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テーマ 器械運動における 学び合い の有効性 ~ 跳び箱運動の学習を通して ~ 相模原市立 教諭 若松小学校 渡嘉敷勇祐 Ⅰ はじめに クラスの学び合いの状況本校は 校内研究で 学び合い をテーマにしていることもあり 各教科で子ども達がお互いに学び合うことができている 私が担任をしている5 年 1

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Ⅰ はじめに ・クラスの学び合いの状況 本校は、校内研究で「学び合い」をテーマ にしていることもあり、各教科で子ども達が お互いに学び合うことができている。私が担 任をしている5年1組(30人)でも、算数 や国語の学習では子ども達がお互いにかか わり合い学習課題に取り組む姿が見られる。 体育においても、バスケットボールなどの ボール運動系ではチームで作戦を考えたり、 練習方法を考え練習したりするなど、かかわ り合って活動している姿が見られた。しかし、 マット運動や鉄棒運動などの器械運動系で は、一人でもくもくと技に取り組む子どもや、 技ができなくて立ち尽くしている子どもな ど、友達同士で学び合うことができずにいる 子どもが少なくなかった。また、お互いに技 のポイントを確認し合ったり、教え合ったり するということができず、「先生、この技で きているか見てください」などと、教師に技 のできを見てもらわないと、納得できない子 どももいた。 ・器械運動の目的 学習指導要領の改訂により、器械運動でも 習得しなければならない技が具体的に明記 されるようになった。これは、子ども達に身 に付けさせたい内容を明確にしたもので、楽 しめば良しとする体育ではなく、楽しみなが ら技能を身に付ける必要があることを意味 していると考える。 Ⅱ 研究の目的 器械運動系で学び合うことができない子 どもの背景には、個人での技の習得を目指す 単元では、「友だちと学び合いながら活動す ることで得られる良さ」を実感できていない ことがあると考えられる。 私は器械運動でも普段の学び合いのよう に、全員が全員のアドバイザーになることで、 ・技の習得に必要なポイントを共有する ・友達と比較してできていないポイントを発 見する ・同じ課題を持つ友達同士で練習方法を考え、 活動する ・互いに認め合い、自信を高める などの点が期待できると考えた。そうするこ とで、自分達で課題を解決することができる ようになる。そして、「自分もこのポイント の練習ならできるかも」と、スモールステッ プを踏むことで、効果的に技を習得していく ことができると考えた。そこで、研究仮説を とし、跳び箱運動の実践を行った。 学び合いが活発に行われている具体的な 姿を、「お互いにアドバイスをし合ってい る。」「友達と関わり合って活動している。」 とした。また、自信を持って活動できている 具体的な姿を「めあてを決め、その解決に取 り組めている。」とした。技の上達について テーマ 器械運動における「学び合い」の有効性 ~跳び箱運動の学習を通して~ 相模原市立 若松小学校 教 諭 渡嘉敷 勇祐 学び合いを活発にすれば、自信を持って 活動するようになり、技が上達する。

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は、子どもが実感する自己評価と、友だちや 教師からの他者評価から総合的に見ていく。 Ⅲ 実践の手立て 子ども達の学び合いを活発にするために、 ・身体感覚作りを意識した準備運動 ・各局面のアドバイスゾーン ・学習カード の3つを手立てとして取り組んだ。 ① 身体感覚作りを意識した準備運動 クラスを3つのグループに分けて、学習の 最初に準備運動を2分間のローテーション で行った。ここでの準備運動とは、いわゆる 柔軟体操ではなく、その単元に合わせて類似 した動きを行い、運動を行うのに必要な身体 感覚を身に付けさせるものである。 図1.単元計画の構成 3つのローテーションは以下のように分 けて行った。 A:ロイターバーン (強い踏み切りから、腰を高く上げる感覚を 養う) B:かえるの足うち (支持感覚と逆さ感覚を養う) 目指せダンク (助走からの力強い両足での踏み切りの仕 方を養う) C:ステージ跳び上がり うさぎの川跳び越し(どちらもかかえ込 み跳びの足抜きの感覚を養う) 図4.ステージ跳び上がり 図5.ウサギの川跳び越し 5つの準備運動は身体感覚作りを意識する と同時に、それぞれの技のポイントをクラス 全員で共通理解することもできる。例えば、 ロイターバーンでは、腰を高く上げるために 踏み切り板を『バーン』とならすくらい強く 踏み切らないといけない。これは、どの跳び 方にも共通して大事なことなので、子ども達 がお互いに見合うとき、うまく跳び越せない 友達に対して、「踏み切りの音が小さいから、 腰が上がっていないのではないか」などとア ドバイスすることができるようになること を期待した。 ② 各局面のアドバイスゾーン 1つの活動場所につき、3か所のアドバイ スゾーン(助走と踏み切り、着手、空中姿勢 と全体の安全確認)を設けた。 図6.各局面のアドバイスゾーンの立ち位置 跳ぶ子どもに対して、1か所1人で見て、 跳び終わったら、3人が気付いたことをアド バイスする。そうすることで跳ぶ子どもは各 局面のアドバイスを得ることができ、技が上 1 2 3 4 5 6 はじめ

用具の準備・身体感覚作り

10 20 30 40 ○ 学 習 の ね ら い や 進 め 方 を 知り、見 通 し を 持つ。 めあて① 基本技に挑戦 (技の完成度を高めよう) めあて②発展技に挑戦 (新しい技に取り組もう) まとめ 踏み切り 空中姿勢 安全確認 着手 跳び箱 マット 踏切板 図2.ロイターバーン 図3.目指せダンク

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達するのではないかと考えた。一方、アドバ イスをする子どもは、各局面で役割があるの で、集中して見なければならない。また、全 局面を交換して見ていくので、友だちの跳び 方からポイントをつかむことができること を期待した。 ③ 学習カード 学習カードは、一人ひとりが何をめあてに しているかを教師が把握し、同じめあてを持 つ友だちを教えたり、練習方法のアドバイス を行ったりするものである。また、気がつい たことを記述する欄を作り、友だちからのア ドバイスや、自分が活動しているときに掴ん だ技のポイントを記入できるようにした。毎 時間記入していくことで、友だちとの「学び 合い」の過程が残り、「学び合い」の良さを 実感できることを期待した。 Ⅳ 実践の経過と内容 本実践を通して、子ども達が学び合って活 動する姿が多く見られるようになった。そし て、たくさんの技に挑戦し、習得していく姿 があった。ここでは、実践の経過を教師の見 取りと学習カードで見ていく。 第1時 事前アンケートで、跳び箱が嫌いと答えた 4人の児童は、跳び箱を跳び越すことが苦手 だから嫌いと答えていた。跳び箱が好きと答 えた児童も開脚跳びはほとんどできるが、か かえこみ跳びは23人、台上前転は14人が できない状態だった。全員の技を上達させる ためには、グループ学習でお互いに学び合っ ていくことが必要と感じたので、子ども達に 「学び合い」で学習をすすめていくことを伝 えた。オリエンテーションの中で、めあて① では、グループ(生活班6人)での活動を中 心に、基本技の開脚跳び、かかえこみ跳び、 台上前転に取り組み、習得と完成度を高める こと、めあて②では、似たような課題を持っ た友だちと一緒に、発展技の首はね跳びと頭 はね跳びに挑戦することを確認した。(図1) また、身体感覚作りの準備運動のやり方と その効果、準備・片づけの役割分担など授業 の進め方を説明した。 残った時間で、開脚跳びを行ったところ、 グループで教え合ったりして、6段は2人跳 べなかったが、5段は全員が跳ぶことができ た。 この日開脚跳びができるようになったSさ んは、学習カードには、 と、友だちから受けた着手を奥にするという アドバイスを実践したことが跳べるように なった要因だと分析した。さらに、上達する ためのアドバイスを試すなど学び合ってい る姿が感じられた。 第2時・第3時 第2,3時では、お互いに声を掛け合って 準備運動をする姿が見られた。ステージ跳び 上がりでは、ステージの上で目線を見る人と ステージの下で踏み切りを見る人をつけて、 お互いに見合うなど、自分たちで工夫する姿 が見られた。また、ロイターバーンでは、腰 を上げる位置を教師が示したやり方を真似 してペアを作って活動していた。多くの子ど も達が楽しみながら関わり合って、運動感覚 を身に付け、いろいろな跳び方に生かすこと ができた。 また、めあて①の基本技に挑戦では、多く の児童が台上前転やかかえ込み跳びに取り 組んでいた。1人が跳び終わったら、各局面 のアドバイスゾーンの子ども達が集まり、ア ドバイスを行うことを狙っていたが、踏み切 りのアドバイス以外はあまりアドバイスを している姿が見られなかった。おそらく、自 分と取り組んでいる技以外のポイントをし ・ 6段で跳べたからよかった。手の位 置がよかったからだと思う。体を水平 にするときれいに見えると言われてや ってみたけど難しかった。

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っかりと覚えていないことが原因であると 考えた。 めあて①に取り組んでいた子どもたちの学 習カードには、自分の技の上達を記述したもの が多かった。その他にも、 というアドバイスゾーンにより、「学び合い」 を深めた記述もあった。しかし、 といった、アドバイスゾーンが効果的にいって いないと感じとれる記述もあった。 そこで、第4時の活動から、めあて①におい ても、同じ課題を持つ友だちとグループを作っ て良いこととした。そうすれば、同じ跳び方を 課題にしている子ども達でグループを作り、有 意義な活動ができると考えた。また、基本技が できるようになった子どもは、めあて②を行う 時間を多くとってもいいことにした。 第4時 今回の単元において、最も子ども達が学び合 っている姿、自信を持って取り組んでいる姿が 見られた時間だった。 例えば、台上前転が苦手な子どもたちは、マ ットで真っ直ぐ前 転ができているか を見合って、でき たらマットをどん どん高くしていく 練習方法に取り組 んだ。マットだと 広いし、恐怖心がなくなるから安心してできる という考えからこのような練習方法を取り入 れたらしい。また、跳び箱の上にマットを敷き、 両サイドを2人で持って、跳び箱から横に落ち ないようにして台上前転に取り組むグループ もあった。この方法は、前の時間に紹介してい た練習方法だが、自分たちに合いそうな方法を 話し合って決めていた。 かかえ込み跳びでは、うさぎの川跳び越しを 何度も繰り返して、感覚を身に付けようとする グループもあった。上手な友だちに声をかけて、 アドバイスをもらっている姿もあった。 めあて②の発展技に挑戦していたグループ では、頭はね跳びがなんとかできる子ども2人 が中心になって、試行錯誤している姿があった。 この日の学習カードには、 ・ 自分の動きをみてもらったらだいたい 形はできているから、何度も練習すると 必ずできると言われました。 ・ 同じグループの人が全員台上前転でう まかったので、見本になった。 ・ 頭を手前に着くと「くるん」っとなっ てきれいに回れるよとアドバイスして もらいました。 ・ 踏み込んでから、勢いよくジャンプし てみたらと言われました。やってみると 手が奥に付けてきれいに跳べました。 ・ (班で)かかえ込み跳びが1人だった ので、アドバイスが少なかった。 ・ 横で跳びたかったけど、縦で跳ぶ人が 多かったから、縦でしか練習できません でした。縦だとまだ跳び箱に座ってしま います。 図7.重ねマット ・ 台上前転で怖がらずに回れるようにマ ットで練習をした。まだ、跳び箱ではで きないときの方が多いけど、4段の大き い跳び箱ではできるようになった。K君 達から、怖がらずに勢いをつけるとでき ると教えてもらった。 ・ 頭はね跳びを9人くらいでやりまし た。僕は、頭の着く位置を台上前転と一 緒にしていたけど、頭を着くところが間 違っていたと分かりました。D君がうま くできていた。先生に教えてもらった補 助を交代しながらやりました。 ・ Kさん、Iさん、Nさんと4人で開脚 跳びをしました。4段からやって6段ま でやりました。6段は、勢いをつけない といけないけど、そうすると着地がきれ いにできない。

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など、学び合いが充実していたことが分かる 記述が多くあった。同じ課題を持つ友だちと の活動は、とても有効だと感じた。 第5時 めあて②の発展技に取り組むための条件 として、台上前転が安定してできること(友 だちが判断した後、教師に見てもらう)とし たので、めあて①で、台上前転に取り組む子 どもが増えた。 台上前転ができて発展技に挑戦した子ど もは、めあて②でも意欲的に取り組むことが できた。まずは、感覚作りとして、教師の補 助を付けて、ステージ上から「L字」のまま 回る。できるようになったら、次は「L字」 からタイミング良く足を前方に投げ出す。タ イミングがつかめたら、友だちと協力して跳 び箱で発展技に取り組んだ。 しかし、台上前転が上手にできない子ども は、ずっと台上前転に取り組まなければいけ なくて、意欲的に取り組めていないように感 じた。教師も、発展技の補助につきっきりに なってしまい、アドバイスができなかった。 この時間ずっと、台上前転に挑戦していた 子どもの学習カードには、 など、自分でめあてを持って取り組んでいた り、友達とも関わり合って活動したりしてい たことが分かる記述が多かった。しかし、4 5分間ずっと同じ技に取り組むのは、集中力 も続かず、難しいことだと感じた。 第6時 単元の最後なので、最初の自分の技術がど こまでスキルアップしたかを確認する時間 を設けた。また、一度も挑戦していない跳び 方も感覚を知ってもらうために、教師の補助 をつけて挑戦させた。 友だちとお互いに見合い、褒め合いながら、 自分たちの技の上達度を確認している姿を 見て、跳び箱での学び合いの有効性を実感し た。 Ⅴ 研究の成果と課題 ・成果 授業中の様子や学習カードから、3つの手 立ては、子ども達が「学び合い」をするため に有効であったと考えられる。 また、事前(第1時終了後)と事後(第6 時終了後)に取ったアンケート「授業中、友 だちにアドバイスをしていますか?」の比較 からもアドバイスをしているという児童が 20%から53%まで増えた。このことから、 子ども達は、単元前に比べ、「学び合い」を 意識した学習ができたと言える。 図8.授業中友だちにアドバイスしているか そして、授業の度にできるようになった事 をお互いに認め合うことで、自信を持って活 動していた。学習後のアンケートでも、でき なかった技ができるようになった。来年は頭 跳ね跳びをマスターしたい。などと自信がう かがえる内容のものが多かった。 技の上達については、事前アンケートと事 ・ 台上前転を、段差を付けた跳び箱で回 った。マットでやっていたみたいにでき るようになりたい。 ・ 台上前転で、膝を伸ばして大きな台上 前転を目指した。頑張って膝を伸ばして いるけど少しだけ曲がっていると言わ れる。

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後アンケートの比較から、基本技である開脚 跳び・かかえこみとび・台上前転が上達した と実感している子どもが増えていることが 分かる。 開脚跳びについては、事前からできたと感 じている子どもが多かったため、数値での変 化は大きくないが、一人ひとりが、高さの記 録を伸ばしたり、調節板を入れての大きな開 脚跳びができるようになったりと、子ども達 の「できるようになった」という実感は大き い。 台上前転は、発展技につながる技として多 くの子どもに身に付けさせたいという願い から、単元計画の中でも1番時間をかけたこ ともあり、「できた」と実感した子どもが、 30%から77%まで増えた。また、発展技 である、首はね跳びや頭はね跳びでは、初め 1人しかできなかったが、10人の子どもが、 どちらかの技を「何とかできた」「できた」 と答えるなど、自分の技の上達を実感してい る。 このように、「学び合い」により、友だち 同士で技のポイントをアドバイスし合った り、友だちの跳び方を見たりすることで、一 人ひとりの技は上達することが実証できた。 図9.開脚跳びができるか 図10.かかえこみとびができるか 図11.台上前転ができるか ・課題 今回の研究では、いくつか課題も残った。 1つ目は、グループの編成である。めあて ①では、生活班でグループを作ってしまった ので、アドバイスゾーンを設けても、取り組 む技の種類が異なっていて、アドバイスがし づらかった。初めから、めあて②のときのよ うに、同じ技や同じ課題に取り組む人でグル ープを組む方が望ましかった。 2つ目は、単元計画である。今回は、めあ

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て②で、発展技の首はね跳びと頭はね跳びに 挑戦するとしたが、これでは、できない子ど もがめあてを持って活動できない。めあて① で、できる技の完成度を高める。めあて②で、 まだできない技に挑戦するというふうに、挑 戦する跳び方や活動のめあてを子ども達が 自分で決めることができる、柔軟な単元計画 が必要であった。 Ⅵ.おわりに 跳び箱が苦手と言っていた子どもも跳べ るようになると楽しいと答える。子どもにと っては、できると実感できることが大事であ る。「学び合い」によって子ども達がより多 くの「できた」を実感できるように、何を身 に付けさせたいかを教師がしっかり考えて いく必要があると改めて教えられた。

参照

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