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安達智子 著『自分と社会からキャリアを考える──現代青年のキャリア形成と支援』(PDF:539KB)

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Academic year: 2021

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74 日本労働研究雑誌 安達 智子 著

『自分と社会からキャリアを

考える』

――現代青年のキャリア形成と支援

永作  稔 (十文字学園女子大学教育人文学部准教授) ●あだち・ともこ   大阪教育大学教育学部 准教授 ●晃洋書房 2019 年 7 月刊  A5・202 頁 本体 2600 円+税

読書ノート

本書の構成は,第1章から第7章までが筆者のこ れまでの研究成果のまとめとなっている。章題を一 部抜粋すると,「キャリア探索と自己効力(第 1 章)」 「理系離れとその背景(第 3 章)」「学生,フリータ ー,ニートの比較(第 5 章)」「性別,ジェンダーと 職業選択(第 6 章)」などであり,各テーマに焦点 を当てた研究成果を用いて,現代青年のキャリア選 択や最近の就職活動の文脈から解釈と考察が行われ ている。第8章にはキャリア選択の羅針盤となる最 新のキャリア理論が紹介されている。 さて,「自分と社会からキャリアを考える」とい うタイトルは,非常にシンプルである。しかし,本 書を読み込むほどに,これが味わい深く真に迫るも のだと感じられる。タイトルはもっとも短い要約で あると言われるが,まさにそのとおり!なのだ。こ こには「考える」というキーワードがあるが,この 行為の主体は,読み手であり,また支援を行う者, 支援を受ける者,さらには書き手自身でもあるのだ ろう。 本書「はしがき」には以下のようにある。 「本書は,データで見ると今の若者はこうなのだ という調査結果を一方的に提示するものではない。 キャリア支援に携わる方々に,若者は今こんな状況 にありこのように奮闘しているのだという,現在の 彼らのあり方について伝えたい。学生の皆さんに は,就職の一時点だけでなく生涯にわたってダイナ ミックに変化し続けるキャリア形成の面白さを知っ ていただきたい。そして,キャリアの領域を専門と する研究者の皆さんとは,若者の実情を踏まえて研 究結果をどのように読み取り,支援に活かすことが 出来るかを一緒に考えていきたい」 ここから読み取れるように,「考える」という行 為の主体は,まずキャリア支援の担い手であり,先 入観や巷に溢れる若者観から一旦離れて,筆者が積 み重ねてきた研究結果に基づいて若者が置かれた状 況や心情を理解すること,またそこから考えること を促している。例えば,第 4 章「キャリア意識―若 者にとって働くとは―」には,やりたいこと志向が 職業未決定に対してプラスにもマイナスにも作用し ていないこと,この志向は社会人も含む青年層に幅 広く支持されている価値観であり,社会の変化がこ のような志向性を形づくった可能性が高いこと,な どを紐解きながら「やりたいこと志向をもつから仕 事が決まらないのだ」というのは的外れな説教と言 えそうだ,と結ぶ。 さらに,若者にも自ずと「考える」主体となれる ように配慮されている。自分のキャリア形成につい て考えることは,暗中模索のようなもので不安がつ きまとうことに寄り添いながら,それでも「面白 さ」を見出すヒントが示されているのだ。とくに若 者にとっては7章までの客観的データに基づいて 8 章のキャリア理論について考えることが,大いに参 考になることだろう。ここで示される最新理論に共 通することは,古典的なキャリア理論から学べるキ

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No. 719/June 2020 75 ャリア形成の基礎「だけ」では立ち行かない「これ からの時代に対応するための智恵」である。自分を 知り,社会を知り,未来を展望して将来設計をする というキャリア形成の基本とともに,想定外の出来 事に対して開かれた姿勢でいる柔軟さがこれからの キャリア形成に必要なエッセンスであることを説い ている。 さらに,キャリアの領域を専門とする研究者にと って筆者のこれまでの研究成果がわかりやすく示さ れ,「考える」ための基礎資料がたっぷりと提示さ れる。その端くれとして評者が考えさせられたの は,筆者のキャリア研究者としての矜持ともいえる 姿勢である。それはデータに対して向き合う冷静で 客観的な眼差しに同居する,支援を受ける若者に対 するあたたかな眼差しであり,これらが随所に散り ばめられている。これが研究成果を実践に結びつけ るための「橋渡し」となって具現化され,支援の指 針となっているのだ。しかし,これを実際に行うた めには,筆者がこれまでに進めてきたしっかりとし た研究の礎が必要となることを忘れてはならないだ ろう。これにより,研究成果を実践に結びつけ,社 会に還元することができるのであり,このような研 究者としての在り方について多くを学ぶことができ る。   このように,本書はさまざまな読み手にとって, 主体的に読み進め「考える」ことができる内容とな っている。また,ここで紹介した実践者,若者,研 究者以外にも,キャリア教育に携わる全ての教職員 や,子育て世代,社会人にとっても手にとる価値の ある一冊となることだろう。

参照

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