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58 プール学院大学研究紀要第 53 号 て設定された学習項目として クロス カリキュラム のテーマがある このテーマは 全人教育 (Growth as a person) 文化的アイデンティティと国際性(Cultural identity and internationalism) メディア スキ

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我が国の音楽科教育法に関する研究 Ⅰ

―フィンランドに学ぶ音楽科教育法―

田 原 昌 子 

はじめに

 著者は、ピアノ音楽や音楽教育の実践及び研究を通して、フィンランドとの交流を持ち、2004 年 以来、フィンランドの幼稚園、小学校、中学校の教育現場の視察を重ねている。今やフィンランド は教育大国として知られ、「フィンランド・メソッド」として、その教育方法や、教師の教育力の高 さが、日本でも広く紹介されている。  では、小学校音楽科教育において子どもたちは何を学び、特筆すべき学習内容や教育方法は何で あろうか。これらを探るべく、2 件の先行研究1)では、フィンランドの小学校音楽科教科書分析か

ら学習内容と、『The National Core Curriculum for Basic Education』(ナショナル・コア・カリキュ ラム)2)の内容を分析し、フィンランドの小学校音楽科教育の特徴を明らかにした。

 本稿では、これらの分析を基に両国の小学校音楽教育の目標・指導内容の再考察を行い、フィン ランドの音楽科教育法の中から我が国が学ぶ音楽科教育方法を探り、小学校低学年音楽科教育に、 いかに実践的にアプローチできるかを考察する。

Ⅰ.フィンランドと日本の小学校音楽科教育の目標と指導内容の比較

 両国の小学校音楽科教育の基軸となる『The National Core Curriculum for Basic Education』と、 『小学校学習指導要領』3)の小学校1-4学年の音楽科の目標・指導内容の共通点、相違点を明らかに

し、考察を行う。

1 - 1『The National Core Curriculum for Basic Education』(2004)

 フィンランドでは、国家教育委員会 (National Board of Education) が、指導目標や指導内容をあ る程度の基準を定めたナショナル・コア・カリキュラムをもとに、地方自治体が各教科の独自の教 科カリキュラムを編成する。この独自の教科カリキュラムを、さらに各学校で、各教師がカリキュ ラムを自由に編成して指導を行っている。

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て設定された学習項目として「クロス・カリキュラム」のテーマがある。このテーマは、全 人教育(Growth as a person)、文化的アイデンティティと国際性(Cultural identity and internationalism)、メディア・スキルとコミュニケーション(Media skills and communication)、 市民としての参加意識と起業家精神(Participatory citizenship and entrepreneurship)、環 境・福祉・持続可能な未来に対する責任 (Responsibility of the environment, well-being , and a sustainable future)、安全と交通(Safety and traffic)、技術と個人(Technology and the individual)の7項目から成立している。   1 - 2 「音楽科教育の目標」の比較・考察  ナショナル・コア・カリキュラムでは、先の7項目が、音楽科指導を通して獲得されることを目標 に、基礎教育9年間の音楽指導の責務について前文で書かれている。この前文は、小学校『学習指導 要領』と中学校『学習指導要領』4)の音楽「教科の目標」に相当するといえる。 <ナショナル・コア・カリキュラム 音楽 前文> 音楽指導の責務は、音楽領域から関心の対象をみつけること、音楽活動に関わることを促すこと、音楽を通して自己表現の手 段を与えること、及び人間形成の一助となることである。さらに、音楽が時代と状況に密接に関連していることを理解できる ように導くことである。音楽は、時代、文化・社会によって異なり、対象とする人によって異なる意味を持つ。自分自身、あ るいは小さなグループの中で音楽を奏で、音楽を聴くことを通して有意義な経験を得ることが、音楽を理解し、概念化するベー スとなることを勘案し、指導しなければいけない。音楽指導は、児童・生徒一人一人の音楽性(musical identities)形成の過 程のなかで-その目的は様々な音楽を鑑賞し、様々な音楽に好奇心を抱く姿勢であるが-開発するツールを提供する。音楽の スキル(技術)は、反復による、かつ長期的な練習により開発される。児童・生徒が共に音楽を、自分自身、あるいは小さな グループの中で奏でることは、責任感、建設的な批判をする姿勢、多様な文化やスキルを受容・理解するソーシャルスキルを 開発する。音楽以外の指導科目との関連を探すことによって、児童・生徒の全人的な表現力の開発に当たらなければならない。 音楽指導のなかで、テクノロジーやメディアが提供する可能性が有用化される。 <小学校学習指導要領・中学校学習指導要領 音楽 教科の目標> 小学校学習指導要領 表現及び鑑賞の活動を通して、音楽を愛好する心情と音楽に対する感性を育てるとともに、音楽活動の基礎的な能力を培い、 豊かな情操を養う。 中学校学習指導要領 表現及び鑑賞の幅広い活動を通して、音楽愛好する心情を育てるとともに、音楽に対する感性を豊かにし、音楽活動の基礎的 な能力を伸ばし、音楽文化についての理解を深め、豊かな情操を養う。  両国の音楽科の目標を整理すると次のようになる。 [共通点] ・音楽を通しての人間形成を目指している。 [相違点] ・前文には、日本の小学校・中学校の教科の目標に加え、平成19年6月に改正された『学校教育法』5) 第2章第21条に規定されている、義務教育の目標の内容が付加されている。 ・フィンランドでは、音楽から自分の関心の対象を発見し音楽活動に関わるのに対し、日本では、 「表現」と「鑑賞」の二つの領域での経験を通して、音楽を愛する気持ちと感受性を育て、音楽的

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能力を養い、情感豊かな心を持った人間の形成を目標としている。 [考察]  両国の音楽科教育の目標の共通である「音楽を通しての人間形成」は、どの教科においても、共 通の目標と考えることができる。音楽科において、「音楽」そのものを学ぶことではなく、「音楽」 で教育するという目標は、全世界共通の音楽科の教育目標といえる。  しかしながら、フィンランドでは、音楽科教育は、子どもたち自身が音楽を通して自分の関心の 対象を発見し、音楽活動に関わり、音楽を通しての自己表現や人間形成の一助になることが音楽指 導の果たすべき務めであるのに対し、日本では、「表現」と「鑑賞」の二つの領域での経験を通して、 音楽を愛する気持ちと感受性を育て、音楽的能力を養い、情感豊かな心を持った人間の形成を目標 としている。この点で、両国の音楽科教育は、育てようとする「人間像」が異なるといえるのでは ないだろうか。  さらに、この音楽科教育の目標には、一人ひとりの関心や表現力を大切にして目標に到達しよう とする、言い換えれば、積極的な心構えや感情といった個々の心「内」から自己表現「外」へ、個 人から集団へというフィンランドと、与えられる経験「外」からを通して情感豊かな心「内」を 育む、集団から個人へという日本と、音楽科教育によって育てようとする人間像へのアプローチの 方向の相違が現れているといえる。 1 - 3 小学校 1-4 学年の指導目標・指導内容の比較  ナショナル・コア・カリキュラムでは、日本の義務教育9年間の各学年の指導目標・主たる指導内 容が、第1-4学年と第5-9学年に2分割して示されている。ここでは、小学校第1-4学年指導の目標・主 たる指導内容の全文を次のページに示し、日本の学習指導要領第1-4学年の指導の目標との比較・考 察をまとめる。 <指導の目標> [共通点] ・第 1-2 学年の子どもたちの発達特性に合わせ、「楽しく、基礎的な表現の能力を育てるということ」 が、両国の共通する指導目標として挙げられる。 [ 相違点 ] ・ナショナル・コア・カリキュラムでは、指導の目標として、子どもたちが多様な音楽経験をし、自 己表現や自己の考えを実体化するように促すことが記述されている。歌唱・器楽・鑑賞の活動で子 どもたちが何を学ぶか、また、作曲を通して音楽を構成する要素を実際に使うことや、音楽の世界 の多様性を学ぶこと、さらに音楽を創ること、あるいは聴く一員として行動することが目標として 書かれ、より具体的な子どもを主体とした目標となっている。学習指導要領では、表現や鑑賞の能 力を育み、豊かな情操を養う態度と習慣を育てるという一般的な目標のみが書かれている。

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<ナショナル・コア・カリキュラム 音楽 小学校 1-4 学年 指導の目標・主たる指導内容> <小学校第1学年〜第4学年> 楽しく、総合的な音楽活動(integrating activity)を展開することにより、音楽表現力を開発することが中心となる。様々な音 の世界と音楽を経験させ、自己表現を促し、自分自身の考えを実体化するように促す。 指導の目標 *自分達の声を無理なく活用し、個人及び集団での歌唱、器楽演奏及び身体反応により、表現することを学ぶ。 *音環境と音楽を集中し、かつ、積極的に聴き、観察する(observe)ことを学ぶ。 *作曲の要素として、様々な音楽を形づくっている要素を使うことを学ぶ。 *音楽の世界の多様性を理解することを学ぶ。 *音楽を作るグループの一員として、音楽の聴き手として、責任を持って行動することを学ぶ。 主たる指導内容 *児童の発達段階に応じた(age-appropriate)歌唱ゲーム:発話、言葉遊び(taking nonsense)、及び歌唱による練習 *歌唱曲:声部に分かれて歌唱できるような練習 *器楽演奏曲及びその練習:身体を使った楽器、リズム楽器、旋律楽器、及び和声的な楽器(harmonic instruments)及び、 一緒に演奏できるようになるための準備をする。練習では、まず、基本的なリズム感を開発すること。 *一人ひとりが経験や発想を説明するなど、様々な活性化の手段を用いて、色々な音楽を聴くこと。 *音の反復、小規模な作曲(sound composition)及び即興による作曲活動。 *自分自身、あるいは小さなグループの中で音楽を奏で、聴く、身体反応する、及び作曲することに関連して、音楽を形づくっ ている要素-リズム、主旋律、和声、強弱、音色や形式-に関する基本的な概念。 *異なった時代や音楽のジャンルを網羅する、フィンランドの音楽及びその他の国々、文化の音楽を紹介する、歌唱、器楽に よる楽曲、聴く楽曲。 [ 考察 ]  ナショナル・コア・カリキュラムには、「ティーチング」教師が何を教えるかという指導の内容 ではなく、記述されている目標に向かって「ラーニング」子どもたちが何を学び取るかという目標 が、より明確に示されている。すなわち、子どもたちの「ラーニング」が指導の目標となるフィン ランドの音楽科の目標に対し、学習指導要領は教師が何を教えるかという「ティーチング」が目標 となっている。  この差異は、先の「音楽科教育の目標」の比較・考察の項で述べた事と同様に、子どもたちが自 ら学ぶという個人の自主性を大切にするフィンランドの教育と、子どもたちが進んで音楽に関われ るように教師が指導するという日本の教育と、両国の教育に対する根本的な考え方の相違といえる のではないだろうか。 <主たる指導内容>  両国の指導内容を、表現領域、鑑賞領域、共通する指導内容の3つ分に分け、さらに表現領域は歌 唱・器楽・作曲(音づくり)の3つの活動に分けてまとめ、表16)に示した。  両国の指導内容の比較・考察は、次のようにまとめることができる。 [ 共通点 ] ・表現領域の3つの活動を通して、自分の思いや意図をもって自分自身を音で表現し、音楽を形づ くっている要素について感じ理解する。 ・表現活動において即興的な表現を挙げている。 [ 相違点 ] ・ナショナル・コア・カリキュラムの表現領域に関する項目で、次の4点が、学習指導要領に書かれ ている内容よりも重視されている。

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表 1 1-4 学年の主たる指導内容の比較 ナショナル・コア・カリキュラム 学習指導要領 表現領域 歌唱 発話や言葉遊びを含む歌唱ゲームを通した歌唱指導や声部に 分かれて歌唱できる歌唱曲の指導。 範唱を聴いたり、ハ長調の楽譜を見たりし、歌詞の内容や曲想を工夫して思いや意図を持って、自然で無理のない歌い方 で、互いの声や伴奏を聴いて歌う指導。*歌唱教材は、共通 教材を含む、斉唱や簡単な合唱曲を取り扱う。 表現領域 器楽 身体を使った楽器、リズム楽器、旋律楽器、和声的な楽器の 演奏の指導と、器楽指導を通してリズム感を育成すること。 範奏を聴いたり、ハ長調の楽譜を見たりし、思い意図を持って音色に気をつけて旋律楽器や打楽器を演奏し、互いの楽器 の音を聴きながら音を合わせて演奏する指導。*既習の歌唱 教材を含めた簡単な重奏や合奏曲を取り扱う。 表現領域 作曲(音づくり) 音の反復に着眼し、小規模な作曲や即興演奏による作曲活動 の指導と、作曲を通してリズム、主旋律、和声、強弱、音色 や形式に関する基礎的な意味内容の指導。 音の響きやその組み合わせを楽しみ、様々な発想で即興的に 表現し、音づくりをする過程を大切にしながら音楽の仕組み を生かして、思いや意図を持って表現する指導。 鑑賞領域 受け身で聴く鑑賞ではなく、一人ひとりが自分の経験や思い や考えを説明できるといった、積極的な姿勢で音楽を聴き、 また、多種多様な文化の音楽や自国の音楽を聴くことや、聴 く活動を通して、リズム、主旋律、和声、強弱、音色や形式 に関する基礎的な意味内容の指導。 曲想とその変化を感じ取り、音楽を形づくっている要素や楽 曲に気を付け、楽曲の特徴や演奏のよさに気が付くように指 導。*鑑賞教材にはわが国や諸外国の民謡、劇音楽や人々に 親しまれている音楽などをとりあげる。音楽を形づくってい る要素を感じ取りやすく、聴きやすい楽曲や、いろいろな演 奏形態の楽曲を取り扱う。 2 つの領域に共通する事項 多種多様な文化の音楽や自国の音楽に親しみ、自分自身や小 さなグループでの演奏や聴くこと、身体反応すること、作曲 を通して、主旋律、和声、強弱、音色や形式といった音楽を 形づくっている要素に関する基礎的な意味内容の指導。 音楽を形づくっている要素については、音色、リズム、速度、 旋律、強弱、音の重なり、音階や調、拍の流れやフレーズを、 音楽の仕組みについては、反復、問いと答え、変化などを聞 き取り、それらの働きが生み出す面白さや美しさを感じる指 導。音符や休符や記号に関わる用語を、音楽活動を通して理 解する指導。 ①音の響きやその組み合わせだけではなく、和声に関する記述がある点 ②器楽演奏においてリズム感の開発を挙げている点、作曲(音づくり)において音楽の反復を 扱っている点 ③自己の発想や経験を説明するという自己表現を意見として求める点 ④鑑賞領域だけではなく、歌唱・器楽で、異なる文化や時代、ジャンルを網羅する楽曲を扱う点 ・学習指導要領では、特に第 3-4 学年において ①歌唱・器楽でハ長調という特定の調性の楽曲を取り上げている点 ②楽譜を読み、旋律を演奏し、音づくりをすることを楽しむことが指導内容に書かれている点 ・学習指導要領の表現領域には、ナショナル・コア・カリキュラムにはない、各学年で表現教材とし て扱う具体的な曲の<共通教材>の記述があり、何を教えるのか、「ティーチング」のための教材が 明記されている。 [ 考察 ]  指導内容の記述からも、フィンランドでは個々の子どもの個性を大切にし、また、第 1-4 学年の 子どもたちが、「自分」というものを様々な音楽活動を通して表現し、より子どもたちの「自己確立」 「自己表現」が、音楽科教育の学習で求められている。この点は、日本の音楽科教育、特に小学校低

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学年での教育には打ち出されていない目標、指導内容といえる。  その背景には、小さな北欧の一国が世界の中で生き残るために、国民一人ひとりがアイデンティ ティを持ち、世界に目を向ける姿勢を育む必要があることが、音楽科教育の目標や内容においても 表れていると考えられる。  

Ⅱ.フィンランドと日本の小学校低学年音楽科教育法比較

 日本の音楽科教育は、教科書検定7)を合格した教科書を主に実践の場では使用し、授業が展開さ れる。一方、フィンランドには教科書検定制度は存在せず、教科書は単なる教材の一つに過ぎない。 しかしながら、実践の場では、子どもたちの心身や音楽的能力の発達を踏まえ、フィンランドの歴 史や環境、文化に適応した良い教材であるとされ、教科書は採択されている。ここでは、小学校音 楽科教科書として代表的なフィンランドの『MUSIIKIN mestarit 1-2』OTAVA 社 (2008) と、日本 の『小学生のおんがく 1』『小学生の音楽 2』教育芸術社 (2010) を取り上げ、その学習内容を比較し、 考察する。 2―1 フィンランド・日本の音楽科学習内容の比較結果と考察  学習内容を、「表現」と「音楽を形づくっている要素」の2項目で比較を行い、表28)の結果を得 た。  この結果から、両国の第 1-2 学年の音楽学習内容を次の 2 項目について共通点・相違点を検討し、 考察を行なった。 <表現の内容について> [ 共通点 ]  ・歌唱では、拍子や言葉のリズムを大切にしながら、拍にのって歌うこと。 ・器楽では、身の回りの楽器や、いろいろな楽器の音に親しむこと。 ・音楽づくりでは、一人ひとりの子どもたちが 4 分音符や 4 分休符、8 分休符を用いて自分のリズム を創作し、そのリズムに音をつけて音楽づくりをすること。 [ 相違点 ] ・歌唱では、フィンランドは声の流れやフレーズを感じ、さらに伝統 楽器カンテレ(図 1)の伴奏に合わせて調性や和音の響きを感じて歌 う学習であるのに対し、日本は音の高さを意識し、歌詞を大切にして 歌う点である。 ・器楽では、活動の中心となる楽器が、フィンランドはカンテレであり、その楽器を通して和音の響 きを感じることと、管・弦・打楽器がどのような音がするかを調べる学習である。それに対し、日 図 1 伝統楽器カンテレ

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表 2 フィンランド・日本の 1-2 学年の音楽科学習内容比較 フィンランド『MUSIKIN mestarit 1-2』 日本『小学生のおんがく 1』『小学生の音楽 2』 表 現 の 内 容 歌唱 ・自分の声を意識し、発声を工夫することによって 生まれる音楽の流れを感じる。 ・動物の鳴き声から、声には色々な高さがあること を学ぶ。 ・言葉のリズムを大切にし、拍に乗って歌う。 ・カンテレの伴奏に合わせて、長調・短調の音楽の 雰囲気を感じながら歌う。 ・姿勢をよくし、音の高さを階名と手の位置で確か め、様子を思い浮かべ歌詞を大切にしながら歌う。 ・拍子を感じながら、また、身振りをつけながら、 みんなの声を聴きながら歌う。 ・物語から登場人物の気持ちを感じ取って歌い方の 工夫をする。 ・歌声や楽器の互いの音を聴きあって演奏する。 器楽 ・フィンランドの伝統楽器カンテレの演奏や伴奏を 通して、和音の響きを感じる。 ・弦楽器、木管楽器、金管楽器、打楽器にどのよう な楽器があるか、また、その音にはどんな特徴が あるのか、実際に音を出して調べる。 ・鍵盤ハーモニカのポジション移動、指かえの奏法 を学び、リズムに乗って、拍子を感じながら演奏 する。 音楽づくり ・ター(4 分音符)、ティ(8 分音符)、タウコ(4 分休符)の組み合わせで自分のリズムを創作し、 その自分のリズムに c1e1g1 の音をつけ、さらに 歌詞をつけ、音楽づくりをする。 ・カノンやロンド形式といった音楽の形式を学ぶ 方法として、自分の創作したリズムを反復したり、 変奏として用いたりして、みんなで一つの音楽づ くりをする。 ・タン(4 分音符)、タ(8 分音符)、ウン(4 分休 符)、ウ(8 分休符)の組み合わせで自分のリズム づくりをする。 ・c1 から g1 までの 5 音の中から音を選び、2 小 節 8 拍分の旋律をつくり、歌ったり鍵盤ハーモニ カを弾いたりする。 音 楽 を 形 づ く っ て い る 要 素 音色 ・絵からどんな特徴のある音色かを考えて言葉で 表現したり、多種多様な楽器のを実際に音に出し、 それぞれの音色を感じ取る。 リズムや拍 ・脈拍やフィンランド語の音節といった身近な拍や リズムを知ることから、ロックのリズムに合わせ て踊ったり、ラップのように言葉のリズムに合わ せて歌ったりしながらさまざまなリズムに触れる。 ・ティティやターを組み合わせた色々なリズムをつ くり、2/4 拍子、3/4 拍子、4/4 拍子とリズムの 関係を知る。 ・名前、子どもたちの遊び歌、日本語の音節に合わ せ身近な拍やリズムを知る。 ・2/4 拍子、3/4 拍子を手拍子や合奏を通して感 じ、拍のまとまりや、リズムの組み合わせをつくり、 拍子と拍との関係を知る。 旋律やフレーズ ・発声を工夫することによって生まれるフレーズ を、曲の旋律の動きに対応させて感じる。 強弱 ・音の強弱を天気の様子と関連付けて感じ、カノン の表現のに音の強さの変化を加えて、その表現に 変化をつける。 ・やまびこあそびや掛け声の受け応えによって音の 強弱を意識する。 ・様子を思い浮かべ、その様子にあった強弱を考え て演奏する。 和 音 や 音 の 重 な り ・カンテレの弦を抑えてつま弾くだけで生じるⅠ・Ⅳ・Ⅴの和音の響きを感じ取る。 ・Ⅰ・Ⅳ・Ⅴの和音通して、長調と短調の響きを感 じ取る。 ・CDEFG の 5 音をカノンで音を重ねることから生 まれる和音の響きを感じ取る。 ・自分の好きな音を身の回りから探し、リズムに合 わせて音を加え、音の重なる面白さを感じる。 ・輪唱でお互いの声を聴きあいながら歌う。 音楽の形式 ・カノンや AB 形式、ABC 形式、ロンド形式をリ ズムづくりや音楽づくりを通して理解する。 ・輪唱によるカノン形式を意識する。 音楽のジャンル ・フィンランドの民謡やサーメのヨイクなどの自分 の国の歌や音楽に触れる。 ・世界の民謡や、有名な作曲家の曲に親しむ。 ・子どもたちを含む、フィンランド人の作詞・作曲 の音楽に親しみ表現する。 ・日本のわらべ歌や文部省唱歌に親しむ。 ・諸外国の民謡に日本の歌詞をつけた歌、諸外国の 遊び歌に親しむ。 ・邦人の作詞・作曲の音楽に親しむ表現する。 音 符、 休 符、 記 号 や 音 楽 に 関 わ る用語 ・音符の各部の名称や 5 線と加線を理解する。 ・c1e1g1 の音の五線上の位置を確認する。 ・強弱記号の意味を理解する。 ・4 分音符、8 分音符、4 分休符をリズムの学習で 学ぶ。 ・鍵盤ハーモニカの演奏に出てくる c1 から d2 ま での音を階名で読む。 ・4 分音符、8 分音符、4 分休符、8 分休符をリズ ム学習で、2 分音符を学ぶ。 本は鍵盤ハーモニカ・カスタネット・タンブリン・トライアングルの奏法を知り、演奏することが 主活動になっている。

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・音づくりでは、フィンランドは、一人ひとりの子どもたちが創作したリズムにド・ミ・ソの 3 音 を用いて付けたり、歌詞を付けたりし、その音楽を反復や変奏して音楽の形式を学び、日本は、創 作した自分のリズムに、ド・レ・ミ・ファ・ソの 5 音を用いて旋律づくりをし、それを演奏するこ とを学ぶ。 [考察]  歌唱では、歌を歌う第一段階の発声において、日本は、姿勢を良くし音の高さを確かめることが 学習内容となっているが、フィンランドは、声によって生まれる音の流れを感じることになってい る。また、日本は歌詞を大切にして情景を感じて歌うことが挙げられているが、フィンランドでは、 人の声だけでなく動物の鳴き声にも高さや流れがあることを知り、カンテレの伴奏に合わせて短調・ 長調の調性を感じて歌うことが学習として挙げられている。  この、音の流れを感じる、色々な音の響きに注目するという学習こそが、音を「聴く」という原 点になるのではないだろうか。自分の声や周囲の音を聴くという、音楽学習以前の「聴く」という ことを踏まえ、より音楽的な耳で「聴く」ことを目指しているといえる。  日本の歌唱表現では、拍子を感じて身振りをつけ、さらには音程を正しく様子を思い歌詞を大切 に歌うこと、すなわち演奏することに重点を置き過ぎ、自分の声を「聴く」ということがなおざり にされていないだろうか。「聴く」ということを徹底してこそ、自分の声やみんなの声を聴くことが できると考える。  同様のことが、器楽活動にもいえる。フィンランドでは、カンテレの伴奏による和音や音の響き を感じ、また様々な楽器の音を出してみる学習である。カンテレは、5 弦のうちのいくつかの弦を 左手で押さえ、右手の人差し指の腹で爪弾くだけで容易に和音伴奏を得ることができる楽器で、特 別な読譜能力も、演奏技術も必要ではない。  一方、日本では、鍵盤ハーモニカという、カンテレより奏法がかなり複雑である楽器の学習が取 り上げられている。息を吹きながら指を独立させ、鍵盤を押さえて音を出し、また、旋律を演奏す るには、複雑な手のポジション移動や指かえが必要であり、さらに、楽譜を読むための読譜力も必 要となる学習である。  このように、器楽の活動の主として取り上げる楽器の違い、奏法の違いが、子どもたちの音楽に 対するモティベーションの高さの違いに結びつくのではないだろうか。奏法や読譜を難しく感じる 日本の小学校低学年の子どもたちにとって、鍵盤ハーモニカの学習は、「音楽は嫌い」を生み出す懸 念がある。  さらに音楽づくりの学習では、両国で、子どもたちが音符や休符を組み合わせたリズム創作を取 り上げることは、身体を動かすことが楽しいこの年齢の子どもたちの特性であることから、理にか なっている。しかしながら、日本はそのリズムに旋律をつけ、鍵盤ハーモニカで演奏する総合的な 音楽学習へと発展させ、小学校低学年で音楽演奏表現を学ぶのである。

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 一方、フィンランドでは、音楽づくりでリズムや音のくり返し(ロンド形式)や追いかけること (カノン)を通して、音やリズムの重なりや響きに耳を傾けながら、音楽の形式を学ぶのである。音 楽形式という高度な内容であるにも関わらず、そのアプローチの仕方が子どもたちにとって平易で、 特別な読譜力や演奏技術を必要としない点は、日本の到達目標と異なる。小学校低学年で「聴く」 ことを通して表現を学ぶフィンランドでは、自己表現の実現を目指すという、音楽科教育の目標を 具現化しているといえる。 <音楽を形づくっている要素の学習について> [共通点] ・リズムや拍の学習は、音楽を特徴づけている要素の学習の始めに取り上げられ、他の要素の学習 内容や、歌唱・音楽づくりの分野と関連が深く、第1-2学年での音楽科学習の中心的な位置を占めて いる。 ・音楽のジャンルにおいて、自国の音楽を中心に諸外国の音楽を採り上げている。 ・カノンを通して、和音や音の重なり・音楽の形式を学習する。 ・音符・休符・記号や音楽に関わる用語については、4分音符・4分休符・8分休符を取り上げ、音高 を五線譜に対応させて学習する。 [相違点] ・学習指導要領の共通事項に挙げられている音色・旋律やフレーズの学習について、日本の教科書 には、直接的な表現で扱われていないが、フィンランドの教科書では絵を用い、子どもたちにわか りやすく解説されている。 ・フィンランドにおけるリズムや拍子の学習は、自分のリズムづくりの学習から友だちのリズムを 加えていくことでできる、様々な音楽形式を学ぶ学習に発展させているが、日本では、音の重なる 面白さを感じる学習に発展させている。 ・和声や音の重なりの学習で、日本では主に中学年以上で学ぶ音の重なりや調性、高学年で扱う和 声の響きが、フィンランドではカンテレの学習に対応させ、低学年からの学習内容として扱われて いる。 ・音楽形式において、輪唱やカノン形式を意識して演奏する日本に対し、フィンランドでは、リズ ムや音楽づくりを通して、その形式を理解することを目標としている。 [考察]  第 1-2 学年の年齢の子どもたちは、音楽を聴いたり歌ったりすると自然に身体が動き、リズムに興 味を示して楽しむことができる。このような心身や音楽的能力の発達の特性から、リズムや拍子の 学習は、第 1-2 学年に適した内容であり、フィンランド・日本の双方が同じ見解に基づいて重点を置 いているのは、当然の結果であると考えられる。  音楽を形づくっている要素の学習から読み取れる、音楽形式の理解を大切にし、音色や音の重な

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りや和音を含めた「響き」や、音の流れである「フレーズ」を感じ、表現するという点に、フィン ランドの音楽科の根底にある教育目標が表れており、それが、日本との最大の違いといえるのでは ないだろうか。 2 - 2 フィンランドに学ぶ音楽科教育とは  フィンランドと日本の音楽科教育との比較から、次の 3 点を日本の音楽科教育法を再考する上で 有効な点として挙げる。  まず第 1 点目として、「聴く」ことが、フィンランドに学ぶ最も重要な音楽教育の要素であると考 える。音色や音の重なりや和音を含めた「響き」に注目し、さらに音の流れである「フレーズ」を 感じ表現することがフィンランドの音楽科教育の根底にあり、具体的な学習内容において「聴く」 ということの取得が、より高度な「表現活動」となるのである。  なぜ、フィンランドでは、「聴く」ことが音楽科教育の根底にあるのだろうか。寒さの厳しい長 い冬、短い夏の自然の中で生きていくには、五感を働かせることが、自らの命を守ることに直結し ているということを、否が応でも学習させられる。日本では、同じような状況を体験することは、 ごく限られた環境の下に限られる。「聴く」という意味がフィンランドの場合と異なり、日本では 積極的に「聴く」ではなく、自然に「聞く」「聞こえてくる」環境の下で人々は生活している。  日本の子どもたちが音を「聴く」ということを知るということは、自分の声や楽器の音だけでな く、自然の音や子どもたちを取り囲む生活の音を、耳をすまして「聴く」ことに結びつくであろ う。音楽活動においては、互いの歌声や楽器の音を「聴いて」音を合わせて演奏し、音楽を楽し み、豊かな情操を育むことに繋がる。したがって、この「聴く」こととは、音楽を形づくっている すべての要素を学ぶ根底となり、学習内容のすべての領域で活用できると考える。  第2点目として、子どもたちにできる限り平等な音楽への機会を作るということである。器楽の取 扱いについて、特に低学年で鍵盤ハーモニカを取り上げる場合、ピアノ等の鍵盤楽器のおけいこ事 の経験により、個々の子どもたちの演奏技術に大きな差が生じる可能性があるので慎重にする必要 がある。経験の有無に関わらず、できる限り子どもたちが平等に器楽の学習に取り組むことができ る教材研究や、指導法の研究が必要である。  第 3 点目として、ラーニングとティーチングという「意識」である。教師が「教える」のではな く、子どもたちが自ら「学ぶ」には、教材として何が適切で、どのような指導法で授業展開を行うか、 高い教師力が必要とされる。教師は自ら音楽や指導法を研究し、自分の考えで音楽科教育法を開発 することも必要といえるのではないだろうか。  次章では、実践的な音楽科教育法の事例として、「声や音の流れを感じる指導」「鍵盤ハーモニカ 指導」を通して、「聴く」ことの指導の可能性を挙げる。

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Ⅲ.フィンランドから学ぶ小学校低学年の音楽科教育法

   本章では具体的に、小学校低学年における「声や音の流れを感じる」指導と、器楽指導における「聴 く」指導の展開を挙げる。 3 - 1 「聴く」ことを始点とした「声や音の流れを感じる」指導  次の図 2 、図 3 は、フィンランドの教科書から、発声や音の流れについて説明されている部分を 提示したものである。図 4 は、筆者が 2010 年にフィンランドのケラヴァ小学校を視察した時に行わ れていた、小学校第 2 学年の歌唱の授業風景である。 図 2 線で表された声の流れ      図 3 線で表された動物の鳴き声    図 4 ケラヴァ小学校授業風景

『MUSIIKIN mestarit 1-2』p22-23  『MUSIIKIN mestarit 1-2』p78-79 パートナーと音の流れを感じよう

 図 4 は、子どもたちがパートナーと手を合わせ、目を閉じて音の流れに合わせてゆっくりと、ま たは素早く、内に外にと動かし、声と音の流れを身体で感じている様子である。教師が出す、また は子どもたちの中の一人が図 2 で示したような流れの声や音を、他の子どもたちは手や身体で「聴 き」、表現しているのである。  声や音を「聴く」ことを、単に耳で聴くだけでなく身体表現を伴って聴くことで、音の流れ方や フレーズが実際に体験でき、また日本の教科書にある歌う時の姿勢や、音高を正しく声を出す学習 の前に、「聴く耳」を育てることができる。その声や音を聴くことは、図3の線で表された動物の 鳴き声でも表されるように、子どもたちの興味を惹く身近な動物をも事例に出して、声を出すにも 色々な声の出し方があることを学ぶことができる。このように、「聴く」ことは表現の素地になる のである。  日本の第2学年では、歌う時の姿勢について、次のように教科書に書かれている。「うたうとき は…せなかをのばしたまま…かたを上げ…かただけをさっと下して…ほほえむかんじでうたいま しょう。」「自分のこえに気をつけながら、    のところをとおくによびかけるようにうたい ましょう。」9)  では、自分の声の何に気をつけるのか、遠くに呼びかけるように歌うにはどのように声を出せば

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よいのだろうか。自分の声を聴き呼びかけるように歌うには、どのように声を飛ばしていくか、声 を出す方向をいろいろと自分の耳で聴いて確かめ、工夫して歌うことによって、歌う時の姿勢につ いて書かれた内容を自ら学ぶ、すなわちラーニングができると考える。 3 - 2 「聴く」ことから器楽指導への展開  日本の学習指導要領では、各学年で取り上げる楽器について「第 1 学年及び第 2 学年で取り上げ る身近な楽器は、様々な打楽器、オルガン、ハーモニカなどの中から学校や児童の実態を考慮して 選択すること」10)と書かれている。  筆者は、毎年、フィンランドの小学校の実践教育現場視察を行っているが、その時に持参する日 本の小学校音楽科教科書を見て、フィンランドの教師たちは、「この楽器は何?どのように演奏する のか?」と、鍵盤ハーモニカに興味を示すのである。  また、鍵盤ハーモニカは、「ピアノやオルガンを学校以外で習っていない子どもたちには、指か えやポジション移動をさせ、息を吹きながら旋律を演奏する楽器としては、子どもたちにとって習 得するのが難しい楽器ではないか」、「日本の小学校低学年の子どもたちは全員、楽譜が読めるのか」 という質問も、フィンランドの教師から受ける。  鍵盤ハーモニカの演奏は、息を使う奏法によって歌唱活動と結びついたり、中学年で取り上げる リコーダーの指導に繋がったり、さらには読譜の学習をしたりするには有効である。しかし、その 演奏技術の習得には、子どもたちだけでなく、教師たちにも多くの時間と努力が必要である。  フィンランドの小学校低学年では、旋律を演奏する楽器が、教科書で具体的に取り上げられては いない。リズムを刻む打楽器類のほかには、フィンランドの民族楽器である 5 弦のカンテレが取り 上げられている。そのカンテレは、奏法は比較的容易で、透明で澄んだ音色の楽器であり、低学年 では伴奏楽器として取り上げ、子どもたちが自国の伝統に触れながら、カンテレの響きに耳を傾け、 その音を聴きながら歌い、時には森に持ち出して、皆で歌ったり踊ったりするときの伴奏として用 いられている。  日本の鍵盤ハーモニカも、音を「聴く」という活動に使用する楽器としての取扱いが、授業のな かで多くあってよいのではないだろうか。特に第 1 学年での取り上げは、教科書でも導入扱われて いるように、ドの音を出すグループ、ソの音を出すグループというように分けて演奏することにと どめ、もし、旋律を演奏する楽器として扱うのであれば、高学年での扱いが考えられるのではない だろうか。中学年で扱うリコーダーで息の使い方を学び、さらにリコーダーの運指を学び、指先の 細かい動きを習得した後に、ポジションの移動や指かえの必要な鍵盤ハーモニカの演奏を導入して はどうだろうか。  器楽の演奏技術習得に時間を割き、音楽を難しく感じて、音楽嫌いになる子どもたちが出るよう な取り組みではなく、単音を重ね、音の響きや和音の響きを感じる、すなわち「聴く」学習の楽器

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としての鍵盤ハーモニカの扱いや指導を取り入れることが、子どもたちの「耳を育てる」「聴く」と いう音楽学習に繋がり、「音を楽しむ」学習を展開することができると考える。

終わりに

 本研究では、先行研究で「和声や音の重なりの響きを大切にすること」が、フィンランドの音楽 教育として大きな特徴として明らかになった点を、「音を聴く」という広義の音楽科教育法の根源と 捉え、日本の音楽科教育法にいかに有効にその教育を活かすことができるかを探った。  自分の出した音、また、周りの音を「聴く」、そしてフィードバックし、さらに「美しい音」を求 めて工夫するための「耳」を育むことが、小学校低学年という音楽科教育のスタートにおける中心 的な教育であり、その指導の展開の可能性を考察し、有効性を示唆することができた。  しかしながら歌唱指導や器楽指導、音づくりの指導という表現の指導において、具体的にどのよ うな教材を用い、どのような指導法で、さらにはどのような評価をするのか、「聴く」活動から子 どもたちが「快」と感じることのできる「音」とはどんな「音」であるかを知るための具体的な指 導法については、各教師に負うところが大きい。その各教師が、自分自身の音を、そして子どもた ちの出す音を「聴く」ことができなければ、質の高い「聴く」教育はできないであろう。教師自身 も「ラーニング」で、自分自身を磨くことが必要となる。  今後、さらに「聴く」ことを根源とした、様々な音楽科教育法について研究を深めていきたい。 <注> 1)『フィンランドの音楽教育 Ⅱ-小学校音楽科教材に関する考察 1-』 田原昌子 プール学院大学研究紀要  第 51 号 2011 『フィンランドの音楽教育 Ⅱ-小学校音楽科教材に関する考察 2 -』 田原昌子 プール学院大学研究紀要  第 52 号 2012

2)『The National Core Curriculum for Basic Education』 Part IV: Chapter 7.15 Music の部分 3)『小学校学習指導要領 第 2 章 第 6 節 音楽』文部科学省 2008  4)『中学校学習指導要領 第 2 章 第 5 節 音楽』文部科学省 2008 5)1947 年に公布された学校教育に関する総合的な法律。現行のものは 2007 年に改正された。 6)『フィンランドの音楽教育 Ⅱ-小学校音楽科教材に関する考察 2 -』 田原昌子 プール学院大学研究紀要 第 52 号 2012 p151 表 2 を引用 7)日本では、学校教育法の下、教科書検定審議会の検定審査に合格した教科書を使用し授業実践がされている。 8)『フィンランドの音楽教育 Ⅱ-小学校音楽科教材に関する考察 1 -』 田原昌子 プール学院大学研究紀要 第 51 号 2011 p178 表 15 を引用 9)『小学生の音楽 2』教育芸術社 2010 小原光一 他 12 名著 p17

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10)『小学校学習指導要領 第 2 章 第 6 節 音楽 第 3 指導計画の作成と内容の取扱い 2(4) イ』文部科学省 2008

【引用・参考文献】

・Liisa Kaisto, Sari Muhonen, Salla Peltola著『MUSIIKIN mestarit 1-2』OTAVA社2008

・Juha Haapaniemi, Elina Kivelä, Mika Mali, Virve Romppanen著『MUSIIKIN mestarit 3-4』OTAVA社2009 ・The Finnish National Board of Education 『The National Core Curriculum for Basic Education』2004 ・坪能克裕・坪能由紀子・高須一・熊木眞見子・中島寿・高倉弘光・駒久美子・味府美香『音楽づくりの授業ア イディア集 音楽をつくる・音楽を聴く』音楽之友社 2012 ・山崎正彦『見つけよう 音楽の聴き方聞かせ方―新学習指導要領を活かした音楽鑑賞法』株式会社スタイル ノート 2012 ・金本正武・坪能由紀子『小学校新学習指導要領 ポイントと授業づくり』東洋館出版社 2009 ・柴田礼子『子どものための たのしい音遊び 伝え合い、表現する力を育む』音楽之友社 2009 ・高倉弘光『音楽Cシリーズ 音楽・からだで感じる授業づくり―豊かな感性が支える確かな力―』株式会社東 洋館出版社 2007 ・福田誠治『こうすれば日本も学力日本一 フィンランドから本物の教育を考える』朝日新聞出版2011 ・波田野亘『フィンランド語日本語 辞典』2010 ・佐藤学・澤野由紀子・北村友人『未来への学力と日本の教育 揺れる世界の学力マップ』明石書店 2010 ・福田誠治『フィンランドは教師の育て方がすごい』亜紀書房 2009 ・鈴木誠 他5名 『フィンランドの理科教育 高度な学びと教員養成』明石書店 2008 ・庄井義信 中嶋博 『未来への学力と日本の教育 フィンランドに学ぶ教育と学力』明石書店 2005 ・『小学生のおんがく1』『小学生の音楽 2』教育芸術社 2010 ・文部科学省『小学校学習指導要領解説 音楽編』教育芸術社 2008 ・文部科学省『中学校学習指導要領解説 音楽編』教育芸術社 2008 ・文部科学省『中学校学習指導要領解説 音楽編』教育芸術社 2008

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(ABSTRACT)

Japanese Music Education methods I

Learning from Finnish music education methods

TAHARA Masako 

   By analysing 1st to 4th grade elementary school music textbooks and the contents of “the National Core Curriculum for Basic Education”, two characteristics of Finnish music education have become clear. The characteristics are “value the harmony and atmosphere that sound creates”, and “feel the flow of the voice and sound”.

   By recognizing these characteristics as a basis for music education methods, this study shows specific examples of teaching musical instruments (mouth organ) to “feel the atmosphere of the sound and harmony” and singing to “feel the flow of the voice and sound”, and considers practical approaches to positively affect Japanese music education in the lower grades of elementary school.

表 1 1-4 学年の主たる指導内容の比較 ナショナル・コア・カリキュラム 学習指導要領 表現領域 歌唱 発話や言葉遊びを含む歌唱ゲームを通した歌唱指導や声部に 分かれて歌唱できる歌唱曲の指導。 範唱を聴いたり、ハ長調の楽譜を見たりし、歌詞の内容や曲想を工夫して思いや意図を持って、自然で無理のない歌い方 で、互いの声や伴奏を聴いて歌う指導。*歌唱教材は、共通 教材を含む、斉唱や簡単な合唱曲を取り扱う。 表現領域 器楽 身体を使った楽器、リズム楽器、旋律楽器、和声的な楽器の 演奏の指導と、器楽指導を通してリズ
表 2 フィンランド・日本の 1-2 学年の音楽科学習内容比較 フィンランド『MUSIKIN mestarit 1-2』 日本『小学生のおんがく 1』『小学生の音楽 2』 表 現 の 内 容 歌唱 ・自分の声を意識し、発声を工夫することによって生まれる音楽の流れを感じる。・動物の鳴き声から、声には色々な高さがあることを学ぶ。・言葉のリズムを大切にし、拍に乗って歌う。・カンテレの伴奏に合わせて、長調・短調の音楽の雰囲気を感じながら歌う。 ・姿勢をよくし、音の高さを階名と手の位置で確か め、様子を思い浮かべ歌詞

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