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季刊国民経済計算(供給・使用表(SUT)の枠組みを活用した支出側GDPと生産側GDPの統合)

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Academic year: 2021

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1.はじめに

国連が定める国際基準であり、一国のマクロ経済の動 向を包括的に記録する国民経済計算体系(以下、「SNA 体系」という。)においては、その主要な指標の一つと して「国内総生産(GDP)」が推計される。GDP には、 生産、支出、分配の三つの側面から見るアプローチがあ り、概念的にこれらの三つは一致するものであるが(GDP の三面等価)、一般には、各々推計に用いる基礎データ や推計手法が異なるため、現実には一致しないことが知 られている。 我が国の国民経済計算(以下、「JSNA」という。)に おいては、生産側GDP(付加価値)から雇用者報酬や 固定資本減耗等の付加価値構成項目を控除した後の残差 として、分配側GDP の構成要素であり SNA 体系上バラ ンス項目である営業余剰・混合所得(純)を推計してい るため、三面のGDP のうち生産側 GDP と分配側 GDP については、互いに一致する形となっている。他方、支 出側GDP と生産側 GDP については、前者が、財貨・サ ービス別に出荷・輸入から各種需要(輸出を含む)への 流れを捉えるコモディティ・フロー法(以下、「コモ法」 という。)と呼ばれる手法を基礎に推計される一方、後 者については、コモ法の財貨・サービス別産出額等から 得られる経済活動別(産業別)の産出額と各種基礎統計 を組み合わせて経済活動別の中間投入を推計する「付加 価値法」を基礎としているなど、互いに推計のアプロー チや使用するデータが異なるため計数にかい離がみられ る(こうしたかい離は、「統計上の不突合」と呼ばれる。)。 こうした統計上の不突合が生じる一つの背景として、 コモ法から推計された財貨・サービス別の中間消費(供 給された財貨・サービスが、どの程度中間消費に回った か)と、付加価値法から推計された経済活動別の中間投 入を財貨・サービス別に合計した金額(以下、「財貨・ サービス別中間投入計」という。)とが概念的には一致 するものの、現実には一致するわけではないというミク ロレベルの不突合が積み重なって生じるということがあ る。JSNA における統計上の不突合に関しては、政府の 「公的統計の整備に関する基本的な計画」の第I 期計画 (平成21 年 3 月閣議決定)において課題として提起され、 後述する「供給・使用表(Supply-Use Table:SUT)」と いう枠組みを用いてこうした問題に対処すること等が掲 げられ、後継の第II 期基本計画(平成 26 年 3 月閣議決定) にも引き継がれている2。 この間、内閣府経済社会総合研究所においては、基本 計画の趣旨を踏まえ、供給・使用表の枠組みを活用した 財貨・サービス別の中間消費と中間投入計との間の不突 合の調整、及びこれを通じたマクロの統計上の不突合の 縮減に向け、推計手法の開発・研究を積み重ね(櫻本 (2012)、熊谷(2012)、野木森(2012)、増田・多田(2014))、 その検討状況について統計委員会への報告を行ってきた (内閣府(2014b)3。こうした結果として、平成28 年度 中に予定しているJSNA の基準改定(平成 23 年基準改定) から、供給・使用表(SUT)の枠組みに基づく推計精度 の向上に向けた取組が実施される見込みとなっている。 本稿では、このように平成23 年基準改定において導 入する推計精度向上のための方法論について、これまで の開発状況を踏まえて、その概略について紹介する。第        1 本稿作成にあたっては、内閣府経済社会総合研究所国民経済計算部の長谷川秀司部長、多田洋介企画調査課長、木滝秀彰国民生産課長、 山岸圭輔企画調査課長補佐をはじめとする国民経済計算部の職員から有益なコメントをいただいた。なお、本稿の内容は、筆者らが属 する組織の公式の見解を示すものではなく、内容に関してのすべての責任は筆者にある。 2 第 II 期基本計画においては、平成 26 年度以降 5 年間で取り組むべき事項として、「国民経済計算の基準年の供給・使用表について、産 業連関表と整合する形で整備することの必要性、可能性について検討する」、「支出、生産及び所得の三面からの推計値を供給・使用表 の枠組みにより調整する手法を確立し、推計の精度向上を図る」、「供給・使用表の枠組みを通じた国民経済計算の精度向上のため、国 民経済計算と産業連関表及び延長産業連関表の作成部局の間で、必要な情報の共有や整合性の確保に努めつつ、連携を行う」といった 点がSUT に関連して挙げられている。 3 http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/singi/toukei/meetings/kihon_51/kihon_51.html

供給・使用表

SUT)の枠組みを活用した支出側GDPと生産側GDPの統合

1 内閣府経済社会総合研究所国民経済計算部企画調査課研究専門職 吉岡 徹哉 内閣府経済社会総合研究所国民経済計算部企画調査課研究専門職 鈴木 俊光

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2 節では、そもそも供給・使用表(SUT)の SNA 体系 における位置づけを概観し、我が国における産業連関表 やJSNA の枠組みとの対応関係について述べる。第 3 節 においては、JSNA の平成 23 年基準改定で導入を予定 している、SUT 枠組みに基づく推計精度向上のための 取組(SUT バランス)の具体的な方向性について説明 する。第4 節では、本取組のコアとなる使用表について、 SUT バランス前の使用表の作成方法とともに、SUT バ ランスの考え方について紹介する。第5 節では、こうし て作成されたSUT バランス後の使用表の情報を、コモ 法や付加価値法の延長推計にどのように展開させるかと いう点について説明する。第6 節は、まとめとして、我 が国におけるSUT 枠組み活用に係る今後の展望につい て考察する。

2.

SNA 体系における SUT の位置づけ、JSNA

における対応

供給・使用表(SUT)とは、財貨・サービスの供給と 使用の過程に焦点を当て、当該財貨・サービスはどこか ら来るのか、それはどのように使用されるのかを表した 一対の表であり、1993SNA において初めてその考え方 が示された(国連等(1993)、経済企画庁(1995)、国連 等(2009))。 供給表の主要部分は、どの産業がその生産物を供給し ているかを示す「生産物(または商品)×産業」のマ トリックスである。それに生産物別の輸入を加え、さら に総供給を使用表における総使用とバランスさせるため、 商業マージン及び運輸マージン等について調整して、購 入者価格に変換するまでの過程を表したものが供給表で ある。(図表1) 使用表は上部に2 つ、下部に 2 つ、合計 4 つの象限を もつ長方形の表である(図表2)。左上の象限は、様々 な生産単位グループによる様々な生産物の使用を示すサ ブマトリックスから成る。つまり、この象限は中間消費 を示す部分であり、行は財貨・サービス別、列は経済活 動別となっている。右上の象限は、最終消費者による様々 な生産物の使用を示すサブマトリックス、輸出を示すサ ブマトリックス、様々な生産物を資本形成に使用するこ とを示すサブマトリックスから成る。これら3 つのサブ マトリックスは最終需要を示す。左下の象限は、付加価 値に関する情報を所得の発生勘定の構成要素別に、つま り、雇用者報酬、営業余剰・混合所得(総)、生産に課 される税(控除)補助金に分類される形で示す。右下の 象限には何も記入しない。また、一番左の2 つの象限(中 間消費象限と付加価値象限)は、それぞれが生産単位グ ループに関連付けられる一連の列として見なすことがで きる。その各列は生産勘定および所得の発生勘定に関す る情報等を含む。 国際基準においては、こうした供給・使用表は、様々 な出所からのデータを比較、対比する有力なツールであ り、それにより経済情報体系の一貫性が高まることが期 待されている。つまり、SUT の作成過程の最初の段階 では、供給と使用のバランスは基本的には取られておら ず、生産アプローチから測定したGDP は、支出側の GDP と異なることになるが、SUT により、観測された 財貨・サービス別の不突合をシステマティックに解消す るための十分厳密な枠組みが提供され、二つの代替的な GDP 測度が収斂することが確保されると位置付けられ ている。(国連等(2009)) ここで、SUT 枠組みを初めて示した 1993SNA マニュ アルにおいては、SUT は「分析的投入 - 産出表を作成す るための基礎となる」ものとして記述されている。これ に対して、約5 年に一度作成される詳細な商品×商品(X 表)の産業連関表(及び産業×商品の附帯V 表)が存 在する我が国においては、直接的にSUT を作成すると いうよりも、既に利用可能なX 表と附帯 V 表を基礎と して、JSNA の中で、「フロー編付表1 財貨・サービス の供給と需要」(以下、「付表1」)、「フロー編付表2 経 済活動別の国内総生産・要素所得」(以下、「付表2」)、「フ 図表1 供給表のイメージ (経済活動) 財 貨 ・ サ ビ ス 産 出 額 輸 入 運 輸 ・ 商 業 マ ジ ン 等 総 供 給 購 入 者 価 格

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ロー編付表4 経済活動別財貨・サービス産出表(V表)」、 「フロー編付表5 経済活動別財貨・サービス投入表(U 表)」という形で、供給表と使用表を構成する要素を推 計している4。このようにJSNA においても、SUT に関 する情報は既に含まれているわけであるが、これらを一 つの枠組みの下で、財貨・サービス別の計数の突合・調 整に用いるというシステマティックな取組は行われてこ なかった。本年末に予定されているJSNA の平成 23 年 基準改定においては、SUT の枠組みを最大限活用する ことで、それにより明らかとなる暦年の財貨・サービス 別の不突合を解消し、支出側GDP と生産側 GDP の間の 統計上の不突合の縮減を図ることとしている。

3.不突合への対応とSUTバランス

(1)不突合の背景 支出側GDP と生産側 GDP の間にみられる「マクロの」 統計上の不突合は、大別すれば2 つの要素から成り立つ。 具体的には、以下の式の通り、①生産側GDP の推計過 程で得られる中間投入と支出側GDP の推計過程で得ら れる中間消費とのかい離に加え、②付表1と「フロー編 主要系列表1 国内総生産」(以下、「主1」)における純 輸出のかい離によって説明される(内閣府(2014a))。 ここで中間消費ないし中間投入は、生産者によって財貨・ サービスの産出のために使用され、一年以内に費消され る も の を 言 い、 概 念 上 は 同 じ も の で あ る が、 生 産 側 GDP 推計のための付加価値法等により得られるものを 中間投入、支出側GDP のためのコモ法により得られる ものを中間消費とそれぞれ呼んでいる。両者は推計方法 や推計に用いる基礎統計が異なるため、必ずしも一致せ ず、これが不突合が生じる要因となっている。本稿で紹 介するSUT 枠組みを用いた手法は、中間投入と中間消 費のかい離を解消する役割を有しており、もう一つの不 突合の要因である「「主1」と「付表1」の純輸出のか い離」については、平成23 年基準改定において、田原 (2014)で示されたように、縮減に向けた取組が図られ ることとなっている。 統計上の不突合=支出側 GDP - 生産側 GDP     = 中間投入と中間消費のかい離 + 「主1」と「付表1」の純輸出のかい離 以下、中間投入と中間消費のかい離の部分の不突合に 注目して論を進める。まず、財貨・サービスごとに中間 投入と中間消費の間に不突合が発生する要因については、 産業連関表を取り込む「基準年」と、同基準年をベンチ        4 なお、政府の第 I 期基本計画(平成 21 年 3 月閣議決定)においては、国民経済計算の基礎統計である産業連関表に関して、「詳細な供給・ 使用表とX表(商品×商品表)からなる体系(SUT(Supply-Use Tables ) / IOT ( Input-Output Tables))に移行することについて検討す る」こととされた。検討の結果、産業連関表においては、我が国初となる「平成24 年経済センサス‐活動調査」等を活用して X 表に ついてより高い精度の推計を行い、X 表と V 表の枠組みは維持することにより対応するという方針が統計委員会で了承された。それを 受けた第II 期基本計画においては、JSNA において、「支出、生産及び所得の三面からの推計値を供給・使用表の枠組みにより調整する 手法を確立し、推計の精度向上を図る」こととされている。 図表2 使用表のイメージ 輸出 最終消費支出 総固定資本形成 総使用 (経済活動) 財 貨 ・ サ ビ ス 付 加 価 値 雇用者報酬 営業余剰・混合所得(総) 生産に課される税 (控除)補助金 経済活動別 中間投入 財貨・サービス別

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マークとして各種の基礎統計で延伸する「延長年」に分 けて考える必要がある。基準年については、コモ法、付 加価値法ともに産業連関表に依拠しているため、その点 にだけ着目すると不突合は発生しないかのように見える。 しかし、①JSNA においては、基準年と延長年さらには 基準年以前の年次とを整合的・一貫的に推計する必要性 があるとの観点等から、産業連関表の計数を用いず、産 業連関表が参考としている基礎統計を基に直接推計して いる部分(例えば、在庫変動)があることに加え、②コ モ法と付加価値法で産業連関表をJSNA 概念に組み替え る際、従前は実務上それぞれ推計方法に応じた組替えを 行っていること(基準年の一国全体の不突合の原因には なっていないものの、財貨・サービス別の不突合の元と なっている「事務用品」と「家計外消費」の扱いに違い5) 等から、結果として両者の推計にかい離が生じている。 一方、延長年についてはそれぞれ独自の推計アプロー チの下、それぞれに対応した基礎統計を用いた推計を行 っていることから不突合が生じている。コモ法は、政府 や対家計民間非営利団体という非市場生産者が供給する 財貨・サービスを除く「市場生産者」が供給する財貨・ サービスの流れを推計する手法であるが、そこでは、基 準年において「産業連関表」に依拠して推計されるパラ メータを原則として固定して用い、流通段階ごとに中間 消費、家計最終消費支出、総固定資本形成といった需要 額を推計していた。他方、付加価値法では、市場生産者 について、コモ法推計値から作成される経済活動別産出 額を用いつつ、毎年の基礎統計から別途推計した経済活 動別中間投入比率(財貨・サービスの産出額に対して、 それを生産するために使用した財貨・サービスの中間投 入額の比率)を用いて経済活動別財貨・サービス別中間 投入を推計している。また、非市場生産者の産出する財 貨・サービスの中間消費(例:政府のサービスへの対価 として支払われる諸手数料)や非市場生産者による中間 投入(例:政府がサービスを生産する過程で使用する物 件費等)については別途推計を行い、それぞれコモ法の 推計値、付加価値法の推計値に加えている。こうした基 礎統計や推計方法の違いにより、コモ法等から推計され る財貨・サービスの中間消費と、付加価値法等から推計 される財貨・サービス別中間投入計の間に不突合が生じ、 一国全体の統計上の不突合の要因となっている。(内閣 府(2014a)6 (2)基準年(2011 年)における整合性の確保 以上の要因を踏まえて検討を行った結果、JSNA の平 成23 年基準改定においては、基準年、延長年それぞれ の背景に応じて、不突合への対応を行うこととしている。 基準年については、コモ法、付加価値法の推計方法の考 え方を維持しつつ、共通の組み換えを行った産業連関表 を用いてそれぞれの推計を行った。ここで、「事務用品」 と「家計外消費支出」については、延長年の付加価値法 推計において各種基礎統計を用いて産業別に中間投入比 率を捕捉する観点から不可欠な項目であるため、共通化 は行うものの後述するバランス前の使用表を作成してコ モ法の推計結果と比較する段階において、各財貨・サー ビスに分配することによりコモ法の推計値と整合性をと ることとしている。 以上の対応を行ってなお、コモ法における在庫変動率 のように、時系列での推計を行う観点から産業連関表と は独立して各種基礎統計から直接推計する部分や端数処 理による推計上の誤差等により、コモ法と付加価値法の 結果の間で財貨・サービスごとに中間消費と中間投入計 との間である程度の不突合が生じることとなるが、この 部分についてはSUT の枠組みを活用してバランシング を行うこととする。その際、産業連関表からJSNA への 概念転換等については、コモ法の方が財貨・サービス別 により詳細に行われていると考えられるため、基準年に おいてはコモ法から推計される中間消費を採用し、付加 価値法等から推計される財貨・サービス別の中間投入計 をこれと同じ水準になるよう調整することとしている。 (3)延長年におけるバランシング 延長年の計数は、コモ法、付加価値法においてそれぞ れ基準年でバランスされた計数をベンチマークにして延 長推計が行われるため、上述したとおり、そこで生じる        5 産業連関表の仮設部門である「事務用品」については、JSNA では財貨・サービスとしては設けないため、産業連関表を組み替える際 には、他の内生部門に配分している。その際、コモ法のための組替えでは事務用品(列)を事務用品(行)の比率を用いて事務用品以 外の内生部門に配分している。一方、付加価値法では、事務用品(行)のみを使用し、事務用品(列)は使用していない。   また、産業連関表では「家計外消費支出」(いわゆる企業消費に該当し、交際費や接待費等家計最終消費支出に類似する支出。行の項 目としては、「宿泊・日当」、「交際費」、「福利厚生費」の3 項目を表章しているが、ここでは「家計外消費支出」と総称する)は外生 部門として最終需要や粗付加価値に計上しているが、JSNA ではこれを各経済活動の生産活動に直接要する経費として内生部門として 扱う。その際、コモ法では家計外消費支出(列)のみを使用し、内生部門計と家計外消費支出(列)の合計を中間消費としている一方、 付加価値法では、家計外消費支出(行)のみを使用し、内生部門に含めるという組替えを行っている。 6 http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/seibi/kenkyu/setsumei_top.html

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不突合は推計に用いる基礎統計に起因する要素及び延長 アプローチの違いに起因する要素からなると考えられる。 延長年については、SUT 枠組みを用いたバランシング (以下、「SUT バランス」と呼ぶ。)により、財貨・サー ビス別に中間消費と中間投入計を突き合わせて比較し、 統合する。全ての財貨・サービスについて計数の統合を 行うことにより、結果として、一国全体の統計上の不突 合(中間投入と中間消費のかい離分)の解消につながる ことが期待される。次節以降では、こうした延長年の SUT バランスの具体的な方法論について解説する。

4.

SUT バランスの方法

(1)バランス前使用表の作成 平成23 年基準改定以降適用する SUT バランスの過程 においては、その準備段階としてまず、コモ法や付加価 値法等の各種推計による結果を使用表の枠組みに当ては める。具体的には、コモ法等より得られる財貨・サービ ス別の各種の需要額や、付加価値法等により得られる経 済活動別財貨・サービス別の中間投入、および一般政府、 対家計民間非営利団体といった非市場生産者に関する推 計結果から財貨・サービス約2000 分類7、経済活動約100 分類からなる「バランス前使用表」を作成する(図表3)。 ここで、経済活動別に財貨・サービス別中間投入の推 計を行う付加価値法等の推計結果について、バランス前 使用表に展開するために必要な処理について付言する。 まず、非市場生産者による財貨・サービス別の中間投入 については、これを把握するための基礎統計に制約があ ることから、前年の使用表(基準年は産業連関表)の投 入構造からその後の各商品の価格変動を考慮した当年の 商品構成比率を推計し、別途推計される一般政府及び対 家計民間非営利団体の経済活動別中間投入計の分割を行 うことにより求める。また、付加価値法では財貨・サー ビスとして存在し、コモ法では各商品に含まれている「事 務用品」、「家計外消費支出」については、中間消費と中 間投入の突合を行うため、付加価値法で経済活動別の中 間投入として得られた「事務用品」や「家計外消費支出」 を産業連関表におけるそれぞれの総額に占める財貨・サ ービス別の構成比を用いて分割し、各財貨・サービスの 中間投入に上乗せするという処理を行う(例えば、事務 用品については、産業連関表の「事務用品」の列の構成 比に基づき、「その他のパルプ・紙・紙加工品」、「筆記具・ 文具」などの財貨・サービスに配分されることになる)。 以上により、財貨・サービスごとの中間投入計を求め ることができ、これに対応する財貨・サービス別の中間 消費と比較することにより財貨・サービス別の不突合が 把握される。 図表3 JSNA におけるバランス前使用表のデータソース 不突合 最終消費支出 総固定資本形成 在庫変動 輸出 総需要 (非市場生産者) (経済活動) (市場生産者) 市 場 財 非 市 場 財 付 加 価 値 産 出 額 財 貨 ・ サ ビ ス 経済活動別 中間投入 財貨・サービス別 経 済 活 動 別 中 間 投 入 計 中間需要計 財貨・サービス別 中間投入計 財貨・サービス別 付加価値法 政府、 非営利 推計値 政府、非営利 推計値 コモディティ―・フロー法推計値        7 付加価値法の推計結果は約 400 分類で得られるため、コモ法の中間需要のウェイトを用いて約 2000 品目に分割する。

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(2)バランシング バランス前表の作成により明らかとなった財貨・サー ビス別の中間消費と中間投入計の間の不突合について、 次の段階では同表に集約された各種情報等に基づき、一 定の方針に従ってこれらを解消する。さらに、その結果 として、使用表全体での整合性が失われないよう、後述 する手順に基づき最終需要や付加価値項目において調整 を実施する。なお、バランシングの前提として、財貨・ サービス別に推計される産出額や輸出入額は工業統計 (経済産業省)、貿易統計(財務省)、国際収支統計(財 務省・日本銀行)等の詳細な基礎資料を用いて推計され ていることから相対的に信頼性が高いと考え、それらの 計数及びそこから得られる総需要(=総供給)は調整の 対象とはしない8。 財貨・サービス別の不突合の調整にあたっては、財貨・ サービス別に総需要に占める各需要項目の比率(需要構 造)や他の統計情報を勘案し、財貨・サービス別中間消 費と財貨・サービス別中間投入計のうち、より信頼性が あると判断される方の計数、またはその平均値を採用す る。その上で、採用された中間消費(中間投入計)に応 じて最終需要、付加価値の計数を調整し、使用表全体を バランスさせる。(図表4) a.中間消費と中間投入の統合 財貨・サービス別に、中間消費、中間投入計または それらの平均値のいずれを採用するかについては、次 に示す順で検討と判断を行う。 ①中間消費の調整の余地が少ない財貨・サービス 中間消費または中間消費と輸出の合計が総需要の 大宗を占める財貨・サービスについては、コモ法等 の中間消費を採用。また、「家計統計」等を使用し て毎年配分比率を設定する一部の財貨・サービスに ついても、同様に中間消費を採用する。 こうした類型に該当する財貨・サービスとしては、 例えば「労働者派遣サービス」、「建設補修」がある。 ②家計消費に関する基礎統計との比較が可能な財貨・ サービス a.以外で中間消費、輸出と家計最終消費支出で 総需要の大宗を占める財貨・サービスのうち、定義範 囲等において『家計統計』(総務省)または『家計消 費状況調査』(総務省)と比較可能な品目については、 それらの情報に基づいてバランスの方針を検討する。        8 我が国において、一般に財貨サービスの使用額について、産出額等に比べて相対的に確度の高い基礎統計はないと考えられ、使用側の 情報を元に総需要を調整することは現実的ではない。また、Eurostat(2008)においても、「財貨・サービス別に、基本価格の供給表の 行計からインプリシットに求まる総使用、商業・運輸マージン、生産物に課される税、補助金」については行計の目標値とされており、 基本的にバランシングによって変わらない扱いとされている。 図表4 SUT バランスの概要 不突合 (経済活動) 総需要 財 貨 ・ サ ビ ス 最 終 消 費 支 出 総 固 定 資 本 形 成 在 庫 品 増 加 輸 出 雇用者報酬 営業余剰・混合所得(純) 固定資本減耗 産 出 生産・輸入品に課される税 及び補助金 付 加 価 値 中間消費と中間投入計の統合 中間消費の変化分を 最終需要項目に反映 調整結果を経済活動別 中間投入計に反映 RAS法により 中間投入を経済活動別財 貨・サービス別に分配 中間投入額の変化分を営業余 剰・混合所得(純)に反映 中間投入計 財貨・サービス別 経 済 活 動 別 中 間 投 入 計 中間消費 財貨・サービス別

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まず、『家計統計』または『家計消費状況調査』 から得られる一世帯当たりの家計消費額と、世帯数 (2010 年の国勢調査をベンチマークとし、国民生活 基礎調査等9から把握される世帯数の伸び率で延伸 して推計)をかけて参照可能な家計最終消費支出の 指標 (以下、「参照家計消費」という。)を作成する。 「参照家計消費」を使って中間消費、中間投入計を 比較するため、中間消費と中間投入計から得られる 計数でお互い比較可能な指標として、次の「コモ家 計消費」、「付加家計消費」を定義する。   コモ家計消費: 総需要-中間消費-輸出-政府現 物社会移転+居住者による海外に おける直接購入-非居住者による 国内における直接購入10   付加家計消費: 総需要-中間投入計-輸出-政府 現物社会移転+居住者による海外 における直接購入-非居住者によ る国内における直接購入10   この式の考え方について補足すると、まず、総 需要は需要項目の合計であるため、   国内家計消費支出= 総需要-中間消費-総固定資 本形成-在庫変動-輸出  であり、在庫変動と総固定資本形成が僅少な財貨・ サービスについては、   国内家計消費支出≒総需要-中間消費-輸出 となる。一方、この式の中間消費を中間投入計に置 き換えることによって、財貨・サービス別中間投入 計に基づく家計消費に相当する計数が得られる。こ こから、「参照家計消費」の概念に合わせるため、 家計が消費支出として認識しない政府現物社会移転 を控除し、かつ、居住者・非居住者の海外・国内で の直接購入(アウトバウンド・インバウンド消費) を加減し国内概念から国民概念に変換したものが 「コモ家計消費」及び「付加家計消費」である。 こうした得られた「コモ家計消費」と「付加家計 消費」及びその平均値の三つの指標について、その 前年比伸び率を「参照家計消費」の前年比伸び率と 比較する。より「参照家計消費」の動きと近いと判 断される指標が相対的に確からしいと考え、それに 対応する中間消費、中間投入計またはその平均値を 計数として採用する。こうしたバランス方針の対象 となる財貨・サービスとしては、例えば「野菜」、「革 製履物」、「有線放送」がある。 なお、研究段階においては、家計消費と同様に、総 固定資本形成に関しても、バランシングの参考とす る基礎統計の有無や方法について検討を行ったが、 財貨・サービス別に総固定資本形成の動きを捉える ための基礎統計に制約があることから対応は困難で あることが判明した。 ③その他の財貨・サービス 以上に該当しない財貨・サービスについては、コ        9 2011、2012 年は東日本大震災の被災県のデータが捕捉されていないため代替的な基礎情報として住民基本台帳を使用。 10 居住者による海外における直接購入及び非居住者による国内における直接購入については、財貨・サービス別の情報が毎年得られるよ うな基礎統計に制約があるため、一国全体の計数を基準年の産業連関表における比率で按分して作成する。 図表5 「参照家計消費」との比較の例 ・中間投入計に調整される例 ・中間消費に調整される例 -5.0% -4.5% -4.0% -3.5% -3.0% -2.5% -2.0% -1.5% -1.0% -0.5% 0.0% 2011 2012 2013 2014 コモ家計消費 付加家計消費 参照家計消費 (前年比伸び率) -6% -5% -4% -3% -2% -1% 0% 1% 2% 3% 4% 5% 2011 2012 2013 2014 コモ家計消費 付加家計消費 参照家計消費 (前年比伸び率)

(8)

モ法等から推計される財貨・サービス別の中間消費 と、付加価値法等から推計される財貨・サービス別 の中間投入計が、ともに同等の信頼性があると整理 し、これらの平均値を採用し、財貨・サービス別の 中間消費、財貨・サービス別の中間投入計の双方を この水準に調整する11。 以上述べた中間消費と中間投入計の統合過程におい ては、バランス前表で把握する不突合の要因分析を通 じて、推計の妥当性について確認を行っておくことも 重要である。例えば、研究段階では、不突合の大きな 品目として「労働者派遣サービス」が見られたが、バ ランスにおいては「中間消費が大宗である財貨・サー ビス」として中間消費を採用することとなる。この場 合、各経済活動の「労働者派遣サービス」の投入は経 済情勢によって比較的容易に変化することが予想され る一方で、「労働者派遣サービス」単体の投入額を経 済活動別に各種基礎情報から収集することは困難なた め、付加価値法による推計よりもコモ法による推計の 方が確からしいと推察され、中間消費を採用すること は妥当であると考えられる。 b.使用表全体のバランス 以上のプロセスにより、財貨・サービス別の中間消 費と中間投入は一致することになるが、最終需要や付 加価値、経済活動別の財貨・サービス別中間投入とい った要素から構成される使用表全体での整合性を確保 する必要があるため、上記により生じる財貨・サービ ス別の中間消費、財貨・サービス別の中間投入計の変 化分について最終需要、付加価値等に反映させ、「バ ランス後使用表」を作成する。 ①最終需要 最終需要の側面においては、バランシングの結果 として生じる財貨・サービス別の中間消費の変化分 について、当該財貨・サービスのバランス前におけ る各種の最終需要額の相対比を基に、各種の最終需 要項目、具体的には家計最終消費支出、総固定資本 形成、在庫変動(うち流通在庫)に配分することと する。 ②経済活動別中間投入計 次に、バランス前の経済活動別中間投入計は、そ れぞれ基礎統計に基づいて延長推計したものであり、 いずれの経済活動においても相応の確からしさがあ ると考え、バランシングの結果として生じる財貨・ サービス別の中間投入計の変化分については、一国 合計額をバランス前の経済活動別中間投入計の相対 比を基に、経済活動別の中間投入計に配分する。 ③付加価値 また、付加価値の側面においては、②における経 済活動別の中間投入計の変化額について、付加価値 で調整が必要となる。雇用者報酬や生産・輸入品に 課される税、固定資本減耗については、別途各種の 詳細な基礎統計から推計されたものであることから、 いわゆる残差項目である営業余剰・混合所得(純) で調整を行う。 ④経済活動別財貨・サービス別中間投入 最後に、a.でバランス後の財貨・サービス別の 中間投入計(列ベクトル)が、b.②でバランス後 の経済活動別の中間投入計(行ベクトル)が得られ ることから、これらを制約条件として、SUT の整 合性をとる基本的な方法であるRAS法によりバラ ンス前使用表における経済活動別財貨・サービス別 中間投入を再計算し、バランス後の計数を求める。 (図表4の(財貨・サービス)×(経済活動)部分 参照) 以上の調整の結果、財貨・サービス別にみた不突合 (中間投入計-中間消費)は0 となり、「主1」と「付 表1」の純輸出のかい離分を除けば、マクロレベルで 支出側GDP と生産側 GDP の水準が一致することとな る。イメージとしては、仮にバランス前の一国全体の 不突合が5 千億円だった場合、半分が中間消費、半分 が中間投入で調整されたとすると、バランスによって 支出側GDP 及び生産側 GDP は、それぞれバランス前 の計数と比べると、2 千 5 百億円(GDP 比約 0.05%) 変化(符号は逆)することとなる。

5.バランス結果に基づく延長推計方法

前節までに述べた手法により、当該暦年における財貨・        11 以上の中間消費と中間投入計の統合の結果、元の中間消費からの変化が極めて大きい場合、この後の調整によって最終需要が、例えば マイナスになるような品目が発生する可能性がある。これを防ぐため、中間消費の調整許容幅を一定の比率で設定しており、超過分に ついては中間消費で調整を行わず、中間投入計の方を調整する。ここで計算された調整許容限度額の需要項目別内訳については、使用 表全体の作成における最終需要への反映でも用いる。

(9)

サービス別の中間消費と中間投入計との間の不突合が解 消し、これに起因するマクロの統計上の不突合の縮減に つながると考えられるが、さらに財貨・サービスや経済 活動別といった部門ごとの構造について時系列における 整合性を保つためには、SUT バランスを行った当該年 の翌年次についてバランス後の計数に基づいて推計され る必要がある。例えば、現行JSNA のコモ法では、財貨・ サービス別の産出先としての需要項目別の配分比率や財 貨・サービスの流通段階でかかる運賃やマージンの比率 (以下、「運賃・マージン率」という。)は基本的に基準 年で固定された形で推計がなされているが、SUT バラ ンスによる需要額の変化は配分比率等の変化を伴うもの である。このため、バランスの結果得られる各需要額か ら、それと整合的な配分比率及び運賃・マージン率を逆 算して、それを用いて翌年次の推計を行う必要がある。 以下では、こうした当該年のSUT バランスの結果を、 翌年次のコモ法推計や付加価値推計に展開する手法につ いて概説する。なお、SUT バランスの研究段階では、 こうした処理を行うことにより、SUT バランスを行っ た翌年次におけるバランス前段階での不突合は傾向とし て数千億円程度にとどまり、そうした処理を行わない場 合と比較して抑制される結果となることが把握されてい る。 (1)バランス後使用表に依拠した翌年次のコモ推計 市場生産者により産出される財貨・サービスの供給及 び需要の推計であるコモ法においては、当該年における 財貨・サービスの各商品について、出荷額、輸出入等を 把握して国内総供給を推計し、さらに商品ごとの需要先 別の比率(配分比率)、運賃・マージン率等を基に、流 通段階ごとに消費、投資などの需要項目別に金額ベース で推計している(コモ法の流れについては図表6を参 照)。現行では基本的に基準年で固定となっている配分 比率、運賃・マージン率等について、SUT バランス導 図表6 コモ法における流通経路と配分比率、運賃・マージン率 (10) (12) (11,13) (42) (41) (14) 通 (15,16) (36) 関 輸 入 額 関 税 額 特 殊 輸 出 額 通 関 輸 出 額 (5) (4) (3) (17) (37) (43) (6) (44) (38) (22) (39) (45) (7) (46) (40) (35) (18) (19) (20) (21) (23) (24) (25) (26) (27) (28) (29) (30) (9) (8) (9) (8) (9) (8) 産 出 額 出 荷 額 (注) 輸出額、生産額の推計手 順は矢印とは逆の方向に 特 なっている。 殊 輸 入 額 ・ 輸 入 品 商 品 税 額 輸 入 商 社 マー ジ ン 率 生産者販売運賃率 輸 出 向 け 運 賃 率 輸 出 商 社 マ ジ ン 率 仕 掛 品 在 庫 変 動 率 製 品 在 庫 変 動 率 国 内 総 供 給 額 卸 売 向 け 配 分 率 卸 売 仕 入 運 賃 率 卸 売 仕 入 マ ジ ン 率 卸 売 在 庫 変 動 率 卸 売 販 売 マ ジ ン 率 卸 売 販 売 運 賃 率 小 売 向 け 配 分 率 小 売 仕 入 運 賃 率 小 売 仕 入 マ ジ ン 率 小 売 在 庫 変 動 率 小 売 販 売 マ ジ ン 率 小 売 販 売 運 賃 率 中 間 消 費 向 け 配 分 率 そ の 他 産 業 原 材 料 在 庫 変 動 率 建 設 業 向 け 配 分 率 そ の 他 産 業 原 材 料 在 庫 変 動 率 建 設 業 原 材 料 在 庫 変 動 率 固 定 資 本 向 け 配 分 率 家 計 向 け 配 分 率 中 間 消 費 向 け 配 分 率 建 設 業 向 け 配 分 率 建 設 業 原 材 料 在 庫 変 動 率 固 定 資 本 向 け 配 分 率 家 計 向 け 配 分 率 そ の 他 産 業 原 材 料 在 庫 変 動 率 建 設 業 向 け 配 分 率 建 設 業 原 材 料 在 庫 変 動 率 固 定 資 本 向 け 配 分 率 中 間 消 費 向 け 配 分 率 家 計 向 け 配 分 率 sw tr1 mw2 tp

(10)

入後は、上述のとおり、直近のバランスした使用表と整 合的な値に差し替えて翌年次の推計を行うこととなる。 以下、バランス後使用表と整合的な配分比率及び運賃・ マージン率等を導出する方法について述べる。 a.財貨・サービスごとの配分比率、運賃・マージン率 等の逆算方法 バランスを行う当該年について、バランス前の配分 比率等を基にコモ推計を行うと、バランス後の中間消 費、総固定資本形成、家計消費支出、在庫変動(目標 値)との間に当然ながら開差が発生する。これらの開 差を極小化させるように配分比率等の修正とコモ計算 を繰り返し行う収束計算により、バランス後計数と整 合的な配分比率等を推計する。その際、以下の一連の 式に示す通り、需要項目ごとに流通段階間の需要額(運 賃・マージンを含まない価格で評価された生産者価格) の比が概ね一定となるように制約条件を置く。(以下、 生産者価格を(生)、運賃・マージンを含む価格で評価 された購入者価格を(購)と表記する。また、各式の 記号については、図表6のフロー図に示したとおり。) ℎ : 0 ℎ: 0 0 ℎ=(一定) : 00 0 =(一定) : 00 0 : : 00 0(一定) 0=1 −( + + + ℎ) −( 0=1 + + + ℎ) −( 0 =1 + + + ) ; 小売段階における配分比率の合計は 1(定義より) ; 卸売段階における配分比率の合計は 1(定義より) ; 国内総供給からの配分比率の合計は 1(定義より) ; 建設業向け及びその他の中間消費(生)配分額の  流通経路毎の比がそれぞれ一定かつ建設業向けと  その他の中間消費(生)の比も流通経路毎に一定 ; 総固定資本形成(生)配分額の流通経路毎の比が  一定 ; 家計消費(生)配分額の流通経路毎の比が一定 ここで、バランス後の配分比率、運賃・マージン率と して、バランス前の記号に「'」を付けた形で表すと、 制約条件は次の通り表すことができる。 ⎛ ⎜ ⎜ ⎜ ℎ′ 0 ℎ′ 0 0 ℎ′ ℎ = 0 ℎ 0 0 ℎ ′ 0 0 ′ 0 0 0 0 ′ = ′ 0 ′ ′ 0 0 ′ 0 ′ ⎞ ⎟ ⎟ ⎟ ⎝ 0 0 ′⎠ = ⎝ ⎛ ⎜ ⎜ 0 0 0 0 ⎞ ⎟ ⎟ 0 0 ⎠ 0′=1 ′+ ′+ ′+ ℎ′) ′) ( ( 0′=1 − − ′+ ′+ ′+ なお、kic、kf、khは各計数のバランス前後の変化させ る割合を示す調整係数である。   kic :中間消費に関する調整係数   kf :総固定資本形成に関する調整係数   kh :家計消費に関する調整係数 これをバランス後のパラメータについて解くと、以下 の通りとなり、適当な調整係数を与えてやると、バラ ンス前の配分比率等が得られていることから、配分比 率、在庫変動率が一意に決定する。 0′ ℎ′ ′ ′ ℎ′= ℎ ℎ ′ === = 1 ′ 0′ ℎ′ ′ ℎ′= ℎ 0 ℎ⁄ 0′ ′= 0 0′ 0′ ′= 0 0′ ′= 0 = 1 ′ ′ 0′ 0′ ℎ′= 0 0 ℎ⁄ 0′ 0′ ′= 0 0 ⁄ 0′ 0′ ′= 0 0 ⁄ 0′ 0′ ′ = 0 0 財貨・サービスごとに、ある調整係数(初期値は1) に基づき、コモ計算を行い、目標値(バランス後の中 間消費(購)、家計消費(購)、総固定資本形成(購)、 卸売在庫(購)、小売在庫(購)、建設向け原材料在庫 (購)、その他原材料在庫(購)、卸売マージン、小売

(11)

マージン、運賃12)とのかい離を計算し、かい離が小 さくなるよう調整係数及び運賃・マージン率、在庫変 動率を修正するプロセスを繰り返す。運賃率、卸売マ ージン率、小売マージン率は流通過程の複数個所に設 定されている場合があるが、その場合、一番大きい運 賃・マージン率について調整を行う。以上の収束計算 を、十分かい離が小さくなるまで行うことでバランス 後使用表と整合的な配分比率、運賃・マージン率、在 庫変動率を求める。なお、研究段階では、配分構造が 複雑な一部の財貨・サービスについては、自動化した プログラムでは解が収束しない場合もあったが、その 場合でも、調整係数等を適切に調節することによって 解を求めることが可能であった。実装に当たってもこ うした入念な作業が重要になると考えられる。 b.屑・副産物の逆算 ある商品A の生産過程において副次的に発生する 商品B があった場合、商品 B のことを「屑・副産物」 と言う。屑・副産物には、ガラスびんや鉄くずなど、 家 計 の 活 動 や 固 定 資 本 か ら 発 生 す る も の が あ り、 JSNA では元となった財貨・サービス(商品 A)の最 終需要に基準年の産業連関表から推計される「屑発生 率」をかけて屑・副産物の生産を推計している。SUT バランスによって屑・副産物の発生元の財貨・サービ スの最終需要が変化した場合、その最終需要の額と屑 発生額との関係、すなわち屑発生率が変化しているこ とになるため、屑・副産物の元となった財貨・サービ スの逆算を行った後に、屑発生率を計算し直すことと する。その後、屑・副産物自体についても配分比率等 の逆算を行い、バランスさせる。 (2)バランス後計数に依拠した翌年次の付加価値法推 計 付加価値法においては、ある年次におけるバランス後 の使用表から計算される経済活動別の中間投入を基に、 翌年次のU 表を推計することになる。そのためには、 延長推計の基となる当該年次の経済活動別の中間投入比 率、その品目別構成比等について、バランス後U 表と 整合的なものを用いる必要がある。 ここで、付加価値法における中間投入比率の延長推計 においては、営業費用の計数を含む企業会計ベースの基 礎統計を用いる出発点として、企業会計(在庫を簿価で 計上)とSNA 概念(在庫を時価で計上)の差である在 庫品評価(棚卸評価)の調整を行う前のU 表(以下、 在庫品評価前を在前、在庫品評価調整後を在後と表記。) が必要となるため、バランス後使用表を組み替えた段階 で得られる在後U 表(バランス後)から、付加価値法 における在庫品評価調整の推計方法に準拠して、在前の U 表(バランス後に相当)を推計する必要がある。具体 的には、在前U 表について適当な初期値を設定し、そ れを基にバランス前の付加価値法推計における情報を用 いて在後の計数を仮値として求め13、実際の在後U表(バ ランス後)と比較する。初期値を目標値とのかい離幅を 踏まえて修正し、在評計算、目標値と比較を行うプロセ スを、結果が在後U表(バランス後)に収束するまで繰 り返し、その時の計数のセットを「在前U表(バランス 後)」とする14。このようにして得られた「在前U 表(バ ランス後)」から、経済活動別の中間投入比率及びその 品目別構成比を計算する。 また、付加価値法においては一部の経済活動について、 各種基礎資料から直接的に推計された中間投入比率(中 間投入比率(暫定推計値)と呼ぶ。)に「補正率」をか けて実際の中間投入比率を求めている。補正率とは、中 間投入比率(暫定推計値)を産業連関表の投入比率に補 正するための比率のことを言い、基準年において「産業 連関表投入比率/中間投入比率(暫定推計値)」の式に より計算される(内閣府(2012)15。平成23 年基準に おいては、補正率を基準年の値で固定とするのではなく、 SUT バランスを実施した年の JSNA の中間投入比率と整 合的になるよう補正率を更新することとする。具体的に は、バランス後の中間投入比率を中間投入比率(暫定推 計値)で除すことによって補正率を求め、在評前U 表(バ ランス後)における中間投入比率、品目別構成比と合わ せて、翌年の推計を実施する。        12 うち、建設向け原材料在庫(購)、その他原材料在庫(購)はバランス前後で不変。また、卸売マージン、小売マージン、運賃それぞ れについても、単純化のためバランス前後で変わらないものとする。なお、この仮定がなかったとしても、SUT バランスの前後で国内 総供給の生産者価格と購入者価格はそれぞれ変化しないため、その残差である卸売マージン、小売マージン、運賃の合計については自 ずと不変となる。 13 SUTバランスの前後で在庫品評価調整用のデフレーターは不変との仮定を置く。 14 中間投入が正である限りにおいては、在評前計数と在評後計数は一対一対応であるため、解は一意に決定する。 15 http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/reference1/h17/kaisetsu.html

(12)

6.おわりに

本稿では、平成23 年基準に導入することを予定して いるSUT バランスの方法について概説した。SUT バラ ンスの導入に伴う最も顕著な変化は、財貨・サービス別 にみた中間消費と中間投入計における不突合の解消であ ろ う。 こ れ に よ り、 現 行 基 準 ま で 存 在 し た、 支 出 側 GDP と生産側 GDP の不整合については、次回基準以降 縮減されることが見込まれる。同時に、SUT の作成は コモ法と付加価値法という二つの推計をお互いに見比べ ることで、お互いの推計方法の長所短所を明らかにする ための手がかりとなる。今後、推計過程で恒常的に確認 作業を行うことを通じて、コモ法と付加価値法を始めと するSUT の構成項目の推計方法について改善を促すこ とが、SUT の本質的な重要性であると考える。 また、平成23 年基準においては、時系列における整 合性を崩さないよう、基準年(2011 年)について SUT の枠組みを活用しつつバランスを行い、バランスした計 数を起点とした延長推計とそこで発生した小さな不整合 のSUT バランスによる解消を毎年繰り返すことで、基 礎統計とも概ね整合的な2012 年以降の系列の作成を図 ることとしている。ここで、推計実務上の観点から、 SUT バランスは、毎年推計対象年の約 2 年後に公表さ れる「第二次年次推計」(平成17 年基準における確々報) の計数に対してSUT バランスを実施し、その一年後に 「第三次年次推計」として公表する方向で検討している。 このため、本年末に公表される系列においては、2013 年までバランスされた姿となる見込みである。 以下では、SUT バランスに係る中長期的な研究課題 について付言する。本稿で示したSUT バランスにおい ては、財貨・サービス別の総固定資本形成や中間消費等 の計数について、参考となる基礎統計に制約があること から、一部品目でコモ法と付加価値法による結果の平均 値に調整するという機械的な方針を採ることとしている。 欧州の一部の国のように、推計担当者が基礎統計の修正 も視野に確認作業を行い、より確からしいバランス(仮 に、マニュアル的方針)を導くことは一つの理想とは言 えるが、人的リソースを含めコスト面での問題があるこ とも事実である。SUT バランスの方法は各国でもまち まちであるが、機械的な方針とマニュアル的な方針のバ ランスを適切に図っていくことが重要と考えられる。 また、JSNA で導入を予定している SUT バランスは名 目値で行うものであるが、理論的には実質値でのバラン シングという方法もありうる。つまり、財貨・サービス ごとに、前年価格実質値(PYP 実質値)と名目値を同 時にバランスさせるために数量指数、価格指数または名 目値を修正するものであるが、作業量として極めて膨大 でありかつ個々の品目のバランス方針の検討もより複雑 なものとなると考えられる。一方で、こうした手法は、 物価指数の質をチェックするためには有用な方法となり 得ると考えられ、諸外国の事例も踏まえつつ、長期的な 研究課題として取り組むことが重要であろう。 本文で述べたとおり、従前のJSNA においても SUT に係る計数情報は推計されているが、平成23 年基準改 定では、JSNA の歴史としては初めて、こうした SUT に 関する情報を一つのフレームワークに統合し、コモ法や 付加価値法等により推計された計数を互いにチェックし、 調整する手法を導入することとなった。一方で、本節で 述べたように中長期的にはさらなる発展の可能性も残さ れており、今回導入する手法に則った推計を蓄積し、結 果の検証を行っていく中で、将来の基準改定の機会にお い て 手 法 の ブ ラ ッ シ ュ ア ッ プ を 図 っ て い く こ と が、 JSNA の推計精度の不断の確保・向上という観点で極め て肝要であると考える。

(13)

この補論では、Eurostat(2016)の内容を要約して、 EU 各国における供給・使用表・産業連関表16の作成状 況について紹介する。公表資料における調査対象国は、 2014 年夏時点の EU 加盟国及びスイス、マケドニアの 計25 か国である17。なお、結果は回答のあった国のみ を対象とし、一つの国で複数項目に該当があった場合は 両方集計しているため、合計が25 と一致しない場合が ある。HP からダウンロードできる補足資料には、各国 の担当者の連絡先、国ごとの統計使用状況、各国マニュ アル等のURL、サテライト勘定等の作成状況等につい ての情報も掲載されている。

1.

SNA 関連統計の作成組織

EU 各国における SNA 関連統計の作成組織について、 国際収支統計、金融勘定以外の年次別・四半期別国民経 済計算については、ベルギー、スロヴァキア、オースト リア及びスイスといった一部の国を除いて、国の統計機 関が作成している18。供給・使用表(SUT)については、 25 か国中、ベルギーを除いた 24 か国において、国の統 計部局が担当している。(補論図表1)

2.供給・使用表・産業連関表の作成に関する

基礎統計

EU 各国における供給・使用表・産業連関表(SUIOT) の作成には、基礎統計として次に示すような、各種の企 業調査データ、企業財務データ、世帯調査データ、行政 データが用いられている。        16 欧州では基本的に SUT(商品×産業、商品 × 産業)を先に作成し、そこから IOT(商品 × 商品)を導出する流れとなっている。国 連2008SNA マニュアルにおいては、「産業連関表を、供給・使用段階を経ないで作成することはできない(極めて厳しい仮定のもとで 例外がある)」(Input-output tables cannot be compiled without passing through the supply and use stage (except under very restrictive assumptions)) との記述がある。 17 調査対象となった EU 加盟国は、オーストリア、ベルギー、クロアチア、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、 ドイツ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、リトアニア、マルタ、モンテネグロ、オランダ、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、 スロベニア、スウェーデン、スロヴァキア及びイギリスの23 か国。 18ベルギーでは、中央銀行が年次別及び四半期別国民経済計算を作成している。四半期別国民経済計算については、スロヴァキアでは、 中央銀行と国の統計機関が、オーストリアでは、国の統計機関とオーストリア経済研究所(WIFO)が、スイスでは、国の統計機関と 連邦経済省経済事務局(SECO)が共同で作成にあたる。

補論 

EU 各国における供給・使用表・産業連関表の作成状況

補論図表1 統計作成組織 0 5 10 15 20 25 30 国の統計機関 中央銀行 その他 (単位、国数)

(14)

○生産活動に関する年次調査データ

・ 生産統計調査(production statistics survey) ・ 企業構造調査(structural business survey) ・ 投入調査(material input and commodity survey) ・ 財貨・サービス購入調査(purchase of goods and

services survey)

・ 設備投資調査(investment survey) ・ 特定産業センサス(census data on specific

industries)

・ 金融仲介活動調査(financial intermediation activity survey)

・ 国際取引統計(international trade statistics) ・ R&D 活動調査(survey on R&D activities) ・ 観光活動調査(tourism activity survey)

○生産活動に関する四半期次、月次調査データ ・ 取引調査(trade survey)

・ 国際収支統計(balance of payments survey) ・ 貿易統計(foreign trade survey)

・ 売上高調査(turnover survey)

・ 金融セクター調査(financial sector survey) ・ 特定セクター調査(specific sector survey) ・ 売上、工業生産、生産者価格指数等、短期の統計

調査(short-term statistics survey (turnover, industrial production, producer price indices, etc.))

・ サービス生産者価格調査(services producer prices

survey)

・ 消費者物価指数(consumer price indices) ・ 利益・資産調査(profits and stock survey) ・ 観光調査(tourism survey)

○世帯に課する調査データ

・ 家計予算調査(household budget survey) ・ 休暇・観光調査(holiday/tourism survey)

○行政情報

・ 付加価値税データ(VAT data)

・ 年次財政勘定(annual financial accounts) ・ 所得税データ(income tax data)

・ 地方政府・中央政府財政統計(local or central government financial statistics)

・ 社会データ(social data) 以上で示したデータ以外にも、EU 加盟国の中には、 SUIOT の作成に複数年次間隔で実施する調査データを 用いている国もある。(例えば、「中間消費実態調査(5 年に1 回)」(スロべニア、ハンガリー))

3.統計単位

供給・使用表作成のための統計単位については、7 か 国において地域別活動種類別単位(local kind of activity

補論図表2 使用している統計単位 7 5 2 12 7 同質的生産単位 地域別活動種類別単位 活動種類別単位 企業 事業所

(15)

unit, local KAU)を、5 か国が活動種類別単位(KAU)を、 12 か国が企業単位を用いている。また、7 か国では、複 数の統計単位を使用している19, 20。(補論図表2)

4.生産物分類と経済活動分類

European System of national Accounts (ESA2010) では、 SUT バランスを行う際に、生産物分類、経済活動分類 ともに最低でも64 分類以上で行うことを推奨している。 多くの国において、経済活動分類数よりも生産物分類数 の方が多い分類数でSUT バランスが行われる。(補論図 表3、4) 生産物分類数はデンマークで突出して2,300 分類以上 と多いが、イギリス、フランス、ドイツでは100 分類前 後であるなど、分布は大きいと言える。また、経済活動 分類数では、スロベニア、ハンガリーで200 超となって いる一方、スイス、アイルランド、ドイツでは50 ~ 60 程度となっており、生産物分類に比べると分布は狭いが、 それでも一定の幅はある。        19 「活動種類別単位」とは、ただ一種類の生産活動に従事するか、あるいは主生産活動がその付加価値のほとんどを占めている、企業や 企業の一部分のことを指す。「地域別活動種類別単位」とは、「活動種類別単位」のうち、一箇所に立地しているものを指す。「活動種 類別単位」は、立地箇所が複数に及ぶ。 「同質的生産単位」とは、それぞれの生産者が一つの生産活動のみに従事し、その結果、いかなる副次的活動にも割り込まれないで特 定のタイプの生産活動に従事しているすべての生産単位をまとめたものである。 20 異なる統計単位の 2 つのデータを併用している国としては、アイルランド(local KAU と企業単位)、リトアニア(企業単位と制度部門 単位)、マルタ(local KAU と制度部門単位)、ルーマニア(KAU と同質的生産単位)、スロヴァキア(企業単位と制度部門単位)、スウ ェーデン(KAU と企業単位)であり、オランダでは 4 つの異なるデータ(local KAU、KAU、企業単位とその他)の例がある。

補論図表3 SUT 公表時の生産物分類 補論図表4 SUT 公表時の経済活動分類 350 252 89 247 82 139 65 256 147 820 128 630 550 543 433 99 350 299 776 386 110 49 88 0 200 400 600 800 1000 2400 2350 (品目) 135 120 117 63 98 62 139 65 98 142 210 88 120 136 84 127 99 230 88 179 97 110 49 88 0 50 100 150 200 250 (経済活動数)

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5.公表頻度

ESA2010 移行プログラムは各国に、補論図表5に示 す表の作成を求めている21。それを踏まえ、各国におい ては年次SUT 及び 5 年に一度の産業連関表(IOT)が 作成される傾向にある。オランダとフランスでは、SUT は四半期ごとに作成されている。スイスは3 年に一度 SUT を作成する。(補論図表6)        21 また、2015 基準年時点の前年価格表示の SUT については、2018 年末までに一次推計を終えなければならない。 補論図表5 ESA2010 移行プログラムがメンバー国に要請する SUIOT 作成基準 ・基本価格表示の供給表及び購入者価格表示への変換 ・使用表(購入者価格表示) ・産業連関表(生産物×生産物、基本価格表示) ・同(国内生産のみ) ・同(輸入のみ) ・使用表(基本価格表示) ・使用表(基本価格表示、国内生産のみ) ・使用表(基本価格表示、輸入のみ) ・商業・運輸マージン表 ・生産物にかかる税(控除)補助金表 年次 5年毎 補論図表6 各国の公表状況 供給表・ 使用表 ( 基本価格) 四半期 2 1 年次 供給表 供給表 ( 購入者価格) ( 他の価格評価) 23 19 1 複数年に一度 使用表 使用表 使用表 ( 基本価格) ( 購入者価格) ( 生産者価格) 使用表( 国内生産) ( 基本価格表示) 四半期 2 使用表( 輸入) ( 基本価格表示) 1 1 年次 18 23 6 17 16 複数年に一度 4 4 4

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補論図表7 公表時期 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 12か月以内 36か月以上 (単位:か国) 12か月~24か月の間 24か月~36か月の間 一次速報 二次速報 確報

6.公表時期

ESA2010 では、当該年終了後、36 か月以内のユーロ スタットへのデータ提供を求めているが、実際は、SUT 公表の期限はフランスの5 か月後からポーランドの 39 か月後と幅がある。SUT の改定のあり方についても各 国で異なっており、23 か国中 16 か国では、SUT 公表後、 修正や改定は行われない。フランスとオランダでは、 SUT の作成は、四半期別国民経済計算の推計に組み込 まれている。フランスでは、年次国民経済計算確報に合 わせて供給・使用表を改定している。(補論図表7)

7.バランシングの方法

SUT の作成過程は SUT 枠組みにおける全ての一致す べき計数を整合的にするバランシングプロセスであるデ ータの突合せ(data confrontation)を含む。各国では、 バランス方法として、機械的なバランス、マニュアル的 なバランスのどちらか一方、あるいは両方を行っている。 実際には、24 か国全てでマニュアル的なバランスを適 用しているが、そのうちの17 か国では機械的なバラン スを併用している。実際、ドイツ、イタリア、オランダ、 スイスの4 か国は 90% 以上のセルについて機械的なバ ランスを行っている。多くの国では、バランス上の大き な問題となる部分をマニュアル的なバランスで解決して いる(ただし、ほぼ全てのセルについてマニュアル的な バランスを行っている国もある)。マニュアル的なバラ ンスで解決できなかった残りの問題については、RAS 法やストーン法といった機械的なバランスにより解決さ れる。

8.

IT 技術の利用

すべての国はExcel やその他の IT ツールを使用して SUIOT を作成している。14 か国は Oracle や Microsoft SQL といったリレーショナル・データベースを使用し、 11 か国は SAS や同様の統計パッケージを使用している。 Matlab、Gauss、GAMS を使用している国もある。

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(参考文献)

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Eurostat(2016), “Review of national supply, use and input-output tables compilation,”, Statistics Explained

熊谷章太郎(2012)『年次 SUT を用いたバランスシステムの 在り方の一考察』、季刊国民経済計算147 号

国連等(1993)「System of National Accounts 1993」 国連等(2009)「System of National Accounts 2008」 櫻本健(2012)「日本の国民経済計算体系における供給使用

表年次表に関する研究」、New ESRI Working Paper N0.26 田原慎二(2014)「JSNA 体系内の純輸出の整合性向上に向 けて」、季刊国民経済計算155 号 経済企画庁(1995)「1993 年改訂 国民経済計算の体系」 内閣府(2012)「推計手法解説書(年次推計編)平成 17 年基 準版」 内閣府(2014a)内閣府経済社会総合研究所国民経済計算部  次回基準改定に関する研究会第10 回(平成 25 年 7 月 4 日)資料3-3「2008SNA への対応等に関する各課題 論点整理」 内閣府(2014b)統計委員会第 51 回基本計画部会(平成 26 年8 月 5 日)資料2-1「平成 25 年度統計法施行状況 -国民経済計算関連の取組-」 内閣府統計委員会(2009)「公的統計の整備に関する基本的 な計画」 内閣府統計委員会(2014)「公的統計の整備に関する基本的 な計画の変更について」 野木森稔(2012)『加重最小二乗法を利用したバランシング・ モデル―SUT バランシングシステム開発に向けた一考 察』、季刊国民経済計算147 号 増田幹人、多田洋介(2014)『2013 年 10 月開催 OECD 国民 経済計算に関する作業部会に係る出張報告―供給・使用 表(SUT)に関する議論を中心に―』、季刊国民経済計 算153 号

参照

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