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金澤町家の現状と今後の課題

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Academic year: 2021

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(1)26. 特集:人口減少時代の環境デザインを考える. 豊島祐樹 Toyoshima Yuki 石川工業高等専門学校. 第一部:現状調査報告. 金澤町家の現状と今後の課題 Current and Upcoming Issues of Kanazawa Machiya. NIT, Ishikawa College. 1.はじめに 1.1. 金沢市の歴史的建築物. 北陸に位置する石川県金沢市は、城下町として形成されたこと、過去に大. きな戦災にあわなかったことから、現在でも多様な年代・タイプの建築物が 市内に残存している。地域に残る歴史的建築物は、全国的に貴重な歴史資源 としてまちづくりを考える上で無くてはならないものとなっており、金沢市 でも様々な施策が行われている。. 1.2. 金澤町家とは. 金沢市では建築基準法が施行された昭和25年以前の木造の建築物で伝統的. な構造や意匠が残る建物を「金澤町家」と総称し保全活用を進めている。 「京町家」との大きな違いは、町家、武士系住宅、近代和風住宅と多様な様 式を含むことにある。 2013年には「金澤町家の保全及び活用の推進に関する条例」 (通称:金澤 町家条例)が制定され、金澤町家の保全及び活用の推進について、基本理念 図1 金澤町家の例. を定め、市、市民、所有者・事業者の役割を明らかにするとともに、施策の 具体的な方向性を示している。2019年に条例が改正され、金澤町家の解体等 の事前届出制度が始まった。具体的には、対象エリア内で金澤町家を大規模 改修もしくは解体しようとする場合に90日前までの届出を行うように促し、 届出が出された場合には保全活用の支援策の提案等の働きかけを行っている。. 1.3. 本稿で報告する調査の概要. 本稿では金澤町家に関わる様々な調査について報告を行う。第2章では外. 観悉皆調査による金澤町家の残存状況、第3章では文献調査とヒアリング調 査による金澤町家への支援制度、第4章ではインタビュー調査による関わる 専門家、第5章ではインタビュー調査による金澤町家の活用者について報告 する。なお、調査については、筆者が関わる NPO 法人金澤町家研究会およ び筆者個人が行った。. 2.金澤町家の外観悉皆調査 2.1. 外観悉皆調査の概要. 金沢市は国の重要伝統的建造物群保存地区の他、1994年から始まった市独. 自の制度である「こまちなみ保存区域」等により、歴史的建築物や町並みを.

(2) デザイン学研究特集号  Vol.28-2 No.104. 保存継承してきた。しかし、これらの指定エリアは限定的であり、広く分布 する金澤町家は対象としていない。 市内に広く分布する金澤町家については、固定資産台帳によって年々減少 が確認されていたが、詳細は明らかになっていなかった。金沢市が2008年 [注1]、2012年[注2]、2017年[注3]の3時点にわたって NPO 法人金澤. 町家研究会へ委託を行い、金澤町家の外観悉皆調査を行った内容を報告書と してまとめている。以下にその調査結果の中から各時点の利用状況について 示す。. 2.2. 調査結果の概要. 表1はまちなか区域という中心市街地に2008年時点で残存した6,215件の. 金澤町家の各時点での利用状況を示している。時間の経過とともに利用中の 建物の割合は減少し、空き家の建物や滅失した建物が増加していることがわ かる。また、1年あたりの滅失数も近年の方が多いことがわかる。 表1 各時点での利用状況 利用中 2008年 2012年 2017年. 5608. 空き家. 607. 90.2% 4970. 80.0% 4364. 70.2%. 9.8% 862. 13.9% 892. 14.4%. 滅失. 合計. -. 6215. -. 100.0% 383. 6215. 6.2%. 100.0%. 959. 6215. 15.4%. 100.0%. 表2は2008年と2012年の利用状況のクロス集計、表3は2012年と2017年の 利用状況のクロス集計である。どちらも直前の時点の利用状況が空き家の方 が、利用中だった建物よりも高い割合で滅失していることがわかる。このこ とから、金澤町家の滅失を防ぐためには、空き家となった建物を活用希望者 とマッチングさせることが急務であるといえる。 表2 2008年と2012年の利用状況 2012年利用. 4908. 2008年 利用. 87.5%. 2008年 空き家. 10.2%. 62. 2012年空き家. 406. 7.2% 456. 75.1%. 2012年滅失. 294. 5.2% 89. 14.7%. 合計. 5608. 100.0% 607. 100.0%. 表3 2012年と2017年の利用状況 2017年利用. 4191. 2012年 利用. 84.3%. 2012年 空き家. 20.1%. 173. 2017年空き家. 397. 8.0% 495. 57.4%. 2017年滅失. 382. 7.7% 194. 22.5%. 合計. 4970. 100.0% 862. 100.0%. 3.金澤町家に対する支援制度 3.1. 支援制度の概要. 金澤町家に対する支援制度を文献調査および担当課へのヒアリング調査に. 1)NPO 法人金澤町家研究会:金澤町家の継承・活用に. より整理を行った。支援の種類は大きく分けて、改修補助制度、流通支援制. 2)NPO 法人金澤町家研究会:金澤町家の継承・活用に. 度、情報拠点の3つがある。特に金沢市で独自に行われている支援制度につ. 向けて ─ 2008年度活動報告書 ─ ,2009. 向けて ─ 2011・2012年度活動報告書 ─ ,2013. 3)NPO 法人金澤町家研究会:金澤町家の継承・活用に 向けて ─ 2017年度活動報告書 ─ ,2018. いて、概要と実績を整理して表4に示す。. 27.

(3) 28. 特集:人口減少時代の環境デザインを考える. 表4 金澤町家に対する支援制度 種類. 名称 保存対象物 保全事業. 概要(補助率,限度額) 対象:景観形成上重要な建造物. 実績. 指定保存建造物36件(うち9 件が市の所有)(2018.8時点), 指定保存建造物修復(70%,10,000,000円),防災構造整備(診断)(3/4, 事業数124件, 300,000円) ,防災構造整備(設計) (2/3,200,000円) ,防災構造整備(補強工 総 額 351,943,000円, 平 均 額 事)(90%,5,000,000円),防災施設整備(90%,無し) 2,838,000円(1987 - 2018.3). 対象:にし茶屋街地区 23対象建造物(うち歴史的建 格子戸修復(90%,無し),外観修復(70%,10,000,000円),防災構造整備 築物15件)(2018.8時点) (診断)(3/4,300,000円),防災構造整備(設計)(2/3,200,000円),防災構 事 業 数33件, 総 額110,800,000 造整備(補強工事)(90%,5,000,000円),防災施設整備(90%,無し),新 円,平均額3,358,000円(1993 2018.3) 築修景(70%,2,000,000円) 対象:こまちなみ保存区域 9 区 域, 保 存 建 造 物44件 建築物修景(外観)(70%,2,000,000-3,000,000円),保存建造物修復(70%,(2017.3時点) こまちなみ 5,000,000-7,000,000円 ), 外 構 修 景( 土 塀、 板 塀、 門 等 )(70%,1,000,000- 事業数189件, 保存修景事業 3,000,000円),格子戸修景(70%,無し),設計(30%,300,000円),防災施 総 額418,110,000円, 平 均 額 設整備(70%,3,000,000円),防災構造設備(70%,2,500,000-3,000,000円) 2,212,000円(1995 - 2018.3) 茶屋街 まちなみ 修景事業. 改修補助. 対象:1950 昭和25年以前建築の木造の建築物 事 業 数95件( う ち 住 宅66件, 耐震性能診断(3/4,300,000円),防災構造補強設計(2/3,200,000円),防 店舗等29件), 金澤町家 災構造整備(50%,2,500,000円),住宅:外部修復工事,内部・内装改修工 総額231,190,000円, 再生活用事業 事(50%,1,500,000円),店舗等:外部修復工事,内部改修工事,内装改修 平均額2,433,000円 (2010 - 2018.3) 工事,設備機器整備(50%,2,500,000円). 流通支援. 情報拠点. 金澤町家 情報バンク. 登録:184件(売買125件,賃貸 歴史的建築物の流通促進を図るための物件情報サイト、市がサイトの管理・ 59件) ,契約:144件(売買101 運営、NPO 法人が登録・建物調査・データ作成を受託して実施 件,賃貸43件) (2005 - 2018.3). 登 録: オ ー ナ ー72件, ユ ー 金澤町家流通 歴史的建築物の所有者(オーナー)と活用希望者(ユーザー)のマッチングを行う ザー254件,マッチング実績: コーディネート NPO 法人が市の委託を受けて実施 31件(2011 - 2018.2) 事業 金澤町家 情報館. 歴史的建築物の保全活用に関する総合相談窓口や情報発信、空間体験機能. 2016年11月開館、以来、相談 が増加. 3.2. 改修補助. 全国でも行われている改修補助の制度としては、有形文化財修理復旧事業. と伝統的建造物群保存地区保存整備事業の2つがあげられる。これらの制度 の補助率や限度額は自治体によって異なるが、金沢市は比較的高い水準にあ る。高い水準の理由は、これらの事業が行われる以前から、後述する金沢市 独自の補助事業が実施されており、その水準に合わせたという経緯がある。 金沢市独自の改修補助の制度として、①自主条例にもとづく指定保存建造 物に対する補助事業である保存対象物保全事業、②にし茶屋街地区を対象と した茶屋街まちなみ修景事業、③こまちなみ保存修景事業、④金澤町家再生 活用事業の4つがある。 ①保存対象物保全事業は、市の自主条例によって景観上重要な建造物の外 観保存を図る制度であり、1983年に発足している。補助率や限度額は高い水 準にあるが、外観保存を目的としているため、内部の水回り等の改修は対象 外である。②茶屋街まちなみ修景事業は1993年に発足した事業で、①と同様 に内部の水回り等の改修は対象外である。③こまちなみ保存修景事業は、外 観修復の補助が中心で、当初は水回り等について補助対象ではなかったが、 近年は補助対象になるよう変更され、活用者の生活の利便性にも配慮した事 業である。④金澤町家再生活用事業は、①から③の文化財行政の枠組みで行 われている事業と異なり、広く残存する金澤町家について継承・活用するた めの施策として、2010年より開始されたもので、外部だけでなく内部や内装 についても補助を行うため、より活用を意識した補助事業となっている。い ずれの事業も比較的高い補助限度額を設定しているといえる。.

(4) デザイン学研究特集号  Vol.28-2 No.104. 3.3. 流通支援. 金澤町家の流通支援として①金澤町家情報バンク、②金澤町家流通コー. ディネート事業の2つがある。①金澤町家情報バンクは、金澤町家の物件情 報サイトで、金沢市が2005年より管理・運営を行っている。建築士会などに 建物調査を依頼し、間取りがわかる図面の他、 「外観」 「設備」 「構造」 「敷地」 「総合」の項目について目視による評価を公開している。高い成約率を維持 しており、情報提供のシステムとして有効に機能している。②金澤町家流通 コーディネート事業は、所有者と利用希望者をマッチングする事業で、金沢 市が NPO 法人金澤町家研究会に委託して2011年より行っている。NPO メン. バーからコーディネーターを選任し、コーディネーターが参加する流通部会 での検討にもとづいてマッチングを行う。①とは異なり非公開情報にもとづ いて進めており、多様な需要にきめ細かく応じているものであるといえる。. 3.4. 情報発信拠点. 金沢市が整備した情報拠点として2016年11月に開館した金澤町家情報館が. ある。金澤町家の保全活用に関する総合相談窓口や歴史的建築物の情報発 信、空間体験機能を担っている。2018年9月時点で市の職員1名と NPO 法. 人金澤町家研究会の職員1名が常駐し、同館の専任スタッフ3名とともに運 営を担当している。市職員と NPO 職員が連携しながら運営していることが 特徴である。同館が開館してから、前述した流通支援の登録者が増加し、改 修相談も増加していることから、情報拠点として一定の役割を果たしている といえる。. 4.金澤町家に関わる専門家 4.1. 関わる専門家の概要. 金澤町家の改修と活用を進めていくには、専門家の積極的な関わりが欠か. せない。金澤町家に関わる主な専門家には、流通に関わる宅地建物取引士、 改修計画に関わる建築設計者、改修工事に関わる建築施工者があげられる。 調査対象は金澤町家に比較的多く関わる専門家、それぞれ3名で調査は2017 年10月から11月に行った。本調査は NPO 法人金澤町家研究会が2017年度に文. 化庁の委託事業で行ったものである[注4] 。以下に結果の概要と提言を示す。. 4.2. 専門家調査の結果の概要. 専門家が金澤町家の流通、改修、施工に関わることは、専門家自身の意識. や意向に依存しており、実績は個人差が大きい。業務の依頼は、建築設計者 の場合、人づてによる依頼が多い。それぞれホームページを持っており、依頼 者がそれを見て依頼することがある。建築施工者の場合は、施主から直接依 頼ではなく、ほとんどが設計事務所からの依頼である。宅地建物取引士の場 合、人づてによる依頼、ホームページからの依頼、近隣からの依頼などによる。 業務の手間や報酬に関しては、手間の割に報酬が少ない場合が多くみられ る。また、建物の状態にばらつきがあり、工事をある程度進めないと費用が 不明な部分も多く、最終的な改修工事費のばらつきが大きい。設計料は設計 者によって考え方にばらつきがある。 4)NPO 法人金澤町家研究会: 「金沢市における民間事業 者による歴史的建築物活用の実態と自立への課題」─. NPO 等による文化財建造物管理活用の自立支援モデ. ル検討事業(文化庁委託事業)─ ,2018. 改修補助事業は金額が大きく、改修と活用の促進に貢献しているとの高評 価が多くみられたが、改修基準が厳し過ぎる点や年度予算や議会承認の手続 きの関係で時間的制約がある点については評価が低かった。. 29.

(5) 30. 特集:人口減少時代の環境デザインを考える. 4.3. 専門家調査による提言. 金澤町家の流通、改修の設計監理、改修工事について、専門家の手間に見. 合った報酬が得られるようにする必要がある。また、専門家の技術が依頼者に 分かりやすいようにするのに加え、相談しやすい状況を構築する必要がある。 金澤町家の改修補助の仕組みについては、専門家からは求める改修内容が 厳し過ぎる点、補助を受けるまでに時間がかかり過ぎる点、改修時期が限定 される点などの課題があげられた。改修基準を緩和することや時間的制約に 対して年度に関係無い運用するなどの改善が必要である。. 5.金澤町家の活用者 5.1. 調査の概要. 金澤町家を実際に活用している活用者に対してインタビュー調査を行った。. 調査対象者の選定方法は、まず、金澤町家を改修・活用している活用者のう ち、筆者らのこれまでの活動から、 「金澤町家再生活用事業」の補助を受けた 6名、補助を全く受けていない9名の計15名とした。インタビュー調査は、他 記式調査票を用いて、2017年11月∼2018年1月に実施した。この調査の詳細 は日本建築学会計画系論文集で発表[注5]をしている。以下に概要を示す。. 5.2. 金澤町家の取得経緯や改修して活用する理由. 金澤町家を相続ではなく新規利用の調査対象者の取得経緯は、不動産屋の. 紹介や金沢市の流通支援である金澤町家情報バンクや流通コーディネート事 業の他、「近隣に住んでいて空き家だったから」という経緯や「自ら見つけ 図2 改修された金澤町家の内装. て持ち主と交渉した」などの経緯がみられた。自ら見つけたケースは元の持 ち主が積極的に売買・賃貸する気が無い場合が多い。 改修して活用する理由として、相続の調査対象者からは「建物に愛着があ るから」という活用している建物自体への回答がみられたのに対し、新規利 用の調査対象者からは「歴史的建築物や町並みが好き」など、古いものに対 する全般的な回答がみられた。金沢以外が出身の調査対象者からは「金沢を 気に入り落ち着いた環境でご近所と付き合う暮らしがしたかった」、「昔から 金沢にあるものだから」「四季を感じられるから」という意見があり、金沢 で古くから続く暮らしを満喫したいという意向がみられた。. 図3 改修された金澤町家の外観. 5.3. 金澤町家の改修. 改修で要望した点は、既存のものを生かすという意見が多く、歴史性を生. かすという面での意見と、改修コストを抑える面での意見があると考えられ る。また、「水回りなど、設備のやりかえ」等の利便性を要望した意見がみ られた。その他、「寒さ対策」等の機能性の向上を要望した意見があった。 設計監理費への評価を回答したのは4名にとどまるが、「妥当」が3名、 「安い」が1名であった。「高い」という評価はみられず、設計者の専門性や 手間を活用者もある程度理解していると考えられる。施工費への評価を回答 したのは8名で、5名が「想定よりも費用がかかった」という評価であっ た。施工費がオーバーする理由としては、「改修の途中で様々な問題が発生 して金額が上がっていった」や「補助金をもらえる水準の改修を行った結 果、高額になった」というケースの他、「歴史的建築物の改修にそれほど費 5)豊島祐樹,川上光彦:金沢市における歴史的建築物の 改修補助事業の実態と課題,日本建築学会計画系論文 集,第84巻,第766号,pp. 2605-2615,2019年12月. 用がかかると思っていなかった」というケースがある。「妥当」と評価した のは3名であった。.

(6) デザイン学研究特集号  Vol.28-2 No.104. 耐震性の確保については、土壁の塗り替えや荒壁パネルの設置、柱や筋交 いの新設による補強等の対策がなされている。現在の基準法で求められてい る基準まで耐震性能を確保することは難しく、可能な範囲での性能を確保し ている様子がうかがえる。防火性の確保については、網入りガラス、防火 シャッター等の設置など、少なくとも建築指導課や消防の指導には対応して いる様子がうかがえる。断熱性の確保については、壁、屋根、床に断熱材や 断熱シートを入れることや、フローリングの無垢材への変更、床暖房の設 置、サッシのペアガラスへの変更などのような対策がなされている。実際に は断熱性を確保できていないケースが多く、対応の難しさがうかがえる。耐 震性、防火性、断熱性のそれぞれについて「特に対策はしていない」という 意見もみられた。 一般的に歴史的建築物の改修を行う際には、建築基準法などの法令への対 応が課題となる。歴史的建築物の良さを生かすことと法令への対応が矛盾す ることが多々あり、用途変更の確認申請が要らない範囲で改修を行うケース や内装制限がかからない範囲で改修を行うケースがある。このことが大型の 町家の流通や活用を阻害していると考えられる。補助金を出すこと以外に も、法令への対応の代替措置を用意することが、歴史的建築物の活用を後押 しする上で重要である。. 5.4. 金澤町家を活用してみての評価. 活用して良い点の回答は、住宅用途以外では「お客さんの評価が高い」と. いう回答が多くみられた。その他、「建物を残すことができた」、「豊かな暮 らしを実現できる」、「文化を継承できる」など回答は多岐にわたった。一 方、良くない点の代表的な意見として、「寒い」という意見があり、15名中 6名が回答している。改修設計や施工の際には断熱性の向上について考慮す るが、現代の一般的な建物と比較すると、寒さの解決までには至っていない といえる。普段の生活に関しては、「掃除が大変」、「収納が少ない」等の意 見があげられている。メンテナンスについては、「隣家と自分の建物の間が 痛みやすい」、「構造や設備の更新に費用がかかる」等の意見があげられた。 知人や近所の評判は全般的にとても良い評判だといえ、周囲への波及効果も 大きいと考えられる。. 6.おわりに 本稿では、金沢市の歴史的建築物である金澤町家について、いくつかの調 査とその結果について報告を行った。様々な施策を行っている金沢市におい ても歴史的建築物の滅失は進んでおり、既存の施策の改善や新規の施策が急 務である。. 31.

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