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21世紀の医療人に何が求められているのであろうか

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Academic year: 2021

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巻頭言

21世紀の医療人に何が求められているのであろうか

岡山大学医学部附属病院長        井上  一  20世紀後半の医学の進歩は莫大なものであり,それに伴う医療の発展と充実にはめざまし いものがある。それに伴って,我々人類の平均寿命は先進諸国では急速に延長した。しかしそ の反面,低開発国や極地紛争のみられる地域では依然として平均寿命は先進諸国の半分以下 のところもある。  我々医療人が現在対応している分野では,なお感染症,腫瘍,老化,先天異常などは,まだ まだ解決されそうにもない。もちろん,この10年間で遺伝子解析や新しい生物工学の導入など によっていくつかの疾患は解決されていくであろう。しかしながら一人一人目患者自身のプ ライバシーや自己意識,さらには患者を取り巻く社会環境など,倫理的あるいは社会的側面を 含めた多くの問題は残されたままである。例えば,ある疾患の疫学的調査からその治療法を検 討する為のプロジェクトをたてたとしても,所属する研究機関や社会の倫理上の承諾が必須 となるがなおざりにされていないか。もし,手続きがなされていなければ,その結果も公表で きない。  21世紀初頭にはIT革命はますます進歩発展するであろう。また,ゲノム解析などの進展に よって,個人の遺伝情報も急速に解明され,医療現場へ導入されてくるであろう。しかし,そ のことが本当に人類に幸福をもたらすものであろうか。  そんなことを考えるとき,我々医療人は,21世紀に向けて何を指針としてその専門性を発揮 できるのか,来世紀を前にしてこうした問題を充分考えておくべきものと思われる。  医療の現場では,チーム医療とか共有する医療といった考え方がよく言われている。患者さ んと共に,疾病に対するあらゆる医療手段を駆使できるよう全ての医療人が取り組み,患者さ んが納得のいく最良の医療を提供することが望まれている。医師ばかりでなく全てのコメデ ィカルの職種において,それぞれが専門性を発揮し,総合的な治療手段を組み立ててゆく。そ の場合にも科学的根拠をもった医療が必須とされる。こうしたことは情報のスピードと普及 と共にどんどん進むことであろう。しかし,考えてみると我々医療人が必ずしもそれに十分対 応しきれるとは限らない。また,日進月歩する医療の専門誌を全て修得できるとはいえない。  それでは,医学あるいは関連領域の教育現場では何が求められているのであろうか。膨大な 医学知識を一定の期間に修得することは不可能といってよいし,また生涯教育として医療の 進歩に対応していくことも容易なことではないように思われる。従って教育上では基本的知 識を身につけさせ,問題解決能力を養う事しかない。そうした礎のもとに,医療人としての責 任感倫理観人間性を備え,職業人として着実に医療分担を担っていく以外に道はなさそう である。もちろん,人間にとって最も大切な健康というものに対応できる専門職としての誇り を持つことは言うまでもない。  21世紀においては,なお変革を続けるであろう。医療システムも更に変貌ずるものと思われ る。我々医療人はさらに柔軟な姿勢で折目折目に適確に対応する事が望まれる。        (平成12年12月1日記)

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