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情動障害・精神症状

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Academic year: 2021

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高次脳機能研究 第 40 巻第 1 号 68(68)

rieth法で 29/36 点,構成方略を Organization Scoring System (Chervinsky et al 1992)で評価し 28/49 点。部分要素の描出 は良好だが骨格要素の全体方略が著しく欠落し,線分の不自 然な途切れや結合がみられた。コース立方体:29 点。図中 の三角形部分の抽出に偏重(図版 6 で顕著)。RCPM:33/36。  〔考察〕構成障害については半側空間無視や知能低下を伴 わず,部分と全体の統合不良を特徴とした。こうした部分優 位な知覚傾向が地誌的表象に影響する可能性について,実際 の描画例や構成過程を提示して報告する。 Ⅱ─B3─6 パーキンソン病の錯視 佐々木千波1, 2,高橋寛人1,和田千鶴1,横井香代子2,平山 和美2 1独立行政法人国立病院機構あきた病院,2山形県立保健医 療大学大学院作業療法学講座  〔はじめに〕パーキンソン病(PD)の幻視体験の研究は多 いが,錯視体験の研究は少ない。今回,局所脳損傷で報告さ れてきた種々の錯視について網羅的な質問紙を作成し,PD 患者に施行した。国立あきた病院倫理委員会の承認を得た。 〔対象〕矯正両眼近点視力 0.5 以上で,PD 以外の中枢神経疾 患や精神疾患の既往,頭部 MRI 上の PD の所見以外の異常の ない患者 15 名(60.2 ± 5.1 歳)。〔方法〕変色視,変形視,大 視,小視,遠隔視,近接視,動視,傾斜視,逆転視,二重 視,多視,複雑錯視,視覚性保続について説明し,そのよう な体験の有無,具体例などをたずねた。知能,記憶,視覚機 能の検査も行った。〔結果〕いずれかの錯視があった患者は 8 名,なかった患者が 7 名であった。変形視(線が蛇行してみ えた),複雑錯視(木が人にみえた),変色視(黒いカップが 茶色にみえた)など比較的多いとされる錯視に加え,非常に まれとされてきた傾斜・逆転視(人形が斜めになってみえた。 電柱が逆さに見えた)があった。さらに,これまで PD では 報告のない多視(1 羽の鳥が 4 羽に見えた)や視覚性保続(少 し前に見たティシュケースがまた見えた),脳損傷による持 続的症状としてしか報告のない立体視の異常(廊下の床が坂 に見えた)があった。ノイズパレイドリアテスト,Visual Perception Test for Agnosiaの錯綜図,City University Color Vision Test の成績は錯視のある患者群で有意に低下してい た。Mini Mental State Examination, Ray Auditory Verbal Learning Test は両群間に差がなかった。〔考察〕PD 患者に 多種の錯視が起こることが示唆された。錯視の出現は知能や 出来事記憶ではなく,色覚や図地分離の障害,パレイドリア 現象と関係する可能性が示された。

 第 2 日 B 会場:情動障害・精神症状 

座長:穴水 幸子 Ⅱ─B4─1 前頭葉腫瘍摘出後に生じた Apathy の質的差異に ついての検討 川村藍1,山本裕泰1,本村和也2,原大介1,田中伸弥1,松 井泰行1,夏目敦至2,若林俊彦2,岡田貴士3 1名古屋大学医学部附属病院リハビリテーション部,2名古 屋大学大学院医学系研究科脳神経外科学,3名古屋大学医学 部附属病院リハビリテーション科  〔はじめに〕Apathy(Marin 1990)は,Levy ら(2005)に よって 3 つの処理過程の破綻に分類されるが,その質的差異 (大東 2008)については曖昧な点も多い。また,Apathy と言 語性知的機能の関連が指摘されている(岡田ら 1998)が報告 は少ない。今回,左右半球を含めた Apathy の質的差異を検 討した為,論文的考察を交えて報告する。〔対象・方法〕過 去3年間に当院で前頭葉腫瘍摘出術を施行された65症例のう ち,Apathy Scale(以下 AS)実施可能であった 36 例(43.6

± 13.9 歳)を対象とし,AS が 16 点以上を Apathy あり群,AS

が 16 点未満を Apathy なし群に分類した。Stroop test(Part1, 2,3,3-1),Word Fluency Test(以下 WFT),および左右半 球を 2 群間で比較し,Stroop test(Part3-1)と WFT の相関 を求めた。また,Apathy あり群を Stroop test(Part1)の成 績の中央値で 2 群に分類し,WFT の結果を比較検討した。 〔結果〕Apathy あり群は 18 例,Apathy なし群は 18 例であっ た。Apathy あり群にて,手術部位が左半球である割合は有 意に高く(p = 0.002),WFT の letter は有意に低値を示した (p = 0.013)。Stroop test(Part2,3,3-1)は,所要時間が 延長する傾向を示した(いずれもp<0.1)。また,Stroop test (Part3-1)と WFT(letter)は負の相関(r =-0.565)を示 した。Apathy あり群の Stroop test(Part1)の成績が良い群 で WFT の letter と category の差が大きかった。〔考察〕今 回,Levy ら(2005)のいう ACC,DLPFC 損傷による Apathy については Stroop test,WFT が判別の材料となる可能性が あり,行動観察を加えることでその質的差異についての理解 が深まると推測する。また,左半球の Apathy は WFT の結 果から拡散的思考の低下に影響を受けていることが示唆さ れ,斉藤ら(1992)の前頭葉損傷における WFT 低下は発動 性・抑制障害が影響との指摘とも合致する。Apathy と拡散 的思考の関係については今後検討していく必要がある。 Ⅱ─B4─2 多発性脳梗塞による社会的認知障害 永井知代子1,桑原碧2,山口尚美3,園生雅弘2 1帝京平成大学健康メディカル学部言語聴覚学科,2帝京大 学医学部脳神経内科,3益子病院リハビリテーション科  〔背景〕多発性脳梗塞では,自発性の低下やアパシー,う つ症状を呈することがよく知られているが,社会的認知とい う側面から検討した報告は少ない。今回,比較的限局した領 域の血流低下と社会的認知障害を呈する症例を経験したの で,その病巣と経過について報告する。  〔症例〕50 歳右利き男性。左半身の不全麻痺にて近医入 院,MRI 上多発性脳梗塞を認め,加療後は転院してリハビ リを続けていた。麻痺は徐々に改善したが,次第に活動性が 低下し発話しなくなり,筆談で会話するようになった。また 周囲の音に敏感になり,些細な音をうるさいと言いパニック を起こすようになったため,当院紹介受診した。  〔初診時現症〕意識清明だが閉眼しうつむいた状態。発語 はなく,不快なことには唸り声を上げて泣く。状況にそぐわ ない笑いも見られる。上下肢の失調と筋力低下あり。  〔神経心理学的検査所見と経過〕[MMSE]29/30(筆談) [RCPM]31/36[WAB]聴覚理解 10,復唱(筆談)9.8,呼

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2020年 3 月 31 日 (69)69 称(筆談)8.4,読み 7.5(音読,漢字構造 0),書字 7.5(錯書 なし),行為 7.1,構成 9.1。失語はなく,口部顔面失行と慣 習動作の誤りあり。[表情認知テスト(Ekman)]怒りと判断 する率が高く,嫌悪が少ない。幸福・悲しみ・驚きは良好。 [誤信念課題]高次まで正答。次第に発話は増え, 5 年後には 筆談なしで会話可能に回復。発話は平坦で大声であり,音量 調整できない。発語失行はない。発話内容はネガティブで他 罰的。伏し目がちだが促せばアイコンタクト可能。指差しに 従うが,自ら指差しを行うことはない。  〔頭部 MRI〕白質,大脳基底核,視床,橋の梗塞と前頭葉 優位の萎縮。〔ECD-SPECT〕両側腹側線条体と梁下野で強 い血流低下。他に両側前部帯状回,腹内側前頭前野,下前頭 回と島,橋,小脳も低下。右下前頭回は後に改善。  〔考察〕本例は,MRI 上の広範な病巣に比して,SPECT では社会的認知に重要な領域が選択的に障害されていた。症 状と病巣の関係について考察する。 Ⅱ─B4─3 ヘルペス脳炎後,口唇傾向とカテゴリー特異的理解 障害を呈した一例 異物は食べ物と認知されているのか? 熊倉真理1 1社会医療法人米盛病院  〔はじめに〕両側側頭葉内側損傷後生じる食行動異常や口 唇傾向の要因として意味記憶障害が関与していることが報告 されている。右前頭葉底面を含み両側側頭葉に及ぶヘルペス 脳炎後,多彩な高次脳機能障害に加え口唇傾向を呈した症例 を,左半球損傷限局のヘルペス脳炎自験例との比較のもとに 若干の考察を加え報告する。〔症例1〕60歳代女性,単純ヘル ペス脳炎。高次脳機能障害のみが残存し,MRI にて右優位 の両側側頭葉内側部,島,海馬,前頭葉底面に異常信号あ り。入院当初より口唇傾向を呈し,数分前に食事をしたこと を忘れ,頻回に空腹感を訴えた。また,スポンジを口に入れ る一方で,本人が「茶碗を洗わないと」といって流し台に向 かった際には,適切な道具使用をしていた。TLPA 意味カテ ゴリー別理解検査では,色や身体部位に対して,動植物・食 物での低下が際立っていた。〔症例 2〕10 歳代,男性,右利 き。単純ヘルペス脳炎。身体障害・行動異常共に認めず,漢 字の失読・失書とカテゴリー特異的失名辞が残存。MRI に て左側頭葉底面から一部前頭葉底面に及ぶ左半球限局損傷を 認めた。TLPA 同呼称検査で身体部位,色名に対し,動植物 で顕著な呼称障害を認めた。〔方法〕2 症例に非言語性意味記 憶を測る目的で,Odd Picture Out テスト,嗅覚同異判断, 嗅覚線画同定課題を実施した。〔結果〕症例2は低下を認めな

かったが,症例 1 では Odd Picture Out 正答 50%,嗅覚線画 同定課題では正答 20%と低下が明らかだった。〔考察〕左半 球限局損傷の症例 2 は,概ね言語機能との関連においてのみ 低下を示した。一方,口唇傾向を呈した症例 1 は,マルチモ ダルな意味記憶障害を認めていることが確認されたが,内発 的動機づけにより,口唇傾向が不均一に生じていた。症例 1 の口唇傾向は,マルチモダルな意味記憶の障害と空腹感や健 忘症状等による不適切な内発的動機づけが抑制されないこと が要因となっていると示唆された。 Ⅱ─B4─4 右基底核胚細胞腫瘍に関連した精神症状・注意障 害・記憶障害が複合的な要因によって変動した小児の 1 例 伊関千書1,簡野宗明2,中村和幸3,松田憲一朗4,小山信吾1 石澤賢一1 1山形大学医学部内科学第三講座,2山形大学医学部精神医 学講座,3山形大学医学部小児医学講座,4山形大学医学部 脳神経外科  〔目的〕小児の基底核胚細胞腫瘍症例において,高次脳機 能症状について検討する。〔症例〕高次脳機能科初診時8歳男 児。40 週 4 日 3,368g 出生時に仮死,蘇生歴あり。1 歳時熱性 痙攣が 1 回あったが,発達異常の指摘はなかった。6 歳時就 学後,時々頭痛を訴えており,学校の忘れ物が非常に多く, 家庭ではかんしゃくが出現しやすかった。7 歳時にインフル エンザ罹患時,意識障害が疑われ施行された頭部 MRI で, 右視床から大脳脚にかけて FLAIR 高信号病変が指摘され生 検にて胚細胞腫瘍の診断であった。神経学的には左上肢の巧 緻運動障害,左>右下肢腱反射が亢進し,軽度の落ち着きの なさが見られ,受け答えはできるが自発的な言語の表出が少 なく,語彙の乏しさが認められた。WISC-4 での全 IQ 91, ワーキングメモリ 79 であった。注意障害と軽度の知的障害 が疑われた。腫瘍に対して化学療法(カルボプラチン,エトポ シド)4 コースと全脳照射 23.4Gy が施行された。約 7 ヶ月の 休学し通学再開した時点(8 歳 8 ヶ月)で全 IQ とワーキング メモリは不変であった。その後,休学による学習の遅れに加 え,治療後の食欲不振と体力低下,睡眠時間の増加と学習時 間の減少,忘れ物がさらに増加,落ち着いて座っていられな いといった多動が出現,漢字など新規学習内容が定着せず, 家庭でのかんしゃくの増加が問題となった。精神科より,注 意障害やかんしゃくに対し,メチルフェニデート,抑肝散, アリピラゾール,スルピリド,バルプロ酸はいずれも効果は 限定的であった。10 歳 6 ヶ月時全 IQ77,ワーキングメモリ 76と低下していた。その後,食欲・体力の改善傾向に加え, 家庭および学校環境の調整により多動,かんしゃくは改善 し,11 歳時には学習障害,注意障害とも軽減傾向にある。 〔結論〕基底核胚細胞腫瘍の小児で,精神症状,注意障害と いった腫瘍が誘発した症状は,治療の影響,全身状態,学校 生活への適応,家庭環境など複合的な要因により変動した。 Ⅱ─B4─5 右側頭葉の脳梗塞の再発で社会的行動障害を呈した ウェルニッケ失語例─プロソディ理解障害の観点からの分析 有川瑛人1, 2,窪田正大2,原有希1,原口友子1,堀ノ内啓介3 高田昌実4 1医療法人玉昌会加治木温泉病院総合リハビリテーション センター,2鹿児島大学大学院保健学研究科,3医療法人玉 昌会加治木温泉病院リハビリテーション科,4医療法人玉昌 会加治木温泉病院内科  〔はじめに〕発症から 10 年以上が経過したウェルニッケ失 語一症例において,右側頭葉の脳梗塞を再発したことで理解 障害が重症化し,社会的行動障害を呈した症例を経験した。 社会的行動障害の原因について言語とプロソディの理解障害 の観点から検討した。〔症例〕70 歳代,男性。右利き。〔現病

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高次脳機能研究 第 40 巻第 1 号 70(70) 歴〕約 10 年前の脳梗塞によりウェルニッケ失語を呈し,当 院のデイケアで言語訓練を継続していた。コミュニケー ション態度は良好だった。入浴以外の ADL は自立していた (FIM 105/126)。ある日を境に難聴を疑う場面がみられるよ うになり,周囲とトラブルを起こすようになった。CT 画像上 右側頭葉に新たな脳梗塞を認め,当院入院となった。〔CT 所 見〕左側頭葉から頭頂葉にかけての低吸収域に加え,右側頭 葉皮質に限局した新たな低吸収域を認めた。〔神経学的所見〕 軽度の右片麻痺を認めたが,麻痺の程度および ADL は再発 前と変化はなかった。〔生活場面の変化〕再発前は難聴を疑 うことはなかったが,再発後,声をかけても気付かない場面 が増えた。再発前よりも日常会話が成立しなくなり,相手の 発言内容を被害的に受け止めて,毎日のように易怒的・攻撃 的に応対するようになった。〔神経心理学的評価〕言語機能 は発症前後で著変はなかった(SLTA 聴く:単語 80%→ 60%, 短文 0%→ 10%,口頭命令 0%→ 0%。SALA 聴覚的異同弁 別:2 モーラ語 69%→ 83%)。環境音検査は 16/20 正答で あった。明らかな聴覚失認は認めなかった。相良ら(2002) を参考に,4 種類の感情的意味(楽しさ,怒り,悲しみ,無 感情)を持つ文章を用いてプロソディの理解力を調べた。結 果は 5/32 正答と低く,プロソディの理解障害を認めた。〔考 察〕本症例は,言語理解障害にプロソディの理解障害が重畳 したことで日常生活上の理解力が著しく低下したと考えられ た。本症例の社会的行動障害の一部は,言語理解とプロソ ディ理解の障害を基盤としている可能性が示唆された。 Ⅱ─B4─6 アパシーのサブタイプに応じた実用的な能力の獲 得を図った一例 川上寿一1, 2,林美岐2,川本潔2,竹村壮司2 1滋賀県立リハビリテーションセンター,2滋賀県立総合病院  〔症例〕特に既往のない 50 代女性,会社員(マネージャー 職)。意識障害にて発症,くも膜下出血の診断,5 ヵ所に動脈 瘤あり手術された。術後 CT で左前頭葉に低吸収域出現,ま た水頭症にて VP シャント術施行。71 病日に転入院。〔経過〕 著明な四肢麻痺はなく歩行可能。整容 / 更衣に介助必要,排 泄は失禁。ナースコールは使用できず。ドレッシングを何に かければよいかわからず,同じものを食べ続けていた。応答 は 1-2 語文,保続や錯語みられ,SLTA では復唱・音読は 80-100%可能であった。TMT-A 1 分 10 秒,-B 困難,レーヴン 色彩マトリックス検査 A9 AB9 B6,MMSE は 17/30 で減点 は見当識,計算,遅延再生であった。書字,紙箱折り・台ふ きなどの軽作業を日課として設定すると,誘導が必要なとこ ろもあるが習慣化し,継続できた。一人でトイレに行けるよ うになったものの,リハビリパンツと尿取りパットに失禁が あり,自らは交換されず職員が交換を介助していた。臀部の 拭き残しを指摘しても拭き取る行動はみられず,交換を拒ん だり失禁を否定する言動もあり,家族からは退院後の排泄へ の不安が訴えられていた。背外側前頭前野の損傷による行動 計画の策定における障害によるものと考え,温存されている 可能性のある情動と行動の合理的な結びつける能力の活用を はかった。具体的には失禁を指摘して対応を促す対応から, きれいな方がよいこときれいにすることを合意・確認するこ とと,ふき取りやパッドの交換は擬似物を使用して練習す る,という対応に変更し,排便は修正自立となった。〔考察〕 アパシーのサブタイプ(Levy et Dubois)の活用は,日常生 活動作の遂行機能低下がある場面での活用においても有用で ある,と考えられた症例である。また,自発性の低下を症状 としてみる際に,全般的な意欲や活動性の低下としてのみ捉 えられてしまう可能性があるが,個別の目的行動における自 発性の要因も考慮する意義があるものと考えられた。

 第 2 日 B 会場:認知症 

座長:橋本 律夫 Ⅱ─B5─1 意味性認知症を呈した患者と家族に対して言語聴 覚士が長期的介入を行った経験 藤本麻美1,多田英美1 1東海大学医学部付属病院リハビリテーション技術科  〔はじめに〕意味性認知症(SD)は言語障害と行動異常が特 徴であり,言語訓練に関する報告は数多い。しかし,行動異常 が顕著に出現する進行期まで長期的に言語聴覚士(ST)が介 入した報告は極めて少ない。今回,SD 患者と家族に対して,ST が症状進行に応じて 2 年間の介入を行った経験を報告する。  〔症例呈示〕60 代右利きの女性。同居家族は夫。「日常会話 が成立しない」という夫の訴えで当院を受診したところ,頭部 MRIにて左側頭葉に限局した委縮を認め,SD と診断された。  〔経過〕診断後 5 か月(病初期),礼節は保たれていたが, 簡単な日常会話であっても成立せずに,ST による介入が開 始となった。SLTA では,聴理解に比して文字理解の方が良 好であり,短文まで可能であった。表出面では喚語障害を認 めたが,復唱・音読は 2 語文まで,書字では漢字・仮名とも に単語まで可能であった。RCPM では 10 点であったが,手 段的日常生活動作(IADL)は自立していた。ST は言語訓練 に加え,残存能力を活かしたコミュニケーション手段を家族 へ指導した。診断後 20 か月(進行期)には,言語理解は困難 となり,発話は「はい」等の返事程度の単語のみとなった。 また,ADL や IADL に介助を要し,公園の花を勝手に折る等 の非社会的行動が増え,家族の見守りが必須となった。ST は,行動異常に対する対処方法や予防策に関する家族教育を 行い,さらに介護保険制度や社会資源サービスに関する情報 提供とその利用を促した。診断後 24 か月,デイケアなどの 社会資源サービスが導入された。その後,患者の社会活動の 機会が増えるとともに家族の介護負担感が軽減したことを確 認し,介入終了となった。  〔考察〕SD 患者において,ST の病初期からの長期的な介 入は,言語訓練の他に患者の症状進行を的確に捉え,適切な タイミングで言語障害や行動異常に対する家族教育を行うこ とを可能とし,患者および家族の QOL 維持・向上に寄与し たと考えられた。 Ⅱ─B5─2 右優位の側頭葉萎縮による意味性認知症の一例 目黒祐子1,菊池大一2,藤盛寿一2,松田実3 1東北医科薬科大学病院リハビリテーション部言語心理部門, 2東北医科薬科大学老年神経内科学,3清山会いずみの杜診

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