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<総説>本邦の精神科看護における認知行動療法の実践研究に関する文献レビュー 利用統計を見る

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本邦の精神科看護における認知行動療法の

実践研究に関する文献レビュー

Interventions Using Cognitive Behavioral Therapy in Japanese Psychiatric Nursing:

A Literature Review

神澤 尚利,中本 和典,水野恵理子

KAMIZAWA Naotoshi, NAKAMOTO Kazunori, MIZUNO Eriko

要 旨

精神科看護における根拠に基づいた実践活動を今後実施するために,本研究の目的は,本邦の精神科看護 における認知行動療法実践に関する先行研究に基づき知識体系を整理し,精神科看護における対象者に対す る認知行動療法実践の効果を明らかにすることである。“認知行動療法”と“精神科看護”をキーワードとして 文献検索し,検討候補 157 編中 8 編の介入研究を検討対象とした。内容検討と文献統合を行った結果,検討 対象が 8 編であったこと,効果的な介入が実施されているか不明であったこと,看護職単独での介入を実施 している研究が 1 編であったことから,精神科看護における認知行動療法実践の効果検証は十分に行われて いないことが明らかとなった。今後は,研究の視点を持った認知行動療法実践を基礎とした研究論文を公表し, その知見を次の実践に活かすという循環を作る必要がある。 キーワード 認知行動療法,精神科看護,文献レビュー

Key Words Cognitive Behavioral Therapy, Psychiatric Nursing, A Literature Review

受理日:2016 年 7 月 20 日

山 梨 大 学 大 学 院 総 合 研 究 部:University of Yamanashi, Graduate Faculty of Interdisciplinary Research

Ⅰ.はじめに

認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy:CBT) は,認知療法と行動療法が融合して体系化され 1990 年 代頃から認知行動療法と呼ばれるようになった心理療法 である。うつ病,統合失調症,パーソナリティ障害等の 精神疾患,慢性や癌性の疼痛,糖尿病や心筋梗塞等の生 活習慣病にもその対象が広がっている1)。医学領域にお ける治療的アプローチとしての認知行動療法は,1970 年代に米国のアーロン・T・ベックがうつ病に対する精 神療法として開発したものである2)。元来,認知療法は ベックが精神分析の理論と技法を否定し,行動療法の理 論と技法を取り入れ構築されたものであり,行動理論の 批判から発展した認知行動療法とは,発展の経緯が異な る3)。現在では認知療法は認知行動療法の中に包含され ると考える研究者が多いが,見解の一致はみられていな い。そのため,研究者によって認知療法,認知行動療法 の言葉の使い方は様々であるが,認知行動療法と呼ばれ るようになり,技法の幅が広がった4)。2010 年には認 知行動療法が診療報酬化し,うつ病をはじめとした気分 障害,社交不安障害,心的外傷後ストレス障害等に対象 疾患が広がり,2016 年の改定では一定条件下で看護師 が実施する場合も診療報酬点数の算定を認めることが決 定した。 単極性のうつ病性障害や不安障害といった障害に特化 した認知行動療法の有効性が,多くの無作為化比較試験 (Randomized Controlled Trial: RCT)において実証され

ている5)

。現在では,米国精神医学会6)

の大うつ病性障 害の治療ガイドラインや,英国の国民健康サービス (National Health Service:NHS)による NICE 臨床ガイ

ドラインのうつ病性障害7) ,不安障害8) において,心理 社会的治療法として認知行動療法の適応が推奨されてい る。また,欧米諸国においては,有効性と有用性の双方 の視点を取り入れた検討の結果,認知行動療法の有用性 が確認されている9)〜 12) 一方,本邦ではうつ病に対する認知行動療法の効果研 究13)のメタ分析の結果,73% の研究では心理職が実施し, 心理職と看護師の共同が 1.3%,看護師単独での実施は ないまたは不明であり,事例研究が大半を占めていた。 このことから,本邦の精神科看護における認知行動療法

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は根拠に基づいて実践されているのか,認知行動療法実 践の効果にはいかなる根拠があるのか疑問である。1990 年代より強調され始めた根拠に基づく医療(Evidence-based Medicine: EBM)や根拠に基づく看護(Evidence-based Nursing: EBN)は,現在では広い意味で根拠に基 づく実践活動(Evidence-based Practice: EBP)と呼ばれ るようになり,保健医療現場での実践活動における標準 となっている14) そこで,精神科看護における根拠に基づいた実践活動 を今後実施するために,本研究では本邦の精神科看護に おける認知行動療法実践に関する先行研究に基づき知識 体系を整理し,精神科看護における精神疾患患者・精神 障害者あるいは身体疾患患者等(以下,対象者)に対する 認知行動療法実践の効果を明らかにする。そして,今後 の精神科看護における EBN・EBP への展望を述べる。

Ⅱ.方法

「看護研究・看護実践の質を高める 文献レビューのき ほん」14)を参考に文献検索と内容検討,文献統合を行っ た。 1. 文献検索 医学中央雑誌 WEB 版を用い,キーワードを“認知行 動療法”と“精神科看護”とし,会議録を除いて 2016 年 1 月に文献検索を行った。「検索式」(文献の数)は,①「認 知療法 /TH or 認知行動療法 /AL」(9,083 編),②「精神 看護 /TH or 精神科看護 /AL」(22,268 編),③「① and ②」 (287 編),「③ and PT= 会議録除く」(242 編)であり, 242 編より解説等(解説 46 編,解説 / 特集 34 編,解説 / 症例 1 編,座談会 1 編,座談会 / 特集 1 編,Q&A1 編, 図説 / 特集 1 編)を除いた 1999 〜 2015 年における 157 編を検討候補とした。 検討候補には,看護の職能団体が出版する雑誌(日本 精神科看護学術集会誌,日本精神科看護学会誌,日本看 護学会論文集)に掲載された文献が多く(検討候補 157 編 中 122 編),実践報告や事例(症例)報告等の対象者数や 内容が不十分なものも含まれていた。しかし,本研究の 目的は,現在までに明らかにされている認知行動療法実 践の効果を知り,今後の EBN・EBP への展望を述べる ことであるため,これらの文献も検討候補に含めた。ま た,本研究では対象者数 3 名以下の介入研究をケースス タディとした。 157 編の抄録を一読し雑誌別に整理すると,日本精神 科看護学術集会誌 43 編(ケーススタディ 32 編,スタッ フ対象 7 編,その他 4 編),日本精神科看護学会誌 63 編 (ケーススタディ 39 編,スタッフ対象 1 編,その他 23 編), 日本看護学会論文集 16 編(ケーススタディ 12 編,スタッ フ / 学生対象 3 編,その他 1 編),その他の雑誌 35 編(ケー ススタディ 16 編,スタッフ対象 8 編,総説 / 文献検討 3 編,その他 8 編)であった。各雑誌より,ケーススタディ (99 編),スタッフ / 学生を対象とした文献(19 編),総 説 / 文献検討(3 編)を除外すると 36 編であった。 36 編を読み,質的研究(8 編),横断研究(3 編),介入 プログラム作成(2 編),介入の振り返り・改善(1 編), 尺度を用いていない実践報告(4 編),回想法および回想 法的介入を実施した文献(10 編)を除外した認知行動療 法および認知行動療法的介入を実施した 8 編の介入研究 を検討対象とした。 2. 内容検討と文献統合 各文献の内容検討を行い,文献を発行年の古い順に並 べた要約表を作成し,著者名,目的・対象者,介入方法, 評価方法,結果・その他を記述した。著者名以外の各検 討項目について,文献の類似点(類似性)と相違点(差異) を見出すため文献統合を行い,結果に示した。また,文 献に用いられている検定手法や結果の統計的有意差につ いての内容検討は,数学・統計の専門家に助言を得て行っ た。

Ⅲ.結果

検討文献 8 編の著者名(発行年),目的・対象者,介入 方法,評価方法,結果・その他の要約を表 1 にまとめた。 1. 発行年と目的・対象者 内容検討の対象となった文献は 2009〜2015 年に発行 された。全 8 編が介入効果の検証を目的として介入を実 施し,対象は統合失調症が 4 編,アルコール依存症が 1 編, 炎症性腸疾患が 1 編,メタボリックシンドロームが 1 編 であった(1 編は対象者の疾患不明)。対象者の性別は, 女性のみが 2 編,男女混合が 4 編,不明が 2 編,対象者 の年齢は平均 30 歳代が 2 編,平均 40 歳代が 3 編,不明 が 3 編であった。対象者数は,4 人が 1 編,5 人が 3 編, 6 人が 2 編,9 人が 1 編,33 人が 1 編であった。 2. 介入方法 集団介入が 6 編,個人介入が 2 編,介入場所は入院環 境での介入が 5 編であった。介入に用いた技法は,全 8 編で既存の技法やプログラムまたは専門家の意見を参考 に,対象者や介入環境に合わせて修正した独自の方法で 実施していた。介入回数・頻度・時間は,5 〜 27 回・1 〜 2 週に 1 回・30 〜 120 分と文献により差があった。一方, 介入場所が不明であった文献が 3 編,介入回数・頻度・ 時間が不明であった文献が 4 編(4 編中 3 編は介入時間の み不明)であった。全 8 編中 4 編は多職種で介入を実施,

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表 1 検討文献の要約 著者名(発行年) 目的・対象者 介入方法 評価方法 結果・その他 1 金子眞理子15) (2009) 目的 「ストレスマネジメン トを目的としたリエゾ ン精神看護介入法」を 作成・試行し,評価す る。 対象者 炎症性腸疾患(潰瘍性 大腸炎・クローン病) を抱え社会生活を営む 成 人 4 名( 男 性 1 名, 女性 3 名),平均年齢 36.8 歳 技法 認知行動療法・リラクセー ション・看護面接からなる 看護介入法 実施方法 個 人 に 対 し 1 人 6 回(#1~ #6),平均 112.5 分 / 回,平 均 9.2 週間で実施した(外来 や入院病棟といった実施場 所不明)。 その他 消化器科の医師,看護領域 におけるリラクセーション 研究の専門家,認知行動療 法研究の業績を有する精神 科医師の専門領域について, 介入方法の内容妥当性の検 討を依頼し修正を行った。 最終的な介入法全体の内容 妥当性についてリエゾン精 神看護領域の専門家に意見 を求め修正した。 尺度

Profile of Mood Status (POMS), 指 尖 容 積 脈 波, 他 5 指標 方法 #1,#3,#5,#6 介 入 前 後 の POMS 平均得点等,#1, #3,#5,#6 リ ラ ク セ ー シ ョン前 2 分間,リラクセー ション後 2 分間の指尖容積 脈波平均値等を比較した。 検定手法 SPSS13.0 に て Wilcoxon の 符号順位検定を行った。 その他の評価 リラクセーション後に感じ たことについて内容分析を 行った。また,面接内容より, 客観的に評価し得る認知の 型と頻度をセッションごと に抽出した。 記述統計 POMS 平均得点等の介入前後変化,指 尖容積脈波平均値等の継時的変化につい て記述,表あり。 その他の結果 客観的認知の評価について記述,表あり。 また,リラクセーションの主観的評定につ いて内容分析を行った結果の記述あり。 統計的有意差 POMS 平均得点は,不安 - 緊張と疲労に おいて介入前と比較して介入後で有意に 低かった(Z=-2.55,p<.01)。指尖容積脈 波は,介入前 35.63,介入後 35.6注)であり, 有意差が認められた(Z=-2.21,p<.05)。 知見 認知の変容が感情状態や気分の安寧を促 し QOL の向上につながっている可能性 が示唆された。 2 深貝知音子 他16) (2009) 目的 メタボリックシンドロ ームの予防と改善をめ ざした認知行動療法プ ログラムの効果を検証 する。 対象者 メタボリックシンドロ ームの診断基準を満た す患者とその予備群の 患者 9 名(性別・年齢 不明) 技法 生活改善プログラム(米国で 開発された「患者さんのため の生活習慣改善プログラム: Solutions for Wellness」をも とに,閉鎖環境の入院患者 に合わせて内容を追加・修 正したメタボリック予防の 病棟プログラム) 実施方法 集団に対し入院病棟内で隔 週 1 回,全 6 回実施した(集 団の人数,時間不明)。 その他 看護師 4 名,医師 1 名,管 理栄養士 1 名で実施した。 尺度 体重,採血の検査結果,他 4 指標 方法 介入開始前と最終回前の各 対象者の体重,血圧,採血 検査結果等を比較した。 検定手法 なし その他の評価 対象者の言動と診療録,看 護記録,セッション後のス タッフの会議録を振り返り 検証した。 記述統計 記述なし その他の結果 介入前後で,体重は 9 名中 7 名に 0.2~ 2.1 ㎏の減少,中性脂肪は 9 名中 5 名に 6.0~138.0 ㎎ /dl の減少,総コレステロー ルは 9 名中 7 名に 1.0 ~ 52.0 ㎎ /dl の減 少がみられた。介入中の対象者の反応に ついて記述あり。 その他 セルフエフィカシーの向上が結果の改善 につながったと記述しているが,介入に より対象者のセルフエフィカシーが向上 したかどうかの根拠がない。 3 高橋節子 他17) (2010) 目的 アルコール依存症患者の 認知の修正に対する認 知行動療法を取り入れた 面接法の効果を明らか にする。 対象者 初回入院のアルコール 依存症患者 5 名(性別・ 年齢不明) 技法 6 枚で構成された認知行動 療法の用紙(久里浜認知行動 療法の用紙を参考に一部修 正したもの)を用いた面接 実施方法 個人に対し入院病棟内で実 施した(回数・頻度・時間不 明)。 尺度 Obsessive Compulsive Drinking Scale(OCDS) 方法 各対象者の介入前後の得点 を評価した。 検定手法 なし 記述統計 記述なし その他の結果 各対象者の介入前後の OCDS 得点と介 入各回の経過について記述した表あり。 その他 介入の結果,患者の言動,認知に変化が 見られた,と記述があるが結果・考察よ り明確ではない。

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4 小橋川ひとみ 他18) (2010) 目的 多職種で取り組む認知 行動療法的調理活動を 導入した結果を報告す る。 対象者 症状の安定した意思疎 通可能な統合失調症の 療養者 6 名(男性 3 名, 女性 3 名),平均年齢 43 歳 技法 「気づく」「考える」「行動す る」を重要視した認知行動療 法的調理活動 実施方法 集団に対し入院病棟内で週 1 クール全 3 回(1 クールは 1 回のミーティングと 2 回 の調理実習から成る,時間 不明),全 9 クール実施した。 その他 医師・精神保健福祉士・臨床 心理士・作業療法士・看護師 1 名ずつ計 5 名が携わった。 尺度 精神障害者社会生活評価尺 度(LASMI) 方法 介入前後の LASMI 平均得 点を比較した。 検定手法 記述なし その他 院内 LAN に設けた調理グ ループ活動専用の観察記録 から変化を抽出した。 記述統計 LASMI 平均得点の介入前後変化につい て記述,表あり。 統計的有意差 LASMI の「対人関係」平均得点は介入前 (2.2 点)と比較して介入後(0.6 点)で有意 に低く(p<.0001注)),「労働または課題の 遂行」平均得点は介入前(2.8 点)と比較し て介入後(0.9 点)で有意に低く(p<.001), 「自己認識」平均得点は介入前(2.7 点)と 比較して介入後(1.4 点)で有意に低かっ た(p<.001)。 知見 本介入にて対象者に自問自答を促した結 果,依存傾向が減少し,主体的な行動へ のモチベーションの維持につながり, LASMI の評価に反映した。 5 井上隆幸 他19) (2010) 目的 攻撃的な統合失調症患 者に対してコンピュー ターゲームを利用した グループアプローチを 行い,リラクゼーショ ンがもたらす効果を明 らかにする。 対象者 幻覚妄想や外的刺激等 により攻撃的な女性統 合失調症患者 5 名,平 均年齢 44.2 歳 技法 リラクゼーション(身体を動 かすスポーツゲーム) 実施方法 集団に対し入院病棟内で週 1 回 30 ~ 60 分,全 24 回実 施した。 その他 実施手順の記述あり。 尺度 日本版 Buss-Perry 攻撃性尺 度(BAQ),尾関のコーピン グ 評価方法 介入前後の各対象者の得点 を比較した。 検定手法 なし 記述統計 記述なし その他の結果 各対象者の背景,介入前・中・後の様子 について記述した表あり。各尺度得点が 増した人数について記述あり。各対象者 の BAQ 得点変化と成人女子 330 名の平 均得点との比較について表あり。各対象 者のコーピング尺度得点変化と大学生 610 名の平均得点との比較について表あ り。 その他 コンピューターゲームを利用した介入に リラクゼーション効果があったのか明確 でない。 6 岩熊栄一 他20) (2012) 目的 生活習慣改善プログラ ムとしてのライフスタ イルミーティング(LSM) の効果を明らかにする。 対象者 LSM に 参 加 終 了 し た 統合失調症 18 名とそ の他 15 名の患者延べ 33 名(男性 14 名,女性 19 名),平均年齢 43.2 歳 技法 イーライリリー社のソリュー ションフォーウィルネスを 参考に,独自で作成した認 知行動療法的生活習慣改善 プログラム 実施方法 集団で週 1 回 60 分,全 5 セッ ション実施した(集団の人数 不明,外来や入院病棟といっ た実施場所不明)。 その他 LSM の内容(担当者の職種) は,セッション 1 が健康的な 体重(精神科医),セッション 2 が食生活チェック(臨床心 理士),セッション 3 が食生 活の改善(管理栄養士),セッ ション 4 が健康的なライフス タイル(作業療法士),セッ ション 5 がまとめと振り返 り(看護師)であった。 尺度 体重,BMI(Body Mass Index),自己効力感(SE), 他 3 指標 方法 各回に体重,BMI 等の平均 値を,終了 1 か月後に再度 体重の平均値を,介入前後 に SE 等の平均得点を比較 した。 検定手法 SPSS.11.0 にて t 検定を行っ た。 記述統計 BMI 等について記述,介入前後変化の 表あり。介入前後と 1 か月後の体重変化, 介入前後の SE 等の平均得点変化につい て表あり。 統計的有意差 BMI は,介入前と比較して介入後に有意 に低かった(t(32)=2.908,p<.05)。体重は 介入前と比較して介入後で有意に低かっ た(t(32)=2.835,p<.05)。SE は,介入前 の 平 均 得 点 22.14,介 入 後 の 平 均 得 点 23.18 で,介入前と比較して介入後の方が 有意に高かった(t(32)=-3.109,p<.05)。 知見 精神疾患患者に対する認知行動療法的生 活習慣改善プログラムには,体重減少と SE 改善を促す効果が示唆された。

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看護職単独での介入と明記していたものは 1 編であった。 3. 評価方法

尺度は,Profile of Mood States 日本版(POMS)23)が 2 編で使用され,その他は目的に合わせて異なる尺度が用 いられていた。複数の尺度を用いた文献が 5 編(7 つが 1 編,6 つが 2 編,4 つが 1 編,2 つが 1 編)あったが,メ インアウトカムを明記している文献はなかった。使用し た尺度が特定できない文献が 1 編あった。8 編中 5 編が 平均得点または中央値を比較し,そのうち 4 編が検定手 法(Wilcoxon の符号順位検定が 2 編,t 検定が 1 編,不 明が 1 編)を用いていた。「介入群と非介入群で統計学的 有意差を測定する」と記述はあるが実際に群分けや検定 を実施していない文献が 1 編あった。 量的研究と質的研究を用いた方法論的なトライアン ギュレーションを用いた文献が 1 編,量的分析の他に介 入内容や記録等を質的に分析した文献が 4 編あった。 4. 結果・その他 尺度の平均得点または中央値を比較した 5 編で記述統 計を記述や図表にて示していた。各対象者の介入前後得 点を比較した 3 編は,点数の変化を記述や図表にて示し 7 國方弘子21) (2013) 目的 当事者の自尊心回復の ために設計したプログ ラムが効果的であるか を評価する。 対象者 地域で生活を送りなが ら,研究者らと発足さ せた研究会に参加して いる当事者(疾患不明) 6 名(男性 2 名,女性 4 名),平均年齢 38.3 歳 技法 認知行動看護療法(心理教 育,認知再構成法,否定的 な自己像の再構成,行動療 法) 実施方法 集団で隔週 1 回 120 分,全 12 回実施した(実施場所不 明)。 その他 進行は,看護職である研究 者が行い,他の看護職 1 名 はファシリテーターを担当 した。 尺度 Rosenberg Self-Esteem S c a l e( R S E S ), P O M S , Subjective Well-Being Invention 日 本 語 版(WHO SUBI),Brief Psychiatric Rating Scale 日 本 語 版 (BPRS) 評価方法 各変数の介入前後の中央値 を比較した。 検定手法 対応のある Wilcoxon signed-ranks test その他の評価 研究デザインは,量的研究(1 群事前 - 事後テストデザイ ン)と質的研究を用いた方法 論的なトライアンギュレー ションを用いた。 記述統計 各尺度の中央値について記述,表あり。 実施前後の RSES,「精神的なコントロー ル感」(WHO SUBI の下位尺度),BPRS の中央値の介入前後変化について図あり。 その他の結果 内容分析により,フォーカス・グループ インタビューから得たプログラム参加に よる体験の記述あり。 統計的有意差 RSES,POMS は,介入前後で有意差が 認められなかった。「精神的なコントロー ル感」の中央値は介入前と比較して介入 後で有意に高かった(p<.05)。BPRS の 中央値は介入前と比較して介入後で有意 に低かった(p<.05)。 知見 本プログラムは,当事者の心の疲労すな わち陰性感情を低下させ,「精神的なコ ントロール感」を増加させ,「精神症状」 を改善する可能性をもつことが示唆され た。質的研究は,量的研究で得られた内 容を説明できる結果を得たとともに,量 的研究で設定しなかったカテゴリー(概 念)を生成することができた。 8 渡久地猛22) (2015) 目的 「綺麗な自分を意識し 個 々 の 課 題 に 取 り 組 む」ことをねらいとし た活動である「ビュー ティーコンパス」の結 果を報告する。 対象者 慢性期の女性統合失調 症患者 5 名(年齢不明) 技法 「綺麗な自分を意識し個々の 課題に取り組む」ことを狙い とした活動「ビューティーコ ンパス」 実施方法 集団に対し入院病棟内で週 1 クール(1 クールは全 2 回, 時間不明),全 12 クール実 施した。 その他 司会進行は作業療法士が行 い,看護職員はサポート役 として個別介入ができるよ うにかかわった。 尺度 精神科リハビリテーション 行動評価尺度(Rehab) 評価方法 介入前後の平均得点を比較 した。 検定手法 なし その他 看護記録およびミーティン グ記録よりグループ活動前 後の発言・行動の変化を抽 出した。 記述統計 介入前後の Rehab 平均得点比較につい て図あり。 その他の結果 対象者 1 名の事例紹介あり。 その他 研究の目的と使用尺度の関係が明確でな い。 注)数字は文献のまま記載

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ていた。検定手法を用いた 4 編で統計的有意差の記述が あった。 検定を用いて比較した 4 編では,対象者 4 名や 6 名で 検定を行い統計的有意差が認められた文献,同じ対象者 から複数回取ったデータをどのように扱い検定を行った か明記されていない文献,Wilcoxon の符号順位検定を 行っているが中央値ではなく平均得点を比較したと記述 している文献,検定手法を明記せず結果に統計的有意差 を記述している文献があった。 全 8 編で結果や考察より得られた知見が記述されてい たが,記述統計が記載されていないこと,データの扱い や検定が明記されていないことより考察に明らかな根拠 がない文献,研究目的が達成できたのか明記されていな い文献,研究目的を達成するために実施した介入につい て評価がない文献,強みや限界が記述されていない文献 があった。

Ⅳ.考察

2009 年より散見された精神科看護における認知行動 療 法 実 践 の 現 状 と 効 果 を 明 ら か に す る た め の 方 策, EBN・EBP への展望について考察する。 1. 認知行動療法実践の現状 1999 〜 2015 年で最終的に検討対象の文献となったの は 8 編であり,対象者や技法,介入の回数・頻度・時間 は多岐にわたり,各介入の効果検証は十分に行われてい なかった。また,既存の方法や専門家の意見を参考に介 入を行っていたが,診療報酬点数算定の認められている マニュアルのある認知行動療法を実施した研究はなく, エビデンスの構築された効果的な介入が実施されている か不明であった。さらに,看護職単独での介入を実施し ている研究は 1 編のみであったことからも,精神科看護 で行われている認知行動療法実践の効果検証は十分に行 われていないといってよいだろう。 看護学領域での認知行動療法の評判は良いが,実施に 手間を要し失敗や苦労があるとの理由から敬遠されてい る24)。しかし,研究者は目的をもって介入を実施して いること,多くのケーススタディが行われていたこと, 解説等の文献が多いことから,精神科看護実践において 認知行動療法が必要とされていることが分かる。国内の 先行研究において,認知行動療法研究にて有効性が蓄積 されつつある中,その普及に向けて日常臨床現場におけ る適応を検討する必要がある25) 全 8 編中 6 編が方法として使用していた集団認知行動 療法は,海外や他職種が実施した場合に,日常臨床場面 における効果が示され9) 12),費用対効果の点からも,そ の有用性が指摘されている26)。集団認知行動療法の効 果については,その実践によるグループ全体の効果が明 らかであり,個別で認知行動療法を行う場合とは異なる メリットがある27)。さらに,集団認知行動療法は個人 に対して実施する認知行動療法と同等かそれ以上の効果 が確認されており,集団認知行動療法単独で,あるいは 薬物療法との併用でも症状改善に有用であると報告され ている28) 以上より,精神科看護における認知行動療法実践は個 人・集団問わず,患者のニーズや日常臨床現場の環境に 合わせた適応を検討し,効果検証する必要がある。 2. 認知行動療法実践の効果を明らかにするための方策 エビデンスが強い(疫学的に因果関係を証明するため のレベルの強さ)順に,1. システマティック・レビュー とメタアナリシス,2. ランダム化比較試験,3. コホート 研究,症例対照研究,4. サーベイ(横断研究等),5. ケー ス・レポート(の蓄積),6. 質的研究,7. 専門家の意見,8. 逸 話的な意見,である14) 文献統合の結果より,現在の精神科看護における認知 行動療法実践はケース・レポート(の蓄積)を行っている 段階であるといえる。コホート研究や症例対照研究の実 施が皆無である現状ではランダム化比較試験を計画し, 実施することは困難であろう。今後,認知行動療法実践 の効果を明らかにする上で大切なことは,研究者がエビ デンスの構築を意識しながら研究することである。 また,内容検討の結果から,多数の文献で対象者の詳 細や介入・評価方法で知りたい対象者の疾患・性別・年 齢や介入の回数・頻度・時間等の情報が 1 項目以上不明 であった。研究方法に不明な項目があると介入の再現が できないため,必ず記述しなければならない。誰(どの ような職種)が誰(どのような対象)に,何(どのような介 入)を,いつ,どこで,何回(頻度・時間)行ったのか詳 細に記述することが必要である。研究で行ったことを丁 寧に詳細に記述することで,ケース・レポートや対象者 が少ないコホート研究,症例対照研究でもメタアナリシ スに用いることができるデータの提供につながる。文献 を読み整理して研究としてまとめること,実態を調査し 報告すること,量的研究による効果検証につながる質的 研究を行うことが重要である。 3. EBN・EBP への展望 検討文献 8 編には,介入内容や対象者への接し方につ いて詳細な記述をしているものもあり,計画的に認知行 動療法実践を行っていることがわかった。一方で,研究 目的の不明確さ,研究計画の不十分さ,論文の書き方の 不十分さ等,実践を研究として十分に評価し,伝えるこ とができていない点があった。 量的研究では,研究デザインの決定や研究計画の作成

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前に,問題状況の明確化(研究設問を明らかにすること), 関連文献のレビュー,臨床のフィールドワークの着手, 枠組みの明確化と概念的定義や仮設の明確化をする必要 がある29)。したがって,看護研究者は,実践をやみく もに研究につなげるのではなく,研究の視点をもって認 知行動療法実践を行い,看護職同士や他職種と情報交換 をして問題状況を明確にすること,また日頃から研究論 文を読み現状を把握することが必要なのではないだろう か。そして,研究を計画・実施・評価することで,今以 上に次の実践に活かす事ができる研究となり,公表され た研究論文は新たな知見として蓄積されていく。このよ うな循環を作ることで EBN・EBP が実現できると考え る。

Ⅴ.結論

1. 文献数が 8 編であったこと,効果的な介入が実施 されているか不明であったこと,看護職単独での 介入を実施している研究が 1 編であったことから, 精神科看護における認知行動療法実践の効果検証 は十分に行われていないことが明らかとなった。 2. 精神科看護における認知行動療法実践は,個別・集 団を問わず,患者のニーズや日常臨床現場の環境 に合わせて検討し,エビデンスの構築を意識した 研究が看護研究者に求められる。 3. 精神科看護における認知行動療法実践の EBN・ EBP を構築するために,研究の視点をもって認知 行動療法実践を行い,現状把握や問題状況を明確 化した後に計画・実施・評価した研究論文を公表し, その知見を次の実践に活かすという循環を作る必 要がある。 文献 1) 岡田佳詠(2011)進め方と方法がはっきりわかる 看護のための 認知行動療法.医学書院,東京. 2) 大野裕(2010)認知療法・認知行動療 治療者マニュアルガイド. 星和書店,東京. 3) 岡田佳詠(2002)看護師の認知療法に関する英語圏の研究の動向 ─有効性に関する研究を中心に─.日本精神保健看護学会誌, 11(1):1-9. 4) 伊藤絵美,丹野義彦(2008)認知療法・認知行動療法事例検討ワー クショップ(1).星和書店,東京.

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6) American Psychiatric Association(2009)Practice Guideline for the Treatment of Patients with Major Depressive Disorder (2nd),Retrieved May 1, 2016, http://www.psychiatryonline.

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表 1 検討文献の要約 著者名(発行年) 目的・対象者 介入方法 評価方法 結果・その他 1 金子眞理子 15)(2009)目的 「ストレスマネジメントを目的としたリエゾン精神看護介入法」を作成・試行し,評価する。対象者炎症性腸疾患(潰瘍性 大腸炎・クローン病) を抱え社会生活を営む 成 人 4 名( 男 性 1 名, 女性 3 名),平均年齢 36.8 歳 技法 認知行動療法・リラクセーション・看護面接からなる看護介入法実施方法個 人 に 対 し 1 人 6 回(#1~#6),平均 112.5 分 / 回

参照

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