暗視野照明による雪結晶の顕微鏡写真撮影法
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(2) . 北海道教育大学紀要 (自然科学編) 第52巻 第1号. 3年 9 月 平成 1. l ISc i ) uo i iぢofBducat JournalofHo姑 議do UDivers a ences on (Natmr .1 ‐52 , No. ber Septe 1 m L , 2001. 晴視野照明による雪結晶の顕微鏡写真撮影法. 油川. 英明・尾関. 俊浩. 北海道教育大学岩見沢校物理学研究室. Abst 『aCせ. l lwminat ion was de▽i icrog C七ロヱe The 江・ethodofthePhoto口) sedtotakethe Pi 〕忽Phybythe dark 云eldi j b ロgly Withthebackg … 紅 outstand I st ofthesnowc Found‐ z コ ア ‐of tol lybycover iPgthecentraIPa i j ご toftheconcavel l tcouldbe doneeas ch wasthere負eC p山r ror whi ▽ i l lu・ ina ヒ ロcroscoPeV ththeblack αi ight量omLthei thel I T 1 sk-shaPedPaPel [ ntoftheロ. V 猿enthe PaPer waschanged anothercolored PaPeちitco司ーdtakethecolorPhoto1P達cro淳raPh ofthe j鴎gtothecolorofthePaPel ightuP whi teunderthebackg l esPond 1 snowc Foundconr i t ystaltol. l. は じめ に. 雪の結晶は, 古来より興味ある自然物のひとつとして多くの人々を惹きつけ, スケッチ画や写真におさめ }に記 載 し ま ら れて き ている. 例 え ば, 17世紀 の 中 葉 に デカ ル トは 幾つ か の 雪 結 晶 の 形 につ い て そ の 著 書1 ,. ) 自ら顕微鏡 (蘭鏡) で観察した雪結晶のス た, わが国の土井利位は江戸時代後期に 「雪華図説」 を著し2 , ケ ッ チ を 載 せ て い る. 写 真 集 な ども 多 く の も の が見 ら れる が, そ の な か で も ペ ン ト レー の 「Snow Cws ‐ )の 図 版な どが著名 である こ のよう に 雪 結 晶 に 関 す る 画 像 的資 料 はこ れま )や 中 谷 の 「雪 の研 究」4 l 」3 ta s . ,. でにも数多く存在する わけであるが, その形が二つと同じものが無いと言われるほど千差万別であることか ら, 雪結晶は撮り尽くされたとは言えず, 今後も資料の採取は必要であると考えられる‐ 雪結晶は, 平均的には厚さが1/loomm, 大きさが3mm ほどの極めて薄く小さな氷の結晶であること から, 顕微鏡による写真撮影は, 融解や蒸発で簡単に変形しないように低温度かつ高湿度の環境下において 瞬時に行われなければならない. そしてまた, それは無色透明な物体であるので, その撮影は形態が忠実に 示される ように, そして周囲から際立つように写し出されることが求められるわけである. このようなこと から, 顕微鏡で雪結晶を写真撮影することについては, これまでいろいろな方法が行われてきている. )は通常の写真撮影のほかに 反射光による暗視野撮影などを試みているが 雪結晶の特徴的な形態 中谷4 , , を示すことができるものとして斜光の透過照明による撮影法をあげている. ただ, この場合は透過光をその まま用いているので, 基本的には通例の顕微鏡写真の撮影と変わりがないことになる. これに対して, 吉田 は, その方法の詳細は公開されていないので推察の域を出ないが, 二光束を用いて, ひとつは顕微鏡の光軸 に垂直な光として色フィルターを通した背景色用 とし, 他は斜めの白色光として結晶を照射しているようで ) この撮影法では結晶本体と背景の色を違えて撮影することができるので 雪結晶の際立っ た写真 が ある5 . , 得られる. この場合, 結晶を照射する光が光軸に対してある方向に偏っていることから, 通常の斜光照明の よう に, 撮影された結晶には明暗部が生じている. これはこれで趣が感じられるが, 結晶全体を等しく観察 41.
(3) . 油川. 英明・尾関. 俊浩. ・撮影することに関しては少し障害となり, この方法による暗視野撮影においては 結晶の一部が消えるか , )は 原 理 的 に は吉 田 の 方 法 と ある い は 極 端 に 暗い 映 像・ と なる こ と が予 想 さ れる. 一 方 小 林 の 二 色 光 源 法6 , ,. 同じもののようで, 斜光照明がさらに著しく施されているために上述のことが一層顕著になり 樹枝状結晶 , } などに見られる複雑な形態の部分は光が強く散乱され, やや鮮明さに欠けるような場合も見受けられる7 . )があるが これは結晶の表面形態が強調 また, これらとは異なる方法として, 油川の 反射光による撮影法8 , されて撮影されることから, 雪結晶特有の透明性が欠落してしまい, いわゆる観賞用の写真撮影には適当し て い ないも の と判 断さ れる.. このようなことから, 今回, 顕微鏡の照明は透過光とし, それを少し工夫して雪結晶全体が均一に照射さ れた状態での暗視野写真あるいはカラー写真の撮影を試みた‐ 以下にその方法と結果について述べる 尚 . , このような顕微鏡写真は, 雪結晶の研究に関して特に新たな知見を提供してくれるものではないが 自然環 , 境教育などの教材や標本としての有用性は相応に具えているものと考えられる. 2. 暗視野照明の方法. 顕微鏡の暗視野照明とは, 一般に, 光源からの 照明が対物レンズの閉口角よりも大きな角度で斜 光照射され, その進路が何も影響を受けなけれ ば レンズには光が全く入らないこととなり, 視野全 体は暗い状態となる. しかし, 顕微鏡の載物台に 試料 (今の場合は雪結晶) が置かれた場合, それ に照射された斜光は試料を透過することにより反. 対物レンズ. 射・屈折され, その進路が変えられること にな る. こ の こ と によ り, 対物 レンズ に向 かう 光 が開. 口角よりも小さな角 度となっ た場合にはレンズの. 図1 42. 覆いが付けられた顕微鏡の凹面鏡. 図2. 雪結晶の顕微鏡による暗視野観察の原理.
(4) . 暗視野照明による雪結晶の顕微鏡写真撮影法. 視野に入り, その部分が明るく輝いて見える ことになる. このとき, 通常の暗視野照明法では, その背景は 暗い状態に保たれるだけであるが, これを適当な背景色にしよう とすれば, その暗視野照明に少し工夫が必 要となる. 今回考案した撮影法は, 図1に示 したように, 通常の顕微鏡照明用の凹面鏡の中心部に背景色となる色紙 (光を鏡面反射させない材質のものであればいずれのものでもよい) を, その凹面鏡よりも少し小さな径に から反射され, そ して貼りつけることにより (図の矢印部分) , 光源からの光 が凹面鏡の縁の露出部分のみ れが環状の斜光照明として試料を照射するようにしたものである. このことだけにより, 暗視野照明による 撮影でも, また任意の背景色によるカラー写真の撮影でも可能となるのである. つまり, 凹面鏡により反射 された光の角度 (顕微鏡の光軸に対する) が対物レンズの開口角よりも大きいものであれば, 顕微鏡の視野 全体は凹面鏡中心部の色紙の色となる‐ 例え ばその色紙を黒色にした場合には一般的な暗視野照明と同じも のとなり, 他の色紙を用いればその色に応じた視野となるわけである‐ と ころ で, 対物 レン ズ の 開口角 は, 今 回用 い た も の の 開口 数 が0 .7度 ほ ど ‐1であ る こ と か ら, そ の角 度 は5. 0度程度に求められる に見積もられ, 他方, 凹面鏡の縁からの照射は光軸に対する最小の角度 が, 作図から1 の で, この 方 法 で十 分 な 暗 視 野照 明 が得 ら れる こ と になる. こ れ らの こ と につ い て, 概 略 を 図2 に示 す‐ こ. の図において, 光源からの照射光が平行光線として描かれているので, 顕微鏡の載物台上の試料が全体的に 照明されていないように見られる が, 実際には光源 として散乱光を使用しているので, 光束は閉口角よりも 大きな角度で, 図の場合よりも広がりをもつことになる ことから, 結果として試料全体が暗視野照明の内に 置 か れる こ と となる‐. この状態で頭微鏡の載物台に雪結晶を載せれば, 結晶の輪郭及 び文様が照射光を反射・散乱させて輝き, それを写真撮影す れば白色光による暗視野顕微鏡写真が得られる ことになる. また, 凹面鏡の中心部に貼り つけた覆いを適当な色紙に変えれば, 例 えば青色紙の場合, 背景が青色で雪結晶は白く輝いて見えることに なり, そのようなカラー写真を撮影することができる. このよう に, 本撮影装置は光源 が一つだけの使用 で, その調整は凹面鏡の角度だけであり, 通常の顕微鏡観察と全く同じような操作で行うことができる. ) 6 )は照明がある方向から偏 っ て照射さ れるために 撮影された結 ’ これまでの雪結晶のカラー写真撮影法5 , 晶の映像には明暗の違いが見られる. しかし, 今回は環状型の斜光透過照明法であることから, 試料の照射 に偏り がなく, 雪結晶はその輪郭及 び文様が全体的に均一な輝き となっ て撮影される. このようなことか ら, 本装置は雪結晶の暗視野照明写真や, あるいは任意の背景色によるカラー写真の撮影を容易に行うこと ができる.. 3. 撮影の結果 図3 に本装置で撮影された雪結晶の顕微鏡写真の例 を示す. これらは全体が暗い背景で雪結晶だけが白く. 写し出されていることから, 結晶が際立ち, また, これまでの通常照明の写真と比較して, 氷としての物質 観が表現されているように見受けられる. そして, 各々の結晶は輪郭が全体として均一な明るさであり, 従 来 の方 法 に見 ら れる よう な 明 暗の差 異 はあ らわ れてい な い.. }により透過光が反射・散 )や内部の気泡9 顕微鏡の載物台に載せられた雪結晶は, その表面の浮き彫り文様8 乱されて, 図に示されたように白く輝いて見えるわけである‐ また, 結晶内において背景と同色の部分は反 射光が得られない箇所で, これは全くの透明ということである. この図において, 各々の結晶の輪郭や輝きに違いが見られるが, これは主には結晶の厚みや結晶面の向き によるもので, 厚みが増せばそれだけ白く輝く度合いが強くなるようである. また, 標本・観賞用の写真と 43.
(5) . 油川. 図3. 英明・尾関 俊浩. 雪結晶の暗視野撮影による写真例.
(6) . 暗視野照明による雪結晶の顕微鏡写真撮影法. して は, 薄 い 結晶 で文 様 を多く 含 んでいる も の が適 当 している の で はない かと考 えら れる‐ なお, こ の 図の 雪 結 晶 の 最 大 径 は, 左 上 か ら 左, 右 の 写 真 の 順 に, mm 単 位 で そ の 値 を 示 す と, 1 ‐4 .7 ‐7 .4 , ,1 ,1 ,1 2‐1, 1.3, 2‐0, 1‐6と な っ て い る‐. カラー写真の撮影は, 凹面鏡の中心部にある色紙を適当 なものに貼り替えることにより, 図3の写真のよ うに (ただし, 背景が色紙の色で) 撮影ができる‐ この場合, 色紙はなるべく濃い色を使用 した方が雪結晶 の白さを強調でき, 適切な写真を撮ることができる. 普通には青色あるいは紫色が用いられるが, これらに 限られる ことばない. ただ, 雪の物質観を失わないような背景色 が選択される べきであることは確かであ る‐. }が 知 ら れ て い る こ れ は 雪 結 晶 全 体 が白く 写 し出 さ と ころ で, 暗視 野 写真 と して は ペ ン ト レー の 写 真3 ‐ ,. れているわけである が, この写真は, 実際には通常の透過光で撮影された写真乾板において, 結晶本体以外 をカッターで削 ぎ落としたものによりプリントがなさ れたもので, 写真そのものに人為的な所作が加えられ て いる. こ れ に対 して, 今 回 の 撮 影 法 に よる 写 真 は 人為 的 な こ と が 一 切 施 さ れて い な い. そ れ 故, ペ ン ト. レーの写真とは異なり, 本撮影装置による写真は結晶内の文様の無い部分は背景色と同じ色として抜けるよ うに写し出される わけであるが, その部分は雪結晶の透明感を表現しているものと見なすことができるであ ろう.. 4. お わ 月こ. 今回, 雪結晶の暗視野照明による顕微鏡写真の撮影方法を考案し, 実際に撮影を試みた‐ この方法は環状 の斜光透過照明を用いているので, これまでの撮影法と比較して雪結晶が均一に照射さ れ, 結晶部分におい て 明 暗 の差 は ほ と ん ど見 ら れない も の であ っ た‐ ま た, こ の 方法 では雪結 晶 の カ ラ ー写 真 も 容易 に撮 影 する こ と が できる. そ れは, 光源 部 にお い て 適当 な. 大きさの色紙を差し替えるだけのもので, 短時間のうちにその撮影条件を整えることができる‐ この撮影装置は, 既成の顕微鏡をそのままの状態で使用 していることから, 操作は極め簡単であり, 写真 撮 影も 特 に困 難 な も の で はない‐ 今 後, 本装 置 の 光 源や フ イ ルタ ー をいろ い ろ と工 夫 する こ と に よ り, 一 層. 興味深い写真 が撮影できるものと考えられる.. 参考文献 1) 雪について, 雨 につ いて, 塩や覆につ いて (気象学・第六講) 三宅徳嘉他訳, デカ ル ト著作 集第1巻, 白水社, 1973 2) 雪華図説考 小林禎作, 築地書館, 1968. 3) Snow CコぴstalsBentle% W‐A.a1・d W‐J‐Humphreys,McGrawHilIBookCo- ,New 暫ork, 1931 9 49 4) 雪の研究 中谷宇吉郎, 岩波書店, 1 樋口敬二, 気象研究ノ ー ト, 13 , 45‐58 , 1962 6) 二色光源法 小 林禎作, 低温科学, 物 理編, 27 , 395‐397 , 1969 会 1 9 8 3 北大図書刊行 7) 冬のエフ エメ ラル 小林禎作, , 5) 雪の結晶の観察 と記録. 油川 英明, 雪氷, 54巻, 2号, 123‐130 , 1992 前野紀 -・黒岩大助, 低温科学, 物 理編, 24 , 1966 , 81-89. 8) 雪結晶の 「裏」 と 「表」 につ いて 9) 雪結晶の中の気泡. 45.
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