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画像診断学の流れ

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Academic year: 2021

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画像診断学の流れ

画像診断学が扱う範囲は非常に広い. その専門性も高 まる一方で, 一人でその全てを掌握することはもはや不 可能である.画像診断学 (放射線診断学)が一つの確固た る専門 野として取り扱われてきた欧米と異なり, 日本 で専門 野として認められたのは意外に最近のことであ る. 特に群馬県の画像診断学は遅れをとってしまった. 私たちの科は核医学科として昭和 59 年に設立されたが, それまで群馬大学に画像診断学を責任もって取り扱う科 は存在しなかったのである. これは群馬大学の卒業生の みならず群馬県の医療にとって真に不幸なことといわな ければならない. 私は学生の頃に画像診断学の重要性と 将来性に限りない魅力を感じ, そして群馬大学における この重要な専門 野に対するあまりに低い評価に怒りを 感じつつ, 自らの専門 野として選択した. 核医学科という名称は, 核医学だけやっているのであ ればよいであろうが, その他の一般画像診断学やその治 療への応用が多くを占める様になると適切とは言えなく なり, 数年前に現在の名称となっている. 現在では附属 病院中央放射線部・画像診療部所属の放射線診断専門医 と共に, 単純 X 線写真から CT, MRI, 超音波検査 (US), 血管造影 (AG)など画像診断学全般,核医学を担い,さら に診断技術の治療への応用である Interventional Radiol-ogy (IVR) や核医学治療も私たちの守備範囲である. 学 内には画像診断医 25名, 診療放射線技師 47名 (治療担 当を含む), また研究職として薬剤師 2名が在籍してい る. 一つの科というよりも病院の中央部門としての役割 が大きい. 私たちの仕事の最近の流れや研究内容について少しず つ紹介したい.

CR(Computed Radiography)と Tomosynthesis 従来のいわゆる単純写真は, ほぼ全てがデジタル化さ れている. 群馬大学附属病院には最早フィルムは存在し ない. 従って画像は全てサーバー内にデジタル情報とし て保存されている. フィルムは意外に重量物であり, か つては倒れた棚の下敷きになり大怪我をしたなどという 話もあったが, 画像の管理は格段に改善されている. Tomosynthesisはかつて断層撮影といわれたもののデジ タル版である. 一回の撮影で数十断面の画像を一度に撮 影することが可能で, CT と比較して金属アーチファク トに強い等の特徴があり, 特に整形外科領域で重宝して いる. CT(Computed Tomography) 画像診断というとまず思い浮かべるだろう. 以前は横 断像のみであったが, 現在ではデータ収集が三次元とな り, あらゆる断面の画像を得ることができる. 撮影時間 も短縮され, 全身の撮影でも最速 10秒程度で可能であ る. 撮影時間の短縮は小児科領域や救急患者では特に重 要であり, また形態画像のみならず機能イメージングへ の応用を可能としている. 4台の装置が主に稼働してお り, 長い検査待ち時間の問題はほぼ解消された. 放射線 被ばくも, 新しい技術の登場により格段に低下しており, 最新技術を用いれば従来の単純写真と大差ない被曝量で 十 な画質を得ることが可能となっている. 私たちは, CT を用いた機能イメージング (perfusion CT, permea-bility CT など) を主要な研究テーマとしている (図 1). 211 Kitakanto Med J 2012;62:211∼213 1 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学大学院医学系研究科病態腫瘍制御学講座放射線診断核医学 平成24年2月28日 受付 論文別刷請求先 〒371-8511 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学大学院医学系研究科病態腫瘍制御学講座放射線診断核医学 対馬義人

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MRI(Magnetic Resonance Imaging) 従来静磁場強度 1.5Tが標準的であったが,3Tの装置 が一般化しつつあり,特に中枢神経領域の画質は時に驚 異的である.形態情報のみならず,種々の血流,生理,機 能情報が得られる様になっている.3台の装置が稼働し ているが,私たちは血流の視覚化,特に MR Angiography (MRA)の新技術にトライしている.

US(Ultrasonography)

超音波検査は,その手軽さと非侵襲性から聴診器代わ りなどといわれるが,実は非常に技術を要する検査方法 である.十 な訓練を受けず,見様見真似で不十 な検 査が実施されることが少なくないようで,残念という他 ない.最近は従来の B-mode画像に加えて,組織の さを 画 像 化 す る elastographyや, そ の 定 量 化 技 法 で あ る ARFI,さらにリアルタイムの三次元画像である 4D imagingが一般化しつつある.また微小気泡による造影 剤が開発され,CTや MRIに匹敵する種々の情報が画像 化されるようになり,非常に進歩の速い 野である.現 在 4台の装置が稼働しているが,これら新しい技術の基 礎的な検討を中心に研究を進めている.

血管造影(AG)と Interventional Radiology(IVR)

各種画像診断技術の進歩により,診断目的の AGはほ ぼ姿を消している.一方 AGの技術を始めとした各種画 像診断技術の治療への応用である IVRは進歩を続けて いる.マイクロカテーテルなどのデバイスの進歩も相 まってカテーテルを挿入できない動静脈はほぼ存在しな い.肝悪性腫瘍に対する塞栓療法など従来から行われて いる治療法に加え,最近では高度外傷による出血や術後 出血に対する塞栓療法の依頼が増加している.また産科 出血も塞栓療法の非常によい適応である.CTやUSガイ ドの針生検術や腫瘍焼 術 (RFA)は全く一般的なもの となっており,その適応範囲は広がる一方である.特に 類骨骨腫に対する焼 療法は全国から患者を集めている. 核医学(RI) 機能診断のためのツールとして進歩を続けている.CT や MRIなどにその役割の一部を譲る一方,FDG-PETに よる Glucose代謝イメージングの爆発的な普及はご存知 の通りである.群馬大学はサイクロトロンを持ち,また 2 台の PET/CTが稼働している.基礎研究として悪性腫瘍 に特異的な抗体を用いた抗体イメージングやアミノ酸代 謝イメージングなどを試みており, 成果を挙げている (図 2). 核医学治療 ある種の核種を大量投与することによって,主に悪性 腫瘍の治療を行うものである. 附属病院に RI病棟を持 画像診断学の流れ

図1 肺癌の全身化学療法の効果判定としての Perfusion CT Perfusion CTは組織血流量を画像化したものである.治療前 (a)と治療開始後一ヶ月 (b)の CTでは,腫瘍 の大きさにほとんど変化がなく,治療効果が不明であるが,Perfusion CTでは治療前 (c)と比較して治療後 (d)に明らかな血流低下が認められ,化学療法が効果的であることがわかる.3ヶ月後の CTでは明らかに腫 瘍は縮小した. 212

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ち, バセドウ病の I-131治療のほか, 甲状腺癌の I-131治 療などは県内のみならず近隣県の患者も多く受け入れて いる. また, 悪性褐色細胞腫に対する治療である I-131-MIBG 治療は, 国内では 4施設でしか実施できないが, 東日本の症例を一手に引き受けている. 私がこの世界に入った時, 群馬県の画像診断医は 10 名に満たなかった. 現在では研修医を含め約 40名の画 像診断医がいる. 先進国における必要数は人口一万人あ たり一人と言われているので未だ全くの不足である. し かし徐々にその認知度も上がり, 最近では新たにこの世 界に入ってきてくれる人達が増加している. さすがに私 が引退するまでに必要数を満たすとは思えないが, 県内 の画像診断の責任を果たすべく に努力したい. 図2 サルコイドーシスの FDG-PET (a)と FAMT-PET (b)

サルコイドーシスは良性疾患であるが, FDG が良好 に集積し, 悪性腫瘍と区別できない. アミノ酸代謝イ メージングである FAMT-PET では病変に集積せず, 悪性腫瘍と鑑別可能である. また, FDG は生理的に脳 や心筋に集積するが, FAMT は正常例では尿路のみに 集積する. 213

参照

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