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As 吸着材としての利用を目指した製鋼スラグの改質処理

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As 吸着材としての利用を目指した製鋼スラグの改

質処理

著者

不破 彰也, 篠田 弘造, 鈴木 茂, 丸岡 伸洋,

柴田 浩幸, 北村 信也

雑誌名

東北大学多元物質科学研究所素材工学研究彙報

65

1/2

ページ

13-18

発行年

2010-03-01

URL

http://hdl.handle.net/10097/48495

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As

吸着材としての利用を目指した製鋼スラグの改質処理

不破彰也

*1

,篠田弘造

*1

,鈴木茂

*1

,丸岡伸洋

*1

,柴田浩幸

*1

,北村信也

*1

Modification of Steelmaking Slag for the Use of Arsenic Adsorbent

By Akiya Fuwa, Kozo Shinoda, Sigeru Suzuki, Nobuhiro Maruoka,

Hiroyuki Shibata and Shin-ya Kitamura

Fe compounds are known as effective adsorbents for arsenic(As). In order to investigate the effects of heat treat-ment and alkaline solution treattreat-ment for a dephosphorization slag on the As adsorption in aqueous solution, XRD, X-ray absorption spectroscopy (XAS) and ICP-AES were performed. As-synthesized slag was annealed under dif-ferent oxygen partial pressure conditions or alkaline treated by NaOH solution. The XAS results indicated that the chemical state of Fe was controllable by the condition of heat treatment. Fe was contained in hematite (α-Fe2O3)

or kirschsteinite (CaFeSiO4) phase when the slag was annealed in air or Ar-H2gas, respectively. Hydrogarnet

(Ca3AlFe(SiO4)(OH)8) was formed by alkaline solution treatment utilized dissolution and reprecipitation reac-tion, and the hydrogarnet-rich fine particles loaded on the surface of the slag adsorbed significant amount of As in aqueous solution.

(Received on January 7, 2010)

Keywords: dephosphorization slag, arsenic, adsorption test, XRD, XAS, ICP-AES

1

はじめに

環境汚染物質として知られるヒ素(As)は,クラーク数0.0005%で全元素中49番目に位置付けられ ており,自然界には硫ヒ鉄鉱などの鉱物の形で広く分布する.これらのAs含有鉱物による地下水の 汚染や,元来地表近くに存在するAs含有鉱物およびトンネル工事などにより掘り起こされたAs含有 鉱物による土壌汚染などが問題となる場合がある.環境省による土壌環境基準では,検液1Lに対し As含有量が0.01mg以下と定められている.一方,製鋼スラグは高炉溶銑やスクラップからの製鋼プ ロセスに伴う副産物として生成し,国内生産量は年間約1,400万トンに達するが,再利用先はセメン ト,路盤材,地盤改良材等に限定される.本研究では,Fe化合物のAs吸着に対する有効性[1–9],お よび担体表面へ分散固定化した微粒子吸着材の利用[2]などを考慮し,製鋼スラグの中でも,脱リン プロセスで産出するFeを高濃度に含有するスラグの,As吸着材への利用を提案したい.ここではAs 吸着材となるFe化合物をスラグ表面に担持するのではなく,製鋼スラグ中に含まれる数十mass%の FeをAs吸着に直接利用する.その際には,スラグ粒子表面においてAs吸着に関わるFeの化学状 態,液相環境に影響を及ぼすスラグ成分の溶出挙動,およびこれらに関わるスラグ中の結晶相に対す る把握と制御が重要である.そこで,スラグに熱処理,およびアルカリによる化学的表面処理を施し たときのFeの化学状態,結晶相,成分溶出挙動の変化について調査し,水溶液中におけるAs吸着挙 動との関連について検討することとした. 具体的には,酸化物試薬から模擬スラグを作製し,熱処理あるいは化学的表面処理を行った試料の Feの化学状態分析をX線吸収分光法(XAS)で,試料の結晶相同定を粉末X線回折法(XRD)で行っ た.また,As水溶液中へのスラグ成分溶出量および液中でのスラグ粒子表面へのAs吸着量を評価す るため,誘導結合プラズマ発光分光法(ICP-AES)を用いた.これらの結果をもとにFeの化学状態, 結晶相,成分溶出挙動とAs吸着挙動との関連について考察した. *1東北大学多元物質科学研究所

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14 As 吸着材としての利用を目指した製鋼スラグの改質処理 第 65 巻 第 1,2 号

2

実験

2.1

試料作製

本研究では,Table 1に示すように脱リンプロセスにおいて産出される製鋼スラグの組成を参考とし て,酸化物試薬を混合・溶融して模擬スラグを作製した.実スラグにはMnやMgなど微量元素が含ま れているが,本実験では簡単のため,これらの元素は添加していない.Fe,Ca,Si,P,Alの酸化物試 薬を秤量し混合した粉末を鉄るつぼに入れ,Arガス雰囲気中1673Kで1時間溶融させた後,3K/min で炉冷し,ふるいにより355∼ 150µmに選別したもの,または乳鉢で微粉末にしたものを用意した. この模擬スラグ試料に対し,酸化雰囲気(空気)または還元雰囲気(Ar-10%H2ガス)下1273Kで1時 間の熱処理を施した.一方,Fe(III)イオンは塩基性水溶液中において,条件によっては(オキシ)水 酸化物あるいは酸化物として析出することがある.スラグ中のFeは他の成分と化合物を形成してい ると考えられるが,それらが必ずしも高いAs吸着特性を示すとは限らない.goethite(α-FeOOH)な どオキシ水酸化鉄[3, 4, 8]やmaghemite(γ-Fe2O3)など酸化鉄[9]は,比較的高いAs吸着性を示すこ とが知られている.スラグ表面に塩基性水溶液を接触させれば,他の成分とともにFeが溶出し,As 吸着に適した鉄化合物として再析出し,スラグ表面に担持された材料が得られると期待される.そこ で,模擬スラグ試料1gを333Kに保持した1M NaOH水溶液100mL中で,直径60mmの半円型撹 拌羽根により回転速度180rpmで72時間撹拌し,模擬スラグ粒子表面をアルカリ処理した試料も用意 した.

Table 1 The composition of a dephosphorizaton slag and the model slag Slag composition (mass%)

CaO SiO2 FeO P2O5 Al2O3 MnO MgO

dephosphorization slag 31 22 20 4 5.5 5 2 model slag 36 36 18 5 5

2.2

スラグ試料の評価およびスラグ試料を用いた成分溶出,

As

吸着試験

ス ラ グ 中 に 含 ま れ る Feの 化 学 状 態 は ,As 吸 着 特 性 に 大 き な 影 響 を 及 ぼ す と 予 想 さ れ る . 特 性 吸 収 端 近 傍 の X 線 吸 収 ス ペ ク ト ル は ,吸 収 元 素 の 外 殻 非 占 有 電 子 軌 道 の エ ネ ル ギ ー 状 態 ,す な わ ち 化 学 状 態 を 反 映 し ,特 に XANES(X-ray Absorption Near-Edge Structure) と 呼 ば れ る .熱 処 理 や ア ル カ リ 処 理 を 施 す こ と に よ り ス ラ グ 中 Fe の 化 学 状 態 が 変 化 す る と

Fig.1 X-ray absorption spectra mea-sured at Fe K absorption edge.

予 想 さ れ る こ と か ら ,Fe K 吸 収 端 (7111eV) 近 傍 の XANES領域におけるXAS測定を実施した.実験に はリガク製X線吸収分光測定装置R-XAS Looperを 使用し,管電圧および管電流をそれぞれ14kVおよび 100mAに設定して,Moターゲットから発生する白色X 線をSi(400)単結晶により分光して試料に入射した.測 定は透過モードで実施し,入射X線および試料による 透過X線強度を,それぞれArガス封入透過型プロポー ショナルカウンターおよびシンチレーションカウンター で計数した.XAS測定においては,スラグ粉末をよく粉 砕し,窒化ホウ素粉末で希釈してペレット状に整形した ものを測定試料とした.

(4)

Fig.1に示すように,価数の異なるFe酸化物のFe K吸収端におけるXANESスペクトルにおいて Feの価数が高いほど吸収端の位置が高エネルギー側に観測される.この現象を利用して,価数既知の これらの標準試料とXANES領域のX線吸収スペクトル形状を比較することにより測定試料のFeの 価数を評価する. スラグ中に含まれる結晶相の同定を,粉末X線回折(XRD)により行った.実験にはリガク製X 線回折装置RINT-2200を使用し,入射X線にはCuKα線を用い,管電圧および管電流をそれぞれ 40kVおよび40mAに設定した.測定結果をICDD-JCPDSデータベースと比較し,結晶相同定を 行った. スラグのAs吸着挙動,スラグ成分の溶出挙動を調査するため,As水溶液中で成分溶出,As吸着試 験を行った.As濃度10mg/Lとなるように砒酸水素二ナトリウムNa2HAsO4· 7H2O(和光純薬製・ 一級試薬)を純水に溶解した水溶液を用意し,355∼ 150µmに粒度を調整したスラグ1gまたは5gを, 恒温槽中で温度298Kに保持したAs溶液200mLに入れ,直径60mmの半円型撹拌羽根を用いて回 転速度130rpmで撹拌し,0,1,3,5,7,9時間経過後に溶液を採取した.採取した溶液は孔径0.45µmの メンブランフィルターでろ過し,マイクロピペットで9mL計量する.内部標準溶液を濃度が10mg/L となるよう添加してICP-AES測定試料とした.各試料溶液に対して,パーキンエルマージャパン社 製ICP発光分光測定装置Optima3300を使用して,スラグ成分元素濃度およびAs濃度を測定した. Asおよびスラグ中各元素について,濃度既知の標準溶液を用意し,検量線を作成して濃度を求めた.

Fig.2 X-ray absorption spectra measured at Fe K edge of the slag samples as-synthesized (a), annealed in air (b) and in gas (c) along with references.

Fig.3 Comparison of the X-ray absorp-tion spectra of the alkaline treated slag (d) with the as-synthesized slag (a).

3

結果と考察

Fig.2に,酸化および還元雰囲気下熱処理試料に対す るFe K吸収端近傍のX線吸収スペクトルを示す.図 より,as-synthesized試料(a)中のFeは2価で存在し ており,酸化雰囲気下での熱処理により3価へ酸化され ることが確認される.さらにスペクトル形状から,ほぼ 完全に参照試料であるhematite (α-Fe2O3)に近い局所 構造を有することが示唆される.一方,還元雰囲気下で 熱処理した試料(c)ではFe(II)の状態が維持されている が,Fe周囲の環境構造を反映して熱処理前とは異なる 化合物を形成していることを示唆するスペクトル形状の 違いが観測された.すなわち,雰囲気の異なる熱処理に よってFeの化学状態や形成化合物種を制御できること が示された. ア ル カ リ 処 理 を 施 し た ス ラ グ に 対 す る Fe K 端 XANESスペクトルを,処理前の試料と比較してFig.3 に示す.図より,ほぼ完全にFe(II)であったスラグは, アルカリ処理後では吸収端の位置がわずかに高エネル ギー側にシフトしている.これはアルカリ処理により Feの一部がFe(II)からFe(III)に変化したことを示して おり,本実験における1273K,1時間という熱処理条件 では熱処理雰囲気および温度の影響がスラグ試料表面だ けでなく内部まで及んでいたのに対し,溶液化学処理の 影響はスラグ粒子表面にとどまった結果と考えられる.

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16 As 吸着材としての利用を目指した製鋼スラグの改質処理 第 65 巻 第 1,2 号

Fig.4 XRD pattern profiles of the as-synthesized (a), annealed (b),(c) and al-kaline treated (d) slag samples.

⃝: wollastonite (CaSiO3), △: pseudowollastonite (CaSiO3), : kirschsteinite (CaFeSiO4), ◇: hematite (α-Fe-2O3), ◆: anorthite (CaAl2Si2O8), ☆: hydrogarnet (Ca3AlFe(SiO4)(OH)8)

Fig.5 The reaction time dependence of pH. スラグ中結晶相を同定するために実施したXRD測定 結果をFig.4に示す.これより,as-synthesizedスラグ 試料(a)は非晶質相を含みkirschsteinite(CaFeSiO4)を 主成分としているが,熱処理により非晶質は結晶化した. Ca,Si含有結晶相は,酸化雰囲気下熱処理試料(b)で はkirschsteiniteはほとんど残っておらず,wollastonite (CaSiO3)およびpseudowollastonite (CaSiO3)へと変

化しており,還元雰囲気下熱処理試料(c)では kirschstei-niteは残っているが新たにwollastoniteが形成されて いることがわかる.Fe含有結晶相は,酸化雰囲気下熱 処理試料(b)ではhematite(α-Fe2O3),還元雰囲気下熱

処理試料(c)ではkirschsteiniteの存在が確認された.

Fig.2に示したXAS測定結果と合わせて考えると,

as-synthesizedスラグ試料(a)中ではFeはFe(II)からな

るkirschsteiniteのほか非晶質相中にも含まれているが, 酸化雰囲気下での熱処理によってほぼすべてのFeが Fe(III)へ酸化されてhematiteとなり,還元雰囲気下で の熱処理によって非晶質相に含まれていたFe(II)はすべ てkirschsteiniteとなったことが示唆される.一方,熱 処理雰囲気に関わらず熱処理前には観測されなかったAl 含有結晶相は,anorthite(CaAl2Si-2O8)に対応する回折 ピークが現れた. 模擬スラグにアルカリ処理を施した場合,処理溶液中 に黄色微粒子が析出した.Fig.4に示す化学処理試料(d) のXRDパターンを見ると,as-synthesized試料(a)で みられたものと同様の結晶相と非晶質相に加え,新たに 試料(a)および熱処理試料(b),(c)では観測されなかった

hydrogarnet(Ca3AlFe(SiO4)(OH)-8)に対応する強度の

弱い回折ピークが現れている.hydrogarnetを構成する FeはFe(III)であり,XANES測定結果において吸収端 位置が高エネルギー側へシフトしていたのはアルカリ処 理溶液と接触したことによるこの結晶相の生成が原因で あると考えられ,シフトが僅かであったのはスラグ表面 に限定された反応であることを示していると考えられる. 試料(a)∼(d)を用いて成分溶出,As吸着試験を行った.試験中における溶液pHの経時変化を Fig.5に示す.図より,酸化雰囲気下熱処理試料(b),およびアルカリ処理試料(d)の溶出試験では試 験開始から1時間経過後においてpH上昇が見られる.また,熱処理試料(b)および(c)の試験では, 時間経過とともに徐々にpHが低下している.pH上昇の原因として,スラグ表面のCaの溶出が考え られる.また,Pはスラグ中でリン酸イオンPO34として存在することが知られており,熱処理試料 (b),(c)の溶出試験でみられたpH低下はリン酸イオンの形でのPの溶出が原因の一つと考えられる. 一般に,水中におけるFe酸化物や水酸化物の表面は,等電点を境に低pH領域では正に,高pH領域 では負に帯電する.(例えばgoethiteでは等電点はpH6.9である[3].)したがって,低pH領域では Asイオンが静電的な引力により正に帯電したFe化合物表面に吸着するが,高pH領域では静電的反 発によりAs吸着が抑制されると考えられる.

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Fig.6 The dissolution behavior of the elements from the slag. 各試料におけるスラグ成分の溶出量を元素ごとにまとめてFig.6に示す.図より,Ca溶出量は 試料(c),(a),(d),(b)の順に多くなっており,溶出試験開始直後のpH上昇の大きさの順と対 応していることが確認された.また,CaとSiは溶出量の経時変化挙動が類似しており,XRD測 定においてもCaとSi は常に同じ結晶相中に存在していることから,CaとSiの溶出はこれら を含む結晶相の溶解により同時に溶出したと考えられる.またpH低下に及ぼすP溶出の影響 を調査するため,Pを含まない模擬スラグを作製して同様の条件で行った溶出試験の結果,この 場合にはpHの低下が見られなかった.したがって,溶液のpH低下はスラグからのP溶出が主 要因と考えられる.一方,アルカリ処理を施した試料(d)の溶液ではP の溶出濃度はICP-AES の検出限界以下であった.この要因として,塩基性の化学処理溶液にスラグ表面からPが溶出

Fig.7 The reaction time dependence of As concentration in the leaching solu-tions immersed the slag samples.

Fig.8 The reaction time dependence of As concentration in the solution im-mersed chemically treated slag samples. した,あるいはアルカリ処理によりスラグ表面のPが不 溶性の化合物に変化したことなどが考えられる. 上述のスラグ成分溶出試験で用いた溶出液には,As濃 度10mg/Lの砒酸水素二ナトリウムNa2HAsO4· 7H2O 溶液を用いた.サンプリングした溶液中のAs濃度減少 量から,スラグ試料のAs吸着特性を評価することがで きる.Fig.7に溶液中のAs濃度の経時変化を示す.図よ り,as-synthesized試料(a)および熱処理試料(b),(c)に 対してはスラグへのAs吸着を反映したAs濃度減少は観 測されなかった.酸化雰囲気下熱処理試料(b)において は,スラグ中に含まれるFeはhematiteを形成している. hematite粒子単体によるAs吸着試験によりこれがAs吸 着能を有するという報告[3]があるが,hematiteを含むス ラグ試料(b)による実験では吸着試験開始から10時間後 以降はhematiteの等電点であるpH8.1以下であったにも かかわらずAs吸着が見られなかった.これはスラグ表面 に十分な量のhematiteが露出していなかったことなどが 原因と考えられる.これに対して,アルカリ処理試料(d) の投入量1gでの実験においては,As吸着を示す濃度減少 がみられた.さらに,試料(d)の投入量を5gに増加した 場合は,より大きなAs濃度減少が見られた.これらの結 果から,As吸着能の発現はアルカリ処理により新たに生 成したhydrogarnetによるものと考えられる.化学処理 により生成したhydrogarnetはスラグ表面に担持されて

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18 As 吸着材としての利用を目指した製鋼スラグの改質処理 第 65 巻 第 1,2 号

いると考えられるが,アルカリ処理試料(d)には黄色の微粒子が含まれていた.この微粒子を分離し てその結晶相同定を行うとともに,As吸着試験を行った.化学処理試料(d)5gを篩により再び分級 し,355 ∼ 150µmの粒子(e)3.93gおよび150µm以下の粒子(f)0.55gを得た.大粒径試料(e)に対 するXRD測定の結果,回折パターンはas-synthesized試料(a)とほぼ一致しておりhydrogarnetを 示す回折ピークは現れなかったが,試料表面がわずかに黄白色となっており,生成したhydrogarnet の一部が担持されていることが示唆される.微粒子試料(f)に対するXRD測定の結果,回折パター ンはこの微粒子がほぼhydrogarnet単相であることを示していた.分級後の試料(e)および(f)によ るAs吸着試験の結果をFig.8に示す.図より,As吸着の大部分はアルカリ処理で新たに生成した hydrogarnet微粒子によるものであり,大粒径試料(e)で見られるAs吸着は,スラグ表面に担持され たhydrogarnetによるものであると考える.以上の実験結果より,製鋼スラグによるAs吸着に対す る化学処理の有効性が明らかとなった.

4

おわりに

本研究では,製鋼スラグをAs吸着材として有効活用するため,As吸着に関わると考えられるスラ グ粒子表面のFeの化学状態,スラグ結晶相,成分溶出挙動に及ぼす熱処理,アルカリによる化学的表 面改質処理の影響を調査し,As吸着挙動との関連について検討した.実験結果より,以下のことが明 らかとなった. 雰囲気の異なる熱処理によりFeの化学状態や化合物種を制御することができる. スラグ中Pの存在により溶液のpH上昇が抑制される. スラグによるAs吸着に対して塩基性水溶液による化学的表面処理の有効性が示された. 今回の実験では未処理スラグ中のFe含有相は非晶質およびkirschsteinite結晶相であるが,実スラ グでは冷却条件や含有元素の種類により,非晶質/結晶相の割合やFe化合物種は異なる.原料スラグ の相構成や熱処理・化学処理条件とスラグ表面におけるFe含有相およびAs吸着特性との関係を詳細 に検討する必要はあるが,本研究により製鋼スラグの新たな有効利用への可能性が示された.

文 献

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Table 1 The composition of a dephosphorizaton slag and the model slag Slag composition (mass%)

参照

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