第
38 回日本学生経済ゼミナール東京部会
東京経済大学大会
大会提出論文
部門番号 ― 部門名 財政学 5 テーマ 景気対策 サブテーマ 公共投資か減税か 専修大学経済学部望月ゼミナール 責任者氏名 大前慈子 住所 東京都多摩市豊ヶ丘5−1−11−302 10 電話番号 042−371−7246 参加者氏名 3年生 2 年生 市川 明子 大慈彌 ゆう子 大内 伸哉 川西 真祐美 大前 慈子 鎌田 大介 須賀 雅美 高地 良典 三村 和則 田辺 健太 田中 聡 15 参加者人数 11 人 ― 目次 ― 序章 第1章 短期経済政策 第4章 公共投資 第1節 デフレ不況に陥った日本経済 第1節 景気対策としての公共投資 20 第2節 デフレ不況の原因 第2節 今後の公共事業政策 第3節 デフレ対策 第3節 PFI 第2章 法人税 第4節 PFIの可能性 第1節 問題意識 第5節 まだまだ模索段階の日本型 第2節 法人減税における現状・問題点 PFI 25 第3節 法人減税における将来の展望 終章 第3章 所得税 第1節 問題意識 第2節 改革の視点 第3節 まとめ 30序章 現在の日本の状況は、成長トレンドの低下や経済構造変化のもとで供給過剰が顕著になっ てきている。 このような状況では供給過剰を財政出動で一時的に埋め合わせても、対策の効果が切れれ ば、景気停滞に逆戻りしてしまう。92 年以降、合計 7 回、金額で 80 兆円に上る需要刺激策 5 中心の経済対策が打たれているが、その効果が期待したように表れてこないのは、対策の規 模が小さいからではなく、対策の中身が必ずしも構造的な供給過剰の解消に資するものとな っていなかったからである。それどころか、これまでの経済対策によって本来であればスリ ム化等によって生産性や競争力を高めなければならないいくつかの産業が、逆に供給能力を 拡大させ、結果として過剰供給を生み出し、生産性を一段と低下させる事体を招いている。 10 したがって日本経済を立ち直らせるためには、潜在成長力の下方屈折や、その後の水ぶく れ財政政策によって過剰化した供給力を、これからの需要拡大のトレンドに見合う水準にま で調整する必要がある。つまり、生産性の上昇や競争力の強化、新しい成長産業の創出とい ったサプライサイドの強化策が求められているといえる。 以上のような問題意識のもとに構造改革の目的を「景気の刺激は減税の動機であっても、減 15 税の最終目的ではない。行き過ぎた所得の再分配を是正し、成功者の報酬を増やし、豊かな 消費と資産形成の環境を整える。個人や企業が政府頼みでなく自助と自立の原則に沿って行 動する「小さな政府」を目指す。政府がいくらおいしい施策を振りまいてもいずれ「増税」とい う請求書が回ってくるという国民の不信を取り除くため、政治が国民の抑制に本気で取り組 む姿勢を示す。そうした構造改革こそが今度の減税の最終目的である。」ととらえ今回の論文 20 を作成した。 25 30
5 10 15 20 第1章 短期景気対策 第1節 デフレ不況に陥った日本経済 1997 年度のGDPの実質成長率はマイナス0.7%と、第 1 次石油ショック以来、2 度目 25 のマイナス成長となった(図1−1)。1990年のバブル崩壊後、極端に悪化した国内景気 を建て直すために、政府は数度にわたり経済対策(図1−2・3)を実施したがいっこうに 景気回復の兆しは見えない。いままで、何とか日本経済のマイナス成長への失速を免れよう と政府は公共投資を中心とした従来型のケインズ的財政金融政策を行ってきた。しかし、そ れにもかかわらず日本経済の景気はいっこうに回復の糸口をつかめないままでいる。それは、 30
日本の不況の原因が今までとは違うからである。では、いまの日本経済の不況の原因はいっ たいどこにあるのであろうか。 現在の日本経済は物価が下がっても物が売れないというデフレの状態にあると言う事がで きます。デフレには、良いデフレと悪いデフレがあり(図1−4)良いデフレとは物価が下 がることにより需要が増え、そのことにより企業の生産量が上昇する状態を言います。この 5 場合、日本の経済は成長しながら物価が下がるので日本の景気は上昇する。このような状態 を良いデフレということができる。 しかし、現在の日本経済が直面している状態は良いデフレと言うことはできない。日本経 済は、消費が冷え込むことで物が売れない、そこで企業は何とかして物と買ってもらおうと して、そのことにより物価がさがり、しかしそれでも売れないのでさらに物価が下がるとい 10 う悪いデフレに陥っています。悪いデフレになると、物が売れないので企業の売り上げは下 がり、リストラを余儀なくされ、賃金が引き下げられたり、失業者が増大し雇用不安を引起 こします。このような状態では経済はどんどん縮小していく。 日本の経済が政府による従来型の大規模なケインズ的財政金融政策を行っても、なかなか 景気の回復が見られないのは、不況の性質が今までとはちがうからです。現在、日本の経済 15 はデフレ不況に陥っているのです。 第2節 デフレ不況の原因 デフレが起こる原因はさまざまなものが考えられますが、現在の日本のデフレは強硬なバ ブルつぶしを行ったことで地価や株価が下がりつづけるという「資産デフレ」が起こった事 20 が発端となったと考えられます。 資産の価格が下がり続けると、借金をして資産を購入した国民に大変なダメージを与える ことになります。インフレの時期なら、借金をして設備投資をしたり住宅を購入しても資産 の価値のほうが上昇するので実質金利は低下して借金は目減りし、負担はどんどん軽くなっ ていきます。 25 しかし、デフレの時期には、これとは逆のことが起こり、借金をして購入した資産の価格 がどんどん下がるので、借金の実質金利は上昇し、借金をして住宅を購入した国民の負担は どんどん重くなっていくということが起こるのです。このことが、消費者マインドを冷え込 ませる原因となったのです(図1―5)。 他方、「資産デフレ」は企業、特に、金融機関のバランスシートを直撃した。金融ビックバ 30
ンによる護送船団方式の崩壊などによって金融機関は負債の圧縮を行いバランスシートを健 全化させる必要がありました。このことが「資産デフレ」によって不良債権を抱える金融機 関を苦境に追い込むこむことになったのです。このような金融危機は、信用収縮を通じて実 体経済を巻き込んでしまいました。いわゆる、「貸し渋り」が日本経済を覆う事になったので す。「貸し渋り」は貸し出し額の圧縮にとどまらず、貸し金の回収にまで至ったのです。しか 5 も、それは経営が悪化している中堅・中小企業だけではなく、健全企業や大企業にまで広が ってしまったのです。 さらに、金融機関の貸し渋りは企業の倒産(図1−6)を招き、失業者を増大させ、雇用 不安をもたらし消費者心理を冷え込ませ、消費の低下につながりました。98年に入ってか らは毎月のように失業率は最悪記録を更新しつづけています。 10 しかし、日本経済の不況が「資産デフレ」を発端とするデフレ不況であるならば、199 0年のバブル崩壊が起こった時から97年のマイナス成長に陥る間、なぜ、「資産デフレ」が 顕著に現れてこなかったのであろうか。それには、次のような要因があげられる。 まず第1に、90年代の日本経済は、財政出動というカンフル効果と、超低金利政策とい うモルヒネ効果によって、バブルの痛みが緩和されていたために「資産デフレ」効果が抑止 15 されていた。 第2には、バブル崩壊後も、非製造業の有形固定資産は増加を続けました(図1−7)。株 価や地価の持続的な下落が続いているにもかかわらず「株価や地価はいつかは上がる」と経 営者が損切りをなかなかおこなわなかったのです。このようなことが、「資産デフレ」の発現 を遅らせた要因であると考えられます。 20 しかし、なんとか発現が抑止されていた「資産デフレ」が橋本内閣の政策の失敗によって 顕著に現れることになったのです。 橋本内閣の金融ビックバンによる企業のバランスシートの悪化した。さらには、97年4 月からの消費税率の3%から5%への引き下げ、94年・95年・96年とおこなってきた2 兆円の特別減税の打ち切り、医療費の値上げにより国民の負担増は9兆円にのぼった。この 25 ことが、「資産デフレ」苦しむ国民の消費マインドを更に冷え込ませていしまった。このよう なことが、バブル崩壊から徐々に始まっていた「資産デフレ」を発端とするデフレ不況を加 速させる事になったのです。このままでは、日本の経済はデフレスパイラル(図 − )に陥 る危険がある。 30
第三節 デフレ対策 現在の平成不況がデフレ不況で、その発端が「資産デフレ」である以上、まずは「資産デ フレ」 に歯止めをかける事が大切になってくる。さらには、「資産デフレ」により動かなくなったお 金、つまりは投資を活性化させる必要がある。では、その対策にはどのようなものがあるの 5 か考えてみようと思う。 最初に個人消費に対する対策を考えてみる。購入した住宅の価格の下落、住宅ローンの負 担が国民の消費意欲を損なわせる原因となり、このような「資産デフレ」が住宅投資の減少 につながっていると考えられる。住宅投資は耐久消費財の購入をあわせると、生活誘導効果 は2.03倍となり、公共投資の1.87倍を上回る。つまり、住宅投資を活性化させる事 10 は経済対策とし非常に有効な手段であると考えられる。 同時に、国民の住宅に対する不満は依然として強く、その潜在ニーズは大きいと考えられ る。バブル期からそれ以降の時期に住宅を購入した世帯では、「資産デフレ」による価格の激 しい値下がりやローンの返済などにより、仮に買い替えのニーズがあっても身動きがとれな いと言うのが現状である。先ほど述べたように、住宅の含み損や、住宅ローンの過剰な負担 15 が「家計の活力」 を奪い、住宅投資の低下につながっているのならば、まずはこのような状態を抜け出すため の対策を考える必要がある。 具体的には次のような対策を挙げる事が出来る。 第1に、住宅所得時にかかる不動産取得税の廃止である。現行では、住宅所得時に消費税 20 と不動産取得税が課税されており、こうした重複課税は国民の負担を増大させる原因となっ ていて、これは解消する必要がある。 第2に、住宅ローンの支払利息を所得控除の対象とする必要がある。このことは、住宅に 投資する事による減税の効果を明確にする事が出来るので、減少してきた住宅投資を活性化 ための役割を果たすと考えられる。 25 第3に、現行4年間に限定されている譲与損失の控除を無期繰り延べできるようにして、 かつ、住宅ローン利息の所得控除との併用を可能にする必要がある。 このように、現状に求められている住宅投資対策を行うことで、住宅所得および購入後の コスト削減による家計の活力回復、および、住宅投資促進がのぞまれる。 土地対策としては、バブル期の異常な土地高騰を背景に創設された地価税をまずは廃止す 30
る事が必要であると考えられる。 最後に、株式についての対策を考えてみる。これほどまでに株価が低迷を続けている大き な原因は世界の日本経済に対する不安や、日本の企業に対する信用の喪失にあると考えられ る。まずは、金融機関の建て直しを早急に行い、日本企業は経営改革、ディスクロージャー を早急に行い日本経済全体の信用を取り戻すことがのぞまれる。 5 また、株式投資の活性化を図るためには、有価証券取り引き税およびキャピタルゲイン課 税の撤廃が望まれる。 以上述べてきたような「資産デフレ」に対する対策が早急に行われれば、個人消費の活力 をとりもどし、さらに、投資を活性化させることにつながるであろう。とにかく、日本は最 悪の事態つまりは、デフレスパイラルに陥るということをなんとしても避けなければならな 10 いのではないだろうか。 15 20 第2章 法人税 第1 章 法人税制における歴史的背景 アーサー・ラッファーが減税促進の宣伝図として取り上げた「ラッファー・カーブ」と呼 25 ばれるものがある。これは既に一定の収入のある人が、それ以上働いて追加的な収入を得よ うとするかどうかで、極端に言えば、税率が0%であれば全ての人が喜んで働いて収入を得 ようとするであろうし、逆に税率が100%であれば全て税金にとられてしまうわけで、収 入を得るために誰も働こうとはしないと主張するものである。 すなわち、税率0%と100%の間に、その人が追加的に働いてもいいと考える範囲と働 30
かなくなる範囲を分ける税率がある。 70年代後半のアメリカ経済が直面した経済問題は、スタグフレーションの状態でありそ の対応策として新しい考え方が期待されるようになった。それは、「価格は需要と供給の一致 した点で決まる」という経済学の単純な原理からも明らかなように、供給側も需要と同等の 重要性を持つと考えるサプライサイド強化の政策である。 5 70年代の日本でも、オイルショックなどを契機に経済が停滞し、その原因を投資意欲の 減退などに求める「サプライサイドの経済学」が新たに登場した。この考えによると政府部 門の肥大化による租税負担の増加や経済活動の自由度の低下が、民間部門の投資意欲を阻害 し、経済活力の低下をもたらしたことになる。このため、租税負担の軽減や歳出削減など小 さな政府の実現による民間部門の活性化が主張されるようになってきたのである。 10 サプライサイド強化の基本的姿勢は「減税」であり、ラッファー・カーブと同じで、高い 税率が生産活動への意欲を殺ぎ、供給面で経済が成長していくのを抑制すると主張する。 政府が税収によって行うことは、利用可能な資源を民間で使う場合に比べて非効率に使う ことになるので、経済全体として生産性を低下させる。 したがって、サプライサイドの基本的方針は「減税」と「政府の縮小」を行う政策という 15 ことになる。 第2節 法人税制における現状と問題点 法人税は、所得税と並んで国の財政を支える税として、重要な役割を果たしている。 法人税をめぐる議論は様々なものがあるが、まず日本の税制の特色を米英独仏などの先進各 20 国の税制における概要と比較することで、見てみることにする。(図2−1)(図2−2) 日本の法人税率は基本税率が37.5%で、米国の35%とたいして変わらないようにみえる が、実行税率で見てみると米国は41.05%なのに対して、日本は49.98%にまでのぼって いる。また、他の欧米諸国はどうなっているかと言うと、英国の法人税率は31%、フランス は36.67%と日本よりかなり低く設定されている。ドイツについては、52.35%と日本よりも 25 高くなっている。しかし、ドイツは99 年にも、所得税・法人税を大幅に引き下げる税制改革 が予定されている。そのため、日本が現在のままの税率を維持すれば、所得税・法人税の独 歩高感がより一層強くなるだろう。 また、日本の国税収入に占める直接税のウェイトは65.4%(96 年)となっている。一 方、先進諸国を見ると、米国が90.3%、英国が 53.5%、ドイツが 47.1%、フランスが 39.3% 30
(各 94 年)となっている。さらに、国税に地方税を加えた直間比率で見てみると、日本が 76.1%、米国が 75.9%、英国が 56.9%、ドイツが 52.9%、フランスが 52.0%となり、五カ国 の中では日本が最も直接税のウェイトが高くなっていることがわかる。 法人税制において、これらの現状が引き起こす可能性のある、また実際に引き起こしている 問題点としてまずあげられるのは、産業の空洞化である。 5 日本企業(製造業)の海外現地法人における売上高の推移と海外生産比率を示している(図 2−3)と(図2−4)をみていえることは、海外での生産ウェイトおよび生産高が上昇して きているということである。また、国内で製造するよりも海外で製造する方が低コストであ る場所が少なくなく、法人税制がこの問題に少なからず影響を与えているということができ る。日本における実行税率は49.98%である。これはつまり、企業の収益の半分が税金で取ら 10 れてしまうということである。さらには、このように高すぎる実効税率は、日本企業の国際 競争力を奪う原因にもなっている。 仮に、現行税制が維持されると、国内企業はより低いコスト、低い法人税率の国へと進出 していくことは避けられず、企業の海外生産率の上昇、つまり産業の空洞化を促進させる結 果となりかねない。 15 さらには、税制上重い法人税が存在することにより、企業活力の向上を妨げるようなことに なっては、日本株への投資魅力を削ぐことになるだろう。機関投資家が指標とするROE(株 主資本利益率)は高ければ高いほど投資魅力はがあるということである。しかし、これは税 引き後の利益を分子とするものなので、法人税の高さがそのまま投資魅力の低さにつながる。 また、2つ目の問題点としては、新規事業育成にかかる税制優遇が、希薄であることがあ 20 げられる。これまで、日本経済を牽引してきた産業が成熟化し、今や新規事業の発展が叫ば れている所ではあるが、そのような動きを大きくしていくためには、税制上の後押しが非常 に重要となってくるだろう。しかし、日本にはそのようなベンチャービジネスに対する税制 優遇・あるいは当該ベンチャービジネスへの投資に対する税制優遇措置が、他国に比べて薄 弱である。 25 さらに、新規事業展開の足かせとして、企業にあたってかかる税負担が重いことも指摘で きる。また、会社設立時には、改行・設備投資などいくらでも資金が必要な時期であり、信 用力や担保力の弱いベンチャー企業にとって、このような時期に税負担が大きいということ は、新規事業の育成の方針とはまったく逆行するものである。 以上のことから考えてみても、法人税等企業課税は、国際的な競争時代の中で、できるだけ 30
引き下げていく努力が必要となっている。 第3節 法人税制における将来と展望 日本の法人税制は、欧米諸外国と比べた場合、非常に高いためまず避けられないのは直間 比率の見直しである。実行税率を引き下げ、企業の負担を少なくすることが必要である。 5 3兆円前後の実質減税を伴う形で、国税・地方税あわせた法人所得課税の実行税率を国際水 準並みの40%へ引き下げるとの小渕政権の表明は、高く評価できる。日本の経済再生のた め、平成11年からこの方針を着実に実効することが重要である。 しかし、大きな財政赤字を抱える日本財政の現状において、所得税と並んで国の財政を支 える法人税の引き下げを行うことは、更なる財政悪化をもたらす。そこで、実行税率を引き 10 下げる一方で、これまで法人税をめぐって採用されてきた様々な優遇措置を縮小し、課税ベ ースを拡大する措置が有効であると考えられる。 この課税ベースの拡大は、単に租税支出である租税特別措置を見直すだけでなく、法人税 の課税対象である法人所得を計算する祭に、これまで費用として収益から除外してきた費目 を収益として計算し、課税の対象となる法人所得の額を拡大しようとするものである。 15 次に外形標準課税である。つまり、赤字企業に対する課税である。赤字企業への課税につ いては、費用計上に対する税務調査の徹底を図り、脱税を目的とした赤字決算を排除する一 方で、収益の黒字・赤字を問わず売上の一定割合などをすべての企業から徴収する外形課税 化を採用すべきである。この外形課税化は、収益の黒字・赤字関係なく、どんな企業も経済 活動をおこなうために、道路をはじめとした公的サービスを享受している以上、一定割合の 20 税負担はおこなうべきであろう。96年度、税金を支払わなかった赤字企業の割合は、全企 業の約65%にもなっている。このことは、税負担がすべて黒字企業に集中していることを 示しており、、これでは黒字企業が赤字企業を養っているのと同じ状態になっている。 また、納税者番号制も採用されるべきではないだろうか。日本の法人税制が抜本から改正 されても、すべての企業が番号を持てば、効率的に納税がおこなわれるシステムを用意する 25 必要があるからである。外国為替管理法が1998年4月から大幅に緩和されたことで海外 と国内の金利差を背景に個人の資産が大量に海外に移動することで、利子所得税収が減るの ではという懸念がある。そのため、何らかの手段によって脱税を防止する必要性がある。こ の点、納税者番号制は脱税防止に、将来的にはオンライン納税システム導入の確立にも大い に役立つことになるだろう。 30
最後に、連結納税制度について触れることが必要だろう。連結納税制度とは、親会社と子 会社の益金・損金を合算して課税所得を算出し、課税する制度である。仮に、日本でも連結 納税制度が実施されれば、親会社の益金と子会社の損金を通算することが可能になる。これ は、単に企業の税負担が減少するだけではなく、企業に新規事業へ進出する意欲を与えるこ とになる。新規事業を立ち挙げた場合、開業後数年は損失が続くことになるが、現在は当該 5 損失を親会社等の益金を通算できないことから、企業の新規事業進出意欲を削いでいるとい うことが指摘されている。つまり、連結納税制度の導入は、新規事業育成の大きなインセン ティブになるだろう。 10 15 第3章 所得税 20 第1 節 問題意識 現在の小渕内閣は、8 月上旬に減税案をまとめたが、はたしてこれが景気対策となるのか疑 問が残る。というのも所得税については一時的な定率減税を柱に据えており、累進構造の全 面緩和による抜本的改革を先送りするないよとなっているからである。 25 今回の減税案は、所得税の規模は 4 兆円程度とし、累進税率の引き下げは最高税率のみに 限定している。つまりこの部分は恒久減税になるが、その他は定率減税で対応する事になっ ている。これはこれまでの定額方式を定率方式に変えただけの一時的な特別減税という事に ならざるを得ない。これでは国民にとっては恒常所得が増加するとは考えられず、消費増に よる景気浮揚効果も限定されてしまう。 30
所得税減税は、単に景気対策に留まらず、高齢化社会に対応した所得税体系の構造改革を 目指したものでなければならない。そういう意味で我々は累進構造の全面緩和による所得税 改革の断行が必要であると考える。 第2 節 改革の視点 5 日本の税制改革を考える場合、アメリカのレーガノミクスが大いに参考になると思われる ので、以下にその詳細を述べる。 ① 所得税については、最高税率を大幅に引き下げ、逆に、最低税率を少し引き上げて、ブ ラケット数を数個に整理統合する。これにより、税制の簡素化が図られるとともに、中高 所得階層で限界税率が大幅に引き下げられ、勤労意欲の向上と脱税の抑制が図られる。 10 ② 低所得階層の税負担の急増を回避するため、課税最低限を大幅に引き上げるとともに、 高所得階層の税負担の急減を避けるために、主に高所得階層に利用されている様々な特別 優遇措置を極力廃止し、全体として、現行税制のもとでの垂直的公平性は確保する。 ③ 税制を簡素化して、申告不要制度を導入し、徴税コストの削減と脱税の抑制を図る。 ④ 課税所得を実質所得で定義する。このためインテグゼーションを課税所得の構成要素に 15 組み込む。 レーガノミクスは大胆な税率のフラット化によって課税の中立性や効率性を確保しつつ、 課税ベースの包括所得への調整拡大によって、水平的公平や垂直的公平も同時に確保する事 が意図とされている。アメリカはこの後、急激に景気が回復しており日本も大いに参考にな るはずである。 20 最高税率に関しては日本の場合、諸外国と比べて高い。現在日本は 65%、アメリカ 46.45%、 イギリス40%、ドイツ 53%、フランス 54%である。これは、労働意欲疎外、人材の流出等 の問題がある。低成長時代に突入した日本において今後所得を増やす事はきわめて困難な状 況である。そうした中で努力して収入を増やした結果が65%の税率では労働意欲の低下につ ながる。また、これまでの年功序列に基づく終身雇用制度から、今後は自己責任原則に基づ 25 く人材流動化の時代を迎える。そうした中で今後、有能な人材が税金の高い日本から海外へ 移動する「人材の空洞化」が懸念される。さらに、日本国内企業がグローバルに活動するため に国外から人材を雇用しようとしても現在の最高税率では、海外の人材が日本へ流れてこな い事も考えられる。たとえ、海外から人材を獲得できたとしても海外の企業と比べ、税率が 高いと企業は海外企業よりも高い給与を払わねばならない。これは現在の不況下で固定費を 30
抑制しようとしている日本の企業にとっては、大きな負担になると考えられる。このように 最高税率引き下げ問題は日本の今後の経済社会のあり方に大きく関係する構造的な問題であ る。 以上の事を踏まえると、中長期的には最高税率は所得税、住民税合わせて国際水準並の 50% にする事が必要である。 5 最高税率に関しては、小渕内閣も引き下げを明言しており問題はない。しかし、最高税率 引き下げで恩恵を受けるのは、限られた高所得者層のみである。大多数を占める中所得者層 に関しては、定率減税という暫定措置がとられている。これは、定額減税を定率に変えただ けの特別減税でしかなく、第1 節で述べたように景気浮揚効果は期待できない。したがって、 累進構造の全面緩和による大胆な税率のフラット化によって課税の中立性や効率性を確保し 10 つつ、課税ベースの包括所得への調整拡大によって、水平的公平や垂直的公平も同時に確保 する所得税改革の断行が必要であると考える。 欧米各国を見ても、不況期は、大幅な所得税のフラット化で乗り切ってきている。アメリ カは1986 年に 15、28%の 2 段階(現在は 15、28、31、36%の 4 段階)にし、イギリスは 1988 年に25、40%の 2 段階にしてそれぞれ景気を回復させている。今までの日本で行われた特別 15 減税では、国民は将来に対する増税を意識してなかなか消費に回らず期待したほどの効果は 出なかったのではないか。というのもほとんどが貯蓄に回ってしまったと考えるからである。 減税が有効需要の増加に大きく寄与するためには、減税が貯蓄にまわることなく、支出され る事が必要である。もし減税がそのまま貯蓄に回るならば、有効需要を何ら増加させない事 になる。そうすると、5 年から 10 年のスパンで景気の建て直しを考え、税率を 2 段階にフラ 20 ット化するぐらいの恒久減税が必要であろう。 課税最低限に関しては、現在の円レートで見る限り、英米よりは高いが、国際水準のレベ ルではずば抜けて高いわけではない。また、今回の税制改革は景気対策という側面から判断 する必要があり、現状で課税最低限を引き下げる事は得策でないと考える。そこで、景気対 策を考慮しレーガノミクスのように多少課税最低限の引き上げるべきであろう。 25 資産性所得については、利子所得や有価証券譲渡益は抜本的税制改革で一律源泉分離課税 になっているが、分類所得のような形で固定せずにプライバシー保護の措置をとった上で、 納税者番号制度を導入して、総合課税にもって行くべきである。総合課税をしていく上でも っとも大きな問題となるのは、包括的所得税論を現実に徹底できない年金課税問題である。 年金課税の問題をクリアしない限り、資産所得の総合課税は難しい。 30
第3 節 まとめ ここまで述べてきた我々の主張は景気対策という観点から①最高税率の引き下げ、②累進 構造の緩和、③課税最低限引き上げであり、あくまでこれらを恒久減税として実施する事で ある。これを5 年から 10 年のスパンで実施する事が重要である。さもなければ、貯蓄に回っ 5 てしまうだけである。そうしたうえで、景気が回復したら、課税最低限の見直しや累進構造 の見直しの必要性があれば実施すべきであろう。課税最低限に関しては、現在のレートで計 算すれば、日本は209 万円、アメリカは 148 万円、イギリス 105 万円、ドイツ 221 万円、フ ランス232 万円であり、著しく高いわけではないが、景気が回復しレートが変われば、課税 最低限は国際的に見て著しく高くなるであろう。(平成 7 年のレート換算−1ドル 99 円:日 10 本353 万円、アメリカ 163 万円、イギリス 79 万円、ドイツ 257 万円、フランス 277 万円)そ うなった場合、累進構造、課税最低限の見直しが必要になる。 15 第 4 章 公共投資 20 第1 節 景気対策としての公共投資 公共投資の目的は、生活基盤や産業基盤を整備し生活、生産環境を整備すること、経済の 安定化、の2 つに分けられる。ケインズ的な財政政策では、公共投資を行うことにより失業 者の雇用創造、消費の増大、また設備投資への波及効果により生産増大につながり、不足し ていた有効需要をつくりだす事によって景気が回復すると考える。これが景気対策としての 25 公共投資の役割である。 70、80 年代においては、公共投資はその有効需要の創造を十分果たし、経済成長に効果が あったといえる。しかし、現在の平成不況の間、計6 回にわたり総額 66 兆円規模の経済対策 が行われ公共投資が増大したが、日本経済は自立的回復にはいたらず、過去のような公共投 資の効果は出ずに景気の下支えとしてしか機能しなかった。 30
60∼70 年代は、国内総生産(GDP)の1%にあたる公共投資を行うと、2.5%の GDP 増加 の波及効果があったものの、現在は1.4%しかなく、以前ほど効果がない(図 1)。これは、 バブル期につみあがった過剰な生産設備ストックやその後の資産価値の下落などにより民間 の自律回復メカニズムが弱まり、財政政策の民間需要拡大効果が押さえられ、波及効果が中 断したためだと考えられる。また、産業構造の変化に伴い、建設財、資本財の輸入浸透度が 5 高まっており、将来への先行き不透明感から家計消費も減少傾向にある。限界消費性向の低 下、限界輸入性向の増加は公共投資の乗数効果を低下させる。公共投資の乗数効果低下はこ のような事からおきているだろう。 小渕政権では、緊急経済対策として 16 兆円の公共投資を予定している。この 16 兆円のう ち、真水が8 兆円から 9 兆円とすると、これだけで GDP の 1.8%程度になり、乗数効果を 1.4 10 として経済成長率を3%前後引き上げる力がある。「構造的視点」のない今回の景気対策の評 判が悪いにもかかわらず、現在マイナス成長で戦後最大の不況に直面している日本経済が一 息つくことは間違いない。しかし、現在の不況の原因は構造的なものであり、今の日本の財 政、経済状況を考えると、もはや従来の公共投資による景気対策は限界があり、今後この総 需要管理政策は大きな転換が必要になる。 15 第2 節 今後の公共事業政策 もはや公共事業政策は以前のような大きな短期的経済効果を上げることはできない。今後 の公共事業費は、減税中心の景気対策のための財源確保により大きく削減される必要がある。 また、無駄な支出が多く削減可能でもある。しかし、日本の社会資本整備状況は諸外国と比 20 べ、決して高いものではない。公共投資は単に景気対策だけでなく、将来に向けた社会資本 整備の役割も持つ。より安全な生活基盤の整備、将来に向けた産業基盤の整備は必要な事で ある。これらの整備のためには、限られた予算で社会資本を着実に整備していくこと、社会 資本形成の効率性を高めていくことが重要である。 第 1 に社会資本プロジェクトに費用対効果分析を活用した事業評価を行うべきである。費 25 用対効果分析とは、それぞれの公共事業が長期的にどれだけの効果を日本にもたらすかとい う計算を厳密にやり、それを費用と比較する手法である。もし長期的に得られる効果の合計 が費用を上回るならば、その公共事業は実施する値打ちがある。しかし逆に、費用が効果を 上回る場合には、そのような公共事業をやるべきではない。なぜならば、それは「非効率的 な財政資金の使い方」に他ならない。 30
第 2 に、公共投資配分の硬直性が問題とされてるが、21 世紀に向けた豊かで活力ある経済 社会の構築に向けて、真に必要な分野への重点的な配分が必要である。公共投資の予算配分 はこの10 年間を見ても、治山、治水、道路、港湾、住宅、下水、農村と 1∼1.5%しか変わっ ていない(図4)。各省庁の省益と族議員の圧力が強いため変えられないのであろう。産業構 造の変化に対応した中長期的な産業基盤整備は、今後日本経済の成長に欠かせないものであ 5 る。 第3 に公共事業コスト、非効率性の改善である。日本の公共土木工事コストは諸外国に比 べて高く(図5)、民間部門と公共部門の建設コストを比較しても、ここ 3∼4 年では民間部 門が公共部門に対し相対的に低い水準になっている(図4−6)。これは入札制度とも関係し ているだろう。入札、契約制度の透明性、公平性、競争性を高めるべきであり、市町村を中 10 心に一層推進していく必要がある。例えば、透明性、競争性の高い入札方式の一つである公 募型指名競争入札の導入状況を見ると、都道府県や指定都市では導入割合が5 割を超えてい るが、市町村では極端に低いものとなっており(図7)、適切な入札方式の採用を進めること が必要だ。政府は、平成9 年に「公共工事コスト削減対策に関する行動指針」を策定し、公 共工事コストの10%削減という数値目標を掲げている。 15 第3節 PFI 日本の公共事業の限界と問題点を打開する公共事業改革の手法として考えられるのは、 PFI(Private Finance Initiative) である。PFIは公共部門により行われていた好況サー ビスを、民間企業の資金やノウハウを導入することにより実施する事業方式で、公共分野へ 20 の民間企業の参入を促進することによって効率化や質の向上を図ろうというものである。P FIの実例としてよく挙げられるのがイギリスでの経緯であり、このPFI導入のメリット として考えられるのは、質の高いサービスを高い効率で安定性を持って提供できるというこ と、事業のリスクコントロール能力が高まるということ、事業実施に伴う責任の所在が明確 になるということ、新たな投資機会やビジネスチャンスが生まれることなどが挙げられる。 25 公共側から見た場合では、財政的な支出の絶対額を削減できることが何よりも大きい。また、 公共サービスを提供して行くに当たって求められる専門的な技術やノウハウ面での対応の負 担が軽減される。技術進歩が著しい現在、個々の分野での最新技術への対応を継続して行く のはあまりにも無理があり、公共側が業務に管理能力も含めて民間側に委託する必要がある。 最後に、地域における産業を生み出すことが出来る。今までは公共工事のメインコントラク 30
ターは地域外の大企業であった。PFIの導入によって中央からの工事を受け入れることで はなく、事業の主体者を地域に受け入れる地域振興を目指すべきである。 PFIの事業方式の特徴は、3 つに分類される。一つ目は「公共投資の肩代わり」。政府が 資金不足で社会インフラの整備を行うだけの十分な財政的余裕がない場合に、公共財制に負 担を軽減することを目的としている。設備の建設費用は民間企業が利用者から直接回収し、 5 してがって公共は直接事業には関与せず計画策定や事業に関する資格の供与や事業の監視な どを行う。二つ目は「公共サービスの移転」。これまで公共機関が行ってきた公共サービスの 実施を完全に民間に移転してしまう方式である。民間事業者に対しては税金を原資とした料 金が公共機関から支払われる、言わば施設付きのアウトソーシング。これは「肩代わり」と 比べるとはるかに民間事業の自由度を高めることが出来、公共への最終的な譲渡がないこと 10 から、それだけ民間の事業継続のリスクが高まるので自己責任の度合いが高い市場メカニズ ム型の方式である。三つ目は「独立民間事業型」。資格供与や事業実施のための許認可に関し ては公共に依存することになるが、手続きを済ませた後は公共機関との取引を一切持たない というものである。きちんとした市場の整備がされているのであれば民間企業にとって最も 魅力的な事業方式であるが、公共サービスの対価を正当に一般に負担させなければ困難であ 15 る。 第4節 PFI の可能性 PFIの導入は日本の公共事業構造改革のどこに効果があるのだろうか。それは地方と中 央の関係である。これまでの公共工事は中央省庁と自治体の軸を中心として実施されてきた。 20 そしてそれが自治体の財政的な独立性と創造性を奪い発想力を低下させてきたのである。P FIが普及することにより社会インフラ造りの中心は、自治体と民間企業の関係へと移行す る。PFI整備の場合原則として、民間企業から投下される資本金と民間金融機関からの融 資によって事業の資金の多くが調達される。日本では民間投融資つまり事業資金調達が「資 本金+財政投融資+民間金融機関からの借入れ」の形となる。しかし決定的に違うのは資金 25 の調達を民間企業が行うということであり、財投にしろ補助金にしろ供与されたとしても省 庁から民間への供与であるため、自治体は基本的に中央省庁と事業開始の資金調達に関して 交渉を行う必要がなくなり、自治体は事業の監視や計画といった自治体本来の役割を重視し た活動が出来るようになる。補助金システムからの脱却は、自治体と民間企業の戦略的提携 を意味するものである。 30
第5節 まだまだ模索段階の日本型 PFI 以上のようにPFIのあり方について考察してきたが、日本の現状を十分に踏まえてきた とはいえ、やはりイギリスの実例を引きずった点が多く、必ずしも日本が適応できるとは言 い難い。なぜならば、イギリスのPFIは徹底した民営化の後に実施されたものであり、そ 5 の対象となってきた分野は純粋な民営化の取り組みが見送られた事業の分野である。従って 日本型のPFIの特徴は民営化とPFIが同時進行していることとなる。イギリスで民営化 の対象になった分野の事業も含めたPFI議論が必要なのである。そのためには、日本型の 明確な視点が重要であり、このままでは従来の民活政策の拡張版に過ぎずイギリスのような マクロ経済へのプラス効果を期待することは難しい。以上のようなPFIを円滑に推進する 10 には、以下の理念が必要となる。第一に、「公開」。市場メカニズムの最も基本的なポイント であり、情報公開と客観化を意味する。これらは事業会社の選定段階や責任体制、公共支援 の有無、などの情報を完全に公開するとともに、指標の客観化が必要である。第二に「公平」。 これは既得権社会からの脱皮を意味し、伝統的な公共工事の体質の打破である。次に「競争」。 競争入札は選定段階の透明性を確保する上でも重要であり、市場メカニズムの中では競争原 15 理は必然的なものである。四つ目に「自己責任」。市場のルールにおいて民間企業の自己管理 や問題処理能力を育成する意味でも、民官の役割分担をいかに明確にするかは重要である。 最後が「民間論理」。PFIが民間主導であるためには、投資が民間企業の投資論理に添った 形で行われなければならない。公的事業であることや地域経済のためのインフラ整備である ことが、回収率や収益率などを無視した投資であってはならない。 20 この PFI の導入は財政支出の大幅な削減や、効率的な社会資本の整備が可能になるだけでな く、市場メカニズムに促した経済活動によって新しい可能性が生まれやすい環境作りと言う 意味でも、景気対策として充分に考えられる手法である。 25 30
5 10 15 終章 我々がこの論文を執筆している間に次々と日本経済悪化のニュースが伝えられた。7 月 23 日 にムーディーズが①日本経済が従来の政策では対処できないような深刻かつ構造的な問題を 抱えていること、②中期的な構造改革および経済運営について、立法府および政府当局にお 20 けるコンセンサスが得られていないこと、③公共部門の財政問題がその他の高格付けの国と は異なり、中期的に悪化し続けていること、④日本の対外的支払能力が低下の逃しをみせて いることを理由に日本の債務格付けを引き下げ方向で見直す事を発表した。また、8 月 28 日 には日経平均株価が12 年半ぶりに 1 万 3000 円台に突入し、10 月 5 日には、ついに 1 万 3000 円をも割ってしまった。いよいよ日本発デフレ連鎖の危機が現実味を帯びてきた。もう一刻 25 の猶予も許されない状況である。 我々はこうした現状を打開するための政策を提示したつもりである。結果としてサプライ サイドエコノミックスを標榜する事となった。サプライサイドエコノミックスには賛否両論 があろう。アメリカの例を失敗と言うエコノミストが大勢いる事も重々承知している。確か にアメリカではレーガノミクスにより赤字が増大したが、景気が回復した事もまた事実であ 30
る。したがって、我々は現状を踏まえると最善の策ではないかと考える。 我々の出した結論に至らぬ点も散見されるだろうが、そうした点を大会当日に議論し、理 解を深める事ができれば幸いである。 5 10 15 20 25 30
<参考文献> 経済団体連合会ホームページ 平成 11 年度税制改革に対する提言 図解 財政のしくみ 東洋経済新報社 宮脇 淳 5 税制が変わる国家が変わる ダイヤモンド社 奥江 勲二 全詳解 金融大改革のすべて 東洋経済新報社 レーガノミックス 中公新書 土志田 征一 10年デフレ 日本経済新聞社 斎藤 精一郎 「複合デフレ」脱却 日本経済新聞社 10 手に取るように日本の課題が分かる本 かんき出版 週間ダイヤモンド ダイヤモンド社 THE21