サステイナブル・マーケティング・イノベーション
―エコロジカル・マーケティングからサステイナブル・マーケティングへ―
九里 徳泰
(工学部環境工学科)Ⅰ.マーケティングから環境マーケティングへ
1.マーケット、マーケティング マーケット(市場)とは、商品やサービスの売り手と買い手が 出会い、金・モノ・情報がなど様々なものが取引される場所だ。 ドラッガー(1974)は、「事業のマネジメントは、マーケティング とイノベーションによって顧客を創造する活動である」と表現 している。他にも、“Marketing is an organizational function and a set of processes for creating, communicating, and delivering value to customers and for managing customer relationships in ways that benefit the organization and its stakeholders”American Marketing Association(2004)や、「マ ーケティングとは価値を創造し、提供し、他の人々と交換する ことを通じて個人やグループが必要としと欲求するものを獲得 する社会的、経営的過程である」コトラー(1996)と定義されて いる。 日本では、「マーケティングとは、企業および他の組織がグロ ーバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競 争を通じて行う市場創造のための総合的活動である」日本マー ケティング協会(1990)としている。 つまり、マーケティングの主体は、「企業など組織体」であり、 マーケティングとは、企業などの組織体による、「市場」におけ る「顧客を含む関係者(ステイクホルダーズ)との相互関係を 通し、そのニーズの充足を実現する」創造的活動なのである。 また、吉田順一(2008)において、「マーケティングとは市場にお ける価値創造であり、自らの思考と行動を呪縛している価値意 識から解放され、自由自在に新たな市場、需要をデザインする ための感性を我々に要求している」と説明する。 冒頭のドラッガーの言葉からもわかるように、マーケティング が現在、企業、組織体において欠かざるべきものであることは 明らかである。 2.プロダクトアウト、マーケットイン 企業は、イノベーションとマーケティング(市場創造)により、 いかに製品・サービスに高付加価値をつけ、高価に売れる商品 を日々生み出していくかが課題となる。もちろん、生活必需品 もイノベーションとマーケティングにより顧客ニーズに応え、 市場を拡大していっている。 イノベーションとは、シュムペーター(1937)では、新しい財 貨の生産、新しい生産方法の導入、新しい販売先の開拓、新し い仕入先の獲得、新しい組織の実現であり、新結合(Neue Kombination)し、新たなビジネスを創造すること、としている。 イノベーションは、新しい価値創出の方法であり、マーケティ ングはそれを市場化していくものであるといえよう。 マーケティングには2つの商品開発・生産・販売活動のやり方 がある。プロダクトアウトとマーケットインである。 プロダクトアウトとは、企業が商品開発・生産・販売活動を行 う際に、企業側の得意分野(技術や意匠など)を優先するやり 方だ。それに対して、マーケットインとは、企業が商品開発・ 生産・販売活動を行っていくときに、商品・サービスの購買者 のニーズを鑑み、ユーザーの視点から商品開発を行い、ユーザ ーが求めているものを提供していこうという経営姿勢である。 つまり、マーケットインとは、消費者志向(顧客志向)の商品 づくりであり、プロダクトアウトとは、生産者の得意分野で商 品作りを行なうことである。マーケットインでは市場を調査し、 それに適合する製品を開発する。すなわち、市場調査→製品開 発→販売という手順を踏み、市場志向により顧客嗜好を汲んだ プロセスとなる。対してプロダクトアウトでは,メーカーが研 究開発の中からシーズを育て、それを市場に問う。つまり、研 究開発→製品開発→販売、という革新的技術(技術イノベーシ ョン)先導のプロセスである。 これらのプロセスは、環境に配慮した社会における製品・サー ビスを考える上で重要な要素であり、現在の製品・サービスは、 この2つのプロセスいずれかから製品が生み出されている。ト ヨタのプリウスはプロダクトアウト(低燃費ハイブリッドエン ジン技術)でありながら、将来の環境志向市場を汲んだマーケ ットインでもあるといえる。パタゴニアのオーガニック(有機 栽培)・コットン製品は、プロダクトアウトといえるが、それま で困難であった有機栽培綿の商業利用と、将来の環境志向市場 を汲んだ長期的視野に立つマーケットインでもあるとも言える。 市場に登場した環境配慮商品・サービスを1つの「消費社会現 象」ととらえるのであれば、その製品群の多くは、偶然のプロ ダクトアウトの集積ではなく、マーケットイン、つまり、企業、 組織が市場ニーズに応えた製造・提供であるといえる。つまり、 環境配慮製品・サービス市場は、企業と消費者との相互関係で 「作り上げられている」ともいえる。 図-1 企業の社会的責任と倫理観と消費者購買行動 (財団法人経済広報センター,「生活者の企業観に関する結果報 告書」,経済広報,2007)それは、市場が企業の社会的責任と倫理観を重視し、そのよう な会社や商品を手にしようという意識であり、その購買意識と 行動を鑑みたマーケットインでもあるといえるだろう(図-1)。 また、マクロミルによる 2009 年環境意識に関する調査では、 環境に配慮した企業活動では、8 割超が「イメージがよくなる」 「信頼感が高まる」となり、消費者の気持ちは「環境保護より も節約意識が強い(57%)」「環境に良い商品は節約に繋がるので 選びたい(54%)」ということで、企業・組織は環境への社会的 責任を表明しつつも、消費者購買においては経済性とのトレー ドオフの関係がみられる。図-2 から、実際には環境配慮商品を 買う層は少ないと言える。 図-2 環境配慮製品の購買行動 (日経 BPecomam 読者に対象にインターネットで実施, n=12,379,2007) 3.セグメントされる消費者 顧客の集合体である市場において、すべての顧客のニーズに応 える製品をつくるのは難しい。顧客は、その状況や環境により それぞれ全く違うニーズを持っているからだ。そこで、企業は 顧客をさまざまな観点から分類し、いくつかのグループに分け セグメント化し、それぞれのセグメントを対象としたマーケテ ィングを展開する。つまり、ターゲットとする層に向けて製品・ サービスの生産を行う。 このようなマーケティング活動を、「ターゲットマーケティン グ」という。コトラーによると、ターゲットマーケティングは、 次の3つの段階を踏んで行う必要がある。 1)市場細分化―市場をいくつかの顧客グループ(セグメント) に分けること。各製品の顧客グループを明確化し、プロフィー ルを作って行う。顧客グループは、マス、セグメント、ニッチ の順で細かくなる。細分化の基準は業界や製品によって変わっ てくるが、地域や、年齢、性別、年収、ニーズや行動グループ に着目して分けられる。 2)ターゲットとする市場の設定―企業は、1)で細分化した セグメントの中から、自社のターゲットを決定する。主な選択 方法として、次の5つのパターンが考えられる。 ―1.単一セグメントへ集中−一つのセグメントを狙って商品 を提供する ―2.選択的専門化―複数のセグメントを選択して商品を提供 する ―3.製品専門化―複数のセグメントに売れるような 1 種類の 製品を開発し、提供する ―4.市場専門化―特定の顧客グループに対して複数の製品を 提供し、彼らの数多いニーズを満たす ―5..市場のフルカバレッジ―すべての顧客グループ(マス) に対して、それぞれのニーズを満たす全ての製品を提供する 3)市場ポジショニング―製品の明確なベネフィット(便益) を市場で確立し、それをターゲットとなる顧客に伝える。 以上をまとめると、以下のマーケティング戦略になる。 顧客をグループ化すること(セグメント化=Segment)、次に参 入するセグメントを決定すること(ターゲット=Target)、そし てターゲットにしたセグメントの顧客に対してベネフィットを 伝えること(ポジショニング=Positioning)、この一連の活動 をそれぞれの頭文字をとって「STP戦略」と呼ぶ。 このような視点によって、環境配慮製品自体が持つ各種の価値 をどう市場の中で伝えるか(伝えられているのか)ということ を明確化することができる。 では、具体的に環境配慮購買層を分析してみると、1人の顧客 は複数のグループに属すということを考慮したうえで、年齢や、 ニーズ、そして行動グループから環境配慮購買層を把握するこ とができる。 1)の市場細分化では、環境配慮購買層は日本の市場では消費 層の1割以上のボリュームがあるため、すでにニッチではなく セグメントであるといえる。(博報堂,2009)2)のターゲット 設定では、消費層の1割以上がいることを考えると−4.の市場 専門化戦略をとることになるだろう。顧客層が増えてくれば、 市場全体のグリーン化として、−5.が選ばれる。3)の市場 ポジショニングでは、製品の鍵となるベネフィット(便益)は、 持続可能な豊かな環境へ(環境配慮する思考)であり、それを 市場で確立し、伝えることだ、ということができる。 マーケティングの観点から見ると、環境配慮購買層とは、「環 境配慮の指向=持続可能な環境志向(やさしく言うと「安全安 心」)」を前提とした、地球環境に配慮した購買、態度を行い、 健全な社会と健康を指向し、それにまつわるサービスや製品を 消費するセグメントであり、環境配慮購買市場とは、そのニー ズを満たす製品やサービスの提供に集中している市場であると いえる。 環境配慮志向という社会現象において提供された製品・サービ スは、このようにマーケティング論から逆引きするとその構造 が見えてくる。 4.環境配慮購買層のポジショニング コトラーはポジショニングを次のように説明している。「ポジ ショニングとは、ターゲット市場の中に独自の位置を占めるた めに企業の提供物とイメージをデザインすることである。ポジ ショニングの最終目的は、市場に焦点を当てた価値提案を作り 上げること、つまりターゲット市場がなぜその製品を買うべき なのかに対して説得力のある理由を作り上げることである」。 まず、ターゲットとする顧客のプロファイル(特徴)を明確に し、その上でその製品にあった軸を見つけてポジショニングを 行う。コトラーは次のような例を挙げ、自社の製品にとって最 も効果的なポジショニング戦略を立てることが必要だと説いて いる。 1)属性に基づくポジショニング 2)ベネフィットによるポジショニング 3)用途や目的によるポジショニング 4)ユーザーに基づくポジショニング 5)競合他社によるポジショニング 6)製品カテゴリによるポジショニング 7)品質、価格によるポジショニング 環境配慮製品・サービスは、環境配慮購買層というその属性か ら、環境配慮という価値による便益という意味で2)、またユー ザー指向から4)のポジショニングがなされていることがわか る。また、環境品質を考慮すれば7)の特徴が見られる。
ポジショニング戦略においては、ポジショニングを顧客に伝達 することがとても重要である。自社の製品のポジショニングを 顧客に正確に伝えてはじめて、ポジショニングが完了したとい える。ポジショニングは、企業の主張が込められた、明快なも のでなくてはいけない。 また、環境配慮という社会性を持った購買行動には、合理的な 購買意思決定とともに、その価値志向への共感(レゾナンス) がある。社会科学で言うレゾナンスとは、感情的な共感であり、 環境配慮セグメント層へ環境という価値がアフォーダンス(環 境が人間に意味を与える)されている状態であるといえる。そ れは、音楽堂で音楽を聞いたときに多くの人は楽譜では感動し ないことと同じである。環境配慮層へのマーケティングにおい ては、環境に関する価値を、共感とともにアフォードすること によりマーケティングポジションが成立することとなる。 5.環境マーケティングと環境配慮購買層 ここまでは、従来のマーケティングメソッドから環境配慮購買 層を検証してきたが、昨今のマーケティング分野には、環境マ ーケティングやエコロジカル・マーケティングと言われるのも 登場している。また、環境配慮購買層において重要な基盤とな る概念に、環境サスティナビリティ(持続可能性)がある。 環境マーケティングは、マーケティングにエコロジカルな(環 境、生態学的な)視点をいれたもので、基本的なマーケティン グ原理・手法は従来のものと変わらないが、マーケティングの 目的、ミッションに変化がある。従来のマーケティングのミッ ションは、企業における利潤を上げること、市場でのポジショ ニングを確立することにあったが、環境マーケティングではそ れに加え、企業戦略としての社会・環境貢献のミッションが付 加されたのである。(表-1 参照) 表-1 従来のマーケティング志向とエコロジカル・ マーケティング志向 プロダクト アウト マーケティング 志向 エコロジカル・ マーケティング志向 戦略 低コスト化 マーケットシェア と利益の確保 環境の共生とそのビジ ネス化 焦点 生産効率 顧客満足 環境保全と生活者/社会 満足と組織利益の調和 中 心 的 な 管 理 シ ス テ ム コスト管理 市場細分化と差別 化マーケティング 資源循環型マネジメン ト・システムの一環とし てのマーケティング 必 要 な 知識・情 報 生 産 管 理 ロジスティ ックス 消費者行動 環境問題、生活者のエコ ロジー意識、LCA、技術 イノベーションの動向 競 合 へ の対応 コスト削減 と品質向上 消費者ニーズの把 握とマーケティン グ・ミックスの最 適化 技術的イノベーション、 環境調和型製品の開発、 資源循環の仕組みの構 築、エコロジカル・コミ ュニケーション (西尾チヅル(1990)エコロジカル・マーケティングの構図,p20) この環境マーケティングは「エコロジカル・マーケティング」、 「グリーン・マーケティング」などともいわれ、同じものとし て扱われることが多い。 環境マーケティングは、企業の市場に対するコンティンジェン トな態度の変化による産物である。1990 年代環境に対する責任 と役割をより深く認識してきた企業が、新たに「環境マーケテ ィング」という考え方を取り入れるようになった。イギリスの マーケティング研究者のケン・ピーティは、環境マーケティン グを次のように定義している。「顧客と社会の要請を、利益をあ げ、かつ持続可能な方法で明らかにし、予測し、充足させるこ とに責任を持つ全体論的(ホリスティック)なマネジメントプ ロセス」。(ピーティー,1993)この定義では、「社会の要請」、「持 続可能」、「全体論的」という部分が、従来のマーケティングに 付加されている。 また、大橋照枝(1993)は、以下のように定義している。「エ コロジーとエコノミーを両立させるマーケティング手法であり、 企業努力と社会システムの確立によって、地球環境負荷の低減 と利益の両立をめざすもの。商品・サービスの企画、開発、生 産、物流、販売から、リサイクル、広報までの活動を通じ、『ゆ りかごから墓場まで』の全プロセスで環境負荷を最小にする企 業活動である」。この定義でも、「社会システム」、「両立」、「全 プロセス」という言葉が従来のマーケティングと異なっている。 このように、経済的利潤だけでなく、社会、環境便益に焦点を あてたアプローチがあるところが、環境マーケティングの最大 の特徴である。 具体的には、地球環境に負荷を与えない商品やサービスを提供 していくため、企画から開発、生産、物流、販売、広報、リユ ース、リサイクルなどに至るまで、環境負荷を最小限に抑制す るように図る。過剰包装を避け、ゴミをできる限り出さないよ うにする、資源の再利用を図る、人材や資金を出して生態系を 守る活動を推進する、商品を生産する過程で排出される廃棄物 を削減する、など、サステイナブル・プロダクション(持続可 能な生産)とサステイナブル・コンザンプション(持続可能な 消費)という概念をつなぐ、低炭素社会、循環型社会、自然共 生社会という持続可能な社会を前提とした、社会システムの「エ コロジカルな」変革へのマーケティングといえる。 ここで、これまで同一に扱ってきた、エコロジカル・マーケテ ィングと、環境マーケティングの違いについて触れたい。 エコロジカル・マーケティングは、公害問題を背景に社会志向 (ソサエタル≒企業の社会的責任)マーケティングの1つとし て 1960 年代後半∼1970 年代に登場した。これは、汚染・エネル ギー・資源の視点で行われたものが多かったが、それらはホリ スティック(全体論的)なものではなかった。また経営組織論 のオルダーソン(1982)のエコロジカルアプローチによるマーケ ティングは、組織行動システムのアプローチで直接的な環境問 題解決を一義とはしていない。1980 年代に登場した環境マーケ ティングは、持続可能性という概念ととともに、さらに環境や 社会について配慮した幅広いものへと変化していった。しかし、 エコロジカルという言葉が悪いわけではない。「エコロジカル・ マーケティングがホリスティックではなかった」といっても、 その名の下に行われた活動の実態のことを指摘しているに過ぎ ない。「エコロジカル」とは「生態学的な」という意味であり、 「エコロジカル・マーケティング」という言葉の本来の意味は、 「生態の特性に合致した、つまり生態系と人間活動(つまりは 産業活動も含む)が共存できることに貢献するマーケティング」 ということなのである。昨今、「環境マーケティング」の「環境」 も、「エコロジー」と同義で使われることが多いが、この場合の 「環境」は、主体の周りを包み込み影響を相互に受ける「環境」 である。 本論では、エコロジカル・マーケティング、グリーン・マーケ ティングを総称して、環境マーケティングとして扱う。 さて、エコロジカル・マーケティング、環境マーケティングと いう新しいマーケティングというものが出来上がりつつあるの だろうか。このあたりは次章で明らかにしてゆきたい。
Ⅱ.持続可能な消費と持続可能性マーケティング
1.ソーシャルマーケティングの展開 最近の企業行動をみていると、CSR(企業の社会的責任)が大 きくクローズアップされているが、実は、企業の社会的責任と いう概念の歴史は古い。1960 年代、高度経済成長とともに、大 消費時代が隆盛するとともに、公害問題が顕在化した。それに ともない、巨大化する企業の影響力に対し、生活者、地域社会、 社会全体の利益を重視し、企業の社会責任を強調する考え方が 生まれた(桜井克彦,1973)。つまり、企業経営の視点のみから マーケティング活動を行う「マネジリアル・マーケティング」 に対して、新たに「ソーシャル・マーケティング」が生まれた といえる。 ここで、1980 年代初頭におけるソーシャル・マーケティング の定義を紹介したい。三上富三郎(1982)では「利益を得て消費 者の満足を提供するという従来のマーケティングから、非消費 者を含む生活者の利益、さらには社会全体の利益と調和し、ま た、資源・エネルギー・生態系といった環境との間の調和まで 達成しながら、企業の適正な利潤を確保すべきマーケティング である」としている。 ソーシャル・マーケティングは、社会公共志向のマーケティン グの総称であるが、2つの意味に解釈することができる。1つ は、社会の課題を解決して、社会全体の利益向上を図ろうとす る非営利組織のマーケティング(コトラー)で、もう1つは、 マーケティングの技術を使い企業活動を、企業利益と社会利益 を両立させるマーケティング(レザー.W.,1973)である。 この2つの混同を避けるため、マーケティング論では、前者を ソーシャル・マーケティング、後者をソサエタル・マーケティ ングと分けて考える。 後者のソサエタル・マーケティングはこれは昨今いわれている CSR(企業の社会的責任)活動そのものであるが、日本でのその ルーツは公害という社会問題であった。各企業は、1950 年代後 半からの公害問題に対応すべく、企業の社会的責任活動として の公害対策を行い、その後、1980 年代後半より、地球環境問題 への対応としての環境配慮へと発展していった。つまり、1960 年代の企業の社会的責任とは、公害により生まれた被害者対応、 つまり社会問題への対応であり、環境(生態系)そのものへの 対応ではなかった。であるから、環境責任でなく、社会責任と なるのである。そして、社会責任のもとによる経営が、環境対 応型経営と変化してゆくように、マーケティングも、ソーシャ ル・マーケティングから環境マーケティングへと変わっていっ たのである。この部分、誤解がないように詳しく説明すると、 社会問題としての公害に対応することと、社会問題としての(地 球)環境問題に対応することは、ともに社会問題対応型である ことは変わりない。つまり、企業の社会責任には、公害も環境 も社会問題もすべて含まれる。 では、現在の CSR 経営におけるマーケティングはどうなってい るだろうか。社会責任範囲のグローバル化と、多様なステイク ホルダー関係のもと、組織の社会責任が以前より問われるよう になった。そして責任をもつ主体は、企業だけではなく、自治 体(自治体が社会責任をとるのは当たり前であるが)や各種非 営利組織へと、広がりを見せている。つまり、地域住民・地域 社会への責任から始まったマーケティング(ソーシャル・マー ケティング)は、地球環境問題の顕在化により、環境マーケテ ィングに変わってゆき、さらには環境だけでなくサステナビリ テ ィ 全 体 に 関 わ る も の 全 て へ の 社 会 責 任 ( SR = Social Responsibility)としてのマーケティング、つまり、持続可能 性(サステナビリティ)マーケティングへと移り変わってきて いる。 このようなマーケティングの基本的行動原理は、社会責任・ホ ーリズム・持続可能性に集約できる。 社会責任は、IT 革命による情報の民主化による、透明化(ト ランスパレンシー)、アカウンタビリティー(組織による説明責 任)からのプレッシャーへの対応行動がその基本構造となる。 ホーリズム(全体論)とは、表層的、対処療法的なアプローチ を廃し、企業も自然生態系及び社会システム構成員であるとい うシステム思考でその関係性と影響を理解し、行動することで ある。 持続可能性論によるアプローチは、本稿においては環境・社 会・経済を念頭に置いたトリプルボトムライン経営を採用し、 企業そのものの持続性を高めるというもの(つまりは未来のあ るべき企業像への模索)である。さらに拡張し、持続可能な社 会へのバックキャスティングからの企業行動であると言っても いい。 これらの 3 要素が新しいマーケティングの行動原理となる。企 業組織は、リスク軽減、従業員モチベーションアップ、市場開 拓、ブランド価値向上、優良人材確保など、つまり企業価値向 上のインセンティブがあるため、このマーケティング方法に取 り組む。 では、持続可能性原理を基とした持続可能な社会でのマーケテ ィングとはどのようなものであろうか。持続可能性の原理から 導き出すと、その製品・サービスは環境に配慮するだけでなく、 開発、平和、ジェンダー、不当児童労働など広範囲なグローバ ル社会問題への対応である。これは、サステナビリティを重視 しているので持続可能性マーケティング(マーケティング・フ ォー・サスティナビリティ)といえ、40 年たって再び舞台に躍 り出たネオ・ソシオ−エコロジカル・マーケティング(ネオ・ ソーシャル・マーケティング)であり、企業にとって最新のマ ーケティングフェイズへシフトした先と重なるといってもいい。 2.CSR マーケティング、持続可能性マーケティング 本稿では、従来のマーケティングから、環境マーケティング、 ソーシャル・マーケティングを広く俯瞰してきた。 ここで、CSR マーケティング、持続可能性マーケティングを考 察してみてみたい。CSR マーケティングは前節で解説したとおり、 企業の社会的責任を重視するマーケティングであり、旧来のソ ーシャル・マーケティングと区別するなら、ネオ・ソーシャル マーケティングともいえる。CSR である以上、ステイクホルダー ズへの影響と、その対応、係わり合いの話になる。しかし、こ の CSR マーケティングでは、関与者をどこまでにするのかと、 関与の度合いをどこまで求めるのか、などそのバウンダリーと なる閾値は、企業がステイクホルダー要求を鑑みつつも任意に 設定できる。 例えば、日本国内の木材輸入業者による木材の「環境」のクオ リティをマーケティングしなくてはいけない場合、サプライチ ェーンによる CSR を達成するために、木材伐採地のコンプライ アンス(法的責任)を徹底するのであるが、それがその地域の 生態系を持続可能にする保障はない。しかし、最低限の CSR は 達成されるわけである。 さらにこの事例に持続可能性マーケティングを適用すると、ホ ーリスティック(全体的)なアプローチを行うことになる。木 材伐採地の生態的持続可能性を基本に、マイノリティー配慮や 児童不当労働、移動による温暖化物質排出などに配慮するなど、 広範囲なものとなる。 これが、影響範囲と責任範囲の「バウンダリー問題」であり、 「マテリアリティ問題」であといえる。 現在では、一部の企業では、CSR マーケティングを離れ消費者 意識の高まりからの持続可能性概念のマーケットインによる持 1.ソーシャル・マーケティングの展開続可能性マーケティングに近づいてきているのではないかと思 われる。これを鈴木幸毅(2008)は「サステイナブル・イン」 と表現している。 従来の社会経済システムや生活様式のシステム的な転換の大 きなうねりの中で、持続可能性という思考、その「価値観」へ の転換が市場の中で起きているといえる。現在のような企業個 別の競争原理にゆだねたマーケティングでは、現状の諸問題を 乗り越えるには限界があるのとともに、持続可能性マーケティ ングを達成している企業は未だない状況である。サステイナブ ル・プロダクションとサステイナブル・コンザンプションによ る持続可能性市場の創出という変革には、環境配慮購買層こそ が環境マーケティングから持続可能性マーケティングへの大き な架け橋になるのではないかと期待される所以である。また、 持続可能性市場の創出こそがイノベーションであるともいえる。 3.未来社会の持続可能性マーケティングと持続可能性配慮 購買層 持続可能性マーケティングのエッセンスを紹介する。 ここで必要となるのは地球俯瞰的視野だが、この視野からは企 業生産や個人消費とのつながりが見えにくく、互いのかかわり 方が不明確である。これは、個人−家族―地域社会(所属組織 社会)―地域行政―国−地勢的集合(アジアなど)―地球−宇 宙、という影響圏を認識することであり、どこまでを企業およ び個人の関与領域とするのかという問題である。 問1:個人にとって、これまで自分が関与している領域として 想定していたのは、できる限りミニマムで、短期間の興味範囲 がある部分のみであったが、それが変わりだしているのか? 問2:生産する側の企業にとっての関与領域は変わってきてい るのだろうか? 企業のステイクホルダー認識とステイクホルダーからの要求 は、昨今グローバル化している。CSR 領域は拡張され、関与領域 が地域から、国、そしてグローバルな間接影響圏へと広がって いる。企業や個人が関与領域として認識する範囲が、国連が目 標とする持続可能な開発(サステイナブル・デベロップメント) を実現するために必要なものに近づいてきているといえるだろ う。その 2015 年までの目標は表-2 である。 表-2 国連、ミレニアム開発目標のターゲット 今日、企業が、これまで見過ごしてきた間接影響領域を認識す るようになり、その行動にも変化が現れてきている。旧植民地 などの低開発地域の窮状に対応するようになってきているので ある。世界システムとしての資本主義は生来的に独占性を有し ており、先進国の周辺従属衛星地域の〈領有・経済余剰の収奪〉 によってシステムの中枢部に発展をもたらし、同時に周辺部に 低開発をもたらしている。これを従属理論(フランク,1979)とい うが、企業はこのシステムの中枢主体である。これを理解した 上で、企業がミレニアム開発目標にコミットメントするのであ る。 同時に現在、国連によって、「持続可能な開発のための教育 10 年計画(Education for Sustainable Development(=ESD))の 10 年」が進められている。そのエッセンスは図-3 のように示さ れている。企業が影響を及ぼす範囲と、その責任領域を最大に とった場合、地球規模での適切な企業活動のあり方や、それを 支える教育が当然求められてくる。 世界的な潮流は、ステイクホルダー認識の拡大から、持続可能 性経営へと近づいている。鈴木(2006)では、未来の企業の姿 を、「看過することのできない負担すべきと確信されている企業 経営上の責任の諸相を受け止めて、それらを「良き市民」とし て3つの E、すなわち、Economy, Ethics, Environment の同 時存立・発展に関して負担すべき責任として捉え実現すること を目指す存在」としている。 持続可能性経営は、直接、間接のステイクホルダーの認識、要 求に対し、経済、倫理、環境の側面(3E)から全方位的に行わ れる経営であり、その領域は地球全てであるとはいえる。 つまり、消費する側も、環境・CSR 経営/持続可能性経営を行 う企業生産サイドも、持続可能な社会、そして持続可能な開発 へのアプローチが両面から行われだしているということを認識 すべきであろう。 図-3 持続可能な開発のための教育のエッセンス (持続可能な開発のための教育 10 年推進会議編『国連持続可 能な開発のための教育 10 年キックオフ!』持続可能な開発のた めの教育 10 年推進会議,2005 年) 企業の関与領域の拡大によって、個人よりも企業が先に、持続 可能な社会へのコミットメントをとっていくことになるだろう。 最近の日本の二酸化炭素排出の内訳データを見ても、企業の省 エネによる削減効果は高く、個人の排出量は増加している。 しかし、ホリスティックにその影響連鎖を考えればわかるよう に、生産―消費の連鎖という市場システムがある。だから、個 人においての持続可能な社会への貢献は、“消費”つまり、ライ フスタイルの変革という形で行われるであろうことが推測され る。我々が現在かかえる問題に対して、産業システムの持続可 .......... 能化 .. および ... 生活様式の持続可能化 .......... という双方向からのアプロー チがなされることによって、持続可能な社会への達成へと向か う。それは、サステイナブル・プロダクション―コンザンプシ ョンのチェインの必要性であり、社会における全地球的サステ イナブル・マネジメントの必要性である。 目標 1: 極度の貧困と飢餓の撲滅 目標 2: 普遍的初等教育の達成 目標 3: ジェンダーの平等の推進と女性の地位向上 目標 4: 幼児死亡率の削減 目標 5: 妊産婦の健康の改善 目標 6: HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延 目標 7: 環境の持続可能性の確保 目標 8: 開発のためのグローバル・パートナーシップの推進
持続可能な社会を達成するためには、持続可能性マーケティン グによって社会的責任を果たす商品・サービスを生産し、それ を消費者が受容する必要がある。このとき生み出される持続可 能型商品(サステイナブル・プロダクツ)とは、環境配慮商品、 人権配慮商品、福祉配慮商品、平和貢献型商品、ジェンダー配 慮型商品、多文化共生商品の開発イノベーションを促進しグロ ーバル・パートナーシップを支える商品、貧困・飢餓などの経 済的弱者に配慮した商品であろう。 はたしてこのような全方位にわたっての SR(社会責任)を全 うした商品を生産することができるのであろうか? できたと して、消費者に受容されるのであろうか? という問題ももち ろんあるが、未来の商品・サービスを造るのは、市場で意思決 定をする消費者個々人である。環境配慮購買層がこのような社 会構築への一歩となる、またはそれを支える存在であるともい えるであろう。 社会は次なる時代に向けて、大きなマーケット・イノベーショ ンを必要としているのである。持続可能性製品・サービスは持 続可能な社会には必須のものであるのである。それを支えるも のがサステイナブル・マーケティング・イノベーションである。 Ⅲ. 持続可能性に配慮した購買層マーケティングの展開 1.持続可能性に配慮した購買層へのマーケティングプロセス 前章では、環境、持続可能性に関わるマーケティング論から持 続可能性に配慮した購買層をみてきたが、本章では、持続可能 性に配慮した購買層という現象そのものを直視し、これからの 社会と持続可能性に配慮した購買層へのマーケティングという テーマで、新しい社会におけるマーケティングの1つのセグメ ントを検証する。持続可能性に配慮した購買層の市場と、そこ に供給されている環境関連の製品や・サービスを俯瞰し、これ から我々がとるべき持続可能な社会システムとどのような関係 があるのかを検証する。 持続可能性に配慮した購買層へのマーケティングを実際に計 画、実施していく場合、どのような流れ(プロセス)を経ていく こととなるかを考えたらどうなるのだろうか。一般的なマーケ ティングプロセスとしては、①マーケティング環境分析、②タ ーゲット市場の選定、③マーケティング・ミックスの最適化、 という手順を踏んでいくと考えられる。これを、持続可能性に 配慮した購買層へのマーケティングにも当てはめてみよう。 ①マーケティング環境分析 マーケティング環境分析とは、企業が現在置かれている状況と、 今後起こりうる環境変化を分析する作業である。この場合の「環 境」とは、自社を取り巻く外部環境と、自社自身の内側である 内部環境がある。これらの環境を分析することによって得られ た情報が、次のターゲット市場選定でのツールとなる。 外部環境としてあげられるのが、地球温暖化への注目や安全安 心な健康指向といった市場環境である。企業内で、その対応を 現在迫られたり、参入を考えたりすることが、持続可能性に配 慮した購買層へのマーケティングを行うための内部環境となる だろう。 ②ターゲット市場の選定 この段階では、環境分析で得られた情報をもとに、市場の細分 化を図り、そこからターゲット市場を選定する。また、選定し たセグメントに対し、自社製品が競合相手より魅力的である事 も示す必要がある。 市場細分化においてでは、持続可能性に配慮した購買層はすで にニッチではなく、日本の市場では消費層の1割以上のボリュ ームがあり、1つのセグメントである。持続可能性に配慮した 購買層へのマーケティングは、このセグメントへ向けて商品を 提供していくことになる。 具体的には、持続可能性に配慮した購買層というターゲット市 場では、市場専門化−特定の顧客グループ、持続可能性に配慮 した購買層のさまざまな数多いニーズを満たす製品やサービス の提供に集中するのである。市場ポジショニングでは、製品の 鍵となる明確なベネフィット(便益)は、このとき、その製品 群がもつ「持続可能性」という志向であり、それを市場で確立 し、伝える、ということができてゆくことがポジショニングの 鍵となるだろう。 ③マーケティング・ミックスの最適化 マーケティング・ミックスとは、選定されたターゲットとなる 市場に対して、企業がマーケティング目標達成のために、さま ざまな手段(価格、製品、プロモーション、流通など)を組み合 わせていく段階である。 マーケティングにおける第一段階は、顧客のニーズを探すこと であり、続く第二段階は顧客のニーズを満たす、というところ にあることだ。これは、「製品、パッケージ、価格、チャネル、 プロモーション(販売促進)、物流」活動の最適な組み合わせ、 マーケティング・ミックスの組み立てとその実践によって実現 する。 マーケティング・ミックスは、製品(Product)、価格 (Price)、流通(Place)、プロモーション(Promotion)という 4P と呼ばれる4つの分類を組み合わせて考えられることが多 い。流通の中には、チャネル(販路)や、物流(ロジスティクス) の要素も入ってくる。 では、持続可能性に配慮した購買層へのマーケティングではど うだろうか。 持続可能性配慮プロダクツ、サービスにおける活動要素を詳細 に検討してみよう。それが表-3 である。 表-3 持続可能性に配慮した購買層へのマーケティング におけるマーケティング・ミックスの各要素 製品の 要素 パッケー ジの要素 価格の要 素 チャネ ルの要 素 プロモー ションの 要素 物流の要 素 使い捨 てでな い 従来型で ない 少し高い IT グローバ ル・パー ソナル バックワ ードチャ ネルを重 視 長く使 える 簡素な 比較的高 い 口コミ エコフィ ーリング エコでト レーサビ リティが ある流通 健康に いい バルク エコプレ ミアム(高 品質・長持 ち・高級・ 高価) 全国紙 パーソナ ル・レゾ ナンス (共感) フードマ イレージ 美しい デザイ ン アースカ ラー 環境助成 金付 NPO ウッドマ イレッジ プレミ ア感 ナチュラ ルテイス ト 専門家 カーボン オフセッ ト バーチャ ルウォー ター さて、マーケティングで重要なのは、技術イノベーションによ るプロダクトアウトと、消費者ニーズを汲み取ったマーケット インである。だが、エコ・プロダクツと呼ばれる環境に配慮し た製品は、プロダクトアウトと、マーケットイン双方からのマ ーケッティングミックスにより製品創造が行われている。以下
のような持続可能性配慮製品・サービスが検討される。 表-4 から持続可能性配慮マーケティングで重要視すべき要素 をケーススタディとして環境購買層である LOHAS 層をセグメン トしまとめると以下となった。 1−品物やサービスを通した、顧客と―提供者の信頼関係を築 けること。 2−五感を重視した質感のよいモノとサービスを提供するこ と。 3−提供者の側が持続可能性の価値観をもっていること。 表-4 持続可能性配慮プロダクツ・サービスの概要 モビリティ 日常生活 社会・金融システム ハイブリッ トカー エコハウス コジェネ ミニ SRI(社会責任まで はいかない、APBANK 活 動のサポーター) 自転車 ソーラーパネ ル 有機野菜 EMS、CSR 持続可能企 業マネジメント カーシェア リング MY 箸、MY カッ プ、MY バック オーガニッ クコットン エコロジーオフィス (リラクゼーション、ア ンチセクハラも含む QOL) LRT 代替医療全般 オーガニッ クワイン EV 省エネ家電 (エコ電球、省 エネ冷蔵庫、 食器洗い機) エコ家電(有 機分解携帯 電話等) ヨガ、ダイエ ット、マラソ ン 精神世界の セミナー
(LOHAS CLUB(2006) http://www.lohasclub.org から作成)
4−デザイン、やクオリティに配慮しつつもロングライフであ る品を提供すること。 5−アカウンタビリティ(情報公開性)を重視すること。 2.持続可能性に配慮したライフスタイルとその受容可能性 従来のマーケティングでの消費者は、新たなコストや労力負担 の大きさに反比例し、個人生活のベネフィット(金銭だけでは なく利便性なども含む)の大きさに比例する、といわれる。で は持続可能性に配慮した購買層へのマーケティングではどうだ ろうか。納得できるものであれば高コストでも良く、かつ、労 力がかかるものであっても合理的に必要であれば行使する。も ちろん、金銭で代替する労力もある。 この点が、従来の消費者の行動とは変わっている点である。こ れは、持続可能性に配慮した購買層が比較的所得があり、社会 に向けての活動に対してアクティブであるということを裏付け る(イースクエア(2008)LOHAS 消費者動向調査 2008) 持続可能性に配慮した購買層の場合は、個人生活のベネフィ ットの大きさ、という意味がさらに拡大され、個人のベネフィ ットは=個人の健康だけでなく、精神性の高い生活への追求に までなっている。また、社会のベネフィットとして、社会の一 員としての健全な社会の確立や、環境問題解決なども考慮にい れるようになっている。持続可能性に配慮した購買層では、こ れまでの消費者が重視していた直接的かつ即時的なベネフィッ トだけでなくというところから、間接的かつ将来的なベネフィ ットまでをも受容するということであり、持続可能な社会へと 近づこうという行動のあらわれなのであるとわかる。 これまでのエコロジカル・マーケティングのエコロジー行動の 類型と、新しい環境配慮購買層、つまり、持続可能性に配慮し た層のマーケティングを比較してみた 。 表-5 エコロジカル・マーケティングのエコロジー行動の類型と持続可能性に配慮した購買層のマーケティングの比較 プロダクトアウト マーケティング志向 ソーシャル・マー ケティング志向 エコロジカル・マー ケティング志向 持続可能性マーケテ ィング志向 戦略 低コスト化 マーケットシェアと 利益の確保 社会的責任と社会 貢献 環境の共生とそのビ ジネス化 環境を使った技術、 社会の追求と自らの 健康 焦点 生産効率 顧客満足 生活者/社会満足 と組織利益の調和 環境保全と生活者/ 社会満足と組織利益 の調和 地域の選択性、自ら の健康 中心的な管理シス テム コスト管理 市場細分化と差別化 マーケティング 社会的責任と社会 貢献のマーケティ ング 資源循環型マネジメ ント・システムも一 環としてのマーケテ ィング 自由市場における社 会事業を促すマーケ ティング 必要な知識・情報 生産管理 ロジスティックス 消費者行動 企業倫理、フィラ ンソロピー、メセ ナ、製造物責任 環境問題、生活者の エコロジー意識、 LCA、技術イノベーシ ョンの動向 環境保全、サステナ ビリティ技術、社会 正義、公正性 競合への対応 コスト削減と品質 向上 消費者ニーズの把握 とマーケティング・ ミックスの最適化 社会的責任行動の 明 示 、 ソ ー シ ャ ル・コミュニケー ション 技術的イノベーショ ン、環境調和型製品 の開発、資源循環の 仕組みの構築、エコ ロジカル・コミュニ ケーション 高付加価値戦略ブラ ンドマネジメント、 社会変革による競争 優位 (西尾チヅル,エコロジカル・マーケティングの構図,p20,1999、網掛箇所を追加) これまでのエコロジカル・マーケティングのエコロジー行動の 類型と、新しい環境配慮購買層、つまり、持続可能性に配慮し た層のマーケティングを比較してみた。
エコロジカル・マーケティングにおける消費者はグリーンコン シューマーといわれるが、持続可能性マーケティングにおいて は、グリーン&ソーシャル・コンシューマーともいえ、さらに はサステイナブル・コンシューマーともいえるだろう。 3.ブランド・エクイティとしての持続可能性を配慮した購買 層 ブランド・エクイティ(Brand Equity)とはブランド資産、ブ ランド資産価値のことで、90 年代アーカー(1998) が、ブラン ドの資産としての価値の重要性を説くために使い出した言葉で ある。無形なブランドの、資産としての価値の重要性を説いた のである。そのアーカーによると、ブランド・エクイティとは、 ブランドその名前やシンボルと結びついたブランドの資産と負 債の集合、であり、企業または企業の顧客への製品やサービス の価値を増すか、減少させるものであるという。 ブランド・エクイティの要素として、アーカーは以下の5つを あげている。 ①ブランド・ ロイヤルティ ②ブランド名の認知 ③知覚品質 ④ブランド連想 ⑤その他のブランド資産 詳しく説明すると、 ①の、ブランド・ ロイヤルティとは、顧客がブランドに対し て持つ信頼性のことで、ブランド・ロイヤルティの高い顧客が どれだけいるかがブランド資産の高さを決める。 ②ブランド認知とは、ブランド・コミュニケーションにより成 立するもので、 顧客がブランドを識別することを言う。 ③知覚品質とは、顧客が購買目的に実際に適った品質かどうか で、顧客により決定される。 ④ブランド連想とは、そのブランドの記憶、イメージなど、そ のブランドに関するすべてのから顧客が顧客の中での連想する 全てのものをいう。 ⑤その他のブランド資産は、そのブランドが持つ特許やトレー ドマークなどのことで、競争優位につながる。 この5つのカテゴリーに分けられる。 アーカーは、ブランド・ エクイティとは、無形な資産であっ て、目に見えないけれど、その目に見えないものをどう管理す るか、ということが非常に重要である、というように述べてい る。つまり、様々なマーケティング活動の成果としてできあが ったブランドという無形なものを、総合的に捕えるべきである ということを示唆している。決して手段としてブランドを使う、 のではなく、結果としてブランドを管理する..............というブランド価 値の新しい認識でもある。 その後、ブランド・エクイティ論は、ブランド・アイデンティ ティ論へと展開した。アイデンティティ論とエクイティ論の違 いは、どのように知覚されているかから、どのように知覚され たいのか、というブランドそのもののミッションの明確化を戦 略的に説いた点である。つまり、ブランド・アイデンティティ論 は、「このブランドがどうあるべきか」という信念や哲学が、ブ ランドの根底にあるべきだという点である説く。つまりは、な にを商品・サービスを通じて伝えたいかということが明確な価 値提案を行う「コンセプト・アウト」型のマーケティングとい うことになる(図-4)。 アーカーは、「コア・アイデンティティ」と「拡張されたアイ デンティティ」という二つの概念により、ブランドの構造を示 している。コア・アイデンティティは決して変わらないアイデ ンティティであり、拡張されたアイデンティティは、そのコア・ アイデンティティを豊かにし、完全なものとするアイデンティ ティである。アーカーによれば、ブランドは4つの視点と12 の次元により構成されているという(図-5)。 図-4 コンセプト・アウト型マーケティング
ᚢ⇛ታⴕ╷ቯ
ኻ ኻ 㘈ቴ 図-5 ブランド・アイデンティティの構造 ᢔ 䉝䉟䊂䊮䊁䉞䊁䉞䉮䉝䊶
䉝䉟䊂䊮䊁䉞
䊁䉞
䉲䊮䊗䊦䈫䈚䈩䈱 䊑䊤䊮䊄 11.䊎䉳䊠䉝䊦䊶䉟䊜䊷 䉳䈫䊜䉺䊐䉜䊷 12.䊑䊤䊮䊄䈱વ⛔ ⚵❱䈫䈚䈩䈱 䊑䊤䊮䊄 7.⚵❱䋨 㕟ᣂᕈ䇮ᶖ ⾌⠪ᔒะ䇮ା↪䋩 8.䊨䊷䉦䊦䈎䉫䊨䊷䊋 䊦䈎 ຠ䈫䈚䈩䈱 䊑䊤䊮䊄 1.ຠಽ㊁ 2.ຠዻᕈ 3.ຠ⾰/ଔ୯ 4.↪ㅜ 5.䊡䊷䉱䊷 6.ේ↥࿖ ੱ䈫䈚䈩䈱 䊑䊤䊮䊄 9.䊌䊷䉸䊅䊥䊁䉞 䋨 ⺈ታ䇮䉣䊈䊦䉩䉾 䉲䊠䇮ᱞ㛽䈭䈬䋩 10.䊑䊤䊮䊄䈫㘈ቴ䈫䈱 㑐ଥ䋨 ੱ䇮ഥ⸒ ⠪䋩 アーカー,D.A.(1998)「ブランド展開のマネジメント」『ハーバ ード・ビジネス・レビュー』 1998 年 3 月号,ダイアモンド社 これを、持続可能性を配慮した購買層という「ブランド」 に 当てはめてみる。 持続可能性を配慮した購買層ブランドのコア・アイデンティテ ィは、サステナビリティに重きを置いたライフスタイルである。 拡張されたアイデンティティは、それを具現化するものとして、 製品としてのブランド(持続可能な消費、つまり環境に配慮、 健康、自己開発、持続可能な経済貢献型)であり、組織として のブランド(社会変革性、グローカル)、シンボルとしてのブラ ンド(メタファーとしての持続可能性)、人としてのブランド(協 働者)という具合だ。 この持続可能性ブランドにはとても強い部分がある。それは、 コア・アイデンティティである。「持続可能性に重きを置いた生 活様式」という確固たるものがあるからだ。 では次に一企業での持続可能性を配慮した購買層の製品・サー ビスを販売する場合のブランド戦略について述べよう。 この場合、積極的にコンセプト・アウト、価値提案をする戦略 が考えられる。適切な持続可能性価値を提案(バリュー・プロ ポジション)することによって、ブランドに信頼性(ロイヤリ ティ)が結びついて、顧客とブランドの関係が構築され、維持・ 強化される。つまり、価値を、提供する側と、価値を提供され る側が、ブランドというものを媒介にして信頼関係を作るというものだ。 これは、持続可能性という価値における、価値情報とコア・ア イデンティティによるコンセプト・アウトによるマーケティン グがこれにあたる。持続可能性マーケティングの場合、コア・ コンセプトは一企業がマーケティングに利用するために作った ものではなく、持続可能性志向を持っている人全体で共有して いるものである。このため、持続可能性を持ったブランディン グ な の で 、「 コ ー ズ リ レ イ テ ッ ド ・ マ ー ケ テ ィ ン グ (Cause-Related Marketing)」ということもできる。コーズリ レイテッド・マーケティングとは、企業が行う公益性の高いマ ーケティングである。これは、「社会貢献活動マーケティング」 ともいわれ、企業が自社の財・サービスの販売を通じて、主義 主張(=Cause,コーズ)を同じくする NPO、NGO など市民活動団 体の資金調達を支援するマーケティングのことである(コトラ ー,2007)。これは 1983 年のアメリカン・エキスプレスの「自由 の女神修復キャンペーン」が最初とされる。このマーケティン グ手法は、日本では「愛・地球博」など、公共的イベント等で 行われることが多いが、公益組織だけでなく企業にも広がりだ している。 さて、ブランド論において、理想的なブランド・アイデンティ ティを作り上げるためには、機能的便益、情緒的便益、自己表 現的便益が必要だとアーカーはいう。 「機能的便益」とは、顧客に機能面の効用を提供する価値で、 製品やサービスに直接関係するものである。「情緒的便益」と は、製品やサービスの購入・使用を通じて、ブランドが顧客に 与える感情面の価値である。「自己表現的便益」とは、顧客が 自分自身のイメージを表現する手段を提供する価値である。 環境配慮型ハイブリッドカーとしてヒットしたプリウスを例 に説明しよう。まず、機能的便益は、省エネであり、維持コス トが安く、スタイリッシュなフォルムで標準より優れた自動車 であるという点である。情緒的便益は環境活動を毎日している 満足感、責任感などがあげられる。自己表現便益は、将来世代 を考え、環境を大事にしたいと思っている、ということを表現 できるといえるだろう。エコブランドとしてのプリウスのブラ ンディングの背景構造は次の図−6である。 図-6 エコブランドのアイデンティティの要素 また、持続可能性志向によるブランディングは、主義主張の同 調する層が、企業などの組織を活用し、その商品・サービスを 通じて(つまりは市場を通じて)、環境のサステナビリティと 自己の健康、そして最終的には社会変革を目的として、主体的 に追求していくという、ソーシャル・ブランディングの手法の 側面も持つ。 まだマーケティングの世界には、ソーシャル・ブランディング という言葉は登場していない。ここで、仮説としてのソーシャ ル・ブランディングを解説しよう。 ソーシャル・ブランディングとは、社会とのかかわりを重視し、 信頼によりつながるブランディングの考え方を指す。価値情報 をコア・アイデンティティにおき、製品やサービスが消費者や 社会に対する配慮をもっている。 それまでの企業経営の視点のみからの「マネジリアル・ブラン ディング」に対して、新たにこのソーシャル・ブランディング の考え方が必要とされる。ソーシャル・ブランディングは、コ アにグローバル価値情報があり、サービス・製品提供主体と顧 客との関係は「信頼」によりつながれており、そのブランドの 大きな目的は、社会システム変革及び個別の社会問題解決型の ブランディングである。企業サイドからたつと、社会全体に有 益な(悪い影響を与えない)製品・商品・サービスを提供する ための、ブランド戦略であり、企業の社会的責任(CSR)による ものである。 以上のような点から、持続可能性マーケティングは、それ本来 の活動の過程でソーシャル・ブランディングへの挑戦をしてい るといえるだろう。持続可能性志向による市場においては、決 して一企業の商品・サービスだけにとどまるものでないという ことも、ブランド論から明確にわかるのである。 4.持続可能性行動の規定要因 最後に、持続可能な消費を支える市場において、持続可能性志 向を持つ消費行動の要因を考察した。 属性からみる持続可能性志向の行動の規定要因はどんなもの だろうか。 1)デモグラフィック属性 先行研究から、年齢と環境・社会に配慮した行動実践に関して の関連性はあまりないといわれている(西尾,1999)。性別も、環 境・社会に配慮した行動の実践との関連性は見出されていない が、少数の論文で女性が環境・社会に配慮した行動の実践が高 いという結果が出ている。 教育水準の高さと、環境・社会に配慮した行動の実践であるが、 これもあまり関係がないと言われている。教育水準よりも、環 境・社会に配慮することの関心度が高く、日ごろからその関心 事の情報を集めていることが重要である。 高収入でゆとりのあるほうが環境・社会に配慮した行動を実践 すると考えてしまうが、収入が低いほうが省エネ行動を行うと いう報告もある。ただし、個人生活での負担感が高くなるほど、 環境・社会に配慮した行動が取られていないという研究もある。 生活による負担感のなさ、精神的にゆとりのある生活が、環境・ 社会に配慮した行動を促すといっていい。 2)パーソナリティ属性 従来の環境・社会に配慮した行動をするパーソナリティ属性は、 先行研究より、社会的責任行動性向が高い人は社会的・経済的 地位が高く、疎外感、独断性、保守性、ステータス、パーソナ ルコンピタンス志向が低く、コスモポリタン志向が高い層だと いわれている(西尾,1999)。また別の研究では、理解力、寛容性、 危険回避志向の高い人がエコロジー行動が高いと言われている。 またコスモポリタン志向、リベラリズム、倹約志向、健康志向、 ヘルシー志向性と正の関係があるとされている。 • ⅣႺᵴേ䉕ⴕ䈦䈩䈇䉎ḩ⿷ᗵ • ⥄ಽ䈱ᵴേ䈮ኻ䈜䉎⽿છᗵ • ⥄ὼ䈱䉅䈱䉕䈉ᔃᗵ ᖱ✜⊛ଢ⋉ ⾼䉇↪䉕ㅢ䈛䈩㘈ቴ䈮ਈ䈋䉎ᗵᖱ • ᑄ᫈‛䊶ኂ‛⾰䉕䈘䈭䈇 • 䊥䉰䉟䉪䊦᧚䉕↪ • ⋭䉣䊈ലᨐ • ⛽ᜬ▤ℂ䉮䉴䊃䈱ᷫ • 䊥䉰䉟䉪䊦䈪䈐䉎 ᯏ⢻⊛ଢ⋉ 䊑䊤䊮䊄䈱ਛᔃ⊛䈭ଔ୯ • ⅣႺ䉕ᄢಾ䈮䈚䈢䈇䈫ᕁ䈉ᗧᕁ • ᧪ઍ䉕⠨䈋䉎⥄ಽ • ડᬺ䈱␠ળ⽸₂䉕䉰䊘䊷䊃䈪䈐䉎 • ή㚝䉕䈚䈭䈇⥄ὼ䈭↢䈐ᣇ ⥄Ꮖ⊛ଢ⋉ 㘈ቴ䈏⥄ಽ䉕䈜䉎ᚻᲑ䈫䈚䈩䊑䊤䊮䊄䈏ਈ䈋䉎䉅䈱 ䷧ ䷲ 丵 丕 丨 丱 丈 䶺 ຠ 丵 ䷴ 丶 丒 ䷸
生活者の持続可能性志向から生まれる態度、そして行動には、 環境配慮活動の先行研究、広瀬幸雄 (1995) 、杉浦淳吉 (2003) によれば、以下のような要因があると考えられる。 図-7 持続可能性配慮行動の規定要因 䊶ⅣႺ␠ળ㗴䈮 㑐䈜䉎⍮ 䊶␠ળ⊛⽿છᗵ 䊶ᜬ⛯น⢻ᕈ⍮⼂ 䊶ലᕈ⼂ 䊶⾌↪ଢ⋉⹏ଔ 䊶␠ળ⊛ⷙ▸ ᜬ⛯น⢻ᕈ䈮㈩ᘦ 䈚䈢ᗧ࿑ ᜬ⛯น⢻ᕈ䈮㈩ᘦ 䈚䈢ⴕേ 各要因の内容を整理してみよう。 ・環境社会問題に関する認知 環境社会問題に関する認知とは、環境・社会問題に関する関心 度や重要度、環境汚染、社会問題に対する危機感・リスクの認 知、持続可能性に配慮した活動をすることと個人の価値や日常 への結びつきの強さ、などのことである。それ以外にも、環境・ 社会問題に対する SR(Social Responsibility、社会責任)感が 持続可能性に配慮した行動を促すといえる。自然や社会に対し て個人が持っている価値観が、環境社会配慮活動を規定するこ ともわかっている。また援助志向、利他志向が環境社会配慮活 動を規定するともいわれている。 環境・社会問題に関する認知だけでなく、個人の価値観、責任 感と持続可能性に配慮した活動は係わり合いがあるといえよう。 ・持続可能性に配慮した知識 環境・社会問題に関する正しい知識の量も環境・社会配慮活動 に大きな影響を与えるといわれている。 ・有効性認知 ある活動をすることが、環境・社会問題解決に有効であると感 じる主観的な知覚である。持続可能性に配慮した態度が環境・ 社会問題解決に有効か否か認知していることが、個人的環境・ 社会問題解決活動へ影響しているといわれている。また、有効 性認知度が高いほど、コスト負担行動も高いといわれている。 さらに次世代への有効性認知が高い消費者ほど、環境社会問題 にかかわるコスト負担や、規制を受け入れるともいわれている。 ・費用便益評価 費用便益評価とは、環境・社会保全活動を実践することに要す るコストと期待される結果との収支である。コストの中には、 金銭だけでなく精神的な負担、労力も含まれる。期待される便 益には、グローバルな問題解決だけでなく、個人生活における 利便性向上や快適性も含まれる。費用便益評価が低くなるほど、 環境・社会の問題を解決するための活動は抑制される。 ・社会的規範 友人・知人・家族といった、個人の態度や態度に直接影響を与 える準拠集団がもっている規範で、このような周りの人による 影響が環境・社会の問題を解決する活動と大きな係わり合いが あるといえる。 5.サステイナブル・マーケティング・イノベーション 従来行われているマーケティングリサーチと、マーケティン グ戦略策定及び、策定されたマーケティングの消費者受容可能 性から、環境及び持続可能性に配慮したマーケティングを検証 した。 持続可能性という価値感をいかに伝播<教育>することが重 要であるか、そして、通常のマーケティングと同じセグメント によるマーケティング・ミックス、つまりサステイナブル・イ ンにより、企業価値が高まる(高める)とともに、そのマーケ ティングが持続可能性要素を持ち合わせていることから、社会 の持続可能性への貢献ができると考えられる。 また、アメリカで起こった、ソーシャルチェンジ型の社会行動 としての社会消費行動が、マーケティングを使い市場から社会 を変えるという動きもある。 持続可能性に配慮した消費層の特徴は、アンガージュマン(社 会参画)、レゾナンス(共感)、そして、シンボシス(共生思想) である。マーケティングにおいても、これまでの環境配慮製品 のような、プロダクトアウト、マーケットイン双方からの製品 創造だけでなく、持続可能性コンセプトを中心とした、コンセ プトアウト型のナレッジ集積とダイアローグを中心とした、新 しいコミットメント型のマーケティングにより、レゾナンスは 拡大し、かつ、共生の社会へと向かうことが予測される。つま り、製造者側、サービス提供側がいかに自社の持続可能性コン セプトを消費者と共有できるのか、そして、それが直接のエン カウンターによるダイアローグを伴うかがポイントであろう。 そういう意味でも持続可能性に配慮するという社会現象は、マ ーケティングにも大きな変革・イノベーションをもたらすもの である。 [参考文献] 1)アーカー,D.A.(1998)「ブランド展開のマネジメント」『ハー バード・ビジネス・レビュー』 1998 年 3 月号,ダイアモンド社 2) 青木幸弘 (1998) 『ブランド・マネジメント論の変遷と課題』 3) 井関利明、藤江俊彦 (2005) 『ソーシャル・マネジメントの 時代』 第一法規 4)大橋照枝 (1994) 『環境マーケティング戦略』 東洋経済新報 社 5)イースクエア(2008)LOHAS 消費者動向調査 2008 http://www.e-squareinc.com/news/2008/pdf/LOHAS08Summary Report.pdf 6) オルダーソン,L.(1982)『動態的マーケティング行動』千倉 書房 7) 加藤勇夫他(2006)『現代のマーケティング論』ナカニシヤ出 版 8)環境主義マーケティング研究会 (1992) 『環境主義マーケテ ィング』 日本能率協会マネジメントセンター 9) 國部克彦、伊坪徳宏 (2007) 『環境経営・会計』 有斐閣 10) コトラー,P. (1996) 『マーケティングマネジメント』 プ レゼント社 11) コトラー,P. (2004) 『コトラーのマーケティング講義』 ダ イアモンド社 12) コトラー,P.(2007)『社会的責任のマーケティング』東洋 経済 13) 桜井克彦(1973)「企業と環境」『経営と環境』千倉書房 14) 佐々木正夫 (1994) 『アフォーダンス−新しい認知の理論』 岩波書店 15) 杉浦淳吉 (2003) 『環境配慮の社会心理学』 ナカニシヤ出 版 16) シュムペーター,J.A.(1937)『シュムペーター経済発展の 理論』岩波書店 17) 鈴木幸毅 (1992) 『環境問題と企業責任』 中央経済社 18) 鈴木幸毅 (1999) 『環境経営学の確立に向けて』 税務経理 協会 19) 鈴木幸毅(2006)「環境経営」『経営学基礎』 中央経済社 20) 鈴木幸毅 (2008) 『企業社会責任の研究』 中央経済社
21)スティーガー,U.(1997) 『企業の環境戦略』 日経 BP 社 22)高橋由明、鈴木幸毅 (2003) 『環境問題の経済学』 ミネル ヴァ書房 23) 谷本寛治 (2006) 『ソーシャル・エンタープライズ』 中央 経済社 24) 電通マーケティング戦略研究会 (1985) 『感性消費 理性 消費』 日本経済新聞社 25) ドラッカー,P.F.(1974)『マネジメント――課題・責任・ 実践』ダイヤモンド社 26)西尾チヅル (1999) 『エコロジカル・マーケティングの構 図』 有斐閣 27)日本マーケティング協会(1990)マーケティング定義 http://www.jma2-jp.org/report/marketing.html 28)博報堂(2009)「新興市場・15 都市における「環境」に対す る意識調査」『Global HABIT2009』 29)広瀬幸雄 (1995) 『環境と消費の社会心理学』 名古屋大学 出版社 30)ピーティー,K.(1993)『体系グリーンマーケティング』同友 館 31)フランク,A.G.(1979)『世界資本主義と低開発』柘植書房 32)マクロミル(2009)2009 年環境意識に関する調査 http://www.macromill.com/r_data/20090702ece/index.html 33)三上富三郎(1982)『ソーシャル・マーケティング』同文舘 34)吉田順一(2008)北海道洞爺湖サミット記念環境総合展 2008 講演資料,環境経営学会
35)American Marketing Association(2004) Marketing thought vol.1 no.3
http://www.marketingpower.com/live/content21257.php 36)Lazer,W.,Kelley, E.J. (1973)Social Marketing : Perspectives and Viewpoints,R.D.Irwin.