて,個別支援に当たるレファレ ンスサービス的アプローチである。教室を離れて も学習情報は支援者によって参照できるために, レファレンスカウンターの前にやってきた学習者 に対しても,教室と同じく連続的な個別支援が成 立する。eラーニング環境にあって,「利用教育 とレファレンスサービス」は,個々の学習者を要 にして統合されたと見ることができる。
6.おわりに
大学の完成年次を迎え,ここまでの実践を踏ま えたリテラシー科目のeラーニング化の過程で浮 かび上がった今後の課題もいくつかある。まず, 本科目における司書の役割は,学習内容が図書館 の活用であるため明確な学習支援上の位置づけを 得ることができた。今後学習支援において図書館 司書のサービスがどこまで展開しうるのかを考え るとき,主題を持たない司書が教育に関わって支 援しうる範囲はどこまでかという問題も浮上する だろう。専門主題分野に関わる内容が浮上した段 階で,主題を持たない司書の関与は,情報検索な どにおのずと限定されるのではないかという議論 である。 一つには各専門分野の学習支援スタッフとの連 携や主題を持った司書の必要性が考えられる。し かし専門学問分野の方向にのみ学習教育の地平は 広がっているわけではない。学習支援は別の広が りを有すると考えることもできる。 学生は,それぞれの専門的課題を追究しながら, さまざまな学習を総合してキャンバスライフを送っ ている。ある教科でつまずいている学生は,複層 的に他の科目でも苦戦している場合が少なくない。 このような場合には,特定分野の知識的アプロー チを繰り返しても解決しないのが通例である。む しろその学習者の全人的な学習スキルを見渡した 解決が有効であろう。 次に当科目は,教室での集合授業とネット上の コミュニケーションを併用する形態であ孔しか し教室での集合学習が必須か否かは,今後検討課 題として浮上することが十分考えられる。そうし た観点から一部クラスを,教室を持たないネット 上の通信のみで実施する形態で実施した。ネット 上のコミュニケーションのみの学習過程で明らか になった問題は,動機が明確な学生の学習進捗は 加速化されるのに対して,動機が相対的に弱い学 生の学習が進み難い傾向が見られることでもあっ た。動機づけの明確でない学生にとってeラーニ ングが有効に働くためには,内容的・技術的に優 れたコンテンツの存在だけでなく,学習支援者に よるアシストが極めて重要と考えられる。 また,テキストの電子化によって,より容易に なった論文の票u甥の問題がある。これはむしろ世 界的に教育現場で顕在化しつつある問題といえる が,インターネット上には,ウィキペディアに代 表されるような参照情報が多数存在する。それら を情報源とした答えは,簡単なコピーで済むため, 追い詰められた学生には誘惑的である。ここ数年 散見されるようになった論文の電子的副窃は,他 の科目においても潜在的課題となっており,学習 過程の電子化と共有によって可視化されたといえ 乱むしろ情報リテラシー科目の学習課題とし, インターネット環境下の学術情報における倫理的課題として重点的にとらえ直す予定である。 最後に,司書による学習情報の共有には,情報 内容の範囲に相応の情報セキュリティと教育に対 する今以上の責任も生まれ乱その責任を担いう る司書でなければ連携は成立しない。図書館の運 営を専任司書が行っているのも本学の取り組みに とって重要な条件となってい乱 く引用文献> !)経済産業省商務情報政策局情報処理振興課編r eラーニン グ白書:2007/2008年版」東京電機大学出版局.2007,p.9 2)高橋秀明&小松泰信「e−Loamingシステムによる学習の成 立基盤について:学習場所のあり方」日本心理学会第70回 大会一般研究発表,2006.11.4 3)長澤多代「大学授業改革に求められる大学図書館の役割」 r日本図書館情報学会誌』vol.4no.3.2002,p.105−120,p. 110 司)研究環境基盤部会学術情報基盤作業部会大学図書館等フー キンググルーブ『第13回議事録』2006.2.14 くhttpl〃211,120.54,153/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu 4/gijiroku/O02−1/06041301.htm)[弓1用日:2007−!1−5] 5)文部科学省「正学術情報基盤としての大学図書館等の今 後の整備の在り方について」『学術情報基盤の今後の在り方 について(報告)』2006.3 くhttp:〃www.mext.9o.jp/b_menu/昌hingi/9ijyutu/9ijy utu4/toushin/060410ユ5.htm〉[引用日12007−!ユー5] 6)文部科学省「4−1情報リテラシー教育」『平成17年度 学 術情報基盤実態調査結果報告」2006.12 くhttpl//www.1]コ眺t.go.jp/b_n〕enu/toukej/00ユノi1〕d眺20/ 07012502/OO1.htm〉[引用臼:2007一ユ1−5コ 7)小松泰信「情報導入科目におけるLMSの適用と運営」『大 阪女学院大学紀要』no.2.2005,p.66−67 8)丸本郁子「情報リテラシー教育の評価」『大阪女学院短期 大学紀要」no.30.2001,p.49 9)前掲5〕
10)As畠。ciation of co11ege&res舶rch libr刮rie昌;divi畠ion
of tho Amerioan Library As畠。ciation,G阯〃ε工三η鮒加r D18亡α舳工ωrη1兀gム伽αrツS例1c直s,2004.6.29
くhttp1ノノwww.邑1孔。rg/a1a/acr1/acr1standards/9uide1ine 昌distance1earning.ofm〉[引用日:2007−11−5]
11)ACRL/In昌truction Section Current I畠sue Discussion
Digest2007Midwinter,五一工εαrπ三兀g Sραo鮒”らrαrミα祀s 加Co〃舵Mαπαgε舳耐Sツs亡舳8.2007−1−21 くhttp=//www.日1a.org/a1目/aor1bucket/is/conferencesacr l/discforum2007mwb.cfm)[引用日:2007−11−5] 〈注> 1 2007年度大阪女学院では,正規カリキュラム授業にはWeb CTを採用し,Intemet Navigwar巳およびMood1eを併用し ている。 2 大阪女学院では,携帯ディバイスのネット接続環境に加え て,2004年度から全学的にiPodでのポッドキャスティング による教材の配布とオフラインでの携帯を実施している。 3 従来から履修者全員に対してWebによるアンケート調査 を常時実施しているが,履修者中の20余名に対し,最終ア ウトラインの課題提出期間の1週間にわたる行動内容を24 時間追跡する調査を実施した。この調査では,就寝時を除く 行動と場所を15分ごとに報告する方法で行い,調査終了後 インタビューを実施する質的手法をとっれ 4 Martin A.Trowの描いた高等教育システムの3段階移行 に沿えば,ユニバーサルアクセスの時代に入ったことが現場 では実感される。 (2007.11.12受理)