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個人の心理的契約が組織コミットメントに及ぼす影響について

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(1)論  説. 個人の心理的契約が組織コミットメントに 及ぼす影響について. 山. 岡. 1 問題意識と研究目的. 1.はじめに  近年の日本の労働市場においては,雇用形態. 徹. だろうか.また個人は組織との関わりにおいて,. 貢献と誘因にいかなる内容とバランスを想定し ているのだろうか.特に近年の成果主義的な人. 事制度の謹入は,従業員による上記の想定や,. の多様化が進み,職場では正社員のみならず契. ひいては会社への帰属意識の変容にどのような. 約社員,派遣社員,パート従業員などが協働す. 影響を及ほしているのだろうか.業務の中核を. る場面が日常化しつつある.また大企業を中心. 担う正社員について,この種の問題を詳細に検. に従来見られた長期雇用慣行や年功序列型の人. 討することは,人的資源管理における重要課題. 事処遇にも部分的な変容が見られ,外部労働市. であると同時に,会社組織の存続にも関わる経. 場の拡大や成果志向の人事制度の導入などの動. 営課題であるといえる.本論では上記の問題意. きが一般に広がりつつある.. 識に基づき,1990年代後半から成果志向の人事.  このような労働環境の変化のなかで,特に正. 制度改革に取り組む企業の正社員を調査対象と. 社員の会社に対する関わり方はいかに変化して. して,組織に対する帰属意識の変化に影響を及. いるのだろうか.近代組織論の祖であるバーナ. ぼす要因について実証的に分析することを目的. ード(Barnard,1938)によれば,個人がある組. とする.. 織に参加する(もしくは参加し続ける)か否か の意思決定は,個人が組織に対して払う犠牲で. 2.組織コミットメントに関する先行研究. ある「貢献」と,自らの貢献に対する見返りと. (1)組織コミットメントの定義と分類. して組織から得られることを期待する報酬を意.  組織に属する人々が自らの組織に対して抱く. 味する「誘因」について,両者のバランスを個. 帰属意識を表す概念として,「紐織コミットメ. 人が勘案することによって主体的に行われる.. ント」概念がある.組織コミットメントは,従. したがって組織マネジメントの観点からは,適. 業員の業務パフt−一マンスや離転職,ひいては. 切な報酬体系を整備して,組織目標に沿った貢. 組織の効率性などに影響を与えうるとの認識. 献を個人から過不足なく引き出すことが管理上. (Aranya, Kushnir&Valency,1986)から,そ. の課題となるわけだが,ここで問題となるのが. の分析と管理は組織マネジメントにおける基本. 報酬の質と量についてである.組織目標に沿っ. テーマとして,数多くの研究が蓄積されてきた.. た貢献を個人から効率的に引き出すには,どの.  組織コミットメント概念の定義については,. ような質の報酬をどれほど与える必要があるの. 大きく分けて2つの次元から捉えられる.

(2) 74(424). 横浜経営研究 第26巻 第3・4号(2006). (Kidron.1978).ひとつは,組織と個人の交換. 生じる世問体の悪さや罪悪感などから,個人の. 関係に基づく関係性から帰属意識を規定する捉. 組織への拘束を説明する要素である.なお存続. え方(Becker,ユ960)であり,もうひとつは,. 的コミットメント概念については,組織コミッ. 組織に対する個人の情緒的な愛着から帰属意識. トメントを規定する先行要因として位置づける. が生じる側面を強調する捉え方(Mowday,. べきであるとの批判的立場(Angle&. Steers&Porter,1979)である.. Lawson、1993)があり,さらなる研究の蓄積が.  交換関係に基づく捉え方では,組織と個人の. 必要であろう.. 関係は誘因と貢献の交換関係と見なされた.す.  したがって本論では,組織コミットメントを. なわち,個人は組織に対して投資した労働や時. 情緒的コミットメント’と存続的コミットメント. 間に見合う見返りがその組織か.ら得られる限り,. の2次元から捉える立場を採用する.. 組織との交換関係を持続させるという帰属意識 の捉え方である.そこでは,個人の功利的およ. (2)組織コミットメントの規定要因. び行動的な側面が強調され,紐織は報酬の源泉.  組織コミットメントを規定する先行要因につ. として道具的な観点から捉えられる傾向がある. いては,大別して個人的要因,組織的要因,両. (Rusbult&Farrell,1983).       ’. 者の適合要因に注目するアプローチに分類でき.  一方,組織に対する情緒的な愛着から帰属意. る.. 識を捉えるアプローチでは,組織の価値や目標.  個人的要因に注目するアプローチでは,勤続. の受容,組織に残留したいという願望,組織の. 年数(Alutto, Hrebiniak&Alonso.1973)や学. ために努力したいという意欲などの強さによっ. 歴(Putti, Aryee&Liang,1989),組織から得. て,個人の組織に対する帰属意識を定義づけた. ているi報酬(Eisenberger, Fasolo&Davis・. {Mowday, Steers&Porter,1979).すなわち,. 個人が組織の目標や価値を自らのそれと同一視. LaMastro,1990)などの個人的要因によって, 組織コミットメントの強さを規定する.組織コ. し,内在化するプロセスとして帰属意識の形成. ミットメントの規定要因として個人的要因に注. は捉えられた.そこでは,個人の情緒的,心理. 目する立場は,特に組織と個人の交換関係に基. 的な側面が強調され,組識は同一化の対象とし. づいて帰属意識を捉える功利的アプローチで支. て捉えられる傾向がある(Morris&. 配的な立場である(Gregersen,ユ992).個人は. Sherman,1981).. 組織との交換関係において,労働のためのエネ.  さらに,組織コミットメントの構成要素を3. ルギーや自らの時間などを投資し,その対価と. つの下位概念から捉えるアプローチがある.ア. して報酬を得るわけだが,そのような交換関係. レンとメイヤー(Allen&Meyer,1990)は,組. は時閏的な蓄積を経ることで多面性をもつよう. 織コミットメントを感情的要素,存続的要素,. になる.すなわち,会社での勤続年数が長くな. 規範的要素の3要素から定義づけた.帰属意識. れば,個人が会社との交換関係で得られる報酬. の感情的要素とは,組織に対する情緒的な愛着. は,金銭的報酬だけにとどまらず,昇進可能性. から生じる帰属意識を説明する要素である.ま. や社会的名声,専門知識,安定した生活など多. た存続的要素は,’組織を離脱する際に将来生じ. 面的な利益を享受するようになる.このように,. うるコストの知覚から組織に所属し続ける選択. 個人は自らの時間を金銭的報酬を得るためだけ. をするという,帰属意識の功利的な側面を強調. ではなく,その他の副次的な取引関係にも投資. する要素である.最後に規範的要素とは,情緒. することで副次的な利益を得ている.そして,. 的な愛着や功利的なコスト知覚から生じる帰属. そのような副次的な投資から得られる利益は,. 意識とは異なり,組織を離脱することによって. 取引関係の時間的な蓄積とともに増大する傾向.

(3) 個人の心理的契約が組織コミットメントに及ぼす影響について(山岡 徹). がある.そのため,個人は勤続年数が長くなれ. (425)75. 慣行や年功序列を基軸とした人事処遇の変容,. ばなるほど,副次的な取引関係から得られる多. さらに外部労働市場の拡大や成果主義人事制度. 面的な利益に縛られて組織に拘束されることに. の尊入などの全体的な変化の流れを考慮すると. なる.組織コミットメントの規定要因として,. き,従業員と会社の交換関係や心理的な関わり. 個人の副次的な投資に注目するこのような主張. 合いには,何らかの動態的な変容が生じている. はベッカー(Becker,1960)を中心に「サイド. 可能性が高いだろう.したがって,本論では組. ベット(side bet)理論」として展開された.. 織コミットメントを動態的に捉え,その変化に.  一方,組織コミットメントの規定要因として. 注目する立場をとる.. 組織要因に注目するアプローチでは,仕事の特 性(Dunham, Grube&Castaneda,1994),組織.  第2の問題点は,組織コミットメントの近接 概念であり,組織と個人の心理的な関わりを示. における昇進や能力開発(Gaertner&. す「心理的契約(psychological contract)」概. Nollen,1989),組織における規範や風土. 念との関係性の解明が十分には進んでいない点. くRhodes & Steers,1981; DeCotiis &. にある.心理的契約とは,個人と組織の交換関. Summers.1987),同僚からの評価. 係における合意の諸条件に閏して,組織によっ. (Buchanan,1974)などが組織コミットメント. て形成された個人の信念と定義される. の先行要因として注目された.このような組織. (Rousseau,1995).この定義に特徴的なのは,. 要因に注目する立場は,特に情緒的な愛着に基. 第1に組織と個人の関係性に注目している点,. づいて帰属意識を捉えるアプローチにおいて重. 第2に契約という用語を用いつつも,相互の義. 視される傾向がある(Gregersen,1992).. 務についての個人側の主観的信念のみに注目し.  最後に,個人と組織の適合要因を重視する立. ている点である.すなわち心理的契約とは,個. 場がある(Wiener,1982).このアプローチでは,. 人が組織との交換関係において果たすべきと想. 個人と組織の目標の一致(Vancouver&. 定する貢献や義務,返報などについての主観的. Sch皿itt,1991),組織に対する信頼(Dunham. な信念を指す.このようにルソー. et aL1994)などを組織コミットメントの先行. (Rousseau,1995)は,従業員と会社との間の雇. 要因として重視した.. 用関係が,経済的な契約閲係の側面だけではな. 3.先行研究の検討と本論の視点. 関係としての側面をもつことを指摘した.. く,従業員に主観的に了解された心理的な契約.  既存の組織コミットメント研究の問題点につ.  このように心理的契約概念は,組織との交換. いては,まず第1に暗黙のうちに組織コミット メントの安定的な傾向を前提とし,それを動態. 関係についての個人側の主観的信念に基礎づけ. 的に捉える視点が必ずしも十分ではなかった点. て,個人の信念は組織によって形成されると考. がある.確かに,職務に対する満足度やモチベ. える点がある.たとえば,人的資源管理施策に. ーションなどの概念は,個人にとって固有の職. おいて従来の年功主義から業績主義的な人事制. 場環境や職務経験から影響を受ける度合いが高. 度に転換することは,組織から発せられた何ら. られるわけだが,定義における第3の特徴とし. く,それと比べて組織コミットメント概念は組. かのメッセージとして個人に受け取られ,その. 織と個人の基本的な闘わり方を規定する点で安. 解読を通じて心理的契約は個人によって更新さ. 定的な概念であるといえる(MOwday et. れる.このように心理的契約の概念は,組織に. al.1979).. 属する個人の態度や行動が人的資源管理施策に.  しかしながら,近年の日本の労働市場におい. よって形成される側面を分析領域の射程に入れ. て進展しつつある雇用形態の多様化,長期雇用. ている(Rousseau,1995).このことから,人的.

(4) 横浜経営研究 第26巻 第3・4号(2006). 76(426). 資源管理施策の変化によって,雇用関係に対す. た.. る従業員の主観的な態度がどのように変化する.  (1)調査対象者の属性や職位,職務内容. かを分析するための重要概念のひとつとして,.  (2)キャリア志望やエンプロヤビリティの. 心理的契約は注目されている(松山,2005)..    意識.  このように心理的契約の概念は,個人と組織.  (3)自社の賃金制度や人事制度,経営戦略. の相互作用を通じて,両者の関わり方が個人の.    に対する評価  (4)自社の賃金報酬制度に対する評価  (5)ここ数年闇での調査対象者の仕事環境. 主観レベルでどのように変容するのかに注目し ている.一方,組織コミットメントの概念では,. 情緒的および功利的な観点から,個人の組織へ の関わり度合いの強さを説明することに関心が.    や仕事意識における変化  (6)業績給によって生じる報酬格差の受け. 管理施策などの転換にともなう組織コミットメ.    入れ可能な度合い  (7)会社への組織コミットメントの変化. ントの変化を説明するためには,心理的契約と.  (8)会社との閲係の持ち方,会社との心理. 組織コミットメントの相互関係を明らかにする.    的契約. 必要があるだろう.そこで本論では,人的資源.  なお本論では,主に(1),(7),(8)の調査項. 管理施策の転換にともない従業員が心理的契約. 目から得られたデータをもとに分析を実施した.. ある.ここで本論の研究関心である,人的資源. を更新させるプロセスを通じて,組織コミット. メントがどのような影響を受けるかについて分. 3.尺度の構造. 析を行う.具体的には,サーベイ調査を通じた.  組織コミットメント尺度に関しては,高木・. 両概念の相関性の分析,組織コミットメントの 種類と強さによっそ群分けされた調査対象者群. 石田・益田(1997)による組織コミットメント. によって,心理的契約の傾向に有意な差異が見. 度5項目,存続的コミットメント尺度5項目が. られるかどうかの分散分析,さらに重回帰分析. 採用された.なお本調査では,調査時点から過. によって心理的契約の尺度から組織コミットメ. 去数年間における従業員の組織コミットメント. ント変化の説明を試みる.. の変化傾向を調査する目的から,質問文の文末. li分析方法と対象. 質問票をもとにして,情緒的コミットメント尺. を「∼と思うようになった」のように,変化傾 向を問うかたちに修正した.さらに質問項目前. 1.調査方法と対象. に「あなたは,現在お勤めの会社との閏わり方.  本調査1)は2004年ユ2月から2005年1月にか. についてのお考えで,ここ数年間で前よりも次. けて,郵送調査法による質問紙法により実施さ. の点で変化を感じておられますか」と教示した.. れた.調査対象は,1990年代後半から成果主義.  心i理的契約の尺度に関しては,Rousseau. 的な人事制度改革の取り組みを続けている関西. の主要電機メーカー3社の技術系および事務系. (1995)の議論に基づいてMillward&Hopkins (1998)によって開発された心理的契約尺度,. の従業員710名であり,回収人数は517名(回収. および青木(2001)による和訳尺度をもとにし. 率728%)であった.なお回収人数の会社別の. て,24項目が作成された.. 構成は,A社251名(48.5%), B社180名.  評定は,「そう思わない」「どちらかというと. (348%),C社86名(16.6%)であった.. そう恩わない」「どちらとも言えない」「どちら. かというとそう思う」「そう思う」の5件法に 2.主要調査項目 質問紙は,以下の主要調査項目から構成され. より実施し,順に1点から5点の得点を与えた..

(5) (427)77. 個人の心理的契約が組織コミットメントに及ほす影響について(山岡 徹). 表1 組織コミットメント変化尺度の因子分析(Varimax回転後の因子行列) ll. 共遊性. 3.この会社にいることが楽しいと感じるようになった          .852 4.友人に、この会社が素晴らしい働き場所であると言えるようになった   .833. 一.021. .726. .029. .695. 9.この会社を好きだと思うようになってきた               .827 2.もう一度就職するとすれば、同じ会社に入りたいと考えるようになった  .799. ユ08. .696. ユ23. .653. L他の会社ではなく、この会社を選んで本当によかったと思うようになった.787 8.この会社を辞めると人になんと言われるかわからないと思うようになった.014. .043. .622. .881. 、776. 7.会社を辞めることは、世間体が悪いと思うようになった        .052 5.この会社を辞めたら、家族や親戚に会わせる顔がないと思うようになった.08ユ. .877. .771. .S34. .702. 10.この会社を去ったら私は罪悪感を感じると思うようになった      .158 6.この会社を離れたらどうなるか不安であると感じるようになった    一.033. .578. .360. .539. .292. 1. 11|分析結果. 因子寄与  3.398   2.S95. 6293. 寄 与・ 彗歪  33.982    28」950. 62.932. 析を再度行ったところ,明確な2つの因子が得 られた.また2つの因子間の相関は.134であり,. 1.サンプルの属性  分析対象としたサンプルの平均年齢は407歳. ほぼ直交していた.2因子がほぽ直交していた. (SD 7.90),年齢幅は21歳から59歳であった.. 子分析を行った(表1参照).累積寄与率は. 現在所属している会社での勤続年数の平均は. 62.9%であった.. 18.1年,既婚者の比率は77.4%であった.学歴.  各因子は以下のように解釈された.第1因子 は,「この会社にいることが楽しいと感じるよ. は,高校・専門学校卒19.4%,短大・高専卒. ので,さらに主因子法・Varimax回転による因. 2.1%,大学学部(文系)卒12.0%,大学学部. うになった」など,従業員が会社に対する感情. (理系)卒4α1%,大学院(文系)卒O.6°/,,大学. 的な愛着を強める内容の諸項目が高い正の負荷. 院(理系)卒23.6%であった.また配属部門は,. 量を示していた.そこで「情緒的コミットメン. 研究・開発部門60.5%,製造・生産管理部門. ト強化」因子と命名した.第2因子は,会社を. 11.4%,営業・販売部門3、7%,事務部門18.4%で. 辞めることで将来生じうるコストの知覚から,. あり,職位については,一般社員27.7%,係. 従業員が現在所属している会社との関係存続志. 長・職長相当47.1%,部課長相当以上24.6%であ. 向を強める内容の諸項目が高い正の負荷量を示. った.. していた.そこで「存続的コミットメント強化」 因子と命名した.. 2.「組織コミットメント変化」尺度の分析.  この因子分析の結果に基づいて,Varimax回. 組織コミッドメント変化尺度を構成する10項. 転後の因子得点を回帰法で推定することにより,. 目が,事前の想定通り,情緒的コミットメント. 「情緒的コミットメント強化」得点と「存続的. 変化因子と存続的コミットメント変化因子の2. コミットメント強化」得点を算出した.. 因子構造になることを確かめるため,主因子法. による因子分析を行った.まず固有値の変化. 3.「心理的契約」尺度の分析. (3.98,2.99,0.78,一一→から,2因子構造が.  心理的契約尺度を構成する24項目に対して, 主因子法による因子分析を行った.まず固有値. 妥当であると判断した.そこで2J. 子構造を仮 定して,主因子法・Promax回転による因子分. の変化(4.93, 2.43,1、77,1.40,1.09,1.Oe,■一→.

(6) 横浜経営研究第26巻第3・4号(2006). 78(428). 表2 心理的契約尺度の因子分析  (Promax回転後の因子パターン) 1. ll. 皿. IV. 15.この会社で仕事することで自分の能力の向上を図りたい. .826. 一.123. 一.071. ユ78. 17.この会社の中で自分が成長することを望む 23.この会社には一所懸命働けば出世する機会が十分ある 12.この仕事は私の将来のキャiJアアップのためのステップだ. .732. ・ユ34. .069. .177. .493. .101. −.036. −235. .486. −.028. .230. −.055 −.280. 21.この会社は従業員の努力にきちんと報いていると感じる 16.会社に長く勤めてその目標達成に努力することが昇進につながる. .450. .174. .126. .408. .182. .080. −.2]6. 19.私のこの会社でチームの一員であると感じる 10.自分の仕事だけの目標が満たされるだけで満足である. .368. 〔234. .233. −.050. .624. −.039. ・.008. ユ30. −.0ユ8. .027. .621. −.100. 9.仕事を済ませるのに必要なことだけをするようにしている. −.eo5. .534. .Ol5. .246. 2.決められた勤務時間どおりに働く方が好きだ. ・.068. .532. .060. .023. 4.仕事にあまり熱中しすぎないほうがよい. .015. .403. ㌔026. .266. 22.会社が定年まで雇用を保障してくれるならば、この会社に最大限の貢献をしたい. −.042. −.026. .767. .223. 7.今の仕事をなるべく長く続けるつもりだ 14.この会社のためにいつまでも働こうと思う 18.私にとって会社は家族のようなものであると感じる(逆). −.049. .007. ,682. ユ00. −.082. −.031. .578. −278. 一ユ87. −.062. nllO. .497. 1.自分の仕皐は主にお金を稼ぐためにしている 5.残業に対して規定通りお金が支払われることを望んでいる. −.054. ,271. .255. .458. .106. .197. .159. .380. 8.会杜に忠誠心をあまり抱かないのが普通だと思う. .083. .253. 一ユ81. .365. H. 皿. 11.基本的に規則で決められた時拙の範囲内だけで働きたい. 因子間相閤 I.    I  −    ll −.350.    皿 .405. 一.060.    N −、329. .133. 一.494. および因子の解釈可能性を検討し,4因子構造. 向上を図りたい」や「この会社の中で自分が成. が妥当であると判断した.そこで4因子構造を. 長することを望む」など,会社内部でのキャリ. 仮定して,主因子法・Promax回転による因子 分析を再度行った.その結果,いずれの因子に. ア開発志向や昇進努力志向を示す諸項目が高い 正の負荷量を示していた.このように当該因子. 対しても十分な負荷量(O.35)を満たさなかっ. は,組織志向と能力開発志向から構成されると. た4項目を分析から除外し,主因子法・. 考えられるため,「内部キャリア開発志向」因. Promax回転による因子分析を再度行った.さ. 子と命名した.. らにその結果から,いずれの因子に対しても十.  第2因子は,「自分の仕事だけの目標が満た. 分な負荷量を満たさなかった1項目を除外し, 残りの19項目に対して主因子法・Promax回転. 決められた時間の範囲内だけで働きたい」など,. による因子分析を行った.Promax回転後の最. 組織よりも個人の目標や利害を申心に据え,必. 終的な因子パターンと因子問相関を表2に示す.. 要最小限の時間や努力水準で働く志向を示す諸. なお,回転前の4因子で19項目の全分散を説明. 項目が高い負荷量を示していた.このように当. する割合は50.48%であった.. 該因子は,自己利害志向と最低努力志向から構.  各因子は以下のように解釈された.第1因子 は,「この会社で仕事することで,自分の能力. 成されると考えられるため,「合理主義志向」. されるだけで満足である」や「基本的に規則で. 因子と命名した..

(7) (429)79. 個人の心理的契約が組織コミットメントに及ほす影響について(ll.1岡 徹). 表3 組織コミットメント変化と心理的契約との相関係数(因子得点間) 心理的契約. 組織:1ミットメント変イヒ 2. 1. 3. 4. 5. 6. 1.’1青緒的コミットメント強化. 2.存続的コミットメント強イヒ. .0ユ. 3.内部キャリア開発志向. .57’⇔. 4.合理主義志向 5.定年雇用志向. ・.24’“. .53’”. .26°°°    .47°“    白.1r      −. 6.金銭契約志向. 一.54“’. 一ユ7.“    ㌔41.“    .24・.・    一.61・・.. 〔08   − 22°.・    一.44.“      一. ゜p<.05.°p<.01°“p<.(〕01.  eg 3因子は,「会社が定年まで雇用を保障し. は,「内部キャリア開発志向」因子および「定. てくれるならば,この会社に最大限の貢献をし. 年雇用志向」因子と有意な正の相閲(それぞれ. たい」や「今の仕事をなるべく長く続けるつも. r=.57, r=.53,いずれもp<.001),「金銭契約志向1. りだ」など,長期的な雇用への期待と会社への. 因子および「合理主義志向」因子とは有意な負. 忠誠を示す内容の諸項目が高い負荷量を示して. の相関(それぞれr=一.54,r=・.24,いずれも. いた.このように当該因子は,長期雇用志向と. p<.001)を示した.. 会社忠誠志向から構成されると考えられるため,.  「存続的コミットメント強化」因子に関して. 「定年雇用志向」因子と命名した.. は,「定年雇用志向」因子および「合理主義志.  第4因子は,「私にとって会社は家族のよう. 向」因子と有意な正の相関(それぞれr=.26,. なものであると感じる(逆転項目)」や「自分. r=.22,いずれもpく.OO1),「金銭契約志向」因子. の仕事は主にお金を稼ぐためにしている」など,. とは有意な負の相関(r=一.17,P<.001)を示した.. 金銭的報酬を重視し,会社組織を家族のような.  このほかに「内部キャリア開発志向」因子に. 存在として見なす考えを否定する内容の諸項目. 関しては,「定年雇用志向」因子と有意な正の. が高い負荷量を示していた.このように当該因. 相関(r=.47,p<.001),「合理主義志向」因子お. 子は,金銭報酬重視志向と会社忠誠否定志向か. よび「金銭契約志向」困子とは有意な負の相関. ら構成されると考えられるため,「金銭契約志. (それぞれr=、44,r=一.41,いずれもp<、00ユ)を示. 向」因子と命名した.. した.さらに「金銭契約志向」因子に関しては,.  この因子分析の結果に基づいて,Promax回. 「合理主義志向」因子と有意な正の相関(r=.24,. 転後の因子得点を回帰法で推定することにより,. p<.OO1),「定年雇用志向」因子とは有意な負の. 上記4摺子に閲する因子得点を算出した.. 相関{r=一.61. p<.OOI)を示した、. 4.組織コミットメント変化と心理的契約の相. 5.コミットメント・スタイルによる分類.   互相関  上記において算出した因子得点である,「情.  組織コミットメント変化の下位尺度である 「情緒的コミットメント強化」得点と「存続的. 緒的コミットメント強化」得点,「存続的コミ. コミットメント強化」得点を用いて,グループ. ットメント強化」得点,「内部キャリア開発志. 内平均連結法によるクラスタ分析を行い,3つ. 向」得点,「合理主義志向」得点,「定年雇用志. のクラスタを得た.第1クラスタには135名,. 向」得点,「金銭契約志向」得点の相互関係を 表3に示す.. 第2クラスタには120名,第3クラスタには258. 名の調査対象者が含まれていた.κ糧定を行.  「情緒的コミットメント強化」因子に関して. ったところ,人数比率に有意な偏りが見られた.

(8) 横浜{置i’誉]研究  第26巻  第3 ・4号 (2006). 80(430). 図1 3群の組織コミットメント変化の因子得点 1.5 1. 1. 0.5. 型 葺  0. 一〇.5. 一1. s. 一t5. クラスタ1:帰属意識低下群クラスタ2:打算関係強化群クラスタ3:愛着関係強化群 口情緒的コミットメント強化圏存続的コミットメント強化.  次に,得られた3つのクラスタを独立変数と. 3クラスタく第1クラスタく第2クラスタとい う平均値の有意な差が見られた(図1に3群の. し,「情緒的コミットメント強化」因子および. 因子得点の平均値を示す).. 「存続的コミットメント強化」因子を従属変数.  各クラスタは以下のように解釈された.第1. (X2=67.05、 df =2t p<.OOI).. とした分散分析を行った.その結果,「情緒的,. クラスタは「情緒的コミットメント強化」と. コミットメント強化」因子および「存続的コミ. 「存続的コミットメント強化」の平均値が3群. ットメント強化」因子ともに有意な群問差が見. のなかでともに最小であり,会社に対する帰属. られた(情緒的コミットメント強化:F(2,510). 意識に低下傾向がみられるため,「帰属意識低. =295.35,存続的コミットメント強化:F(2,510) =289.81,ともにP<.001).. 下群」とした.第2クラスタは「存続的コミッ トメント強化」の平均値が最大であり,「情緒.  さらにTurkeyのHSD法(5%水準)による. 的コミットメント強化」は中程度であることか. 多重比較を行ったところ,「情緒的コミットメ. ら,「打算関係強化群」とした.第3クラスタ. ント強化」の因子得点については,第1クラス. は「情緒的コミットメント強化」の平均値が最. タく第2クラスタく第3クラスタ,「存続的コ. 大であり,「存続的コミットメント強化」は最. ミットメント強化」の因子得点については,第. 小であったため,「愛着関係強化群」とした..

(9) 個人の心理的契約が組織コミットメントに及ほす影響について(山岡 徹). (431)8ユ. 図2 コミットメントスタイルによる働き方の違い. 内部キャリァ開発志向     上一.. 一「   L   i. /0・5∠・.   i.   /.   i   l   l s㌔. \. 金銭契約志向. \i合理蟻志向. 1㌢/. \. 定年雇用志向 +1.帰属意識低下群一■−2.打算関係強化群一〇−3.愛着関係強化群. 6.コミットメントスタイルと心理的契約因子. =14.09,定年雇用志向:F(2,508)=49.65,金銭.   との関係. 契約志向:F(2,508)=39.04,ともにP<001)..  クラスタ分析によって同定した上記の3つの. 引き続き,TukeyのHSD法(5%水準)による. コミットメント・スタイルによって,「心理的. 多重比較を行ったところ,「合理主義志向」に. 契約」得点にどのような相違がみられるかを検. 関しては,「帰属意識低下群」と「打算関係強. 討するために,1要因の分散分析を行った.具. 化群」の間で有意な差がみられなかった.さら. 体的には,心理的契約の下位尺度である「内部. に「定年雇用志向」および「金銭契約志向jに. キャリァ開発志向」,「合理主義志向」,「定年雇. 関して,「愛着関係強化群」と「打算関係強化. 用志向」,「金銭契約志向」の因子得点の平均値. 群」との間で有意な差がみられなかった.以上. が,コミットメントスタイルの3クラスタによ. の群間を除いて,残りすべての群間で有意な得. って相違するかどうかを検討した{図2参照).. 点差が見られた.・.  分散分析の結果,心理的契約の4つの下位尺 度すべてにおいて,群間の得点差がO.1%水準. 7.従業員の心理的契約が組織コミットメント. で有意であった(内部キャリァ開発志向:F.   に与える影響. (2,508)=62.51,合理主義志向:F(2、508). 従業員の心理的契約の4つの下位尺度が組織.

(10) 横浜経営研究 第26巻 第3・4号(2006). 82(432). 表4 組織的コミットメント変化を従属変数とする重回帰分析 1青緒的コミットメント強化. 存続的コミットメント強化. β. β. .381’”. 一ユ82“1. 合理主義志向. .016. .195寧’t. 定年雇用志向. ユ86’“. .305’”. 金銭契約志向. ㌔271°“. 一.105. 自由度調整済みRZ. .455”’. .148’”. 内部キャリア開発志向. .pく,05⇔p<.01°”p<.OOユ. β:標準偏回帰係数. コミットメント変化に与える影響を検討するた. 合意に関して,個人が主観的に抱く信念を意味. めに,「組織コミットメント変化」を従属変数,. する.すなわち,組織との交換関係において想. 心理的契約の下位尺度である「内部キャリア開. 定される義務や貢献,報酬に対する個人の主観. 発志向」,「合理主義志向j,「定年雇用志向」,. 的な期待が心理的契約の意味するところである.. 「金銭契約志向」をそれぞれ独立変数とする重.  本論における心理的契約尺度の因子分析では. 回帰分析を強制投入法により行った(表4参照).. 4つの因子が抽出された.「内部キャリア開発.  「情緒的コミットメント強化」を従属変数と. 志向」因子は,組織との交換関係における誘因. する重回帰分析では,自由度調整済みR2が.455. として,自己の潜在能力の開発機会を期待する. で有意な結果であった〔F(4,506)=107、62,. 個人の潜在志向性として解釈できる.組織にお. p<力01).標準偏回帰係数については,「内部キ. ける個人のこの種の志向性は,マズロー. ャリア開発志向」と「定年雇用志向」が正の有. (Maslow,1952)の欲求階層説に従えば,「自己. 意な値(それぞれ,fi =.381,βrl86,いずれも. 実現の欲求」に対応する志向性として位置づけ. p<.OOI),「金銭契約志向」が負の有意な値(β. られるであろう.また「定年雇用志向」因子は,. =−271tp<.001)であった.「合理主義志向」. 組織に対する安定雇用への期待の現れであり, 「安全の欲求」に対応する潜在志向と推論でき. (βrO16)については, p>.05であり有意な値. る.. ではなかった..  「存続的コミットメント強化」を従属変数と.  一方,「金銭契約志向」因子であるが,これ. する重回帰分析では,自由度調整済みR2が148. は組織との交換関係において金銭的報酬のみを. で有意な結果であった(F(4,506)=23.15,. 誘因として期待し,それ以外の副次的な報酬に. p<.OO1).標準偏回帰係数については,「定年雇. よって組織に拘束されることを忌避する潜在志. 用志向」と「合理主義志向jが正の有意な値’. 向として解釈できる.また「合理主義志向」因. (それぞれ,β =.305,fi =.195,いずれもpく.OOI),. 子については,自己利害志向と最低努力志向か. 「内部キャリア開発志向」が負の有意な値(β. ら成る因子であり,組織との交換関係において. =一.182,p<.OOI)であった.「金銭契約志向」. 「割り切った関係性をもつこと」自体を誘因と. (βニー.105)については,p>.05であり有意な値. して評価する個人の潜在志向として解釈できる かもしれない.. ではなかった..  以上をまとめると,個人は組織との交換関係 lV 考察. 1.心理的契約尺度について 心理的契約とは,組織との交換関係における. において,潜在能力の開発機会,安定的な雇用,. 金銭的報酬,割り切った関係性などを期待する 潜在的な志向性をもつことが明らかにされた..

(11) 個人の心理的契約が組織コミットメントに及ぼす影響について(山岡 徹). (433)83. 2.心理的契約尺度と組織コミットメント変化. として安定雇用が保証されること!ま,投資効率.   との相関性. の非常によい魅力的な取引条件であるため,組. (1)情緒的コミットメント強化について. 織に対する帰属意識が高められると推論できる..  組織コミットメント変化と心理的契約尺度と. 一方で金銭契約志向の因子得点が高いほど,存. の相関性の分析では,内部キャリア開発志向お. 続的コミットメント強化の因子得点が有意に低. よび定年雇用志向の因子得点が高いほど,情緒. いという傾向が見られた.金銭契約志向は情緒. 的コミットメント強化の因子得点が有意に高い. 的コミットメント強化に対しても負の有意な相. という結果がでた.この結果は,自らの能力・. 関性を示したわけだが,金銭的報酬だけを誘因. キャリア開発の場と認知される組織,あるいは. として組織との関わりをもつ個人は,情緒的な. 安定雇用を提供する場としての組織に対して,. 観点からも功利的な観点からも,特定組織と継. 情緒的コミットメントが強化されやすいことを. 続的な関わりをもつ傾向,すなわち組織コミッ. 示唆するものである.逆に,金銭契約志向およ. トメントが総じて低いことをこれらの結果は示. び合理主義志向の因子得点が高いほど,情緒的. 唆している.. コミットメント強化の因子得点が有意に低いと いう傾向がみられた.特に金銭契約志向におい. 3.コミットメントスタイルによる働き方の相. て,その傾向が顕著であった.金銭契約志向に.   違. は,金銭的報酬を重視する志向性と組織に対す.  情緒的コミットメント強化および存続的コミ. る忠誠心を否定する志向性が含まれており,情. ットメント強化の因子得点を用いたクラスタ分. 緒的コミットメント強化に対してそれらの要素 が負の相関性を強くもっていたため,このよう. 析から,人数比率に有意な偏りをもつ3クラス タを得た.情緒的および存続的コミットメント. な傾向が顕在化したと考えられる.総じてこれ. 強化の因子得点が総じて低い「帰属意識低下群」,. らの結果は,功利的な損得計算ではなく情緒的 な愛着から組織に対する帰属意識を捉える情緒. 存続的コミットメント強化の因子得点が高い. 的コミットメントの概念と整合的なものであっ. の因子得点が高い「愛着関係強化群」である.. た.. さらに,これらの群間で心理的契約因子の下位. 「打算関係強化群」,情緒的コミットメント強化. 尺度に有意な差が見られるかどうかを分析した.. (2)存続的コミットメント強化について.  「内部キャリア開発志向」に関しては,帰属.  合理主義志向および定年雇用志向の因子得点. 意識低下群が有意に最も低い水準であ1) ,愛着. が高いほど,存続的コミットメント強化の因子. 関係強化群が有意に最も高い水準であった.こ. 得点が有意に高いという結果がでた.この結果. れは愛着関係強化群が現在の組織内でのキャリ. は,個人の利害を尊重し必要最小限の努力義務 以外は個人た求めない組織,あるいは安定的な. 群はキャリア開発には概ね無関心であり,帰属. 雇用を提供する組織ほど,存続的コミットメン. 意識低下群は現在の組織内でのキャリア開発に. トが強化されやすいことを示唆するものである.. ア開発を望んでいるのに対して,打算関係強化. 対して否定的なスタンスを有していることが反. ここで存続的コミットメントとは,組織を離れ. 映された結果であると考えられる.「定年雇用. ることで将来生じうるコストの知覚から,引き. 志向」については,愛着関係強化群と打算関係. 続き,現在の組織に所属し続ける選択をすると. 強化群との間に有意な差はなく,帰属意識低下. いう,個人の功利的な認知プロセスから説明さ. 群のみが有意に低い水準であった.これは現在. れる帰属意識を指す.個人の功利的な観点に立. の組織との関わりを継続する意識が帰属意識低. てば,仕事面での最低水準の努力投入の見返り. 下群で低いことの現れと見なすことができるだ.

(12) 8・1(434). 横浜経営研究 第26巻 第3・4号(2006)1. ’ろう.これらの結果とは反対に「金銭契約志向」. 帰係数が正の有意な値をとったことは,仮に定. については,愛着閲係強化群と打算閲係強化群. 年前に中途で会社を退職する際に生じるコスト. との間に有意な差が見られないのに対して,帰. の知覚に基づいて帰属意識を強める存続的コミ. 属意識低下群のみが有意に高い水準を示した.. ヅトメント概念と整合する結果であるtまた. 一方「合理主義志向」については,帰属意識低. 「合理主義志向」の標準偏回帰係数が正の有意. 下群と打算関係強化群との間には有意な差はみ. な値をとったことは,組織に対する投資を最小. られなかったが,それらの群は愛着関係強化群. 阻にとどめつつ,最大の報酬を得ようとする存. と比較して有意に高い水準であった・. 続的コミットメントの功利的側面と符合する結 果である.なお「内部キャリア開発志向」につ. 4.組織コミットメント変化の規定要因. いて,「存続的コミットメント強化」との相関.  従業員の心理的契約が組織コミットメントの. 分析では有意な相関性を示さなかったが,重回. 変化に及ぽす影響を検討するため,組織コミッ. 帰分析では標準偏回帰係数が負の有意な値とな. トメント変化を従属変数,心理的契約の4つの. った.このことは「内部キャリア開発志向」が. 下位尺度を独立変数とする重回帰分析を行った.. 抑制変数であることを示唆するものであり,分.  「惰緒的コミットメント強化」に対しては, 「内部キャリア開発志向」が最も強い正の影響. 析結果のさらなる検討が必要であろう.. 力をもち,次いで「金銭契約志向」の負の影響 力,そして「定年雇用志向」の正の影響力が,. ∨ 今後の課題.  人的資源管理施策が従業員の組織コミッFメ. それぞれ有意な水準で確認できた.この結果は,. ントに影響を及ほすプロセスをモデル化した議. 仮に従業員のキャリア開発へのニーズが軽視さ. 論にメイヤーとアレン(Meyer&Ailen、1997). れる一方で,業績主義的な人的資源管理施策に. の議論がある.このモデルでは,人的資源管理. よって従業員の金銭契約志向が強められれば,. 施策が従業員の組織コミットメントに影響を及. 組織に対する情緒的コミットメントの強化は負. ぽすプロセスにおいて,両者を媒介する変数と. の影響を受けることを示唆しており,業績主義. して従業員の知覚や認知を重視する.. 的な入事制度の導入が進む日本企業における人.  たとえば,ある会社が業績主義的な人的資源. 的資源管理施策の今後の方向性を考えるうえで. 管理施策を新たに採用したとしよう.その新施. 興味深い.なおギ合理主義志向」は情緒的コミ. 策が従業員の組織コミットメントに対してどの. ットメント強化に対して,有意な影響力を有し. ような影響を及ぼすかは,従業員が新施策を導. ていなかった.相関分析(表3参照)では両変. 入した会社側の意図をどのように知覚するかと. 数問で有意な相関性(r=一.24,p<.OO1)が見られ. いう変数に媒介されるとこのモデルでは考える.. たことを考えあわせると,この相関性は他の要. 仮に新施策が従業員のキャリア開発を意図する. 因から何らかの影響を受けた疑似相関である可. ものとして従業員に認知されるならば,従業員. 能性が示唆される.. は自己を会社から価値をおかれた存在とみなす.  一方「存続的コミットメント強化」に対して. ようになり,会社への情緒的コミットメントを. は,「定年雇用志向」が最も強い正の影響力を. 増大させる.一方で新施策が,仮に会社を辞め. もち,次いで「合理主義志向」の正の影響力,. る際に従業員が負担するコスト増大を知覚させ. そして「内部キャリア開発志向」の負の影響力. るものであるならば,存続的コミットメントが. が,それぞれ有意な水準で確認できた.「存続. 増大される.このように人的資源管理施策によ. 的コミットメント強化」を従属変数とする重回. る組織コミットメントの増大は,施策を導入し. 帰分析において,「定年雇用志向」の標準偏回. た会社側の意図を従業員がいかに認知するかに.

(13) 個人の心理的契約が組織コミットメントに及ほす影響について仙糊 徹). 媒介されると考えるのである..  では,そのような従業員の知覚や認知パター ンはいかにして形成されるのであろうか.また 会社や部門によって従業員の認知プロセスには. 傾向の相違がみられないだろうか.ルソー (Rousseau,]995)は,濯用関係に関わる従業. 員の主観的信念が,人的資源管理施策などの組 織的要因によって育成されることを指摘してい る..  ここで組織コミットメントの概念に注目して メイヤーとアレン(Meyer&Allen,1997)とル. (435)85.   26:3・ユ5.. ’1!iL木恵之祐,2001 「従業員の心理的契約と組織コミ.   ットメントがi塁職意思に及ぼす影響に ついて」,   ぎ産業・組織心理学研究」第15巻第1号:13−25, Aranya, N, Kushnir. T.&Valelicy. A.ユ986.   0rganizational commitment in a male   dominated profession. Human Re∫a tion s,39:433−.   448. Barnard, C工193S T」】e Functions of the Executive,.   Harvard University Press,(山本安次郎・田杉   ’競・飯野春樹訳1968『新訳 経営者の役刮』ダ   イヤモンド社) Becker, H.S.1960 Notes on the concept of   cqmmitment. American Journal of soc「o∫09y,   66:32−40,. ソー(Rousseau,1995)の議論を統合するなら. Buchanan, B.1974 Building organlzatlenal. ば,組織コミットメントを主として規定してい.   commitment:Tlle socialization of managers in. るのは人的資源管理施策などの組織的要因であ り,また両変数を媒介しているのが従業員の認 知プロセスである.さらにその認知プロセスの 形成に対しても人的資源管理施策などの組織的. 要因が影響を及ぼすという概念モデルが仮定で きる.本論では,従業貝の心理的契約が組織コ ミットメントに及ぼす影響について検討してき たわけだが,上記の統合モデルの妥当性の検証,.   work。rganizations. Adminis亡ra tive Science   QuarteriyL 19;533−546.. DeCotiis. T.A.&Summers, T.P.1987 A path   analysis of a model of the antecedent5 aiid   consequences of orglc nizationa1 comihitment.   Hunコa皿Rela亡ions,40:445470. Dunham. R.B., Grube, J.A.&Castaneda, MB.1994.   0yganizationa!commitment:the util量ty of an   illtegrative defillition. Jour」na∫ of Ap」P∫ied   PSyc血ology,79:370−380. Eisenberger, R, Fasolo. P.&Davis・LaMastro. V.. および本論の分析結果が統合モデルにいかに位.   1990Perceived organizational supPort an(l   empleyee   diligence. cornmitment and. 置づけられるかの検証については今後の課題と.   innovatiOI1. Jour皿ai of Applied Psychology,   75:51−59.. したい.. Gaertner, K.N.& Nollen, S.D.1989 Career.   experiences. perceptions of employment 注. 1)本調査は「エンプロヤビリティ志向の人的資.  源管理施策と組織コミットメントの流動  化の調査研究」(文部科学省科学研究補助金・.  基盤研究(C)(2),研究代表者・若林直  樹,課題番号15530256)により実施された.. 参考文献 Allen, NJ.&Meyer, J.P.1990 The measuremellt   and aPtecedents of affective, continuance and.   nOrlll飢lve COmmitment lto the organization..   practices, and  psychological commitment to   the organization. Hunian Rela tioi]s,42:975−991.. Gregersen, H,B.1992 Commitments to a parent.   company and a local work unit during   repatriation. petrsonal PsJ・chology,45:29’54. Kidron, A,1978 XVork values and organizationa!   commitment. Academy of Adanagemen t Journal,   21:239−247, Maslow, A.H.1954 A,lotiva tion and personaiity,2nd.   ed. Harper&Row. New York.(ノ」、口忠彦訳.   197ユ『人間性の心理学」産業能率大学出版部) 松山一紀2005『経営戦略と人的資源管理』白桃書房. Meyer, J.P.&AIIen, N.工1997 Commitment in the.   Journal of Occupationt?l PSycJlo∫09y,63:1−1且.   wO1士piace:theoi:iT, resea1℃∫L a刀d applica亡∫0皿,. Alutto.工A, Hrebiniak, L,G.&Alonso, RC l9730n.   SAGE Publications..   opera亡iona!izing the concept of commitment.. Millward. LJ.&Hopkins, LJ,1998 Ps}℃hological.   Soci.1∬Forces,5ユ:448・454..   conn’acts. Org乱niZatiOll and jOb COmmitment・. Angle, Il.L.&Lawsoli, M.B.1993 Cllanges in.   JOUi’nal of AρPlied Socini Psyc1]olegy,’28:1530−.   affective and continuance commitrpent ill times   of relocation, Journal of Businεss Research,.    1556. Morris, J.&Sherman, J,D,1981 Generalizablltty of.

(14) 86(436). 横浜経営研究 第26巻 第3・4号(2006).    ari vrganizadcma1 cema?itrneRt m◎del・・Acade棚y.    68:429・438.    o∫ A4ianagemen t JeurnaL 24:512・526.. Re澱sseau.DM、ユ995 Psychc∫oigical cova tra c ts互遡. Mow《責ay, R.T., Steers, RM,&Por亡er, LW.ユ979 The.    organixa tienSi un ders ta fi ding wr#勧aRd.    measure’meut◎f grganizationaユc⑪mmitment..   .un ;vritten  agアeem en ts、 SAGiE PubliCfttieftS,.    Journal ef V担εaだθ録ロ1 Ba』占avisr,14:224−247.    Th◎u$and Oaks.. Putti, J.M、, Aryee, S,&L三ang, T.K.ヱ989 Work valtte. ?,$rオgミ告ノk・石田正i$・i益田圭1997 「実§正自§6膏究一会.    and orgallizational commitment:Astudy in the.    社入聞をめぐる要因構造一」 田尾 雅夫編.    A§三aR centext. HumgηRe拍由刀s,42275−288..    f「会社人間」の研究』 京都大学学術出版会:. Rh◎des, S,]R.& Stee董rs, R.M’]、981 C《}Rventienal vs..    265.296..    w。rker・owned organizations. Hu疏fi 1ぞeiations.. Vanc◎uver, J.B.&Schmitt,民W.1991 An.    34:1013・1035,.    expiora的ry exam三xxation《}f p鍵^sむtt−orgafiizatiOft. Rusbult, CE、&Farrell, D.1983 A 1《mgitudinal te$t.    fit:organizationai goal congruence. Personal.    of the investment m白delr The impact on泌.    Psyc力elogy,44:333−352..    sati呂faction. lob commitment, and tumover of. Wiener,Y.1982 CeMmitrr}ent in crganizati◎n:A.    −variatigrrs桓rewards. C⑪st$, altematives, and.    normative View. Academy of Management.    investment. /purnaf of AρpJied Psyc加Jo醐.    Revie;vs 7二4i8・428。. 〔やまおか. とおる 横浜国立大学大学院国際社会科学研究科助教授〕                 〔20{}6年1月1◎1ヨ受理〕. 耐.

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参照

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