特発性間質性肺炎に併発した粘表皮癌の一例
巨摩共立病院内科 楠真 野口武雄 深沢真吾 山内節郎 甲府共立病院 病理科 畑日出夫 はじめに 特発性間質性肺炎(以下IIPと略す)は 悪性腫瘍を高い頻度で併発することが知られ ており,それがIIPの予後を悪化させる一 因と考えられている.今回我々はIIPに粘表皮癌(muco−
epidermoid carcinoma
)を併発した症例を経験したので若干の考察 を加えて報告する. 症例 患者:69歳,男性,農業. 主訴:咳漱,呼吸困難. 既往歴:高血圧(60歳),肋骨骨折(6 8歳) 家族歴:特記すべきことなし. 現病歴:1985年9月初旬より咳漱がみ られ近医を受診し気管支炎と診断され治療 をうけたが軽快せず,徐々に呼吸困難が増 悪するため同年10月14日に当院を受診 し同日入院となった. 入院時現症:左下肺にベルクロラ音,両側にwheezeを聴取した.リンパ節腫脹
浮腫は認めなかった.検査所見:Table1.に示すごとく白
血球増多,血沈尤進,CRP高値などの炎 症所見がみられた.また抗核抗体陽性,膠 質反応充進,軽度の肝機能障害を認めた.血液ガス分析ではPo2およびPco2の低
下がみられた. 呼吸機能検査では%VC55%と拘束性障 害を示した. 入院時の胸部X線像では両側下肺野を中 心としたびまん性小粒状影と網状影および 右肺門部の腫瘤影をみとめた(Fig.1). 断層撮影(Fig.2)では右肺門部に比較 的境界明瞭な腫瘤を認める.CTでは右中間 幹の周囲に発育する径約5cmの腫瘤がみら れた.リンパ節腫大は認めない(Fig.3 )気管支鏡では右中間幹に全周性の狭窄がみ られ,またpolyp状の隆起性病変をみと めた.このpolypおよび中間幹の壁より 生検をおこなった(Fig4).組織像は粘 液産生のみられる腺腔構造の形成が認められ,mucoepidermoid carci
nomaであった(Fig.5).
臨床経過:IIPに対して入院第3日より,prednisolone60mgの経口投
与を開始した.腫瘍については入院第25日よりCDDPとVDSによる化学療法を開始
した.その他抗生剤,気管支拡張剤等の投与, 酸素吸入も行なった.化学療法後の胸部X線 では腫瘍の縮小はみられなかった. 種々の治療を行なうも患者は入院第31日 に呼吸不全のため死亡した. 考察 IIPは肺癌を併発する頻度が高く,併発 する肺癌が下葉に多いこと,IIPを伴わな い場合に比して重複癌を生ずる頻度が高いこ と等より発癌母地と考えられている.過去の 報告をみるとIIPに併発した肺癌は末梢原 発が多く組織型では腺癌が最も多いとされて いる.わが国では岡野らの報告によるとII Pが肺の上下葉を問わず,いずれの組織型の 肺癌をも併発しうるとされている。したがっ て今回の症例もIIPを母地として発生した一95一
Table.1 入院時検査所見 ・
WBC 14500/μ1 赤沈 37㎜/hr
RBC 505×104/μ1 CRP 6(十)
Hb 15.5g/dl
Ht 46.0%
Plt 38×104/μ1
総タンパク 7.2g/dl BUN
アルブミン 2.9g/dl Crtn
TTT ll.36U Na
ZTT 24.89U K
総ビリルビン 1.37㎎/dl ClALP 19.6KA Ca
ChE O.23△PH P
GOT 411U/I
GPT 201U/l RA
LDH 424Wrbu/1 抗核抗体
γ一GTP 2251U/1 血清補体価
LAP 51U CEA
血液ガス分析 pH 7.50 Pco2 28mmHg Po2 55回皿HgHCO3 22mmo1/l
BE −1mmo1/1
02SAT 92%
F i g. 1
が 弦 1 2t 6㎎/d 1 1. 07田g/d1144mEq/1
4.8mEq/1
105mEq/1
8.4㎎/dI 2.5㎎/d1 (一) (十)37.5U/m1
1.16ng/m1
F i g. 2
F i g. 3
F i g− 4
一96一ことが否定できないと考えられる. まとめ 今回我々は比較的稀な,IIPに併発し た粘表皮癌の一例を報告した. 文献; 1)岡野 弘,谷本普一,中田紘一郎ほか: 特発性間質性肺炎の肺癌合併t 日胸,