学校規模研究の動向 と 課題
Trends and Issues of Research on School Size
須 田 康 之*
SUDA Yasuyuki
本稿の目的 は、 学校規模 と い う 組織的要因 が、 学校で の児童生徒の成果に どのよ う な影響 を及ぼ し てい るのか、 こ れま で の先行研究 を整理 し 、 こ の分野におけ る今後の研究の方向 を展望す る こ と にあ る。 そのために、 まず、 海外の研究動向 の レ ビュ ーを行 い、 日本におけ る研究動向 を概観す る と と も に、 課題につい て整理 し た。 海外 の先行研究か ら 明 ら かに な る こ と は、 学力 に対す る学校規模の影響 を学校規模単独で捉え るのではな く て、 学校規模が学力 に及ぼす影響 を学区の社 会経済的状況 と の関係で捉え、 学校規模と 学区の社会経済的状況と の交互作用が学力 に与え る影響 を明 ら かに し てい る点 で あ る。 日本ではこ う し た研究はま だな さ れて お ら ず、 今後、 マ ルチ レ ベ ル分析 を駆使 し て、 日本社会の実態 を捉え る こ と が必要 と さ れる。 加え て、 学力 と 向学校性、 学校規模、 学区 の SES の相互の影響関係 を明 ら かにす る ためには、 パネ ルデー タ を収集 し 、 こ れを分析す る必要があ る こ と も 指摘 し た。 キ ーワ ー ド : 学力、 学校規模、 学区 の社会経済的状況、 交互作用、 マ ルチ レベル分析Key words : academic achievement, school size, school district socio-economic status, interaction, multilevel analysis
1 . 海外の研究動向
( 1 ) 学校効果の研究と し ての学校規模研究 学校規模研究は、 広 く は、 学校効果の研究に位置づけ るこ と がで き る。 学校効果の研究 と は、 時間の経過の中 で、 児童生徒が学校 におい て どれだけ成果 を上げ てい る のか を問 う 研究 であ る。 児童生徒の成果の主要な も のと し ては、 児童生徒の学業成績があ り 、 出席や行動、 学習 意欲、 人間関係の構築や改善 も こ れに含め る こ と がで き る。 モ ーテ イ モ ア (M otimore, P., 1997) が、 「学校の最 大の影響は生徒が示す進歩の総量におい て確認 さ れる こ と を示 し てい る」 (p 410) と 述べ るよ う に、 学校の効果 は、 児童生徒が示す変化の総量に よ っ て明 ら かに さ れる こ と に な る。 学 校 効 果 の研 究 の端 緒 は 、 コ ー ル マ ン (Coleman, J.S ) ら に よ る調査 報告 に あ っ た。 コ ールマ ン を は じ め と する調査チームは、 連邦政府の命 を受け1965年に全米 の4000校の公立学校に在籍する64万5000人以上から なる 児童生徒 を対象 と し た学力調査 を実施 し た。 こ の結果か ら 、 「 子 ども の背景や社会の一般的状況 と は独自 に、 学 校が子 ども の学業成績に及ぼす影響はほ と ん ど存在 し な い。 そ し て、 学校 に独自の効果がない ために、 家庭や近 隣の仲間 に よ っ て子 ど も た ち に背負 わ さ れる不平等 が、 学校 を卒業 し て大人 に な っ てか ら の不平等 につ なが っ て い く 。 つま り 、 学校 を通 し て教育機会 を均等化す る考え 方は、 子 どもの身近な社会環境の及ぼす影響から独立 し た効果 を学校が有 し てい る と い う こ と を前提 と し てい る が、 ア メ リ カ の学校は、 その よ う な強い効果 を有 し ては い ないのであ る。」 (Coleman, J.S., et al 1966, p 325, 川 口訳, 2010, p.161) と し た。 こ の報告書の内容は、 教育 関係者 に衝撃 を与 え る こ と に な る。 なぜ な ら 、 学校は、 人種間、 居住地域間 にあ っ た当 初の学力差 を縮小 さ せ る こ と がで き ない だけ では な く 、 む し ろ拡大 さ せ てい たか ら で あ る。 コ ールマ ン報告書以後、 二 つの研究の流れが展開す る こ と にな る。 一つは、 なぜ、 学校は学力格差 を解消 し き れなか っ たのかその背景要因 を探 る研究 で あ り 、 も う 一 つは、 学力格差の解消に成功 し てい る学校 を見つけ出 し その学校の特性 を明 ら かにす る研究である。 後者の研究 と し て学校効果研究がある。 川口 (2010) が述べ るよ う に、 例 え ば、 ク リ ト ガ ー ド と ホ ール (Klitgaard, R. & Hau, G., 1974) は、 統計的手法によ り 、 学校の社会経 済的背景から推計 さ れる学校の成績の平均予測値 を求め、 そ れよ り も 実際に高い成績 を収めてい る学校 を探 し出 し、 「効果的 な学校」 と し た。 同 じ く 、 イ ギリ スのラ ツタ 一 (Rutter, M.J., et al l 979) は、 成績だけ ではな く 、 欠席 率、 態度や素行 も含めて、 「学校の効果」 と し た。 さ ら に、 ア メ リ カ のエ ド モ ンズ (Edmonds, R., 1979) は、 コ ールマ ンレ ポー ト の再分析 と し て、 白 人 と 同 じ く ら い 成果 を あげ てい る黒人の子 ど も た ち の成績 を あげ てい る 「効果的な学校」 を探り 出 し、 そう し た学校の6つの特徴 を ま と めてい る。 「 校長の リ ー ダー シ ッ プ」 「教師の子 ど もへの期待」 「厳格す ぎない秩序や威圧的 で ない静寂」 「 学校での基本的 スキル獲得の重視」 「 学校へ支援」 「学 力 測定 と その活用」 、 がそ れで あ る ('
)。 * 兵庫教育大学大学院人間発達教育専攻教育 コ ミ ユニケ ー シ ヨ ン コ ー ス 教授 平成29年10月25 日受理1980年 代 に 入 り 、 ラ ウ ン デ ン ブ ツ シ ユ と ブ レ イ ク
(Raundenbush, S. & Bryk, A.S., 1986) は、 階層的線型
モ デル を用い、 学校の効果 を捉え よ う と し た。 彼 ら は、 異な る二つの学校群、 す なわち、 公立学校 と カ ト リ ッ ク 系学校 を対象 に し て、 生徒の学校 と の関係がマ ルチ レベ ルの関係 にあ る こ と を踏ま え、 学校の効果 を吟味 し てい る。 彼 ら の研究 によ る と 、 公立学校 と カ ト リ ッ ク系学校 と の間 で学力差はないが、 カ ト リ ッ ク系学校 におい ては、
公立学校 に比べ て、 SES (Socio-Economic Status) と 学 力 の関係 が弱 く 、 し か し 同時 に セ ク タ ー と SES と の間 には交互作用があり 、 SES が低い生徒はカ ト リ ッ ク系学 校の方がよ く 、 SES が高い生徒は公立学校の方が適 し て い る と い う こ と で あ っ た。 彼 ら は、 学校の効果は、 そ こ に通 う 生徒の特性に よ っ て異 な る こ と を指摘 し た。 学校規模研究につい て言え ば、 冒頭に述べたよ う に、 学校効果の研究に位置づけ る こ と がで き る。 ア メ リ カ に おい て学校規模研究が登場 し て き た背景には、 高等学校 の大規模化があ げ ら れ、 い かにす れば生徒の成績 を向上 さ せ る こ と がで き るのかと い う 問題意識がそ こ にはあ っ た。 ハウリ ー (Howely, c ., 1996, 1999) らが高等学校 を中心 に収集 し た デー タ で も っ て大規模校 と 小 規模校 に 在籍す る生徒の成績 を比較 し てその差異 を明 ら かに し て い る よ う に、 当 初は、 学校規模 と 都市 の規模 に よ る成績 の違い を実証的 に示す こ と が研究の主流であ っ た。 ( 2 ) 学校規模と学力の関係 学校規模 と 成績 と の関係 に つい ては、 当 初、 必ず し も 一様 な結果は見い だせ てい なか っ た。 ま ず、 サマ ー ズ と
ヴオルフ (Summers, A. & Wolf B., 1976, 1977) によ
る1976年の調査では、 学校の規模に も よ るが、 学校規模 の影響力は特定の生徒に対 し てよ り 大き い こ と を示唆 し てい る。 彼 ら は、 フ イ ラ デル フ イ アの小 学校 の ア フ リ カ 系 ア メ リ カ人の生徒 に と っ て、 そ し て ま た、 都市 の高等 学校の成績が低い生徒に と っ て、 学校規模 と 学力 と の間 には強い負 の相関があ る こ と を示 し てい る (2)。 一方 で、 ケ ニ ー (Kenny, L.W., 1982) は、 1960年の プロ ジ ェ ク ト ・ タ レ ン ト の デ ー タ ベ ー ス を用 い、 第12学 年 の男子の成績 を調べ て、 学校規模は成績 に プ ラ スの影 響 を及ぼ し てい る と 結論づけ た。 こ れは、 生徒要因 と し ての、 生徒の健康、 欠席、 学校の種類の数、 両親の仕事、 児童の親権分割、 両親の教育 と 、 学校要因 と し ての、 学 校に通う 時間 と日数、 ク ラ スの大 き さ、 教師の教育水準 を統制 し た う え で の結果 で あ っ た。 さ ら に、 ケ ニ ー は、 1970年に カ リ フ ォルニ ア州で な さ れた第 9 学年から第12 学年 の調査の デー タ ベ ース を用 い て、 学区 の規模が学力 に与え る肯定的な影響 を報告 し てい る。 こ れと は対 照的 に、 フ ァ ウラ ー (Fowler, W.J., 1995) は、 1980年代 に都市化 が進 んだニ ユー ジ ヤー ジー 州 では、 小規模の小中学校 と小規模の学区 の方が高い成績 を示 し、 州が実施す る試験での合格率が高いこ と を見出 し てい る。 フ ァ ウ ラ ーが標本 と し た学 校 規模 は、 100人以上 か ら 4000人 を超え る範囲であ っ た。 いずれの研究 も 、 学力 が 規模の関数 で あ る こ と を示す も ので あ っ た。 学力 を学校規模の関数 と す るだけ ではな く 、 学校のあ る地域の社会経済的状況 も 考慮 に入 れたのが、 フ レ ド キ ンと ニ コ シ エア (Friedkin, N.E. & Necochea, J., 1988) で あ る。 彼 ら は、 学校 シス テ ムの規模 と 児童生徒の SES が成績に与え る影響 を、 カ リ フ ォ ルニ ア州の 3 学年、 6 学年、 8 学年、 12学年の児童生徒を対象に し て分析 し、 次のよ う な結果 を見出 し てい る。 1 ) SES は、 学区 レベ ルで も学校 レ ベルで も学力 に対 し て プラ スの影響 を与え てお り 、 学年 が低いほ ど SES の学力 に対 す る影響は大 き い。 規模は、 学区 レ ベルで も学校 レ ベルで も 学力 に対 し てマイ ナスに作用す る。 2 ) 規模と SES の交互作用 項 を加え た場合、 SES は学区 レベルでは 3 学年、 6 学年、 8 学年 で有意な プラ スの影響 を学力 に与え てお り 、 学校 レベルでは 6 学年 と 8 学年 で有意な プラ スの影響 を与え てい た。 規模は、 学区 レベルで も 学校 レベルで も 学力 に 対 し てマイ ナ スの有意な影響 を与え てい た。 規模 と SES の交互作用項は、 学区 レ ベルで も学校 レ ベルと も に プラ スの有意な影響 を与え てい るが、 学年が上昇す る に従 っ て その影響力 は小 さ く な る。 3 ) 学校 シス テ ムの規模が 学力 に与え る影響は、 SES が低い と こ ろ ではマイ ナ スに 作用す るが、 SES が高い と こ ろでは プ ラ スに作用す る。 こ れは、 学区 レ ベルで も学校 レ ベルで も同 じ で あ っ た。 ハ ウ リ ー (Howley, C., 1996) は、 フ レ ド キ ンと ニ コ シ ェ ア の研 究 結果 を 、 ウ エ ス ト ・ ヴ アー ジ ニ ア州 に お い て追試 し てい る。 ウ エ ス ト ・ ヴ アー ジニ ア州 は、 カ リ フ ォ ルニ ア州 に比べ て、 小規模校が多 く 、 学校数が減少 し て い る地域であ る。 3 学年、 6 学年、 9 学年、 11学年 を分 析対象 と し た結果、 ハ ウ リ ー の研究 におい て も 、 フ レ ド キ ンと ニ コ シ ェ ア と 同様 な結果が見出 さ れてい る。 さ ら に、 ハ ウリ ー と ビ ツケ ル (Howley, C.B. & Bicke1, R.,
1999) は、 オハイ オ州 、 ジ ョ ー ジ ア州 、 テ キ サ ス州 、 モ ン タ ナ州の4つの州 で こ の調査 を実施 し 、 オハイ オ州、 ジ ョ ー ジ ア州 、 テ キサ ス州 に お い て、 学力 に対 す る学 校 規模 と SES の交互作用 が見 ら れ、 貧 し い 地域の小 規模 校 と 豊かな地域の大規模校で、 学力 に対 す る恩恵が得 ら れてい る と し た。 い く つかの研究 では、 学校規模 と 学力 と の関係は単純 では な く 、 学校の構成、 デザイ ン、 組織の他の側面 に影 響 を受け る こ と が示唆 さ れてい る。 例え ば、 リ ー と ス ミ ス (Lee, V. & Smith, J., 1997) は、 学校規模と 成績の
関係が曲線的 な関係 で あ る と し てい る。 こ の研 究 では、
NELS : 88 (the National Education Longitudinal Study of 1988) から の 3 つのデー タ を レ ビ ュ ー し、 公立校、 カ ト
リ ッ ク系 学校、 エ リ ー ト の私立高校の計789校につい て、 8 学年、 10学年、 12学年の9812人 を吟味 し てい る。 彼ら の分析 では、 規模が600~ 900人の時には、 こ れよ り 規模 が小 さ い学校 と こ れよ り 規模が大 き い学校 に比べ て、 国 語と算数で高い得点 を示すと し た。 学校規模が学習に及 ぼす影響は、 有色人種 で あ る学生 と SES が低い学生が 入学 し て く る割合が増え るに従 っ て大 き く な る と い う 。 リ ー は、 生徒 の特性 を入念 に コ ン ト ロ ール し 、 かつ成 績や他の結果に対す る学校規模の関係がマ ルチ レ ベルで あ る と い う こ と を表明す る ために階層的線型モ デルを用 い た。 学校規模は学校 レ ベルの変数で、 成績は生徒 レ ベ ルの変数であ る。 多 く の研究は こ のこ と を無視 し 、 学校 レ ベルで成績 を集約 し た り 、 学校 レ ベルの回帰分析 を実 行 し た り 、 あ るいは、 階層的線形 モ デル を使用 し て、 生 徒 レ ベルの情報に学校サイ ズ を追加 し た り し てい る と 指 摘す る。 どち ら の場合 も、 従属変数に対 し て、 学校間お よ び学校内の変動要因 を結 びつけ て し ま う ために、 関心 の対象 であ る学校規模の影響 を誤 っ て予測す る こ と に な る、 と い う 。
ハ ウ リ ー と ハ ウ リ ー (Howley, C and Howley, A.,
2004) は、 リ ー と ス ミ スのデー タ を再分析す る こ と によ っ て、 最適規模は生徒の社会経済的地位 に よ っ て異 な り 、 10分位階層の中で規模が最 も小 さ い学校は、 最低収入の 生徒の成績 を最大限にす る よ う に見え る と し てい る。 彼 ら は、 数学の学力が300人未満の高校で最大限にな り 、 国語においては300人~ 600人規模で最大な る と いう こ と 、 1500人 を超え る高等学校では学力の不均衡が最大にな る こ と を明 ら かに し た。 ハウリ ーら に対 し て、 リ ー (Lee, V.E., 2004) は、 学 校規模 と 生徒の学力 の間に直接的 な関係 を見い だそ う と す る研究は誤 っ た方向へ導かれる可能性があ る こ と を指 摘 す る。 む し ろ、 学校規模は、 学校 と い う ア カ デ ミ ッ ク で社会的 な組織 を通 じ て、 間接的 にのみ生徒の成果に影 響 を与え てい るのでは ないかと い う のが リ ー の見解であ る o
同 じ く 、 リ ーと ロ ブ (Lee, V.E. & Loeb, S., 2000) は、 大都市 シ カ ゴの公立小学校 におい て、 学校規模が教 師の態度 と 児童生徒の学力 に影響 を与 え る メ カ ニズ ムに ついて検討 し てい る。 シカ ゴ市内の教員 と 6 学年 と 8 学 年の児童生徒 を対象 と し たマ ルチ レベル分析の結果、 学 校規模は教師の共同責任 につい ての態度 と 関連があ り 、 教師の共同責任への態度の多寡が児童生徒の学力 と 関係 し てお り 、 学校規模が子 ど も の学力 と 関連す るのは教師 の態度 を 通 し て で あ る と す る。 レ デ ィ と リ ー (Ready, D.D. & Lee, E.V., 2007) は、 マルチ レベル分析 を用い、 幼稚園 と 小学校段階での学級規模 と 学校規模の影響関係 を国語 と 算数で捉え よ う と し た。 効果は控え めではあ る が、 幼稚園で も小学校 で も小 さ い規模の方が効果 を上げ てい るよ う であ る と 、 結論づけ てい る。 ( 3 ) 学校の内部特性への着目 多 く の研究者た ちは、 小 さ な学校におい てよ り 肯定的 な感情が生ま れる と い う こ と を見出 し て き た。 そ れは、 所属感、 つながり 、 大人に知 つて も ら っ てい る と い う 感 情であ り 、 こ れが、 高い出席率 と 低い中退率 につなが る と い う も の で あ る 。 ハ モ ン ド 、 ロ ス 、 ミ リ ケ ン
(Darling-Hammond, L., Ross, P and M illiken, M., 2007)
は、 学校規模が生徒の参加、 出席、 退学率に与え る影響 につい ての先行研究 を と り あげ検討 し てい る。
ハ モ ン ド ら に よ る と 、 例 え ば、 ロ イ グ と フ ェ リ ス
(Leug, A. & Ferris, J.S., 2002) では、 暴力行為 に影響
を与 え る で あ ろ う 他の要因 を統制 し て も なお、 学校規模 が暴力行為 に影響 を与え ており 、 2000人以上の大規模の 学校では1000人未満の学校よ り も暴力行為の可能性が20 %以上高ま る と し てい る。 た だ し、 こ の研究は、 社会経 済的 地位 (SES) が低い都市部の若者に限ら れてい る と し た。
ホ ラ ン ド と ア ン ド レ (Holland, A. & Andre, T., 1987) では、 課外活動と青年期の発達 に関する調査研究がレ ビュー さ れてお り 、 成績が低 く SES が低い生徒は、 大規模校 よ り も小 規模校におい て学校生活に積極的 に関与す る可 能性が高い と し てい る。 小規模校の生徒は、 直接参加す る こ と で満足 を得、 必要 と さ れる こ と を感 じ、 挑戦 し、 自信 を持つこ と がで き るよ う にな る。 活動に参加す るこ と に よ り 学校 と の ア イ デ ン テ イ テ イ が強化 さ れ、 中退率 が減 る と 指摘 し てい る。 ピ ッ ト マ ン と フ オ グ ア ウ ト (Pittman, R.B. & Haughwout, P., 1987) は、 学校規模が、 教師 と の相互作 用、 生徒参加、 結束感 な どの学校の雰囲気 を構成す る尺 度 と 逆相関す る こ と を見出 し てい る こ れら の変数は中 退率が低い こ と と 関連 し てい るが、 学校規模 と 中退率 と の関係は間接的 な も の だ と す る。 彼 ら は、 「大 き い生徒 集団は好 ま し く ない社会環境や社会統合の低 さ や学校 と の一 体 感 の低 さ を 生 み出 し て い る よ う に見 え る 。」 (p 343) と し 、 小 規模校が統合 さ れ大規模校 に な る こ と によ っ て、 学校の社会的環境が悪化す る こ と を懸念 し て い る o こ の他ハモ ン ド ら が扱 っ てい ない研究 と し て、 ゴ ツ ト フ レ ツ ド ソ ン と デ イ ピ エ ト ロ (Gottfredson, D.C., & Dipietro, S M ., 2011) があ る。 彼 ら は、 マ ルチ レ ベ ル分 析 を用 い、 学校 におい て生徒 が受 け る被害 が何 に よ るか を明 ら かに し てい る。 彼 ら の研 究 に よ る と 、 PT 比は生 徒個人が受け る被害 を増大 さ せ る こ と に な るが、 規範的 信念は個人が受け る被害 を抑制す る こ と に な る と い う 。 こ のよ う に、 小規模校のメ リ ッ ト と し て、 生徒の参加、 出席率の高 さ、 中退率の低 さ と 暴力行為 の低 さ を指摘す る研究が多 い。 こ れは、 既に示 さ れてい るよ う に、 教師
と 生徒 と の感情的 な結 びつき 、 生徒同士の相互承認によ る と こ ろ が大き い と 思われる。 ( 4 ) パネ ルデー タ を用い た研究 マ ク ミ ラ ン (Mcmi11en, B.J., 2004) は、 学校規模と 学 力 の関係 を調べ る ために、 ノ ース カ ロ ラ イ ナ州の第 3 ~ 第 5 学年、 第 6 ~ 第 8 学年、 第 8 ~ 第10学年の公立校そ れぞれ 1 校ずつ を対象 と し た 3 つの コ ー ホ ー ト から な る パネ ルデー タ を用い て、 学校規模 と 生徒の特性 と の交互 作用 を明 ら かに し てい る。 ま ず、 小学校の国語 と 算数の成績につい てであ る。 学 校規模 と 小 3 の国語の成績には交互作用があ り 、 第 3 学 年 で国語の成績が悪か っ た児童が第 5 学年 で小規模校に 在籍 し てい る場合には成績が改善す る こ と が明 ら かに さ れた。 同様に、 学校規模 と 第 3 学年の算数の成績には交 互作用があ り 、 第 3 学年 で算数の成績の悪かっ た児童が 第 5 学年 で小規模校に在籍 し てい る場合には成績が改善 さ れてい た。 次 に、 中学校の国語 と 数学の成績につい てであ る。 学 校規模 と 第 6 学年の国語の成績 と の間で交互作用あ り 、 第 6 学年 で国語の成績が悪かっ た児童が第 8 学年 で小規 模中学校 に在籍 し てい る場合 には国語の成績が改善 さ れ てい た。 同様 に、 学校規模 と 第 6 学年の算数の成績 と の 間 には交互作用があ り 、 第 6 学年 で算数の成績が悪かっ た児童が第 8 学年で小規模中学校に在籍 し てい る場合に は数学の成績が改善 さ れてい た。 最後に、 高等学校の国語 と 算数の成績につい てであ る。 学校規模 と 人種の間 には交互作用 があ り 、 学校規模が 1700人 を超え る学校では、 白人の学力が高い。 学校規模 と 親学歴の間に も交互作用があ り 、 学校規模が1700人 を 超え る学校 では、 親学歴が高い子 ど も の学力 が高い と い う 結果が得 ら れた。 学校規模 と 第 8 学年の数学成績 と の 間には交互作用があ り 、 学校規模が増加す るに従い、 第 8 学年の成績が平均未満 と 平均以上 と では差が開 く こ と にな り 、 学校規模は以前の成績差 を拡大す る作用 を有 し てい た。 同様 な交互作用は、 学校規模 と 人種、 学校規模 と 親学歴の間 に も見 ら れ、 学校規模が増え る に従い白人 と非白人の成績差が拡大す る こ と 、 学校校規模が増え る に従い親が高卒ま でか高卒よ り 上の学歴 を有す るかによ っ て成績差が拡大す る こ と が明 ら かに な っ た。 マ ク ミ ラ ンの結果 をま と め る と 、 特定の下位集団間 に 存在す る成績の違いは、 規模が大 き い学校におい て大 き く 、 成績 を規定す る要因 は、 学年 レ ベ ルの コ ーホ ー ト と 教科に よ っ て異 な っ てい た。 学校規模 と 教科の交互作用 は国語 よ り も 数学に おい て みら れ、 学校規模 と 以前の成 績 と の交互作用は、 高校 レ ベルにおい て顕著であ っ た。 学校規模 と 成績の関係について解釈す る時、 学校規模は、 児童生徒の学業や行動の結果 と 関連す る多 く の要因 と 絡 み合 っ てい る こ と がわか る。 こ のこ と は、 学校規模 と 以 前の成績の交互作用が、 学校規模 と 親学歴の交互作用や 学校規模 と エ ス ニ シテ イ の交互作用 よ り も 大 き く て有力 で あ る と い う こ と か ら わか る。 マ ク ミ ラ ンは、 学 校規模が、 さ ま ざま な生徒 のサ ブ グ ルー プの間 で成績の不均 衡 を も た ら す主要な要因 で あ る と い う こ と では ない よ う だ と し なが ら も 、 成績の違いが 生 ま れる際に、 学校規模は他の要因 に媒介 さ れる こ と に よ っ て、 その違い を促進 し た り 妨げ た り し てい る こ と に 注目す る。 マ ク ミ ラ ンは、 「学校規模が生徒の成果に与 え る メ カ ニズ ムや、 その影響 が異 な る生徒の下位集団や、 あ るいは異 な る教科のなかで特別 に経験 さ れる様 を描 き 出す こ と は、 全 ての生徒 を高い水準 に到達 さ せ る こ と が で き る よ う 学校が どのよ う に構造化 さ れる必要があ る の かを理解す る う え で、 大いに役立つこ と にな る。」 (p 24) と 述べ てい る。 ガ ー ス ヘ ン ソ ン と ラ ン グベ イ ン (Gershenson, S., & Langbein, L., 2015) も 、 同 じ く 、 ノ ース カ ロ ラ イ ナ州 の14学年 と 15学年の生徒のパネ ルデータ を用い て、 学校 規模が生徒の成績に与 え る影響 を推計 し てい る。 こ の研 究 に よ れば、 学校規模 と 生徒 の成績 と の間 には直接的 な 因果関係はないが、 学習障害 を抱え る生徒や経済的 に困 難な生徒にと っ ては、 学校規模は学力 に負 に作用す るこ と を明 ら かに し てい る。
2 . 日本の場合
( 1 ) 学校統廃合 と の関連での研究 (3) 日本では、 1990年代から児童生徒数の長期的減少の実 態等 を背景 と し て、 学校統廃合が行政上の課題 と なり 、 その際の論点 と し て、 学級の適正規模に加え、 学校の適 正規模 と は何かと い う 問い に注目が集 ま るよ う にな る。 例え ば、 総務庁行政監察局編 (1992) 『小 ・ 中学校 を 巡 る教育行政の現状 と 課題』 では、 あ る市 のデー タ を用 い て 「学校規模に応 じ た特徴」 (p 73) と 題す る一覧表 を示 し た。 そ れは、 ① 「活気 に み ち た雰囲気があ る」 、 ② 「活動への参加意識 と 参加度が高い」 、 ③ 「児童生徒 間の切磋琢磨があ る」 、 ④ 「 集団の相互作用 によ る思考 力 の育成が図 れる」 、 ⑤ 「学習 や運動 におい て競争心が 培え る」、 ⑥ 「個別的な生活指導ができ る」、 ⑦ 「一定規 模以上の集団の中での情緒安定性が高い」 、 ⑧ 「集団活 動 を通 じ て社会性が育成で き る」 、 ⑨ 「自立性が育つ」 、 ⑩ 「 進学後、 学校生活への適応度が高い」 、 ⑪ 「調整力 (敏捷性、 巧緻性、 柔軟性) に優れてい る」、 ⑫ 「児童生 徒が全教員 を知 る こ と がで き る」 、 ⑬ 「校長、 教員 が全 児童生徒 を知 る こ と がで き る」 、 ⑭ 「児童生徒の男女比 のバ ラ ンスがよ い」 等、 教育効果、 社会性、 健康体力、 学校運営 に関わる諸側面 を取 り 出 し 、 そ れぞれの側面 に ついて 「小規模」 (11学級以下) 、 「中規模」 (12~ 24学級) 、「大規模」 (25学級以上) の どの学校規模が最も適正な範 囲か を評価 し てい る。 例え ば、 ②⑥⑫⑬ につい ては小規 模 ・ 中規模校が適正 と さ れ、
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は中規模以上、 ①⑤⑨(1]) につい ては大規模校が適正な範囲と さ れてい る。 こ う し た学校統廃合にと も なう 学校の適正規模をめぐ っ て、 教育学界 か ら は次のよ う な指摘が な さ れてい る。 一 つは、 教育行政 ・ 制度の立場から で、 学校現場の適正範 囲の確定は困難な課題であ る と す る見解であ る。 学校の 適正規模 と は教育目的 を最 も有効 に達成 で き る規模であ る と 考え て も、 教育目的自体が多面的包括的であるため、 具体的に規模の適正水準 を一義的に決める こ と は難 しい と い う のであ る。 二つは教育政策の立場から の も ので、 教育条件 を考察す る際に、 学校施設 ・ 設備の完備や教員 数が大事である こ と は言う ま で も ないが、 子 ども と 教師、 学校 と 地域の間の親密性 と 信頼感の在 り よ う から小規模 校の教育効果の高 さ を指摘す る声があ る。 こ う し た教育行政 ・ 制度や教育政策の立場から の提言 に対 し て、 教育社会学の立場から、 若林 (1999) は、 学 校統廃合 にかかわる わる議論につい て 3 つの課題 を指摘 し てい る。 そ れは、 1 ) 学校の適正規模 と い う 把握の仕 方が どのよ う な教育理念に基づ く も のであ るのか、 2 ) 教室の授業展開から のみ捉え ら れた学校規模の問題 を、 地域住民の学習要求、 教師 ・ 児童生徒関係、 学校文化 と いう 側面から捉え直すこ と 、 3 ) 学校統廃合は、 生活圈 と 密着 し た学区 の解体 ・ 再編であ る ため、 学校統廃合が 地域社会の生活 ・ 文化 ・ 教育 に何 を も た ら し たのか を解 明す る こ と 、 で あ る。 若林は、 『学校統廃合の社会学的 研究』 (1999) のなかで、 実証編と し て、 学区変更 を伴 う 統廃合の 6 事例、 学校統合紛争の 5 事例 を、 考察の対 象 と し てい る。 こ こ では、 学校統廃合の事案が持 ち上が る市町村の地理的歴史的状況、 学校の所在地、 人口動態、 国家の政策 と 地域の権力構造 と い う 視点から、 学校統廃 合 に孕 む問題 を複眼的 に捉え、 かつ、 解決に至 ら し めよ う と す る住民の努力 の過程が描 き だ さ れてい る。 その多 く は、 昭和30年代から50年代 にかけ ての事案であ る。 そ のため、 『増補版学校等後の社会学的研究』 (2012) にお い ては、 「学校統廃合 と 人口問題」 と し て補章が入 り 、 21世紀の就学人口 の減少 と そ れによ っ て生 じ る新 たな学 校統廃合の問題に言及 さ れてい る。 1999年には、 日本教育学会に 「学校 ・ 学級の編制に関 す る研究委員会」 が組織 さ れ、 「学校 ・ 学級の適正編制 に関す る総合的研究」 が進め ら れ、 桑原 ら によ っ て 『学 級編制に関す る総合的研究』 (2002) がま と めら れた。 こ のなかで、 学校規模 と 児童生徒の学校生活 と の関係 に つい ての考察 がな さ れてい る。 す な わち、 「小学生調査 に よ る学校規模 と 学校生活の関係 につい て みる と 、 規模 の小 さ い学校の児童のほう が ク ラ ブ活動 を楽 し んでお り 、 管理 職 と の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ンが緊密 で あ る。 そ れ以外 は概 し て規模の大 き い学校の児童の方が充実 し た学校生 活 を過 ご し てい る。 中学生の場合、 最適学校規模 を確定 す る こ と は困 難であ る。 し か し、 あえ て概括的 に規模別 の傾向性 を推測す れば、 学級集団内 と 教師 ・ 管理職 と の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ンの関係が良好 で あ る のは規模 の小 さ い学校 であ り 、 学習への取 り 組み、 学習意欲、 友人関係 で良好 なのが規模の大き な学校であ る と 見 なすこ と はで き る。」 (p 423) と 結論 し てい る。 国立教育政策研究所では、 文部科学省の委託研究 「新 教育 システム開発 プロ グラ ム 採択番号19 : 小中学校配置研究」 (2006~ 2007年度) が採択され、 2008年度から
葉養正明 を中心に、 「教育条件整備に関する総合的研究」 (平成20~ 22年度) に関す る プロ ジ ェ ク ト を立 ち上げ 3 年間の研究が展開 し てい る。 こ の研究の目的は、 「小中 学校の学校規模、 学校配置や地方教育行財政の在 り 方に つい て調査研究 を行い、 教育機会の均等 と 教育の質的保 証の方策 を探 る」 (葉養, 2009, p.1) こ と にあ っ た。 そ のために、 学校配置研究分野 と 学校規模研究分野 を設け て研究 を展開 し てい る。 学校配置研究分野では、 教育条 件整備のため各地域が行 っ た個別具体的事例 を取 り 上げ、 その検証がな さ れてい る (葉養, 2009, 2010a) 。 一方の 学校規模研究分野では、 学校規模についての研究がレヴユー さ れる と と も に、 学校規模が学年経営、 教科の指導方法、 生徒の学習行動 な どに与え る影響が実証的に検討 さ れて いる (葉養, 2010b) 。 こ れを受け、 『国立教育政策研究所』 第141集 (2012) では、 「特集 : 人口 減少下の学校の規模 と 配置」 が組ま れてい る。 各章 の タ イ ト ルは、 次 の と お り で あ る。 序章 人口減少下の学校の規模問題 と 教育 シス テム、 第 1 章小 ・ 中学校統廃合の進行 と 学校規模、 第 2 章自治体財政管理 と 学校規模 ・ 学校配置、 第 3 章1950年代後半の小規模学 校区 におけ る学校統廃合過程の一考察一 地域におけ る施 策の形成と評価に着目 し て一、 第 4 章学校間連携と スク ー ルリ ー ダーの役割、 他に、 資料 1 と し て、 学校統廃合関 係文献 リ ス ト 、 資料 2 と し て、 学校統廃合関係新聞見出 し (1946~ 2008年 6 月) が掲載されている。 こ う し てみる と 、 日本におけ る学校規模研究は、 学校 統廃合、 学校規模適正化要求、 教育条件の整備 と い う 文 脈のな かで な さ れて き た こ と がわか る。 し か し な が ら 、 実 際に児童生徒 の側か ら みた研究は案外少 ない こ と がわ か る。 ( 2 ) 児童生徒の学力や向学校性に関連す る研究 葉養 (2010b) は、 国立教育政策研究所によ る報告書 の中で、 こ れま での国内 の学校規模研究の特徴 を次のよ う に述べ る。 「 学力等の教育成果に対 し て影響 を与え る 諸要因 は多種多様 で あり 、 そ れぞれの条件は独立 な要因 と し て作用す るので な く 、 相互に関連 し つつ影響 を及ぼすこ と を考慮す る と 、 単に学校規模 を独立変数 と し、 学 力等 を従属変数 と す る だけ では、 適切に学校規模が学力 等の教育成果に与え る影響 を論 じ る こ と はで き ない だ ろ う o
」 (p 6 ) o
そ こ で、 葉養らは x 県の中学校のう ち、 第 2 学年の 学級数が 2 学級以上かつ学級あたり の生徒数が34人以上 と なる中学校48校 を対象に調査 を実施 し た。 調査対象者 は、 校長、 第 2 学年の学年主任、 第 2 学年の国語、 社会、 数学、 理科、 英語の授業 を担当 し てい る教師、 学級担任 であ る。 こ の調査は、 学校規模 と し て学年規模 を用い、 児童生徒調査はおこ なわず、 学級担任によ る生徒の観察 評価結果 を用い てい る と こ ろ に特徴があ る。 こ の調査から、 次の 5 点が指摘 さ れてい る。 1 ) 全校 学級数 と 校長によ る授業観察実施状況 と の間には明確 な 関係が見 ら れない こ と 。 2 ) 学年経営の状況に対 し て、 学年の学級数や学級規模が与え る影響は限定的 であ る と 言わ ざる を得 ない こ と 。 3 ) 指導の準備や指導方法の実 施状況に、 学年の学級数や学級規模が与え る影響は部分 的 ではあ る も ののない と はいえ ない こ と 。 す なわち、 国 語や社会では、 学年の学級数が多 いほ ど教師同士 での話 し合いが盛 んであ るこ と 。 4 ) 生徒の学習行動のう ち、 教室内の学習行動におい ては、 学年の学級数 と 学級規模 が影響 を与え てい る と はいえ ない こ と 。 5 ) 学年の学級 数およ び学級規模が ク ラ ス替え によ る生徒指導上 ・ 人間 関係的問題の解決に与え る影響 につい ては、 学年の学級 数が多 く かつ学級規模が小 さ い方が、 生徒指導上の問題 や生徒同士の人間関係 にかかわ る問題が解決 し やすい こ と 、 で あ る。 学校規模 と 学力、 学校規模 と 向学校性 と の関連でい れ ば、 研究結果の 4 ) と 5 ) が関係があ る。 こ の研究から、 学校規模 と 生徒の人間関係の作 ら れ方 と の間には某 かの 関係があ り そ う であ る こ と がう かがえ る。 学力 と の関係 につい ては、 調査計画の段階から 学校規模 と 学力 の関係 は扱 わない と し てい るが、 やは り 、 学校規模 と 学力 の関 係につい ては無視で き ない問題 であ ろ う 。 従 っ て、 報告 書の中で紹介 さ れてい る マルチ レベル分析 を適用 で き る よ う デー タ を整え れば、 学校の組織風土が児童生徒の学 力 と 向学校性に及ぼす影響 を捉え る こ と がで き る可能性 は充分 に あ る。3 . 課題
さ て、 こ れま で に みて き た よ う に、 日 本 に おい ては、 児童数の減少、 学校規模適正化の議論、 自治体の財政状 況 と 相ま っ て、 今後、 全国各地で学校統廃合が起こ る状 況が生ま れて き てい る。 学校統廃合 が な さ れる際に、 行 政、 地域住民間相互のやり と り やそ こ に働 く 力 関係、 合 意に至 る プロ セ ス、 あ る いは逆 に 決裂 に至 る プロ セ ス を 丹念に追 う 実証的研究は こ れま でに も な さ れて き た。 し か し、 その一方 で、 学校規模が学校 で学ぶ児童生徒 に対 し て どのよ う な影響 を及ぼすのかと い う 実証的研究は意 外 と 少 ない。 し かも、 学校規模単独の影響 を見よ う と す るあ ま り 、 十分 な成果 を上げ る こ と がで き てい ない よ う に思 わ れ る。 こ れに対 し て、 ア メ リ カ では、 学校規模が児童生徒の 学習活動に及ぼす影響 を捉え る際に、 学校の SES や学 区の SES と い う 視点 を導入 し 、 学校規模 と 学校 ・ 学区 の SES の交互作用が学習の成果に どのよ う な影響 を与 え るのか を明 ら かにす る実証的研究 がな さ れてい る。 フ レ ド キ ンが指摘す る よ う に、 学区 レ ベルで も学校 レ ベル で も 学校規模 と SES の交互作用は学力 に対 し て プ ラ ス に作用 し ており 、 学年が上昇にす るに従 っ てその影響力 は小 さ く な る と い う 指摘は重要であ ろ う 。 学校規模 と 学 校の SES の交互作用が プ ラ ス に作用す る と は、 SES が 低い と こ ろ では学校規模は学力 に対 し てマイ ナ スに作用 す るが、 SES が高い と こ ろ では学校規模は学力 に対 し て プラ スに作用す る と い う こ と であ る。 こ れに対 し て、 リ ー は、 学校規模は間接的 には学力 に作用 し てい るかも し れ ないが、 む し ろ、 学校規模は人々が どのよ う な関係 を築 く かに影響 を与 え てお り 、 規模は殊に児童 と 教師 と の関 係の築き方や児童生徒に対す る教師の共同責任の態度と 関連があ るのではないかと す る。 こ の両者の見解は明 ら かに異 な っ て お り 、 今後、 日 本社会 に お い て そ の詳細 を 明 ら かにす る こ と が必要 と な る。 その際に、 学区 や学校の社会経済的状況の指標 を どの よ う に 設け る のか、 どのよ う な デ ー タ を 収集す る必要が あ るのかが問題 に な る。 まず、 学校の社会経済的状況 につい ての尺度につい て で あ る。 フ レ ド キ ン ら は、 学校 シ ス テ ムの SES と し て、 学年 に よ っ て異 な る尺度 を用 い た。 一 つは、 親の職業 で あ る。 第 3 学年 と 第 6 学年の児童につい ては、 教師から 児童の親の職業 を直接聞 き取 り 、 こ れを、 1 ) 非熟練、 2 ) 半熟練あ るいは熟練、 3 ) 半専門職あ るいは専門職、 の 3 つの カ テ ゴリ ーに分け た。 も う 一 つは、 親の学歴で あ る。 第 8 学年 と 第12学年の生徒につい ては、 生徒自身 に親の学歴を回答 し ても らい、 1 ) 高卒未満、 2 ) 高卒、 3 ) 短期大学卒、 4 ) 4 年制大学卒、 5 ) それ以上の学 歴、 の 5 つ に カ テ ゴリ ー化 し てい る。 調査対象者 によ っ て用 い る尺度 を変え たのは、 児童生徒への配慮 と 、 よ り 正確 な情報 を収集 し よ う と し たためで あ ろ う 。 学校の社会経済的状況の尺度化は厳密に区別すれば、 学校の SES と 学区の SES の二つに分け て考え るこ と が で き る 。 学校 の SES に つい ては、 フ レ ド キ ンが行 っ た よ う に学校に通 っ てい る児童生徒の親の職業 や学歴 を用 い る こ と も 可能 で あ る。 た だ し か し 、 現状 では、 親の職 業や学歴 を聞 く こ と自体が難 しい。 従 っ て、 調査票のな かで当該学校に通う 児童に家庭生活につい て問 う 項目に回答 し て も ら い、 そ れを も と に学校 の SES を指標化す る と い う 方法があ る。 当該学校の就学援助率 を用い る こ と も考え ら れるが、 こ れについ て も 、 学校の プラ イ バ シー にかかわる情報で あ るので慎重に扱 う 必要があ ろ う 。 学区 の SES につい ては、 教職員 が保護者や地域住民 を どのよ う に認識 し てい るのか を問 う 質問項目 を設け、 こ れへの回答 を指標化す る方法があ る。 学校長は地域社 会 と かかわり のあ る立場であ るので、 学校長の回答は信 頼性が高い と 考え る。 こ の他、 総務省統計局 から 出 てい る 「 地図 に よ る小 地 域分 析」 の デ ー タ は、 学区 の SES を つ く るのに有効 で あ る か も し れない。 なぜ な ら ば、 こ こ には、 国勢調査 を も と に通学区 ご と の平均 世帯収入や 学歴の デ ー タ が掲載 さ れてい る か ら で あ る (4 )。 次 に、 使用 す る デー タ に つい て で あ る。 マ ルチ レ ベル 分析は、 学力や向学校性 と いう 個人属性レベルの変数と 、 学校規模や学区 の社会経済的状況 と い う 学校組織 レ ベル の変数 を区別 し 、 個人属性 レベルの変数が学校組織 レベ ルの変数の影響 を どれ ぐ ら い受け るのか を明 ら かにす る 分析手法であ る。 し たが っ て、 データ を収集す る段階で、 学校数を確保 し、 同 じ学校に通う 児童生徒数も確保 し、 学校 レ ベルの デー タ と 児童生徒の個人 レ ベ ルの デー タ を 区別す る必要があ る。 こ れに対 し て、 パネ ルデー タ分析は、 個人属性で あ る 学力や向学校性の変化 を複数時点間で捉え、 こ の変化に 何が影響 を与え てい るのか探 る分析手法 であ る。 す なわ ち、 変化量に対す る変数間の因果関係 を明 ら かにす る手 法 と いえ よ う 。 パネ ルデー タ 分析 に用 い る デー タ は、 同 一人物に複数回回答 を求め、 それぞれの回答が同一 人物 の回答 であ る こ と を照合 で き る よ う に し てお く こ と が必 要にな る。 学力 や向学校性に対す る変数間の因果関係 を 捉え る ためには、 パネ ルデー タ 分析は有効 で あ る。 し か し 、 社会調査 を行 う こ と が難 し く な っ てい る現状 から す れば、 個人 デー タ を複数時点 におい て収集す る には公的 機関 と の協力体制 をつ く る こ と が不可欠であ ろ う 。 加え て、 統計 ソ フ ト Statal 5は、 現段 階 で は、 パネ ル デ ー タ 分析 と マルチ レベル分析 をあ わせた分析は出来 ない よ う であ る。 し たが っ て、 パネ ルデー タ分析はあ く ま で個人 レベルの変数 を使用す る こ と にな り 、 組織 レベルの変数 を扱 わない範囲での分析にな る こ と を明記 し てお き たい。 注 (1) 学校効果の研究につい てのレ ビュ ーは、 川口 (2010) に詳 し い。 本稿 も、 川口の議論に負 う てい る と こ ろが 大 き い。
(2) Darling-Hammond, L., Ross, P. and M i11iken, M. (2007) によ る高等学校 を中心に し た学校規模の研究 レ ビュ ーが存在す る。 本稿 におい て も 、 必要に応 じ て、 彼 ら の研究 レ ビュ ー を参照 し た。 (3) 須田 (2007) の住岡敏弘 「 (4) 学校統廃合と の関連か ら 見 た研究」 (pp 4-7) を執筆者の了 解 を得 て、 研究 代表者の責任におい て大幅に改稿 し た。 (4) 例え ば、 世帯数人員 、 職業分類の デー タ を用い た、 Tomoki, N ら (2014) の研究があ る。 こ こ では、 国勢 調査 のデー タ を も と に、 近隣社会の困窮度 な ら びに人 口密度が死亡原因 に与え る影響 を検証 し てい る。 参考文献
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