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1. 浅大腿動脈慢性完全閉塞に対する

 体表面超音波ガイド下の血行再建

青森県立中央病院 循環器科,臨床検査部1)

吉町文暢,三浦 大,會田悦久,坂本幸則,丹野倫宏,川原隆道

金城貴彦,中﨑真也,小林数真,田嶋育子

1)

,柏木さおり

1) はじめに  閉塞性動脈硬化症(ASO)は,動脈硬化に関わる基礎 疾患の増加,高年齢化などにより,徐々に増加してい る。なかでも,血行再建を必要とする浅大腿動脈の狭 窄,閉塞は増加傾向にあると考える。  浅大腿動脈(SFA)の慢性完全閉塞(CTO)に対する治 療のガイドラインとして有名なものには TASC Ⅱがあ るが,しかし,最近のステントの成績を考えた時には, no stenting zone と呼ばれる部位にステントがかから ない限りはインターベンションを第一に考えても良い 時代になったと言っても過言ではない1,2)  インターベンションの手技は,従来からの造影に 基づいて術者の感と感触で行う方法,retrograde と antegrade の両方からガイドワイヤ(GW)を通過させ る false lumen angioplasty3),血管内超音波ガイドで行

う方法4,5),体表面エコーガイド下で行う方法など,様々 ある。いずれの治療方法でも初期成功率は著しく高く なったが,慢性期の成績を比較した大きなスタディは 無く,術者や施設の考え方によって手技は選択されて いる。  当科においては,下肢閉塞性動脈硬化症における殆 ど全ての末梢血管CTOに対して体表面超音波(エコー) ガイド下にてインターベンション治療を行っている。

PTA(大腿・膝窩,下腿動脈)

なぜエコーガイド下インターベンションか?  CTO へのインターベンションに,どんな情報が必 要であろうか?閉塞している末端の位置が解ればそれ で良いのであろうか?単に血管が詰まっているという 情報だけでよいのであろうか?  一見健康そうにみえる血管でも閉塞部位を含めて全 ての動脈において程度の差はあれ動脈硬化が進行して いる。狭窄部や閉塞部においても様々な病変が混在し ている。それぞれの異なる病変に対しては異なる局所 情報を細かく得ることは血行再建に有用である。局所 情報を低侵襲でリアルタイムに確認する手段はエコー が最も優れている。  我々循環器内科は,実際の動脈を見たり,CTやMR Angio の画像を構築したりする機会は少ない。故に, 下肢動脈の解剖学的な立体感は得意ではない。これら をカバーする情報もエコーで得られる。  SFAは長い血管であるため,冠動脈用血管撮影装置 にて閉塞部全体を一視野で撮影できないことも少なく ない。末梢血管治療用の固い GWをどこに進ませるべ きかがよく解らないままに,手技を進めることは危険 かつ無謀である(図 1)。エコーでは長軸像で GW の進 むべき方向を導きながら治療が行われる(図 2)。  血管径の測定もエコーが一番優れている。CTやMR 図 1 ガイドワイヤ(GW)の オリエンテーション a の閉塞部は矢印から矢印の 間である。このように,一視 野に閉塞部位の全体が入る場 合には GWの進むべき方向が ある程度理解できる。しかし, b のように,閉塞部位に GW が入った後に,一視野の中で 側副血行路も末梢端も何も造 影されないときに GWを何処 に向けて進めるべきなのであ ろうか? a b

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第 39回日本IVR学会総会「技術教育セミナー」:吉町文暢,他 技術教育セミナー / PTA(大腿・膝窩,下腿動脈) Angio で血管径の測定を行う施設もあるが,時間や人 員もしくは血行再建に興味が無い放射線科スタッフに はそこまで依頼するのは難しい。  CTやMR Angioを撮影しながらインターベンション を行うことはできない。すなわち,術前情報と術中情 報が異なる中で治療を行っている。この情報の乖離が 合併症の誘因になったり,予想以上に治療に難渋する 原因になったりする。  以上より,エコー情報を,CTやMR angioや血管造 影の画像と合わせて情報を処理することで,末梢血管 インターベンションを行うのが望ましいと考える。 超音波による術前画像診断  治療前の術前検査よりエコーガイドインターベン ションは始まっている。この詳細な情報を整理するこ とで,実際の治療は容易で安全に施行される。  閉塞起始部と末端部はもっとも治療を慎重にすべき 場所であるために,その位置,形状,硬さを丁寧に観 察する。この時点で手技の際に最初に使用する GWが 決定している。  閉塞血管内部は,血管径はもちろんのこと,石灰化 の程度と局在,屈曲,小さなチャンネルの有無などを 確認しておく。長い閉塞部はその局所の情報を連続し てつかむようにしたい。エコー輝度の変化,大きな石 灰の塊,小さな石灰化粒子の散在などで閉塞部位の固 さをある程度予想することができる。造影で血流が無 い部分のすべてが固いわけではなく,実際にはかなり 柔脆な組織であったり,血栓性の閉塞であったりする。 エコーで観察できる程度のマイクロチャンネルや微細 な島状に血流がある場合には,GWが容易に血管内を 通過できると予想できる。一方その際には末梢塞栓症 の懸念も必要になる。硬そうな部分がどのくらいある のか,柔らかそうな部分がどのくらいあるのかを確認 することで,手技時間を予想することもできる。  さらに,その後バルーンやステントの使用を考える と,閉塞していない部分の血管情報は,閉塞部位の情 報よりも大切かもしれない。造影では正 常に見えて も,実際にはアテロームが豊富についていることも少 なくない。  また,病変部だけではなく穿刺部の大腿動脈の観察 も重要である。治療が必要な程度でなくても,穿刺部 位にアテロームが多量についている時にはその穿刺部 位を選択すべきではない(図 3)。 図 3 穿刺部の観察 大腿動脈の穿刺を計画した際に穿刺部の観察も大切である。CTなどでは確認できないアテロームや石灰 化のために,穿刺をはばかる場合もある。 図 3aの総大腿動脈はほぼ正常であったため,順行性の穿刺が行えた。 図 3bは浅大腿動脈の慢性完全閉塞病変を認めたが,穿刺部の総大腿動脈のアテロームと石灰化を認めた ため,左総大腿動脈よりアプローチを行いクロスオーバーでの治療を行った。右総大腿動脈には治療を 行っていない。 a b 図 2 GW の描出 GW先端を描出し,さらにその先の組織を観察しな がら GWを進める事ができる。進む前方を確実に 見ながらできるインターベンションは他には無い。 石灰化 GW先端

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エコーガイド下インターベンションの実施  患者の臥床方向は,エコー技師の立ち位置も考えて 選択する。たとえば,左 SFA の治療を行うときには, 通常の方向に臥床してもらうが,右 SFAの治療のとき には,通常とは反対側・下肢と上肢の向きを反対にし て臥床してもらう。  患者の臥床の向きと合わせて,エコーにて安全と確 認した大腿動脈か,上腕動脈アプローチを選択する。  シースもしくはシースレス・ガイディングカテーテ ルを挿入し,サポートカテーテル及び GWを閉塞部間 近まで進める。ここまでは通常の手技と同様に透視を 使用する。GWは0.014”もしくは0.018”を選択する。 微細な作業を行うために,0.035”は避けるべきである。  ここから先,エコー技師が血管撮影室に入ってから は,透視は GWが閉塞部位を通過するまで使用しない。  まずは,エコーで GWの先端を確認する。見えにく いときには GWを数センチ前後に動かしながら,先端 を回転させてエコーで確認する。  閉塞起始部のどの位置に GWを穿通させるかが,イ ンターベンションの成功・不成功を決めるといっても 過言ではない。エントリーが false lumen に入らない ようにするのは当然で,血管のなるべく中心を通る 末梢側の路を選択する。閉塞好発部位である SFA と DFA の分岐部は,エコーで観察すると閉塞部位に確 実に GWを進めることができる(図4)。  閉塞部内の GW は 30 ~ 45 度以下で方向性を持って 回転させながら慎重に進める。エコーは長軸像で GW の先端とその少し末梢側を描出する。GW の進むス ピードに合わせてエコーも移動する。エコーで GWを 見失ったときには,GWが血管の中心からずれ,思わ ぬ方向に進んでいる場合が殆どである。決してそれ以 上にワイヤーを進めずに,短軸でワイヤーの局在を確 認するか,思い切って数センチ GWを引き抜いて先端 を確認できるところから再度スタートするようにする。  透視ガイドのインターベンションでは GW を抜くと, 次は同じ場所にワイヤーが入らないのではないかとい う懸念より大胆な操作はやりにくい。しかし,体表面 エコーガイド下では,局所を見ながらワイヤー操作を 行っているので,同じ場所にワイヤーが入っているか どうかは一目瞭然である。遠慮無く思い切ったやり直 しが可能である。  同様に血管の外側縁に GWが進みがちな時にも,大 きく GWを引いて軌道修正することが望ましい。非常 に小さな偏曲点をもって血管内で GW の軌道修正は 難しいし,その後もGWのコントロールに難が生じる。  血管を塞ぐような大きな石灰化病変の存在により到 底 GW の通過点がなさそうに見える箇所に対しても, まずは中心を通るチャンネルがないかどうか確認する べきである。大きな石灰化には,軽石の様に中空があ いている場合も少なくない(図 5)。  エコーで GW 先端を見失いそうになったときには, GW を数ミリ前後させながら先端の方向性が変わらな い程度で小さく回転させる。どうしても見えないとき には GWのシャフトが見える部分までGWを引き戻す しかない。  術者があわてると,GW は U 字になって進んでしま う。技師はこれに気がつかずに,シャフトの一部を先 端と勘違いして誘導してしまうことがある。このよう になると大きな偽腔を作り出し,閉塞長が長くなり, エコーガイドの意味が無くなる。結果,不要な場所, 入れてはいけない場所にまでステントを入れざるを得 ない結果になる(図 6,7)。  長いCTOでは,実際にGWがどのくらい進んだのか, 到達の程度を確かめたくなる。ここで,透視でオリエ ンテーションをつけたくなる気持ちがでるが,エコー ガイド中に絶対に透視を出してはいけない。見えるの は,エコーのプローブと技師の手だけである。無意味 どころか,技師は無用な被ばくにさらされる。どうし ても,どのくらい進んだかを確かめたくなった際には エコーを一度外してもらう。骨条件やレントゲン不透 過メジャーなどを用いて GWの位置を確認すると,目 標が見えてくるので次のワイヤー操作へのモチベー ションとなる。しかし,一度エコーを体表面から外す と,もう一度全く良い条件のポジションを探すまでに 時間がかかる。それまでは GWの先端を追って,連続 する像で SFA を追いかけてきたために非常に良いエ コーの描出が得られていたのだが,一度外すとエコー 図 4 大腿動脈分岐部 浅大腿動脈と深大腿動脈分岐部は,浅大腿動脈慢 性完全閉塞の好発部位である。ここに GWを適切 に進めるときには,エコーは力を発揮する。わか りにくいときにはカラードップラーをあてて閉塞 起始部の形状を観察するとよい。 CFA:総大腿動脈,SFA:浅大腿動脈,DFA:後 大腿動脈 CFA SFA DFA

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第 39回日本IVR学会総会「技術教育セミナー」:吉町文暢,他 上のオリエンテーションを失ってしまうこともある。  エコーガイドが一番有用性を発揮するのは GWが閉 塞部より抜けるときである。可能な限り,中枢側で閉 塞部より抜け出すようにする必要がある。とくに閉 塞部位末梢では GWは血管の外側に向いやすいが,エ コーで先端をみながら慎重に閉塞部位の出口を捉える ようにコントロールする。ここで慎重さを欠くと,簡 単に sub intimal lumenにGWは迷入し,閉塞長を長く し,大切な側副血行路を壊してしまうこともある。通 常の断層エコーで解りづらい場合には,カラードップ ラーを使用して,血流がある末梢を確認し,その方向 に GWを進める。 技術教育セミナー / PTA(大腿・膝窩,下腿動脈) 図 6 良いエコーと GW の関係 a : GWをエコーが追従している事を確認しながら手技を進める。 b : 石灰化で見えにくくなることもあるが,無理に GW を進めてはいけない。先端が見える範囲で GW をコントロールするべきである。 c : ワイヤが J 形状を保ったまま,なるべく一番中枢側に近い場所で非閉塞部に抜けるようにエコーで 導くのが良い。 図 7 悪いエコーと GW の関係 a : エコーで見える範囲を越してGWを進めてしまうことがある。 b : 術者がさらに GW を進めると,先端が U 字になって進む。エコーではシャフトの部分が見えている だけである。 c : さらに GW を進めると偽腔が大きくなり,閉塞長を医原性に長くしてしまう。最終的に GW が末梢 に抜けたとしても,側副血行路を潰し長いステントを使用する事になる。 a b c a b c 図 5 石灰化病変 a : GWは石灰化病変にあたり,末梢側へなかなか通過できない。 b : GWが石灰化病変の中央の空洞に潜り込んですす進める事ができた。 c : GWは通過し,末梢へさらに進めて行く事が可能であった。 a b c 石灰化病変 GW先端 石灰化病変 GW先端 石灰化病変 GW先端

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 GWが閉塞部より末梢に抜けたように見えても慎重 になるべきである。エコーガイドであっても 2 方向以 上での確認が大切であり,長軸だけではなく短軸でも 確認してから,ワイヤーを末梢まで進める。  ここでしばらくはエコー技師に休憩をしていただ く。技師は術者以上に極度の緊張を強いられているこ とを理解しておくべきである。  透視下でのインターベンションを行う。当科ではGW 通過後は最初に 2.0 ㎜の小径バルーンで閉塞部位の拡 張をしている。その後,GWを柔らかいものに変更し て,バルーンのサイズアップを行う。バルーンのサイ ズは,術前エコーで測定した血管径で決めている。ス テントサイズも同様である。しかし,実際にはアンギ オや患者の拡張時の症状なども合わせて決定していき たい。エコーも情報の一つであり,すべてと過信する のは良くない。  SFAはステントをできれば挿入せずに終了したいと 考えることもあるが,バルーンのみでは解離が増大傾 向にあったり,血流を妨げるような所見があったり, 十分な内径が得られていなかったりという場合には, ステントの挿入を躊躇しない。長いCTOに対しては最 初からステントを挿入するつもりで戦略を立てている。  ステントを挿入し,後拡張を行った後は,病変部治 療のエンドポイント決定の為に改めてエコーの出番 である。短軸で中枢側から末梢側までプローブを移動 させて確認することでステントの拡張はよく観察でき る。不十分な拡張部位には,高圧拡張かバルーンのサ イズアップで対処する。また,ステントが病変部や解 離を十分カバーできていないときには,もう 1本ステ ントを追加挿入せざるを得ない。  最後は造影を行う。末梢までの血流や細かい枝の 評価など,エコーではわからない情報も確認すべきで ある。 超音波による術後評価  治療直後に血管径,ステントの拡張,解離,血流の 評価などが血管造影室で即座にできる。これが慢性期 のコントロールとなり,同じ条件で侵襲無く比較評価 していくことが可能となる。

エコーガイド血管形成術 Tips & Tricks

 前述した具体的な治療内容と,エコー技師と術者の 技術と知識の習得とトレーニングが Tips & Tricks の 全てである。  通常の末梢血管エコーが全く問題なく速やかにでき るレベルまで,技師はトレーニングをしなければいけ ない。一度や二度の末梢動脈エコーの経験で治療がで きるようにはならない。スクリーニングとして正常な 血管を沢山見ることが技術の向上につながるはずであ る。また,エコー技師にも,CT や血管造影を見てい ただき,動脈の立体感を捉えてもらう。  インターベンション中は自分のペースではなく治療 のペースで画像を出すことが要求される。検査時のよ うに自由に肢位がとれるわけではないので,その体勢 でも末梢血管を確実に捉えるようにする。  また,多くの場合技師はインターベンションの知識 をもともと持っていない。GW とは,バルーンとは, ステントとはなど基本から勉強していただき,実際の インターベンションの際にコミュニケーションに困ら ないよう勉強すべきである。インターベンションの各 段階で求められるものを理解しながら治療に参加する と,治療はスムーズに進む。血管に関しての知識が豊 富な技師は,インターベンションのことはすぐに理解 可能であり,客観的な所見を観察しながら治療を成功 に導く大きな力となる。  インターベンションのトレーニングは,最初から CTO への治療を行うのではなく,まずは高度狭窄に 対しての治療をお勧めする。具体的には,治療中に血 管を長軸,短軸で自由に描出できること,GW先端の 描出と追従のトレーニングである。完全閉塞でなけれ ば,慣れた術者はエコー無しで治療を終わってしまう のであろうが,それではエコーガイドインターベン ションのトレーニングとはならない。術者も最初から 慢性完全閉塞の病変に対してのインターベンションを したのではなく,高度狭窄から始めたことを思い出し てほしい。一足飛びにエコーガイドインターベンショ ンという最高度の技術を技師に求めてはいけない。そ のためには術者も協力を惜しむべきではない。  術者もトレーニングの必要がある。エコーと実際の 病変を一致させ,血管のオリエンテーションをつける こと,ワイヤーを自分の思う方向にコントロールする こと,などは最低条件である。また,その立体感も同 様に習得すべきである(図 8)。  術者も,エコーの知識は技師任せではよろしくない。 エコーの基本的な事項は当然であるが,術者もエコー の画像をみてその部分の情報が解るように努めなけれ ばいけない。また,エコー技師のどんな質問にも答え られるように,さまざまな観点で勉強をしておくべき である。  実際の治療の際には,ワイヤの進む速さとエコーの 進む速さをお互いに合わせるといった,術者と技師と 息のあった作業が必要になる。ワイヤ操作のとき,術 者は「ワイヤを進めます」「ワイヤを引きます」と声を かけながら操作を行う。技師も「先端はここです」「も う少し下です」「ワイヤが見えないです」など遠慮なく 情報を提供していただきたい。  術者と技師の知識の共有も大切であるので,術前カ ンファレンスなどを行うのも有効であろう。 エコーガイド下インターベンションの利点  まず,エコーは侵襲無く,治療前/治療中/治療後 /慢性期と同じ条件で見ることができるので経時的な

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第 39回日本IVR学会総会「技術教育セミナー」:吉町文暢,他 変化を見ることが可能である。  エコーの使用でほぼ確実に true lumenを捉える治療 が可能である。また,その中でも血管の中心部を捉え ることができるため,バルーンやステントで拡張時に acute gainを多く取ることができるという利点となり, 再狭窄率の低減につながる。

 これと比較して IVUS ガイドは false lumen にデバイ スを入れ,GW通過後にそれが適正なルートを通って いるかどうかを判断する手技である。血管の短軸像を 見るだけであるため前方向の確認はできない。故に, 基本的には try & error を繰り返していく手技となる。 また,IVUS の太いプローブが入った大きな偽腔のた めに,ステントの挿入は必需である。  エコーを使用すると造影剤の使用量が少なく済む。 腎不全の患者に対しては炭酸ガスを使用しながらの治 療はさらに造影剤使用量を低減させる。  無用な放射線被ばくを避けられる。患者に対しては もちろんであるが,被ばく線量が多くなりがちな末梢 血管治療に携わる術者にとても良いことである。  False lumen angioplasty のように,2 ヵ所の穿刺部 位は不必要である。穿刺部位が増えることは手技時間 も長くなり,出血性合併症も多くなる。 エコーガイド下インターベンションの欠点  現時点でのエコー自体の問題点としては石灰化に弱 い。また,断層やドップラーのみという平面的な考察 で観察をし,頭の中で立体構造を再構築しなければい けない。しかし,これらはたいした問題ではない。  また,局所を見ながら丁寧に GWを進めて行くので, 他の方法に比較して時間がかかると言われる。しかし, 良い治療を提供する為の時間を問題にすべきかどうか 疑問である。  エコーガイドはエコー自体の問題よりも人的な問題 の方が大きい。  多くの技師は日常検査業務に多忙であり,治療まで 時間を割くことができないという。また,治療に携わ るチャンスにも恵まれない。実際の治療をみる機会, 研究会に行く機会,勉強会などの時間を作り,技師の 根本的なモチベーションを向上させたいが,治療は余 計な仕事扱いとする病院もある。  人件費も考えなければいけないのも現実である。術 者や技師がインターベンションに使う時間は決して短 いものではない。手技料に見合うものかどうかは難し いかもしれない。もちろん,我々医療従事者は,金銭 の為に治療をするのではなく,良い治療の提供にこそ 意味があるが,不幸にもそれを理解していない組織も 多い。  また,ほとんどの施設で,エコー技師は循環器科専 属ではない。検査技師の力を借りるには,多くの部門 の協力が必要である。多忙な業務の合間を縫って参加 していただくので,都合の良い時間に治療を始められ るとも限らないし,他の業務をカバーする他の技師へ の援助もお願いしなければいけない。実際,当院でも, 多くのネゴシエーシ ョンが必要となる。外来にては, 検査予定をマネージメントする外来看護師とスタッフ へ感謝しつつも,エコー技師のスケジュールをおさえ, 各方面の連絡や,嫌みを言われながらも検査部責任者 へ循環器治療に携わることを依頼しなければいけな い。入院後の病棟でも,通常は技師の日常業務が終わっ てから始まる手技になるので,患者とその家族には遅 い時間の開始と終了にお詫びをし,手薄の準夜帯に治 療が食い込むことで看護師やスタッフにも迷惑をかけ てしまうことを謝罪する。医師も多忙な日常業務をこ なしている日々の中,ここまで各方面に頭を下げて行 う手技かどうかと悩むかもしれない。プライドが高く しかし怠慢な医師にとっては嫌になる内容である。し かし,良い治療と信じるものが実現できるのであれば このくらいはたいした問題ではないと筆者は考える。  体表面エコーを一度は志したが断念していく病院の 多くは,このトレーニングの難しさと各方面へのネゴ シエーションの困難さに,途中で気持ちが折れてしま うのである。「エコーガイドが良いのは解っているのだ が…,こんな面倒くさいことをしなくても,ある程度 の結果は得られるので」という言葉でこの道を断念し てしまうのは非常に残念である。 結 語  エコーガイドにより,安全で確実なインターベン 技術教育セミナー / PTA(大腿・膝窩,下腿動脈) 図 8 浅大腿動脈の屈曲 浅大腿動脈は直線の血管であろうイメージが大き いが,とくに膝窩近くの末梢近くになるにつれて 裏側に回り込みながら屈曲している。直線のイ メージで固い GWを真っ直ぐに進めることは血管 穿孔の原因になり得る。なるべく GWが血管の中 心を通るようにコントロールする必要があり,血 管の屈曲を意識しながらGWを進めるべきである。 GW先端

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ションが可能である。

 術者自身の欠点と放射線診断と治療の欠点を補うも のとして,さらなるエコー及びエコー技師の活躍が期 待される。

【参考文献】

1) Soga Y, Iida O, Hirano K, et al: Mid-term clinical out-come and predictors of vessel patency after femoro-popliteal stenting with self-expandable nitinol stent. J Vasc Surg 52: 608 - 615, 2010.

2) Jiang XJ, Zhang HM, Yang Q, et al: Outcome of en-dovascular therapy of iliac, superficial femoral and popliteal arteries in 136 patients. Zhonghua Xin Xue Guan Bing Za Zhi 35: 1015 - 1019, 2007.

3) Noory E, Rastan A, Schwarzwälder U, et al: Retro-grade transpopliteal recanalization of chronic super-ficial femoral artery occlusion after failed re-entry during antegrade subintimal angioplasty. J Endovasc Ther 16: 619 - 623, 2009.

4) Kawasaki D, Tsujino T, Fujii K, et al: Novel use of ultrasound guidance for recanalization of iliac, femoral, and popliteal arteries. Catheter Cardiovasc Interv 71: 727 - 733, 2008.

5) Krishnamurthy VN, Eliason JL, Henke PK, et al: Intravascular ultrasound-guided true lumen reentry device for recanalization of unilateral chronic total occlusion of iliac arteries: technique and follow-up. Ann Vasc Surg 24: 487 - 497, 2010.

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第 39回日本IVR学会総会「技術教育セミナー」:佐藤友保

2. 下腿動脈の血管形成術(PTA)

あかね会土谷総合病院 放射線科

佐藤友保

はじめに  近年の高齢者の増加,糖尿病患者の増加,血液透析 症例の増加などに伴い,全身の動脈硬化性変化に伴う 疾患の頻度が増加している。下肢領域では慢性下肢虚 血に伴う足趾潰瘍,安静時痛症例の増加が知られてお り,重症下肢虚血(critical limb ischemia:CLI)と呼ば れている。  これらの症例では腸骨動脈から下腿動脈にかけての 広い範囲に,多発性狭窄・閉塞病変が存在することが 知られており,血行改善が治療のためには必須である。 近年ガイドワイヤや,PTA用バルーンなどの用具の急 速な進歩に伴い,下腿動脈を含む下肢動脈の PTA が 広く行われるようになり,成績も年々向上している。 CLI の定義と診断・治療  CLI の正式な定義はいまだはっきりと決められてい ない。一般的には① 4 週間以上続く疼痛,②潰瘍病変 が神経障害や感染巣など他の原因でないこと,③壊死 が下肢全体の虚血で引き起こされており,アテローム 塞栓による虚血ではないことなどが挙げられる。下肢 虚血に対する診断と治療のガイドラインとして TASC Ⅱ(Inter-Society Consensus for the Management of Pe-ripheral Arterial Disease 2007 年)がありこれに基づい た診断と治療が世界的に行われている。CLI の主症状 は足部の安静時疼痛である。虚血性安静時疼痛は通常 夜間に生じるが,下肢下垂位での症状軽減が特徴的で ある。重症化すると虚血性壊疽を生じ,足趾や踵に好 発する。小さな外傷や火傷を契機として急速に重篤化 することも多い。   下 肢 虚 血 の 分 類 と し て,Fontaine 分 類(4 段 階 ), Rutherford 分類(6 段階)が使用されることが多い。 Fontaine Ⅲ,Ⅳ度,Rutherford 4,5,6 度が CLI に相当 する。Rutherford分類では,臨床的定義と客観的基準 が示されているが,厳密な評価にはトレッドミルテス トや,足関節血圧や母趾血圧が必要となることが難 点で,臨床的定義のみが使用されることも多い。下肢 虚血の診断としては,触診,足関節上腕動脈血圧比 (ABPI),母趾上腕動脈血圧比(TBPI),母趾収縮期血 圧,トレッドミル,経皮的酸素分圧(TcPO2),皮膚潅 流圧(SPP),MRA,CTA,超音波検査,血管造影,サー

PTA(大腿・膝窩,下腿動脈)

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 第 39 回日本 IVR 学会総会「技術教育セミナー」‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ モグラフィー,核医学的検査等があげられるが,すべ てを実臨床で施行できるわけではない。徒に検査に時 間を費やすことなく,早く正確な診断を行い,早期に 血行改善を行うことで予後の改善ができることも多 い。当院では SPP と CTA をもとに虚血の診断と,病 変分布の確認を行い,治療法を選択している。諸外国 では SPPの代わりに,TcPO2が使用されていることが 多い。  下肢虚血・潰瘍の治療としては,運動リハビリ(側 副血行の発達を促す),薬物療法(末梢循環の改善), 感染制御,創傷ケア・フットケア,LDL 吸着(アフェ レーシス)療法,高気圧酸素療法,マゴット(ウジ虫)療 法,血管再生療法(血管新生因子,骨髄単核球),下肢 切断など様々な治療があり,これらを組み合せて治療 がなされる。まず投薬がなされることが多いが,CLI 治療に推奨される薬物療法はなく,侵襲的な血行改善 が必須となる。血行改善にはバイパス手術,血管内治 療,これらを組み合せたハイブリッド治療があるが, いずれを選択するかは,各施設の状況に大きく左右さ れる。近年では腸骨から下腿動脈にかけての血管内治 療が行われることが増えている。 画像診断(特に CTDSA)の意義  治療前に病変分布を確認しておくことは,治療法の 選択にとって重要である。PTAでは,腸骨動脈病変で あれば同側・対側からのアプローチとすることが多く, 大腿下腿動脈病変であれば同側順行性アプローチも 選択枝となる。また腸骨大腿動脈病変のみであれば上 腕動脈からのアプローチも選択枝となる。広い範囲の 血管の状態を俯瞰的に把握する方法としては,MRA と CTA があげられる。造影 MRA は石灰化の影響を受 けないため理想的な検査法であるが,NSF(腎性全身 性線維症)の問題から腎機能低下症例での造影剤使用 は困難となった。TOF(time of flight)法による非造影 MRA は空間分解能が不良であること,CLI 患者は流 入血流の低下から血管描出が不良となり実用的ではな い。CTAは造影剤使用という侵襲性はあるが,空間分 解能が高く,広範囲の血管の状態が把握可能であり重 要な検査法となっている。しかし CLI患者では血管壁 に高度石灰化が見られることが多く,しばしば内腔評 価は困難となる。腸骨動脈,大腿動脈ではCPR(curved

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planar reformation)法を用いることで血管内の評価が 可能であるが,下腿動脈は細く,CPR法でも高度石灰 化血管の評価はしばしば困難となる。最近の機種では エネルギーサブトラクション法を用いて石灰化を除去 した末梢血管画像が得られ,理想的な検査と考えられ る。しかし,非常に高価格な機種であること,機器更 新のタイミングなどから一般病院への普及には時間が かかると思われる。当院ではこの問題を解決するため 非造影相と造影相の CT を撮影しサブトラクション画 像を作成し(CTDSA)臨床応用している。CLI患者では しばしば体動のための画像不良が見られるものの,体 動がなければ非常に鮮明な下腿動脈描出が得られ,術 前計画を立てる上で必須の検査となっている(図 1)。 下腿の血管解剖  膝関節以下で,膝窩動脈が前脛骨動脈と脛骨腓骨動 脈幹に分岐することが多い。前脛骨動脈や後脛骨動脈 が早期分岐する破格があり注意を要する。それぞれの 動脈は,筋肉枝等を分枝しながら足関節レベルまで到 達する。前脛骨動脈末梢が足背動脈,後脛骨動脈末梢 が足底動脈となることが多いが,腓骨動脈から足背・ 足底動脈が分岐する破格がみられることもある。足関 節以遠ではこれら 3 枝の末梢枝が複雑なネットワーク を形成しており,主要動脈閉塞時の重要な側副血行路 となる。CLI 患者では 3 枝閉塞になっていることも多 く,足関節まで 3 枝中 1 本の血流が確保できれば効果 が期待できるとされている(one straight line flow)。し かし足内動脈にも動脈硬化性変化があり側副血行の発 達が悪いこともしばしば経験される。この場合は 2 枝 或いは 3枝の下腿血管PTAや足背・足底動脈以遠の足 内血管の PTA が必要となる。動脈の血流分布として angiosome が提唱されている。病変の位置から,どの 動脈を再開通することが最も効果的な血行改善に結び つくか術前に予測することが可能である1) 下腿領域の PTA 時に使用される用具 1 .ガイドワイヤ  下腿領域では 0.014 inch ワイヤの使用がほぼ必須で ある。多くの種類の製品があり各々の特徴を理解し て使用する必要があり,ワイヤ操作に習熟すること が成功率向上の決め手となる(図 2)。マイクロカテー テルを併用するのが安全であるが,ワイヤを単体で進 めることや細径バルーンを併用しながらワイヤを進め ることもある。狭窄性病変であれば,比較的柔らかい 滑りの良いワイヤが用いられることが多い(Syncro 2, Cruise,Runthrough peripheral)。高度狭窄性病変では, 先端が0.008 inch程度まで細くなっているtaper型ワイ ヤが有用なことも多い(ExtreamPV,Athlete Wizard)。 下腿で頻繁に見られる,短区域・長区域の慢性完全 閉塞性病変(CTO)では全体的に硬く作られたいわゆ るCTOワイヤが必要となることが多い(AstatoXS 9-12, TreasureXS,Athleteruby superhard)。CTO ワイヤ使 用の際は,対象血管径に応じて先端の約 1 ~ 2 ㎜程度 を angle 型に曲げ,閉塞血管が存在すると思われる想 定ライン上を回転をかけながら丁寧に進めていく(ワ イヤくるくる法)。ワイヤが,内膜下走行となること も多いが,この場合は確実に血管内と思われるレベル までワイヤを引き戻し,方向を変えながら再びワイヤ 図 1 CLI 症例の下腿領域の CTA び漫性に多発する石灰化のため CTA での内腔評価はしばしば困難となる。 CTDSAを行うことで内腔の評価ができることが多い。DSAと比べても小病 変まで再現されていることがわかる。左からMIP,VR,CTDSA,DSAである。

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第 39回日本IVR学会総会「技術教育セミナー」:佐藤友保 技術教育セミナー / PTA(大腿・膝窩,下腿動脈) を進めていくことを繰り返すことになる。血管内走行 時と内膜下走行時とでは手応えが異なるので察知でき ることも多いが,造影を行って気づくこともしばしば である。穿通を起こしても大出血となることは少なく, 外部からの圧迫を加えればほぼ止血可能である。 2 .PTA 用バルーン

 ワイヤの取り回しから,over the wire 型とrapid ex-change 型がある。Rapid exex-change 型にはシャフトが ハイポチューブで作られた硬いシャフトのものと,コ イルシャフトで柔軟性を持たせたものがある。通過性 やプッシャビリティなどそれぞれ一長一短があり,状 況や術者の好みにより選択される。0.014 inch ワイヤ 専用のものがあるので注意が必要である。バルーンの 直径は約 2 ~ 3 ㎜が用いられることが多い。過大なバ ルーンを選択すると血管破裂,AVF,解離などの原因 となり,過小なバルーンではリコイルによる早期再 狭窄が発生する。リコイルや限局狭窄に対してはカッ ティングバルーンやアンギオスカルプトのような切れ 目を入れながら拡張するバルーンも使用される。現在 発売されているバルーンの大部分はセミコンプライア ンス型であり,圧力により径が変化するので,事前に 確認しておくことが望ましい。バルーン長は長いも のが安全とされている。日本では 12 ㎝長が入手可能 な最も長いバルーンだが,ヨーロッパでは 20㎝を越え るバルーンが常用されている注)。長いバルーンでは長 区域閉塞の貫通性はやや劣る為,状況によっては短い バルーンでの前拡張が必要となる。非常に硬い閉塞性 病変では 1.5 ㎜径・2 ㎝長などの貫通性にすぐれたバ ルーンが使用されることが多い。最近では冠動脈用バ ルーンの末梢への転用が進み,貫通性は大きく改善し ている。近年ではバルーン表面に内膜増殖を抑える薬 剤を塗った薬剤放出性バルーン(drug eluting balloon (DEB),drug coated balloon(DCB))がヨーロッパで

は使用され良好な成績が報告されている2) (注:原稿執筆時;現在では,20 ㎝バルーンが販売さ れている。) 3 .ステント  下腿領域では,保険上ステントは使用できないとさ れている。しかし,現実的には血流制限をきたすよう な解離を生じた場合にはステント使用を考慮せざるを 得ない。冠動脈用のステントや腎動脈用のステントが 大きさ的に使用される。海外では下腿領域のベアステ ントの成績,薬剤放出性ステント(DES)の成績が報告 されている3) 4 .遠位塞栓予防用具  閉塞病変の再開通を行う際には遠位塞栓の可能性を 考えておく必要がある。遠位塞栓を予防する用具と してガードワイヤやフィルトラップが使用可能である。 しかし,下腿で使用できる規格がないことも多く,手 技が煩雑になるため現実的には使用症例は限られるこ ととなる。ウロキナーゼなどの血栓溶解療法を併用す ることも遠位塞栓予防の重要な選択枝と考えられる。 5 .血栓塞栓吸引用カテーテル  血栓などによる遠位塞栓が PTA に伴い発生し血流 低下が見られることがあり,血栓吸引用カテーテルが 使用される。下腿では,Eliminate や Thrombuster な どの,0.014 inch ワイヤにそわせて挿入できるものが 便利であるが,吸引ルーメンはやや細く大きな塞栓子 は吸引できない。しかしワイヤにそって挿入できるた め,血管損傷は比較的おこしにくい。ガイディングカ テーテルのような内腔の大きなカテーテルを用いると 大きな塞栓子も摘除できるが,カテーテル単体での挿 入或いはワイヤの挿入・抜去を繰り返す必要があるこ となどから血管損傷を起こす可能性が高く,使用には 慎重を期する必要がある。保険適応外ではあるが胃生 検鉗子も有用なことがある。 6 .術中併用薬剤  下腿血管では PTA時に血管の攣縮が発生する頻度が 非常に高く,これが原因で一時的な no flow となるこ ともしばしば経験される(図 2)。攣縮発生時には,プ ロスタグランディン製剤やニトロールなどの亜硝酸剤, 塩酸パパベリンの動注などが行われるが,一旦 spasm が発生してしまうと薬剤が側副血行路に流れ目的血管 に効率的に到達しないこともしばしば経験される。そ こで当院では血管を観察するために間欠的に注入する 造影剤にこれらの薬剤を混じ使用することとしてい る。また閉塞血管ではplaque等による閉塞だけでなく, 血栓性成分も存在することが多く,ウロキナーゼの併 用もしばしば有用である。 7 .PTA 後の経口投与薬剤  バイアスピリン,チクロピジン,クロピドグレルな どの冠動脈狭窄治療後に用いられる抗血小板剤の使用 が基本となる。これに,プロスタグランディン製剤や シロスタゾール,サルポグレラートなどの血行改善剤 が追加される。ワーファリンが用いられることもある。 多くの症例では心疾患に対しすでに投薬がなされてい ることも多いので,新たな投薬は必要ないことも多い。 SFA領域ではシロスタゾールの追加によりPTAの間隔 (TLR)の延長が報告されている4) PTA の目標,治療成績  実際の PTA の成績は,対象症例の血管の状態や術 者の経験により左右されることが多い。用具の発達も あり成功率は年々向上している(表 1)。糖尿病症例, 血液透析症例では初期成績(再開通率)が不良であるだ けでなく,開存率も不良であることが知られている。

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最近では足背・足底動脈穿刺を併用した bidirectional approach の導入や,下腿や足内の側副路からの逆向 性ワイヤ挿入の併用(SAFARI technique)5)による再開 通率の向上も報告されているが,血管閉塞のリスクも 伴っており,充分なレベルの経験を積むまでは控え たほうがよいと思われる。主要血管の再開通ができな かった場合でも,側副血流の増加ができれば症状の改 善が見られることも多く,エンドポイントの見極めが 重要である。CLI治療でのPTAの目的は血管の再開通 にあるのではなく,血行改善が主目的であることを念 頭に置く必要がある。  血行改善の結果として,潰瘍治癒,大切断の回避(小 切断のみでの創治癒),切断レベルの変更(膝上切断を 膝下切断に,あるいは膝下切断を足趾切断にといった 具合に)が得られれば臨床的な成功である。CLI 患者 では 3年生存率が40%とも言われており,PTAをくり かえすことになっても,亡くなるまでの間下肢切断 が回避できれば本人,介護者ともに満足されることも 多い。また,広汎壊疽のため下肢切断が避けられない 症例でも切断前に PTA を行うことで,早期の切断端 創閉鎖が得られることも多い。また慢性期に切断端に 潰瘍形成が発生することも経験されるが,この場合も PTAによる創治癒が期待できる。 図 2 症例:70 歳代女性 血液透析 10年,左足趾潰瘍の保存的治療を受けるが約 3ヵ月受 けるも治癒傾向なく,SPP 24 mmHgと低値のため PTAを行うこと となった。下腿動脈は 3枝ともに描出不良であった⒜。腓骨動脈 に XtreamPVを挿入し,前脛骨動脈には硬い石灰化病変が見られ たためワイヤくるくる法にて AstatoXS9-12 を進めた⒝。2.5 ㎜径 バルーンにて拡張を行った。両動脈の起始部には KBT(kissing balloon technique)を用いた。腓骨動脈は足関節まで拡張したが, slow flowとなっている⒞。 a b c 血管拡張成功率 の変化 2004 〜 2007 年 2008,2009 年 症例数 成功率 症例数 成功率 腸骨動脈 88/89 99% 48/48 100% 大腿動脈 189/195 96.9% 146/153 95.4% ATA 84/120 70% 79/96 82% PTA 43/65 66% 42/54 78% Peroneal a. 49/63 78% 83/100 83%

One vessel run off 146/163 89.6% 155/158 98.2%

表 1 当院での PTA 成功率の年次変化

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第 39回日本IVR学会総会「技術教育セミナー」:佐藤友保 まとめ  CLI 症例は,高齢化とともに年々増加している。こ れらの患者の PTA を依頼される機会も増加するもの と思われる。下腿領域の PTA も不可避となりつつあ るが,リスクを理解しながら施行すれば比較的安全に 行える治療手段となりつつある。今回は,下腿領域で の PTAについて概説した。 【参考文献】 下肢血管のインターベンションについて: 光藤和明:PTCA テクニック 慢性完全閉塞.医学 書院,東京,2003. Coronary interventionist のための末梢インターベン ション術.Coronary Intervention 1:2005. Coronary interventionist のための末梢インターベン ション術 PartⅡ.Coronary Intervention 3:2007. Coronary interventionist のための末梢インターベン ション術 PartⅢ.Coronary Intervention 3:2007. 末梢血管インターベンション-症例に学ぶベストテ クニック,中村正人編.医学書院,東京,2007. Peripheral CTO for cardiologists, 中村茂ら編.

重症下肢虚血について:

重症虚血肢診療の実践,南都伸介監,飯田修編.南 江堂,東京,2008.

横井良明:重症虚血肢の診断と治療,河原田修身編. メディアルファ,東京,2007.

1) Taylor GI, Pan WR: Angiosomes of the leg: anatomic study and clinical implications. Plastic and recon-strictive surgery, September 1998.

2) Tape G, Zellet T, Albrecht T, et al: Local delivery of paclitaxel to inhibit restenosis during angioplasty of the leg. N Engl J Med 358: 689 - 699, 2008.

3) Scheinert D, Ulrich M, Scheinert S, et al: Compari-son of sirolimus-eluting vs. bare-metal stents for the treatment of infrapopliteal obstructions. EuroInter-vention 2: 169 - 174, 2006.

4) Iida O, Nanto S, Uematsu M, et al: Cilostazol reduc-es target lreduc-esion revascularization after percutaneous transluminal angioplasty in the femoropopliteal ar-tery. Circ J 69: 1256 - 1259, 2005.

5) Gandini R, Pipitone V, Stefanini M, et al: The "Safari" technique to perform difficult subintimal infragenicular vessels. Cardiovasc intervent Radiol 30: 469 -473, 2007.

表 1  当院での PTA 成功率の年次変化

参照

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