プラズマ中の有限振幅電磁波の第二
調波プラズマ共振
伊藤洋 林健康 秋山郁男 長島進 (昭和50年8月27日受理)Second Harmonic Plasma Resonance of Finite
Amplitude Electromagnetic Waves in a Plasma
HiroshiITO TakeyasuHAYASHI IkuoAKIYAMA
SusumuNAGASHIMA
Abstract When two electromagnetic waves of different frequencies, fi and f2, are incident upon a semi・infinite plasma of the plasma frequency fp, the second order fluctuations of charge density of frequencies,2f,,2f,, fi十f2 and l fi 一 f2 i’ are excited in the plasma. The difference frequency wave is of particular interest,since plasma resonance occurs in the plasma. We previously reported that the plasma resonance at the difference frequency takes place, if lfi−f21=fp,where the plasma is lossless. At the beginning of this report we theoretically study the resonance in a dissipative, nonmagnetized, cold plasma. In this connection, we neglect thermal effects throughout, since we limited ourselves to the study of true dynamic nonlinearities. As the result, we conclude that the resonance frequency is affected by the collision frequency y of the plasma, and that the resonance frequency increases with the increase of the collision frequency. We also come to conclusion that the amplitude of the difference wave becomes finite but smal1, when v is large. We experimentally observe the plasma resonance of the difference wave in the plasma waveguide, too. The experimental results are in good agreement with the theoretically predicted values. 振時に差周波成分が無限に大きくなるのはプラズマの1.はじめに
プラズマ振動周波数fpの無損失プラズマ中に異な る周波数力およびf2をもつ二種類の電磁波が入射する と,プラズマ中では2 f,,2f,, f、+万およびげ一f・1 などの周波数をもつ電子密度変動が発生することはす でに報告した1)”6}。これはプラズマの非線形性による ものである。このような二次波の中でげ一f,1なる差 周波成分についてみると,げ1−f,1=fpなる周波数関 係の存在するときにこの成分波は共振現象を現わし, このときその振幅は無限に大きくなる。このように共 衝突を考慮しないためである。そこでここでは電子の 衝突を考慮して理論的に解析した。その結果共振時に 差周波成分の振幅は有限値をとること,および共振周 波数は衝突周波数vの影響を受け,レが大きくなるにつ れてfpの高い方に共振がずれていくことなどが明らか になった。このような共振現象は二次波の中では差周 波成分にのみ見られるもので,他の成分波にはこのよ うなことは起こらない。 ところで近年宇宙通信が重要な通信システムの一環 を成している。通常宇宙通信では使用周波数帯域は電離層のプラズマ振動数よりずっと高く,そのため電離 層が電波伝搬特性に及ぼす影響はほとんど無視できる とされているが,隣接周波数の間に共振条件を満足す る関係が存在すると電離層が電波伝搬特性に影響を与 える可能性も考えられる。・一一一・一方このようにして発生す る共振現象を観測すると,プラズマの電子密度および 衝突周波数を決定することが可能となる。すなわち共 振曲線を観測することによってプラズマ診断が可能で ある。従来このような提案はなされていないようであ る。 本論文では,まず上述の共振現象を漸近的手法を用 いて解析し,ついでプラズマ導波管内で実験的に確認 した結果について述べる。その結果,理論と実験の間 には良好な一致がみられた。漸近的方法は強い非線形 性を記述するには充分な方法ではないとされている が,ここで扱うような弱い非線形効果を記述するには 適当な手法であることが示される。 2. 理 論 図一1に示すように,周波数力,f2の二つの平面電磁 波が半無限均一プラズマ中に入射角θt1,θi2でそれぞれ 入射するものとする。ここでは簡単のためイオンの現 象への寄与は無視し,コールドプラズマ近似を適用し て取り扱う。 さて一様な電子密度N。をもつプラズマに電磁波が A 入射することによって電子密度が1V(r, t)だけ変位す るものと仮定すると,全電子密度Nは, 〈 2V=No+N(r,の となるo一方連続の方程式は, ;1−一▽・(・の となる。ここにρ,∂は電荷密度で, A ρ=ρo−FZ)=−e(No十N) zi (1) (2) (3) ・’?c ∵.:・ 図一1座 標 系 なる関係がある。上式でVは電子流速,eは電子電荷で ある。また一方電子に関する運動量輸送方程式はつぎ のように表わされる。 ∂v e e ∂t=rfuE−(v・▽)v一死(v×B)−yV (4) ここにmは電子の静止質量 yは衝突周波数である。 ただし,ここではyは電磁波の入射によって影響を受 けないものと仮定する。この仮定およびコールドプラ ズマ近似などの妥当性については,後述するように実 験によって確認される必要がある。 ところで式(4)右辺の第2,3項は通常の小振幅信号 近似では線形化操作によって無視されるが,ここでは これら高次の量が重要である。式(2)の両辺を時間tで 微分し,かつ式(4)を用いるとつぎの式を得る。 震+・91r+a)2piZ)一 −po▽・s−▽・{(£+・)tZv}(・) ここに,
s一万B×v−・(v・▽)v (6)
ただし上式誘導中ガウスの法則,▽・E一畜 (・)
をも用いている。式(5)でω忽はプラズマ振動角周波数 で,tO2p = Nd。e2/mε。なる関係がある。ε。は真空の誘電率 である。ところで式(5)右辺は線形化操作を行うとすべ て無視できて,誓+・誓+嶋∂・…一・ (・)
となる。また式(5)より二次量について, ∂㌶二)+・竪+唖②一一・P・▽・s・…一▽・{(£+・) 1・P(1’vl1’p (9)
を得る。ただしs(2)は, S…_θみω×V・1L(V・…▽)V・1・ ⑩ m である。上の各式で上添字(1),(2)はそれぞれ一次量, 二次量を表わしている。以下同様に,より高次の量に 対する方程式を求めることができるが,ここでは二次 量までに着目して検討するに止める。 ところで式(7)より,一次量に関して, bC,) ▽・E(1)=−m ε0 を得るが,プラズマ中でEω,Bω,むωなどの各一次 量としては小振幅信号近似によって得られる界を仮定 しており,しかも入射波が平面波であるので,▽・Eω =0なる関係が満足される(付録参照)。それゆえ∂ω =0としてよいことになる7}。よって式:9)は簡略化さ山梨大学工学部研究報告 第26号 れてつぎのようになる。 ∂・b(2) ∂b{2) ∂t・+・百「+ω㍉ρ‘2}一一ρ・▽・Sl2) ⑪ ところで,一般に入射周波数ωと衝突周波数yとの 間にω》レなる関係があるときには電磁界の一次量はy の影響をほとんど受けない。そこで計算式の複雑化を さけるために,一次量の中のyを無視するとプラズマ 中ではつぎの式が与えられる。TMモードを例にとる と, Eエ(1)=−ZpsinθtTejωee−」’kp{eosetx+sinet・y) E。J (’}−Z。c・・θ、τθ」・‘e−jk・1・・se・X+・’nettY・ ぴω=Teゴ吻一ゴ㌔(…a・X+・i・e、’Y) 叫(11=一ノω脱Z・・i・θ・T・プω‘・一ノ㌔(c°sθ・X+s’”“・“y) Vu・1・一ノ㌫Z。c・・θ、T・μ・一・…c・…X+・i…Yl となる。ただし上式中, T−・
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であり,H。は入射波の振幅, Cは光速であ る。また透過角0‘と入射角Oiとの間にはス ネルの法則, k,sinθτ=kpsinθt (り が存在する。 さて式⑫の関係を角周波数ω1,ω2の二つ の入射波に対してそれぞれ適用し,それら を式⑪に代入して計算するとつぎの式を得 るo誓+・誓醐2・一曝{A…2ψ1
+B(+)COS(ψ1+ψ2)+・召(_)COS(ψ1一ψ2)+Cc・・2ψ・} (・カ
ただしここに, 弓藷・〃㍉IT21・ Bl・・一ト…(・‘・一…)・T・T・{k・.・⊥・ ×kpllep2cos(Ot1一θt2)十k2P2} B・−1・・=一チ…(θ・1一θ・2)T・T・{le・,・ −2k。1k。・c・s(0、一θ,2)+k2。、}, C一ぞ巴〃・,,T22 ω2 また, ψ1=tOit−kplcosθtiX−kpisinθt1夕, ψ2=ω2Z一ゐP2COSθz2κ一fep2sinθt2Y (12。) (12b) (12。) (12d) (12。) ⑬ ⑭ ⑮ 硲 豆 品 奄 く軋 30 である。ここで下添字1,2はそれぞれωi,ω2に対応 して付けられている。 式⑰の解を求めるとP{2)は2ω1,2ω2,ω1+ω2および ICOi一ω21なる角周波数をもつ解が得られるが,それ らの中でItO,一ω21なる周波数成分に着目し,その成分 をρ②(.)と表示するとつぎのようになる。 P… ・一)一誌B・一・〔 ω2グ(ω一ω2)2{ω2。一(ω一ω,)2}2+y2(ω一ω,)・ ・…(ψ・一ψ・)+{ω・P−(=隠謬牢。一。、)・si・(ψ1一ψ・)〕 ⑱
この式にもとついて,一例としてfpを変数に選んで数 値計算した結果を図一2に示す。同図のように1ω、一ω2| の角周波数をもつ電荷密度変動は,yの小さいときに は1ω一co2 [=tO、pなる関係の満足されるときに共振状 態となりその振幅は著しく大きくなるが,レが増大す るにつれて,それより大きfs fpに対して共振を示し, その振幅は低減する。なお同図には後に述べる実験結 果も併記してある。図一3には入射角θi2をパラメータ とした数値計算結果を示す。入射角に関係なく共振現 80 100 /, 120 140 160 fl=2450MHz f2=1740MHz ∫1−f2=710MHz 20−L_」______
0 50◎ 1000 fp(MI−lz) (a) 20 10 100 120 140 160 \レニOMHz ll lC]、・・ fi=2450MHz f2 =・1640MHz fi−∫2=810MHz 0 500 1000 fp(MHz) (b) 図一2 差周波成分波のプラズマ共振の理論値(実線)と実験値(至)fi=2450MHz f2=1650MHz ∫ρ=800MHz レ=100MHz 20D O° fi=2450MHz ∫2=1650MHz ∫ρ=800MHz レ=100MHz 一80 図一3(a) 一40 0 40 . 80 ei2(deg.) TM波の場合の電荷密度変動の入射角依存性 象がみられる。
3.実
験 以上のように二次波の共振現象が理論的に導かれ た。ここでは上の理論的取り扱いの妥当性を論ずるた めに行った実験について述べる。実験のブロックダイ アグラムを図一4に示す。同図のようにWRJ−2方形 プラズマ導波管を試作し,この中にアルゴンプラズマ を背圧5×10−2mmHgで生成してある。一方このプラ ズマ導波管中にfi=2,450MHz,約5W, f2=1,500∼ 2,000MHz,約3Wの電磁波を20dBアイソレータを介し て同時に入射させる。プラズマ導波管の他端には10V の直流バイアスを印加した球形プローブを挿入して密 度変動を観測することができるようになっている。プ ローブ出力は500∼1,000MHzの帯域通過型フィルタ を通してスペクトラムアナライザに接続されている。 この帯域フィルタは帯域外損失が25dB以上,通過域損 失は5dB以下であり, fi, f2の直接波(一次波)を遮 断し,10dBバッファと同様に直接波がスペクトラム アナライザに入射してマルチプルレスポンスを生じな D.C.20V 8A 一80 −40 0 40 80 θ2(deg.) 図一3(b)TE波の場合の電荷密度変動の入射角依存性 いようになっている。ところで理論計算は半無限プラ ズマであり,実験はプラズマ導波管を用いている。そ れゆえ両者は完全に一致したモデルとは言えないが, ここでは一次波としてはTE、o方形モードを用いている ので,上述の共振現象を確認するための実験としては 両者の間に本質的な相違はない。 さてプラズマ導波管内のプラズマ振動数対放電電流 特性を図一5に示す。放電電流100mA程度で約1,000 MHzのプラズマ振動が得られる。この測定はダブルプ ローブ法によって行われたものである。ただし管内プ ラズマ電子密度分布を測定すると図一6のように正弦状 分布になっているので,図一5はこれをもとにして平均 化して表わしている。なお管軸方向の分布を測定する とほとんど一定である。 このようにして求めたfpを用いて,差周波If,−f,1 =710,810MHzの振動振幅を測定した結果が図一2(a), (b)であり,同図のように実測結果は理論結果ときわめ てよく一致していることがおかる。図一2よりこの場合 衝突周波数は約100MHzであり,別の方法で行った実 A D.C.3KV max. ×VACUUM
PUMP
ARGON GASDC POWERSUPPLY
測結果ともよく一致している8)。 4. おわりに 上述のように,プラズマ中に入射した電磁波の混合 現象の中で特に差周波成分について着目し,その共振 現象について述べた。本論文の理論的取り扱いは漸近 的方法を用い,コールドプラズマ近似を適用し,かつ 衝突周波数の非線形性を無視するなどの種々の近似が 用いられているにもかかわらず,上述したごとく実験 事実は理論結果の妥当性を充分に証明しているように 思われる。特に衝突周波数の非線形性についてはルク センブルグ効果の理論的取り扱いに関連して,多くの 翁 巴 ミ 1.5 1.0 ’・5 : 旨
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o 解析が行われており,vの非線形性が重要な要 素として示摘されている91。このように理論と 実験の間の良好な一致は先にも述べたように非 線形性の弱い範囲に限定されているためである と思われる。これに関連して,ここでの理論の 適用限界を実験的に確認する必要があり,筆者 らはそのための研究を進めている。 ともあれ,宇宙通信のようにマイクロ波電力 密度が充分小さい場合を想定すれば,電離層中 の電磁界の混合現象を解析するには本論文の程 度の取り扱いで充分であろうと思われる。それ ゆえ隣接した周波数の電磁波が電離層中でそう 遇するような場合には, 得るわけで, ご1ξ。 上述の共振現象の発生があり これが通信に及ぼす影響を研究すること は,宇宙通信回線・需要の著しい増加が予想される現 在,有意義であるように思われる。 筆者らは現在磁化プラズマ中での同様の共振現象に ついても研究を進めており,その結果については後日 報告したい。 おわりに本研究について討論された山梨大学伊藤千 秋,中川恭彦両助教授,中沢章助手に深謝する。なお 本研究の一部は文部省科学研究費による。 参 考 文 献 1)伊藤,林,金原,田副:プラズマ中に入射した二つの大 電力電磁波の混合現象,信学会全大,729,昭49−07 2)伊藤林:プラズマ中の二つの電磁波の非線形伝搬信 学誌,Vo1.58B, No.3,1975, pp119∼120 3)伊藤,児玉,林:プラズマスラブ中の電子密度謡動によ る電磁波のインコヒー一 vン「伝搬,信学誌,Vol. 58B, No.3,1975, pp105∼112 4) 伊藤:プラズv導波管中の電磁波の非線形伝搬,信学誌, Vo1.56B, No.2,1973, pp.84∼85 5)伊藤林:プラズマ中の有限振幅電磁波のミキシング とプラズマ共振,信学会アンテナ・伝搬研es AP 74−78 −89(1975−02),1975年2月 6)伊藤,林:プラズv中の二つの電磁波の非線形相互作用, α8 0.6 0.4 0.2 0 50 100 150 1d(mA) 図一5放電電流とプラズマ振動周波数の関係ノ
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oId=50mA
Id=100mA Id=150mA α=・109mm 0 20 40 60 80 100 eJ(頑) 図一6 プラズマ導波管内の電子密度分布の相対値 (実線は正弦関数の曲線を示す) 山梨大学工学部研究報告,Vo1.25, pp.23∼31,1974年 12月 7) V.N. Tsytovich:Nonlinear Effects in Plasma. p.28,Plenum Press,1970 8) 中沢他:私信. 9) V.L. Ginzburg:Propagation of Electro magnetic Waves in Plasma, p.733, Gordon and Breach Science Publishers, Inc.,1961 付録 式⑫をつぎの式, P〔1) 7・E〔1)= ε0 に代入する。すなわち,7.E…_醒辺+砲旦
∂ツ ∂x −{羅・…t・i・のTrZ己。C…‘・1・・t ・T・…t}鵬}・・ne・Y} =0 となる。よって, b(1)=0 となる。 まったく同様にしてTEモードに対してもba)=0であることを証明することができる。また方形導波管内 でもTEmnモードに対して同様である。しかし,プラ ズマ電子密度が不均一であったり,異方性となるよう な場合にはb(1)キ0となり, ものになる。 ここでの取り扱いは複雑な