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シオワッカ石灰華半ドームの洞穴壁面のネスケホン石、ダイピング石、ノルスーパイト、ソーダ石、重炭酸ソーダ石、モノハイドロカルサイト

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Academic year: 2021

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(1)Title. シオワッカ石灰華半ドームの洞穴壁面のネスケホン石、ダイピング石、 ノルスーパイト、ソーダ石、重炭酸ソーダ石、モノハイドロカルサイト. Author(s). 伊藤, 俊彦. Citation. 釧路論集 : 北海道教育大学釧路校研究紀要, 第40号: 201-207. Issue Date. 2008-12. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/1068. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 釧路論集一北海道教育大学釧路校研究紀要一第40号(平成20年). Kushiro Ronshu,JournalofHokkaido University ofEducation at Kushiro−No.40(2008):201−207. シオワッカ石灰華半ドームの洞穴壁面のネスケホン石、 ダイビング石、ノルスーパイト、ソーダ石、重炭酸ソー. ダ石、. モノハイドロカルサイト 伊 藤 俊 彦. 北海道教育大学釧路校地学教室. Nesquehonite,dypingite,nOrthupite,trOna,natrOnand. monohydrocalciteprecipitatedfromShiowakkacoldsaline SPrlngWaterWhichpercolatedthoroughcalcareoussinter Toshihiko ITO DepartmentofEarthScience8,HokkaidoUmiver8ityofEd11Cation,KushiroCamp118. 要 旨. シオワッカ石灰華半ドームは、その特異な景観からも足寄町の天然記念物に指定されている。石灰華は含 炭酸食塩冷泉からの沈積物でであり、その冷泉の水質は高い濃度の炭酸(HCO8)と Na、Clが特徴である。 各地の石灰華を造っている炭酸カルシウム鉱物は、殆ど全てが方解石やアラレ石である。シオワッカでは方. 解石のほか、イカアイト、モノハイドロカルサイト、ファテライトという世界的にも希産の炭酸カルシウム 鉱物が、同一の場所で生じており、炭酸塩の鉱物学的には貴重な場所(環境)である。石灰とは炭酸カルシ. ウムと同義語であり、上記の希産鉱物は化学組成から、その産出は考え得る鉱物群であった。しかし、この 度新たに石灰華ドーム中腹の洞穴壁に見出されたNa,Mg含水炭酸塩鉱物の産出は、冷泉の水質からは当 初予測することが出来なかった。 ここではそれら鉱物の産状をはじめ、そのS玉:M像、Ⅹ線回折線像を示し説明する。これらの鉱物は内. 陸の乾燥地帯にある塩湖などでは多量に見られて、世界規模においては一般的な鉱物群である。しかし、シ オワッカは山間部にあり、それら鉱物は冷泉水からの生成物である。従って殆どが、我が国における希産鉱 物あるいは初産の鉱物に当たる。その成因には石灰華に浸透した冷泉水が洞穴壁面に染み出るまでの炭酸カ ルシウム鉱物の晶出によるCaの消耗と、その後の蒸発等により溶出水の濃縮が関わっている。 シオワッカ石灰華ドーム全体における含水炭酸塩鉱物の生成の道筋は、その主成分の陽イオンに注目する. とCa→Mg→Naの順であることが相互の共生関係、室内実験等より明らかになった。この順序は、大陸 内部の塩湖における蒸発鉱物に見られる晶出順序と同. じである。. Dypingite,Northupite,Trona,Natron)が、この度石灰華. は じ め に. ドームの中腹に開いた洞穴の壁に確認された。それらと共 足寄町シワッカの石灰華ドームは、河岸段丘頂部で湧出. に既に報告済みのMonohydrocalcite(M.H.C)の共存も認. した合食塩炭酸塩泉(冷泉水)が螺湾川へ流下する途中で沈. められた。M.H.C.の存在はこれまで夏の緑藻との密接な. 積した方解石主体の石灰華からなる(写真−1)。. 関係において知られ、成因上もその関連に関心が持たれて. この冷泉水からは世界で二例目となった陸域産のイカア. いる(伊藤、1993)。今回の洞穴壁でのM.H.C.生成は夏. イトを始めとして日本で初産となる3種類の炭酸カルシウ. とは異なる環境で産出であり、その成因には別の要素が考. ム鉱物が知られている(伊藤、1996)。. えられる。. Ikaiteは冬季の気温零度付近の低温条件下で生成して. ここで取り上げた含水Mg−,Na−炭酸塩鉱物は、寒冷. ノ いるものであるが、冬から早春への凍結・渇水の時期に. 期の乾燥した気象条件の下で石灰華を浸み通った泉水から. Mg、Naを主成分とする含水炭酸塩鉱物(Nesquehonite,. の生成物と考えられる。これらの炭酸塩鉱物は、ソルトレ. −201.

(3) 伊 藤. 俊 彦. ークなど内陸の乾燥地域の塩湖では一般的な鉱物である。. 鉱物相互はルーズな集合で、緑藻中に産する各鉱物は顕. 尚、シオワッカ冷泉のSO。に乏しい水質を反映して、. 微鏡下で筆先で分離することが可能である。この産状は各. 塩湖では炭酸塩鉱物と共に普通に見られる含水Mg、Na. 鉱物が各自が独立して成長したことを示唆しており、連続. 硫酸塩鉱物の生成は認められない。. した晶出順序を示唆する層状の組織は認められない。. 今回の成果により、シオワッカ石灰華ドームでは、雪氷 に覆われる低温の環境から大陸内域の乾燥地帯までの、地. 表−1に、シオワッカ石灰華半ドームの洞穴壁に見られ. 理的にも全く異なる場所で見られる鉱物が、季節(気候). る鉱物を示した。. に応じて年間を通し生成していることが明らかになった。 それらの産状とSEM像観察、Ⅹ繰回折結果に基づいて、 鉱物学的特徴と成因関係について述べる。. 2.鉱物各論 含水Mg炭酸塩鉱物:. Nesquehonite・Dypingiteは、我が国では蛇紋岩等のマ. 1.産 状. グネシウムに富む岩石の風化生成物として広く産すること シオワッカ石灰華半ドームは、河岸段丘上部から含炭酸. が知られている(例えば、吉川ほか、1996)。シオワッカ. 食塩臭が流れ落ちる途中で石灰華を沈積させたもので、川. における両Mg鉱物は、冷泉水から直接晶出したものであ. から石灰華頂部までの高さ約4m、横幅8mで、構成鉱物. り、成因上では明らかに異なる。. は殆ど方解石からなっている。石灰華年間1∼2mmで成. 両者の関係では、Nesquehoniteは殆どの場合存在量が. 炭酸塩鉱物のM.H.C.が産する。晩秋から冬の寒冷期には. 少量であっても Dypingiteを伴うが、逆の関係、即ち Dypingiteの方が卓越する試料においてはNesquehonite. ikaite、早春期には急速な気温の上昇によるikaiteの分解. の存在は確認されなかった。. 長する。夏はCalcite以外にしばしば緑藻に伴って含水Ca. に伴いvateriteが生成する(Ito,etal.,1999)。 今回知られた含水Mg−,Na・炭酸塩鉱物は石灰華半ドー. ネスケホン石Nesquehonite MgCO3・3H20. ムの中腹、南側に面した洞穴の壁面にカビや吹き出物状態 で出来ている。洞穴の奥行きは40cmほどと浅い事もあり、 場所毎の産状における大きな相違は認められない。近年湧. Nesquehoniteは今回扱った鉱物の中で唯一肉眼で識別. 水量の減少が進み、冷泉水が滝のように流れ落ちる状態で. 出来る程度の大きな結晶で産出する。野外でもそれらはガ. はなくなったことと相まって、春先は特に洞穴の内部が良. ラス光沢を示し、放射状集合体をなして産する。実体顕微. く観察出来る(写真1,b∼C)。. 鏡では長軸方向に最大で数mmの柱状結晶が観察された。. SEM像も締麗な柱状結晶が見られる(写真2)。近接し. 洞穴の壁や天井は、流下する冷泉水が石灰華の空隙通っ て染み出る場所であり、蒸発作用が卓越する場所である。. ている結晶集合相互の問にもサイズに大きな違いが見られ. そこでは数mサイズの白色小塊や放射状集合が、洞穴の壁. るのは、異なるステージで晶出を繰り返したことを示すも. 面に散点状i反り返った紙片状、小突起状、放射状集合). のだろう。Nesquehoniteは複数の鉱物、Calcite、M且C.、. に見られる。. Northupite、I)ypingiteの中の何れかを伴って、洞穴壁面. それら鉱物群の大半が少量の緑藻を伴っており、緑藻内. で広範囲に産する。. 部にもそれらの鉱物が含まれる。肉眼で単一鉱物集合に見 える場合でも、殆どが複数の鉱物が密雑していることはⅩ 繰回折分析から知られる。 Ca. →. 方解石、ファテライト CaCO3. (表−1). Na■Mg 一→. Mg 一→ ダイビング石 Mg5(CO3)4(OH)2・8H20. Na. ノルスーパイト. ナトロン. Na3Mg(CO3)2Cl. NaCO3・10H20. //JJ・5H20 モノハイドロカルサイト CaCO3・H20 イカアイト CaCO3・6H20. ネスケホナイト. トロナ. MgCO3・3H20. Na,(HCO3)(CO3)・2H,0 or(卜Ia。H(CO3)2・2H20. ハイドロマグネサイト Mg,(CO3).(OH)2・4H20. −202−.

(4) シオワッカ石灰華半ドームの洞穴壁面のネスケホン石、ダイビング石、. ノルスーパイト、ソーダ石、重炭酸ソーダ石、モノハイドロカルサイト ダイビング石 Dypingite Mg5(CO3)4(OH)2・8H20 ナトロンNatron Na2CO。・10日20 ソーダ石 極めて小さく肉眼で存在を確認することは出来ない。 SEM観察ではこれまでの論文中に示されたと同じtipical. ナトロンもトロナ同様にソーダ湖の産物として知られ、. な花弁状集合として認められる(写真3,4)。Dypingite. 水に易溶であり、風解してサーモナトライトを生じる。自. を多く含む試料は空隙に富んでおり、力に対して脆い特徴. 然界では塩湖などの溶液中で産する鉱物(Ford,1969)で. がある。従って洞穴入り口の床面を作るような緻密で硬い. ある。今回、肉眼で確認できたナトロンは、洞穴奥の天井. 石灰華中には見られない。Ⅹ線回折線像は、低角度側では JCPDS(29・0857)データ・Mg5(CO,).(OH)2・8H20に一致し、. たゼリー状皮殻を成していた。その存在を肉眼で観察出来. 高角度側ではJCPDS(23−1218)データ・Mg5(CO3)一(OH)2・5H2. た試料は1例のみである。試料の特徴として、ナトロン、. に見られる水を含んだ緑藻の間に数mmの半透明の溶け. トロナを含む試料に触れた後に水を使用した時、指先の感. 0と良い一致が見られた。これに関しては、RAD実験の進. 触が苛性ソーダ一に触れた時のようにヌルヌルした特異な. 行に伴う脱水の影響によると考えられる。. 感じがする。この事実はそれら含水Na鉱物が持つ特徴を 示すものだろう。シオワッカで知られたナトロンの産出が トロナに比べて極めて少ないという両鉱物の量比の関係. ハイドロマグネサイト HydromagnesiteMg5(CO3)4(OH)2 水苦土石. は、塩湖で知られる両鉱物の産状とも合致する(Engster. ・4H20. &Hardie,1978)。 ナトロンを含む試料のⅩ繰回折線像では、半価幅が狭く. SEM像からhydromagnesiteの可能性が考えられるも のを見出しているので、参考までに(写真5)示した。し. 針状で、その後は消滅してしまうという不安定な回折線像. かし、Ⅹ線粉末回折線像からはdypingiteの回折線と近接. が幾つか見られ、共存する鉱物が安定な鉱物ばかりでない. するものが多く、判断が付きかねることと、9.2Åの反射. ことが示唆された。気温の上昇した2ケ月後に採取した試. が確認出来ていないことから、変質しているか、異なる物. 料では、ナトロンのピークも不安定な回折線像も共に認め. 質の可能性も多少考えられる。. られなかった。 また、その回折線像(図−2)はJCPDS(15−0800)デー タとは一部合致しない。しかしながら、鉱物そのものが室 内の環境では不安定であり、時間と共に脱水が進行するこ. 含水Na炭酸塩鉱物:. とを考慮し、最終的に同試料からサーモナトライトが得ら. 先の含水Mg炭酸塩鉱物に比べ、日本での産出が知られ. れたことで、ナトロンと確定した。サーモナトライトはナ トロンを加熱することで得られることから命名された鉱物. ていない鉱物である。. である。 トロナTrona Na3(HCO3)(CO3)・2H20 重炭酸ソーダ石 ノルスーパイトNorthupite Na3Mg(CO3)2Cl トロナは塩湖の沈殿物として棚砂Borax(Na2B。05(OH)2 洞穴の入り口の足下に見られる白色モルタル様を示す乾. ・8H20)、テナルダイトThenardite(Na2SO.),石灰ボウ硝 Glauberite(CaSO。・Na2SO.)などに伴う鉱物として世界. いた試料中に最も多く含まれている。他鉱物との関係では、. 的には広く知られている鉱物である。また乾燥地域の吹出. NorthupiteはDypingiteよりNesquehoniteとの共存がそ. 物として普通に産する鉱物でもある。 シオワッカでは5月初旬雪解け後の早い時期にのみ洞穴. の頻度において勝る。. 産試料にその存在が認められ、その後の成長は不明である。. の回折強度は時間と共に増加し続ける。従って、本鉱物は. 湿った試料のⅩ線粉末回折実験の途中でもNorth11pite. この産状からはシオワッカの冬に引き続く春先の乾燥気候. 野外で生成後、室内の乾燥下でも生長を続けていることを. が、トロナをもたらした起源水の濃縮に関与してることが. 示している。また岩塩との共存が多く見られことから、同. 示唆される。. 鉱物が蒸発乾燥末期の高塩濃度の冷泉水において生成する ことが示唆される。SE:M像からは明瞭な八面体の自形単. 本鉱物は複数の他の鉱物と共存して見られ量的にも少な. のシオワッカ冷泉水を乾圃した結果、トロナの存在を、岩. 結晶(写真6,7)が確認された。室内の冷泉からも NorthupiteはNesquehoniteに遅れて生成することが認 められる。野外では、その大半が Nesq11ebonite−. 塩、Nortllupiteと共にⅩ線回折により確認出来た(図−1)。. Noz・thupiteのみの共存関係で認められる。夏にも両者の. いことから、Ⅹ線粉末回折法による同定の結果には不安が あった。しかし、室内実験で方解石CaCO3が生成した後. −203−.

(5) 伊 藤 俊 彦. 方がDypingiteに勝る。蒸発生成物の中でDypingite主体. 共存が洞穴入り口で確認されている。NorthllPiteもまた 塩湖でアラレ石、方解石、岩塩、トロナと共産する(Engster. の集合体の産出は極めて希れであり、その場合には. &Hardie,1978)。. Nesquehoniteとの共存は認められない。これらの産状か らは、Dypingiteの生成はNesquehoniteの生成に引き続. モノハイドロカルサイトMonohydrocalcite (M.H.C). き起こると考えられ、最初にI)ypingiteが生成した場合に. CaCO3・H20. はNesquehoniteの生成はないことを示す。即ちNesqueho nite(MgCO3・3H20)→Dypingite(Mgs(CO3)。(OH),・8H20)の晶. M.H.C.は結晶面が湾曲した両錐形の特徴ある自形結晶. 出順序が鉱物組合せから導かれる。. から、顕微鏡下で容易に判別できる。シオワッカにおける. 両鉱物の晶出順序がwetな状態からdryな状態への変化. M.H.C.の産出それ自体は報告済みであり、新たに見出さ. れた鉱物ではない(Ito,1993)。夏のM.H.C.の産状は. の過程における生成物である(稲葉他、1983)とする考. Calciteと共存して見られ、Calciteの表面上を覆ったり水. えに、両鉱物組成における水分子の比率の違い(多少)も整. 中で緑藻を核にして成長した単結晶が数珠状を呈して認め. 合的である。. られる。また、気温の低下した初冬にも、M.H.C.は低温 で安定なikaite と共存して産する。南極ドライバレーの. また、Nesqllehoniteと Northupiteは共に産するが、 NesquehoniteはNatronと共存しない。他方、Natronと. テイラー谷の海岸近くでは、M.H.C.がトロナ、サーモナ. Northupite との共存はしばしば認められ、この関係は塩. トライトと共に析出物として認められている(西山、. 湖では一般的ものである【Natron(NaCO3rlOH20)−Northupi. 1977)。. te(Na9Mg(CO3)2Cl)]。. 係で産することが多い。. Nesquehonite と Northupiteの生成は同時ではなく、 Nesquehoniteは溶液中で晶出成長し、Northupiteはほと. CaC12・MgC12−NaHCOJ−H20溶㈲こよる合成実験(Ohde& Kitano,1978)では、M.H.C.はNesquehoniteと同じ組成. 放置の観察から確認された[Nesquehonite→Northupite]。. 壁面に見られるM.H.C.は、Nesuquehoniteとの共生関. んど乾燥した状態において姿を現すことが、冷泉水の室内. 室内実験ではIkaiteが生じた後の冷泉水からは、 Nesquehonite、岩塩の結晶が生成し、引き続く蒸発乾固. の溶液から合成される。Marsclluner(1969)も同じように M.H.C.をAragonaite生成の中間生成物として論じてい る。更に、低温がM.H.C.の生成に関わる点についても言. により Northupiteが岩塩と共に晶出する。湿った試料で. 及している。. は乾燥につれNortlmpiteの回折強度が増大することも. シオワッカ洞穴壁で産したNesquehoniteとM.H.C.の. Northupiteが乾燥鉱物であること示すものだろう。更に. 関係も、それらと同様に共通の溶液から生成した物と考え. 室内での冷泉水の乾固実験では、岩塩が最終の産物ではな. ることが出来る。即ち、洞穴壁面でのM.H.C.の生成には、. く、濃縮が進むにつれて複数回晶出を繰り返していること が顕微鏡下で確認された。. Nesquehoniteとの共存によって示唆される「Mgに富む 溶液」が関係していると考えられる。 これは夏季に生成しているM−H.C.の鉱物共生関係、生 成環境(Ito、1993)とは異なるものであり、更なる調査検 討の課題である。. ま と め シオワッカ石灰華半ドームはその名が示すように、冷泉 水から沈積している炭酸カルシウム鉱物(主に方解石)か. 岩塩 Halite. NaCl. らなる。しかし、ここでは方解石以外に各々異なる環境で の生成物として知られていた複数のカルシウム炭酸塩鉱物. 壁面からは多くの場合Northupiteと共に産する。しか. が、季節(気温・水温)に応じて生じている。. し岩塩は易溶なのでNorthupiteに何時も伴うとは限らな. 今回、新たに冷泉の流れの中ではなく、石灰華マウンド. い。室内で単純に冷泉を乾固することでもそれらは得られ. の洞穴内部の壁に蒸発鉱物として、多種類のCa以外の. る。冷泉水からの最終的な生成物としては、岩塩LCalcite −Northupiteq(Trona)の組合せで示される。. Mg、Na炭酸塩鉱物が生成しているのを確認した。. 流れの中ではその生成が認められていないMg、Na炭 酸塩鉱物がドーム壁面において晶出するには、シオワッカ. 3.鉱物共生と冷泉水の室内実験から導かれる晶出. 冷泉水の水質を考えた場合、先行したCa炭酸塩鉱物の生 成がMg濃度の相対的な上昇をもたらしたことに関係する. 順序. のは明らかである。 石灰華ドーム空洞の壁面への冷泉水の供給は、空隙に富. シオワッカでは殆どの場合Nesquehoniteには少量の Dypingiteが伴う。両者の産出頻度ではNesquehoniteの. む石灰華へドームを流下途中の冷泉水が浸透し、壁面から. −204−.

(6) シオワッカ石灰華半ドームの洞穴壁面のネスケホン石、ダイビング石、 ノルスーパイト、ソーダ石、重炭酸ソーダ石、モノハイドロカルサイト Hardie,L.A.&Eungster,H.P.(1970)TlleeVO)ution of closed−basin brines.Mineralogy.Soc.Amリ. 染み出すプロセスで行われる。途中Ca炭酸塩鉱物(Ikaite など)の生成により Ca溝度は減少する。また、特に冬∼. Spec.Pubリ3:273−290.. 春季は水量が少なく、乾燥期でもある。その他にも、ゆっ. 稲葉幸郎・皆川鉄雄・野戸繁利(1985)三重県白木産. くりとした蒸発に適した洞穴の形状と南面するなどの位置. Nesq11ehoniteおよびDypingite、地学研究、34(7. 的状況とも相まって、蒸発鉱物が壁面において生成する上. −12),281・287.. で、環境が大きく関係していると考えられる。. 伊藤俊彦(1993)北海道足寄町、シオワッカの冷泉石灰. シオワッカでのこれら鉱物の生成は、概括すると 陽イ オンCa→Mg→(Mg・Na)→Naの順に従って、各炭酸塩水和. 華に産するMonohydorocalcite(CaCO3・H20)の. 鉱物の生成が進行したことが、鉱物共生関係と室内実験か. 産状、岩鉱、88巻(10)、485−491.. NaCl濃度が増加する方向に沿ったものであり、塩湖で見. Ito,T.(1996)Ikaite from cold spring water at Shiowakka,Hokkaido,Japan.Jour.Min.Pet.. られる蒸発鉱物の生成のトレンド(Deep Springs湖: Hardie,L.A.andEungster,1970)と同様であり、蒸発鉱. Ito,T.Matsubara andiyawakiR,(1999)Vaterite after. ら明らかになった。この鉱物生成のトレンドは溶液の. Econ.Geol.Vol.91リNo.6,209−219.. ikaitein carbonate sediment,,Jour.Min.Pet.. 物との考えが裏付けられる。. Econ.Geol.Vol.94.,No.5.176−182.. 上記から、シオワッカの冷泉で見られる炭酸塩鉱物の多. 伊藤洋輔(1977)岐阜県産鉱物資料 第1報岐阜県清見. 様性の要因として、冷泉の水質の中でも「高NaCl濃度」. 村楢谷産ダイビング石について、地学研究、28. が大きく関わっていると言えるだろう。 既に報告済みのイカアイト(CaCO3・6H20)、モノハイ. (7・9)、249−254.. 北野 康(1954)温泉水のCa2+、HCO3及びCO。2 ̄0 の含. ドロカルサイト(CaCO。・H20)も、自然界ではその多くは. 有量について、日本化学雑誌、75,872−876.. 深海底、潟湖からの産出物として知られていることも、成. Marschuner,IL(1969)Hydrocalcite(CaCO3・H20)and Nesquehonite(MgCO3・3H20)in carboate. 因上NaClとの関わりを示唆している。これに関しては 『CO2とNa’やCl ̄の濃度の高い温泉水は大量のHCO3を 溶解できる(北野、1954)」]ことから説明できる。. SCale,Science,165,1119−1121.. 西山 孝(1977)南極ドライバレ一地域の塩類析出物に. 尚、夏におけるシオワッカ石灰華半ドームの洞穴に見ら. れる含水Mg、Na炭酸塩鉱物の生成については、石灰華. ついて、南極資料No.56,171−185.. Ohde,S.and Kitano,T.(1978)Synthesis of. を傷つけることは避けなければならない事から、ドームの 表面で生じている炭酸カルシウム鉱物ほどは調べられてい. protodolomite丘om aqueous solution at normal. ない。近年の急激な湧水量の減少で洞穴内が見られるよう. temperature and_preSSure.Geochem.J.,12,. になったことが本研究へと繋がったが、水量の減少の原因. 115119.. Suzuki,J.andIto,M.(1974)Nesquehonite from Yosgikawa,Aichiprefecture,Japan:Occurrence and thermalbehaviol・,Min.Petr.Econ.Geolリ. は明らかでない。 自分達の身近な場所において予想もしない鉱物が、しか も多数生成していることに驚き、自然の不思議さを実感し て貰う上でも、シオワッカ冷泉と石灰華半ドームが今後一. 69,275・284.. Smith,G,Ⅰ.(1979) Subsurface stratigraphy and. 層保全されることを願うものである。. geochemistry oflate Quaternary evaporites, Searles Lake,Cal血rnia.U.S.Geol.Survey Prof,Paper.1043,130pp. 吉川和男・木崎吉雄・丸橋 剛(1996)群馬県藤岡市産 参考文献 のDypingiteおよびNesquehonite、群馬大教育 学部紀要自然科学編、44、77−90. Engster,H.P.and Hardie,L.A.(1978)塩湖、湖沼の科 学(和田訳、LAXES − ChemistⅣ,geOlogy, pb.ysics)、古今書院、331406. Ford,W.E.(1969)Dana−s text book of Mineralogy, 851pp.. Garrels,R.M.&F.T.Mackenzie(1976)0rigin of the Chemical composition of some sprlngS and. lakes.222−242.In:Equilibrium Conceptsin NaturalWater Systems. Am.Chem.Soc., AdvancesinChemistry,No.67.. −205−.

(7) 伊 藤 俊 彦. 10. ほ. 25. .2(】. 28(度〉. 図一1 X線粉末回折像 トロナ、ネスケホン石、ノルスーパイト及び岩塩(室内実験). 25 2()(虎). 園一2 X線粉末回折像 ナトロンく少量のノルスーパイトと共存〉(野外). −208−. 80. 85. ヰ0.

(8) シオワッカ石灰華半ドームの洞穴壁面のネスケホン石、ダイビング石、. ノルスーパイト、ソーダ石、重炭酸ソーダ石、モノハイドロカルサイト. (白色、微細な点状の集合体). 写真3,ダイビング石 (右下にネスケホン石). −207−. 写真4.ダイビング石 (花ビラ状集合).

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