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教師の資質能力の形成を目指した大学と関係機関との連携の あり方について : A 市教育委員会の取り組み: 沖縄地域学リポジトリ

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Title

教師の資質能力の形成を目指した大学と関係機関との連

携の あり方について : A 市教育委員会の取り組み

Author(s)

嘉数, 健悟; 上地, 幸市

Citation

沖縄大学人文学部紀要 = Journal of the Faculty of

Humanities and Social Sciences(19): 119-124

Issue Date

2017-03-24

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12001/21469

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〈調査報告〉

教師の資質能力の形成を目指した大学と関係機関との連携の

あり方について

- A 市教育委員会の取り組み-

 

嘉数 健悟

上地 幸市

要 約  本調査報告は,教員の養成から育成に関わる協定を締結している A 市教育委員会の 教員育成について取り組みや「教師塾」の現状を中心に取り上げ,大学と関係機関の 今後のより良い連携,協働の在り方について示唆を得ることを目的とした。  その中で,A 市教育委員会は,同市の抱える課題や現状を踏まえて,より質の高い 教員,実践力のある教員を大学との連携によって養成し,育成しようとしており,教 員の育成に関わるすべての人たちが協働して取り組んでいることが明らかとなった。 また,教育実習については,教育委員会や学校現場との連携をより強化しながら,実 習系科目の充実を図っていく必要があり,学校現場に校種や教科の実習系科目の拠点 校を設定し,大学と実習校の教員が連携して指導に当たる機会を取り入れることの可 能性を指摘した。 1.はじめに  近年,知識基盤社会の到来や情報通信技術の進展,グローバル化や少子高齢化など,わが国 の社会が大きく変化してきている。こうした社会の変化の中でも,わが国が繁栄を維持してい くためには様々な分野で活躍できる人材を育成することが不可欠である(中央教育審議会答申, 2015)。そして,その人材育成の中核を担うのは学校教育であり,その直接の担い手である教師 の資質能力の向上が重要な役割を担っていると言えよう。そもそも,わが国では,1980 年代以降, 教師の資質能力に関して様々な議論がなされている。  例えば,「教員の資質能力の向上方策等について」(教育職員養成審議会,1987)では,「教員 としての資質能力は,養成・採用・現職研修の各段階を通じて形成されていくものであり,そ の向上を図るための方策は,それぞれの段階を通じて総合的に講じられる」ことの必要性が指 摘されており,「教員の職責にふさわしい資質能力は,教員養成のみならず教職生活を通じて次 第に形成されていくもの」と述べられている。また,「新たな時代に向けた教員養成の改善方策 について」(教育職員養成審議会第 1 次答申,1997)では,大学の教職課程の役割として「最

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沖縄大学人文学部紀要 第 19 号 2017 小限必要な資質能力」を身につけさせることが求められており,「教職への志向と一体感の形成」, 「教職に必要な知識及び技能の形成」,「教科等に関する専門的知識及び技能の形成」が養成段階 で特に教授・指導すべき内容の範囲として挙げられている。さらに,「今後の教員養成・免許制 度の在り方について」(中央教育審議会,2006)においても,「大学の教職課程を,『教員として 最小限必要な資質能力』を確実に身に付けさせるものに改革する」ことが提言されている.加 えて,「教職生活全体を通じた教員の資質能力の総合的な向上方策について」(中央教育審議会 答申,2012)では,「教員養成段階において,教科指導,生徒指導,学級経営等の職務を的確に 実践できる力を育成」し,「学び続ける教員像」の確立が目指されている。  このように,教師の資質能力は,採用当初から学級経営や教科指導,生徒指導等の職務を著 しい支障が生じることなく実践できるような力を大学で育て,それを基盤として教職生活の全 体を通じて総合的に形成されていくものと考えられる。  ところで,「これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について」(中央教育審議会答申, 2015)では,「学び続ける教員像」をより具現化するために養成・採用・研修の改革を進めるこ との必要性が指摘されている。  教員養成に関しては,「学校現場をより深く知ることができ,既存の教育実習と相まって,理 論と実践の往還による実践的指導力の基礎の育成に有効である」と「学校インターンシップ」 の導入が提言されており,インターシップ実施校や教育委員会,大学との連携体制の構築が必 要であるとされている。また,教員採用については,新規採用の教員が円滑に入職できるよう な取り組み(教師養成塾や配置予定校での校務体験など)の推進が求められている。さらに, 教員研修については,都道府県や市町村,学校等の研修の実施主体が大学等との有機的連携を 図りながら,教員のキャリアステージやニーズに応じて効果的・効率的な研修を行うことが指 摘されている。このような背景もあり,近年は,都道府県や市町村,学校,大学との連携によっ て教師を育てようとする試みが実施されている。  例えば,岐阜県教育委員会と岐阜大学教育学部では,教師の課題探求を軸とした 10 年経験者 研修のカリキュラムモデルを構築し,「受ける研修」から「求める研修」へと研修像の転換を図っ ている(石川ら,2008)。また,広島大学では,広島県教育委員会,広島県立教育センターの三 者が連携・協働し,初任者研修プログラムを実施している(米沢ら,2016)。さらに,東京都は, 教師養成塾や教師道場などを大学と連携して講座を開設し,実践力のある教師の育成に取り組 んでいる。  以上を踏まえると,1987 年の教育職員養成審議会答申以降,教師の資質能力向上には,都道 府県や市区町村の教育委員会,学校,大学とが連携し体系的・総合的に取り組むことが重要になっ てくると考えられる。  そこで,本稿では全国で初めて 40 以上の大学と連携し,教員の養成から育成に関わる協定を 締結している A 市教育委員会の教員育成について取り組みや「教師塾」の現状を中心に取り上 げることとする。特に,本学では 4 市町の教育委員と提携し,教師を目指す学生や現職の教員 の資質能力の向上に協働して取り組んでいるため,今後のより良い連携,協働の在り方につい て示唆を得ることも目的とする。 (文責:嘉数) 

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2.調査内容  2015 年 11 月に A 市教育委員会を訪問し,インタビュー調査を行った。インタビューの時間は, 約 2 時間であった。また,A 市教育委員会の取り組みについてのプレゼンテーションを約 20 分 行っていただいた。その際,A 市教育委員会が実施している大学との連携・協働に関する資料 も収集した。  インタビュー調査は,以下のような内容について半構造化インタビューによって実施した。 ①大学との連携について:大学と連携する(あるいは連携している)のであれば,どのような 連携が可能と考えるかなど。 ②各種講座の内容について:ネット上で公開されている講座概要の詳細と「個の力を磨く」講 座について,どのような内容で実施しているのかなど ③ A 市教育委員会の「教師塾」の開塾経緯について:現在,多くの自治体で教師塾のような取 り組みが実施されている中で,A 市教育委員会はどのような経緯で,どのような思いをもっ て実施しているのかなど。 ④卒塾した塾生の現在について:卒塾生の現場での活躍状況や卒塾生と卒塾生以外の教員に違 いはあるのかなど ⑤教師塾のこれまでとこれから  以上のような内容を踏まえ,A 市教育委員会の取り組みから教員の資質能力の向上の方策に ついて示唆を得たい。 (文責:嘉数)  3.教員の資質能力の向上にむけた A 市教育委員会の取り組み  A 市教育委員会は,同市の教員を目指す学生と教員の育成を組織に進めるための取り組みと して H25 年度に大学との連携を開始し,大学連携・協働協議会を設置している。そこでは,大 学と A 市教育委員会,市立学校が定期的に情報交換を行い,連携・協働の在り方を検討したり, ワーキンググループを通じた事業や取り組みの計画を行っている。大学との連携に関しては, 初めから順調ではなく,何度も協議を重ねた中で現在に至っているようである。ここでは,教 育実習とインターンシップに関する取り組みについて報告する。  A 市では教育実習を「内諾方式」と「一括方式」の二つの方法で申し込みを行っている。ま ず,「内諾方式」は,教育実習希望者が母校やボランティアを実施している学校に直接申し込み, 内諾を得る方法である。「一括方式」は,教育委員会に大学を通して申し込み,教育委員会が振 り分ける方法で,母校外での実習を原則としている。これらは,これまで学生と受け入れの実 習校との実情に任されていた教育実習について大学と実習校,教育委員会がその意味を確認し, 実習校における実習生指導を教員育成の機会と捉えたことが背景にあるようである。また,学 生には,教育実習を単なる現場での実践経験の場として捉えるのではなく,自己成長の場とし て考えてもらえるようにしている。さらに,経験の浅い教育実習生の指導教員のために「教育 実習指導者用サポートガイド」を策定したり,実習生指導を「人材育成マネジメント研修(10 年経験者研修)」として位置づけようとしている。  インターンシップに関しては,大学との間に特別協定を結び,4 大学と実施している。もちろ ん,実施内容は大学によって異なるため,様々なスタイルでインターンシップが行われている。 例えば,授業の補助や行事等への参加,課題を抱えているクラスでの担任等の補助があるよう

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沖縄大学人文学部紀要 第 19 号 2017 である。大学によっては,1 年次でボランティア,2 年次でインターンシップ,3 年次に教育実 習というように,継続的に学校現場に関わり,系統的なカリキュラム配置をしているようである。 (文責:嘉数)  4.A 市教育委員会の「教師塾」について 4.1.「教師塾」をスタートした背景  今日の学校現場は,いじめや不登校などの教育課題が深刻化,多様化しており,教員の高い 専門性や実践力がより求められるようなっている。その中で,A 市教育委員会は,教員の大量 退職・大量採用が続く中で,教職歴の短い教員の割合が増加した注 1)。また,多様な教育課題に 対応するためには,優秀な教員を確保,育成し,教員の養成を担う大学と教育委員会が連携, 協働し,養成から育成までの連続した取り組みが重要になると考えたことが背景にある。特に, 大学の教員養成から教員採用までの円滑な入職を重要な取り組みとして考えているようである。  なお,A 市教育委員会の「教師塾」は平成 18 年度にスタートし,平成 23 年度にはこれまで の取り組みをリニューアルした「教師塾」を行っている。 (文責:上地)  4.2.「教師塾」の講座内容  A 市教育委員会の「教師塾」は,毎年 10 月頃から翌年の 6 月頃までの約 9 か月間で実施さ れている。また,講座は「自覚醸成期」,「基礎力養成期」,「実践力養成期」の 3 段階に分けら れておりそれぞれの段階に応じた講座内容が設定されている。具体的には,以下の通りである。  「自覚醸成期」は,教員としての心構えや社会人基礎力の充実,A 市の教育,子どもについ て理解を深めることを中心に行っている。特に,社会人基礎力については,身だしなみや挨拶, 電話の応対,入室方法など徹底して指導しているようである。「基礎力養成期」は,教師として 高めたい能力や課題を把握するとともに,学校での授業参観や学校行事への参加,抗議の受講 を通して授業,学級経営に関する力を身に付ける段階である。「実践力養成期」は,今日的な教 育の諸課題の解決や多様な教育的ニーズに対する実践力を身に付けることを目指している。  上記の各段階に応じて,「授業力基礎講座」や「学級経営基礎講座」,「コミュニケーション力 向上講座」,「社会人基礎力講座」,「文章作成力養成講座」,「フィールドワーク」などの実践的 な講座が開設されている。これらの講座は,教育経験の豊富や元校長が中心になって指導して おり,指導教員としての役割も果たしているようである。また,1 人の指導教員で少人数の塾生 の指導を行うため,緊密な関係の中で充実した指導が行われているようである。  なお,受講人数は 100 名程度を選考しており,採用後に初任者のリーダーとしての役割が期 待されており,教員採用試験における卒塾生のインセンティブもある。 (文責:上地)  5.A市教育委員会の取り組みからみる本学の教員養成への示唆  A 市教育委員会は,同市の抱える課題や現状を踏まえて,より質の高い教員,実践力のある 教員を大学との連携によって養成し,育成しようとしている。これは,従来考えられていた「養 成は大学」,「採用は行政」,「研修は学校や行政」ということではなく,教員の育成に関わるす べての人たちが協働して取り組むことを意図していると言えよう。

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 その点から言えば,本学は 4 市町と提携し協働で教員の育成にあたっていると考えられる。 例えば,本学の「教職インターンシップ」では,学生が授業の補助や行事への参加,校務の補 助などを行っている。また,学校側は学生に対して校内研修への参加や校長講話など,インター ンシップに来ている学生に対して学校独自の指導を行っている。このことは,大学と学校とが 良好な関係を構築し,将来の教員の育成にあたっていることの表れと言えよう。  教育実習については,近隣の学校において実習を行い,いわゆる母校実習についてできるだ け避ける方向で見直しを行うことが指摘されており,かつ「教育実習の全般にわたり,学校や 教育委員会と連携」(中央教育審議会,2006)して責任をもって指導に当たることが重要と考え られている。A 市教育委員会では教育実習の配置を行い,教育実習生の指導についてもキャリ アパスの一つとして捉え,研修やマニュアル等の作成を行っている。  本学は,実習系科目を重要なカリキュラムとして考え,2 年次に「教職入門セミナー」(2 日 間の観察実習),「教職インターンシップ入門」(週 1 回,計 19 回以上のインターンシップ), 3 年次に「教職インターンシップ実践」(週 1 回,計 19 回以上のインターンシップ),4 年次に「教 育実習」と系統的にカリキュラムを構成している。その特徴としては,「教職インターンシップ 入門」,「教職インターンシップ実践」,「教育実習」と同一校で行えるようになっており,継続 して学校に関わることで子どもたちや先生方との関係性を築けるようになっている。嘉数・岩 田(2010)は,「すべての実習系科目が質的にもつながるような実習内容を検討する必要がある」 とし,単なる科目の設置ではなく実習内容を踏まえた系統的なカリキュラム構成の重要を指摘 している。  今後は,教育委員会や学校現場との連携をより強化しながら,実習系科目の充実を図ってい く必要がある。例えば,学校現場に校種や教科の実習系科目の拠点校を設定し,大学と実習校 の教員が連携して指導に当たる機会を取り入れることも一つである。そのためには,A 市教育 委員会が実施しているような研修の充実やマニュアルの作成など,指導する教員の育成も重要 になってくる。 (文責:嘉数)  6.まとめ  本稿は,近隣大学と教員の養成から育成に関わる協定を締結している A 市教育委員会の教員 育成について取り組みや「教師塾」の現状を踏まえ,今後の教員の資質能力の向上に向けて本 学が提携している 4 市町とのより良い連携,協働の在り方について示唆を得ることを目的とした。  教員の資質能力の向上には,大学と教育委員会,学校現場との連携の重要性であること言う までもないが,どのような連携が良くて,どのような取り組みが良いのかについては大学や自 治体の規模によって異なると考えられる。しかし,「教員を育てる」という点では同じである。 そのためには,お互いの取り組みを紹介し,参考にしながら特徴ある仕組みや取り組みを行っ ていくことが求められると考えられる。 (文責:嘉数)  <付記>  本研究は,JSPS 科研費(若手 B:課題番号 15K16436 及び挑戦的萌芽研究:課題番号 16K13590)と 2015 年度沖縄大学教育助成費の補助による成果の一部である。

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沖縄大学人文学部紀要 第 19 号 2017 <注> 1)大量退職,大量採用により全教員の 56% が経験 10 年目までの教員となっているようである。 <引用参考文献> 中央教育審議会(2006)今後の教員養成・免許制度の在り方について.文部科学省.http://www.mext. go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1212707.htm(参照日:2016 年 12 月 20 日) 中央教育審議会(2012)教職生活全体を通じた教員の資質能力の総合的な向上方策について.文部科学省.  http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2012/08/30/1325094_1. pdf(参照日:2016 年 12 月 20 日) 中央教育審議会(2015)これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について-学び合い,高め合 う教員育成コミュニティの構築にむけて.文部科学省.http://www.mext.go.jp/component/b_menu/ shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2016/01/13/1365896_01.pdf(参照日::2016 年 12 月 20 日) 石川英志・松永洋介・加藤直樹・益子典文・大平高司(2008)教育委員会と大学の連携協働による仮題探 求型研修カリキュラムの開発.岐阜大学教育学部教師教育研究,4:57-94 嘉数健悟・岩田昌太郎(2010)シンガポールにおける教員養成と現職研修のプログラムについて- NIE で の調査を手がかりに-.教育学研究ジャーナル 7:1-10 教育職員養成審議会(1987)教員の資質能力の向上について.文部省 http://www.mext.go.jp/b_menu/ shingi/old_chukyo/old_shokuin_index/toushin/1315356.htm(参照日:2016 年 12 月 20 日) 教育職員養成審議会(1997)新たな時代に向けた教員養成の改善方策について.文部省 http://www.mext. go.jp/b_menu/shingi/old_chukyo/old_shokuin_index/toushin/1315369.htm(参照日:2016 年 12 月 20 日) 米沢崇・中井悠加・鈴木由美子・幸坂健太郎・宮木秀雄・久保研二(2016)大学と教育委員会による連携・ 協働型初任者研修プログラムの開発.学習開発研究,9:125-132

参照

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