特別支援学校(視覚障害)高等部本科普通科1年 自立活動 学習指導案
「対人関係について考える」
1
単元(題材)名
2
指導観
○
対象生徒は、本科普通科1年の生徒A、Bの2名、どちらも弱視の生徒である。両
名とも学習意欲は高く、新しいことを積極的に身に付けようという気持ちを持ってい
る。障害による自分の困難さ等に対しても意識は高く、自分なりの対処法をある程度
確立している。しかし、家族や友人等見え方に困難さのない人とのかかわりの中で、
自分のことを理解してもらえないという経験を多く重ねているため、障害理解にかか
わる対人関係の面では課題が多い。事前の調査では両名ともに、周囲に分かってもら
おうと働き掛けたり、必要に応じ援助を求めたりすることが苦手だという結果が出て
いる。担任等からの聞き取りでは、学習場面や生活場面で言うべきことはきちんと言
えるので、支援・指導を行えば、他者に分かってほしいことを整理して周囲に伝える
ことや必要な時に効果的に援助を求めたりすることが可能な生徒である。
、
、
○
本単元は 社会生活を営む上で不可欠となる他者とのかかわりについて考えを深め
よりよいものにしていこうとする姿勢を養うことを目的に設定したものである。
他者とのかかわりをよりよいものにすることは、弱視の生徒の心理的な安定とコミ
ュニケーション力の向上に深く関係している。周囲に自分の困難さを理解してもらい
がたいことで精神的に不安定になったり、状況判断に困難さがあることで積極的な他
者への働き掛けが苦手であったりする等、他者とのかかわりがうまくいかないことで
弱視の生徒が抱える課題は大きい。一方他者と上手にかかわることができると、情緒
の安定を得て、状況に応じ積極的にコミュニケーションをとることができるようにな
り、生活の幅を広げることにもなる。弱視の生徒にとって対人関係をよりよいものに
していくことは、生活の質を向上させ社会的な自立をする上で非常に重要である。
具体的な学習活動は、前半2回ををワークシートでの学習と話し合い活動で、後半
2回をロールプレイ活動とワークシートでの学習で構成している。これらの学習活動
を通して、自分の見え方や困難な状況を他者に分かりやすくあきらめずに伝えたり、
場に応じて相手やタイミングを判断し適切に援助を求めたりすることの重要性を理解
し、実践するための基礎となる態度を養うことができる。
生徒が高校生活にも慣れ、生活圏が広がり様々な人とのかかわりが増えたこの時期
に、具体的な生活場面を想定し、他の弱視者の例を参考にしながら対人関係について
考えを深めていくことは、自らの生活を考える上で非常に重要であると考え、この単
元を選定した。
指導に当たっては、生徒が自己の障害に起因する不便な状況ばかりに目を向けない
○
ように配慮する。伝わりにくさや一人で不便さを解決しがたい部分はあるものの、多
くの弱視者がよりよい対処法を身に付けることで、その困難を軽減しようとしている
ことに共感させ、たくましさを感じ取らせたい。
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、
、
本単元は 自己の障害の理解 とりわけ障害の受容に大きくかかわる単元でもあり
生徒によっては学習に抵抗を感じることも想定される。具体的な行動に結びつけるた
めの手だてとして、自分がどのようにしたいのかということを段階を追って順に整理
し考え進めていけるよう、授業の構成と教材として用いるワークシートの様式に配慮
する。
授業4時間の構成として、まず、自分が分かってもらいたいこと、分かってもらい
たい相手、そして実際にはどのようなことが分かってもらいにくいのか、それはどう
してなのかをつかませる。その上で、生徒が不便さを感じている具体的な生活場面を
取り出し、いろいろな対処法の中の一つとして援助依頼があり、上手に活用すること
で不便さへの対処として非常に効果的であることに気付かせる。そして、援助依頼を
する場面で、その難しさを踏まえた上で、どのように働き掛けるのが効果的なのか等
を考えさせる。
ワークシートの様式に関しては、その内容を段階に分けて作業できるようにし、じ
っくりと自分に向き合い順に整理し考え進めていけるものにする。見やすさと操作の
しやすさに配慮した形式の違うワークシートを2種類作成し、自分に合うものを選択
させる。
3
単元(題材)の目標
○
今まで漠然と持っていた対人関係についての自分の考えを言語化し、確認すること
ができる。
○
共に学習する仲間をはじめ他の弱視者の考え方や対処法を知り、自分のものの見方
や考え方を広げることができる。
○
様々な対処法の一つとして援助依頼をとらえ、必要に応じて援助依頼という方法を
選択できることの重要性に気付くことができる。
4
指導計画(全4時間)
学習の目標 学習活動 ・自分が何を知ってほしいのか、どうして ・ ワークシート「分かってもらいたいこと・ 」 、 伝わりにくいのかを確認できる。 分かってもらいにくいこと について考え 1 ・ワークシートを基に、自分の考えを相手 回答を書き込む。 に伝え、自分たちができることを協力し ・ワークシートの形式を自分で確認しながら て考えることができる。 作業を行い、その感想を述べ 「自分たちが、 できること」について二人で話し合いをす る。 ・具体的な場面での不便さについて考え、 ・ワークシート「駅で」について考え、回答 自分だけで解決できることと、他者の手 を書き込む。 を借りた方がよいことについて確認でき ・他の弱視者と自分との共通点や相違点に注 2 る。 目しつつ、二人で感想を述べ合う。 ・ワークシートの中にある情報や友人の感 ・プリペイドカード3種の観察を行い、気付 想を生活に生かそうという気持ちを、発 いたことについて話し合う。 言やワークシートへの記述の中で表現す ることができる。 ・身近な人や店員等に援助依頼すると効果 ・買い物場面で自分が不便だと感じることに 的なことがあることを確認できる。 ついて想起し、援助依頼のロールプレイ活 ・ワークシートの中にある情報や友人の感 動を行う。 3 想を生活に生かそうという気持ちを、発 ・ワークシート「買い物で」について考え、 言やワークシートへの記述の中で表現す 回答を書き込む。 ることができる。 ・他の弱視者と自分との共通点や相違点に注 目しつつ、二人で感想を述べ合う。 ・場面によって効果的な援助依頼の相手や ・一連の買い物場面のロールプレイ活動を行 、 、 本 方法が違うことを理解できる。 い 自分たちで工夫してできることは行い ・援助を求めることの難しさや援助を求め 援助依頼が必要であることについては効果 4 ることが有効な対処法の一つであること 的な援助依頼の方法を考えながら行う。 を理解できたということを、発言やワー ・ワークシート「援助依頼をする時に」につ 時 クシートへの記述で表現できる。 いて考え、回答を書き込む。 ・ワークシートや話し合い活動等で得た情 ・これまでの学習を振り、感想を述べ合う。 報を自分の生活に生かそうという気持ち を、発言やワークシートへの記述で表現 することができる。5
本時指導の考え方
前時の授業では、生徒Aは、既習の知識の中から、自分に当てはまるものを具体的に
ワークシートに書き込むことができていた。また、今までの授業では出てこなかった新
たな例を思い付くこともできた。だが生徒Bは、買い物における自己の不便さについて
思い付くことができず、ロールプレイの活動やワークシートへの書き込みを行うことが
できなかった。また、ワークシートにある他の弱視者の困難さを考える部分でも、前時
以上に記述の作業が滞る様子が見られた。
これは、ワークシートへの書き込みの前に設定した援助を求めるロールプレイの活動
で、近距離での視認に困難が少なく生活経験も少ない生徒Bにとって援助を求める必要
性に迫られる場面を具体的に作り出することができなかったためであると考える。そこ
で本時は、ロールプレイの活動において、より生徒たちの見え方や生活の実態に合った
場面を設定することにした。
本時におけるロールプレイの活動では、前時と同じく買い物の場面を取り上げる。生
徒Bの生活の実態に合わせ菓子類や漫画を買う場面とともに、生活の幅が広がるに従っ
てこれから遭遇するであろう食品や衣類を買う場面をロールプレイで行うことで、援助
を求めることが必要な場面についてより幅広く考えられるようにする。これは、買い物
を日常的に行っている生徒Aにとっても関心の高い場面であると考える。
活動では、一場面を取り上げるのではなく買い物の一連の流れを取り上げ、困難と思
われる課題を複数設定する。一連の流れを行うことによって、一つの活動を行うにも様
々な困難な状況が起こり得ることが理解しやすくなる。生徒は買い物客の立場で二人で
助け合い指示された買い物を行い、見て分かることは行い、分からないことは指導者が
扮する店員に援助を求めるという活動を行う。それを通して、買い物における自己の不
便さやお互いの不便さの違いや、工夫すれば自分たちでできること等に気付きやすくな
ると考える。
ロールプレイ活動をワークシートへの書き込みの活動の前に行うことで、効果的な援
助の求め方を考える際に具体的な場面を想起し、どちらの生徒にとっても思考の手助け
や発想のきっかけになるようにする。ワークシートは、自分のことについてでも、他の
弱視者のことについてでも書けるような構成にしており、自己の不便さに思い当たらな
い場合にでも書き進めていけると考える。
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本時のねらい
○
場面によって効果的な援助の求め方や相手が違うことを理解できる。
○
援助を求めることの難しさや援助を求めることが有効な対処法の一つであることを
理解できたということを、発言やワークシートへの記述で表現できる。
○
ワークシートや話し合い活動等で得た情報を自分の生活に生かそうという気持ち
を、発言やワークシートへの記述で表現することができる。
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準備物
①食品トレイ入りの食品や菓子などの食品数種、漫画本、衣類、小銭入れ、棚、値札、
電卓、買い物指示プリント、おもちゃのお金、買い物袋
②ワークシート「援助依頼をする時に (形式の違うもの2種類)
」
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学習展開
配時 学習活動 指導上の留意点及び支援の方法 評価の観点 3分 1 本時の学習内容を知 る。 ( )本時の内容の説明 ・前時に予告していた本時の学習内容を発 ・本時の学習内容についての1 を聞く。 問し、本時学習の目標である効果的な援 指導者の発問に対し、答え 助依頼について意識させる。 たりあいづちをうったりす ることができたか。 20 2 必要に応じ店員や身 ・自分の生活を振り返って、 分 近な人に援助を求める 不便さを挙げることができ ことについて考える。 たか。 ( )ロールプレイの活 ・集中できるように、手順とポイントをは ・ロールプレイができるよう1 動の流れと役割を っきりと伝える。 に、しっかり手順を確認で 理解する。 きたか。 ( )①の教具を用いて ・生徒のロールプレイに対して、その場で ・生徒それぞれが、自分なり2 売り場で店員に援 評価はせず、生徒が自分の考えで自由に の考えでロールプレイをす 助を求める際の声 ロールプレイしやすいようにする。 ることができたか。 の掛け方、質問の ・行き届かない援助やしすぎる援助を行う 仕方を考えて役割 ことで、効果的な援助の求め方を知る必 を演じる。 要性を感じられるようにする。 ( )お互いのロールプ ・それぞれのロールプレイのよい点を挙げ ○自分だけで解決できること3 レイについて感想 させることで、自分のロールプレイを振 とや、援助を求めた方がよ を述べ合う。 り返りやすくし、また、援助を求めること いことがあることに注目し 自体に苦手意識を持たないようにする。 た発言をすることができた ・それぞれのロールプレイのよい点を挙げ か。 ることで、自分は普段意識していない行 ・相手のロールプレイを、自 動が、他の人のよりよい対処につながる 分と比べながら客観的に評 ことがあることに気付くことができるよ 価できたか。 うにする。 ( )指導者によるまと4 ○場面によって効果的な援助 めを聞き、身近な の求め方や相手が違うこと 人や店員等に援助 についての指導者の話を聞 を求めると効果的 いて、うなずいたりあいづ なことがあること ちをうったりできたか。 を理解する。 20 3 援助を求めることの ・ワークシートの具体例を口頭で確認し場 分 難しさとその効果につ 所を確認させることで、生徒が具体例をいて考える。 活用しやすいようにする。 ( )②のワークシート1 のうち、自分に合 ・生徒が今のありのままの自分の考えや姿 ・意欲的に考え、書き込んで う形式のものを選 を表現できるようにするために、十分な いるか。 択する。 時間を確保し、生徒の回答や質問にも特 ・書き込みのポイントを理解 ( )ワークシートの質2 に受容的な態度で接する。 して記述しているか。 問に対し、自分な ・生徒Aには、具体的な記述をしやすいよ りの回答を書き込 うに、Aが書いている内容について発問 ○自分にとっての不便さや自 む。 を行い支援する。 分なりの工夫を考えて具体 ※ ワークシートの構成 ・生徒Bは 「援助依頼がうまくいくのは、 的に書きこめているか。 及び内容については、 どんな時か」と「どんな援助依頼が効果 ○場面によって、効果的な援 資料参照のこと 的か」という設問について考えを深めら 助の求め方や相手が違うこ れないことが考えられる。その場合、前 とについての記述ができた 者については援助を求めることがうまく か。 いかない時を想起させ、答えやすいよう に支援する。後者については、本時のロ ールプレイ活動の中で生徒Aとやりとり ○ワークシートの中にある情 したことなど考えるように促し、具体的 報や友人の感想を、自分の な回答を記しやすいようにする。 生活に生かそうという気持 ちを、ワークシートへの記 述に表現することができた か。 7分 4 まとめを行う。 ( )援助を求めること ・援助を求めることの難しさに共感をしつ ○援助を求めることの難しさ1 の難しさと効果的 つ、他の人が弱視の状態や困難さを理解 や援助を求めることが有効 な方法についての することの難しさを伝えることで、自分 な対処法の一つであること 感想を述べ合う。 のことについて説明できる力や、効果的 を理解できたということ、 ( )指導者によるまと2 に援助を求めることの必要性を感じさせ また、得た情報を自分の生 めを聞き、学習を る。 活に生かそうという気持ち 振り返る。 等を発言することができた か。