第40回群馬脳腫瘍研究会
日 時:2008年 2月 2日 (土) 場 所:群馬ロイヤルホテル 代 表:好本 裕平 (群馬大院・医・脳脊髄病態外科学) 当番世話人:塚原 隆司 (北信 合病院脳神経外科)一般演題1>
座長:塚原 隆司(北信 合病院脳神経外科) 1.脳槽から脳室に広範に進展した epidermoid cyst の 1例 仙北谷伸朗,清水 暢裕,八木 伸一 清水 庸夫 (関東脳神経外科病院) 症例は 10年来の左三叉神経痛にて, 手術目的にて来 院した 61歳の女性である. 左三叉神経第 3枝領域の発 作的な激痛を訴え,当院で行っている drive MRA による 三叉神経痛の画像検査では, 左上小脳動脈による三叉神 経の root entry zoneでの圧迫所見を認め, 特発性三叉神 経痛と診断した.しかし,頭部 CT では右側脳室三角部を 中心に脳室および脳槽が著明に拡大し脳幹が圧排変形し ている所見を認めた.MRI では T1WI,T2WI ともに病巣 は CSF と等信号であったが, 辺縁の一部が線状に造影 された. DWI では病巣の内部が所々著明な高信号を呈 し,一部は右 temporal horn,quadrigeminal cistern,ambi-ent cistern にまで及んでいたが, 左小脳橋角部に及んで いる所見はなかった. 以上より, 三叉神経痛とは別に, 脳 槽内から脳室に広範に進展した epidermoid cystと診断 した. 今回, 三叉神経痛に対する MVD に先行して腫瘍摘出 術を行ったが, 手術所見等を供覧する. 2.診断に苦慮した glioblastomaの一例 堀口 桂志,鎌形 充泰, 本 正弘 宮城 修 (館林厚生病院脳 神経外科) 【症 例】 70歳 女 性 【現 病 歴】 2007年 8月 7日 起 床時より様子がおかしく, 近医受診. 感冒症状なし. 頭部 CT にて右側頭葉に低吸収性病変あり, 当院へ紹介. 初診 時, JCS1, 左半側空間無視あり. 微熱はあったが CRPは 陰性. 脳 MRI では, 右側頭葉灰白質を中心にした浮腫性 病変あり. 心原性脳塞栓症の再開通, 脳炎や腫瘍性病変 も否定できなかった. 腰椎穿刺施行するも髄液流出な かった. 脳波ではてんかん波が検出された. 脳血管撮影 では右側頭葉に早期静脈描出あり. その後の MRI 検査 にて右側頭葉の浮腫は改善した. 9 月 4日再度腰椎穿刺 施行したところ, ヘルペス IgG が陽性であり, ヘルペス 脳炎も示唆され内科に転科となった. 2007年 11月 29 日 痙攣にて内科入院. MRI 施行し右側頭葉に 1.5cm大の ring like enhanced lesion を認め,当科へ転科.Tl-SPECT では, わずかな集積あり. 脳血管撮影を再検したが, 明ら かな腫瘍陰影は認められなかった. 12月 18日開頭腫瘍 摘出術施行し, 病理診断は Glioblastoma with oligoden-droglioma component (MIB-1 LI ; 44.7%) であった. 現 在, 放射線療法, 化学療法施行中. 【 察】 経過から は,secondary glioblastomaの初期段階で確定診断にいた らず, ヘルペス脳炎を疑い加療がなされた. 経過中の脳 浮腫の改善, 血管撮影での変化などが術前診断にいたら なかった原因と えられた. 3.強度変調放射線治療(IMRT)を行った脳室内腫瘍の 一例 菅原 一,石内 勝吾,大澤 匡 山口 玲,好本 裕平 (群馬大院・医・脳脊髄病態外科学) 鈴木 義行,櫻井 英幸 (群馬大院・医・腫瘍放射線学) 坐間 朗 (日高病院 脳神経外科) 症例は 25歳, 女性. 平成 19 年 2月頃より頭痛, 複視, 記名力低下, 右半身の違和感を自覚. 眼科にてうっ血乳 頭を指摘され, 3月 23日当科受診となった. 4月 12日入 院. MRI では左側脳室体部を主座とする長径 5cmの en-hanced massを認めた.同部位は MRS にて Cho/Cr比お よび Cho/NAA 比の上昇, 脳血管撮影では主に左後脈絡 叢動脈より栄養され内大脳静脈に drainageされていた. FDG-PET にて高集積を示したことより atypical central neurocytomaを疑い, 5月 7日摘出術を行った. 左上前頭 回より経皮質的にアプローチし, 脳室壁に強く癒着した 腫瘍被膜を残してほぼ摘出された. 病理学的には細胞密 385 Kitakanto Med J 2009;59:385∼386度が高く, 核 裂像あり, MIB-I L.I.が 7%と高値を示 し,atypical central neurocytomaと診断された.強度変調 放射線治療 (Intensity modulated radiation therapy: IMRT) 可能な放射線装置トモセラピーにて全脳室系 40Gy+局所 16Gyの照射を施行. 特に神経脱落症状なく 7月 28日自宅退院となった.現在,社会復帰している.ト モセラピーを用いた IMRT は複雑な形状の照射野に対 応でき, 大脳皮質や眼球など正常組織への照射線量を抑 えることが可能であり今後同様な症例に臨床応用が促進 されると思われる. 新しい治療装置の紹介を兼ねて報告 したい.
4.Subependymal Giant Cell Astrocytomaの一手術例 塚田 晃裕,藍原 正憲,塚原 隆司
(北信 合病院 脳神経外科) 【背 景】 Tuberous sclerosisは顔面の血管線維腫, てん かん, 精神遅滞を 3主徴とする神経皮膚症候群であり, その約 6∼16%に Subependymal Giant Cell Astrocytoma (SEGA) を合併する. 側脳室内の SEGA に対する手術の タイミング, アプローチ法など議論の かれるところで ある. 【症 例】 11歳男児. 11ヶ月時より多焦点性て んかんとして内服治療を受けるがコントロール不良. 1 歳 4ヶ月時に Tuberous sclerosisと診断. 9 歳時に左尾状 核頭部に腫瘍性病変を指摘され, 当科初診. 精神遅滞, 多 動,四肢体幹機能障害あり.11歳時,増大傾向を示す腫瘍 性病変に対して経脳梁的アプローチにて摘出術を施行し た. 【結 語】 今回我々は側脳室内に突出した SEGA に対し腫瘍摘出を行なったので報告する. 5.Central Neurocytomaの2症例 甲賀 英明,黒崎みのり,若林 和樹 ( 立藤岡 合病院 脳神経外科) 田村 勝 (同 外来センター) 最近経験した cental neurocytomaの 2症例を提示す る. 【症例1】 33歳男性 2003年 10月 24頭痛を主訴に 外来センター脳外科を 受診. 頭部 CT を行い, 右側脳室 前角に脳腫瘍を認めた. CT, MRI で右側脳室前角に φ1. 5cmの enhanced mass (充実 性)を認めた.診察時神経学 的脱落所見なし. 脳血管撮影では tumor stainなし. 頭痛 は自然に軽快し患者希望で外来画像フォローと したが, 3ヶ月後 MRI で, 腫瘍の増大 (φ2×1.5×2cm) を認めた. 2月 17日 右前頭葉経皮質的に肉眼的全摘術施行. 内視 鏡で摘出部の観察も行っ た. 病理診断は central neur-ocytina, MIB-1 LI 7-8%であった. 病理で悪性所見はな いが, 増殖能は高かったため, 照射を行うこととした (3 月 2日∼4月 5日, total 50Gy).その後神経学的脱落所見 なく仕事に復帰し 外来で 4年経過観察しているが現在 のところ再発を認めない. 【症例2】 31歳 男性 1994 年 12月 25日頭痛, 嘔吐, 意識障害で来院. 脳室内腫 瘍, 急性水頭症を認め, 入院. 両側脳室ドレナージを施行. 1995年 1月 17日左側脳室内腫瘍に対し, 亜全摘術施行. 2月 13日独歩退院.その後,外来で follow.順調に経過し ていた. 8年半後, 2002年 6月より頭痛が悪化し. 両足の 痛みも出現. MRI で腫瘍の増大はあきらかでなし. 脳室 拡大が原因と えられ リザーバー穿刺 : 細胞診で腫瘍 細胞を認めた (前回はなし). 水頭症のため, また腫瘍再 発の可能性も否定できなかったため, 2002年 9 月 17日 左側脳室内の残存腫瘍を摘出. 病理は Central neur-ocytoma, 悪性所見なし. 一時頭痛は軽減したが, 9 月 27 日の CT で脳室拡大あり. 頭痛も再発していた. 10月 1 日 V-P shunt施行.その後,頭痛は軽快,脳室も縮小した. 第二回手術後 5年を経過し現在再発なく仕事に復帰して いる.