敷地内全面禁煙に対する看護師の意識と実施後の変化
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(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第57巻 第1号 JournalofHokkaidoUniversityofEducation(Education)Vol.57,No.1. 平成18年8月 August,2006. 敷地内全面禁煙に対する看護師の意識と実施後の変化. 荒 ひとみ・西山 真澄・山崎 茜・苫米地真弓*・芝木美沙子・笹嶋 由美 北海道教育大学旭川枚臨床医学・看護学教室 *旭川医科大学医学部看護学科看護学講座. TheOpinionsofNursesregardingtheNo−SmOkingPolicyfortheCampus andtheUniversityHospitalbeforeandafteritsImplementation ARAHitomi,NISHIYAMAMasumi,YAMAZAKIAkane,. TOMABECHIMayumi*,SHIBAKIMisako,SASAJIMAYumi DepartmentofClinicalScienceandNursing,AsahikawaCampusHokkaidoUniversityofEducation *AsahikawaMedicalCollege,SchoolofNursing. 要 旨 この研究の目的は,敷地内全面禁煙対策の看護師への影響を明らかにすることである.旭川市内のA病院 に勤務する看護師337名を対象に,無記名自己記入式質問紙を用いて調査を行なった.喫煙率は,25.5%で, 男性は,77.8%,女性は24.4%であり,全国平均より喫煙率が高かった.喫煙の理由としては,ストレス解 消が最も多かった.敷地内全面禁煙の影響として,喫煙者では,実施後の喫煙本数に減少が見られ,看護師 の勤務時間における喫煙本数の減少に繋がっていた.また喫煙者では,体調,気分,集中力,ストレスに対 して禁煙による影響が見られ,非喫煙者に比べて,敷地内禁煙を否定的に捉えている傾向が見られた.. Ⅰ.はじめに. 成人女性の喫煙率はわずかであるが上昇傾向にあ. る1).こうした状況の中,平成12年「健康日本21」. 昭和63年にWHOにより「世界禁煙デー」が始. にて,喫煙に関しては健康増進法の第25条受動喫. まり,平成元年には「たばこに関するWHOの行. 煙防止対策が示され,国立病院では全て禁煙・分. 動計画」が決議され,各国においても喫煙対策が. 煙,個人病院でも大半は禁煙となった.喫煙に関. 積極的に進められるようになった.日本において. する研究として,医療従事者の喫煙や喫煙行動に. は,厚生省では国民の健康の保持・増進及び疾病. っいての調査は多く見られるが2),健康増進法公. 予防の観点から喫煙対策に取り組み,受動喫煙と. 布後の受動喫煙防止対策の影響に関しての調査は. 分煙の問題や青少年の喫煙問題などが大きくとり. 少ない.そこで,よりよい敷地内全面禁煙のあり. あげられるようになった.しかし,その一方では,. 方を考えることを目的に,平成15年3月から敷地. 成人男性の喫煙率が依然として高い水準であり,. 内全面禁煙となった旭川市内A病院において看護. 295.
(3) 荒 ひとみ・西山 真澄・山崎. 菌・苫米地真弓・芝木美沙子・笹嶋 由美. 師に与える敷地内全面禁煙対策の影響を調査し. がないは68.0%(229名)であった.現在まで喫. た.. 煙したことのない人と以前に喫煙していた人を合 わせた74.5%(251名)を非喫煙者とした.喫煙 率は25.5%で,性別では男性77.8%(7名),女. Ⅰ.研究対象および方法. 性24.4%(76名)であり,それぞれ全国平均の男 性52.0%,女性14.7%よりも高かった(図1).. 旭川市内のA病院に勤務する看護師369名を対象 とし,無記名自己記入式質問紙調査方法にて,平. 成16年11月25日から12月3日において実施した.. 全体 n=337. 調査結果は統計的に処理されプライバシーは保護 男性 n=9. されることを明記した.調査項目は,①喫煙状況. ②喫煙者の状況③以前喫煙していた人の状況④敷. 女性 n=312. 地内全面禁煙前後の心身の変化⑤内全面禁煙実施 ■喫煙者 口非喫煙者. に対する見解⑥喫煙に対する考え方⑦敷地内全面 禁煙実施による禁煙指導への影響であった.回収. (***Pく0.001). 図1 喫煙率. 数は337名(内訳:男性9,女性312,不明16),回 収率は91.3%であった.調査結果の分析はズ2検. 3.喫煙者の状況. 定を行い有意水準5%をもって差があるとした.. 1日の喫煙本数は,最少は1本,最多は30本で 平均は11.5本であった.「6∼10本」45.3%(39名) と最も多く,「10本以下」と「11本以上」に分け. Ⅱ.結 果. たところ,「10本以下」は65.1%(56名),「11本. 1.調査対象の概要. 以上」は32.6%(28名)であった.. 敷地内全面禁煙以前と現在の喫煙本数の変化で. 対象の属性は表1に示した.. 勤続年数は,5年以下が47.8%(161名),6∼. みると,「変化なし」61.6%(53名),「本数が減っ. 10年が19.6%(66名),11∼15年が8.9%(30名),. た」29.1%(25名),「本数が増えた」5.8%(5名). 16∼20年が8.6%(29名),21∼25年が3.3%(11名),. であった.. 26∼30年が3.9%(13名),31年以上2.1%(7名). 喫煙理由は,「ストレス解消のため」が57.0%(49. であった.. 名)と最も多く,次いで「何となく習慣で」47.7% (41名),「落ち着くから」「やめられないから」. ともに38.4%(33名)などであった(表2).起. 表1 対象者の性別と年代 年 全体. 1.5. (0) (0) 92.6. 女 性. 50.4. 0.9. 0.3. あった.起床から喫煙開始までの時間を1日の喫. (9) (5) (3) (1) 19.0. 16.3. 6.2. 0.6. 煙本数別でみると「11本以上」で「30分以内」に. (312) (170) (64) (55) (21) (2). 無回答 4.7 (0) (0) 合 計. 75.6%(65名),「30分以降」が23.3%(20名)で. 20代 30代 40代 50代 無回答. 2.7 男 性. 床から喫煙開始までの時間は,「30分以内」が. 代. 100.0. 51.9. 0.3. 1.5. (16) (1) (5) (10) 19.9. 16.9. 3.0. 7.7. (337) (175) (67) (57) (26) (12). 喫煙すると回答した人は92.9%(26名),「10本以 卜」では67.9%(38名)であり,「11本以上」の. 3.6. 方が30分以内に喫煙する人が有意に多かった(p <0.01).. 2.喫煙率. 現在喫煙しているは25.5%(86名),以前に喫 煙していたは6.5%(22名),今まで喫煙したこと. 296. 依存度を算出する方法として,簡易ニコチン依 存度テストを用いた.1日26本以上で起床後30分 以内に喫煙する人を重度,26本以上で30分以降ま.
(4) 敷地内全面禁煙に対する看護師の意識と実施後の変化 表2 喫煙理由(複数回答) 代. 年 全体 n=86. 30代以上 検定 10本以下 11本以上 検定 増えた 減った 変わらない. n=47 ストレス解消のため. 57.0 (49). 何となく習慣で. 47.7 (41). 落ち着くから. 38.4 (33). やめられないから. 38.4 (33). おいしいと感じるから. 23.3 (20). やめると手持ち無沙汰になるから. 16.3 (14). 眠気覚ましのため. 9.3 (8). 人と話をしている時に間が取れる. 4.7 (4). やめると太るから その他. n=36. 55.3. 58.3. (26) (21). 42.6. 52.8. (20) (19). 38.3. 38.9. (18) (14). 38.3. 38.9. (18) (14). 29.8. n=5. n=28. 69.6 35.7 **. 57.1 *. (39) (10). 32.1 (32) (9). 42.9 32.1 (24) (9) 48.2 21.4 *. (27) (6). 16.7. 23.2 17.9 (13) (5) 17.9 14.3. (8) (5). 10.6. 8.3. (10) (4). 5.4. 四 (2). (3) 四. 5.6. (0). (2) 5.6. (0). (2). n=25. 80.0. 検定. n=53. 60.0. 56.6. (4) (15) (30) 80.0 64.0 37.7 (4) (16) (20). 20.0. 48.0. 37.7. (12) (20). 60.0. 40.0. 37.7. (3) (10) (20). 40.0. 20.0. 24.5. (2) (5) (13) 40.0. 16.0. 15.1. (2) (4) (8). 10.7 3.6. (5) (3) 2.1 5.6. 2.3 (2). n=56. (14) (6) 17.0 13.9. 3.5 (3). %(名). 本数の変化. 喫 煙 本 数. 8.0 11.3 (0). (6). 3.6. 5.4. (3) (0). 20.0. 四. 8.0. (2). 1.9. 四. 20.0 (1). 1.8. 3.8. (0) (0). (1). (2). (*P<0.05 **P<0.001). たは25本以下で30分以内に喫煙する人を中程度,. 13.6%(3名)であり,禁煙したい喫煙者の方が. 25本以下で30分以降に喫煙する人を軽度と分類し. 禁煙したい理由として有意にたばこ代を挙げてい. た.重度は,1.2%(1名),中程度は72.1%(62. た(p<0.01).. 名),軽度は22.1%(19名)であった.. 敷地内全面禁煙実施前の勤務時間における喫煙. 依存度で比較したところ,重・中程度で「喫煙 する場所が少なくなったから」1.6%(1名)に. 場所は,「喫煙所」9.3%(8名),「勤務時間は吸. 対し,軽度21.1%(4名)であり,軽度で「喫煙. わなかった」75.6%(65名)であった.また,敷. できる場所が少なくなったから」が有意に多かっ. 地内全面禁煙実施前後で,「休憩時間でも喫煙し. た(p<0.05).. ない」は敷地内全面禁煙以前で36.0%(31名),. 禁煙指導プログラムがあれば利用したいかの調. 敷地内全面禁煙後で93.0%(80名)と敷地内全面. 査結果は,「利用したい」は29.1%(25名),「利. 禁煙後に休憩時間に喫煙しない人が多くなってい. 用したくない」は61.6%(53名)であった.また,. た.「休憩中は喫煙する」は5.8%(5名)で,喫. 禁煙意思はある人では,「利用したい」48.6%(18. 煙場所全員敷地内で,その内訳は看護師宿舎が3. 名)で「利用したくない」45.9%(17名)であっ. 名,車中が2名であった.喫煙本数で比較したと. たのに対し,禁煙意思がない人は14.3%(7名). ころ,「10本以下」で休憩中は喫煙するは1.8%(1. であり,禁煙意思がある方が有意に利用を望んで. 名)に対し「11本以上」では14.3%(4名)と有. いた(p<0.001).. 意に多かった(p<0.05). 禁煙意思の有無の調査結果では,「意思がある」. 4.敷地内全面禁煙後の心身の変化(表3). 43.0%(37名),「意思がない」57.0%(49名)で. 1)身体の調子. あった.また,禁煙したい喫煙者の理由は「健康. 身体の調子は「変化なし」88.7%(299名),「良. に悪いから」81.1%(30名),「たばこ代がかかる. くなった」5.0%(17名),「悪くなった」3.3%(11. から」54.1%(20名)であった.以前喫煙してい. 名)であった.. た人の禁煙理由は「たばこ代がかかるから」が. 喫煙状況別で比較したところ,非喫煙者で「悪. 297.
(5) 荒ひとみ・西山真澄・山崎. 菌・苫米地真弓・芝木美沙子・笹嶋 由美. 表3 敷地内全面禁煙彼の心身の変化%(名) 全体. n=337. 「ストレスを感じなくなった」4.7%(16名)であっ た.. 喫煙の有無 喫煙者. 喫煙状況別で比較したところ,喫煙者で「スト. n=86. 良くなった. 体 の 調 子. 変化なし すっきりした 気 分 の 変 化. 変化なし. 集 申. 力 の 変. 5.0 1.2 6.4 (17) (1) 3.3. 12.8 ***. (11) (11) 88.7. 16.6. 3.5. (p<0.001).. 21.1. 5)その他(自由記述). (56) ( 3) 7.4. 18.6 ***. (25) (16) 72.4. 68.6. 3.0. する」が2名であった.また,非喫煙者では「敷地. 4.0. (10) ( 0). 内全面禁煙であるにもかかわらず喫煙している人. 18.6 ***. (18) (16). を見かけるのでイライラする」10名,「敷地内全. 72.1. 面禁煙なのに不快臭がする」3名,「喫煙する患. (297) (62) (235) 感じなくなった. ス ト レ ス. 4.7. 1.2. 6.0. 者さんを見るとイライラする」「患者さんの禁煙. (16) (1) ***. (42) (27). 変化なし. 79.5. 喫煙者では,「敷地内全面禁煙になってあまり 吸わなくなった」が3名,「喫煙できずにイライラ. (244) (59) (185). 5.3. 喫煙者で6.0%(15名)であり,喫煙者の方が「ス トレスを感じるようになった」が有意に多かった. 77.9. (299) (67) (232). 88.1. 化. レスを感じるようなった」は31.4%(27名),非. 管理にストレスを感じる」「禁煙になったことで 患者さんのストレスが大きくなったように思う」. 59.3. (268) (51) (217). 「患者さんに敷地内全面禁煙を説明するが説明に (P<0.001). 困るのでストレスになる」などの意見があった.. くなった」はなかったのに対して,喫煙者では 12.8%(11名)あり,有意差があった(p<0.001). 2)気分の変化. 気分の変化は「変化なし」72.4%(244名),「すっ きりした」は16.6%(56名),「悪くなった」は7.4% (25名)であった.. 喫煙状況別で比較したところ,喫煙者で「悪く なった」は18.6%(16人),非喫煙者では3.6%(9 名)であり,喫煙者の方が「悪くなった」が有意 に多かった(p<0.001).. 5.敷地内全面禁煙実施に対する見解 敷地内全面禁煙に対する感想の結果は,満足し ているは16.0%(54名),不満があるは75.7%(255 名)であり,不満がある理由は「隠れて喫煙して いる人がいる」76.1%(194名),「敷地を出てす ぐに喫煙している人がいる」47.8%(122名)であっ た(表4).. その他の意見では,「玄関で喫煙している人が いる」「トイレで喫煙している人がいる」が挙げ. 3)集中力の変化. られていた.また,患者の喫煙については,「患. 集中力の変化は「変化なし」88.1%(297名),「で. 者が玄関先で喫煙している」「患者が病衣のまま. きなくなった」5.3%(18名),「できるようになっ. 外で喫煙しており体調が気になる」「喫煙をスト. た」3.0%(10名)であった.. レス解消策としている末期患者の楽しみを奪うの. 喫煙状況別で比較したところ,喫煙者で「悪く なった」は18.6%(16名),非喫煙者で0.8%(2. ではないか」が挙げられていた.. 敷地内全面禁煙に対する要望の結果は,「分煙. 名)であり,喫煙者の方が「悪くなった」が有意. 希望」35.9%(121名),「禁煙徹底」30.3%(102. に多かった(p<0.001).. 名),「現状継続」17.2%(58名)であった(図2).. 4)ストレス. 感想では,満足している人で分煙を希望している. ストレスの変化は「変化なし」79.5%(268名),. 人は9.3%(5名)に対して,不満がある人は43.1%. 「ストレスを感じるようになった」12.5%(42名),. 298. (101名)であった..
(6) 敷地内全面禁煙に対する看護師の意識と実施後の変化 表4 敷地内全面禁煙に対して不満な理由. %(名). 代. 年 全体 n=255. 20代. n=130. 76.1. 隠れて喫煙している人がいる. (194) 47.8. 敷地を出てすぐ喫煙している人がいる. (122) 30.6. 上記の状況を見た患者・利用者から苦情が出ている. (78) 29.8. 患者・利用者から使いづらいと苦情が出ている. (76) 5.9. 病院以外での喫煙が増え結果として健康に悪い. (15) 3.1. 喫煙できないことで仕事に悪い影響が出る. (8) 11.0. その他. 喫 煙 状 況. (28). n=67. 71.5. 76.1 *. (93). (51). 44.6. 41.8. (58). (28). 23.8 (31). 23.9. *. (16). 30.0. 31.3. (39). (21). 7.6. 4.6. (6). (9). 14.9 ***. (10). 10.4. 3.8. (5). (7). 9.0. 10.8. (14). (6). *P<0.05 ***P<0.001. 全体. 7.敷地内全面禁煙実施による禁煙指導への影響. n=337. 敷地内全面禁煙実施による禁煙指導への影響へ 喫煙者. n=86. の結果は,「禁煙指導に影響がある」15.7%(53名), 「禁煙指導に影響がない」32.9%(111名),「指. 非喫煙者 n=251. 導する機会がない」44.2%(149名)で,喫煙指 0%. 20%. 40%. 60%. 80%. ■現状継続 ■分煙希望日禁煙徹底ロその他口不明 (***Pく0.001). 108%. 導として患者に接する機会の少ないことを回答し ていた.自由記述で影響がある理由は「喫煙する. 図2 敷地内全面禁煙に対する要望. 場所がなくなったこと」4名,「敷地内全面禁煙. 6.喫煙に対する考え方. になったことで指導がしやすくなった」10名で. 医療従事者の喫煙についての結果は,勤務時間. あった.影響がない理由は「敷地内全面禁煙が徹. 以外喫煙可は41.5%(140名),医療従事者は吸う. 底されておらず,喫煙している人がいるから」5. べきではないは27.6%(93名),医療従事者は吸っ. 名であった.. てもよいは16.9%(57名)であった.自由記述で は,喫煙者・非喫煙者ともに「喫煙は個人の自由」 「程度を考え,自己管理で吸えばよい」などの意 見が多かった.. 喫煙者状況別では,医療者は吸うべきではない は喫煙者で15.1%(13名)で,非喫煙者は31.9% (80名)であり,非喫煙者では医療者は吸うべき ではないが有意に多かった(p<0.01). 患者の喫煙についての結果は,患者の自由は. Ⅳ.考 察 1.喫煙率. 今回の調査における喫煙率は25.5%であり,平 成14年度の全国平均24.0%(厚生労働省)と同程 度の結果であったが,平成4年度の調査3)による 北海道内の国立病院・診療所に勤務する看護者の 喫煙率40.3%と比較すると低く,喫煙率の低下を. 41.2%(139名),患者は吸ってもよいは24.6%(83. 裏付ける結果となった.しかし,今回の男女別の. 名),患者は吸うべきでないは14.2%(48名)であっ. 喫煙率は男性77.8%,女性24.4%であり,全国平. た.自由記述で喫煙者・非喫煙者ともに「禁煙を. 均の男性52.0%,女性14.7%よりも高く,看護師. 強いることはできない」が6名,非喫煙者では「説. の喫煙率は一般人よりも高い傾向が示された.. 明した上で患者の意思に委ねる」「喫煙しないほ うがよい」という意見があった.. 299.
(7) 荒 ひとみ・西山 真澄・山崎. 菌・苫米地真弓・芝木美沙子・笹嶋 由美. 2.喫煙者の状況. 43.0%で,その理由は「健康に悪いから」81.1%,. 喫煙者の喫煙理由は,「ストレス解消のため」. 次いで「たばこ代がかかるから」54.1%であり,. 57.0%,「何となく習慣で」47.7%が多く,看護. 「健康に悪いから」の理由は医療従事者として害. 職は職業性ストレスの強い集団であり4),身体に. は十分理解しているが行動変容できない意思の弱. 悪いことを熟知しながらストレス解消のため喫煙. さも関係していると考えられる.しかし,個人の. していると思われる.また,具体的ではない理由. 問題として捉えるのではなく,周囲からの働きか. である「何となく」が上位にあり喫煙が生活に深. けも重要であるため,支援体制の強化が必要であ. く根付いている看護師が多いと考えられた.しか. る.「たばこ代がかかるから」については,物価. し,1日あたりの喫煙本数は「10本以下」65.1%,. 上昇率や増加率を超えて煙草の価格が上昇すると. 「11本以上」32.6%であった.「平成10年度 喫. 煙草の消費は減少することはほぼ明らかであ. 煙と健康問題に関する実態調査」(厚生省ホーム. る5).煙草の価格上昇は禁煙に繋がることはおお. ページ)による「10本以下」15.4%,「11本以上」. よそ予測されるが,喫煙が多くの社会的要因と複. 銅.4%や女性看護師を対象とした調査4)では「10. 雑に関与している事象であるから,価格上昇だけ. 本未満」42.3%,「10本以上」57.7%であり,こ. を単独で行うのではなく,他の多くの禁煙対策と. れらと比較すると喫煙本数は少ないと言えた.こ. ともに総合的な対策の一環と考える必要がある.. れは,調査対象施設において敷地内全面禁煙実施. 禁煙プログラムの利用の有無では,「利用したい」. に伴い喫煙本数が減った人も多く,院内告知など. 29.1%,「利用したくない」61.6%であった.また,. の啓発が行き届いているためではないかと考えら. 禁煙意思があるにも関わらず,「禁煙プログラム. れた.. を利用したくない」は45.9%であり,意思はある. 敷地内全面禁煙実施前後の休憩時間の喫煙状況 では,敷地内全面禁煙以前では「休憩時間は喫煙. と表現するものの具体的な禁煙対策を講じていな い人が多いと考えられた.. しない」は36.0%,敷地内全面禁煙後では93.0% に増加し勤務時間における喫煙は減少した.また,. 「1日の喫煙本数は減った」29.1%であり,F県. 3.敷地内全面禁煙後の心身の変化 敷地内全面禁煙実施後の身体の調子,気分,ス. 済生会病院でも喫煙規制を行った結果,34%が「本. トレスの変化については,全項目において非喫煙. 数が減った」との報告があり,敷地内全面禁煙に. 者よりも喫煙者の方が悪影響を被っていると回答. より喫煙所がなくなり休憩時間の喫煙規制が喫煙. しており,喫煙者は敷地内全面禁煙の影響を否定. 本数を減少させる実質的な効果をもたらしたと考. 的に捉えていると考えられた.自由記述では喫煙. えられた.しかし,敷地内全面禁煙後の休憩時間. 者から「敷地内全面禁煙をきっかけにあまり喫煙. 内での喫煙場所に敷地内の車中や看護師宿舎と回. しなくなった」や「禁煙できずにイライラする」. 答していることは,敷地内全面禁煙の定義を再確. という意見もあり,一人ひとりのニーズに合わせ. 認する必要があると思われた.. た禁煙援助やストレス解消対策が必要である.. また,5名と少数ではあるが,本数が増えた人 がおり,その中で2名は「休憩時間は喫煙しない」. 4.敷地内全面禁煙実施に対する見解. と回答している.実際には院外での喫煙が増えた. 敷地内全面禁煙に対する感想では,「不満があ. ことにより,1日の喫煙本数が増加したと考えら. る」が75.7%を占め,理由は「隠れて喫煙してい. れた.少数ではあるが敷地内全面禁煙により生じ. る人がいる」「敷地を出てすぐに喫煙している人. た結果には,病院全体で解決しようという姿勢が. がいる」や「患者が玄関先で喫煙している」「患. 必要である.. 者が病衣のまま外で喫煙しており体調が気にな. 喫煙する意思については,「禁煙意思がある」. 300. る」などをあげており,敷地内全面禁煙は完全に.
(8) 敷地内全面禁煙に対する看護師の意識と実施後の変化. 機能していないことが伺われた.また,敷地内全. る危険性を考えると医療従事者としての喫煙に対. 面禁煙により喫煙環境が減り,受動喫煙の可能性. する意識の向上が必要である.しかし,一方では. がなくなることにより非喫煙者からは不満はなく. 「末期患者に対する配慮」という医療従事者とし. なるのではないかと予測したが,実際には喫煙者. て患者のQOLに閲した問題も含み喫煙に関する. と非喫煙者間で有意な差はなく双方で不満があっ. 意識だけでは判断できない複雑な問題があった.. た.不満理由は,「隠れて喫煙している人がいる」. 敷地内全面禁煙実施による禁煙指導への影響は. 「敷地を出てすぐ喫煙している人がいる」が多かっ. 「禁煙指導に影響がある」15.7%,「禁煙指導に. た。自由記述からは,「患者が病衣のまま外で喫煙. 影響がない」32.9%であり,「影響がある」の理. しており,体調が気になる」「玄関先での喫煙は. 由は自由記述では「禁煙を勧めやすくなった」「こ. 空気が悪く,見栄えがよくない」などの医療従事. れを機に禁煙・節煙をする患者さんがいた」「受. 者としての視点で敷地内全面禁煙を捉えていた.. 動喫煙についての説明するきっかけとなった」な. 敷地内全面禁煙に対する要望は「分煙希望」. どが多かった.しかし,「患者さんから不満・苦. 35.9%,「禁煙徹底」30.3%と僅差ではあるが「分. 情がある」「隠れて喫煙している」などの悪影響. 煙希望」が最も多かった.「不満がある」人の内. をあげているものもあり,「影響がない」の自由. 訳では,分煙希望が43.1%であり,敷地内全面禁. 記述では,「敷地内全面禁煙が徹底されていない. 煙が徹底されない中でより現実的な分煙を希望し. ので説得力に欠ける」が大半をしめていた.この. ているものと思われた.前述した不満理由に加え. ように,個人間での意識の差はあるものの,「喫. 自由記述では,「喫煙をストレス解消策としてい. 煙している患者さんに対し,注意すべきか迷う」. る末期患者の楽しみを奪うのではないか」などの. といった問題を含め,患者へ一貫した対応をする. 喫煙をストレス解消として入院生活をしている患. ためには,施設として共通した見解を示す必要が. 者サイドに目を向けた意見が多かった.. ある.. 5.喫煙に対する考え方 医療従事者の喫煙については,医療従事者は吸 うべきでないは27.6%であり,自由記述では喫煙. Ⅴ.まとめ 旭川市内のA病院に勤務する看護師337名を対. 者・非喫煙者ともに「喫煙は個人の自由」「程度. 象に,敷地内全面禁煙による影響を調査したとこ. を考え,自己管理で吸えばよい」などの意見が多. ろ,以下のような結果が得られた.. くあり,喫煙に対して肯定的かつ媛やかな意見を. 1)喫煙率は25.5%,性別では男性77.8%,女性. 持っていた.全国の看護婦を対象とした調査6)で. 24.4%であり,全国平均の男性52.0%,女性. は,医療従事者としてたばこを吸うべきではない. 14.7%よりも高かった.. に賛成するものが少なく,専門職としての役割を 担う考えがないと指摘した報告と同様の傾向が見 られた.. 患者の喫煙については,患者は吸うべきでない は14.2%,患者の自由は41.2%であり,日本医帥 会を対象とした調査7)では,約4剥が「患者は喫. 2)喫煙者の敷地内全面禁煙以前後の喫煙本数の 変化は,「本数が減った」が29.1%と多かったが, 「本数が増えた」が5.8%であり,少数ではあ るが敷地内全面禁煙によって生じた結果には病 院全体で解決する姿勢が必要である. 3)喫煙者の喫煙理由で最も多いのは,「ストレ. 煙すべきではない」に賛成しており,今回の結果. ス解消」57.0%であった.看護職はストレスの. は医療従事者と同様に患者の喫煙に対しても寛容. 強い集団であり,身体に悪いことを熟知しなが. であった.こうした結果は健康教育機関として機. らも喫煙していると考えられた.. 能すべき病院で,健康に有害である喫煙を容認す. 4)喫煙者の敷地内全面実施前の勤務時間におけ. 301.
(9) 荒 ひとみ・西山 真澄・山崎. 菌・苫米地真弓・芝木美沙子・笹嶋 由美. る喫煙について,「休憩時間でも喫煙しない」. 禁煙は完全に機能していない現状も明らかになっ. は敷地内全面禁煙前36.0%,敷地内全面禁煙後. た.また,患者に関しては命を預かる職業として. では93.0%であり敷地内全面禁煙後に休憩時間. の理念が関わり敷地内全面禁煙に対して,末期患. 内に喫煙しない人が増加した.. 者の喫煙の是非に対しては一概に判断できない困. 5)喫煙者に喫煙意思の有無については,「意思. 難さが伺えた.こうした現状を考慮して,喫煙習. がある」43.0%.「意思がない」57.0%であった.. 慣のある患者のニーズにどう対応していくのかは. 禁煙意思の理由は「健康に悪いから」81.1%,. 今後の大きな課題である.. 次いで「煙草代がかかるから」54.1%であり, 健康への意識の他に煙草の価格上昇も禁煙に繋 がる可能性は高いのではないかと考えられた.. 本稿を終えるにあたり,調査にご協力いただき ました看護師の皆様に心より感謝いたします.. 6)喫煙者の禁煙プログラムの利用の希望では, 「利用したい」は29.1%と低かった. 文 献. 7)敷地内全面禁煙実施後の体調,気分,ストレ スの変化については,全項目において喫煙者の 方が敷地内全面禁煙の悪影響を訴え,否定的に 捉えられえていると考えられた.. 8)敷地内全面禁煙に対する感想については,「不. 1)厚生労働省:喫煙と健康/喫煙と健康問題に関する. 報告書 第2版,序,1993 2)日本看護協会:「看護職とたばこ・実態調査」報告書, 社団法人日本看護協会,13,2001. 3)佐藤郁恵,澤田裕子,福良 薫:喫煙ステージ別に. 満がある」が75.7%と多く,隠れて喫煙,玄関. みた看護者の喫煙行動と喫煙問題意識一北海道内の. 先で喫煙などが挙げられ,自由記述からは敷地. 国立病院・診療所看護者の調査より,看護管理,31. 内全面禁煙は完全に機能していない現状があっ た.. 9)敷地内全面禁煙に対する要望については,「分 煙希望」が35.9%で「禁煙徹底」30.3%を上回 り,最も多かった.「不満がある」人が現在の. :102−104,2000. 4)中尾久子,小林敏生,品川汐夫:看護職における職 業性ストレス,生活習慣と精神的不健康度の関連性, 山口県立大学看護学部紀要,7:25−30,2003 5)保健同人者:新報 喫煙と健康/喫煙と健康問題に 関する検討会報告書,309−310,2002 6)大井田隆,尾崎米厚,望月友美子:看護婦の喫煙行. 敷地内全面禁煙の改善策として,禁煙徹底より. 動に関する調査研究,日本公衆衛生雑誌,9:694−. も分煙の方が現状に即していると考えていると. 701,1997. 思われた. 10)医療者の喫煙については,「医療従事者は吸. 7)大井田隆,武村真治,野崎直彦:郵送法による全国 医師喫煙調査における再調査の有効性,日本公衆衛. 生雑誌,8:573−583,2001. うべきではない」27.6%であった.自由記述で は喫煙に対して肯定的でおだやかな意見を持っ. (荒 ひとみ 旭川医科大学医学部看護学科講師. ているものが多かった. 11)患者の喫煙については,「患者は吸うべきで はない」14.2%であり,患者の喫煙に対して寛 容であった.また,患者の喫煙場所を碇供する ために分煙を考慮してもよいのではないかとい う考えが伺われた. 以上,敷地内全面禁煙にすることによって,看. 護師の勤務時間における喫煙は減少,1日の喫煙 本数の減少に繋がっており,その意味では敷地内 全面禁煙は効果的であった.しかし,敷地内全面. 302. 元旭川校大学院生). (西山 真澄 旭川校大学生) (山崎 西 旭川校大学生) (苫米地真弓 旭川医科大学医学部看護学科助手) (芝木美沙子 旭川校助教授) (笹嶋 由美 旭川校教授).
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