臨床でのデータ収集(1):運動学的研究をあきらめない
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(2) 臨床でのデータ収集(1):運動学的研究をあきらめない. 49. 図 1 2 次元解析のカメラ位置,解析したい運動面が画角に 入るよう,カメラを設置する.. 的基準肢位を取らせたときのマーカー位置を撮影すれ ば,それが 0 度基準になる。また,運動の撮影回数も 1 回だけでなく,3 ∼ 5 回は同じ動作を撮影しておく方が. 図 2 正規化をする前の一歩行周期足関節角度の各試行の軌 跡(上)と正規化して求めた試行平均と標準偏差(下).. よい。試行による運動のばらつきの大きさを見積ること ができる。 3.解析. 2 台のカメラを使った 3 次元運動解析. 解析は専用ソフトを使うとなにかと便利だが,フリー. 高価なシステムがなくても,3 次元運動解析はできる。. ソフトを利用する手もある。画像解析によく使われる. 費用としては,2 次元解析にカメラが 1 台分の追加があ. Image J(National Institutes of Health)は,動画を扱. るだけである。ただし,解析には 2 次元解析以上に手間. うこともでき,マーカー位置の計測機能もある。市販の. と時間がかかる。3 次元化のためのプログラムは無料で. カメラ,フリーソフトを使って計測した歩行運動の位置. 公開されているものを利用できるが,複雑な計算を伴う. 計測精度を,高精度 3 次元動作解析装置と比較したこと. ので,数値解析ソフトが必要になってくる。. があるが,股関節,膝関節,足関節につけたマーカーの 2) 軌跡は 90%以上一致していた 。. 1.機器. 計測したマーカー座標から関節角度を計算する,身体. カメラは 2 次元解析と同様のものでよい。私は前述の. 重心を求めるなどの計算は,それほど複雑ではないので. GoPro カメラ 2 台で行っている。このカメラは複数で使. エクセルなどの表計算ソフトで可能だ。一人の対象者の. うことも想定されており,リモコンを使って 2 台同時に. 運動を 3 回計測したとき,平均してどのような運動パ. 録画が開始できる。. ターンであったのか求めようとすれば,正規化といった. 数値解析ソフトは Matlab(Mathworks 社)を使っ. 処理が必要になる。これは,運動の開始から終了までの. ている。教員という立場を利用しアカデミック価格で. 時間が試行ごとに異なっていても,開始から終了まで. 購入したが,それでも 10 万円を少し超えた。学生版だ. を 100%時間とし,すべての試行の時間経過を揃えるも. と 1 万円弱と,かなり購入しやすくなっている。3 次. のである(図 2) 。この計算もエクセルで可能だが,マ. 元化のためのプログラムは,カリフォルニア工科大学. クロを使わないと大変面倒である。マクロはエクセルで. の Bouguet 氏(現在 Google へ移籍)が公開している. 実行したい計算手続きを指示するプログラミングのこと. Camera Calibration Toolbox for Matlab. 3). を利用する。. で,マクロを覚えるのも大変という一面もあるが,自分 でプログラミングして,エラーが出ず計算結果が出たと. 2.使い方. きはうれしいし,一度覚えてしまえば,計算式のコピー,. マーカー位置を 3 次元座標(前後,左右,上下)で表. ペーストを繰り返さなくてもよいので,作業が格段に楽. すためには,2 台のカメラで同時にマーカーを捉える必. になる。. 要がある(図 3)。また,カメラの撮影のタイミングを 2 台で合わせることも重要だ。そのために,両方のカメラ に向けたライトの点滅を撮影しておき,後からライトが.
(3) 50. 理学療法学 第 45 巻第 1 号. 光った瞬間のフレームを見つけることで撮影フレームの. 3.解析. 同期をはかる。. 2 台それぞれに写ったマーカー位置の計測には,2 次. 計測空間のどこを原点とし,どの方向を前後,左右,. 元解析と同様に Image J を使う。動画が 2 つに増える分,. 上下と決めるか,さらに,カメラで撮影した 2 次元の. 手間も 2 倍になる。Image J によるマーカー座標の計測. 画像からどのように 3 次元化するかといったキャリブ. は,工夫次第で自動化もできるが,誤って認識しないよ. レーション作業には,Camera Calibration Toolbox for. う手動で 1 フレームずつマーカー位置をクリックして. Matlab を使う。これには白と黒の市松模様のチェッ. 測っているので,マーカーの数やフレーム数が多いと,. カーボードを用いる(図 4 左)。基準となる位置を含. 大変骨の折れる作業になる。3 次元解析専用のソフトウ. め,様々な位置にボードを振り回すことで,キャリブ. エアは,このような作業がほぼ自動化されているので,. レーション用の動画を撮影する。カメラの画像は 3 次元. 苦労を味わうことはない。ただ,労力は要するが,精度. 空間を 2 次元に投影したものだが,Camera Calibration. はよく,1 ミリ程度の誤差で計測できる。. Toolbox は,2 次元の画像から 3 次元空間を再構築する. 静止画像の 3 次元化であれば,手間はそれほどかから. 変換式を導きだしてくれる(図 4 右) 。変換式ができて. ない。私は体表の骨指標(烏口突起,肋骨下端,上前. しまえば,2 つのカメラに写ったマーカー座標(2 次元). 腸骨棘)にマーカーを貼り,その位置を撮影,3 次元化. から,変換式により 3 次元座標が求められる。. することで,体幹のねじれを定量化するのに使ってい 4) る 。脳性麻痺児の体幹変形は,ねじれを捉えないと意. 味がない,という専門家のアドバイスを受けて,仰臥位 で胸郭と骨盤の間の傾斜と回旋を捉えようとした試み である(図 5)。GoPro カメラであれば,楽に運べるし, 臨床の場での設置にも困らない。このように,「高価な 装置が必要」と思われる 3 次元解析も,手間を惜しまな ければ,市販のカメラ 2 台で試せるものとなっている。. 慣性センサを使った運動解析 慣性センサとは,動きを検知する加速度センサや回転 を検知するジャイロセンサを有するセンサで,3 次元の 回転角度を求めることができる。機器が小さく,計測環 境の制約もほとんどないので,臨床での使用に向いてい る。一方,ノイズが入りやすいという点には注意が必要 である。. 図 3 カメラ 2 台による 3 次元解析の概要.3 次元空間を 2 次元で切り出した画像から,3 次元空間への変換式を 算出し,マーカーの 3 次元位置を割り出す.. 1.機器 市販されているシステムは少ないが,高機能なものか ら,機能を限定して費用を抑えたものまである。その中. 図 4 Camera calibration toolbox for matlab を使った 3 次元空間の再構成.左はキャリブレーションで使用する 白黒市松模様のチェッカーボード.右はカメラ 2 台で撮影されたチェッカーボードから再構成された 3 次 元空間..
(4) 臨床でのデータ収集(1):運動学的研究をあきらめない. 51. から,比較的お手頃なセンサ 2 個からなる関節運動計測. 終了を指示できる。データはリアルタイム収集され,グ. システム JAM(ATR-Promotion)を取り上げる。お手. ラフィック表示される(図 6)。計測を終了すると,デー. 頃といっても,センサ 2 個とソフトウエアで 25 万円程. タは csv 形式でパソコンに保存される。. 度はかかる。これまで紹介した中では投資額が大きい が,市販されている製品とあって,マニュアルにした. 3.解析. がって計測すれば,データ収集は容易である。上腕と前. 記録された csv 形式のデータがそのまま使える。ただ. 腕にセンサを装着して肘関節運動,大. し,JAM 自体はノイズを除去する機能がないので,必. と下. につけて. 膝関節運動,といったように,センサを関節の近位と遠. 要に応じて,Matlab などを使って処理をする。. 位の体節につけることで,関節角度を計測する。. 下. と足背部にセンサを装着し,歩行時の足関節運動. を模擬した,足関節運動の計測例を示す。踵接地からつ 2.使い方. ま先離地までの足関節運動軌跡は,足関節が底屈から背. センサを体節につける際は,体節からずれ落ちたりし. 屈,そして底屈へと変わる様子と一致していた(図 7)。. ないようにしっかりと装着する。運動中にセンサが振動 してしまうと,ノイズが入ってしまう。. 加速度ロガーを使った 24 時間姿勢記録. 慣性センサは通信機能も内蔵されていることが多く,. 加速度ロガーは加速度センサに電池と記録メモリがつ. JAM も Bluetooth を使ってパソコンから計測の開始と. いたものだ。そして,重力加速度からロガーの向きがわ かる,という特徴を生かしたのが姿勢記録である。理学 療法場面以外で,患者あるいは患児は 1 日をどのような 姿勢で過ごしているのか知りたい,という障害予防の観 点で取り組みをはじめた。 1.機器 加速度ロガーの価格は,大きさ,記録容量などで異 なる。私が使っているものを挙げると,HOBO ペンダ ント(Onset 社:大きさ 58 × 33 × 23 mm,質量 18 g) がおよそ 5 万円,AccStick(テクノネクスト社:大き さ 33 × 16 × 10 mm,質量 6 g)がおよそ 10 万円となっ ている。AccStick の方が小さくて,記録容量も大きい. 図 5 体幹変形の様子と傾斜と回旋角度を算出する ためのマーカー位置.マーカー位置を基に骨 盤,胸郭,肩峰の座標系(点線で示した三角 形部分)を定義し,それぞれの相対角度で変 形量を表す 4).この例では骨盤に対する胸郭 の傾斜は 24 度・回旋は 3 度,胸郭に対する 肩の傾斜は 16 度・回旋は 13 度であった.. ので,体に取りつけやすく,長時間計測するのに向いて いる。 2.使い方 加速度ロガーの一番の特色は,計測中にパソコンを必. 図 6 関節角度計測ソフト JAM の操作画面(左)と関節運動のアニメーション表示画面(右) .差分オイラー 角が関節角度を示す..
(5) 52. 理学療法学 第 45 巻第 1 号. 図 7 JAM による足関節運動計測の様子(上)と底背屈運動角度(下) .PF:底屈,DF:背屈.. 図 8 加速度ロガーの外観(左)と姿勢 同定のための装着位置(右).. 図 9 ロガーの座標軸と姿勢の関係.重力方向を太い矢 印で示している.体幹が直立しているとき, ロガー の X 軸には 0 G(G = 重力加速度),Y 軸には 1 G が計測されるが,仰臥位のときは X 軸に ‒ 1 G,Y 軸に 0 G が計測される.このような関係を利用し て,記録された重力加速度から直立,仰臥位,側 臥位(右・左),腹臥位を同定する.. 要とせず,単体でデータを計測し保存できる点にある。 計測を開始する時刻や計測周波数をあらかじめパソコン で設定しておけば,対象者が家に持ち帰ってから装着す. 3.解析. ることもできる。丸一日装着した後,ロガーを送り返し. 計測された 3 軸の加速度データから,重力方向を頼り. てもらい,記録されたデータをパソコンに転送する。. にロガーの傾きを算出し姿勢を同定する(図 9)。参考. ロガーの装着位置は肢位を知りたい部位につけるが,. までに,健常な 5 歳女児の睡眠姿勢の記録を示す(図. 仰臥位,側臥位,腹臥位など姿勢を同定する場合,ロ. 10)。このようなデータから,姿勢変換の頻度,同じ姿. ガーの向きと体幹の向きを合わせやすい,胸骨前面が適. 勢が続く最大の時間などもわかる。これまで,重度の脳. している(図 8)。. 性麻痺児を対象に,夜間の姿勢変化が日中と比べて極端 に少ないことを明らかにしてきた. 5)6). 。.
(6) 臨床でのデータ収集(1):運動学的研究をあきらめない. 53. 図 10 ロガーから同定された睡眠時の体位例(5 歳女児) .この例では仰臥位がもっとも長く,睡眠時の 68%を占めていた.次いで,左側臥位が 26%,右側臥位が 6%となった.寝返り回数は 23 回で, 夜間で同じ姿勢でいる時間の最長は 1.8 時間(110 分)だった .. おわりに 臨床で使える運動計測について,機器,使い方,解析 例を紹介してきた。様々な例を挙げたのは,「機器がな いから研究できない」とあきらめることはない,と強く 訴えたいためである。研究したいテーマはある,でも, 機器がなくて困っている,という人がいたら,ぜひ応援 したい。私自身も「機器がない」と困ったとき,「機器 がある」人に相談して,助けてもらってきた。機器によ る計測をあきらめず,運動学的研究に一歩踏み出してほ しい。 文 献 1)Mizuno K, Shiba Y, et al.: Validity and reliability of the kinematic analysis of trunk and pelvis movement. associated with walking using smartphones. J Phys Ther Sci. 2013; 25: 97‒100. 2)鈴木良和,佐藤春彦,他:デジタルビデオカメラを用いた 矢状面歩行解析におけるマーカー位置の計測誤差.理学療 法学.2008; 35(3): 89‒95. 3)Bouguet JY: Camera calibration toolbox for Matlab®. Available online at: http://www.vision.caltech.edu/ bouguetj/calib_doc/(2017 年 9 月 30 日引用) 4)Sato H, Kondo M, et al.: Trunk deformity evaluation based on 3D measurements of front body surface landmarks in people with severe physical disabilities. Dev Neurorehabil. 2017; 20(5): 280‒286. 5)Sato H, Hirai T: A preliminary study describing body position in daily life in children with severe cerebral palsy using a wearable device. Disabil Rehabil. 2011; 33(25-26): 2529‒2534. 6)Sato H, Iwasaki T, et al.: Monitoring of body position and motion in children with severe cerebral palsy for 24 hours. Disabil Rehabil. 2014; 36(14): 1156‒1160..
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春学期入学式 4月1日、2日 履修指導 4月3日、4日 春学期授業開始 4月6日 春学期定期試験・中間試験 7月17日~30日 春学期追試験 8月4日、5日
(申込締切)②助成部門 2017 年9月 30 日(土) ②学生インターン部門 2017 年7月 31
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授業内容 授業目的.. 春学期:2019年4月1日(月)8:50~4月3日(水)16:50
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