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ヒト肝腫瘍由来細胞株HepaRGを用いた薬剤性肝障害リスク予測に関する研究

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博士学位論文

ヒト肝腫瘍由来細胞株 HepaRG を用いた

薬剤性肝障害リスク予測に関する研究

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博士学位論文

ヒト肝腫瘍由来細胞株 HepaRG を用いた

薬剤性肝障害リスク予測に関する研究

平成 29 年 11 月 9 日

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i 目次 略語及び記号一覧 ... 1 序論 ... 3 第1 章 HepaRG 細胞を用いて DILI リスクを予測するためのマルチパラメトリックアッセイの検討 ... 5 第1 節 緒言 ... 5 第2 節 実験方法 ... 5 第3 節 結果 ... 9 第4 節 考察 ... 18 第5 節 小括 ... 21 第2 章 HepaRG 細胞を用いて DILI リスクの程度を予測するためのマルチパラメトリックアッセイ 改良法の検討 ... 22 第1 節 緒言 ... 22 第2 節 実験方法 ... 23 第3 節 結果 ... 28 第4 節 考察 ... 37 第5 節 小括 ... 38 第3 章 HepaRG 細胞を用いた薬剤性リン脂質症リスク予測評価系の検討 ... 40 第1 節 緒言 ... 40 第2 節 実験方法 ... 41 第3 節 結果 ... 44 第4 節 考察 ... 52 第5 節 小括 ... 54 総括及び結論 ... 55 引用文献 ... 57 謝辞

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1 略語及び記号一覧

略語一覧

21CFR201.56 Code of Federal Regulation (CFR) Title 21 (Food and Drugs) Part 201 AR Adverse reactions

BW Boxed warning CYP Cytochrome P450 DILI Drug-induced liver injury DMSO Dimethyl sulfoxide

FDA Food and Drug Administration GSH Glutathione

LDH Lactate dehydrogenase

LTKB Liver Toxicity Knowledge Base MPC Minimum positive concentration NSAID Nonsteroidal anti-inflammatory drug

PBPK model Physiologically based pharmacokinetic model PLD Phospholipidosis

RFI Relative fluorescence intensity

ROC curve Receiver operating characteristic curve ROC-AUC Area under the ROC curve

WDN Withdrawn

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2 記号一覧

ClogP n-オクタノール/水の分配係数の対数の計算値

Cmax 最高血漿中濃度

EC200 Effective concentration giving a response equal to 200% of controls LC50 Lethal concentration that kills 50% of the cells

pKa 酸解離定数

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3 序論

薬剤性肝障害(drug-induced liver injury:DILI)は、医薬品の研究開発中止や市場撤退(withdrawn: WDN)の主要な原因の 1 つとなっている1)。これまでに600 以上の医薬品で DILI の発現が報告され ている2)。したがって、医薬品の研究開発において、DILI は安全性上の重要な懸念事項である。創薬 早期にヒトでのDILI リスクを予測することは、研究開発の成功確率を高めるために重要である。しか しながら、DILI の発現に関して、実験動物を用いた定型的な毒性試験と臨床試験の結果が一致しない こと 3)及びヒトでの発現率が低いこと 4)から、創薬早期にヒトでのリスクを予測することは難しい。 全世界でのDILI の年間発現数は、10 万人あたり 13.9 から 24.0 人と見積もられている4) 化合物のDILI リスクを予測するために、肝臓由来の様々な材料を用いた in vitro 評価系が開発され てきた(例:肝スライス、肝ミクロソーム、不死化細胞株、初代培養肝細胞)5)。現在、初代培養肝 細胞及び不死化細胞株はDILI の in vitro 評価系において最も広く使用されている5)。ヒト初代培養肝 細胞は、cytochrome P450(CYP)等の肝機能を保持していることから、薬物代謝研究や毒性研究にお いて最も広く使用されてきた6,7)。しかし、ヒト初代培養肝細胞は、寿命が限られており、肝機能のド ナー差が大きいことが課題である8)。一方、ヒト肝腫瘍由来細胞株HepG2 も DILI リスク予測評価系 において広く使用されてきた。しかし、HepG2 細胞は多くの肝機能、特に薬物代謝に関与する主要な CYP の活性が低いことが課題である 8)。したがって、HepG2 細胞では代謝物が発現に関与する DILI

を適切に評価することは難しいと考えられる。医薬品の研究開発において、ヒトでのDILI リスクを高 い精度で予測するためには、肝機能を保持した細胞を使用することが適切であると考えられる。 HepaRG は肝細胞癌を患っている女性から樹立した肝細胞株である9)HepaRG 細胞は肝細胞と胆管 上皮細胞に分化することが可能である9,10)。また、HepaRG 細胞は HepG2 細胞等の他の肝細胞株と異 なり、CYP、核内受容体、トランスポーター及び第 II 相酵素等の多くの肝機能を保持している 11,12) さらに、HepaRG 細胞は単一の患者から樹立された細胞株のため肝機能にドナー差がなく、培養時に 機能の発現が安定していることから、ヒト初代培養肝細胞と比較して再現性が高い結果を示す13)。し たがって、薬物代謝研究や毒性研究において、HepaRG 細胞はヒト初代培養肝細胞や HepG2 細胞等の 代替として期待されている。しかし、HepaRG 細胞において DILI リスクの予測能力を評価した研究例 は報告されていない。 DILI リスクはヒト初代培養肝細胞及び HepG2 細胞等を用いて様々な方法で評価されてきた。例え ば、プレートリーダー(吸光・発光・蛍光)による細胞または培養上清の解析14)、細胞内の蛍光シグ ナルを定量化するハイコンテント解析 15-19)等により DILI リスクが評価されてきた。最近、ヒト初代

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4 培養肝細胞及びHepG2 細胞を用いた DILI リスク予測評価系において、単一のパラメータではなく、 DILI の発現に関連する複数のパラメータを測定することにより予測能力の向上が図られている14-19) 本研究では、HepaRG 細胞を用いた DILI リスク予測評価系を構築し、その有用性について検討した。 各章のDILI リスク予測評価系の構築には、DILI リスクが報告されている市販の陽性化合物及び陰性 化合物を用いた。まず、HepaRG 細胞に化合物を処理し、DILI の発現に関連する主要な 6 種類のパラ メータを測定した。さらに、HepaRG 細胞を用いたマルチパラメトリックアッセイにおいて、DILI リ スク予測の感度及び特異度を算出し、DILI リスク予測評価系としての有用性について検討した(第 1 章)。次いで、HepaRG 細胞が DILI リスク予測に有用であることが確認できたことから、他の化合物 セットを細胞に処理し、第1 章で使用した 6 種類のパラメータの中から改良法として 5 種類を選択し て測定した。また、各化合物のHepaRG 細胞での毒性の程度をスコア化し、ヒトでの DILI リスクの程 度を定量的に予測する方法の開発を試みた(第 2 章)。さらに、リン脂質症(phospholipidosis:PLD) 陽性化合物及び陰性化合物を用いて、肝臓等の細胞内にリン脂質が蓄積する病態であるPLD を予測す る評価系をHepaRG 細胞で構築し、その有用性について検討した(第 3 章)。

以上、HepaRG 細胞を用いて、(1)DILI リスク予測評価系、(2)DILI リスクの程度の定量的な予測 評価系及び(3)PLD リスク予測評価系について構築し、その有用性について 3 章にわたり論述する。

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5

1 章 HepaRG 細胞を用いて DILI リスクを予測するためのマルチパラメトリックアッセイの検討

第1 節 緒言

HepaRG 細胞を用いて化合物の DILI リスクを評価した研究例がいくつか報告されている20-24)。しか

し、それらの研究はHepaRG 細胞において特定の化合物の毒性を評価しており、多くの化合物を使用

してDILI リスク予測能力について評価していない。そのため、HepaRG 細胞の DILI リスク予測の感 度及び特異度は不明である25) 細胞を用いたDILI リスク予測評価系は従来から実施されてきたが、その予測能力は低かった。その 理由として、従来のin vitro 評価系では、単一のエンドポイントや細胞死のみを測定しているからであ る15,26) DILI の発現には、ミトコンドリア毒性、代謝活性化、酸化ストレス、脂肪蓄積、リン脂質蓄積、胆 汁うっ滞及びアポトーシス等の多くのメカニズムが関与している27)。したがって、DILI リスクを予測 するためのin vitro 評価系では、単一のパラメータではなく、DILI の発現に関連する様々なパラメー タを測定することにより、予測能力の向上が期待できる。最近、DILI リスクの予測能力を向上させる ために、ヒト初代培養肝細胞、HepG2 細胞及びミトコンドリア等を用いて DILI の発現に関連する複 数のパラメータを測定するin vitro 評価系が開発されてきた14-19,28) 第1 章では、HepaRG 細胞を用いてヒトでの DILI リスクを予測する評価系を構築し、その有用性に ついて検討した。17 個の DILI 陽性化合物及び 15 個の DILI 陰性化合物を用いて、HepaRG 細胞の DILI リスク予測能力について評価した。また、HepaRG 細胞に対する各化合物の毒性は、DILI の発現に関

連する6 種類のパラメータを測定して評価した。

第2 節 実験方法

1. 細胞、培養液、培養プレート

HepaRG 細胞は、分化済みで凍結保存された市販品を Life Technologies Japan(Tokyo、Japan)から 購入した。William’s E Medium、HepaRG Thaw, Plate and General Purpose Medium Supplement、HepaRG Tox Medium Supplement、GlutaMAX Supplement 及び Collagen I-coated 48-well plates は Life Technologies Japan から購入した。

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6 2. 化合物

Acetaminophen、amiodarone hydrochloride、ascorbic acid、benzbromarone、flutamide、furosemide、 miconazole nitrate、olanzapine、simvastatin 及び tamoxifen は Sigma-Aldrich(St.Louis、MO、USA)から 購入した。Acetylsalicylic acid、caffeine、chlorpromazine hydrochloride、clozapine、cyclosporin A、 dexamethasone、diclofenac sodium、donepezil hydrochloride、famotidine、ibuprofen、isoniazid、ketoconazole、 losartan potassium、rosiglitazone、sodium valproate、tetracycline hydrochloride、theophylline、ticlopidine hydrochloride、troglitazone、valsartan 及び warfarin sodium は Wako Pure Chemical Industries(Osaka、Japan) から購入した。Bromfenac sodium は AvaChem Scientific(San Antonio、TX、USA)から購入した。

3. 化合物の分類 既報19)に従って、化合物をDILI 陽性及び DILI 陰性に分類した。以下の条件の少なくとも 1 つを満 たした場合、化合物をDILI 陽性に分類した。以下の条件をいずれも満たさない場合、化合物を DILI 陰性に分類した。 ・主にDILI が原因で WDN となった。 ・DILI が原因でアメリカ合衆国において市販されていない。

・Food and Drug Administration(FDA)により DILI に関して黒枠警告(boxed warning:BW)と判断 されている。

・添付文書にDILI に関して警告が記載されている。 ・DILI の発現がよく知られている。

・Hy’s Law の基準を満たした重度の DILI に関して、10 例以上の独立した症例が報告されている。 以上の基準に従って、DILI 陽性として 17 化合物(acetaminophen、amiodarone hydrochloride、 benzbromarone、bromfenac sodium、chlorpromazine hydrochloride、clozapine、cyclosporin A、diclofenac sodium 、 flutamide 、 furosemide 、 isoniazid 、 ketoconazole 、 sodium valproate 、 tamoxifen 、 tetracycline hydrochloride、ticlopidine hydrochloride、troglitazone)、DILI 陰性として 15 化合物(acetylsalicylic acid、 ascorbic acid、caffeine、dexamethasone、donepezil hydrochloride、famotidine、ibuprofen、losartan potassium、 miconazole nitrate、olanzapine、rosiglitazone、simvastatin、theophylline、valsartan、warfarin sodium)を 選択した。

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7 4. 細胞培養

分化済みのHepaRG 細胞の培養は、購入元の説明書に従って以下の通りに実施した。HepaRG 細胞 を解凍し、HepaRG Thaw, Plate and General Purpose Medium Supplement 及び GlutaMAX Supplement を添 加したWilliam’s E Medium で細胞数を調整した。48-well collagen I-coated plate に 1 ウェルあたり約 225,000 細胞を播種した。24 時間後、プレートのウェル中の培地を吸引除去し、HepaRG Tox Medium Supplement 及び GlutaMAX Supplement を添加した William’s E Medium に交換した。培地交換は 3 日ご とに行った。HepaRG 細胞の培養は 37 °C、5%CO2、加湿した条件下においてインキュベーター内で行 った。

5. 化合物処理

化合物の処理濃度は、ヒトの臨床での最高血漿中濃度(Cmax)の1.6、6.3、25 及び 100 倍に設定し た(Table 1)。Dimethyl sulfoxide(DMSO、Wako Pure Chemical Industries)に化合物を溶解させた後、 細胞培養液で最終濃度に希釈した。細胞培養液中のDMSO の最終濃度は 0.5%(vol/vol)に設定した。 DMSO に溶解しない化合物(bromfenac sodium、caffeine、sodium valproate、tetracycline hydrochloride、 theophylline)では、細胞培養液に溶解した後、DMSO を 0.5%(vol/vol)になるように添加した。Bromfenac sodium 及び tetracycline hydrochloride では、Cmaxの100 倍濃度で化合物の析出が認められたことから、

溶解する最大濃度を最高濃度に設定した。HepaRG 細胞の播種から 7 日後に、細胞に各化合物を添加

し、24 時間培養した。各濃度について、2 ウェルの細胞に処理した。

6. マルチパラメトリックアッセイ

化合物処理後、HepaRG 細胞の生存率、グルタチオン(Glutathione:GSH)量、caspase 3/7 活性、脂 肪蓄積量、培養上清中への乳酸脱水素酵素(lactate dehydrogenase:LDH)の漏出量及びアルブミン分 泌量を測定した。細胞生存率はWST-1 試薬(Roche Diagnostic GmbH、Mannheim、Germany)、GSH 量 は GSH-Glo Glutathione Assay Kit(Promega Corporation、Madison、WI、USA)、caspase 3/7 活性は Caspase-Glo 3/7 Assay Kit(Promega Corporation)、脂肪蓄積量は Steatosis Colorimetric Assay Kit(Cayman Chemical Company、Ann Arbor、MI、USA)、LDH 漏出量は LDH Cytotoxicity Assay Kit(Cayman Chemical Company)、アルブミン分泌量は Albuwell Kit(Exocell、Philadelphia、PA、USA)を使用して測定した。 いずれのパラメータもキットの製造元の説明書に従って測定した。

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8

Table 1 List of tested drugs and their pharmacological action and therapeutic maximum plasma concentration (Cmax).

Drugs DILI Pharmacological action Cmax (μM) Ref.

Acetaminophen P Analgesic 139 19

Amiodarone hydrochloride P Antiarrhythmic 0.81 19 Benzbromarone P Antigout, uricosuric 4.3 19 Bromfenac sodium P Nonsteroidal anti-inflammatory 26 29 Chlorpromazine hydrochloride P Anticonvulsant, mood-stabilizing 0.84 19 Clozapine P Atypical antipsychotic 0.95 19

Cyclosporin A P Immunosuppressant 0.77 19

Diclofenac sodium P Nonsteroidal anti-inflammatory 7.4 19 Flutamide P Nonsteroidal antiandrogen 0.36 19

Furosemide P Loop diuretic 3.3 19

Isoniazid P Antituberculosis and antidepressant 77 19

Ketoconazole P Antifungal 3.2 30

Sodium valproate P Anticonvulsant, mood-stabilizing 690 31

Tamoxifen P Anticancer 0.16 19

Tetracycline hydrochloride P Protein synthesis inhibitor 19 19 Ticlopidine hydrochloride P Antiplatelet 7.1 19 Troglitazone P Antidiabetic, thiazolidinedione 6.4 19 Acetylsalicylic acid N Nonsteroidal anti-inflammatory 5.5 19 Ascorbic acid N Antioxidant, free radical scavenger 57 19 Caffeine N Central nervous system stimulant 42 15

Dexamethasone N Corticosteroid 0.22 19

Donepezil hydrochloride N Cholinesterase inhibitor 0.020 19 Famotidine N Histamine H2 antagonist 0.31 19 Ibuprofen N Nonsteroidal anti-inflammatory 241 29 Losartan potassium N Antihypertensive agent 1.7 29

Miconazole nitrate N Antifungal 0.021 19

Olanzapine N Atypical antipsychotic 0.18 32 Rosiglitazone N Antidiabetic, thiazolidinedione 1.04 19

Simvastatin N Hypolipidemic 0.024 19

Theophylline N Phosphodiesterase inhibitor 33 29

Valsartan N Antihypertensive agent 14 19

Warfarin sodium N Anticoagulant 4.5 19

P: DILI positive N: DILI negative

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9 7. データの解析

各測定パラメータの最適なカットオフ値を決定するために、JMP 11 software(SAS Institute Japan、 Tokyo、Japan)を使用して受信者動作特性曲線(receiver operating characteristic curve:ROC curve)を

作成した。異なるカットオフ値での真の陽性率(感度)及び偽陽性率(1-特異度)をそれぞれ縦軸及

び横軸にプロットし、Youden’s index(感度/100+特異度/100-1)33)を算出した。Youden’s index33)が最 大となるカットオフ値を各測定パラメータの最適なカットオフ値とした。 8. 陽性反応の定義及び毒性のスコア付け 各化合物において、1 つ以上のパラメータでカットオフ値を満たした場合、陽性反応と判定した。 いずれのパラメータもカットオフ値を満たさなかった場合、陰性反応と判定した。また、各化合物の 毒性の 程度を比較するために 、各測定パラメータに おいて、最小陽性濃度 (minimum positive concentration:MPC)に基づくスコア付けを行った(0 点:陰性、1 点:Cmaxの100 倍で陽性、2 点: Cmaxの25 倍で陽性、3 点:Cmaxの6.3 倍で陽性、4 点:Cmaxの1.6 倍で陽性)。さらに、各パラメータ のスコアの合計点を毒性スコアと定義した。 9. DILI リスク予測能力の評価 感度として、DILI 陽性化合物の中で、陽性反応と判定された化合物数の割合を算出した。特異度と して、DILI 陰性化合物の中で、陰性反応と判定された化合物数の割合を算出した。各パラメータにお いて感度及び特異度を算出した。さらに、6 つのパラメータを組み合わせた場合及び 4 つのパラメー タ(GSH 量、caspase 3/7 活性、LDH 漏出量、アルブミン分泌量)を組み合わせた場合において、感度 及び特異度を算出した。 第3 節 結果 1. マルチパラメトリックアッセイによる結果の代表例 HepaRG 細胞を用いたマルチパラメトリックアッセイの結果の代表例として、チアゾリジン系薬剤 でのDILI 陽性化合物 troglitazone 及び DILI 陰性化合物 rosiglitazone が各測定パラメータに与える影響 についてFig. 1 に示した。Troglitazone では、40 μM(Cmaxの6.3 倍)以上で GSH 量の低下及び 160 μM (Cmaxの25 倍)以上でアルブミン分泌量の低下が認められた。さらに、640 μM(Cmaxの100 倍)で 細胞生存率の低下及び LDH 漏出量の増加が認められた。しかし、troglitazone では、カットオフ値を

(13)

10

満たすcaspase 3/7 活性及び脂肪蓄積量の変動は認められなかった。一方、rosiglitazone では、26 μM(Cmax

の25 倍)以上で GSH 量の低下が認められたが、他の測定パラメータにおいてカットオフ値を満たす

変動は認められなかった。

2. マルチパラメトリックアッセイの MPC と DILI リスクカテゴリーの関係

DILI 陽性及び DILI 陰性化合物の各測定パラメータの MPC と DILI リスクカテゴリーについて Table 2 に示した。9 化合物(benzbromarone、bromfenac sodium、troglitazone、ketoconazole、sodium valproate、 ticlopidine hydrochloride、tetracycline hydrochloride、ibuprofen、rosiglitazone)では、Cmaxの25 倍以下で 陽性反応を示した。DILI リスクカテゴリーに関して、これらの 9 化合物の中で、Liver Toxicity Knowledge Base(LTKB)34)most concern が 6 化合物、DILI category35)severe または high concern が 7 化合物、 DILI が原因で WDN あるいは BW が 6 化合物であり、約 70%の化合物が高い DILI リスクに分類され た。

3. 毒性スコアと DILI リスクカテゴリーの関係

DILI 陽性及び DILI 陰性化合物のマルチパラメトリックアッセイでの毒性スコアと DILI リスクカテ ゴリーについてTable 2 に示した。上位 12 化合物(スコア 3 以上)は、benzbromarone(スコア 10)、 sodium valproate(スコア 9)、ibuprofen(スコア 8)、troglitazone(スコア 7)、ketoconazole(スコア 6)、 ticlopidine hydrochloride(スコア 6)、diclofenac sodium(スコア 6)、tetracycline hydrochloride(スコア 6)、 bromfenac sodium(スコア 4)、 acetaminophen(スコア 4)、amiodarone hydrochloride(スコア 3)、cyclosporin A(スコア 3)であった。これらの 12 化合物の中で、11 個は DILI 陽性化合物であった。また、DILI リスクカテゴリーに関して、これらの 12 化合物の中で、LTKB34) most concern が 8 化合物、DILI category35)severe または high concern が 8 化合物、DILI が原因で WDN あるいは BW が 8 化合物であ り、約70%の化合物が高い DILI リスクに分類された。

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11 (A)

(B)

Fig. 1 Representative data from the multiparametric assay in which HepaRG cells were treated with either troglitazone (A) or rosiglitazone (B). Each drug was administered for 24 h at concentrations that were 1.6-, 6.3-, 25-, and 100-fold the therapeutic maximum plasma concentration (Cmax). After treatment, the cell viability, intracellular glutathione (GSH) content, caspase 3/7 activity, intracellular lipid

accumulation, leakage of lactate dehydrogenase (LDH) into the culture medium, and albumin secretion into the culture medium were measured. The cell viability, GSH content, and albumin are expressed as percentages of the control. The caspase 3/7 activity, lipid accumulation, and LDH are expressed in relation to the control. The data are presented as the mean of 2 replicate wells. Dashed lines indicate the positive cutoff value (<70% for cell viability, <60% for GSH content, >4.9-fold for caspase 3/7 activity, >2.8-fold for lipid accumulation, >1.9-fold for LDH, and <40% for albumin).

0 20 40 60 80 100 1 10 100 1000 Ce ll v iab il it y (% o f co ntro l) Concentration (μM) 0 20 40 60 80 100 1 10 100 1000 G S H co nten t (% o f co ntro l) Concentration (μM) 0 1 2 3 4 5 6 1 10 100 1000 Ca sp ase 3 /7 (f old o f co ntro l) Concentration (μM) 0 1 2 3 4 1 10 100 1000 L ip id (f old o f co ntro l) Concentration (μM) 0 2 4 6 8 10 1 10 100 1000 L DH (f old o f co ntro l) Concentration (μM) 0 20 40 60 80 100 1 10 100 1000 A lb um in (% o f co ntro l) Concentration (μM) 0 20 40 60 80 100 1 10 100 1000 Ce ll v iab il it y (% o f co ntro l) Concentration (μM) 0 20 40 60 80 100 1 10 100 1000 G S H co nten t (% o f co ntro l) Concentration (μM) 0 1 2 3 4 5 6 1 10 100 1000 Ca sp ase 3 /7 (f old o f co ntro l) Concentration (μM) 0 1 2 3 4 1 10 100 1000 L ip id (f old o f co ntro l) Concentration (μM) 0 1 2 3 1 10 100 1000 L DH (f old o f co ntro l) Concentration (μM) 0 20 40 60 80 100 120 1 10 100 1000 A lb um in (% o f co ntro l) Concentration (μM)

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12

Table 2 Cytotoxic effects of DILI-positive and -negative drugs in HepaRG cells.

MPC and Toxicity score of each parameter Drug DILI CV GSH Casp Lipid LDH Alb Toxicity

score LTKB Annotation DILI Category WDN/ BW Benzbromarone P 434 109 434 109 109 109 10 Most concern Severe WDN

Bromfenac sodium* P 650 650 4 Most concern Severe WDN

Troglitazone P 640 40 640 160 7 Most concern Severe WDN Acetaminophen P 13900 13900 13900 13900 4 Not assigned DILI reports BW Amiodarone hydrochloride P 81 81 81 3 Most concern Severe BW

Flutamide P 0 Most concern Severe BW

Isoniazid P 0 Most concern Severe BW

Ketoconazole P 320 80 320 320 320 6 Most concern Severe BW Sodium valproate P 69000 4300 17300 17300 69000 9 Most concern Severe BW Ticlopidine hydrochloride P 709 709 709 177 709 6 Most concern High concern BW Chlorpromazine hydrochloride P 84.4 84.4 2 Less concern DILI reports N/A

Clozapine P 0 Less concern High concern N/A

Cyclosporin A P 77.5 77.5 77.5 3 Less concern DILI reports N/A Diclofenac sodium P 740 740 740 740 740 740 6 Most concern High concern N/A

Furosemide P 0 Less concern DILI reports N/A

Tamoxifen P 0 Most concern Not assigned N/A

Tetracycline hydrochloride* P 490 490 490 6 Less concern Not assigned N/A

MPC Score 6.3×Cmax 3

25×Cmax 2 100×Cmax 1 Negative 0

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13

Table 2 (Continued)

MPC and Toxicity score of each parameter

MPC Score 25×Cmax 2 100×Cmax 1 Negative 0

DILI-positive drugs (P) and DILI-negative drugs (N) are tabulated. Each drug was treated for 24 h at concentrations that were 1.6-, 6.3-, 25-, and 100-fold Cmax (*: bromfenac and tetracycline were treated at concentrations of 1.6-, 6.3-, and 25-fold Cmax because of insolubility). After treatment, 6 parameters were measured (CV, cell viability; GSH, intracellular glutathione content; Casp, caspase 3/7 activity; Lipid, intracellular lipid accumulation; LDH, leakage of lactate dehydrogenase into the culture medium; and Alb, albumin secretion into the culture medium). The values in columns 3–8 indicate minimum positive concentration (MPC) (μM).

Toxicity scores (column 9) indicate the total score of each parameter according to the MPC. Scores of each parameter are as follows: 0 (negative), 1 (positive at 100-fold Cmax), 2 (positive at ≥25-fold Cmax), 3 (positive at ≥6.3-fold Cmax), and 4 (positive at ≥1.6-fold Cmax).

LTKB annotation data (column 10) are from the LTKB database34).

DILI category data (column 11) are from the previous report35). The drugs categorized as “DILI reports” caused isolated and extremely infrequent cases of DILI, which also resulted in cautionary labeling. The drugs categorized as “ALT elevations” caused asymptomatic elevations in levels of serum ALT, but not liver injury.

WDN/BW (column 12) means withdrawn (WDN) from the market because of hepatotoxicity or boxed warning (BW) labels about hepatotoxicity in Japan or USA. N/A: not applicable

Drug DILI CV GSH Casp Lipid LDH Alb Toxicity score LTKB Annotation DILI Category WDN/ BW Acetylsalicylic acid N 0 Not assigned Not assigned N/A Ascorbic acid N 5680 1 Not assigned Not assigned N/A

Caffeine N 0 Not assigned No liver signals N/A

Dexamethasone N 0 Less concern ALT elevations N/A

Donepezil hydrochloride N 0 Not assigned Not assigned N/A

Famotidine N 0 Less concern Not assigned N/A

Ibuprofen N 6000 6000 6000 6000 8 Less concern DILI reports N/A

Losartan potassium N 0 Not assigned Not assigned N/A

Miconazole nitrate N 0 Not assigned Not assigned N/A

Olanzapine N 0 Not assigned DILI reports N/A

Rosiglitazone N 26 2 Not assigned High concern N/A

Simvastatin N 0 Less concern Not assigned N/A

Theophylline N 0 Not assigned Not assigned N/A

Valsartan N 1370 1 Not assigned Not assigned N/A

(17)

14 4. ROC curve 解析による最適なカットオフ値の決定

各パラメータの最適なカットオフ値を決定するために、ROC curve 解析を実施した(Fig. 2、Table 3)。 解析の結果、最適なカットオフ値は、細胞生存率で<70%(感度:41%、特異度:93%、Youden’s index: 0.345)、GSH 量で<60%(感度:59%、特異度:80%、Youden’s index:0.388)、caspase 3/7 活性で>4.9 倍(感度:59%、特異度:100%、Youden’s index:0.588)、脂肪蓄積量で>2.8 倍(感度:18%、特異度: 100%、Youden’s index:0.177)、LDH 漏出量で>1.9 倍(感度:65%、特異度:87%、Youden’s index: 0.514)、アルブミン分泌量で<40%(感度:47%、特異度:93%、Youden’s index:0.399)であった。ROC curve 下面積(area under the ROC curve:ROC-AUC)は caspase 3/7 活性が最も高い値(0.867)を示し、 次いでアルブミン分泌量(0.767)、LDH 漏出量(0.733)、GSH 量(0.624)、細胞生存率(0.494)、脂 肪蓄積量(0.455)であった。

Fig. 2 Receiver operating characteristic (ROC) curve analysis for 6 parameters in the 17 DILI-positive and 15 DILI-negative drugs. The true and false positive fractions indicate the sensitivity and specificity of each index, respectively. 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 Sensi tiv ity 1 - specificity Cell viability GSH Caspase 3/7 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 Sensi tiv ity 1 - specificity Lipid LDH Albumin

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15

Table 3 Optimal positive cutoff values of 6 parameters for predicting DILI.

Parameter Positive cutoff value Sensitivity (%) Specificity (%) ROC-AUC Youden’s index Cell viability <70% 41 93 0.494 0.345 GSH content <60% 59 80 0.624 0.388 Caspase 3/7 activity >4.9-fold 59 100 0.867 0.588 Lipid accumulation >2.8-fold 18 100 0.455 0.177 Leakage of LDH >1.9-fold 65 87 0.733 0.514 Albumin secretion <40% 47 93 0.767 0.399 ROC-AUC: the area under the receiver operating characteristic curve

5. HepaRG 細胞を用いたマルチパラメトリックアッセイの DILI リスク予測能力

HepaRG 細胞を用いたマルチパラメトリックアッセイの DILI リスク予測能力について Table 4 に示 した。Cmaxの100 倍において、GSH 量、caspase 3/7 活性及び LDH 漏出量の感度は 60%であり、他の パラメータと比較して高かった。また、Cmaxの25 倍において、GSH 量の感度は 29%であり、他のパ ラメータと比較して最も高かった。6 つのパラメータを組み合わせた結果、感度は Cmaxの1.6 倍、6.3 倍、25 倍及び 100 倍で、それぞれ 0%、12%、41%及び 67%であった。また、特異度は Cmaxの1.6 倍、 6.3 倍、25 倍及び 100 倍で、それぞれ 100%、100%、87%及び 73%であった。さらに、4 つのパラメー タ(GSH 量、caspase 3/7 活性、LDH 漏出量、アルブミン分泌量)を組み合わせた結果、6 つのパラメ ータの組合せと同等の感度及び特異度を示した。パラメータを組合せることによって、単一のパラメ ータと比較して感度が向上した。しかし、細胞生存率及び脂肪蓄積量は感度及び特異度を向上させな かった。 6. HepaRG 細胞を用いたマルチパラメトリックアッセイによる類似薬の毒性比較

HepaRG 細胞に対する薬理学的及び構造的類似薬の毒性影響と DILI リスクについて Table 5 に示し た。同一グループの類似薬内で最も低いMPC/Cmax値を示した化合物(bromfenac sodium、ibuprofen、 ketoconazole、troglitazone)の DILI リスクは、ibuprofen を除いて最も重度の WDN あるいは BW であ った。

(19)

16

Table 4 Ability of the multiparametric assay using HepaRG cells to predict DILI. Drug

concentration

Cell viability GSH content Caspase 3/7 activity Sen (%) Spe (%) Sen (%) Spe (%) Sen (%) Spe (%)

1.6 × Cmax 0 100 0 100 0 100 6.3 × Cmax 0 100 12 100 0 100 25 × Cmax 0 93 29 87 12 100 100 × Cmax 47 93 60 80 60 100 Drug concentration

Lipid accumulation Leakage of LDH Albumin secretion Sen (%) Spe (%) Sen (%) Spe (%) Sen (%) Spe (%)

1.6 × Cmax 0 100 0 100 0 100 6.3 × Cmax 0 100 0 100 0 100 25 × Cmax 12 100 24 93 18 93 100 × Cmax 20 100 60 87 40 93 Drug concentration

Combination of 6 parameters Combination of 4 parameters Sen (%) Spe (%) Sen (%) Spe (%)

1.6 × Cmax 0 100 0 100 6.3 × Cmax 12 100 12 100 25 × Cmax 41 87 41 87 100 × Cmax 67 73 67 73 Sen: sensitivity Spe: specificity

Sensitivity (percentage of DILI-positive drugs that meet the positive cutoff value) and specificity (percentage of DILI-negative drugs that do not meet the positive cutoff value) are presented for each parameter and for the combination of 6 and 4 parameters. The combination of 4 parameters includes the GSH content, caspase 3/7 activity, leakage of LDH, and albumin secretion.

(20)

17

Table 5 Cytotoxic effects of pharmacological and structural analogs in HepaRG cells.

MPC/Cmax 6.3 25 100 >100 P: DILI positive N: DILI negative

Cmax: therapeutic maximum plasma concentration

MPC: minimum positive concentration in the multiparametric assay using HepaRG cells

WDN/BW: withdrawn (WDN) from the market because of hepatotoxicity or boxed warning (BW) labels about hepatotoxicity in Japan or USA

N/A: not applicable

Drug DILI Cmax (μM)

MPC

(μM) MPC/Cmax WDN/BW Nonsteroidal anti-inflammatory

Bromfenac sodium P 26 650 25 WDN

Diclofenac sodium P 7.4 740 100 N/A Acetylsalicylic acid N 5.5 >550 >100 N/A

Ibuprofen N 241 6000 25 N/A

Thienobenzodiazepine atypical antipsychotic

Clozapine P 0.95 >95 >100 N/A Olanzapine N 0.18 >18 >100 N/A Azole antifungal

Ketoconazole P 3.2 80 25 BW

Miconazole nitrate N 0.021 >2.1 >100 N/A Thiazolidinedione antidiabetic

Troglitazone P 6.4 40 6.3 WDN

(21)

18 第4 節 考察 細胞を用いた評価系において、高い精度でDILI リスクを予測するためには、適切な測定パラメータ を設定することが重要である。従来から実施されてきた細胞を用いたDILI リスク予測評価系は、単一 のエンドポイントや細胞死を測定していることから、予測能力が低かった15,26)。その理由として、DILI の発現にはミトコンドリア毒性、代謝活性化、酸化ストレス、脂肪蓄積、リン脂質蓄積、胆汁うっ滞 及びアポトーシス等の多くのメカニズムが関与している27)ことから、単一のエンドポイントや細胞死 だけではDILI リスクを適切に評価できていないことが考えられる。したがって、本研究では、細胞を 用いたDILI リスク予測評価系の他の研究例14,15,20)を参考にして、以下の6 種類のパラメータを選択し た。細胞の生存性を評価するための細胞生存率、細胞の酸化還元状態を評価するためのGSH 量、細胞 のアポトーシスを評価するためのcaspase 3/7 活性、細胞内への異常な脂肪蓄積を評価するための脂肪 蓄積量、細胞膜傷害や細胞死を評価するための LDH 漏出量、肝機能を評価するためのアルブミン分 泌量。 Rodrigues ら24)HepaRG 細胞を用いて、単一のパラメータとしてニュートラルレッド法により 10 化合物の細胞毒性を評価した。Rodrigues らによる研究では、valproate は細胞毒性を示さなかった24) 一方、本試験では、valproate は細胞生存率、GSH 量、caspase 3/7 活性、脂肪蓄積量及びアルブミン分 泌量において陽性反応を示した。この結果から、マルチパラメトリックアッセイは、単一のパラメー タでは検出できなかった反応も捉えられたことから、DILI リスク予測に有用であると考えられた。 細胞を用いてDILI リスクを高い精度で予測するためには、化合物の処理濃度及び処理時間を適切に

設定する必要がある。Lin と Will は細胞を用いた評価系において、ヒト臨床 Cmaxに基づいて処理濃度 を設定することにより、DILI リスクの予測能力が向上することを示した36)。また、Xu らは C maxの100 倍濃度をヒト初代培養肝細胞に24 時間処理することにより、高い特異度(95-100%)で DILI リスク を予測できることを報告した19)。これらの先行研究に基づいて、本研究では最高濃度としてヒト臨床 Cmaxの100 倍、処理時間として 24 時間を選択した。 本研究では、ヒト臨床Cmaxの100 倍を最高濃度に設定したが、創薬早期にヒトでの Cmaxの情報を入 手することは困難である。生理学的薬物動態モデル(physiologically based pharmacokinetic model:PBPK model)は、Cmaxを過小評価する傾向があるが37)、in silico 及び in vitro のデータを使用して合理的にヒ トでのCmaxを予測することができる38)。したがって、創薬早期にヒトでのDILI リスクを予測するた めには、PBPK model による Cmaxの予測値の使用が有用であると考えられる。

(22)

19

に、Xu らの研究19)を参考にしてROC curve を作成した。その結果、6 つのパラメータの中で、caspase 3/7 活性は最も高い ROC-AUC(0.867)を示したことから、同パラメータは HepaRG 細胞において予 測能力が良好であると考えられた。一方、細胞生存率及び脂肪蓄積量は低いROC-AUC(それぞれ 0.494、 0.455)を示したことから、これらのパラメータは HepaRG 細胞において DILI リスクの予測能力が低 いと考えられた。

O’Brien らは HepG2 細胞を用いて、従来の測定パラメータは DILI リスク予測の感度が低いことを報 告している(caspase 3 活性:感度 5%及び特異度 95%、GSH 量:感度 19%及び特異度 85%、細胞生存 率:感度10%及び特異度 92%)15)。本研究では、HepaRG 細胞の DILI リスク予測の感度は既報の HepG2 細胞15)と比較して、caspase 3/7 活性、GSH 量及び細胞生存率において明らかに高い値を示した。本検 討から、O’Brien ら15)と評価化合物は異なるが、HepaRG 細胞は HepG2 細胞と比較して DILI リスク予 測能力が優れている可能性が示唆された。

ヒト初代培養肝細胞は、薬物代謝研究や毒性研究において最も広く使用されてきた6,7)HepaRG

細胞をヒト初代培養肝細胞の代替として DILI リスク予測に使用するためには、同等以上の予測 能力が必要である。本研究において、HepaRG 細胞の DILI リスク予測能力は、Cmaxの100 倍濃度に

おいて感度が67%及び特異度が 73%であった。ヒト初代培養肝細胞を用いたマルチパラメトリックア ッセイにおいて、Cmaxの100 倍を処理濃度に設定した場合、Xu らは感度が 50-60%及び特異度が 95 -100%19)Khetani らは感度が 66%及び特異度が 90%14)と報告している。本研究から、測定パラメー タや評価化合物はXu ら19)及びKhetani ら14)の研究と異なるが、HepaRG 細胞はヒト初代培養肝細胞と 同等の感度を有することが示された。したがって、医薬品の研究開発において、HepaRG 細胞はヒト 初代培養肝細胞の代替としてDILI リスク予測に活用できると考えられた。 Cmaxの25 倍濃度を処理した場合、DILI リスク予測の感度は低かったが、陽性反応を示した化合物 のうち約 70%が高い DILI リスクに分類された。この結果から、本評価系で安全域が狭い化合物は高 いDILI リスクを有する可能性が高いことが示唆された。したがって、創薬早期において、本評価系に おいて安全域が広い化合物を選択することにより、DILI が発現する可能性が減少し、研究開発を効率 的に進めることができるであろう。 HepG2 細胞において、化合物の毒性の程度を比較するために、毒性の強さをスコア付けする方法が 報告されている 18)。Tolosa らは、HepG2 細胞で毒性の程度のスコア付けを行い、高い特異度(92%) でDILI 陽性化合物と DILI 陰性化合物を分けることができた18)。したがって、毒性の程度のスコア付 けは、医薬品の研究開発において候補化合物の優先順位付けに有用であると考えられた。本研究では、

(23)

20

毒性スコアが3 以上の化合物の 90%以上が DILI 陽性に分類された。この結果から、毒性スコアが 3

以上の化合物は、DILI を発現するリスクが高いと考えられた。創薬早期において、本評価系で毒性ス

コアが高い化合物の優先順位を下げ、毒性スコアが0 の化合物を選択することにより、DILI が発現す

る可能性が減少し、研究開発の成功率の上昇が期待できる。

HepaRG 細胞を使用して、acetaminophen23)amiodarone20,21)tetracycline20,21)chlorpromazine22)等の いくつかの化合物でDILI の発現メカニズムの研究がなされてきた。Acetaminophen では、DILI の発現 メカニズムの1 つとして GSH 量の低下が報告されている23)。本研究では、troglitazone、rosiglitazone、 ketoconazole 及び sodium valproate において、細胞生存率の低下が認められない濃度(Cmaxの25 倍以下) からGSH 量が低下した。この結果から、これらの化合物では、GSH 量の低下が DILI の発現に重要な 役割を果たしている可能性が考えられた。本評価系により得られた結果は、DILI 発現メカニズム解析 の一助となるであろう。 多くの化合物や代謝物の毒性において、アポトーシスが重要な役割を果たしていることが知られて いる39,40)。本研究において、約60%の DILI 陽性化合物(10/17 化合物)において、caspase 3/7 活性の 増加が認められた。一方、DILI 陰性化合物では、caspase 3/7 活性の増加は認められなかった。この結 果から、DILI の発現メカニズムの 1 つにアポトーシスが重要な役割を果たしていることが考えられた。 また、本検討においてcaspase 3/7 活性の DILI リスク予測能力が良好であったことも考慮すると、ア ポトーシスはDILI リスク予測に重要なパラメータであると考えられた。 創薬早期の各プロジェクトでは、構造が類似した複数の候補化合物が存在する。したがって、構造 が類似した化合物の中から、安全性の高い化合物を選択できたら、研究開発を効率的に進めることが できる。本研究では、同一グループの類似薬において、HepaRG 細胞は DILI リスクが高い化合物と DILI リスクが比較的低い化合物を分けることができた。この結果から、本評価系により、創薬早期に おいて構造が類似した候補化合物の中から DILI リスクが低い化合物を選択することが可能と考えら れた。

Ibuprofen 及び rosiglitazone は、DILI 陰性化合物であるが Cmaxの25 倍濃度から陽性反応を示した。 Ibuprofen41-43)及び rosiglitazone44,45)では、ヒトで DILI の症例がいくつか報告されている。さらに、 ibuprofen は LTKB34)less concern、DILI category35)DILI reports に分類され、DILI が発現する可能性 は否定できない。同様に、rosiglitazone は DILI category35)high concern に分類され、論文によっては DILI が発現するリスクは高いと考えられている。したがって、ibuprofen 及び rosiglitazone は、DILI リスク分類において、議論の余地がある化合物であると考えられた。

(24)

21

本研究において、DILI 陽性化合物の中で、clozapine、flutamide、furosemide、isoniazid 及び tamoxifen は陽性反応を示さなかった。Flutamide、furosemide、isoniazid 及び tamoxifen では、ヒト初代培養肝細 胞を用いたマルチパラメトリックアッセイ19)においても、本研究と同様にC maxの100 倍濃度を 24 時 間処理した結果、陽性反応は認められなかった。したがって、今後の課題として、これらの化合物の DILI リスクを評価するためには、適切なパラメータの探索が必要である。 本研究において 6 種類のパラメータの中で、脂肪蓄積量は最も感度が低かった。Tetracycline 及び amiodarone は脂肪肝を誘発することがよく知られている46,47)が、本研究において両化合物とも脂肪蓄 積量の増加は認められなかった。Tetracycline 及び amiodarone ともに、HepaRG 細胞に 14 日間曝露後、 用量依存的なトリグリセリドの増加が認められている 20,21)。したがって、HepaRG 細胞において、化 合物の曝露時間を延長することにより、脂肪蓄積量のパラメータの感度向上が期待できる。 第5 節 小括 DILI は医薬品の研究開発中止及び WDN の主要な原因の一つである。創薬早期にヒトでの DILI リ スクを予測することは、研究開発を効率的に進めるために重要である。本研究では、HepaRG 細胞を 用いたDILI リスク予測評価系を構築し、その有用性について検討した。本評価系の DILI リスク予測 能力は、感度が67%及び特異度が 73%であり、既報のヒト初代培養肝細胞と同等の感度を示した。ま た、本評価系で安全域が狭い濃度で陽性反応を示した化合物の多くが高いDILI リスクに分類された。 さらに、本評価系で毒性スコアを算出することにより、化合物を順位付けすることができた。加えて、 類似薬においてDILI リスクが高い化合物では DILI リスクが比較的低い化合物と比較して狭い安全域 を示した。以上の検討により、HepaRG 細胞は類似薬の優先順位付け、DILI の発現メカニズム解析、 創薬早期におけるDILI リスク予測に有用であると考えられた。HepaRG 細胞を用いたマルチパラメト リックアッセイにより、創薬早期にヒトでのDILI リスク予測が可能となり、安全性の高い化合物の創 生に貢献できるであろう。

(25)

22 第2 章 HepaRG 細胞を用いて DILI リスクの程度を予測するためのマルチパラメトリックアッセイ 改良法の検討 第1 節 緒言 DILI は医薬品の研究開発の中止及び WDN の主要な原因の一つである。創薬早期に候補化合物の DILI リスクを予測することができたら、研究開発を効率的に進めることができる。第 1 章では、HepaRG 細胞を用いたマルチパラメトリックアッセイが、DILI リスク予測評価系として有用であることを明ら かにした。 ヒトでのDILI リスクの程度は、化合物により異なる。いくつかの文書や論文等では、化合物を DILI リスクの程度に基づいて分類している。例えば、FDA によって承認された医薬品の添付文書では boxed warning(BW)、warnings and precautions(WP)及び adverse reactions(AR)、Chen ら34)most concern、 less concern 及び no concern、O’Brien ら15)severely、moderately、non-toxic drugs 及び drugs toxic to other organs に分類している。重度の DILI は患者の生命を脅かし、製薬企業にも大きな損害を与える。した がって、医薬品の研究開発においてDILI リスクの程度を予測することは重要である。これまでに、ヒ ト初代培養肝細胞14,16,19)、HepG2 細胞15-18)、イヌ肝細胞共培養モデル48)等を用いた様々なDILI リス ク予測評価系が報告されてきた。これらの評価系では、DILI リスクについて定性的に陽性か陰性かを 予測することができるが、リスクの程度を定量的に予測することは困難である。 HepaRG 細胞を用いたマルチパラメトリックアッセイにおいて、ヒトでの DILI リスクを定性的に予 測することが可能となった(第1 章)。また、各パラメータの MPC とヒト臨床 Cmaxのマージン(MPC/Cmax) を指標にしたスコア付けにより、評価化合物のDILI リスクを定量的に順位付けすることができた。医 薬品の研究開発では、候補化合物の優先順位付けだけでなく、go/no-go 判断が必要である。しかし、 第1 章では、候補化合物の go/no-go 判断に利用できる毒性スコアの最適なカットオフ値は不明である。

また、第1 章では HepaRG 細胞を用いた DILI リスク予測評価系を構築するために、DILI の発現に 関連する6 種類のパラメータ(細胞生存率、GSH 量、caspase 3/7 活性、脂肪蓄積量、LDH 漏出量、ア ルブミン分泌量)を選択した。しかし、脂肪蓄積量は他のパラメータと比較してDILI リスク予測の感 度が最も低く、DILI リスク予測の感度を向上させなかった。したがって、脂肪蓄積量のパラメータは、 HepaRG 細胞を用いたマルチパラメトリックアッセイにおいて、DILI リスク予測に必須でないと考え られた。 さらに、第1 章では各パラメータの最適なカットオフ値について、Xu ら 19)の基準に従って分類し

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23

たDILI 陽性化合物及び DILI 陰性化合物を用いて、ROC curve 解析によって決定した。しかし、いく つかの化合物は、論文によって異なる DILI リスクに分類されている。例えば、rosiglitazone は、Xu らの報告19)ではnegative に分類されているが、Gustafsson らの報告35)ではhigh concern に分類されて いる。また、Levofloxacin は、Xu らの報告19)ではnegative に分類されているが、Gustafsson らの報告 35)ではhigh concern に分類されている。さらに、Clozapine は、Xu らの報告19)ではpositive に分類され ているが、Chen らの報告34)ではless concern に分類されている。したがって、DILI リスク分類の基準 は、ROC curve 解析に基づく各パラメータのカットオフ値や予測能力の感度及び特異度の値に影響を 及ぼす可能性がある。そのため、細胞を用いたいくつかのDILI リスク予測評価系では、ROC curve 解 析に基づかないパラメータのカットオフ値が活用されている。例として、TC50(toxic concentration that decreased the response by 50%)値14)及びLC

50(lethal concentration that kills 50% of the cells)値48)が報告 されている。 第2 章では、HepaRG 細胞を用いたマルチパラメトリックアッセイの改良法において、化合物の DILI リスクの程度を定量的に予測する方法について検討した。HepaRG 細胞の DILI リスク予測能力につい て、第1 章では 32 化合物を使用して評価したが、第 2 章では他の化合物セットとして 38 化合物を使 用して評価した。マルチパラメトリックアッセイの改良法として、(1)化合物の DILI リスク分類にお いてFDA で承認された添付文書の情報を使用、(2)6 種類のパラメータから脂肪蓄積量を除く 5 つの パラメータを選択、(3)パラメータのカットオフ値として TC50 値及び EC200(effective concentration giving a response equal to 200% of controls)値を使用した。また、化合物の DILI リスクの程度を定量的 に予測するために、毒性スコアを算出し、その最適なカットオフ値を決定した。

第2 節 実験方法

1. 細胞、培養液、培養プレート

HepaRG 細胞は、分化済みで凍結保存された市販品を Life Technologies Japan から購入した。William’s E Medium、HepaRG Thaw, Plate and General Purpose Medium Supplement、HepaRG Tox Medium Supplement 及びGlutaMAX Supplement は Life Technologies Japan から購入した。BioCoat Collagen I 96-well plates は Corning(Corning、NY、USA)から購入した。

2. 化合物

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trazodone 及び troglitazone は Wako Pure Chemical Industries から購入した。Buspirone、imatinib、 ketoconazole、lumiracoxib 及び nefazodone は LKT laboratories(St. Paul、MN、USA)から購入した。 Celecoxib、ciprofloxacin、levofloxacin、lovastatin、rosuvastatin、temozolomide 及び voriconazole は Tokyo Chemical Industries(Tokyo、Japan)から購入した。Cerivastatin、labetalol、miconazole、nadolol、posaconazole、 simvastatin 及び trovafloxacin は Sigma-Aldrich から購入した。Dasatinib、erlotinib、nilotinib 及び sunitinib はSelleck Chemicals(Houston、TX、USA)から購入した。Entacapone 及び zafirlukast は Cayman Chemical から購入した。Lapatinib、montelukast 及び tolcapone はそれぞれ、Acesys Pharmatech(Jamesburg、NJ、 USA)、Nacalai tesque(Kyoto、Japan)及び Toronto Research Chemicals(Toronto、Canada)から購入し た。

3. 化合物の DILI リスク分類

本試験では38 化合物を評価した(Table 6)。化合物の DILI リスクに関する情報は、FDA によって 承認された最新の添付文書が閲覧できる DailyMed(http://dailymed.nlm.nih.gov/dailymed/index.cfm)か ら入手した。化合物のDILI リスクは FDA によって承認された添付文書に従って、以下の 5 つに分類 した。①WDN、②BW、③WP、④AR 及び⑤DILI の発現に関する記載がない(no match:NM)。さら に、WP に分類された化合物は、既報34)に従い、2 つのリスク(high concern 及び low concern)に分類

した。WP の中で致死的、急性肝不全、肝細胞の壊死、黄疸、高ビリルビン血症を含む重度または中

等度のDILI が添付文書に記載されている化合物は、WP(high concern)に分類した。また、WP の中

でアミノトランスフェラーゼの上昇が添付文書で報告されているが他に所見がない化合物は、WP(low

concern)に分類した。既報34)及びCode of Federal Regulation(CFR)Title 21(Food and Drugs)Part 201 (21CFR201.56)(http://www.accessdata.fda.gov/scripts/cdrh/cfdocs/cfCFR/CFRSearch.cfm?fr=201.57)に従 い、DILI リスクの程度は、高い順に WDN、BW、WP(high concern)、WP(low concern)、AR、NM と定義した。

4. 細胞培養

分化済みのHepaRG 細胞の培養は、購入元の説明書に従って以下の通りに実施した。HepaRG 細胞 を解凍し、HepaRG Thaw, Plate and General Purpose Medium Supplement 及び GlutaMAX Supplement を添 加したWilliam’s E Medium で細胞数を調整した。BioCoat Collagen I 96-well plates に 1 ウェルあたり約 100,000 細胞を播種した。24 時間後、プレートのウェル中の培地を吸引除去し、HepaRG Tox Medium

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25

Supplement 及び GlutaMAX Supplement を添加した William’s E Medium に交換した。培地交換は 3 日ご とに行った。HepaRG 細胞の培養は 37 °C、5%CO2、加湿した条件下においてインキュベーター内で行 った。

5. 化合物処理

化合物の処理濃度についてTable 6 に示した。最高濃度はヒトの臨床での Cmaxの100 倍、最低濃度 はCmaxの10 倍未満に設定した(最高濃度から公比 2 で段階希釈)。DMSO(Wako Pure Chemical Industries)

に化合物を溶解させた後、細胞培養液で最終濃度に希釈した。細胞培養液中の DMSO の最終濃度は

0.5%(vol/vol)に設定した。Cmaxの 100 倍で析出する化合物(ciprofloxacin、dacarbazine、erlotinib、 ketoconazole、lapatinib、nefazodone、nilotinib、posaconazole、sunitinib)では、溶解する最大濃度を最 高濃度に設定した。HepaRG 細胞の播種から 7 日後に、細胞に各化合物を添加し、24 時間培養した。 各濃度について、3 ウェルの細胞に処理した。

6. マルチパラメトリックアッセイ

化合物処理後、HepaRG 細胞の生存率、GSH 量、caspase 3/7 活性、培養上清中への LDH 漏出量及び アルブミン分泌量を測定した。細胞生存率はWST-1 試薬(Roche Diagnostic GmbH)、GSH 量は GSH-Glo Glutathione Assay Kit(Promega Corporation)、caspase 3/7 活性は Caspase-Glo 3/7 Assay Kit(Promega Corporation)、LDH 漏出量は Cytotoxicity Detection Kit(LDH)(Roche Diagnostics GmbH)、アルブミン 分泌量は Albuwell Kit(Exocell)を使用して測定した。いずれのパラメータもキットの製造元の説明 書に従って測定した。

(29)

26 Table 6 List of tested drugs.

Drugs Therapeutic category Status/Label for DILI Cmax (μM) Concentration range (μM) Reference of Cmax Cerivastatin Antihyperlipidemic WDN* 0.03 0.19 – 3.00 15 Lumiracoxib NSAID WDN 22.47 140 – 2247 28 Troglitazone Antidiabetic WDN 6.39 40 – 639 19 Trovafloxacin Antibiotic WDN 4.08 26 – 408 19 Dacarbazine Anticancer BW 43.91 137 – 2196 14 Ketoconazole Antifungal BW 7.0 22 – 350 15 Lapatinib Anticancer BW 4.18 26 – 105 Package Insert Nefazodone Antidepressant BW 4.26 27 – 213 16 Sunitinib Anticancer BW 70.8 111 – 221 28 Tolcapone Anti-Parkinson BW 16.5 103 – 1650 14 Celecoxib NSAID WP (high concern) 2.545 15.9 – 254.5 16 Ciprofloxacin Antibiotic WP (high concern) 11.5 72 – 288 19 Erlotinib Anticancer WP (high concern) 13.79 22 – 22 28 Fluconazole Antifungal WP (high concern) 8.82 55 – 882 19 Imatinib Anticancer WP (high concern) 2.71 17 – 271 28 Itraconazole Antifungal WP (high concern) 0.4 3 – 40 15 Labetalol Antianginal WP (high concern) 2.68 16.8 – 268 49 Levofloxacin Antibiotic WP (high concern) 15.8 99 – 1580 19 Nilotinib Anticancer WP (high concern) 3.6 23 – 90 28 Posaconazole Antifungal WP (high concern) 3.9 25 – 49 Package Insert Temozolomide Anticancer WP (high concern) 26.78 167 – 2678 19 Voriconazole Antifungal WP (high concern) 6.58 41 – 658 Package Insert Zafirlukast Antiasthmatic WP (high concern) 1.21 8 – 121 19

(30)

27 Table 6 (Continued)

Drugs Therapeutic category Status/Label for DILI Cmax (μM) Concentration range (μM) Reference of Cmax Atorvastatin Antihyperlipidemic WP (low concern) 0.06 0.38 – 6.00 28 Lovastatin Antihyperlipidemic WP (low concern) 0.01 0.06 – 1.00 15 Pioglitazone Antidiabetic WP (low concern) 2.67 17 – 267 19 Pravastatin Antihyperlipidemic WP (low concern) 0.10 0.63 – 10.0 15 Rosiglitazone Antidiabetic WP (low concern) 1.04 7 – 104 19 Rosuvastatin Antihyperlipidemic WP (low concern) 0.01 0.06 – 1.00 15 Simvastatin Antihyperlipidemic WP (low concern) 0.02 0.13 – 2.00 15

Atenolol Antianginal AR 4.99 31 – 499 19 Buspirone Antidepressant AR 0.00455 0.028 – 0.455 19 Dasatinib Anticancer AR 0.23 1.4 – 23.0 28 Montelukast Antiasthmatic AR 0.625 3.9 – 62.5 19 Nadolol Antianginal AR 0.420 2.6 – 42.0 19 Trazodone Antidepressant AR 4.60 29 – 460 19 Entacapone Anti-Parkinson NM 3.9 24 – 390 14 Miconazole Antifungal NM 0.021 0.13 – 2.1 19 NSAID: Nonsteroidal anti-inflammatory drug

DILI: Drug-induced liver injury

WDN: Withdrawn; BW: Boxed Warning; WP: Warnings and Precautions; AR: Adverse Reactions; NM: No Match in Food and Drug Administration-approved prescription drug labels. WP drugs were classified into two categories (high and low concern) according to their severity level of DILI34). WP (high concern) drugs have been associated with severe and moderate DILI including fatal hepatotoxicity, acute liver failure, liver necrosis, jaundice, and hyperbilirubinemia. WP (low concern) drugs have been associated with mild DILI including liver aminotransferases increase without any hepatotoxicity.

*: Cerivastatin was withdrawn from the market because of fatal rhabdomyolysis54). Cmax: Therapeutic maximum plasma concentration in humans.

(31)

28 7. データの解析

細胞生存率、GSH 量及びアルブミン分泌量では TC50値を算出した。また、caspase 3/7 活性及び LDH 漏出量ではEC200値を算出した。TC50値及びEC200値の算出にはJMP 11 software(SAS Institute Japan、 Tokyo、Japan)を使用した。少なくとも 1 つのパラメータの TC50値またはEC200値がCmaxの100 倍以 下であった場合、その化合物は陽性反応を示したと判定した。さらに、化合物のDILI リスクの程度を 定量的に比較するために、毒性スコアを算出した。つまり、TC50値またはEC200値とCmaxのマージン (TC50/CmaxまたはEC200/Cmax)を算出し、以下のように各パラメータのスコア付けを行った。スコア 0(Cmaxの100 倍以下で TC50値及びEC200値が認められなかった)、スコア1(>30 から 100 倍のマー ジン)、スコア2(>10 から 30 倍のマージン)、スコア 3(≤10 倍のマージン)。各パラメータのスコア の合計値を毒性スコアと定義した。 8. 統計解析 マルチパラメトリックアッセイの改良法のDILI リスク予測能力を評価するために、38 化合物を DILI 陽性及びDILI 陰性に分類した。DILI 陽性は 23 化合物[WDN:4 化合物、BW:6 化合物、WP(high concern):13 化合物]、DILI 陰性は 15 化合物[WP(low concern):7 化合物、AR:6 化合物、NM:2 化合物]であった。

毒性スコアの最適なカットオフ値及び予測能力を算出するために、JMP 11 software(SAS Institute Japan)を用いて ROC curve を作成した。毒性スコアの最適なカットオフ値を決定するために、DILI リスクについて2 つの分類(very high risk 及び high risk)を設定した。WDN 及び BW の化合物は very high risk に、WP(high concern)の化合物は high risk に分類した。ROC curve は、(1)very high risk 対 non very high risk、(2)very high risk 及び high risk 対 non very high risk 及び non high risk の 2 種類につ いて作成した。 毒性スコアのROC curve 解析では、異なるカットオフ値において真の陽性率(感度)及び偽陽性率 (1-特異度)をそれぞれ縦軸及び横軸にプロットし、Youden’s index(感度/100+特異度/100-1)33) を算出した。Youden’s index33)が最大となるカットオフ値を毒性スコアの最適なカットオフ値とした。 第3 節 結果 1. マルチパラメトリックアッセイの改良法による結果の代表例 HepaRG 細胞を用いたマルチパラメトリックアッセイ改良法の結果の代表例として、tolcapone(DILI

(32)

29 リスク:BW)及び entacapone(DILI リスク:NM)が各測定パラメータに与える影響について Fig. 3 に示した。Tolcapone では細胞生存率の低下(TC50 = 204 μM)、GSH 量の低下(TC50 = 151 μM)、アル ブミン分泌量の低下(TC50 = 132 μM)、caspase 3/7 活性の増加(EC200 = 204 μM)及び LDH 漏出量の 増加(EC200 = 112 μM)が認められた。一方、entacapone では、いずれのパラメータも変動は認められ なかった。 2. 毒性スコアと DILI リスクカテゴリーの関係 毒性スコアとDILI リスクカテゴリーの関係を調べるために、38 化合物の TC50値、EC200値及び毒 性スコアについてTable 7 に示した。また、Fig. 4 では毒性スコアが高い順に 38 化合物を並べた。毒 性スコアが1 以上の上位 22 化合物は、sunitinib、tolcapone、ketoconazole、lumiracoxib、nefazodone、 erlotinib、imatinib、troglitazone、trovafloxacin、celecoxib、trazodone、cerivastatin、lapatinib、nilotinib、 posaconazole、zafirlukast、pioglitazone、itraconazole、labetalol、levofloxacin、temozolomide、voriconazole であり、このうち20 化合物は DILI リスクが WDN、BW 及び WP(high concern)に分類された。また、 DILI リスクが WDN 及び BW に分類される 10 化合物の中で、9 化合物は毒性スコアが 3 以上を示した。

3. マルチパラメトリックアッセイの改良法の DILI リスク予測能力

マルチパラメトリックアッセイの改良法のDILI リスク予測能力について Table 7 に示した。DILI リ スクがWDN、BW 及び WP(high concern)に分類される 23 化合物のうち 20 化合物において、Cmax の 100 倍濃度の範囲内で陽性反応が認められた。一方、DILI リスクが WP(low concern)、AR 及び NM に分類される 15 化合物のうち 13 化合物において、Cmaxの100 倍濃度の範囲内で陽性反応は認め

られなかった。この結果から、マルチパラメトリックアッセイの改良法の DILI リスク予測の感度は

(33)

30 (A)

(B)

Fig. 3 Representative data from the multiparametric assay in which HepaRG cells were treated with either (A) tolcapone or (B) entacapone.HepaRG cells were treated with each drug for 24 h at concentrations that were 6.25-, 12.5-, 25-, 50-, and 100-fold the therapeutic maximum plasma concentration (Cmax). After treatment, the cell viability, intracellular glutathione (GSH) content, caspase 3/7 activity, leakage of lactate dehydrogenase (LDH) into the culture medium, and albumin secretion into the culture medium were measured. The data are expressed as percentages of the control with TC50 (toxic concentration that decreased the response by 50%) and EC200 (effective concentration giving a response equal to 200% of controls). The data are presented as the mean of 3 replicated wells. Dashed lines indicate the TC50 (cell viability, GSH content, and albumin) or EC200 (caspase 3/7 activity and LDH) value.

0 20 40 60 80 100 120 10 100 1000 10000 Ce ll via bili ty (% o f co ntro l) Concentration (μM) 0 20 40 60 80 100 10 100 1000 10000 G S H co nten t (% o f co ntro l) Concentration (μM) 0 50 100 150 200 250 10 100 1000 10000 Ca sp ase 3 /7 (% o f co ntro l) Concentration (μM) 0 200 400 600 800 10 100 1000 10000 L D H (% o f co ntro l) Concentration (μM) 0 20 40 60 80 100 10 100 1000 10000 A lb um in (% o f co ntro l) Concentration (μM) 0 20 40 60 80 100 120 10 100 1000 Ce ll via bili ty (% o f co ntro l) Concentration (μM) 0 20 40 60 80 100 10 100 1000 G S H co nten t (% o f co ntro l) Concentration (μM) 0 50 100 150 200 250 10 100 1000 Ca sp ase 3 /7 (% o f co ntro l) Concentration (μM) 0 50 100 150 200 250 10 100 1000 L D H (% o f co ntro l) Concentration (μM) 0 20 40 60 80 100 120 140 10 100 1000 A lb um in (% o f co ntro l) Concentration (μM) TC50 = 204 μM TC50 = 151 μM EC200 = 204 μM EC200 = 112 μM TC50 = 132 μM TC50 = >390 μM TC50 = >390 μM TC50 = >390 μM EC200 = >390 μM EC200 = >390 μM

(34)

31 Table 7 Cytotoxic effects of 38 drugs in HepaRG cells.

Drugs TC50 (μM) EC200 (μM) Cmax (μM) Toxicity score Status/Label for DILI CV GSH Alb Casp LDH Cerivastatin >3.00 >3.00 >3.00 1.32 0.71 0.03 3 WDN Lumiracoxib 479 537 525 562 339 22.47 10 WDN Troglitazone 288 182 132 295 209 6.39 7 WDN Trovafloxacin >408 64.6 >408 33.1 45.7 4.08 7 WDN Dacarbazine >2196 >2196 >2196 >2196 >2196 43.91 0 BW Ketoconazole 123 56 26 112 83 7.0 12 BW Lapatinib >105 >105 >105 >105 38.9 4.18 3 BW Nefazodone 102 65 55 69 54 4.26 10 BW Sunitinib <111 <111 <111 <111 <111 70.8 15 BW Tolcapone 204 151 132 204 112 16.5 13 BW Celecoxib 151 138 141 145 123 2.545 5 WP (high) Ciprofloxacin >288 >288 >288 >288 >288 11.5 0 WP (high) Erlotinib > 22 <22 > 22 <22 <22 13.79 9 WP (high) Fluconazole >882 >882 >882 >882 >882 8.82 0 WP (high) Imatinib 112 123 67.6 56.2 42.7 2.71 8 WP (high) Itraconazole >40 >40 >40 >40 15.5 0.4 1 WP (high) Labetalol >268 >268 >268 >268 170 2.68 1 WP (high) Levofloxacin >1580 1445 >1580 >1580 >1580 15.8 1 WP (high) Nilotinib >90 <23 >90 >90 >90 3.6 3 WP (high) Posaconazole >49 >49 >49 >49 <25 3.9 3 WP (high) Temozolomide >2678 >2678 >2678 >2678 1148 26.78 1 WP (high) Voriconazole >658 >658 >658 >658 525 6.58 1 WP (high) Zafirlukast >121 >121 >121 100 77.6 1.21 2 WP (high)

Table 1    List of tested drugs and their pharmacological action and therapeutic maximum plasma concentration  (C max )
Fig. 1    Representative data from the multiparametric assay in which HepaRG cells were treated with either  troglitazone (A) or rosiglitazone (B)
Table 2    Cytotoxic effects of DILI-positive and -negative drugs in HepaRG cells.
Fig. 2    Receiver operating characteristic (ROC) curve analysis for 6 parameters in the 17 DILI-positive and 15  DILI-negative drugs
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参照

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