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和田肇・脇田滋・矢野昌浩 編著 『労働者派遣と法』(PDF:357KB)

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Academic year: 2021

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90 No. 642/January 2014 本書は,労働者派遣をめぐる立法動向に加えて, 違法派遣のケースでの法律関係が問題となったパナ ソニックプラズマディスプレイ(パスコ)事件最高 裁判決やその後の裁判例の分析,外国の制度紹介な ど,労働者派遣をめぐるテーマを広く扱う研究書で ある。 第 1 章では,派遣法の制定・改正経緯が紹介され る。第 2 章では,労働者派遣法の理論課題として, たとえば職安法 44 条と派遣法との適用関係(第 1 節)や労働者派遣の法構造(第 2 節),労働組合法 における派遣先企業の使用者性(第 7 節)など,労 働者派遣をめぐる基本的な論点,および実務上の新 たな紛争が増大しつつある論点が検討される。第 3 章では裁判例が分析されており,上記の最高裁判決 を批判的に検討するとともに,同事件の前後で「黙 示の労働契約」をめぐって争われた下級審裁判例 にとどまらず(第 1 節),重要裁判例として,労働 者派遣をめぐる裁判例が広く検討されている(第 2 節)。続く第 4 章では,労働者派遣に対して比較的 に厳格な規制を有するドイツ,フランス,韓国の法 制度が紹介され,第 5 章で,労働者派遣の法規制に ついて総括的に検討されている。 本書は,研究者と弁護士の多人数によって執筆さ れたものであるが,執筆者間では,労働者派遣を不 安定雇用の象徴とみて,直接雇用こそが雇用の原則 であるとの価値観が共有されるとともに,こうした 直用主義には法制度上も根拠があるとする点で一致 している。この直用主義の立場は,立法論はもちろ ん解釈論にも投影され,派遣的就労は特別な要件の もとでのみ認められるべきで,そうでない場合には 和田肇・脇田滋・矢野昌浩 編著 本庄 淳志 (静岡大学人文社会科学部法学科准教授) ● わだ・はじめ   名古屋大学大学院法学研 究科教授。 ● わきた・しげる   龍谷大学法学部教授。 ● やの・まさひろ   龍谷大学法学部教授。 ●日本評論社 2013 年 6 月刊 A5・416 頁・5250 円 (税込)

『労働者派遣と法』

原則通り直接雇用に戻るべきとの考え方が随所にう かがえる。派遣に対するネガティブな評価を軸とし て,労働者派遣制度そのものに対する批判を多角的 に示す点に,本書の最大の特徴がある。 もっとも,こうした結論面での一貫性とは別に, そもそも法的になぜ労働者派遣を例外視しなければ ならないのかという根拠面,そして,仮に例外視す ることが妥当であるとして,その法的効果をどのよ うに考えるかという規範内容の面では,執筆者間で 相当にニュアンスが異なっている。たとえば本書の 中核をなす直用主義の法的根拠づけについてみて も,職安法 44 条や労基法 6 条に加えて,民法 623 条や 625 条,さらには憲法の人権条項にまで根拠を 求める立場があるかと思えば(第 2 章第 1 節),そ のすぐ後では,「憲法上の要請とまではいえないに しても,戦後労働法の出発点をなした基本原則であ り……その後の諸立法の解釈に際しても十分に尊 重」すべきと,相当にトーンダウンして,いわば解 釈準則であるかのようなマイルドな立場も示されて いる(第 2 節)。このような立場の違いが随所にみ られる結果,本書は,「派遣」を共通テーマとする 論文,判例評釈の集積として多様な論点を扱う意欲 的な研究書という面がある一方で,テーマの細分化 もあってか,それぞれが散発的な問題提起,判例評 釈,外国法紹介の域を出ないものとなっており,評 価を難しくしている(第 5 章も,労働者派遣制度に 対する執筆者個人の総括であって本書の総括という

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日本労働研究雑誌 91 BOOK REVIEWS 位置づけではない)。たとえば,裁判例分析(第 3 章),外国法研究(第 4 章)なども,それぞれの立 場を総括したうえで現行制度の特徴や問題点を一貫 して論じられていたならば,本書の研究書としての 価値は飛躍的に高まっていたように思われる。ま た,派遣労働者としての保護をめざす論考も一部で みられるものの(第 2 章第 2 節など),本書の大部 分は,直用重視のドグマにとらわれ,かえって,現 実に広がる間接雇用としての保護を志向しない(軽 視する)結果となっていないかとの疑問もある。 とはいえ,本書に収録された論考の多くは,労働 者派遣に対してネガティブな立場で一貫して論陣を 張る代表的な執筆者によるものであり,労働者派遣 制度がめまぐるしく変遷しているなかで,現時点で それぞれの考え方が 1 冊に集約されていること自体 に高い価値がある。労働者派遣をめぐる歴史的な流 れをふまえて,現在の法制度や裁判例を批判的に分 析する本書は,今後の労働者派遣制度のあるべき姿 を検討するうえでも,立場の違いを超えて必読のも のといえよう。

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