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医師育成システムの充実に向けて

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Academic year: 2021

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医師育成システムの充実に向けて

大山 良雄

1 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学大学院保 学研究科 はじめに 現在, 新専門医制度の議論が活発に行われています. 当 初の予定では, 来年度 (平成 29 年度) から新制度による後 期研修が一斉に開始することになっていましたが, 試行的 な運用にとどまる可能性もでてきています. 新専門医制度 が医療全体に及ぼす影響を える場合, 平成 16年度に必 修化された初期臨床研修制度が与えた影響を振り返る必要 があります. 初期臨床研修制度の導入により, 医学生の意 識変化が起こり, 自 の将来 (進路) は自 でよく えて 決める」という意識が以前より明らかに強くなりました. このような意識変化の中で, 研修医のニーズに敏感に対応 した研修病院は研修医から支持され, 十 に対応できな かった研修病院は研修医不足で悩む結果となりました. 大 都市部に研修医が集中しているのではないかと思われるか もしれませんが, 全国の 47都道府県を大都市圏 (6都府県; 東京都, 大阪府, 京都府, 福岡県, 愛知県, 神奈川県) とその 他の 41道県の 2群に けた場合, 大都市圏で研修を行う 研修医の割合は経時的に徐々に低下して, 平成 27年度で は, 43.6%まで低下しています. 6都府県以外の 41道県で は, 県庁所在地に研修医が集中しているとのデータもあり ますが, 41道県の全体としては頑張って研修医を確保して います. しかし, 残念ながら群馬県は関係者の地道な努力 にもかかわらず研修医数が伸び悩んでいます. 今後, 医学 科へ地域医療枠として入学された学生が卒業され, 群馬県 内でその活躍が期待されますが, 地域医療枠学生のみに群 馬県の医療を委ねることは不可能です. この現実を直視し て, 新専門医制度にどのように対応するかを群馬県全体と して議論し, 地域全体の医師育成システムの充実を図る必 要があるのではないでしょうか. 従来の え方にとらわれ ない, 将来に対応するための多面的な新しい え方が求め られます. 新専門医制度への対応を誤ってしまいますと, 群馬県内の医療全体に多大な影響がでることが予想されま す. 群大病院の医療安全体制の構築と信頼回復に向けて, 群馬県と群馬大学が協議会を設置しましたが, ぜひ, 新専 門医制度の問題も取り上げていただきたいと思います. 初期臨床研修における指導医の現状 初期臨床研修制度の必修化によってスーパーローテー ション研修が義務づけられ, 指導医に求められる役割も以 前とは大きく変わりました. すべての研修医が, 将来の専 門 野にかかわらず, 体系的に, 2年間で研修目標を達成す るために研修することになり, 指導医の専門 野にあまり 興味のない研修医に対しても, 指導医は自 の担当する 野をしっかり指導する必要があります. また, 研修医の新 規採用にマッチングシステムが導入されたこともあって, 独自性のある優れた研修体制を構築することは, 臨床研修 病院として多くの優れた研修医を確保する上できわめて重 要な因子になっています. よりよい卒後臨床研修の実現の ―225― 文献情報 投稿履歴: 受付 平成28年5月26日 採択 平成28年6月2日 論文別刷請求先: 大山良雄 〒371-8514 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学大学院保 学研究科

流 れ

2016;66:225∼226

(2)

ためには, 病院のハード面の充実に加え, 魅力ある研修プ ログラムの作成やそのプログラムに って研修医を指導す る指導医の指導技能の向上など, ソフト面での充実が必須 になりました. 研修医が臨床研修病院を選択するにあたっ て, 優れた指導医がいる」ことが重要なポイントとなって いることは, 過去の多くのアンケート調査からも明らかで す. 今回, 群馬県内の臨床研修指導医養成講習会を企画・運 営してきた立場から, 医師育成システムにおいて極めて重 要な役割を担う指導医の現状についてアンケート調査を行 いましたので,この「流れ」の誌面をお借りしてその結果を ご紹介させていただきます. アンケート調査の対象は, 群 馬県臨床研修指導医養成講習会 (平成 22年∼平成 26年) に参加した群馬県内の臨床研修病院に勤務する指導医 185 名で, 30歳代が 97名, 40歳代が 65名, 50歳代が 20名, 60 歳以上が 3名, 無回答が 1名でした. 指導医の多忙が研修 医への指導の妨げになっているか」の設問では, 大変障害 になっている」が 99 名 (53.5%), 障害となっている」が 57 名 (30.8%), どちらとも言えない」が 17名 (9.2%), 障害 ではない」が 2名 (1.1%), 無回答」が 10名 (5.4%)と,80% 以上の指導医が多忙のため, 研修医への指導が困難である と感じています. また, 指導医の指導技能が足りないこと が研修医への指導の妨げになっているか」の設問では, 大 変障害になっている」が 42名 (22.7%), 障害となってい る」が 97名 (52.4%), どちらとも言えない」が 33名 (17.8%), 障害ではない」が 3名 (1.6%), 無回答」が 10名 (5.4%) と, 約 75%の指導医が指導技能に悩んでいること が明らかになりました. これは, 専門医としての知識や技 能が不足していることを意味しているのではなく, 指導医 として自 の有している知識や技能をどのように研修医に 伝えるべきかに悩んでいると えられます. 次に, 指導医 に対するインセンティブがないことが研修医への指導の妨 げになっているか」の設問では, 大変障害になっている」 が 42名 (22.7%), 障害となっている」が 85名 (45.9%), どちらとも言えない」が 46名 (24.9%), 障害ではない」 が 1名 (0.5%), 全く障害ではない」が 1名 (0.5%), 無回 答」が 10名 (5.4%)と,約 70%の指導医が研修医への指導 に対するインセンティブがないことを不満に思っていま す. 以上の内容をまとめますと, 『指導医は, 教育者として のトレーニングを体系的に学ぶ機会はなく, インセンティ ブもなく,忙しい合間に,研修医への指導を行っている.』こ とになります. 医師育成システムの充実に向けて このアンケートの対象者は, 群馬県内の臨床研修病院の 指導医であり, 群大病院の指導医も 2割程度含まれていま す. 臨床研修病院にはそれぞれの事情があると思いますが, 臨床研修の充実を図るためには, 指導医へのインセンティ ブや指導医の職場環境の改善に加え, 研修指導に多くの時 間を費やすことのできる非常勤の指導医などの活用も積極 的に える必要があります. 地域で活躍されている開業医 の先生方に, 休診日などに非常勤の指導医として積極的に 研修指導にかかわっていただくことで, 病院全体の指導力 を向上させている臨床研修病院のケースも報告されていま す. 地域医療の充実のためには, 次代を担う人間性豊かな 医療人の育成が必要不可欠です. 臨床研修病院に勤務して いる指導医の負担軽減のためにも, 新専門医制度の議論を きっかけとして, 群馬県内のさまざまな立場の医師及び医 療機関が, 次代を担う人間性豊かな医療人の育成に向けて 協働するシステムの構築が望まれます. 医師育成システムの充実に向けて ―226―

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