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子どもの思考を活性化する板書研究 : 社会科授業における探究過程の可視化を目指して

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Academic year: 2021

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子どもの思考を活性化する板書研究

―社会科授業における探究過程の可視化を目指して―

戸田征男 米田 豊 岩本 剛 吉崎雄貴 畑 和馬 宜野座剛

1 問題の所在と研究の目的 教育現場では、板書計画は重要とされている。 それは、板書計画こそが授業計画と なるからである。しかし、それと同時に板書は子どもとともに作るものである。授業 では、子どもの思考に沿った形で板書は形成されていく。子どもは、板書によって思 考を整理したり、深めたりする。つまり、子どもの探究過程が可視化された板書こそ が、子どもの思考を活性化する上で重要な役割を果たす。 社会科の授業には、二つの探究過程があるi。一つ目は、「 分か る 過程」である。社 会で起こっている諸事象を「なぜ疑問」で問い、社会事象間の関係・関連を「原因と 結果」で明示した説明的知識として理解させる 学習過程である。二つ目が、「考える過 程」である。社会的な問題に対して、「分かる過程」で習得した説明的知識を活用して 事実の分析的検討を行い、意志決定させる学習過程である。 本研究では、「考える過程」での意志決定 場面における子どもの思考を活性化するた めの板書の在り方についての考察を行う。 本研究の目的は、次の二点である。 ①意志決定場面での子どもの思考の構造を明らかにすること。 ②子どもの思考を活性化するための板書のあり方について明らかにすること 。 2 社会科授業における意志決定場面での子どもの思考 意志決定場面では、子どもは既有知識をもとに、事実の分析的検討を行う。 この事 実の分析的検討の構造と、そこで行われる子どもの思考を、認知心理学や教育哲学の 研究成果をもとに明らかにした。 意志決定場面では、まず、現状がどのような状態であり、どのような問題があるの かという「問題把握」をする。そして、論争問題のように、「◯◯すべきかどうか」と いう二者択一の問題では、それぞれの「解決策の吟味」を行う。その「解決策の吟味」 をふまえて、「解決策の選択 」をする。ここで、特に重要となるのが、「解決策の吟味」 である。まず、それぞれの解決策を選択すると、どのようなことが起こるかを「未来 予測」する。この解決策の「未来予測」を、他の解決策の「未来予測」と 「比較」す る。「比較」することによって、それぞれの解決策の「メリット」「デメリット 」を明 確にする。このようにして行われた事実の分析的検討を踏まえて、最終的に、 どちら を選択するかを決めさせる 。このような探究過程 を踏まえることで、子どもの合理的 意志決定能力を育成することができる。

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3 板書による意志決定過程の可視化を意図した実践 本研究では、第6学年「わたしたちのくらしと政治」での実践 を行い、分析検討を 行った。 本実践では、子どもに身近な事例である、校区を通る予定の都市計画道路を取り上 げる。都市計画道路の建設予定地には、現在多くの住宅が建っている。また、建設す るためには、多くの費用が必要である。伊丹市の財政のしくみや市議会のはたらきな どを学習した上で、校区を通る予定となっている「都市計画道路を計画どおり造るべ きか」を考えさせる。習得した知識を活用して事実の分析的検討を行い、意志決定さ せることを意図した学習過程である。 (1)目標 校区を通る都市計画道路を造るべきかどうかという問題について、習得した知識 を活用して事実の分析を行い、根拠のある自分の考えをもつことができる。 【思考・判断・表現】 (2)本時の展開 学 習 活 動 〇 主 な 発 問 ◇ お も な 呼 び か け 予 想 さ れ る 子 ど も の 反 応 指 導 上 の 留 意 点 * 資 料 ☆ 評 価 問 題 把 握 山 田 伊 丹 線 が 、 尼 崎 宝 塚 線 ま で 延 び る 計 画 が あ る こ と を 知 る 。 ◇ こ の 道 は 、 阪 急 伊 丹 駅 の あ た り か ら 、 尼 崎 宝 塚 線 ま で つ な げ る 計 画 が あ る の で す 。 ・ま だ 途 中 な ん だ 。 ・ 地 図 を た ど ら せ る こ と に よ っ て 、 道 路 が 途 切 れ て い る 場 所 が あ る こ と に 気 づ か せ る 。 * 校 区 の 地 図 * 都 市 計 画 道 路 整 備 計 画 図 解 決 策 の 吟 味 山 田 伊 丹 線 を 延 ば す こ と に よ っ て ど の よ う な メ リ ッ ト 、 デ メ リ ッ ト が 起 き る の か 、 未 来 予 測 す る 。 ○ 計 画 ど お り 延 ば す と 、 ど ん な メ リ ッ ト 、 デ メ リ ッ ト が あ る の か 。ま た 、 計 画 を や め る と ど ん な メ リ ッ ト 、 デ メ リ ッ ト が あ る の か 、 ワ ー ク シ ー ト に 書 き ま し ょ う 。 ・ 救 急 車 や 消 防 車 が 通 り や す く な る 。 ・ お 金 が か か る 。 ・ や め る と お 金 を 他 の こ と に 使 え る 。 ・ 道 が 狭 く て 危 な い 。 ・ そ れ ぞ れ の 選 択 肢 の メ リ ッ ト 、 デ メ リ ッ ト を 板 書 す る こ と に よ っ て 、 子 ど も が 「 比 較 」 し て 考 え ら れ る よ う に す る 。 * 伊 丹 市 の 財 政 状 況 校区を通る予定の「山田伊丹線」は、計画どおり尼崎宝塚線まで のばすべきか、それとも計画をやめるべきか。

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解 決 策 の 選 択 最 終 の 自 分 の 考 え を プ リ ン ト に 書 く 。 ○ 最 後 に 、 自 分 は ど う 考 え る の か 、 ワ ー ク シ ー ト に 理 由 も つ け て 書 き ま し ょ う 。 ・ ○ ○ す る な ら ば △ △ を 選 ぶ と い う 決 め 方 で も 良 い と い う こ と を 知 ら せ る 。 (3)本時での板書 4 結果と考察 本実践では、子どもは単元で習得した知識を活用して「未来予測」を行うことができ た。しかし、「比較」が十分に行えなかった。それは、「比較」の対象が明確になってい なかったためである。実践では、子どもの意見をそのまま板書していった。そのため、 それぞれの「未来予測」の観点が散らばってしまい。「お金に関してはこちらの方が良い。」 「安全に関してはこちらの方が良い。」といった、それぞれの解決策のメリット、デメリ ットが見えにくい板書となってしまっていた。それぞれの解決策のメリット、デメリッ トを明確に見える板書とするためには、「未来予測」を「分類」することが必要であるこ とが分かった。そこで、板書の改善案を作成した。改善の視点として、次の三点を設定 した。 ①未来予測を、観点ごとに「分類」する。 ②後から「分類」が行えるように、子どもの意見(「未来予測」)を、カードに書く。 ③「分類」の観点がわかるように板書する。

問題把握

解決策の吟味

未来予測 未来予測 比較

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【改善板書案】 5 成果と課題 本研究の成果は次の二点である。 (1)認知心理学や教育哲学の研究成果から、社会科授業の探究過程である「考える過程(意 志決定場面)」における子どもの思考の構造を明らかにすることができた。 (2)子どもの探究過程(「考える過程」)を可視化することができる板書の作成をすること ができた。 本研究の課題は次の二点である。 (1)子どもから出てきた未来予測が本当に正しいのかを、単元で習得した知識や資料から 検証する必要がある。その検証方法と、資料とのつなげ方については明らかになって いない。 (2)「分かる過程」における子どもの思考を活性化するための板書 については明らかにな っていない。 【註】 i 米田豊編著『「習得・活用・探究」の社会科授業&評価問題プラン 小学校編』明治図書 2011.6 に詳しい。

分類の観点

参照

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