• 検索結果がありません。

早期英語教育における仮説形成推論の役割

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "早期英語教育における仮説形成推論の役割"

Copied!
32
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)早期英語教育における仮説形成推論の役割 漬本. 早期英語教育における仮説形成推論の役割 漬本秀樹 1 . 早期英語教育の特殊性 小学生を対象とした早期英語教育の環境は、中学校、高等学校などの英語 指導環境とはその性格が大きく異なる。文法の学習を目標においた方式、す なわち、明示的に文法規則を教え、その習熟のため反復練習させるというパ ターンがいまだに中高の教育現場では存在するが、小学生はこの伝統的英語 教育方式を受け付けない。早期英語教育の場では、適切な言語刺激を与え、 学習者自身に規則を発見させるような発見型の指導法が中心になるのであ る 。 私は 2 0 0 6年より 3年間、神戸市との提携により、灘区児童館で各年度 2 5 名程度の小学 2 -3年生 ( 7 9歳)に英語を指導してきた。指導対象者は同 ーの小学校からの児童で、彼らは「国際理解教育」の一環として学期に数回 の ALTによる英語指導があるという、現行の方式では標準的な学習経験を 持っている O 児童の L2の学習動機、心理などを十分に考慮したシラパスを 設計し、日本語を基本的に介さず英語のみによる指導方式を採用し、成果を 挙げてきた。現実に授業を展開する中で、学習者である児童が、どのような 心理的、認知的働きにより L2である英語を習得しているのか、すなわち学 習者の内面で知識の構築がどのような仕組みで進んでいるのかという基本的 な疑問に突きあたった。本小論はその疑問に対する解答を与えようとするも のである。まず、ここで授業実施例をとりあげ、内容を簡単に紹介すること から始めたい。.

(2) 文学・芸術・文化. 2 0巻 2号. 2 0 0 9 .3. ( 1 ) 授業例の抜粋. EnjoyE n g l i s hCourse第 6回 2 0 0 8年 6月 1 4日(土曜日) 1 3時 3 0分から 6 0 分神戸市灘区原因児童館. 1 . G r e e t i n g s f t e r n o o n ! (一人ひとりの子どもに声をかける) H e l l o .Howa r eyouつ Gooda Thisi sours i x t hc l a s s .W巴 a r everyhappyt os e eyoua g a i nh e r et o d a y ! 2 . R o u t i n e s1(決まり文句) “ Howa r eyou?" Ok. (カードを指差しながら). Ok,Now1w i l laskyouhowyoua r e . Ok,howa r eyou (XXX) ?と 2名 くらいに聞いてみる。反応をみて、 i n s t r u c t o rが子どもの聞をまわってこの 挨拶をくりかえす。. 3 . Song “M ikyt h emonkey". この歌は TPRを伴うので動作に注意。. Ok,L巴 t 'ss ingasong. Todaywew i l lsinganewsong“Mikythe. . Monkey." P l e a s el i s t e nt ou sf i r st 4 . Routine2Talkingaboutt h eweather天気表現の確認。 6 . Learningnewwords 身近なことばの学習。複数形のテスト。 [ z J[ s J の組み合わせテスト。. 例. af r o g " ' f r o g s,ac a t " ' c a t s. 最初に復習、そのあとテスト。テストのやり方:単数と複数を書いた対に 成ったテスト用紙を準備。 インストラクターと補助が単数あるいは複数を読み上け¥その正解率を調べ る。補助がメモする 0. 6 . Game:TPR . “ Passingt h eb a l l ". :t a k e " 7 . B a s i cv e r b s“ e l l o wmagnet,b l u emagnetと squarebox,roundboxを使 Redmagnet,y. -2-.

(3) 早期英語教育における仮説形成推論の役割. 漬本. う。先週の学習の復習。. 8 . 前置詞 i n,on,under,overの意味の理解。 l Ji son,ont h eb o x .Thebal Ji sunder,under ボールと箱を持つ。 Theba. t h eb o x . Ji sover,overt h eb o x .Thebal Ji si n,i nt h eb o x .と繰り返す。 Thebal. その後ボールと箱を使って、色々な位置に置き子どもたちに i n,on,under,. overを言わせる。次回テスト。 9 . P i c t u r ebookr 巴a d i n g . Thet h r e el i t t l ep i g sの話。ポイントは家の材質。重さと質感 heavy,l i g h t, s t r o n g,weakなどを教える。 Oknoww巴 havear e a d i n gt i m e . Wewil Jr e a dap i c t u r eb o o k .I s n ' tt h i s bookveryb i gつ Thes t o r yf o rtodayi s“ Th巴 t h r e el it t 1ep i g s . " Youknowt h i ss t o r y ? Yes,t h at 'sr i g ht . Thenp l e a s el i s t e nt omec a r e f ul Jy . Andmoveands i t aroundmeOKつ →読み手の周りに座らせる。“ S h i. . . . .P l e a s el i s t e nandd o n ' tt a l kanym o r e .. o y . " Thankyou,goodb →名前を呼んで静かにさせる。(. )s e t t l edownandbes i l e n t. st h e p l e a s e .D o n ' tt a l kOKっと何度でも注意。絵本が終わったら→ Thisi endo ft h es t o r y . Didyouenjoyi t つここで q u e s t i o n n a i r eにより理解度 確認。. 1 0 . Ending Wedon'thaveany moretime. OK,t h i si sa l l wecandof o r 'ss i n gagoodbyes o n g . t o d a y .Let. 以との授業の各項目を解説する。 60分の授業時聞を greetingから ending まで、 8種類程度の活動を配置し、各活動は 7分以内に限定する O 飽きさせ 3.

(4) 文学・芸術・文化. 2 0巻 2号. 2 0 0 9 .3. ず、テンポよく授業を展開するには多くの授業項目を短く提示するようにす る。また、 song,TP , R gameの聞に語葉、文法、構文的学習項目を組み込 む。活動の最後に「絵本の読み聞かせ」を置く。(7)の基本動詞の活動は簡単 な英語で動作を説明することで児童に基本動詞の意味を習得できるようにす ることである。 ( 8 )の前置詞の学習についても空間的な位置関係を繰り返し英 語で説明することで児童は各前置調の使用条件(二意味)を理解できるよう になる。児童に一番人気のある学習項目 ( 2 0 0 5,2 0 0 6年のアンケー卜調査、 いずれも一位「絵本」、二位「歌人三位「ゲーム」、四位 iTPRJ となって いる)である ( 9 )の「絵本の読み聞かせ」であるが、読み終わったところで子 どもたちに簡単な理解度調査と、話を要約した絵を書いてもらうことにして いる。 この「絵本の読み聞かせ」については、語葉、文法ともに充分な知識を持 たない児童が、いったいどのように話の展開を理解し、さらに語葉を習得し ていくのかについて、その充分な説明ができていない。「絵本」に限らず、 英語指導に見られる多くの言語活動が、理論的説明がないまま、その有効性 に関する議論のみが一人歩きしている現状であり、何らかの説明を提示する 必要性を強く感じた。 本論文の主旨は以下の通りである。認知科学、発達心理学などの分野. (Tomasello ( 19 9 9,2 0 0 5 ),B loom ( 2 0 0 0 ) で提唱されている「使用に基づく 言 語 理 論 J( usage-basedl i n g u i s t i c s )、「共同注意理論 J( jo i n ta t t e n t i o n. t h e o r y ) などを含む「心の理論J(Theoryo fMind) の議論や、 C r o f t( 2 0 0 7 ) の「経験の言語化J( v e r b a l i z a t i o no fe x p e r i e n c e ) の理論などを視野に入れ つつも、さらにそれらの理論の不十分な部分を、人間に付与された「仮説形 成推論能力 J( a b d u c t i v ei n f e r e n c e ) を想定することで、児童の持つ外国語 習得能力全般の理解プロセスを説明しようとするものである。 構成は以下の通りである o 2章では早期言語学習の説明に援用できるいく つかの理論を概観するともに、その限界に言及する。 3章では学習と推論の 4.

(5) 早期英語教育における仮説形成推論の役割J i 賓本. 問題をとりあげる。ここで、 2章で説明した既存の理論の限界を乗り越える 試みとして仮説形成推論を導入する。 4章では予測可能性仮説を説明する。 特に、絵本の読み聞かせをテーマにとりあけ¥どのように児童が英語の絵本 を文法、語柔知識なしで楽しむことができるのかを、この仮説により説明す る。最後に、 5章でまとめと今後の展望を述べる。. 2 . 認知(発達)心理学の見解 2 . 1 理論の概観 周知の通り、生成文法では言語習得の中心概念として普遍文法(UG) を 想定する。刺激の貧弱さにかかわらず言語能力が完成するのは遺伝的に組み 込まれた. UGの作用によるものとする立場である O 生成文法では主に文法. の原理につながるパラメータ設定という立場で議論がなされるが言語習得の 、S l o b i nらを 具体的なプロセスが示されてこなかった。一方、 Tomasello 中心とする認知心理学、発達心理学、認知言語学の立場には、言語習得に関 して次のような 2つの具体的主張を見出すことができる O. ( 2 ) ( i ) 子供たちの言語習得は孤立した連合形成や闇雲な帰納方式に求める. ことはできなし、。もっと強力な認知的学習メカニズムが備わってい. fMind) と包括的に呼ばれる。 る。これは「心の理論 J(Theoryo これには意図読み取り能力Cint e nt i o nr e a d i n g )、パターン抽出 能力 ( p a t t e r n f i n d i n gs k i l l ) が含まれる。 ( u ) 成人の言語能力は生成文法で考えられてきたものよりもっと子供. u s a g e に接近可能なものであり、それは「使用に基づく言語観 J( basedl i n g u i s t i c s ) とも言うべきものである。 (Tomasello2 0 0 5 ). (i)についての議論から始めよう O 子供は 9ヶ月を過ぎるころに、子供と養育 者という 2項的関係から進み、共通の注意の枠組の中に第 3の対象を捉える 5.

(6) 文学・芸術・文化. 2 0巻 2号. 2 0 0 9 .3. ことができるようになる O 子供は他者と相互に関心のある対象、事態に対し て、注意を共有できる能力を身につける O この共同注意を基盤にして言語記 号 (symbol)を学習していく。言語コミュニケーションでは記号の使用を 前提とする。記号とは第 3の事物を示す道具であるが自分と他者との意図理 解を必要とする。「その本!Jという言葉を聞いたとき、相手の意図、すな わち「私が本に注意を向けるという私の注意状態の変化の要請」という意図 を理解しなければならなし、。同時に、自分が言葉を使用する場合、相手にこ ちらの意図を理解してもらう必要がある。このような相互の意図の理解を可 能にする能力を「意図読み取り」という ( Tomasello2 0 0 5 )。この「意図読 み取り」能力が備わることが言語記号習得の基盤となる。 言語習得に必要なもう一つの認知能力は「パターン抽出能力Jである。人 聞は言語記号を構造化して使う。構造として理解するにはパターンを見出さ なければならない。多くの研究が子供は類似性をもっ対象、事態の知覚的、 概念的カテゴリーを形成できる能力を持つことを示している。簡単に言う と、似たものを集めてーくくりにできるということである。また、行動を知 覚し記憶する中で、繰り返し現れるパターンを取り出しスキーマ化すること もできる。 ( Tomasello1999,2 0 0 5 )。 我々は早期英語教育の学習者である小学生にも「意図読み取り能力 Ji パ ターン抽出力」ともに十分備わっていると考える。このような認知能力は生. 後 9ヶ月頃発現し、衰えることなく機能するからである。 ( i i)についての議論に移ろう O 認知心理学派では言語を記号中心 l こ捉え、文. 法を派生的にみる O 言語の構造、つまり文法は使用のなかで形成され、蓄積 されてきたもので、個人レベルでは遺伝的に伝えられるというのではなく社 会文化的に伝承されるものとする。この立場を「使用に基づく言語観」とい うO つまり、(i)との関係で言えば、基本的な認知能力である「意図読み取り 能力 Ji パターン抽出能力」自体は種に固有のものとして遺伝的に伝えられ る。これにより言語習得はある言語の使用環境において個人レベルで進行す -6.

(7) 早期英語教育における仮説形成推論の役割 漬本. る。初期には項目ベースで、そしてやがてパターンの抽出により構造が与え られるとするのである。. 2 . 2 総括と明確にすべき点 さて、以上の議論を総括し次章以降の課題を明確にしておこう。. Tomaselloら認知心理学系の研究者は基本的な認知能力と使用に基づく言 語形成により言語が習得されるとするが、彼らが前提とするいずれの能力も 人間に基本的に備わっているものと予想される。また、その言語観もLlの 言語習得のみに関与すると制限的に捉えなければならない理由はない。つま り、認知心理学系の見解は L2についても適用できる。. しかし、基本的な認. 知能力が与えられたとしても、子供は、大人の言語記号の使用からその意味 をどのように発見していくのかという「発見のプロセス Jが説明されていな い。言語記号の使用とその意味を結び付けるにはなんらかの推論が必要であ ることは T omasello自身も認めている (Tomase l l o2 0 0 3:2 5,8 9 )。しかし それは関連性理論 ( S p e r b e r& Wilson1 9 8 6 ) への言及にとどまり、正確な 描写をしていない。したがって、明らかにすべきことは、基本的な認知能力 を前提にしながら、さらに「発見のプロセス」を提示することである。次章 において、我々は早期英語教育の授業実践における取り組み(授業観察)か ら、仮説形成推論を想定し、これにより第二言語習得プロセスの中に認めら れる「発見のプロセス」を形式的に説明する。. 3 .. 言語習得と推論. 中学校以降でみられる学習状況と児童英語教育の根本的違いについて再度 考えてみよう。前者は文法規則を所与のものとして与えられ、その規則を演 習を通じて定着させることが学習の中心である O ところが、児童英語教育で は子供に規則を与えるのではなく自分で発見させることが必要となる。具体 例から推論の必要性を確認したい。紹介する授業サンプルは神戸市灘区児童 7.

(8) 文学・芸術・文化. 2 0巻 2号. 2 0 0 9 .3. 館2 0 0 7年 4月から 8月までの実践の一例である。対象児童は英語学習歴の. 8人、担当講師は著者と著者の児童英語ゼミ所属の学生 ない小学校 2年生 1 5人である(ただし、「絵本の読み聞かせ」の対象児童数は 2 0 0 6年 4月から 2 0 0 8年 7月までの総数)。. 3 . 1 基本動詞、前置詞の概念発見学習 児童による英語の語の概念、規則発見の様子を基本動詞、前置詞の順で素. e a r n i n g ) に学習していくようになっ 描する O 語は項目ごとCitem-basedl ている O. ( 3 ) “ t a k e " の指導例 目標:t a k eの 2つの意義を習得させる. t a k e+X:Xを取り出す、 t a k e十 X+ωY:Xを Yに持っていく 素材設定:空き缶に 4個の色っきのマグネット(赤、黄、緑、青)を入れておく。 教室の隅に丸い空き缶、四角の空き缶を置く O 講師 1:O k.c l a s s .nowwea r egoingt oshowyousomethingvery. i n t e r e s t i n g . Watchc a r e f u l l yands e ewhatwew i l ld o .OK? S e e .1have4magnetsi nt h i sb o x .Whatc o l o ra r ethey? 児童. :Y e l l o w .r e d .greenandb l u e .. 講師 1:O k .howmanymagnetsa r et h e r e ? 児童. :F o u r .. 講師 1:G ood. Nowwatchveryc a r e f u l l y .Okつ. Ayu (講師 2) .comeoverherep l e a s e . AndTAKE t h er e d magnet. 講師 2:O k . (といって赤いマグネットを取り出し、児童たちに見せる) 8.

(9) 早期英語教育における仮説形成推論の役割 漬 本. →他の色のマグネットの「取り出し」についても同様に例を示す。 講師 1:O k . Nowp l e a s eputa l lt h emagnetsbacki n t ot h eb o x .. a r e f u l l y . Ayu,t a k et h er e do n e . C l a s s,watchagainveryc 講師 2:Herei ti s . (赤いマグネットを取り出し児童に見せる) 講師 1:Ok,t a k et h er e dmagnett ot h esquareboxovert h e r ei nt h e. corner . →他の色のマグネットについても「取り出し JI もっていく. Jについて. も例を示す。. 以上の活動の後、講師の指示により、 3グループに児童をわけ、児童一人ひ とりに ( i ) 箱からのマグネットの取り出し、(i i )それを教室隅の指定の箱まで 持って L、く、という 2種類の指示を英語で与えた。これを「聞く. 反応. i s t e nandresponda c t i v i t y:LRA) と名づけた。英語の指示は聞 活動 JO き返した場合、 2度まで繰り返した。指示のあとの児童の反応の正答数、観 察(児童のつぶやきゃ他者との関わりなど)を記録した。その結果は下の. 4にまとめた。「マクネットの取り出し」は全員(18人)が正確に反応し た。「マグネットをもって行く」動作では四角の箱と丸い箱の取り違いを 3 人がしたが、そのほかの児童は正しい反応を示した。我々は基本動詞として. t a k eの実施以前に putを目標とした指導を行い、同様なモデル提示、 LRA を実施し高い反応結果を得た(ただし基本動詞の L R Aは翌週も行ったが. 2週目は正確な反応の割合が低下していた)。. ( 4 ) 基本動詞 LRA成績(小学 2年生全員英語学習歴なし。男 5人、女 13 人計 1 8人) I te mc o n c e p t. LRA結果 2回目実施日 対象児童数 LRA結果. qr臼 円. 1 6. 1 3 / 1 6. 6 / 9. 1 4. 1 0 / 1 4. tf. T a k e ① Xをとる. //// i ' nhU 円. P u t XをYに置く. 初回実施日 対象児童数. 1 8. 1 8 / 1 8. 7 / 1 4. 1 6. 1 6 / 1 6. 9.

(10) 文学・芸術・文化. 2 0巻 2号. 2 0 0 9 .3. 1 5 / 1 8. ②XをYIこ持っていく. 1 2 / 1 6. 以上の基本動詞の他に前置詞 o n、 u n d e r、i n、 o v e rについても基本動詞 と同様の、モデル提示、その後. LRAによる確認という作業を実施した。こ. れは講師が“Them agneti sON,ONt h ed e s k " と発話後、実際の動作を行. n d e r,o v e rに変えて行う(inの場合は う。これを 2同繰り返し、前置詞を u agneti sIN,INt h eb o x " )。その後、児童一人ひとりの前にミニチュ “Them アの机、箱、マグネットを置き、講師が英語で指示しながら動作を行い児童 も一緒に動作をする。これを 2岡繰り返す。次に講師が前置詞をランダムに 選択し英語で指示を出す。児童の. LRAを確認、記録という作業である。以. 下に結果をあげる。. ( 5 ). 前置詞. LRA成績 On. n I. l t e m. c o n c e p t X の上 l こ(密着して) X の中に 初回実施. U n d e r O v e r Xの下 l こ X の上方に. 7 1 1 4 児童数 1 6. 1 4 / 1 6. 1 6 / 1 6. 1 3 / 1 6. 6 / 1 6. / 2 1 児童数 1 4 2回目実施 7. 1 2 / 1 4. 1 4 / 1 4. 1 1 /1 4. 8 / 1 4. 上の結果で、 o v e rの成績が悪いが、 onとの区別がつきにくいためと思われ. agneti so v e r,o v e rt h ed e s k " という指示でもミニチュアの机 る。“Them の土にマグネットを置く児童が多数いた。近接する概念の習得には時間がか かるようである。また、 DVDの記録を繰り返し確認するうち興味深いこと. hemagneti so v e rt h ed e s k " に対し、一人の を発見した。講師の指示:“ T e rt h ed e s k,o v e rt h ed e s k " といいながら手に持っ 児童が両隣の児童にも v たマグネットを上げて見せたシーンが出てきた。これにより両隣の児童も. onとの区別が了解された様子であった。言語学習が Vygotskyの言う社会 文化的共同作業であることの一面を見た思いがした。動作時に児童のつぶや 1 0.

(11) 早期英語教育における仮説形成推論の役割. 漬本. く声も多数記録されているがこれも内的発話 ( p r i v a t es p e e c h ) としての性 格を帯びていると思われる。. 3 . 2 絵本の読み聞かせ さて、児童館での授業実践の全てを紹介する紙幅はないが、もう一点言及 しておきたし、。それは「絵本の読み聞かせ J( p i c t u r ebookreading:P B R ) である。児童館での実践では毎回約. 7分 間 程 度 PBRを実施した。語、構. 文、話のあらましなどを日本語でまったく説明せず、絵と児童の想像力にの. r i c k,straw,gingerbreadなどという、日 み頼った方式である。もっとも b 常生活で見る機会が少なく、想像の範囲を超えるものは極力実物を話の前に 提示した。絵本の読み聞かせの後、直ちに調査票により児童の理解度、興味 の程度を調査した。使用した絵本の一覧と一枚の絵あたりの語数、理解度、 6 )にまとめている O 興昧の程度を、下の (. ( 6 ) 絵一枚あたり語数. 話の理解度. 興味度. B r o w nB e a r,B r o w nB e a r,Whatd oy o us e e ?. 1 5. 5 ) 3 . 8(調査数 3. 3 . 1. T h eH a r ea n dt h eT o r t o i s 巴. 1 7. 6 ) 3 . 7(調査数 3. 3 . 1. T h eU g l yD u c k l i n g. 1 5. 4. 3 . 4(調査数 1 8 ). 3 . 4. T h eT h r e eB i l l yG o a t sG r u f f. 1 4 . 3. . 4(調査数 1 9 ) 3. 2 . 4. G o l d i l o c k sa n dt h eT h r e eB e a r s. 1 9 . 3. 3 . 1(調査数 3 6 ). 3 . 4. T h eG i n g e r b r e a dMan. 2 6. . 4(調査数 5 1 ) 3. 4 . 2. T h eT h r e eL i t t l eP i g s. 2 5 . 2. 7 ) 3 . 5(調査数 3. 4 . 1. T h eP i e dP i p e ro fH a m e l i n. 3 2 . 6. . 4(調査数 1 8 ) 2. 3 . 6. (基準:1 :まったく分からない/まったく面白くない、 2 :分からないところがあった/面白いと ころもあった、. 3 :だいたい分かった/かなり面白かった、 4 :よく分かった/とても面白かった). 1 1.

(12) 文学・芸術・文化. 2 0巻 2弓 2 0 0 9 .3. 調査対象は 2 0 0 6年 4月から 2 0 0 8年 7月までの総児童数 5 5名で、調査数に ばらつきがあるのは、年度により使用した絵本が異なるためである O 絵本の 理解プロセスは 4章で詳しく議論する。ここでは英語の語葉、文法知識の之 しい児童が、日本語の説明もあらかじめ与えられこともなく英語で説明され ることで、基本動詞、前置詞、そして絵本の意味を理解できる仕組を考える こL 。 、 ことにし f. 3 . 3 言語学習と推論 言語学習に関連する推論について議論する。推論には、一般に、演緯的. d e d u c t i v ei n f e r e n c e ) と 帰 納 的 推 論 C inductivei n f e r e n c e ) が認 推論 ( められている。哲学者のパースは、さらに、仮説形成的推論 ( a b d u c t i v e. i n f e r e n c e ) を付け加えた。以下、簡単にこれら 3種の推論について説明す. r. J )。 る(内田編(19 8 6 ) パース著作集 2 演鐸の特性は「前提に提示されている事実は、想像し得るあらゆる状況に おいて、その結論の真理を含意せずには真となることはできないというこ と、したがって、それは必然性の様相によって受け入れられるということ」. 7 8 ) にある。演鰐はそれ自体では事実の真理の決定にはかかわらず、実 ( 2 .7 在の世界に対する情報はなにも提供しな L、。結論は前提から解明的、分析的 寅鐸の分析的、解明的性質に対して、帰納と仮説形成推論 に導き出される。 i は「拡張的」と呼ばれる。この 2つのタイプの論証は実在世界に関する経験 的知識の拡張的機能を持つからである。 帰納とは、「あることが真であるようないくつかの事例から一般化を行い、 そしてそれらの事例が属しているクラス全体についても同じことが真である. 2 . 6 2 4 ) を L寸。科学的仮説は帰納的一般化によって機械 と推論する場合J( 的に導き出されるのではない。帰納は観察された事実を検証する方法だから である O 以上の 2つの推論をドにまとめておく。. 1 2.

(13) 早期英語教 7 4 1における仮説形成推論の役割J i 資本. ( 7 ) ( a ) 演緯推論 (DeductiveReasoning). A→ B A B. ( a ) 帰納的推論 C I n d u c t i v eReasoning) [ A→ B J [, [ A→ B J ". ・…ー. [A→ B Jn, 時 A→ B. ( 7 a ) の演躍的推論は iAならば BJ が前提されている場合、 iAJ が存在 BJ が導き出されることを述べている。結論 IBJ は分 すれば、そこから I 析的、解明的に導出されるのみで、新事実や経験を生み出すものではない。. A:雨が降る、 B:道が濡れる、というとき、実際、雨が降る、そうすれ. 7 b ) の帰納的推論は、 ば道が濡れることが推論されるような場合である。 ( iAJ が IBJ と同時に経験され、そのような経験が蓄積されると、その経験 を一般的なこととして拡張するプロセスを示している O これには理論上、す べてのケースを上げられるものと、限られた不完全なケースを取り扱う場合 がある。後者の不完全帰納文の一例として、いわゆる総称性をもっ文があげ られる。たとえば、ある「犬」を見たとき、それが「忠実だ」という経験を し、同様の経験が蓄積されると「犬は忠実だ」という経験則になるような場. sadog、 B:xi so b e d i e n tの時、「それが犬なら 合である。この例で A :xi ば忠実だ」という経験を A→ Bが表し、それを何回か経験されるうちに、演 鐸的なルールとして固定されるような場合である。 第 3の推論である仮説形成推論とは探求の過程の最初の段階で起こるもの. である。ある意外な事実の観察からその事実がなぜ起こったのかを説明し得 ると思われる仮説の提案を行うことである。帰納との違いは、帰納はその仮 説が正しい説明となっているかを事実に照らして実験的に確かめる論証であ る。仮説形成推論の形式は、 ( i )意外な事実 ψがある、 ( i i ) α ならば ψである、 (出)ゆえに、 αである、というように後件から前件への逆行推論である。'-' でA l i s e d a( 2 0 0 6 ) に従って仮説形成推論を定式化する。 1 3.

(14) 文学・芸術・文化. ( 8 ) 表示レベル. 2 0巻 2号. 2 0 0 9 .3. θ, ψ→ α. 推論プロセス. ( a ) ABDUCTIVENOVELT Y θ + ψ. ( i)ψ ( i i) θ , α →. φ. 出 () α. ( b ) CONSISTENCYθ -f+ ~ψ. θ:既存の知識(知覚状況)、 ψ:観察事実、. α:推論結果. ここで θは既存の知識、 φは観察事実、 αは推論結果をそれぞれ示すものと する。仮設形成推論は、 θという既存の知識(これには今眼前で目にする状 況も含まれる)と、新奇な観察事実 ψから、推論の結果 αを導出するという もので、表示のレベルでは. e , ψ→ αと記述される。しかし、プロセス自体. をよく眺めてみると、 θ, α→. ψと示されるように、. θという環境で、 αで. あれば ψといえる、だから観察事実 ψを説明するためには、 αだろうと推論 しているのである。仮説形成推論式では論理的必然性はなく、 αを導出する ことは誤りの可能性がある。したがって、仮説形成推論は「弱 L、種類の論証J. ( 2 . 6 2 5 ) であり、その検証に帰納推論が使われる。仮説 αが誤りであれば仮 l i s e d a( 2 0 0 6 ) 説 βを提案する O この繰り返しで事実の発見が実行される o A によれば推論の帰結 αには事実や規則が含まれる(ib i d . 4 6 )。 上記の定式はパースの仮説形成推論をコンパクトにしかも的確に捉え ている O あ る 新 事 実 ψは 既 存 の 知 識 で は 説 明 が で き ず (ABDUCTIVE. 8 a )) 、 し か し 既 存 の 事 実 に 違 反 す る こ と は な い NOVELTY→ ( (CONSISTENCY→ ( 8 b )。 ) ースのあげた例からさらに考えてみよう。散歩している時、道が濡れて. ノf. いることに気がついた、とする。この時、「道が濡れている」が観察事実 ψ である。ここで「雨が降れば、道が濡れる」が α→. ψである。これに気づき、. 「ああ雨が降ったのだな」と推測するのが仮説形成推論であり、この時、観 察事実 ψから逆方向に推論し αを導いていることに注意していただきた L 。 、 14-.

(15) 早期英語教育における仮説形成推論の役割 漬本. これは論理必然性のない、いわばあてずっぽう的推論であり、本当はだれか が道一面に水を撒いただけかもしれないのである。しかし、この仮説形成推 論は弱い仮説形成といわなければならなし、。 α→ ψは既存の学習知識の中に. 8 a ) の ABUDUCTIVE あり、その存在に気づいただけであるからである。 ( NOVELTYが完全には守られていな L、からである。それでは強い仮説形成 推論とはどのようなものであろうか。ある人が高い山中で貝殻の山を見つけ たとする O 普通、 l lJに貝殻はないので新奇な発見である O そこで、「もしこ こが海なら員殻があるのは自然だ」というように考えた(地学の授業を思い 出したのではなく、まったく初めて思いついた)とすれば、 α→ ψという ルール自体を発見し、それを適用して、観察事実 φから αを導出したことに. TYの制約にも違反しない。 なる。これは ABUDUCTIVENOVEL 一般に科学法則の発見はこの強い仮説形成推論である。天体の運行観察. (φ) から、「地球が回る (α) なら観察事実 (ψ) の通りになる」、つまり. α→ ψを発見し、そこから「地球は回る」という結論に到達するような場 合、典型的な強い仮説形成推論になる。この場合、発見対象は、 αだけでな く、推論規則 α→ ψでもあることに注意されたい。 それでは言語学習の場合、どのタイプの仮説形成推論が作用するのだろ うか。新しい言語情報に触れた学習者の状況、たとえば、基本動詞の学習 の場面を思い出してみよう。講師が英語の発話に続いて箱からマグネット をとりだす。児童は講師の何かを示そうとする意図を明瞭に理解する。これ は「意図読み取り能力」が備わっているからである。しかしながら、音形. [ t e i k ] を聞いてもその意昧はその時点で不明である (NOVELTY)。しか し、それが既存の知識体系、その場の観察事実から逸脱している理由はない. (CONSISTENCY) と講師の意図から推察する. O. そこで学習者は共同注意. t e i k ] を結び 枠組み内で説明をさぐる。そして「取り出す」という概念と [ つければ、状況は一転し、理解可能になることを発見する。その結果 α →. ψ形式で表示される [ Xを取り出す]→ [take十 X ] という語規則を記憶す 1 5.

(16) 文学・芸術・文化. 2 0巻 2号. 2 0 0 9 .3. る。これが強い仮説形成的推論による言語表現理解の仕組みである。 一般に語、文型、抽象的構造をすべて「言語コンストラクション」と呼ぶ ならば、言語コンストラクションは P→ Q の形式で表示可能である。ここ で→は、質量合意、論理含意、確率などではなく、単なる概念と音表示の恋 意的結合を示す。上記の [Xを取り出す]→ [take+XJ も言語コンストラ クションであり、その本質は. L 意味]と[形式]のマッピングである。すべ. ての辞書的記述も[意味]→[形式]と表現できる。さらに、いわゆる、文 法規則も意味(機能)と言語形式の結び、っきであるから[意味]→[形式] で表現できる。例えば、現在進行形の文法規則も、「眼前で X が行為 Vを進. Xi sV i n g J という形式を対応させる 行中である」を意味機能とする時、 i ことと表現できるから、 ( 9 )のような表現が与えられる。. ( 9 ) 現在進行形規則. [眼前で X が行為 Vを進行中である]→ [Xi sVingJ. これは語柔規則とまったく変らない形式を持つ。ここから直ちに理解される ことは、中学校以降の文法授業とはこのような文法規則を所与として与えら れ、それを課題に適用するという演鐸的推論に依存した学習パターンである ということである。下に例示する。. ( 1 0 ) 演鐸型文法学習. 例)現在進行形の表現. R 1 課題. Xが動作 Vを眼前で進行→ Xbe+Ving. ルールを与えられる. 京子が今泳いでいる. Kyokoi sswimming. モーダス・ポーネンス型演鐸的文法学習では文法規則を所与のものとし 1 6.

(17) 早期英語教育における仮説形成推論の役割. それに課題をあてはめていく. O. i 資本. この例では「動作 V が眼前で進行する場. 合、それを記述するには b e十 Ving形を使う」という規則 (Rl)を所与の 前提とし、それに作文課題を適用し、英訳を得るプロセスを示している。ここ では学習者は文法規則を与えられ、それに習熟することが学習の中心になる。 一方、母語の習得や、早期の言語教育では仮説形成型の推論が関与すると予想 される。その確認の前に、仮説形成推論と帰納推論の結びつきを見ておこう O 一般に仮説形成推論プロセスで発見された規則は帰納的推論プロセスにま わされ、そこで多数の例においてその規則をあてはめてみて、それが妥当で. a k eの例でいえば、講師の多数の t a k eの使用 あるかどうかが検証される。 t 実例を聞く過程で、また自分で講師の英語指示に合わせ動作をしてみる過程. take+XJ という規則が検証され、初めて記憶に で 、 [Xを取り出す]→ [ 貯蔵されると考えられる O 以上のことをモデル化し、「言語習得エンジン」 とも言うべきサイクルとして図示してみよう。これは 2章での認知理論を前 提とし、仮説形成推論と帰納推論を組み込んだものである。. ( 1 1 ) 言語学習エンジン A budactivep a r t I n d u c t i v ep a r t 観察. " ' 0 . .. 事実。~. =争制改法規則). 観察事実 ψ がこの機構に刺激として入力される。規則発見サイクルで既存 知識 θを前提とし、 α→ ψという規則を取り出す。これが検証サイクルに入 力され、何度かの検証の後、文法規則として出力される。次に、推論のパ ターンと言語学習の関わりを検討してみよう。 一般に文法中心に組み立てられた授業では、講師が文法の規則を覚えるべ き対象として示し、学習者は練習問題を解くことでその規則に習熟するとい 1 7.

(18) 文学・芸術・文化. 2 0巻 2号. 2 0 0 9 .3. う形態が多し、。これは単純化してみると演鐸推論を利用した学習形態と考え ることが可能である。一方、母語の習得や、早期の言語教育では仮説形成型 の推論が関与すると予想される。そこでは学習者はルールを与えられず、自 らそれを発見する O 基本動詞 t a k eの学習プロセスを例としてその仕組みを 確認しよう。. ( 1 2 ) 仮説形成型言語学習. 知識と知覚情報. K. ( a ) ABUDUCTIVENOVELTY:K-+>ψ. 英語の発話. U. ( b ) CONSISTENCY. 英語表現の意味. M. K-+>~ 。. (j)“1'1t a k et h er e dmagnet" ( j ) 日 ( i i ) K. ( i i ) “ t a k e "ってどういう意味?取り出している!. ( i i i ) M. ( i i i ) あっ. I取り出す」→匂k eということか(発見). 以上の形式も説明の必要がなし、かもしれないが、簡単に述べると、(j)新奇の. a k et h er e dmagnet" を聞き、その時点では既存の知識から 言語経験“1'1t t a k eの意味が分からない (ABDUCTIVENOVELTY)、しかし、(ii ) 講師の 「赤い磁石を取り出す」という行為を観察し、 ( i i i )I 取り出す」→ t a k eとい う語葉規則を発見する、というものである。 以上の議論で分かるように、文法形式の学脅に特化した授業展開はモーダ ス・ポーネンス型の論理処理に依存したものであり、そこでは文法規則は、 学習者に「こういう形式にはこういう意味がある」ことが提示されるので、 その時点で新規性が失われる。つまり、形式と意味が同時に提示され、発見 の対象というより、問題解決の際に頼るべきルールとして理解されるのであ る。一方、幼児の母語習得や母語を介しない早期英語教育では、言語形式と 意味の対応は学習者に任される O つまり、学習者は仮説形成により規則を発 1 8.

(19) 早期英語教育における仮説形成推論の役割 漬本. 見し、帰納的に検証し身につけていくのである。この発見のプロセスを 2章 での諸理論と対応させれば次のようにまとめることが可能である O. 間まとめ (i)学習者の持つ能力として前提するもの ( a ) 認知能力系:意図理解能力、パターン発見能力、情報の言語化能力 ( b ) 論理推論系:仮説形成推論能力、帰納推論能力、演鐸的能力. ( i i ) 言語学習の二.つのパターン. ( a ) 演鐸的文法学習:中学以降の英文法学習 ( b ) 仮説形成的文法学背(習得):母語習得、早期英語学習. 4 . 予測可能性仮説 C P r e d i c t a b i l i t yH y p o t h e s i s ) 多くの実践家が主張するように(たとえば L i n s e( 2 0 0 7 ),H s i u C h i h. ( 2 0 0 8 ) など)、英語の絵本の読み聞かせは非常に有効な早期英語の手段であ るが、なぜ文法知識も語棄も習得していない学習者が、話を聞くだけで、話 の流れを理解し、英語の表現も習得していけるのかはあまり議論されてこな かった。本章ではこの「児童の絵本理解の仕組み」に議論をしぼって話を進 めることにする。 児童は絵本の話の理解に際して、個々の情報を下から積み上げていくボト ムアップ式ではなくトップダウン型理解を用いているようである。英語の語 葉、文法とも之しく、下からの積み上げが望めないのである O それでも児童 は絵本の読み聞かせを喜んで受け入れる。現場での指導を続けていくうち、 絵本の場面をスクリプト理論的に捉えるのではなく、もっと根本的な構造が 絵本にはあり、それをほぼ直感的に児童は了解していると思えてきた。絵本 理解に関する子どもたちのこの直感を、「予測可能性仮説 J( P r e d i c t a b i l i t y. H y p o t h e s i s ) としてまとめてみたい。ここには前章までに出てきた仮説形 成推論を核に、物語の基本構造と認知的方略を包括したものを構築する方向 1 9.

(20) 2 0巻 2弓. 文学・芸術・文化. 2 0 0 9 .3. 性を示す。 絵本理解のプロセス解明に向けて、 5つの関連する側面、要因を予測可能. P r e d i c t a b i l i t yHypothesis) としてまとめてみる O これらの要因 性仮説 ( は相互に関連し、絵本の予測可能性を形成している。以下でこの仮説が内包 ( 1 4 )参照)を概説する。 する 5つの側面 (. 1 ( 唱 Pr 巴d i c t a b i l i t yHypothesis ( i ) 静止画の効果. 指示対象の同定. ( i i ) 繰り返し表現 i ( 証)物語の基本構造. 二項対立と変化. ( i v ) 経験の言語化理論 ( v ) 仮説形成推論. 4 . 1 静止画の効果について 視覚イメージと音声を伴う刺激は、それぞれの単独刺激よりも学宵経験と. ale ( 19 4 6 ) で述べられ して学習者に受け入れやすいということは EdgarD ている O 彼は、さらに学習者の注意が高まることも指摘してる。我々もこの. 2年間、絵本に対する集中度が、それ以外の活動よりも高まることを経験し ている。教室内で私語が多く、注意すると横になってしまう児童でも、絵本 となると急に注意度が高まることを何度も経験した。静止画の効用は、その 指示対象同定の容易さにある O 初出の単語が多数でてくる絵本の場合、語と その指示対象を指で示しことができる利点がある。たとえば、“Therewas. aknockinga tt h edoor . " "Comei n . "" I n t ot h eroomcameastrange l o o k i n gyoungmanwithap i p e . Heworealongc o a tfromh e e lt oh e a d . H i sc o a twash a l fo fyellow,h a l fo fr e d " というハメルーンの笛吹きの登場 t r a n g el o o k i n gyoungmanで場面中央 場面では、ノックの音のあと、 as の対象を指さし、奇妙な服装を指差して示すことができる O この場面情報が 2 0.

(21) 早期英語教育における仮説形成推論の役割l 漬本. なければまったく理解に程遠くなる。静止凶i が動画に対して優位な点は、語 とその対象を指示できること、児童の理解を見ながら繰り返し説明できるこ と、児童の場由正里解に必要な時間をとれることがあげられる O ただ動作の説 明では、指でその動作をしてみせる必要が出てくる O 指では説明しくい動作 の場合、登場者の切り抜きを作って、それを動かして見せることで静止画の 欠点を補うことも行う。. 4 . 2 表現の繰り返し効果. L i n s e( 2 0 0 7 ) は、もともと英語を母語とする幼児のための絵本を、第二 言語、あるいは外国語としての英語を学習する児童に適用する場合の有効性 を議論し、教材としての有用性を生み出すのはそこで使用されている言語の 特徴にあるとしている。その特徴とはリズミカルて、繰り返しの多い英語表現 ということである。繰り返し表現の例を下にあげてみる O. ( 1 5 ) ( a ) BrownBear,BrownBear,WhatDoYouS e e ?( B i l lMartinJ r& E r i cCar 1e ) e e ? BrownBear,BrownBear,Whatdoyous Is e ear e db i r dl o o k i n ga tme. i r d,Whatdoyous e e ? RedB i r d,RedB Is e eayellowduckl o o k i n ga tme e e . YellowDuck,YellowDuck,Whatdoyous Is e eab l u eh o r s el o o k i n ga tme. B l u eHorse,BlueHorse,Whatdoyous e eつ Is e eagreenf r o gl o o k i n ga tme. (以下略) ( b ). GingerbreadMan Run,Run,Runa sf a s ta syouc a n . 2 1.

(22) 文学・芸術・文化. 2 0巻 2号. 2 0 0 9 .3. Youc a n ' tc a t c hme. I 'm t h eGingerbreadMan. ( c ) Godilocks. . Thisbedi st o os o ft Thisbedi st o oh a r d . Thisbedi sj u s tr i g ht . ( d ) TheThreeL i t t l eP i g s Then1 '1h u f fand1 '1p u f fand1 '1blowyourh ousedown Andheh u f f e dandhep u f f e dandheblewt h ehousedown! i t t l ep i g,l e tmei n L i t t l ep i g,l Byt h eh a i ro fmychinny,c h i n,c h i n,1w i 1 1notl e tyoui n. 繰り返しの部分には、 ( a )のように同ーのパターンの反復 (Xl,Xlwhatdo. yous e e ? 1s e巴 aX2l o o k i n ga tme.X2,X2…)と、語句そのものの繰り返 しとの 2つのケースがある。いずれの場合でも児童は繰り返しから次に来る b ) ( c )の例では、小学校 3年 表現を予測し、口に出して言えるようになる o (. 生に一度読み聞かせたとき、この繰り返し部分の合唱ができるようになっ た。このような繰り返しの多いものはもともと幼児用に作られており、. EFL. でも小学校低学年での使用に向くようである。さて、繰り返される表現は、 当然一つの場面情報と対になっている。。繰り返されることで、絵からの視 覚情報と音韻情報が何度も提示され、したがって結合されやすいことは当然 予想される。また、繰り返される表現は、場面に対応した意味まとまりをも っ語や語句の集合で、符号化の際には、心理的処理の単位として働くことが 期待される。そうすると、繰り返し表現はチャンクとして捉えることができ るのである。絵本から与えられるのは、一つ一つの単語の場面からの情報だ けでなく、場面を一つのまとまりある意味単位としたものもあり、それは チャンクと対応するのではないかと思われる。言語処理単位としてチャンク には諸説あるが、チャンクは言語獲得で大きな役割を果たしているという主. 2 2.

(23) 早期英語教育における仮説形成推論の役割J I i 賓本. 張 ( E l l i s( 2 0 01)など)がしばしばなされている。子どもの言語獲得の初 期においては耳から入力される語を認知し、識別するだけでなく、とりあえ ずチャンクで記憶し、そのチャンク単位で発話されることが観察されてい る。しかし、物語が複雑化した絵本では繰り返しの要素がまったく認められ ないものも多くあり、その場合、思Ijの方策で子どもはストーリー展開を把握 して L、かなくてはならない。. 4 . 3 物語の基本構造. 2項対立と変化. 物語理解にはスクリプ卜理論や物語文法の理論があげられる。ここでスク リプトとは、状況に関する背景知識の集合であり、物語の進展で当然予想さ れる要素を構造化したものである。たとえば「大学」といえば教室の場面や、 教科書をとりだす J1 クラスメー卜 それに関係する諸概念、「教室に入る J1 とはなす」などが浮かんでくる。しかし、絵本では、スクリプトやスキーマ が関与するにしても、もっと基礎的な構造が明瞭に観察される場合が多くあ る。「ウサギとカメ」であれば当然、競争であるから「出発点、到着点J1 審. 判J1 遅い、速し、 J1 勝つ、まける」などがスキーマ的知識として呼び覚まさ 勝つ、負ける」は 2項対立である点 れるであろう。しかし、「遅い、速い J1. 2項対立と変化」という観点で、スクリプト理論 注意されたい。ここでは 1 を絵本の物語の構造解釈により近づけて考察する。 多くの研究者たちが、 2項対立を児童の物語理解においての基本的論理 操作であるとしている。たとえばイタリアの童話作家で、児童教育の研究. o d a r i( 19 7 3 ) は、「思考は対で形成されるのであり、くやわらか 者である R し、〉は、くかたし、〉の後で形成されるのではなく、一般化の中で同時に形成 される。思考の基本構造は二重構造であり、対とか組とかは孤立した要素よ り先に来るものである。概念はその対立物なくてはありえない。また、物語 は「ファンタジーの 2項式によってのみ形成される」と述べている。またヤ. 2項対立は子どもの最初の論理操作である JC J a k o b s o n コブソンとハレも 1 2 3.

(24) 文学・芸術・文化. 2 0巻 2号. 2 0 0 9 .3. &H a l l e1 9 5 6 ) と明快に述べている。志味論学者の Lyonsも 1 2項対立は言 語の構造を支配する最も重要な原理の一つである J( Lyons1 9 7 7 ) としてい るO また佐藤(19 81)は、「ことばの意味が一番見えやす L、かたちであらわ れるのは、まさに二項対立(二分制)の形式で観察したときである」と解説 している O 言葉というものの本質が他との対比であり、児童でも 2項対立の構造を前 提とし物語の理解に努めるように思われるのである。以下で 2項対立と変化 という観点から絵本の物語構造を分析してみる。物語であるためには話の進 展で何らかの変化がなければならな L、。変化のないものは物語りではありえ な L、。変化は一つは対立関係で、の変化、または場面での変化となる。. h a p p y ) に対し、 ( n o thappy) 対立関係とは矛盾と反対の両者を含み、 ( は矛盾関係であり、 ( u n h a p p y ) は反対関係である O つまり (happy,n o t. h a p p y )( h a p p y,unhappy) ともに対立関係を形成している. O. 以下の表記. でく FAST,SLOW) と順序対の形式があれば対立関係を示すことにする。 またそれを抽象的に表示し、 ( P,-P) とすれば、概念 Pに対し Pは 、 Pの 矛盾概念あるいは反対概念を示すとする。また EMPATHYとは読者の共感 をよせる対象を示すことにする。さらに①、②などは登場者を示すことにし ておく。それでは、いくつかの物語の対立と変化の構造を見てみることにし ょう。. 日 ) 6 TheH a r eandT o r t o i s e 対立の逆転 ① E. ② 「 ① E. ② 「 ①E. ②. 1(SLOW,FAST)→ I1(STEADY,NOTSTEADY) I→ I I I(WIN,LOSE) P. P. P. -P. P. -P. ここで①はカメ、②はウサギである O 子どもたちは、 r a c eと聞いた段階で、. J1 速しリを想起する O つまりスクリプ卜全体の知識を駆 速度軸上の「遅 L、 2 4.

(25) 早期英語教育における仮説形成推論の役割 漬 本. 動する前に、関連する対立概念を呼び覚ますのである o i T o r t o i s eは遅い、. Hareは速い」ということを想起するのである O ここで第 Iステージでは対 ) で示される O それが最後の第皿ステージではくP, P) と変化 立はく P,P し、逆転している。この対立の逆転がストーリー性なのである。子どもたち は、最初の場面でく P,P) と了解した時点でその変化を予想する O その予 想が場面の理解を促進する。この対立概念の対の逆転の類似パターンを持. h eThreeL i t t l eP i g s、 L i t t l eRedHen、 t h eUglyDuckling、 つものには t TheThreeB i l l yGoatsG r u f fなど多数ある O 子どもたちは、対立の逆転を 予想し、話をそういう五向で解釈していくのである。. 日 7 ) TheVeryHungryC a t e r p i l l a rと BrownBear,BrownBear,Whatdo ?の場合:場面変化 Yous巴e. ( b ). ( a ). ①E. ⑧. 〈食べる、食べられる〉. 逗 訟 E 乏Eじ 三. n 1 ,2 ,3 , 二. 〈見る、見られる〉. a t e p i l l a r,X は食べられる対象の変数 ①は C. これらの話は幼児向けであり、 EFLの教室でも小学校低学年向けのようで. a t a p i l l a rでは腹ペコ青虫が次々と食べ物を食べてい ある。 TheHungryC earは次から次に、見る く、そして最後に蝶に変身、という話し。 BrownB もの、見られるものが置き換わっていく話しである O これらの物語でも、子 どもたちは何らかの変化を予想しているが、話の展開自体は対立の変化を含. a t e p i l l a rではく食べる、食べられる〉対立関係にあるく食べられ まない。 C earではく見る、見られる〉対立関係で、〈見る〉 る対象〉が変る、 BrownB 〈見られる〉に入る変数が推移的に変化するのである。この仕組みに子ども たちはすぐに気づき、次の場面も変化があるに違いないと予想ができる。こ れが興味をひきつけるのである。つまり、「きっと次に青虫は別のものを食. 2 5.

(26) 文学・芸術・文化. 2 0巻 2号. 2 0 0 9 .3. べるのに違いない、何を食べるのかな」という期待が興味の源泉となるので ある O. 日 ) 8 GingerbreadMan:生と死の対立 ①E. ② ①E. 1 <生まれる、 X) →. 〈逃げる、. P. y). n <食う、食われる〉 <. 死ぬ. く. つかまる〉. P. 〉. P. クッキーの G ingerbreadManが生を与えられ、生きていることを謡歌し逃 げ出すが、結局ワニ(あるいはキツネ)に食われてしまう、というお話であ. ingerbreadman、②はワニである。 Gingerbreadが食べ物であ る。①は G ることからく食べる、食べられる〉、という対立が白然に想起され、そこか らく食べられる〉がく死〉と関連つけされる。〈逃げる、っかまる〉という 対立も浮かんでくる。ただ 2項関係にたっ対立概念であるが、誕生する場面. Iでは登場者である GingerbreadManに関連つけられるのは Pのみの値で、 .Y ここで時間経過とともに Pが付与される予想が起こる。これを変数 X で表示する。ワニに食われる場面 Hでは、予想されていた P に具体的な値 が与えらる。 この話がここ 3年、子どもたちの人気ナンバーワンなのは、場面 Iで暗 示された Pが意外な形で与えられる驚き効果によるものだと思われる。こ. i t t l eMermaidがあ れに類似のパターンはもっと話は複雑であるが TheL る。そこでも人魚姫は、本来の海の固からく逃げ出す〉、その対立概念 Pが く死〉として最後の場面で与えられる。 絵本の話の多くは、このような「対立と変化の観点」でストーリー展開が 予測可能である O この 2項対立と変化の予測可能性がスクリプト理論、ス. 2 6.

(27) 早期英語教育における仮説形成推論の役割 漬本. キーマ理論よりも、より明確に絵本の持つ予測可能性を説明していると思わ れる。. 4 .4 経験の言語化理論 C r o f t( 2 0 0 7 ) は、経験という言語化以前の存在(二 thought)がし、かに 2 0 0 0,2 0 0 1,2 0 0 5 ) の「言語 言語化されるのかという問題に関して, Chafe ( 化理論Jを拡張し、「経験の言語化理論 Jを展開している。これはもともと 「経験の母語への転換Jを議論したものであるが、転換前の段階までは普遍 的な人間の経験と、その言語化までのプロセスを示しており、外国語の学宵 場面にも適用可能と考えられる。既に習得した母語での経験の言語化プロセ スは大体次の通りに進むと考えられている。. ω) 経験の言語化プロセス ( C r o f t2 0 0 7 ). ( i ) 未分化のままの経験が場面のまとまりごとに分化され、個体 ( u n i t ) や出来事 ( e v e n t ) が取り出される。 ( i i ) それに命題化作用が働き、場面に形式化がなされる。命題は、項と関. 係を要素として持っている O ( 出 ) 母語ではカテゴリー化の段階で、この命題の要素である項と関係にレ. キシコンから適切な語が検索され、あてはめられる。これにより経験 が言語化される。. 外国語の学習、特に絵本の学宵でも経験の場面ごとの分化、命題化は同じよ うに進むと予想される O この次の段階、すなわちカテゴリー化で、学背中の 語や、構造との対応がなされるというように再構成すればよいのである O こ のこと段階をおってみていくとつぎのようになる。. 側. 経験の言語化理論にもとづく絵本の命題構成プロセス. 2 7.

(28) 文学・芸術・文化. 2 0巻 2号. 2 0 0 9 .3. ( i ) 絵本の話が音声情報と視覚情報で伝えられてくるが、それは当初は未 分化の経験として知覚される O つまりボーッとした全体として知覚さ れる O. ( i i ) それが場面ごとに分化され、個体、出来事として構成される。もちろ ん、絵本では場面ごとの情報提示であるから分化は前の場面との関係 で分けられていくことになる O. ( i i i ) 次にそれに命題化が働き、場面が形式表示されることになる。話しの 展開、 2項対立からくる予測などから当初のボーッとした経験に形が 与えられていく。 ( i v ) 命題は項と関係で構成されるから、ここで音韻情報から分化された語. や語句が、推論により項と関係に対応つけられるということになる O. つまり、まったく初出の知らない語句を絵とともに知覚した場合、場面情報 で得られた出来事をまず経験としてとりだし、その経験を「こんなものだろ う」と内容を表示する命題として作り上げ、次に命題を構成する項と関係 に、聞き取った音韻情報を対応させるという一連の操作が遂行されると考え るのである。もちろん、経験を「こんなものだろう」と推測する際には、 2 項対立と変化の予 j t J J Iから、ストーリーの展開を推測しているということを前 提にする。さらに、語句に意味を対応させる際には、推論が働き、それは既 に説明した仮説形成推論によるものと考えることができる。 以上を GingerbreadManの話を例に、説明してみることにしよう。こ. i)GMが逃げ出す、 の話は、(i)GingerbreadMan (GM) が誕生する、(i ( i i i ) G Mがワニに食われる、という大きく 3つのシーンに分けられる。関係 を→で示し、図形が登場者を示すことにする。 ( i )は、ある女が G Mを作っ →口]と示 たシーンであり、「作る」を→、女を O、 G Mを口で示すと、 [0 こ、母語の場合に される。このように経験に構造が与えられるのである O 次 l →口]にカテゴリーの判断が行われ、レキシコンから適切な語が挿入 は [0 2 8.

(29) 早期英語教育における仮説形成推論の役割l 演本. されることになる。母語の場合には、経験がこのように言語化されるのであ るが、もちろん、早期英語教育では、英語での刺激であり、既存のレキシコ ンから情報を引き出すことはできない。各語の意味を見つける(語を個体や 事態に対応させる)には仮説形成推論のプロセスを経ることになる。 ( i i )で i i i )ではワニムに口が食われる、というように概念に聞い は口が逃げ出す、 (. たコトパをあてはめるのである O 絵本の特徴はスクリプト構造の単純性以外に、 ( i )絵による情報提示が言 i i)繰り返し表現が多いこと、があげられる 語による情報を補足すること、 (. 2としての英語の語桑や文法を知らない児童 のは先に述べた通りである o L は、話の予測をし、大まかな話しの流れをつかみ、分割された部分についう のである。. 2 ( ) 1 絵本の理解プロセス CGingerbreadman). 66 三コ G Mが誕生. 。守口 woman. G Mが逃げ出す. 口 ー 砂. G i n g c r b r e a d. 口←ム G i n g c r b r c a d l 1e man Crocodi. man make. G Mかワニに喰われる. run. ロ歪立豆国 12項対立と変化からの F測 │ 登場するモノ、事態白 取り出し(命題化). 概念(概念と思うもの)に聞いた コトパをあてはめてみる 仮説形成推論. 5 . 結語 以上の議論により、なぜ子どもは L 2環境で、語や文法を日本語を介して 教えられなくても、基本動詞や前置詞の意味を理解し、英語の絵本の読み聞 かせを理解できるのかについて説明できる理論を提案した。つまり、認知心 理学、言語学での知見である「心の理論」、「経験の言語化」に仮説形成推論 と帰納的推論を組み込んだ仕組みが学習者の言語宵得装置として働いている というものである。これは従来説より、「発見のプロセス」を明確にした点、. 2 9.

(30) 文学・芸術・文化. 2 0巻 2号. 2 0 0 9 .3. 一歩踏み込んだ議論になっていると思う。また、「絵本の理解」については、 予測可能性仮説という、 5つの相互に関連する要因を組み合わせた仮説群を 想定することで、子どもたちのトップダウン型の物語り理解の構造を示し. f こO さらに、ここでは述べなかったが、以上の議論に SLA理論の知見である 「意識の活性化」と「相互交流」の内容や、「社会共同的学習のための段階的 支援、随意的支援を与える足場作り」という概念を付加することで、より有 効な早期英語教育環境が形成できると思われる O この小論では理論的展開の構築を重視するあまり、データがやや不足して いる点がある。. これについては、今後さらなる研究と実験により、議論を. 一層確実なものにしていくつもりである O. 参考文献 A l i s e d a,A .( 2 0 0 6 ) .A b d u c t i v eR e a s o n i n g :L o g i c a lI n v e s t i g a t i o n si n t oD i s c o v e r yand . E x p l a n a t i o n .Springer. A l j a a f r e h,A l iandJamesP .L a n t o lf .( 19 9 4 ) .“ Negativefeedbacka sr e g u l a t i o n. . "Modern andsecondlanguagel e a r n i n gi noneo fproximaldevelopment α1 7 8,4 6 3 4 8 3 L a n g u a g eJ o u r n 目. B loom,P .( 2 0 0 0 ) .HowC h i l d r e nLearnt h eMeanings0 1Woγd s .TheMITP r e s s 19 7 7 ) . “Ther e c a l landv e r b a l i z a t i o no fp a s te x p e r i e n c e . "I nC o l e, Chafe,W. (. P e t e r( e d . )C u r r e n tI s s u e si nLin g u i s t i cTheory・ IndianaUniversityP r e s s, 2 1 5 2 4 6 . C r o f t,W.2 0 0 7 ) . “Thco r i g i n so fgrammari nt h ev e r b a l i z a t i o no fe x p e r i e n c e . ". C o g n i t i v eLi n ♂u s t i c s1 8 3,3 3 9 3 8 2 . .( 19 9 8 ) . “C o l l e c t i v es c a f f o l d i n gi nsecondlanguagel e a r n i n g . "I n Donato,R .andG .Appel( e d s . )V y g o t s k i a nApproachest oSecondLanguage L a n t o l f,P. R e s e a r c h . 3 3 5 6 3 0.

(31) 早期英語教育における仮説形成推論の役割. 漬本. Goddard,C .andWierzbicka,A,( e d s . )( 2 0 0 2 ) . MeaningandU n i v e r s a lGrammar. T h e o r yandE m p i r i c a lF i n d i n g .JohnBenjamins. Goldberg,A .( 19 9 5 ) .C o n s t r u c t i o n s :A c o n s t r u c t i o nGrammarAρ r o a c ht oAr g u m e n t. S t r u c t u r e s .U n i v e r s i t yo fChicagoP r e s s . Hauser, M.D,Chomsky,N .& W.T .F i t c h( 2 0 0 2 ) . “Thef a c u l t yo fl a n g u a g e : what t,andhowd i di te v o l v e ? "S c i e n c evo. l2 9 82 2,1 5 6 9 1 5 7 9 . i si t,whohasi .& H a l l eM ( 19 5 6 ) .Fundamentals0 1L a n g u a g e . CambridgeU n i v e r s i t y JakobsonR. P r e s s 2 0 0 4 ) .A P h i l o s o p h y0 1S e c o n dLanguageA c q u i s i t i o n . YaleUn iv e r s i t y J ohnson,M. ( Pr 巴s s. r. 川崎恵里子 ( 2 0 0 0 ) . 知識の構造と文章理解」。風間書房。. Krashen,S .D .( 19 8 5 ) . TheI n ρu tH y p o t h e s i s :I s s u e sandI m p l i c a t i o n s .Longman. , J .P .( e d . )( 2 0 0 0 ) .S o c i o ωl t u r a lTheo 旬 開d SecondLa 岬 u a g eL e a r n i n g .Oxford L a n t o l f. U n i v e r s i t yP r e s s . .( 19 8 3 a ) “L i n g u s i t i candc o n v e r s a t i o n a ladjustmentst onon-native Long,M.H. t u d i e si nSecondLanguageA c q u i s i t i o n5,n o .2 . 1 7 7 1 9 3 . s p e a k e r s ' ¥S .( 19 8 3 b ) “N a t i v espeaker/non-nativ巴 speakerc o n v e r s a t i o nandt h e Long,M.H. . "Ap ρl i e dL i n g u s t i c s4 ,n o .2 .1 2 6 1 41 . n e g o t i a t i o no fcomprehensibleinput .( 19 9 6 ) . “Ther o l eo ft h el i n g u i s t i cenvironmenti nsecondlanguage Long,M.H .andT .K .B h a t i a( e d s . )Handbook0 1Language a c q u i s i t i o n . "I nR i t c h i e,W.C. A c q u i s i t i o n,4 1 3 4 6 8 .Academic. .andP .R o b i n s o n .( 19 9 8 ) .“ Focusonf o r m :t h e o r y,r e s e a r c handp r a c t i c e . " Long,M.H .andJ .W i l l i a m s( e d s . )F ocuso nFormi nC l a s s r o o mS e c o n dL a n g u a g e Doughty,C. A c q u i s i t i o n,15-41 .CambridgeU n i v e r s i t yP r e s s J .( 19 7 7 ) .Semαη t i c s .CambridgeU n i v e r s i t yP r e s s . Lyons.. Markson,L .& P .B loom( 19 9 7 ) . “Evidencea g a i n s tad e d i c a t e dsystemf o rword l e a r n i n gi nc h i l d r e n . "N a t u r e3 8 5,8 1 3 8 1 5 .. 3 1.

(32) 2 0巻 2号. 文学・芸術・文化. 2 0 0 9 .3. A .( 19 5 6 ) . “Themagicalnumber.sevenp l u sminust w o : somel i m i t son M i l l e r,G.. s y c h o l o g i c a lReview6 3,81-97 ourc a p a c i t yf o rp r o c e s s i n gi n f o r m a t i o n . "P 8 6 ) . Irパース著作集 2 Jl勃草書房 P i e r c e .C .S 内田種目編(19 Pinker,S .&R .l ackendoff( 2 0 0 5 ) . “Thef a c u l t yo flanguag 巴 wha t 'ss p e c i a labout i t γ,C o g n i t i o n9 5,2 0 12 3 6 . Rodari,G .( 19 7 3 ) .LaG rammaticad e l l aF a n t a s i a .T o r i n o :Eunaudi. .S m i t h .( 19 8 5 ) Rutherford,W.andM.S. “C onsciousnessr a i s i n gandu n i v e r s a l. . "A p p l i e dL i n g u i s t i c s6no. 3 .2 7 4 2 8 2 . grammar .C .,& Abelson,R .P .( 19 7 7 ) .S c r i ρt ,ρl a n s,g o a l sandu n d e r s t a n d i n g . Schank,R LawrenceErlbaumA s s o c i a t e s . D .( 19 9 6 ) . “Talkingp e r f e c t l y :D i s c o u r s eo r i g i n so ft h ep r e s e n tp e r f e ct . "I n S l o b i n, .Davis,C e d s . )E s s a y si nS e m a n t i c s .OxfordUniversityP r e s s . W.P a g l i u c a& G D .( 2 0 0 4 )ー“ Fromo n t o g e n e s i st op h y l o g e n e s i s : whatcanc h i l dlanguage S l o b i n, t e l lu saboutlanguageE v o l u t i o n ? "I nLanger,S .T .ParkerandC .Milbrath. i o l o g yandKnoωl e d g er e v i s i t e d : Fromn e u r o g e n e s i st oρs y c h o g e n e s i s, ( e d s . )B LawrenceErlbaumA s s o c i a t e s 19 8 5 ) .“ Communicativecompetence: somer o l e so fcomprehensible Swain,M.(. . "I nGass,S .M.andC . i n p u tandcomprehensibleoutputi ni t sdevelopment G .Madden ( e d s . )I n ρu ti nS e c o n dLanguageA c q u i s i t i o n .2 3 5 -2 5 3 . Newbury House 2 0 0 0 ) .“ Theoutputhypothesisandbeyond: Mediatinga c q u i s i t i o n Swain,M.(. a n t o l , f] .P .C e d . )S o c i o c u l t u r a lT h e o r y throughc o l l a b o r a t i v ed i a l o g u e . "i nL 7 1 1 4 .OxfordU n i v e r s i t yP r e s s . andS e c o n dLanguageL e a r n i n g .9 19 9 2 ) .F i r s tV e r b s .CambridgeUniversityp r e s s Tomasello,M.( 19 9 9 ) . TheC u l t u r a lO r i g i n sofHumanC o g n i t i o n Harvard Tomasello,M. ( 目. U n i v e r s i t yP r e s s . 2 0 0 3 ) .C o n s t r u c t i n g al a n g u a g e . HarvardUniversityP r e s s Tomasello,M.( ηJ 臼 つ.

(33)

参照

関連したドキュメント

では,フランクファートを支持する論者は,以上の反論に対してどのように応答するこ

非難の本性理論はこのような現象と非難を区別するとともに,非難の様々な様態を説明

この小論の目的は,戦間期イギリスにおける経済政策形成に及ぼしたケイ

規則は一見明確な「形」を持っているようにみえるが, 「形」を支える認識論的基盤は偶 然的である。なぜなら,ここで比較されている二つの規則, “add 2 throughout” ( 1000, 1002,

共通点が多い 2 。そのようなことを考えあわせ ると、リードの因果論は結局、・ヒュームの因果

 

実習と共に教材教具論のような実践的分野の重要性は高い。教材開発という実践的な形で、教員養

以上の基準を仮に想定し得るが︑おそらくこの基準によっても︑小売市場事件は合憲と考えることができよう︒