Title
文部科学省平成21年度「大学教育充実のための戦略的大
学連携支援プログラム」 : 看護系大学から発信するケア
リング・アイランド九州沖縄構想プロジェクト報告
Author(s)
金城, 祥教; 仲栄真, 由香
Citation
名桜大学紀要 = THE MEIO UNIVERSITY BULLETIN(19):
165-171
Issue Date
2014-03
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/12381
Ⅰ はじめに 看護系大学から発信するケアリング・アイランド九州 沖縄構想は,国公私立大学間の積極的な連携を推進し, 各大学における教育研究資源を有効活用することによ り,当該地域の知の拠点として,教育研究水準のさらな る高度化,教育活動の質保証,個性・特徴の明確化に伴 う機能別分化と相互補完,大学運営基盤の強化等が求め られている中で,更に,地域と一体となった人材育成の 推進を図ることを目的とした文部科学省の「戦略的大学 連携支援事業」の一つとして採択された事業である。看 護系大学及び医療現場の共有する7つの課題に対応し て,連携する九州・沖縄の看護系13連携校と1協力校(以 下14大学),関連団体,自治体等がプログラムを共同で 開発・推進し,総合的な地域連携によってケアリングあ ふれる島「ケアリング・アイランド九州沖縄」の実現を 目指すものである。「看護系大学から発信するケアリン グ・アイランド九州沖縄構想」プロジェクトは,平成21 年度戦略的大学連携支援プログラムとして採択され,平 成23年度までの3年間は文部科学省の補助金事業期間で あったが,構想自体は,その5年後,10年後を見据えた中・ 長期のビジョン「100万人のケアリング・サイクル構築」 の取組となっている。 Ⅱ 文部科学省平成21年度採択「大学教育充実のた めの戦略的大学連携支援プログラム」看護系大学 から発信するケアリング・アイランド九州沖縄構 想プロジェクトについて 1 「ケアリング・アイランド九州沖縄構想」事業の必 要性と背景 現在,高度化する医療への対応や高齢化社会対策に並 行するかたちで全国に看護系大学の数が急増している。 このような急激な変化の中で,現在の看護系大学や医療・ 福祉の現場で共有する課題として,本事業では以下の7 つ(①~⑦)を早急に対応しなければならない取組課題 として挙げ,課題解決に対応するため7つの小部会を設 置し,積極的な取組がなされた。また,平成23年度には,
文部科学省平成21年度「大学教育充実のための戦略的大学連携支援プログラム」
看護系大学から発信するケアリング・アイランド九州沖縄構想プロジェクト報告
Caring from YANBARU: A Report from Meio University
Caring Island Kyushu Okinawa Project 2009 ~ 2011
金城 祥教,仲栄真由香
要旨 文部科学省によると,看護系大学(看護師養成課程のある学部・学科を持つ4年制大学)はここ数年,年毎に10 校以上のペースで増加し1991年度には11校だった看護系大学が2012年度には203校を数えるまでになっている。一方, 短大や専門学校など大学以外の養成機関は減少傾向で,短大の看護学科(3年制)を募集停止して4年制大学に看護 学部を開設するところも増えている。今後,少子高齢化,情報化,医療の高度化といった社会変化の中,病院や福祉, 介護現場など看護職の需要がますます高まることは確実で,看護学部・学科の新設は来年度以降も続くと言われてい る。一方で,教員の教育力の向上や看護師の高離職率等を改善することや,豊かな心を持った専門性の高い看護師を 育成することは,看護系大学の緊急かつ重要な共通課題となってきている。 文部科学省の平成21年度「大学教育充実のための戦略的大学連携支援プログラム」の公募にあたり,福岡県立大学 が主幹となる『看護系大学から発信するケアリング・アイランド九州沖縄構想』が先見的広域連携の取組として評価 を受けて採択された。3年間の本事業において取り組まれたプログラムを通して名桜大学における成果として一知見 が得られたので報告する。【事業報告】
今までの課題解決の取組を継続しつつ,さらにケアリン グ・サイクルを地域に拡げていくために,各連携校でケ アリング・アイランドウィークが実施された。また,思 春期学会と国際ケアリング学会では,後援・共催となり 数多くのこれまでの取組成果を国内外に向けて実践的研 究として発表した。 ① 助手・助教力の停滞,及び専任教授力,教員集団 の課題 大学数の短期間における大幅な増加は,「教員の急造・ 急増」「教員の流出・転入」という課題を引き起こして いる。助手・助教の多くは,教育者としての専門的な教 育を受けてきていないため,その教育力に不安がある。 ② 臨地実習指導者の教育力のばらつき 附属病院等を持たない看護系大学では,臨地実習のた めに地域の様々な病院を利用することになる。それらの 病院の中には,臨床現場の多忙さや臨地実習指導者不足 等の課題から,学生のロールモデルとなりうる臨地実習 指導者が十分には育成されていないところがあり,病院 内の現任教育にもばらつきがある。 ③ 卒後1年目看護師の高離職率 看護職者の離職率は平成17年の調査(「病院における 看護職員需給調査」看護協会)によると,12.3%であり, そのうち新人看護職の離職率は9.3%と約10人に1人が 離職している。(※1事業申請当時の資料) ④ 卒後1年目の看護技術の未熟さ 卒後1年目の看護師におけるリアリティ・ショックの 背景には,大学で学んだ看護技術が各就職先の臨床現場 で求められる水準まで十分に達していないという現状が ある。また,勤務先での職場内職業指導にもばらつきが 見られる。 ⑤ 新設校などの学生間における学びの文化の未成熟 看護系大学には,新設学部・学科等の歴史の浅い大学 が多い。そこでは,大学間における“学びの文化”が成 熟しておらず,受け継がれるべき伝統などが存在するに 至っていないことが多い。 ⑥ 高校理科系科目履修のばらつきと専門基礎科目へ の影響 入試形態の多様化により,高校での理科系科目(生物・ 化学など)を十分に学んでおらず,苦手意識を感じ,不 得意にしている学生が多い。理科系科目の不得意さは, 解剖生理学や病理学などの専門基礎科目の理解に影響力 を及ぼし,看護学を学んで行く上での学習の遅れを引き 起こす要因になる。 ⑦ 各大学の特徴科目の共有不足 各看護系大学の選択科目においては,大学ごとの理念 の違いや在籍している教員の専門性の違いにより,独自 の科目(特徴科目)が展開されている。現時点では,こ れらの特徴科目の情報が十分には共有されておらず,大 学間で相互受講することが難しい現状である。 設置小部会 ① ケアリングFD小部会 ② ケアリングCSD小部会 ③ メンタリング・ネットワーク小部会 ④ 看護技術支援小部会 ⑤ 学生コンソーシアム小部会 ⑥ 理科系科目補強教育小部会 ⑦ 講義の相互受講小部会 2 「ケアリング・アイランド九州沖縄構想」事業の趣旨・ 目的 九州・沖縄の看護系大学等14大学が連携し,看護系大 学に共有する7つの課題に対応した3つの基盤的取組に ケアリングという概念を中心に据え,①ケアリングFD &CSD(大学教員及び臨地実習指導者の教育力開発), ②卒後リメディアル・サポート(卒後1年目を対象にし た離職予防:メンタリングと技術支援),③学生を核と するケアリング・コンソーシアムの構築,を共同開発・ 共同実践するものである。看護系大学に共有する課題解 決を目指す取組とさらに課題解決のみならず,各大学の 特徴を活かした地域貢献プログラムを順に展開するリ レープログラム(包括的取組)を実施し,成果をより直 接的に地域に還元していく中で,それぞれの大学内での ケアリング関係を軸として,さらに大きなケアリング・ サイクル(カバー人口100万人)へと形成させ,九州・ 沖縄がケアリングあふれる島となる,ケアリング・アイ ランド九州沖縄を創出していくことが最終目的である。 本事業では,ケアリングを[人と人とのかかわりの中 にある「助け合いの心」「もてなし」「面倒見の良さ」な どによって人々に豊かな情感と癒しの感覚が生じるこ と,その過程のこと]とし,ケアリング・サイクルを[ケ アリングに触れた人に「ケアする心構え」が生まれ,そ こを起点にさらに次のケアリングの過程が生じ,繋がっ ていく循環の状況]と定義している。本事業の全体概要 を図1に示す。 名桜大学紀要 第19号
3 「ケアリング・アイランド九州沖縄構想」事業によ り得られる教育研究効果及び地域社会への影響,効果 九州・沖縄の14大学が連携することにより,各大学が すでに着手している課題対応策を共有可能なモデルとし ていくことを糸口に本事業の具体策を看護実践の核とな る「ケアリング」の概念を中心に推進していく過程で実 現可能となる内容と到達目標は以下の7点が挙げられ, 様々な取組を行い,現在(平成25年)も進行中である。 ① 連携する大学内におけるケアリング文化が醸成さ れ大学教員の教育力が向上する。 ② 実習先医療機関等の臨地実習指導者における教育 力が向上し,実習先医療機関等においてケアリング・ サイクルが形成される。 ③ 卒後1年目の看護師の離職率が低下傾向に向か う。 ④ 連携する各大学にある看護技術シミュレーターの 相互利用率が向上し,利用者の看護技術が向上する。 ⑤ 連携している大学との学生間交流が増加・活発傾 向に向かう。 ⑥ 大学入学前及び入学後の理科系科目の学習到達度 が高まる。 ⑦ 連携する各大学の特徴科目の相互受講状況が上向 く。 本事業の長期ビジョン(10年後)は,「基盤的取組並 びに包括的取組により,ケアリングの連鎖を大学内から 医療機関へ,そして地域へと拡大していき,100万人の ケアリング・サイクルを形成していくことを通じて,10 年後にはケアリング溢れる九州沖縄を創出する」ことを めざしている。国・公・私立大学という設置形態の枠を 越えた大学間の連携はもとより,臨地実習先の機関や自 治体等と協働し看護系大学に共通する課題に一つひとつ 取組んでいった過程は,各連携大学にとって教育研究の 質を高めることになった。 また,地域貢献の取組を主体とする包括的取組を推進 することにより地域社会へケアリングの連鎖を拡大して いくことが可能と思われる。 さらに,看護系大学の学生たちは,医療機関・地方自 治体における実習を通じて,また,卒業後の勤務を通し て,多くの地域住民の生活に関係していくため,九州・ 沖縄における住民や訪問客も含め,長期ビジョンの100 万人をカバーすることは可能だと思われる。 本取組は看護系大学間の連携に留まらず,地域の未来 に関わっていく連携取組であり,看護系大学における教 育力の向上を地域とともに推進することができ,またそ の成果をケアリング溢れる質の高い卒業生の排出によ り,地域に還元していくことができる円環型の取組であ る。 Ⅲ 本学での取組 本学は、CSD小部会,学生コンソーシアム小部会, 単位互換小部会の幹事校を担い、金城祥教教授を代表と して全教員と名護市の担当者で以下のような体制で取組 んだ。 図1 事業の概要(ケアリング・アイランド九州沖縄構想HPより転記)
① 全体統括(金城祥教,稲垣絹代,金城利雄,横川 裕美子) ② ケアリングFD担当(加藤久美子,金城祥教) ③ ケアリングCSD担当(稲垣絹代,横川裕美子, 石川幸代,伊礼優,松下聖子,小西清美) ④ 卒後リメディアル・サポート担当(横川裕美子, 名城一枝,大城凌子,比嘉憲枝,西田涼子,安和や よい,高津三枝子) ⑤ 学生コンソーシアム担当(鈴木啓子、永田美和子、 徳田菊恵、清水かおり) ⑥ 講義の相互受講担当(金城やす子,武藤稲子,金 城利雄,清水かおり) ⑦ 連携事業評価委員会(名護市健康増進課,山城美 千代) Ⅳ 本学での活動報告 本学にて主に積極的に取組んだケアリングCSD, 講 義の相互受講, 看護技術支援,学生コンソーシアム,ケ アリング・アイランドウィーク企画について概要を報告 する。 1 ケアリングCSDについて ケアリングCSDとは,臨地実習指導者・臨床スタッ フ(clinical staff)の教育力をケアリングを通して開発・ 向上(develop)させる取組で,看護系大学において, 医療機関等で行う臨地実習は重要な看護教育の役割を 担っている。しかし,それらの医療機関等の中には,臨 床現場の多忙さや臨地実習指導者不足等の課題から,学 生のロールモデルとなりうる臨地実習指導者が十分には 育成されていないところや医療機関等の中にも現任教育 の違いがある。これらの現状を把握し課題解決を目的に 合わせてCSD連携システムを開発するためにケアリン グの考え方に基づいて臨地実習指導者及び臨床スタッフ に対する研修会を企画,実施した。 本学では,名桜CSD委員会を中心に,初年度より積 極的にCSD研修会に本学科教員や臨地実習指導者が多 数参加した。第1回合同CSD研修会から,研修会に参 加した教員と臨地実習指導者が協働して研修会の内容の 報告と情報を共有することを目的とした「第1回名桜C SD研修会(第1回合同CSD研修会の伝達講習会)」 が開催された。討議内容や研修会終了後のアンケートか ら参加者の満足度は高く「実習指導を行う場合,学生が 何を考えているのかを想像すること,学生に問いかける こと,情報を共有することの大切さを学んだ。」「改めて, 教員と病棟側との情報交換が大切であると感じた。」「今 年度が初めての実習受け入れだったので,スタッフに戸 惑いがあった。しかし,実習を受け入れることによって, 病院側も学生からさまざま刺激をもらえるので,これか らもよりよい環境づくりをしていきたいと思った。」な ど,実習指導の振り返りができ,今後の実習指導などに 役立つという評価が得られる良いスタートとなった。そ の後は,臨地実習指導者と教員が研修会やローカル企画 を一緒に参加・企画・運営するなどを試み,他施設の臨 地指導者同士や他大学教員との交流等、課題解決につい て積極的なグループワークが行われ,参加者の満足度が 高かった。 また,「第2回合同CSD研修会」の担当校となり, 174名の県内外からの参加者を受入れ運営を行い,高い 評価と満足度を得た。連携大学の教員との協働作業や運 営,他大学の教員や臨地実習指導者・看護管理者・自治 体関係者等との交流は,またとない刺激となり教育力の 向上への意欲に繋がり,本事業の効果が実感できる合同 CSD研修会を開催できた。 2 講義の相互受講 看護系大学においては,大学の理念の違いや在籍して いる教員の専門性の違いにより,独自科目(各大学を象 徴する特徴的な科目)が開設されている。これらの科目 の開設状況については大学間での情報の共有は難しく, 特にその内容については公開されていないことがほとん どである。しかし,看護学における専門性の高まりや複 数領域における学術的な展開を行う上では,広く情報を 共有することが必要である。そのため,「講義の相互受講」 小部会では,それぞれの大学の特徴を活かした講義を相 互に受講できる体制を,オンライン及びオフラインにて 構築することを目的に検討が行われ,連携校への調査や 先進校の視察等を行い,ICT活用による相互受講につ いては,ICT設備等の環境整備,単位互換に関する規 定を整え,遠隔地受講,単位認定等の課題の検討が今後 期待される。 一方,学部における相互受講科目として,ケアリング をさまざまな観点から読み解き,各連携大学の特徴を活 かしたテーマと講師によるオムニバス形式で担当した大 学間に渡る総合的なカリキュラム「ケアリング・サイエ ンス」15回を1セットのDVD教材として製作し,実際 に教材を使って講義を実施した。教材作成の過程で撮影 方法のばらつきなどがあり,今後どのように活用し,評 価するかの振返りと検討が必要である。 本学では,金城祥教,永田美和子,大城凌子,徳田菊 恵による「気になったらレスポンス-ケアリングの日常 性-」を製作した。以下が,「ケアリング・サイエンス」 15セットの科目名である。(本教材DVDは看護学科に て保管されている) 名桜大学紀要 第19号
3 看護技術支援 看護職者の離職の主な理由には,「現代の若者の精神 的な未熟さや脆弱さ」「基礎教育終了時点の能力と,現 場で求める能力とのギャップが大きい(リアリティ・ ショック)」があると言われている。 このような課題に対応するためどこの職場において も,プリセプター制度や職場内職業指導などが行われて いる。しかしながら,勤務先での新人フォロー体制や職 場内職業指導にはばらつきが見られ,看護技術向上のた めのフォローアップやブラッシュアップについては,臨 床現場においても大きな不安を抱えている現状がある。 このような状況を打開していくためには,大学からも 何らかのフォロー体制を構築していくことが必要だと考 えられ,本小部会では卒後1年目の看護師に対して,各 大学が持つ技術シミュレーターやシミュレーションルー ムを開放し,また連携大学間及び医療機関との共用体制 を構築することで,卒後1年目の看護師の看護技術水準 の底上げ・引き上げを図ることを目的とした。 本学では,独自の看護技術チェックリストを作成し, 平成23年6月から平成24年1月までに計8回の「新人 看護職のための看護技術支援研修」と卒後リメディア ル・サポートの一環として,新人看護師同士で悩みを話 したり相談したりできるような「ほっとタイム=ゆんた くタイム」という場の提供,卒業直前の4年次を対象に 卒業前看護技術演習を開催した。参加者からは「この時 期(就職して2か月後)に研修を受けることが出来て良 かった。」「不安や疑問に思っていたことを聞くことがで きた。」卒業前の学生からは「実習でも実施していなかっ たことはうろ覚えだった。」「就職前に技術の再確認が出 来,復習としてとてもよかった。」等々の感想があり, このような大学の教育資源を活かした研修会などの機会 提供は,今後より必要な地域社会貢献となる取組と思わ れる。 また, 本学の横川裕美子,清水かおり,宮里あずさ(看 護技術アドバイサー)が協同して執筆した「ケアリング に基づく看護技術マニュアル」が平成25年3月にメディ カルフレンド社より出版された。 本学において実施した研修会の看護技術項目は,下記 の①~⑥である。 ① 点滴管理 ② 創傷処理と観察 ③ 経管栄養 ④ 導尿・膀胱留置カテーテル ⑤ 静脈血採血 ⑥ 胸腔ドレーンの管理 4 学生コンソーシアムについて 近年,産業構造の国際化・情報化の進展する一方,急 速に進む少子化や高齢化など,社会状況は大きく変化し ている。このような状況にあって,地域における知識と 文化の拠点としての高等教育機関の大学には大きな期待 が寄せられている。知的資源・若者の情熱は,学生のボ ランティア活動を通じて,地域に活力をもたらし,あい まって大学の魅力や組織の活性化にも繋がっていくと考 えられることから,連携校及び関係団体と連携・協働 し,地域貢献としてのボランティア活動の調査と学生ゼ ミナール・フェスティバルを企画し、開催した。その成 果は,平成23年8月に開催された「日本思春期学会総会・ 学術集会」での合同学生フォーラムと平成24年3月に開 催された「国際ケアリング学会」において学生交流集会 として結実した。九州ブロック・沖縄ブロックそれぞれ の学生代表が発表し,意見交換を行い学生における“学 びの文化”の構築と浸透が図られた。 No. 授業テーマ 講義担当教員 1 ケアリング・サイクルの形 成を目指して 福岡県立大学 安酸 史子 2 ケアの対象との関係性をよ り意識した概念としてのケ アリング 聖マリア学院大学 矢野 正子 3 ケアリングにおけるコミュ ニケーションを科学する 福岡大学 焼山 和憲 4 ケアリングの心 -支えることと支えられる こと- 活水女子大学 奥野 政元 5 実践の中のケアリング 沖縄県立看護大学 嘉手苅英子 6 看護の中の触れる手 国際医療福祉大学 岡崎美智子 7 「看護の倫理」より 「Professionの責任と倫理」 大分県立看護科学大学 平野 亙 8 ケアリングの倫理 九州看護福祉大学 坂哉 繁子 9 ナラティブとケアリング 産業医科大学 鷹居樹八子 10 新人看護師へのケアリング -メンタリングサポートモ デル- 西南女学院大学 飯野 英親 11 助産のわざとケアリング 福岡県立大学 佐藤 佳代 12 気になったらレスポンス -ケアリングの日常性- 名桜大学 金城 祥教 13 ケアリングとユイマール 琉球大学 小笹 美子 14 ケアリングに「正義」は存 在するのか 日本赤十字九州国際 看護大学 石原 逸子 15 キリスト教とケアリング 福岡女学院看護大学 金田 俊郎
本学では,本学科学生・教員による「朝市」健康相談ボ ランティア活動が高い評価と注目を受け,学外の連携大 学から2度の公式視察の受入れを行った。また,平成22 年8月に開催された「ケアリング愛ランド~いちゃりば ちょーでー学生魂(まぶい)は未来を変える~」をテー マとした学生ゼミナールや平成23年3月には「つなごう ケアの和心の輪未来を変えるおーきなわ」(本学開催) をテーマとした学生フェスティバルを沖縄ブロックにて 開催し,本学科学生も積極的に参加した。また, 「日本 思春期学会総会・学術集会」や「国際ケアリング学会」 でも本学科学生が発表を行った。プレイベントとして3 大学合同新入生歓迎球技大会を実施するなど学生間交流 が構築されたが,継続的に九州・沖縄の学生が主体的に 展開した活動を後輩へと引き継ぐ世代交代【文化の伝 承】の仕組みづくりを今後検討する必要があるものと考 える。 5 ケアリング・アイランドウィーク企画 ケアリング・アイランド九州沖縄構想プロジェクトは, 目標達成の成果を14大学に留めることなく,周囲に広げ ていこうとする「100万人のためのケアリング・サイク ル」という理念があり,このケアリング・サイクルを実 現するための試みとして,ケアリング・アイランドウィー ク企画が立ち上げられた。この事業は,14大学が週単位 で企画・実践する活動を通して,周囲にケアリングの輪 を広げていくことを目的とする。その活動の対象を地域 住民を含める形とし,それぞれの大学が取り組んでいる 活動を拡大する企画の他,地域に根差したユニークな企 画を含めて,魅力ある企画となるように各大学が工夫し 展開された。企画されたプログラムは平成23年9月から 12月までに46の活動が継続して行われ,参加者数は延べ 5,200名を超える成果となった。実施を通して地域住民 のニーズが高いことがわかり、今後もこの輪を絶やすこ となく広げていくように,活動していくことが課題であ る。 本学では, 企画名「沖縄のケアリング文化を探求した 卒業論文の発表 IN 名桜祭」と「住民と一緒に創る宮里 区『朝市』ゆんたく健康増進活動」,「ツール・ド・おき なわ2011 バリアフリーコースボランティア ~繋ぐタス キ繋がる絆~」の3つのプロジェクトが実施され,ケア リング・サイクルを具現化する取組として有意義な地域 貢献へと繋がったと思われる。 Ⅴ まとめ 本学看護学科は,平成19年に開設したばかりであった が本事業の「ケアリング・アイランド」というキャッチ フレーズは,本学科教員や学生には親和性のある言葉と して受け取られた。沖縄の昔からの人々の心に根づいて いる「ゆいまーる」や「ちむぐくる」といった沖縄方言 の人々の温かい相互扶助の心を意味する「気遣い」や人々 の「関わり」をケアリングとして概念化していることか ら本学科ではいち早く本事業への参画を決定し,瀬名波 榮喜学長はじめ大学あげての協力体制を整え, 看護学科 の教員は全員態勢で活発な活動が展開された。特にケア リングFD研修会,CSD研修会についてはほとんどの 教員が参加した。参加者からは 本学の実習先の臨地実 習指導者,看護管理者,そして自治体関係者や他大学教 員,関係者の方々と交流や協働で学びあうことができた ことから自身の教育力が向上していることを実感できた との感想が多く寄せられた。 本学の看護教育の教育理念として「学生参画型看護教 育」を揚げている。「参画型教育」とは,学生が自ら学 ぶ主体として成長していくために,参画力を身につける 体系化された教授法である。「学生参画型看護教育」では, 「自己との対話」「他者との対話(仲間,教員,職員との)」 「地域社会との対話」を通して「個の自立と成長」,「個 の学習目標の達成」,「自己教育力の育成」を目指してお り,沖縄の豊かなケアリングの精神を受け継いだ看護実 践者を育成するために,初年次に地域住民の協力のもと ケアリング文化実習を実施する等,ケアリング・サイク ルの拡大を目指し継続して実践中である。3年間の補助 事業は終了となったが, ケアリング・アイランド九州沖 縄構想の理念である「100万人のケアリング・サイクル」 を作り出すため,取組は計10年続ける計画で,現在「ケ アリング・アイランド九州沖縄構想大学コンソーシアム」 として活動を行っている。また,新たに文部科学省の大 学間連携共同教育推進事業「多価値尊重社会の実現に寄 与する学生を養成する教育共同体の構築」が採択され, 8大学で連携して共同教育を推進している。さらに本事 業で構築された人的ネットワークにより共同研究として 科研費の獲得など積極的な取組が行われている。 本学においても,地域の看護系人材の看護能力(資質) の向上を図るために,やんばるの地に根ざしたケアの実 践と研究並びに地域の健康づくりを継続的に行うことを 目的に平成25年4月に「看護実践教育研究センター」が 設置され、発展的に本事業が展開されているところであ る。 ※1 離職率に関する最新の資料:「2012年 病院におけ る看護職員需給調査」では10.9%であり,そのう ち新人看護職の離職率は7.5%と減少している。 離職率低下の要因としては、労働条件の改善や教 育研修体制の整備に取組む病院が徐々に増え,特 名桜大学紀要 第19号
に2010年4月に新人看護職員研修が努力義務化さ れ、各病院が取組等々を進めてきたことの効果が 示唆される。 参考文献 ・平成21年度「大学教育充実のための戦略的大学連携支 援」看護系大学から発信するケアリング・アイランド 九州沖縄構想プロジェクト中間報告書:福岡県立大学 ケアリング・アイランド九州沖縄構想 戦略連携室 ・平成21年度~23年度「大学教育充実のための戦略的大 学連携支援」看護系大学から発信するケアリング・ア イランド九州沖縄構想プロジェクト報告書:福岡県立 大学 ケアリング・アイランド九州沖縄構想 戦略連 携室 ・看護系大学から発信するケアリング・アイランド九州 沖縄構想 平成21年度名桜大学活動報告書:名桜大学 人間健康学部看護学科 ・看護系大学から発信するケアリング・アイランド九州 沖縄構想 平成23年度名桜大学最終報告書:名桜大学 人間健康学部看護学科