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中国の高等学校日本語科授業における周縁化

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* 兵庫教育大学大学院連合学校教育学研究科学生(Doctoral program student of the Joint Graduate School in Science of School

Education, Hyogo University of Teacher Education)

兵庫教育大学 教育実践学論集 第22号 2021年 3 月 pp.15−25 1.問題の所在  国境を越えた交流が盛んになるのに伴い,外国語が21 世紀に生きるための必要な技能とされてきている。この 背景を受け,多くの学習者が英語学習により世界との関 わりを作ることを期待している(1)(Yashima, 2002)一方, この現状に置かれても,日本語などの英語以外の外国語 (languages other than English,以下LOTEs)を第一外国語 として学習する非英語圏の人も多く存在する。LOTEsの 学習のためには,英語学習の機会が失われたり,英語学 習の時間が減少したりするため,英語学習者と比較する と,LOTEs学習者はLOTEs学習に対してより個人的な理 由を持っており,この理由がグローバル社会ではなく目 標言語集団への積極的な態度につながっている(2)(Dörnyei & Al-Hoorie, 2017, p.465)。とりわけ,このような学習者 が中国の日本語科で多く見られる。中国の中等教育にお いては,外国語科が選択必修制であり,日本語科を開設 している学校が多い。これらの学校では,生徒たちが入 学時に日本語か英語を履修することを自由に選択するこ とができる。2015年の国際交流基金の調査(3)によれば, 中国の中等教育日本語学習者においては,65.9%がマンガ・ アニメなどへの興味,58.9%が「日本への留学」,34.9% が「将来の仕事・就職」という学習理由を持っている。 中国の日本語科の学習者は,日本文化・社会につながる 内発的な動機づけを持っていると言えよう。  しかしながら,中国の高校日本語科教師から,授業に 興味関心を取り入れているにもかかわらず,「生徒はやる 気がない」といった現状に関する指摘が相次いだ(4)。こ れらの指摘では,これまでの日本語教育分野の研究が, 生徒の日本語学習動機の低いことを原因として挙げ,学 習者の興味関心を取り入れた授業工夫の検討により,学 習動機を高めることが必要とされた(5)。しかし,中国, 特に都市部の学校の日本語科生徒たちは,明確な学習動 機を持っている上,日常生活やインターネットでの日本 文化の接触や,日本留学に関する機会が多くある。興味 ある日本文化の接触により日本語学習の動機が高まって いる(6)と考えられるにもかかわらず,学習者の興味関心 を取り入れた授業工夫の効果が限られているのには,何 か他の原因があるのではないかと考えられる。  一方,外国語学習の動機が明確であるが教室で学習 しないという課題に対して,学習者が教室で「周縁化 (marginalization)されると自分の意見を言えずに発言をも がいている(struggling)」ことが原因となり得る(7)(Norton, 2000, p.16)とも考えられている。目標言語の練習が第二 言語習得にとって重要であるため,もし教室に,学習者 を沈黙させる周縁化が存在するならば,周縁化の原因を 考察したり,周縁化される状況の改善について検討する ことが求められていると言えよう。  日本語授業における学習者の位置づけについての検討 は,三代の研究(8)などが挙げられる。しかし,三代らの 研究は,授業で「正統な話者」として日本語を話したり

中国の高等学校日本語科授業における周縁化

王 佳 穎*

(令和2年7月2日受付,令和2年12月23日受理)

Marginalization in Japanese-language Classes

A Case of High School in China

WANG Jiaying*

The present paper explores how marginalization is experienced by high school students learning Japanese as a foreign language in China, within the framework of situated learning theory. Two kinds of classes were designed, both of which took student's interests into consideration, but they differed in terms of content. This study found that one class created some marginalization among students, while the other did not. The first class focused on linguistic knowledge, and the students with less knowledge experienced some discrimination. As such, students with less knowledge students were more likely to be marginalized. In the second class, students were exposed to social issues and cultural topics. They seemed to be treated equally and also related to each other on more equal terms.

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する学習者に注目し,アイデンティティを中心に日本語 学習を促す要因を考察した一方,授業で周縁化される学 習者についての検討は限られている。そこで,本研究は 興味関心を取り入れた日本語授業における周縁化の課題 を検討するために,まず,①第二言語習得分野における, 授業での学習者のアイデンティティと外国語学習の関係 性に関する研究を整理する。次に,②①で整理した周縁 化に関する知見をもとに,複数の授業実践の考察を行う。 さらに,③周縁化による消極的な学習行為が生じたのか という観点から②の結果を考察する。最後に,④①から ③の検討をもとに,本研究の成果を明らかにする。 2.正統的周辺参加論から捉えた外国語学習者のアイデ ンティティ形成  第二言語習得は個人の心理過程だけでなく,社会文化 的な言語実践としてとらえることができると考えられる。 換言すれば,第二言語習得は,特定の社会文化的背景に 置かれる特定な目標言語話者の間で起きている社会的行 為である(9)といえる。ことばの個人生産者から社会的歴 史的な共同体の参加者へというように,第二言語習得と いう教育実践課題に取り組む学習者を捉える視点を転換 し,その上で,学習環境や実践場面を検討することが必 要とされている。この見解を示したものとして,正統的 周辺参加論が注目を集めている。  正統的周辺参加論は,状況論に依拠する学習理論であ り,Lave & Wenger(10)(1991)によって状況的学習とし て提唱された概念である。正統的周辺参加論において, 学習とは実践共同体に参加してアイデンティティが形成 される過程であり,最初は周辺的位置から始まり,最終 的に中心的メンバーになる学習プロセスである。そのプ ロセスの中で,最初の段階でも学習プロセスに正規に 参加しているという意味で「正統的周辺参加(legitimate peripheral participation)」と呼ばれ,最終的な段階は「十 全 的 参 加(full participation)」と い わ れ て い る。一 方, 中心的メンバーにならない状態で周辺的位置に留まり, 最終的に共同体を離れることは「周縁的参加(marginal participation)」と呼ばれる(11)  LaveとWengerの理論を発展させるために,Wenger(12) (1998)は実践共同体への参加とアイデンティティ形成 との関係に焦点を当てた。それによれば,学習者と実践 共同体の関係には,参加(participation)と不参加(non-participation)の2種類がある。我々は,自分が帰属してい る共同体に参加する経験を持っている一方,帰属しない 共同体に参加しない経験も持っている。このとき,我々 のアイデンティティは,様々な共同体への参加・不参加 によって影響を受ける。つまり,人が参加・不参加によ り自身と共同体との関係を理解し,その関係性の中でア イデンティティを構築していることが示唆された。  しかし,人は自分が帰属している共同体に参加しない 場合もある。この状況を説明するために,Wengerの周縁 性(marginality)と周辺性(peripherality)の概念が示唆的 である(13)。周縁性とは,自身と共同体との関係を不参加 の視点から理解する特性であると考えられる。学習者が 周囲とのインタラクションや時間経過に伴って,その共 同体の時空間における立場(position)を変えていくため, 周縁性を持っている学習者は,周辺的位置に置かれる状 態が長く持続していくと認識しており,学習への参加を 諦めがちである。これに対して周辺性とは自身と共同体 との関係を十全的参加の視点から理解する特性であると 考えられる。周辺性を持っている学習者は十全的参加へ の軌跡(trajectory)を っており,不参加または部分的な 参加でも学習の機会として捉えられている。換言すれば, 周縁化または周辺化に伴って学習者はアイデンティティ を形成し,さらにその後の学習行為の選択が影響される 可能性が示唆された。  第二言語習得分野においては,NortonのカナダのESL (English as a Second Language)学習者を対象に行った研 究(Norton, 2000)により,学習者のアイデンティティ形 成と外国語学習の関係性が注目されてきている。Norton は,語学授業の参加から不参加に変わり,最終的に授業 から退出するのに伴う,アイデンティティの変化を周縁 化(marginalization)として捉え,カナダ社会における成 人移民5名の英語習得過程を考察した。考察対象の中の2 名,KatarinaとFericiaが,学習動機が高いにもかかわらず, 英語学習をめぐる教師との意見対立(Katarinaは教師にパ ソコンスキルの学習のための英語能力があることが否定 された。Fericiaは授業で母国ペルーの生活について発表 したが,まとめの時に教師に「主要国ではない」という 理由で省略された)が起きたため語学学校の英語学習を 諦めたと報告されている。2人の事例をもとに,Nortonは 正統的周辺参加論を踏まえ,外国語学習を,学習者が目 標言語集団に溶け込むことを目指した,理想的なアイデ ンティティを獲得するために投資する過程として捉え, 「学習者が,自分の目標言語への投資が授業・カリキュラ ムで不可欠な部分として重視されていると思わない限り, 授業での学習に抵抗したり,さらに授業から退出するこ ともあり得る」(Norton, 2000,p.142)と指摘している。こ のように,Nortonの研究では,成人移民の学習者が英語 学習を通してカナダ社会へのより「正統的」な参加を求 めているが,教師との意見対立により周縁化され,語学 学習を諦めたと示されている。  では,外国語学習者が,周縁化された状態になること に影響する要素は何なのか。  前述したように,外国語学習者,特に中国中等教育の 日本語学習者は,日本文化・社会に対する積極的な態度 を持っており,中国の教室にいるにもかかわらず,彼

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らの学習動機は日本の文化・社会につながっている。こ のような学習者は「授業実践に参加しているが,想像の 世界は教室外の共同体の領域に延びている」(14)(Norton, 2001, p.164)。換言すれば,外国語授業では,学習者は教 室で熟練者の教師に倣い,文の作り方や会話などを練習 したりしながら,外国語活動の十全的な参加を求めてい る。同時に,学習者は目標言語集団の文化・社会の接触 経験をもとに目標言語集団を想像しながら,習得した外 国語技能を通して目標言語集団成員に認められ,その一 員になるのを期待している。つまり,学習者が外国語学 習を通して,教室での外国語学習の共同体及び,想像の 目標言語集団に同時に参加していると考えられる。この ように,集団の視点から見れば,学習者の言語能力が外 国語活動で大きな役割を果たせるか否かならびに,自分 が目標言語集団に受け入れられるか否かが,授業での周 縁化に影響する要素であるといえよう。  さらに,学習者の視点から見れば,想像を通して外の 世界につながっている外国語学習者は,目標言語集団に 生きる能力の向上のために,教室で外国語を学習してい るだろう。換言すれば,外国語学習者は,4技能(読む, 書く,話す,聞く)の練習だけではなく,「新たな技能を 習得しながら,異なる言語文化共同体の行動様式を学習 している」(15)(Gardner, 2010, p.80)。このような学習者は 外国語学習を通して,必要な文化資本,すなわち外国文 化や言語技能などを獲得し,また獲得した文化資本を通 して,望んでいる社会関係資本,すなわち目標言語集団 成員との人間関係を築くことを求めており,さらに資本 の獲得に伴い,学習者は絶えずアイデンティティを再構 築するとNorton(16)(2013, pp.50-51)が述べている。必要 とされる文化資本,つまり興味関心のある知識・技能が 獲得できるか否かならびに,目標言語集団成員との人間 関係構築に関わる,社会の見方・考え方が肯定できるか 否かが,その授業で周縁化されることに影響する要素で あるといえよう。 3.外国語学習者のアイデンティティ形成に関する4つ の要素  これまでの検討をもとに,筆者は,外国語学習者のア イデンティティ形成に関する要素として,①言語能力, ②これまでの生活経験,③興味関心,④社会の見方・考 え方という4つの要素を設定した。このうち,①と②は集 団の視点から抽出したものであり,③と④は学習者の視 点から抽出したものである。これら4つの要素ごとに,表 1のように,先行研究で示している,周縁化につながる外 国語学習の行為を整理した。  第1に,言語能力に関連する位置づけと外国語学習の関 係については三代とTrentの研究がある。三代の研究では, ジソンという来日した韓国留学生が,「優秀な学生」とし て認められているため,留学生だけの授業では,「気楽に 話せ」て「楽」だったと述べられている。一方,日本人 も受講できる授業の場合,日本人の学生が存在し,さら に教師が使っている専門用語や日本語表現がわからない ため,授業が終わった後で「周りの日本人学生は一生懸 命書いていた」が,ジソンが「何を書くのかわからなかった」 と報告されている。また,類似する研究として,Trentの 研究(17)では,文法の正確さより流暢さを重視する香港の EAC(English for Academic Communication)授業で,英語 知識の非対称関係に置かれる学習者の「自由に発言する 関連要素 正統的周辺参加 周縁化 関 連 す る 積 極 的 な 学習行為 その原因 先行研究 関 連 す る 消 極 的な学習行為 その原因 先行研究 ⑴言語能力 ・ 主 体 的 に グ ル ー プ討論に参加する ・日本人学生がい ない 三代 (2011) ・授業の感想文 用 紙 を 記 入 し なかった ・他の日本語能力が高い 生徒(日本人学生)がい る ・教師が使っている専門 用語や日本語表現がわか らない 三代 (2011) ・文法の正確さよ り流暢さを重視す る授業で自由に意 見を表出できる Trent (2008) ⑵生活経験 ・ 主 体 的 に グ ル ー プ討論に参加する ・類似する生活経 験を持っている人 と交流できる Gao,Cheng & Kelly (2008) ・聴講を諦めた ・パソコンスキルの学習 のための英語能力がある ことが否定された ・母国の経験を発表した が,まとめの時に教師に 無視された Norton (2000) ⑶興味関心 ・ 経 済 学 の 内 容 を 主体的に話す ・語学教師より自 分が経済学知識を 多く持っている Trent (2008) ・「Third gender」 な ど に つ い て 主 体 的に意見交換する ・周りに同じ興味 を持っている人が いる Gao,Cheng & Kelly (2008) ⑷ 社 会 の 見 方 ・ 考え方 ・ 教 師 の 観 点 に 沿 っ て 授 業 活 動 に 参 加する ・教師の観点を肯 定できる Lee(2008) ・教師の観点に 反論する ・沈黙する ・教師の観点が肯定でき ない Lee(2008) 表 1 先行研究における,外国語学習者のアイデンティティに影響を及ぼす要素

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(speak freely)」ことが保障されていると述べられている。 このように,外国語授業において,学習者が自分の日本 語能力が肯定的に評価されると判断した場合,授業活動 に主体的に参加する一方,他の学習者の日本語能力との 差が授業活動の参加の妨害になると判断した場合,学習 を諦めがちであると示唆されている。  第2に,生活経験に関連する位置づけと外国語学習の関 係については,香港の中国大陸学生が課外に英語で交流 するために設立された「英語クラブ」での英語学習を考 察した,Gao,ChengとKellyの研究(18)などが挙げられる。 Gao et al.の研究では,学習者が英語クラブに参加するのは, 英語能力を高めるだけではなく,「個人の変化を促して新 たなアイデンティティを形成する」ことを求めているか らである。学習目的の達成には,「英語クラブ」で同じく 「高等教育を受けたバイリンガルな中国語母語話者」との 英語討論により「生活の単調さ(dullness)と対抗し,未 来への憧れを表す」ことが重要であるとGao et al.の研究 が示唆している。一方,前述したNortonの研究では,パ ソコンスキルの学習のための英語能力があることが否定 されたKatarinaや,母国の経験につながる発表内容が教師 に無視されたFericiaが結局英語教室を退出した事例もあ げられる。このように,外国語授業において,学習者が 自分の生活経験が教室での重要な一部だと判断した場合, 学習活動に主体的に参加する一方,無視・排除されたと 判断した場合,教室から退出すると示唆されている。  第3に,興味関心に関連する位置づけと外国語学習の関 係についても先行研究で報告されている。例えば,Trent の研究では,広東方言を母語とする香港の大学生が,英 語で教授される経済学の授業で発話の頻度が低い一方, 語学の授業では,経済の内容について積極的に発言する ことが確認された。Trentは,語学の授業で積極的に発言 する原因が,他の学生より経済学の知識を多く持ってい るためグループ活動でより中心的な役割を果たせること であると指摘している。また,Gao et al.の研究においては, 学習者が,「第三性別(third gender)」といった中国語で 異性と討論することが普段ははばかられるトピックが英 語クラブで英語で自由に討論されていると述べられてい る。このように,外国語授業において,学習者は興味関 心を持つ内容が授業の重要な一部だと判断すれば主体的 に発言すると示唆されている。  第4に,社会の見方・考え方に関連する位置づけと外国 語学習の関係に関する研究である。具体的に言えば,カ ナダの内容重視型プログラムのESL学習者を対象にした Leeの研究(19)では,普段の授業活動に積極的に発言する 学習者が,語学の授業で沈黙したり,話そうともがいて いる状況に置かれている。その状況の原因が,天安門事 件や中国のエイズ拡大防止対策について教師と考え方の 対立により学習集団に周縁化されることであると示され ている。このように,外国語授業において,学習者は自 分の見方・考え方が教室で受容されないと判断した場合, 沈黙したり,教師の教授と対抗したりすると示唆されて いる。  これまでの考察から,表1の興味関心以外の3つの要素 においては自分がそれぞれ優れ,または多くの共同体成 員と類似することにより肯定され,十全的に参加できる 可能性があれば,学習者は積極的に外国語学習活動に参 加していた。一方,3つの要素において自分が優れず,ま たは教師から否定されれば,周縁化してしまい,さらに 学習を諦めたりすることが示唆されている。   で は 興 味 関 心 は ど う な の か。Trent(2008)とGao et al.(2008)の示しているように,自分の知識が豊富で, 学習活動での役割を果たすことができ,肯定されると学 習者は授業に積極的に参加していた。換言すれば,興味 関心においても,学習者自身のアイデンティティへの影 響の如何によって授業での周縁化が影響される。そうで あれば,中国の高等学校日本語科授業という生徒の興味 関心を取り上げる学習活動においても,自身がより肯定 されるならば周縁化せず,一方で教師または他の学習者 との非対称関係を生じ,自身が否定されるならば,周縁 化することが考えられる。本稿は,この課題を検討する ために,取り上げた興味関心の内容が異なる中国の日本 語科における2つの授業を考察する。 4.研究方法  取り上げた興味関心の内容が異なる2つの授業( 1) 考察するために,以下の基準をもとに授業を設計して実 施した。  第1に,授業の参加者と実施者について,授業1と授業 2とも中国都市部の「外国語特色中学」,それぞれの学校 の日本語学科主任に依頼して実施した。全ての生徒が英 語や複数のLOTEsから日本語を主体的に選んで学び始め たのである。授業1の学習者数は12人であり,授業2の学 習者数は18人であり,いずれの授業でも学習者の日本語 学習歴が1年以上2年未満である。  第2に,2つの授業とも活動型授業であり,次の授業構 成で実施された。まず,導入では,活動内容や活動に必 要な文法を説明する。次に,展開では,複数の選択肢を 設定することを通してインフォメーションギャップの生 成をねらい,主体的なコミュニケーションを保障する。  最後の終結では,グループ発表と講評などを行う。  第3に,選択肢の設定について,授業1では,学習者に, 各自のストーリーで財布をどの店に置き忘れたのか,見 つけた財布を警察署または店に返すかという2つの選択問 題を設定した。一方,授業2では,生徒に,自分自身の立 場から,もし家族と一緒に日本旅行に行くなら個人旅行 または団体旅行のどちらを選ぶか,もしグループで日本

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旅行に行くならどちらかを選ぶかという2つの選択問題を 設定した。いずれの授業も日本での行動に関する場面を 設定したが,活動1の場面では,日本語特有の授受表現(20) を取り上げている一方,活動2の場面設定は,日中共通の 営みとして旅行形態の内容を取り上げ,学習者の日本文 化・社会に対する態度につながっている。  第4に,先行研究の検討を踏まえ,まず,要素①言語能 力について,自由な意見表出を保障するために,どちら の授業でも母語と外国語を自由に使えるように設定した。 次に,要素②生活経験について,各生徒の生活経験と授 業内容がつながることを保障するために,授業のトピッ クを旅行という日常の営みに設定した。さらに,要素④ 社会の見方・考え方の要素について,教師の影響を排除 するために,旅行という生徒間の対立になりにくいトピッ クを取り上げた上で,授業で社会の見方・考え方に関す る立場は,教師が示さないようにしている。  この4点をもとに,次の表2のように,取り上げた興味 関心の内容が異なる2つの授業案を作成した。授業プロセ スを考察するために,「その動的プロセス全体を質的に描 き示し」,他者へ開示することが求められていると舘岡(21) が指摘している。舘岡の指摘を踏まえ,筆者は教育実践 課題の「処方箋」 (22)である,Grounded Theory Approach(以 下GTA)の技法を用いて分析を行いたい。ただし,GTA は授業実践のような会話過程を特定の分析対象としてお らず,授業過程分析のために精緻化されていない。その ため,コービン&ストラウス版のGTA(23)をもとに授業 過程を特定の分析対象として特化した,「構築型評価モデ ル」(24)を援用する。「構築型評価モデル」が「授業におい て実際に変容する」多様な生徒たちの「認識形成過程に 着目」し,その具体的なプロセスを「感覚ではなく,デー タ的に示」し,生徒たちの「認識形成過程を可視化」す ることができる(25)ため,本研究の目的に相応しいと考え られる。なお,分析目的を達成するためのデータとして, 授業の映像記録,発話記録,教師のインタビュー記録, 授業後の感想文記述用紙を収集した。  「構築型評価モデル」をもとに,次のように授業分析を 行う。  まず,授業1の分析を行い,日本語特有の授受表現を取 り上げている効果を検討する。  次に,授業2の分析を行い,日中共通の営みとして旅行 形態を取り上げている効果を検討する。  最後に,授業1と2の分析結果をもとに,学習者の間で の非対称的関係により周縁化が生じるかについて考察する。 5.学習・指導過程の比較  以下に授業1および2の学習・指導過程とその分析を示す。 5.1  授業1の学習・指導過程  教師との検討と授業観察により,授業活動では,4グルー プとも,活動開始後各自の役割分担について主体的に合 意していると確認した。その中で,各グループでは,⑴ 活動進行を主導する役割を果たす生徒,⑵役割⑴と協力 して会話内容を検討する役割を果たす生徒,⑶役割⑴と 授業1の目標:日本の日常会話場面の体験活動により,授受動 詞の依頼表現や敬語などを学習させる。 授業2の目標:「日本旅行する時に個人旅行または団体旅行を選 びますか?」を考える活動により,日中両国の旅行形態の異なり に対する理解を深めること。 教師の指示・発問 教授・学習過程 教師の指示・発問 教授・学習過程 導 入 ○1.既習した「てもらう」「てく れる」の表現を復習させる。 ○2.(ス ラ イ ド を 生 徒 に 提 示 す る)本 時 の 授 業 活 動 と 設 定 し た 活動場面を生徒に説明する。 T:前時までの学習内容 を確認させる。 S:前時までの学習内容 を確認する。 T:学習課題を提示する S:予想する。 ○1.これまでの旅行経験について発 問する。 ○2.(スライドを生徒に提示する)本 時の授業活動について生徒に説明す る。 T:学習課題を提示す る。 S:予想する。 展 開 ○1.(活 動 内 容 に つ い て の プ リ ン ト を グ ル ー プ ご と に 配 る 。 ) 「財布を落としたらどうすれば いいですか。」ということについ てグループごとに話し合い,空 欄を埋めさせる。 ○ 2. グ ル ー プ ご と に 記 入 し た プリントを黒板に掲示させて, 完成した会話を発表させる。 T:課題についてグルー プごとに話し合わせ, 練習して全体の前で発 表させる。 S:課題についてグルー プごとに話し合い,練 習して全体の前で発表 する。 ○1.テキスト本文について,生徒に簡 単に紹介する。そして,「家族と一緒 に日本へ旅行するならば個人旅行ま たは団体旅行を選びますか。その理由 はなんですか。」について,自分の意 見を考えさせる。 ○2.配付資料を参照しながら,「グル ープメンバーと一緒に日本へ旅行す れば,個人旅行または団体旅行を選び ますか。その理由はなんですか」につ いてグループごとに活動を行わせる。 T:課題についてグル ープごとに話し合わせ, 全体の前で発表させる。 S:課題についてグル ープごとに話し合い,全 体の前で発表する。 終 結 ○1.各グループの発表内容を踏 まえ,教師が一番良いと思うフ レーズを黒板に書いて,板書の 通りにグループごとに練習させ る。 ○2.感想文を記入させる。 T:本時の内容をまとめ る。 S:本時の既習した内容 を確認する。本時の授 業への感想を用紙に記 入する。 ○1.グループごとに自分のグループ の討論結果を発表させ理由を説明さ せる。 ○2.日中の団体・個人旅行の割合につ いて,生徒に簡単に紹介する。 ○3.感想文を記入させる。 T:本時の内容をまと める。 S:本時の既習した内 容を確認する。本時の授 業 へ の 感 想 を 用 紙 に 記 入する。 表 2 授業の指導案

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⑵の意見に常にフィードバックして発表の練習に集中す る生徒がそれぞれ1名存在している。  確認した事実をもとに,筆者が教師と共同して最も積 極的に授業活動に参加したグループを選出し,「構築型評 価モデル」を用いて日本語学習に関する行為を抽出する。 抽出した日本語学習の行為を踏まえ,それぞれの日本語 学習過程を示す。なお,〔 〕は分析対象の行為,【 】 は授業過程の局面を示す。各分析対象の行為と授業過程 の局面を示したものが表3である。 ①役割の合意による学習方法の決定  授業において,生徒たちは自分の動機づけや日本語能 力をもとに,グループ活動での【役割】について,他の グループメンバーと【合意】して【学習方法】を【決定】 している。生徒A:〔独特な発表内容〕を〔作成〕するこ とを〔重視〕している。生徒B:〔発表内容〕の〔作成〕 を〔重視〕している。生徒C:〔発表〕の〔練習〕を〔重視〕 している。 ②インターアクションによる日本語知識の習得  生徒たちは課題解決している時,【インターアクション】 によって【日本語知識】を【習得】している。生徒A:〔イ ンターアクションによる日本語知識の習得〕をしている。 その際,〔思考・表出による知識の強化〕をしており,〔オ リジナル内容の追加に気づいて不足を充填〕している。 また〔リピートによる発表の流暢さ〕の〔強化〕もしている。 生徒B:〔インターアクションによる知識の習得〕をして いる。その際,〔思考・表出による知識の強化〕をしており, 〔リピートによる発表の流暢さを強化〕している。生徒C: 〔インターアクションによる知識の習得〕をしている。そ の際,〔確認・表出による知識の強化〕をしており,〔リピー トによる発表の流暢さを強化〕している。 ③肯定的な自己評価の形成  生徒たちは,作成した内容を発表することにより,他 のグループメンバーと一緒にあげた学習成果を共有し, 自分の知識の獲得の度合いを把握し,【肯定的な自己評価】 を【形成】した。生徒A:〔発表内容を主導的に作成〕し, 「積極的に発表」をしている。生徒B:〔発表内容を積極的 に作成〕し,「協働的に発表」をしている。生徒C:〔発表 内容を積極的に確認〕し,「積極的に発表」をしている。  個別に見ると,生徒Aは他人と同じ内容を作成するこ とに満足せず,「各グループの発表内容はそれぞれ違うわ けだろう。もしみんな同じだったら…(每组肯定要不一样 的 ,如果每个组都…)」と語っているように,オリジナル な発表内容の作成を学習目標として設定した。それで, オリジナルな発表内容を作成するために,生徒Aは「 ちゃ んと の意味は知っている? ちゃんと持ってください の ちゃんと (ちゃんと就是那个ちゃんと你知道吗?ちゃんともっ てください)」と語っている。このように,生徒Aが積極 的に他人へ発問することにより,自分の不足を充填した りし,学習目標に応じて自発的に学習行為を調整してい ると見出された。最後に,「私はもっと日本の実際の会話 場面で体験したい(原文ママ)」という感想文のように, 生徒Aは当該授業での満足の気持ちと将来の授業内容へ の期待を抱いている。  生徒Bは,授業において,「私は(発表内容を)記入す る。(我来写)」と語っているように,発表内容の作成への 積極的な態度を示している。さらに,発表内容の作成の ために,これ,おかしいと思わない?一緒に来てもらいま しょう。 一緒に行きましょう でいいじゃないか。(你不 觉得好奇怪吗,一緒に来てもらいましょう。一緒に行きましょう 不就行了吗)」といったように思考・表出しながら,配付資 料で提示している「どうしましたか」で尊敬語が使われ ていないことに気づき,「これは どうされましたか と言っ てもいいですか」といったように質問し,学習目標を目 指して自発的に学習行為を調整している。最後に「自分 の能動性を発揮した。授業で自分たちのアイディアを書 けてよかった。(发挥了主观能动性。能写自己的一些想到的点 局面 生徒 A(役割⑴) 生徒 B(役割⑵) 生徒 C(役割⑶) 教師 ① 〔独特な発表内容の作成を重視〕 〔発表内容の作成を重視〕 〔発表練習を重視〕 〔 主 体的 な 学 習 を 維持 ・ 保 護 す る た めに 各 グ ル ー プの 討 論 を 支 援〕 特性「グループ活動での役割について合意して学習方法を決定」 ② 〔 イ ン タ ー ア ク シ ョ ン に よ る 知 識 の 学習〕 〔思考・表出による知識の強化〕 〔 オ リ ジ ナ ル な 内 容 の 追 加 に 気 づ い て不足を充填〕 〔 リ ピ ー ト に よ る 発 表 の 流 暢 さ を 強 化〕 〔 イ ン タ ー ア ク シ ョ ン に よ る 知 識の学習〕 〔思考・表出による知識の強化〕 〔 リ ピ ー ト に よ る 発 表 の 流 暢 さ を強化〕 〔 イ ン タ ー ア ク シ ョ ン に よ る 知 識の学習〕 〔確認・表出による知識の強化〕 〔 リ ピ ー ト に よ る 発 表 の 流 暢 さ を強化〕 特性「他人とのインターアクションによる日本語知識の学習」 特性「主体的な学習を維持・保 護するために各グループの討論 を支援」 ③ 〔発表内容を主導的に作成〕 〔積極的に発表及び自己評価〕 〔発表内容を積極的に作成〕 〔 協 働 的 に 発 表 及 び 積 極 的 な 自 己評価〕 〔発表内容を積極的に確認〕 〔 積 極 的 に 発 表 及 び 前 向 き な 自 己評価〕 〔 発 表活 動 に よ り 肯定 的 な 自 己 評価形成を促す〕 特性「発表とその内容の作成による肯定的な自己評価の形成」 特性「肯定的自己評価を促すた めに日常会話場面をシミュレー トした発表活動の実施・講評」 ※①=【役割の合意による学習方法の決定】②=【インターアクションによる日本語知識の習得】③=【肯定的な自己評価の形成】 表 3 授業1の学習・指導過程

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子,我很喜歡)」と語っているように,当該授業で自分のパ フォーマンスを評価した。  生徒Cは,発表の練習に集中しており,「○さんの方が 早いから,内容作成はAさんを中心に進めましょう(我们 跟不上 的脚步,就参照 的写吧)」といったように,自分の 能力に自信を持っておらず,会話内容については他の生 徒の意見に従っている。しかし,発表のために,生徒C が「「お金を」と何ですか。「付钱」は日本語で何と言い ますか( お金 を然后什么?付钱怎么说)」といったように, 自分の知らない知識を積極的に確認している。  これまで述べたように,授業1では,生徒Aの日本語の 熟練度が高く,授業活動で主体的に日本語を話し,探究 的に日本語を学習する意欲を示している。生徒B,Cが授 業で中国語を多く使っているが,中国語で積極的に日本 語について発問したり,日本語能力の向上を目指し積極 的に発話している。また,教師が教室内を回りながら関 連知識を説明・提示することを通して,各グループの討 論の展開を支援している。このように,授業で中国語を 使えることにより,日本語の熟練度が高くない学習者が, 授業活動に自由に参加したり,日本語能力を高めるため に,質問・確認したりすることができると確認できた。 すなわち,中国語もともに使うことができたため,学習 者間の日本語能力の評価による非対称的な関係は形成さ れず,全員が積極的に授業に参加できた。  ただし,文化・社会の知識については当該授業では取 り入れられていないが,教師が教室を回りながら,日本 人の言語習慣について説明したりしている。しかし,生 徒Aが個性的な内容作成を目指している一方,日本人の 言語習慣に関する社会文化的な背景知識の不足している 生徒B,Cは,言語の使い方などについての討論には積極 的に参加しているものの,発表内容については,生徒A と教師の見解に同調する態度だけ示している。このよう に,授業1の活動において,日本文化に関する発言は,各 グループの日本に対する知識が一番多く,すなわち学力 が一番高く活動の主導役を果たしている生徒に集中して いると推察される。この点において,生徒B,Cの周縁化 が確認された。 5.2 授業2の学習・指導過程  授業2は「日本旅行に行く時,個人旅行で行くか団体旅 行で行くか」という課題をめぐって進めていた。授業では, まず①家族と一緒に日本旅行に行く場合はどちらを選ぶ かについて生徒に思考させ,次に②グループで一緒に日 本旅行に行く場合はどちらを選ぶかについて討論させて いた。その中で,①個人旅行②個人旅行にした生徒が8人, ①団体旅行②個人旅行にした生徒が7人,①団体旅行②団 体旅行にした生徒が3人それぞれ存在する。  そのため,研究課題を検討するために,旅行形態に関 する決定の各類型がそれぞれ1名ずつあるグループを選出 し,「構築型評価モデル」を用いて日本語学習に関する行 為を抽出する。抽出した日本語学習の行為をもとに,そ れぞれの日本語学習過程を示す。 ①自分の旅行形態に関する思考  次の「家族旅行なら,日本へ旅行に行く時個人旅行ま たは団体旅行のどちらを選びますか」についての活動で, 家族旅行の場合に最適な旅行形態を決定し,その決定過 程において,中国人として【自分の旅行形態】を【思考】 している。生徒A:〔自由自在の日本文化・生活体験〕を 〔期待〕しているから,〔個人旅行で家族海外旅行〕を〔決 定〕した。生徒B:〔短期間で豊富な日本文化を接触・体 験〕しようとして,〔団体旅行で家族海外旅行〕を〔決定〕 した。生徒C:〔旅行会社の手配による気楽な旅行を期待〕 しており,〔団体旅行で家族海外旅行〕を〔決定〕した。 ②グループで旅行形態に関する合意  そして,「グループで一緒に日本へ旅行するなら,個人 旅行または団体旅行のどちらを選びますか」についての グループ活動で,グループメンバーとの旅行の場合で最 適な【旅行形態】について,お互いに意見交換した上で,【グ ループで合意】した。生徒A:グループ活動で,他のグルー プメンバーに〔知らない日本語を積極的に提示〕し,ホー ムステイのような〔長時間で日本文化・生活を体験しよ うとする積極的姿勢〕を示し,家族旅行と同じような〔個 人旅行しようとする意思〕を〔グループで引き続き主張〕 している。生徒B:グループ活動で,自分が〔知らない日 本語について〕他のグループメンバーに〔積極的に確認〕し, グループ全員で日本に「探索」して〔未知な日本文化を 体験・発見する意欲〕を示し,家族旅行の時の団体旅行 から,グループ旅行する時の〔個人旅行しようとする意見〕 に〔転換〕した。生徒C:他のグループメンバーに〔自分 の主張の受け入れのために積極的に説明〕し,〔中国語で 日本文化を深く理解しようとする態度〕で,〔グループで 団体旅行しようとする意思を引き続き主張〕している。 ③旅行形態に関する意思決定による積極的な自己評価の 形成  グループで旅行する場合最適な【旅行形態】について 他のグループメンバーと討論結果を共有し,他のグルー プとの意見の異同を把握し,【積極的な自己評価】を【形成】 した。生徒A:〔自由に日本人と交流したり料理を食べた りする品質高い旅行〕を〔追求〕しようとして,〔個人旅 行でグループ海外旅行〕を〔決定〕したと記述している。 生徒B:〔様々な文化体験とコミュニケーションができる のんびりとした旅行〕を〔期待〕しようとして,〔個人旅 行でグループ海外旅行〕を〔決定〕したと記述している。 生徒C:〔旅行会社の手配による安全保障及び時間節約を 〔希望〕しようとして,〔団体旅行でグループ海外旅行〕を〔決 定〕したと記述している。

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④日本人の旅行形態に関する共感的な理解の形成

 教師が提示した日本人と中国人の旅行形態に関する内 容をもとに,生徒たちは日本人と中国人の旅行形態の異 同を認識し,【日本人の旅行形態に関する共感的な理解を 形成】した。生徒A:自分が journey より holiday の方 が好きだといった〔旅行に対する独特な理解〕を説明し, 今回の授業により,自分が持っていた〔日本人の集団主 義に対するイメージ〕が「転覆」した。生徒B:今回の授 業を通して,〔日本人の個性〕に対して〔新た〕に〔認識〕 した。生徒C:日本人との比較を通して,〔中国人の集団 主義〕について〔自覚〕した。  個別に見ると,生徒Aは,「私は個人旅行がいいと思い ます。何といっても『休暇』と『観光』の感じが全然違 います。団体旅行の急いでおおざっぱに観光することに 比べて,個人旅行の方が休暇のイメージが強いと思いま す(自由行 好,毕竟 度假 和 游览 是不同的概念。相比起跟 旅行社的走马观花和赶日程,自由行更符合 假期 的定义)」と いったように,日本文化を自由に体験する機会を望んで いるため,最初の質問で個人旅行を選択した。さらに, グループメンバーがみんな海外旅行の経験を多く持って いるから,生徒Aが,「友達と一緒に交流したり,助け合っ たりする旅が楽しいと思います(跟认识的人去 好的,大家 可以互相交流帮助)」といったように,お互いに旅行の経験 を分かち合いながら,新たな文化体験をしようとし,2つ 目の質問でも個人旅行を選択した。  次に,生徒Bは,「日本文化は詳しく知らないから,時 間を最大限に活用するために,団体旅行を選びました(我 们对外国的文化景点都了解的不太多,为了不浪费时间,还是应该 了解一下,做一个最有效的旅行)」といったように,短期間 で出来る限り多くの文化体験に出会おうとし,家族で行 く場合は団体旅行を選択した。一方,グループ全員で一 緒に日本へ旅行に行く時,日本語はうまくなくても「スマー トフォンも使うことができると思っています。わからな い時,辞書など,翻訳などを使います(原文ママ)」といっ たように,お互いに協力して日本語を学びながら未知な 文化体験を行おうとし,個人旅行を選択した。  さらに,生徒Cは,生徒Bと類似し,「みんな一緒に海 外に行く時,たくさん買い物をするでしょう。全て自分 で持って地下鉄に乗ったりしたら疲れるから(因为大家一起 出去的时候,会买很多东西。然后都要自己拿着坐地铁的话,那么 长的旅途里会感觉很累)」といったように,気楽に日本を旅 行する態度を示し,最初の質問で団体旅行を選択した。 グループメンバーと一緒に旅行に行く場合は,生徒Cが, 「私たちの日本語は上手ではありません。私たちの日本語 だけで旅行するのが無理です。道を聞いたり,ホテルを 予約したりなど簡単にすることができません。もし団体 旅行で行けば,添乗員さんが中国語も日本語も話せるので, 私たちに分かりやすく説明したり,日本人と交渉してもらっ たりすることができます(我们的日语不是特 好。如果我只 靠我们自己的日语的话,是不可能的。是不可能这么方便地问到那 局 面 (個人旅行→個人旅行)生徒 A (団体旅行→個人旅行)生徒 B (団体旅行→団体旅行)生徒 C 教師 ① 〔個人旅行で家族海外旅行の決定〕 〔自由自在の日本文化・生活体験へ の期待〕 〔 団 体 旅 行 で 家 族 海 外 旅 行 の 決 定〕 〔 短 期 間 で 豊 富 な 日 本 文 化 を 接 触・体験する欲求〕 〔 団 体 旅 行 で 家 族 海 外 旅 行 の 決 定〕 〔旅行会社の手配による気楽な旅 行を期待〕 〔主体的な学習を維持・保 護するために各グループの 討論を支援〕 特性「家族旅行の場合で最適な旅行形態の決定による旅行形態の思考」 ② 〔他 人の 知 らな い 日本 語を 積 極的 に提示〕 〔長時間で日本文化・生活を体験し ようの積極姿勢〕 〔グ ルー プ で個 人 旅行 しよ う とす る意思を引き続き主張〕 〔知らない日本語について積極的 に確認〕 〔グループで未知な日本文化を体 験・発見する意欲〕 〔グループで個人旅行しようとす る意見転換〕 〔自分 の主 張の受 け入 れのた め に積極的に説明〕 〔中国 語で 日本文 化を 深く理 解 しようとする態度〕 〔グループで団体旅行しようとす る意思を引き続き主張〕 特性「グループで旅行する場合で最適な旅行形態の決定によるお互いの意見の交換」 特性「主体的な学習を維 持・保護するために各グル ープの討論を支援」 ③ 〔自 由に 日 本人 と 交流 した り 料理 を食べたりする品質高い旅行への追 求〕 〔個 人旅 行 でグ ル ープ 海外 旅 行の 決定〕 〔様々な文化体験とコミュニケー ションができるの んびりとした旅 行への期待〕 〔個人旅行でグループ海外旅行の 決定〕 〔旅行会社の手配による安全保障 及び時間節約の希望〕 〔団体旅行でグループ海外旅行の 決定〕 〔発表 活動に より肯 定 的 な 自 己 評 価 形 成 を 促 進 す る〕 特性「グループで旅行する場合で最適な旅行形態の意思決定」 特性「積極的自己評価を促 すために各グループの意思 決定結果を発表する活動の 実施・講評」 ④ 〔“旅行”に対する独特な理解〕 〔日本人の集団主義に対するイメ ージの転覆〕 〔日本人の個性に 対する新たな認 識〕 〔中国人の集団主義に対する自覚〕 形態の異同に関する思考の〔日本人と中国人の旅行 促し〕 特性「日中旅行形態の異同についての思考による旅行形態への共感的な理解の形成」 特性「日本人の旅行形態に ついての思考による旅行形 態への共感的な理解を形成 させる指導」 ①=【自分の旅行形態に関する思考】②=【グループで旅行形態に関する合意】③=【旅行形態に関する積極的な自己評価の形成】④= 【日本人の旅行形態に関する共感的な理解の形成】 表 4 授業 2 の学習・指導過程

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么多路,订到酒店。然后如果是团体旅行的话,因为他们会中文, 也会日语,一方面可以方便给我们讲解,另一方面也方便给日本人 交流)」といったように,中国語で日本文化を理解するこ とを重要視し,添乗員の説明や手配を必要としており, 利便性重視の態度を示している。グループ全体が類似す る考え方を持っていると確認した上,生徒Cが団体旅行 を選択した。  授業2の考察では,生徒A,Bが,日本語能力も,日本 文化・社会に関する知識もまだ不十分だと自覚した上で, グループメンバーと一緒に探求しようというチャレンジ 精神を示している。一方,生徒Cも,日本語能力も,日 本文化・社会に関する知識もまだ不十分だと自覚したが, 添乗員を通して快適な旅行を求めるという保守的な態度 を示している。とはいえ,旅行形態の決定の異同にかか わらず,3人の生徒とも日本旅行に関する理想的な形態を 自分の立場から主体的に考えていることから,授業2が, 日本文化・社会に対する積極的な態度を生かして主体的 なコミュニケーションを促したと確認した。すなわち, いずれの学習者も自らの考えを表明すればよく,それに 対する評価がなされる授業ではなかったため,学習者間 の対等性は維持され,全員が同等に授業に参加できた。  授業1と授業2の授業過程をもとに,以下3点を確認した。  第1に,Trentの研究と類似する,文法の正確さより流 暢さを重視する授業で,学習者が「自由に発言する」こ とである。2つの授業でも,生徒が言語に拘らず,グルー プ活動で主体的に発言している。例えば,日本語で発言・ 発表するために,生徒たちが母語で日本語の文法・単語 について質問したり,確認したりしている。また,日本 語の補充として中国語で旅行経験について意見交換した ことも確認された。  第2に,Gao et al. の研究と類似する,自由に生活経験 をシェアできる授業で,学習者が「未来への憧れを表す」 ことによって,「個人の変化を促して新たなアイデンティ ティを形成する」ことを求めていることである。例えば, 授業2においては,生徒たちが,積極的に自分の旅行経験 をグループでシェアしたり,日本語学習により形成しよ うとした理想な旅行形態について交流していると確認した。  第3に,どちらの授業でも,興味関心のある内容の取り 上げにより,多くの生徒は興味関心が引き寄せられ,教 師の提示した内容をもとに,活動目標の達成を目指し, 日本語の学習をしながら日本語で交流したりしている。 しかし,授業1では,生徒B,Cが積極的に日本語を練習 したり,知らない文法・単語など発問したが,発表の内 容展開については,生徒Aおよび支援に来ている教師の 意見と同調していることを確認した。この消極的な同調 発言から,学力格差による非対称関係に置かれる生徒B, Cが周縁化の状態にあったと推察される。   6. 授業過程の考察  なぜ興味関心を取り入れた2つの授業において,授業1 だけで周縁化されることが確認できたのか。この分析結 果の違いは,2つの授業構成の違いに関わると考えられる。  授業構成から見れば,2つの授業とも学習者間の意見交 換を求めることで,各自のもつ知識・情報の違いを際立 たせた。いわばインフォメーションギャップの生成によっ て,伝達必然性の創造を通して学習者の主体的な交流を 図っている。授業1では,教師が言語そのものに焦点を当 てて,生徒を授受動詞の吟味に集中させるために,文化・ 社会の内容を取り上げなかった。そのため,交流はほと んど語学の内容を中心に行っていた。このように,授業1 で生成したインフォメーションギャップが語学知識の差 とイコールであり,さらに,語学知識の差は学力の差と つながっているため,授業1では,グループごとに,学力 格差による非対称関係が構築された。学習者のパフォー マンスが「自己評価の直接的根拠を提供している」(26)(レ イヴ&ウェンガー,1993,p.97)ため,このような学力格 差による非対称関係で授業活動に参加する生徒は,学力 不足ゆえに発言が減少し周縁化が生じるだけでなく,発 話が他人からの評価を低くすると判断した場合,自分へ の評価が低くならないように,発言を躊躇したり,周縁 化される状態になりがちであろう。  一方,授業2では,授業1と同様に,教師が交流を保障 するために,母語の使用も認めているが,文化・社会の 内容を取り上げたため,生徒の交流が旅行を中心になっ ている。勿論,授業2でも,生徒間で学力の差が存在して いるが,Nortonの研究で述べているように,文化・社会 の内容を交流する時,生徒が想像を通して目標言語集団 に参加しているため,理想的な日本旅行の形態について 意見交換している生徒が,お互いに同等な立場であると 認識しているだろう。「友達と一緒に交流したり,助け合っ たりする旅が楽しいと思います」といった発話のように, 学力の差があるにもかかわらず,生徒たちが,目標言語 集団への正統的周辺参加のために平等で支え合っている 関係があるといえる。  上記のように,2つの授業とも興味関心を取り入れた授 業にもかかわらず,授業1は語学知識そのものに焦点を当 て,語学知識のインフォメーションギャップを生成する と同時に,グループ内で学力格差による非対称関係を構 築した一方,授業2では,文化・社会の内容の交流を中心 に,生徒に他の成員と平等で支え合っている関係を構築 した。このような授業構成による生徒たちの関係の違い が,周縁化に関する授業1と2の分析結果の違いに影響し ていると考えられる。

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7. 成果と課題  本稿は,中国の高校日本語授業における周縁化につい て検討した。中国の高校日本語科において実施した,取 り上げた興味関心の内容が異なる2つの授業を分析し,授 業1だけで周縁化されることが確認できた。授業1は語学 知識そのものに焦点を当て,語学知識のインフォメーショ ンギャップを生成すると同時に,学力格差による非対称 関係を構築した一方,授業2では,文化・社会の内容の交 流を中心に,生徒に目標言語集団への参加に向けて他の 成員と平等で支え合っている関係を構築していた。この ように,2つの授業構成による生徒たちの関係の違いが, 授業における周縁化の違いに繋がったことが考えられる。  研究の成果として,次の2点があげられる。  第1に,興味関心を考慮した日本語授業においても,生 徒が学力格差による非対称関係により周縁化され,自分 への評価が低くならないように発言を躊躇しうるという 課題を明確化した。  第2に,目標言語集団への参加を認識させ,他の成員と 平等で支え合っている関係を構築したことで周縁化は生 じにくいことが確認されたことから,興味関心を考慮し た授業における,周縁化についての今後の改善方向を示 した。  今後の課題としては,本研究の成果をもとに,授業改 善策を検討し,改善授業を開発・実践することである。 ― 註 ― 1 授業1は2016年6月14日に中国江蘇省の外国語教育を 特色とする高校,蘇州市第三中学校の日本語科主任唐 笑叶教諭に依頼して実施した。授業2は,2017年6月8 日に中国四川省の外国語教育を特色とする中等学校, 成都外国語学校の日本語科主任王恬静教諭に依頼して 実施した。 ― 引用・参考文献 ―

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( 7 )Norton, B. Identity and language learning: Gender,

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( 8 ) 三代純平「「場」としての日本語教室の意味―「話 す権利」の保障という意義と課題」細川英雄 (編)『言語 教育とアイデンティティ―ことばの教育実践とその可 能性』,春風社,pp.75-97,2011

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(19)Lee, E. The other (ing) costs of ESL: A Canadian case study. Journal of Asian Pacific Communication, 18(1), pp. 91-108, 2008 (20)授受表現が「非母語学習者には難しく,混乱を招く」 のは,授受表現の根底には,「日本人の「ウチ(自己集 団意識)」「ソト(他者集団意識)」が絶対的なものでは なく,相対的であり,「ウチ」と「ソト」の境界が話し 手との関係から拡大,縮小するという自己意識と他者 意識に関する日本語,日本文化特有の現象があるから である」。    光峰『イメージ図式による授受動詞の指導法:与 え動詞「あげる・くれる」を中心に』拓殖大学博士論文, p.4,2013 (21)舘岡洋子「教育現場の変革のための実践研究を支 える質的研究」『質的心理学フォーラム』5,pp.69-70, 2013 (22)増井(2008)は,GTAが社会経験の「有効な行動指針」 としての「処方箋」というGlaser & Strauss (1967)の評 価を援用し,授業分析でのGTAの役割を評価した。    増 井 三 夫「実 践 研 究 に お け るGrounded Theory

Ap-proachの意義と可能性」 『教育実践学研究』9(2),pp.11-25,2008

  Glaser, B., & Strauss, A. The discovery of grounded

theory. Weidenfeld & Nicolson,1967

(23)ジュリエット・コービン,アンセルム・ストラウス 『質的研究の基礎:グラウンデッド・セオリー開発の技 法と手順』操華子・森岡崇訳,医学書院,2012 (24)岡田了祐「社会科学習評価への質的研究法Grounded Theory Approachの導入―社会認識形成過程における評 価のための視点提示に関する方法と実際―」『社会科教 育研究』121,pp.91-103, 2014   岡田了祐「概念の構築における子どもの社会認識形 成過程の差異―構築型評価モデルによる比較考察を通 し て ―」『日 本 教 科 教 育 学 会 誌』38(3),pp.103-116, 2015 (25)前掲岡田(2014),p.91 (26)前掲レイヴ&ウェンガー(1993) ― 付 記 ―  本稿は平成29年1月に上越教育大学大学院学校教育学 研究科に提出した修士論文に,新たに文章等を加え,ま とめ直したものである。授業の実施にあたり,協力して 頂いた蘇州市第三中学校の唐笑叶氏と成都外国語学校の 王恬静氏に,この場を借りて御礼申し上げます。

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